(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃エンジンに吸気を導入する吸気ポートに挿入されるスリーブを有し、スリーブは吸気が流入される1個の吸気導入口と吸気が流出される2個の吸気導出口を備える樹脂製インサート、を成形するための金型アッセンブリにおいて、
インサートの外周面の形状を構成する外型と;
インサートの内周面の形状を構成する内型と、を備え
内型は互いに組み合わせた状態でスリーブの内周面を成型し、互いに逆方向に型抜きされる吸気導入口側金型と吸気導出口側金型とを備え、
スリーブの吸気導入口の最も離れた壁面間の距離が、2個の吸気導出口の最も離れた壁面間の距離よりも小さいインサートに適用され、
吸気導入口側金型は、吸気導入口から吸気導出口に向けて突出する二股の突起を有し、
吸気導出口側金型は、吸気導出口から吸気導入口に向けて突出する一対の突起を有し、
吸気導入口側金型の二股の突起が、吸気導出口側金型の一対の突起の間に嵌合した状態で、スリーブの内周面の形状を構成する、吸気ポート用インサートの金型アッセンブリ。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンの吸入空気の温度上昇を抑制するために、シリンダヘッドの吸気ポートと吸気マニホールドの各枝管とをそれぞれ樹脂製のスリーブを介して接続することが知られている。
【0003】
スリーブを介した吸気ポートと吸気マニホールドとの接続に関して、日本国特許庁が2007年に公開したJP 2007-056794 Aはスリーブと吸気ポートの壁面との間にスペースを空けることで、吸気ポートの壁面の温度が吸気に伝わりにくくすることを提案している。
【0004】
日本国特許庁が2009年に発行したJP2009-052491Aはさらに、スリーブの壁面に貫通孔を形成することで外側のスペースに溜まった燃料をスリーブの内側へと排出することを提案している。
【発明の概要】
【0005】
こうしたスリーブは内燃エンジンのシリンダヘッドと吸気マニホールドに挟持される樹脂製のフランジを含めた吸気ポート用インサートとして提供される。フランジにはスリーブの吸気導入口が形成される。
【0006】
内燃エンジンが気筒毎に2個の吸気ポートを備える場合には、吸気マニホールドの枝管及び枝管に接続されるスリーブの吸気導入口は各気筒について1個のままとし、スリーブを中間で二股に分岐させて各気筒の2個の吸気ポートにそれぞれ挿入している。つまり、各スリーブが1個の吸気導入口と2個の吸気導出口とを備えている。
【0007】
しかしながら、スリーブのこのような構成はスリーブの構造や形状を複雑化し、吸気ポート用インサートの一体成型を難しくする要因となる。
【0008】
この発明の目的は、したがって、途中で二股に分岐するスリーブを備えた吸気ポート用インサートの一体成型を容易にすることである。
【0009】
以上の目的を達成すべく、この発明は、内燃エンジンに吸気を導入する吸気ポートに挿入されるスリーブを有し、スリーブは吸気が流入される1個の吸気導入口と吸気が流出される2個の吸気導出口を備える樹脂製インサート、を成形するため金型アッセンブリを提供する。金型アッセンブリはインサートの外周面
の形状を構成する外型と、インサートの内周面
の形状を構成する内型と備える。内型は互いに組み合わせた状態でスリーブの内周面を成型し、互いに逆方向に型抜きされる吸気導入口側金型と吸気導出口側金型とを備える。
金型アッセンブリはスリーブの吸気導入口の最も離れた壁面間の距離が、2個の吸気導出口の最も離れた壁面間の距離よりも小さいインサートに適用される。吸気導入口側金型は、吸気導入口から吸気導出口に向けて突出する二股の突起を有し、吸気導出口側金型は、吸気導出口から吸気導入口に向けて突出する一対の突起を有する。金型アッセンブリは吸気導入口側金型の二股の突起が、吸気導出口側金型の一対の突起の間に嵌合した状態で、スリーブの内周面の形状を構成する。
【0010】
この発明の詳細並びに他の特徴や利点は、明細書の以下の記載の中で説明されるとともに、添付された図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】FIG.1はこの発明による金型アッセンブリを用いて成形される樹脂製インサートを備える内燃エンジンのシリンダヘッドの斜視図である。
【
図2】FIG.2はスリーブとフランジからなる樹脂製インサートの吸気導入口側から眺めた概略斜視図である。
【
図3】FIG.3は吸気導出口側から眺めた樹脂製インサートの概略斜視図である。
【
図4】FIG.4は樹脂製インサートを整形するための金型アッセンブリの分解斜視図である。
【
図5】FIG.5は金型アッセンブリを構成する第1-第5金型と樹脂製インサートを側方から眺めた側面図と透視図との合成図である。
【
図7】FIG.7は第2金型と第3金型の斜視図である。
【
図9】FIGS.9Aと9Bは第5金型の斜視図と要部横断面図である。
【
図10】FIG.10は第1金型と第5金型の内型の型見切り線の位置を説明する、金型アッセンブリ要部の平面図と横断面図の合成図である。
【
図11】FIGS.11Aと11Bはスリーブの内周面の平面図及び内周面を整形するための第1金型と第5金型の組み合わせ状況を説明する平面図である。
【
図12】FIGS. 12Aと12Bは樹脂製インサートの平面図及び第1金型と第4金型と第5金型の組み合わせ状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面のFIG.1を参照すると、多気筒内燃エンジンのシリンダヘッド1には吸気マニホールド2が固定される。吸気マニホールド2はエンジンの気筒数に等しい枝管を備える。
【0013】
この実施形態において、内燃エンジンは4気筒であり、吸気マニホールド2は対応して4本の枝管を備える。吸気マニホールド2はインサートを介してシリンダヘッド1に固定される。シリンダヘッド1は金属製とし、吸気マニホールド2は熱伝導率の低い樹脂製とする。インサート3も樹脂製とする。
【0014】
FIGS.2と3を参照すると、インサート3は4個のスリーブ3Aとこれらのスリーブ3Aを連結するフランジ3Bからなる。フランジ3Bにはインサート3を挟んで吸気マニホールド2をシリンダヘッド1に固定するための複数のボルト穴11と複数の位置決め用の突起7が形成される。
【0015】
インサート3は各スリーブ3Aをシリンダヘッド1の各吸気ポートに挿入した状態で、位置決め用突起7とボルト穴11を貫通するボルトによって吸気マニホールド2とともにシリンダヘッド1の所定位置に固定される。
【0016】
内燃エンジン2は各気筒に2個の吸気ポートと吸気バルブを備える。そのために、各スリーブ3Aは途中で二股に分岐する。つまり、各スリーブ3Aは吸気マニホールド2の枝管からの空気を流入させる1個の吸気導入口4と、吸気導入口4から導かれた空気が流出されて吸気ポートに流入させる2個の吸気導出口5とを備える。吸気導入口4から導かれた空気はスリーブ3Aの内側で分岐し、
各吸気導出口5から各吸気ポートへ流入する。
【0017】
FIG.10を参照すると、各吸気導入口4の幅は対応する2個の吸気導出口5の幅の合計に等しく設定される。ここで、吸気導入口4の幅及び吸気導出口5の幅は各スリーブ3Aの吸気導入口4の中心を結ぶ直線方向の寸法、すなわち図の左右方向の寸法を意味する。吸気導入口4の高さは吸気導出口5の高さに等しく設定される。この設定により、吸気導入口4の断面積と吸気導出口5の断面積は等しくなる。
【0018】
図に示す寸法Xはスリーブ3Aの2個の吸気導出口5の各中心を結ぶ線に沿って計測した吸気導入口4の壁面間の距離(吸気導入口4の最も離れた壁面間の距離)を表す。図に示す寸法Yは同方向に計測した2個の吸気導出口5の最も離れた壁面間の距離に相当する。スリーブ3Aに分岐部が形成されるため、寸法Yは二股に分岐した後のスリーブ3Aの分岐部の壁厚と分岐部間に充填される樹脂の厚さを含むことになり、必然的に吸気導入口4の寸法Xより大きくなる。
【0019】
この発明の実施形態による金型アッセンブリ20は、以上のように構成されたインサート3の成型に適用される。
【0020】
FIG.4を参照すると、金型アッセンブリ20は第1金型Aから第5金型Eに至る5個の金型A-Eによって構成される。
【0021】
FIG.5を参照すると、金型A‐Eは図に示すように組み合わされる。図の太線に示されるのが金型アッセンブリ20によって成型されるインサート3である。インサート3の成型は金型アッセンブリ20の内側に樹脂を射出することで行なわれる。そのために、金型アッセフンブリ20には図示されない樹脂の射出孔が設けられる。
【0022】
5個の金型A-Eのうち第1金型Aはスリーブ3Aの内周面を成型するための内型であり、第2金型Bと第3金型Cはフランジ3Bを成型するための外型である。第4金型Dはスリーブ3Aの基端部の外周面を成型するための外型である。第5金型Eは第1金型Aと共働してスリーブ3Aの内周面を成型する内型と、スリーブ3Aの先端部の外周面を成型する外型との2つの機能を併せ持つ。
【0023】
つまり、金型アッセンブリ20の内型は第1金型Aと第5金型Eによって構成され、外型は第2金型B-第5金型Eによって構成される。図の矢印は各金型A-Eの撤去時に加える力の方向を示す。
【0024】
FIG.6を参照すると、第1金型Aはスリーブ3Aの内周面を成型するための二股の突起8と、フランジ3Bのボルト穴11を成型するための円柱状の突起9を備える。二股の突起8の間のスペースに充填される樹脂が、FIG.10に示されるスリーブ3Aの分岐部間の壁面を形成する。
【0025】
FIGS.9Aと9Bを参照すると、第5金型Eは、スリーブ3Aごとに一対の突起12Aと12Bを備える。一対の突起12Aと12Bは第1金型Aと第5金型Eを互いに組み合わせた状態で、FIG.9Bに示すように、二股の突起8の両側面に接するように形成される。一対の突起12Aと12Bと突起8とが相接する接触面はいずれも平面に形成される。
【0026】
FIG.11Bを参照すると、第1金型Aと第5金型Eは図に示すように一対の突起12Aと12Bの間に突起8を嵌合させる。このようにして組み合わされた一対の突起12Aと12B及び二股の突起8がスリーブ3Aの内型として機能する。
【0027】
再びFIG.9Bを参照すると、第1金型Aと第5金型Eを互いに組み合わせた状態では突起12Aと12Bがスリーブ3Aの両外側寄りの内周面の成型に適用され、二股の突起8がスリーブ3Aの内側寄りの内周面の成型に適用される。
【0028】
インサート3の成型後、第1金型Aは成型位置からFIG.10の矢印に示すようにスリーブ3Aの中心軸CLに沿って縦断方向にインサート3から遠ざかる方向に引き抜き力を加えることで撤去(型抜き)される。第5金型Eは成型位置からFIG.10の矢印に示すようにスリーブ3Aの中心軸CLに沿って第1金型Aの引き抜き力と逆向きに引き抜き力を加えることで撤去(型抜き)される。すなわち、第1金型Aと第5金型Eは、互いに逆方向に型抜きされる。
【0029】
第1金型Aと第5金型Eの撤去を可能にすべく、FIG.10の太線に示すように、
スリーブ3Aの内周面の形状に合わせて、第1金型Aと第5金型Eとの型見切り線、すなわち境界線、が設定される。その結果、成型作業時の内型は第5金型Eの一対の突起12Aと12Bの間に第1金型Aの二股の突起8が嵌合した状態となる。
【0030】
第1金型Aと第5金型Eとの型見切り線をこのように設定することで、第1金型Aも第5金型Eもスリーブ3Aの内周面の凹凸と干渉することなくスムーズに撤去することができる。
【0031】
このようにして、途中で二股に分岐し、かつ2個の吸気導出口5の最も離れた壁面間の距離Yが吸気導入口4の最も離れた壁面間の距離Xより大きいスリーブ3Aの内周面の複雑な形状を2種類の金型AとEを用いて成型することが可能となる。
【0032】
次に、金型アッセンブリ20の外型について説明する。
【0033】
FIG.7を参照すると、第2金型Bと第3金型Cは、フランジ3Bの外周面を規定する金型であり、組み合わされた状態ではフランジ3Bに相当する略矩形のスペースを内側に画成する。第1金型Aと第5金型Eが構成する内型はこのスペースを貫通する。第2金型Bと第3金型Cからなる外型と内型の間に射出される樹脂によってフランジ3Bが形成される。
【0034】
FIG.8を参照すると、第4金型Dは4個の
スリーブ3Aに対応する位置に4個の穴13を備える。穴13は
スリーブ3Aの基端部の外周面を規定する略角丸矩形断面を有する。穴13には内型として第1金型Aの二股の突起8と、第5金型の一対の突起12A,12Bとが互いに逆向きに貫通する。内型と穴13の壁面との間に充填された樹脂によって
スリーブ3Aの基端部が形成される。
【0035】
FIG.9Bを参照すると、第5金型Eは外型をも構成する。外型としての第5金型Eは一対の突起12Aと12Bを囲む略角丸矩形断面の凹部を備える。一対の突起12Aと12Bと二股の突起8とが形成する内型とこの凹部の壁面との間に射出される樹脂によってスリーブ3Aの先端部が成形される。
【0036】
再びFIG.5を参照すると、金型アッセンブリ20の成型後に、外型を構成する第2金型Bと第3金型Cは図の矢印に示すようにスリーブ3Aのフランジ3Bと同一平面上で互いに離間する方向への力を加えることで撤去される。
【0037】
FIGS.12Aと12Bを参照すると、第1金型Aと第5金型Eは前述のように、成型位置から図の矢印に示すようにスリーブ3Aの中心軸CLに沿って縦断方向に逆向きの引き抜き力を加えることで撤去される。第1金型Aと第5金型Eを撤去した後、第4金型Dに第5金型Eに加えた引き抜き両と同方向への引き抜き力を加えることで第4金型Dも撤去される。
【0038】
第1金型A,第4金型D,及び第5金型Eの撤去作業と、第2金型Bと第3金型Cの撤去作業の順番は特に限定されず、いずれを先に行っても良い。
【0039】
このようにしてFIG.12Aに示す外周面とFIG.11Aに示す内周面とを有するスリーブ3Aを備えた一体のインサート3を射出成形することが可能となる。
【0040】
以上説明した実施形態において金型アッセンブリ20の内型のうち、第1金型Aが吸気導入口4側の金型を構成し、第5金型Eが吸気導出口5側の金型を構成する。
【0041】
以上のように、この発明の実施形態による金型アッセンブリ20は、内型として、互いに組み合わせた状態でスリーブ3Aの内周面を成型し、互いに逆方向に型抜きされる吸気導入口4側の第1金型Aと吸気導出口5側の第5金型Eとを備えている。第1金型Aはインサート3の成形後にスリーブ3Aの縦断方向であって吸気導入口4から遠ざかる方向への変位によってインサート3から撤去されるように構成される。
吸気導出口5側の第5金型Eはインサート3の成形後に吸気導入口4側の第1金型Aの変位と逆方向への変位によってインサート3から撤去されるように構成される。
【0042】
内型をこのように構成することで、途中で分岐する複雑な構造と形状を有する複数のスリーブ3Aを備えたインサート3の一体成型を容易に行なうことができる。
【0043】
以上、この発明を特定の実施形態を通じて説明してきたが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではない。当業者にとっては、請求の範囲でこれらの実施形態にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、この発明においては、インサート3の金型を第1金型A-第5金型Eの5個の金型で構成しているが、必須の要件は内型を構成する第1金型Aと第5金型Eであり、その他の金型については任意に設計変更が可能である。
【0045】
例えば、第4金型Dを第5金型Eと一体に構成することが可能である。第2金型Bと第3金型Cの一方または両方を第1金型Aと一体に構成することが可能である。あるいは第2金型Bと第3金型Cの一方または両方を第4金型と一体に構成することが可能である。さらには、第2-第5金型B-Eをすべて一体の金型として構成することも可能である。
【0046】
この発明の実施例が包含する排他的性質あるいは特長は以下のようにクレームされる。