(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(電池用セパレータ塗液用増粘剤)
本発明は、繊維幅が1000nm以下であり、平均重合度が400未満の繊維状セルロースを含む電池用セパレータ塗液用増粘剤に関する。
【0015】
本発明の電池用セパレータ塗液用増粘剤は、上記構成を有するため、塗工層を薄く形成する場合においても、塗工性が良好な電池用セパレータ塗液を得ることができる。本発明の電池用セパレータ塗液用増粘剤を含む電池用セパレータ塗液から形成された塗工層においては、塗工層の膜厚を薄くした場合であっても塗工ムラ等の発生が抑制されている。なお、本明細書においては、塗工性の評価は塗工層の塗工ムラの有無で判定できる。
電池用セパレータ塗液から形成された塗工層を含む電池用セパレータは、塗工ムラのない塗工層を有するため安全性が高い。また、本発明においては、塗工層を薄く形成することができるため、電池用セパレータ自体の厚みを薄くすることが可能となる。
【0016】
電池用セパレータ塗液における増粘剤は、塗工後には不純物となる恐れがあるため、その添加量は少ない方が好ましい。本発明では、上記電池用セパレータ塗液用増粘剤を用いることにより、その添加量を少なくすることができる点にも特徴がある。本発明においては、電池用セパレータ塗液用増粘剤の添加量が少ない場合であっても微粒子の分散性を高めることができる。また、本発明では、上記電池用セパレータ塗液用増粘剤の添加量を抑えることができるため、電池用セパレータ基材の微多孔が塞がることを抑制することもできる。
【0017】
本発明の電池用セパレータ塗液用増粘剤は、繊維幅が1000nm以下であり、平均重合度が400未満の繊維状セルロースを含む。なお、本明細書においては、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを、微細繊維状セルロースともいう。電池用セパレータ塗液用増粘剤は、このような微細繊維状セルロースを全固形分の質量に対して60質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましい。電池用セパレータ塗液用増粘剤は、上記の微細繊維状セルロースからなるものであってもよいが、電池用セパレータ塗液用増粘剤には、上記の微細繊維状セルロースの他に、水分等の溶媒、水溶性高分子等が含まれていてもよい。
【0018】
本発明の電池用セパレータ塗液用増粘剤の形態としては、例えば、粉末状、ゲル状、スラリー状、溶液状、シート状等を挙げることができる。
【0019】
電池用セパレータ塗液用増粘剤に含まれる微細繊維状セルロースの平均重合度は400未満であればよく、395以下であることが好ましく、380以下であることがより好ましい。また、微細繊維状セルロースの平均重合度は100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。
微細繊維状セルロースの平均重合度を上記範囲内とすることにより、塗工層を薄く形成する場合においても、電池用セパレータ塗液の塗工性を良好にすることができ、塗工ムラの少ない塗工層を形成することができる。
【0020】
電池用セパレータ塗液用増粘剤に含まれる微細繊維状セルロースの平均重合度は、下記の論文を参考にして算出する。
TAPPI International Standard; ISO/FDIS 5351, 2009.
Smith, D. K.; Bampton, R. F.; Alexander, W. J. Ind. Eng. Chem.,Process Des. Dev. 1963, 2, 57-62.
【0021】
具体的には、微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が2±0.3質量%となるように希釈した懸濁液30gを、遠沈管に分取して冷凍庫に一晩静置し、凍結させる。さらに凍結乾燥機で5日間以上乾燥させた後、105℃に設定した定温乾燥機で3時間以上4時間以下加熱し、絶乾状態の微細繊維状セルロースを得る。
リファレンスを測定するために、空の50ml容量のスクリュー管に純水15mlと1mol/Lの銅エチレンジアミン15mlを加え、0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液を調製する。キャノンフェンスケ粘度計に上記の0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液10mlを入れ、5分間置いた後、25℃における落下時間を測定して溶媒落下時間とする。
【0022】
次に、微細繊維状セルロースの粘度を測定するため、絶乾状態の微細繊維状セルロース0.14g以上0.16g以下を空の50ml容量のスクリュー管に量り取り、純水15mlを添加する。さらに1mol/Lの銅エチレンジアミン15mlを加え、自転公転式スーパーミキサーで1000rpm、10分撹拌し、微細繊維状セルロースが溶解した0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液とする。リファレンスの測定と同様に、キャノンフェンスケ粘度計に調製した0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液10mlを入れ、5分間置いた後、25℃における落下時間を測定する。落下時間の測定は三回行い、その平均値を微細繊維状セルロース溶液の落下時間とする。
【0023】
測定に用いた絶乾状態の微細繊維状セルロースの質量、溶媒落下時間、及び微細繊維状セルロース溶液の落下時間から下式を用いて重合度を算出する。なお、下記の平均重合度は二回以上測定した場合は、各回の平均値である。
測定に用いた絶乾状態の微細繊維状セルロース質量:a(g)(但し、aは0.14以上0.16以下)
溶液のセルロース濃度:c=a/30(g/mL)
溶媒落下時間:t
0(sec)
微細繊維状セルロース溶液の落下時間:t(sec)
溶液の相対粘度:η
rel=t/t
0
溶液の比粘度:η
sp=η
rel―1
固有粘度:[η]=η
sp/c(1+0.28η
sp)
重合度:DP=[η]/0.57
なお、微細繊維状セルロースの平均重合度は、上記方法で算出されるものであるため、粘度平均重合度と呼ばれることもある。
【0024】
なお、電池用セパレータ塗液用増粘剤に微細繊維状セルロース以外の成分が含まれる場合は、微細繊維状セルロースを単離した後に、微細繊維状セルロースの平均重合度を算出する。
この場合は、まず、電池用セパレータ塗液用増粘剤を希釈し、乾燥させた後に、透過型電子顕微鏡で観察し、微細繊維状セルロースの存在を確認する。次いで、固体NMRを用いて、微細繊維状セルロースのI型結晶を検出する。
【0025】
電池用セパレータ塗液用増粘剤中に、微細繊維状セルロースの存在が確認された場合、以下の手順に従って微細繊維状セルロースを単離する。
まず、50ml容量のアルミカップに電池用セパレータ塗液用増粘剤20±5gを量り取る。同様にして、電池用セパレータ塗液用増粘剤を量り取ったアルミカップを複数個用意する。送風定温乾燥機にて105℃で16時間加熱し電池用セパレータ塗液用増粘剤を乾燥させる。乾燥させた電池用セパレータ塗液用増粘剤1gに対し、200mlの割合となるように0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌して微細繊維状セルロースを溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除いた後、水中に滴下し、再生セルロースを得る。この再生セルロースは微細繊維状セルロースが銅エチレンジアミン溶液中で溶解し、水中で再生されたものである。得られた再生セルロース はろ別し、十分に水洗後、乾燥させる。
【0026】
そして、得られた再生セルロースの乾燥重量を測定する。この重量と、この重量を得るために用いた電池用セパレータ塗液用増粘剤の重量とから電池用セパレータ塗液用増粘剤中に含まれる微細繊維状セルロースの含有量を求める。
【0027】
上記のようにして得られた再生セルロースの乾燥物0.14g以上0.16g以下に対し、30mlの0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌してセルロースを再度溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除く。その後キャノンフェンスケ粘度計に調製したろ液10mlを入れ、5分置いた後、25℃における落下時間を測定する。測定した落下時間から、前述の方法に従って固有粘度を求め、重合度に換算する。
【0028】
<微細繊維状セルロース>
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると高粘度が得られる傾向がある。
【0029】
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
【0030】
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
【0031】
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
【0032】
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅(単に、「繊維幅」ということもある。)はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
【0033】
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
【0034】
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
【0035】
微細繊維状セルロースは、置換基を有するものであることが好ましく、置換基はアニオン基であることが好ましい。アニオン基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。すなわち、本発明で用いられる微細繊維状セルロースはリン酸化セルロースであることが好ましい。
【0036】
微細繊維状セルロースは、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するものであることが好ましい。リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO
3H
2で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
【0037】
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
【化1】
【0038】
式(1)中、a、b及びnは自然数である(ただし、a=b×mである)。α
1,α
2,・・・,α
n及びα’のうちa個がO
-であり、残りはR、ORのいずれかである。なお、各α
n及びα’の全てがO
-であっても構わない。Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。
【0039】
飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はn−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、又はt−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、又はアリル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、又は3−ブテニル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、特に限定されない。芳香族基としては、フェニル基、又はナフチル基等が挙げられるが、特に限定されない。
【0040】
また、Rにおける誘導基としては、各種炭化水素基の主鎖又は側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、又はアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加又は置換した状態の官能基が挙げられるが、特に限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数は特に限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リン酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細セルロース繊維の収率を高めることもできる。
【0041】
β
b+は有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、又は芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、若しくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、若しくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、又は水素イオン等が挙げられるが、特に限定されない。これらは1種又は2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、β
b+を含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、又はカリウムのイオンが好ましいが、特に限定されない。
【0042】
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
【0043】
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
【0044】
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
【0045】
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0046】
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
【0047】
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
【0048】
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量を100質量%以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。一方、セルロース繊維に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
【0049】
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
【0050】
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
【0052】
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
【0053】
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
【0054】
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
【0055】
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
【0056】
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。本発明においては、例えば、リン酸基導入工程を2回行うことも好ましい態様である。
【0057】
リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、リン酸基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、電池用セパレータ塗液用増粘剤として良好な特性を発揮することができる。なお、本明細書において、微細繊維状セルロースが有するリン酸基の含有量(リン酸基の導入量)は、後述するように微細繊維状セルロースが有するリン酸基の強酸性基量と等しい。
【0058】
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
【0059】
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、
図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。すなわち、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、
図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
【0060】
<カルボキシル基導入工程>
微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、カルボキシル基導入工程を経ることで微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。カルボキシル基導入工程では、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって繊維原料を処理することで、微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。
【0061】
カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
【0062】
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
【0063】
カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
【0064】
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
【0065】
カルボキシル基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合、その処理をpHが6以上8以下の条件で行うことも好ましい。このような処理工程は中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、例えば、リン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、パルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等のニトロキシラジカル、犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシル基まで酸化することが出来る。
【0066】
カルボキシル基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、カルボキシル基の導入量は、3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。
【0067】
カルボキシル基の導入量は伝導度滴定法で測定することができる。伝導度滴定法による測定の際には、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーに、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定する。
【0068】
伝導度滴定法では、アルカリを加えていくと、
図2に示した曲線を与える。この曲線は、電気伝導度が減少した後、伝導度の増分(傾き)がほぼ一定となるまでを第1領域、その後、伝導度の増分(傾き)が増加する第2領域に区分される。なお、第1領域、第2領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。
図2で示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除して、カルボキシル基の導入量(mmol/g)とする。
【0069】
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程やカルボキシル基導入工程といったイオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
【0070】
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
【0071】
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、イオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みイオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
【0072】
<酸処理>
所定の平均重合度を有する微細繊維状セルロースを製造工程においては、酸処理工程をさらに設けてもよい。酸処理工程は、イオン性置換基導入工程の後に設けられることが好ましく、酸処理工程の後にアルカリ処理工程が設けられることが好ましい。このような酸処理工程では、イオン性置換基を有するセルロースの酸加水分解処理を行ってもよい。本発明においては、微細繊維状セルロースの原料や製造条件をそれぞれ適切に選択することにより微細繊維状セルロースの平均重合度を好ましい範囲内に制御することができ、酸処理工程を設けることで微細繊維状セルロースの平均重合度を好ましい範囲内に制御してもよい。
【0073】
酸処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、酸を含有する酸性液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。また、使用する酸性液のpHは特に限定されないが、0から4が好ましく、より好ましくは1から3である。酸性液に含まれる酸としては、例えば、無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。中でも、酸としては塩酸を用いることが好ましい。
【0074】
酸処理工程における酸溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。
酸処理工程における酸溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。
酸処理における酸溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
<解繊処理>
イオン性置換基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0076】
解繊処理の際には、繊維原料を、水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
【0077】
本発明では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
【0078】
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。また、処理条件も好ましい重合度が得られる条件であれば特に限定されない。
【0079】
本発明においては、微細繊維状セルロースの原料や製造条件をそれぞれ適切に選択することにより微細繊維状セルロースの平均重合度を好ましい範囲内に制御することが可能となる。このような製造条件としては、特に限定されないが、たとえば解繊処理工程における圧力条件や処理回数を調整したり、製造装置の種類を選択することなどが挙げられる。例えば、湿式微粒化装置を用いて200MPaの圧力にて解繊処理を行う場合、処理回数を8回以上とすることが好ましく、9回以上とすることがより好ましく、10回以上とすることがさらに好ましい。また、処理回数の上限値は特に限定されるものではないが例えば、30回とすることができる。
【0080】
(電池用セパレータ塗液)
本発明は、繊維幅が1000nm以下であり、平均重合度が400未満の微細繊維状セルロースと、微粒子と、分散媒と、を含む電池用セパレータ塗液に関するものでもある。すなわち、電池用セパレータ塗液は電池用セパレータ塗液用増粘剤を含むものであり、上述した微細繊維状セルロースを含み、リン酸化セルロースを含むことが好ましい。
【0081】
微細繊維状セルロースの平均重合度は、400未満であればよく、395以下であることが好ましく、380以下であることがより好ましい。また、微細繊維状セルロースの平均重合度は100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。
【0082】
なお、電池用セパレータ塗液中の微細繊維状セルロースの平均重合度を算出する際には、以下の手順にて微細繊維状セルロースを電池用セパレータ塗液から単離した後に、測定を行う。
この場合は、まず、電池用セパレータ塗液を希釈し、乾燥させた後に、透過型電子顕微鏡で観察し、微細繊維状セルロースの存在を確認する。次いで、固体NMRを用いて、セルロースのI型結晶を検出する。
【0083】
電池用セパレータ塗液中に、微細繊維状セルロースの存在が確認された場合、以下の手順に従って微細繊維状セルロースを単離する。
まず、50ml容量のアルミカップに電池用セパレータ塗液20±5gを量り取る。同様にして、電池用セパレータ塗液を量り取ったアルミカップを複数個用意する。送風定温乾燥機にて105℃で16時間加熱し電池用セパレータ塗液を乾燥させる。乾燥させた電池用セパレータ塗液1gに対し、100mlの割合となるように0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌して微細繊維状セルロースを溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除いた後、水中に滴下し、再生セルロースを得る。この再生セルロースは微細繊維状セルロースが銅エチレンジアミン溶液中で溶解し、水中で再生されたものである。得られた再生セルロースはろ別し、十分に水洗後、乾燥させる。
【0084】
そして、得られた再生セルロースの乾燥重量を測定する。この重量と、この重量を得るために用いた電池用セパレータ塗液の重量とから電池用セパレータ塗液に含まれる微細繊維状セルロースの含有量を求める。
【0085】
上記のようにして得られた再生セルロースの乾燥物0.14g以上0.16g以下に対し、30mlの0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌してセルロースを再度溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除く。その後キャノンフェンスケ粘度計に調製したろ液10mlを入れ、5分置いた後、25℃における落下時間を測定する。測定した落下時間から、前述の方法に従って固有粘度を求め、重合度に換算する。
【0086】
微細繊維状セルロースの含有量は、電池用セパレータ塗液の分散媒100質量部に対して、0.1質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。微細繊維状セルロースの含有量は、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。また、微細繊維状セルロースの含有量は、電池用セパレータ塗液の分散媒100質量部に対して、1.3質量部以下であることがより好ましく、1.1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0087】
本発明においては、電池用セパレータ塗液における微細繊維状セルロースの含有量を上記範囲内とした場合であっても、微粒子の分散性と塗工のしやすさが両立している。本発明の電池用セパレータ塗液から形成された塗工層は、塗工ムラの発生が抑えられている。また、本発明では、電池用セパレータ塗液における微細繊維状セルロースの含有量を上記範囲内とすることができるため、電池用セパレータ基材の微多孔が塞がることを抑制することもできる。
【0088】
電池用セパレータ塗液の粘度は、100mPa・s以上であることが好ましく、300mPa・s以上であることがより好ましく、400mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、電池用セパレータ塗液の粘度は、40000mPa・s以下であることが好ましく、20000mPa・s以下であることがより好ましく、10000mPa・s以下であることがさらに好ましい。電池用セパレータ塗液の粘度は、電池用セパレータ塗液中に含まれる微細繊維状セルロールの濃度が0.4質量%となるように調製し、B型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVT)を用いて回転数3rpm、測定時間3分、液温23℃にて測定する。
【0089】
<微粒子>
電池用セパレータ塗液に含まれる微粒子としては、有機微粒子及び無機微粒子を挙げることができる。中でも微粒子は、無機微粒子であることが好ましい。
【0090】
有機微粒子を構成する樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル等のビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物及びブタジエン等のビニル単量体を1種又は2種以上組み合わせて重合した樹脂が挙げられる。
【0091】
無機微粒子としては、例えば、酸化鉄、Al
2O
3(アルミナ)、SiO
2(シリカ)、TiO
2、BaTiO
3、ZrO
2、Li
3PO
4(リン酸三リチウム)、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、CaO、ZnO、Y
2O
3、Pb(Zr,Ti)O
3(PZT)、Pb
1-xLa
xZr
1-yTi
yO
3(PLZT)、Pb(Mg
1/3Nb
2/3)O
3−PbTiO
3(PMN−PT)、HfO
2、Li
3PO
4、Li
xTi
y(PO
4)
3(0<x<2、0<y<3)、Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)
xO
y(0<x<4、0<y<13)、Li
xLa
yTiO
3(0<x<2、0<y<3)、AlN(窒化アルミニウム)、Si
3N
4(窒化ケイ素)、CaF
2(フッ化カルシウム)、BaF
2(フッ化バリウム)、BaSO
4(硫酸バリウム)、SiC、Li
xGe
yP
zS
w(0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li
xN
y(0<x<4、0<y<2)、SiS
2(Li
xSi
yS
z、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P
2S
5(Li
xP
yS
z)(0<x<3、0<y<3、0<z<7)等が挙げられる。また、シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト(AlOOH)、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイトなどの鉱物資源由来物質またはそれらの人造物;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;なども用いることができる。中でも、アルミナ、シリカ及びベーマイトから選択される少なくとも1種の微粒子であることが好ましく、シリカまたはベーマイトであることが特に好ましい。
また、上記微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、上記絶縁性微粒子を構成する材料など)で表面被覆することで、電気絶縁性を持たせた微粒子とすることもできる。
【0092】
微粒子の形態としては、球状、多面体形状、板状などいずれの形態であってもよい。また、微粒子の1次平均粒子径は0.01μm以上であることが好ましく、5μm以下であることが好ましい。なお、微粒子が球状ではない場合は、同体積の球状であると仮定して1次平均粒子径を算出した値が上記範囲内であることが好ましい。
【0093】
微粒子の含有量は、電池用セパレータ塗液の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、微粒子の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。微粒子の含有量を上記範囲内とすることにより、後述する電池用セパレータ基材の耐熱性をより効果的に高めることができる。
なお、微粒子の含有量は例えば10質量%以下であると、微粒子同士の衝突確率が減り、より沈降し易い傾向が見られる。しかし、本発明の電池用セパレータ塗液は、所定条件の微細繊維状セルロースを含有するため、微粒子の含有量が少ない場合であっても、微粒子の沈降を抑制することができる。
【0094】
<分散媒>
電池用セパレータ塗液は分散媒を含む。分散媒としては、水や有機溶媒、及びこれらの混合物が挙げられる。中でも分散媒は水であることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。なお、本明細書において分散媒とは、電池用セパレータ塗液中において、塗工層形成時の乾燥の際に残る固形分を除いた残りの部分を指す。
【0095】
分散媒の含有量は、電池用セパレータ塗液の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散媒の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0096】
<他の成分>
電池用セパレータ塗液は、上記成分のほかに、バインダー成分をさらに含んでもよい。上記バインダー成分の具体例としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体などの(メタ)アクリル酸共重合体;フッ素系ゴム;スチレン−ブタジエンゴム(SBR);ポリビニルアルコール(PVA);ポリビニルブチラール(PVB);ポリビニルピロリドン(PVP);ポリN−ビニルアセトアミド;架橋アクリル樹脂;ポリウレタン;エポキシ樹脂;などが挙げられる。これらのバインダー成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。電池用セパレータ塗液がバインダー成分をさらに含むことにより、後述する電池用セパレータ基材との接着性を高めることができる。上記バインダー成分の含有量は電池用セパレータ塗液中の微粒子の全質量に対して15質量%以下であることが好ましい。
【0097】
また、電池用セパレータ塗液に含まれる他の成分としては、例えば親水性高分子や有機イオン等が挙げられる。親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体などを挙げることができる。有機イオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオンやテトラアルキルホスホニウムイオンを挙げることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルエチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリブチルベンジルアンモニウムイオンが挙げられる。テトラアルキルホスホニウムイオンとしては、例えばテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、およびラウリルトリメチルホスホニウムイオンが挙げられる。また、テトラプロピルオニウムイオン、テトラブチルオニウムイオンとして、それぞれテトラn−プロピルオニウムイオン、テトラn−ブチルオニウムイオンなども挙げることができる。親水性高分子や有機イオンの含有量は、電池用セパレータ塗液中の微粒子の全質量に対して20質量%以下であることが好ましい。
【0098】
(電池用セパレータ)
本発明は、基材と、塗工層を有する電池用セパレータに関するものでもある。塗工層は、繊維幅が1000nm以下であり、平均重合度が400未満の繊維状セルロースと、微粒子とを含む。塗工層は、上述した電池用セパレータ塗液から形成された層である。
【0099】
電池用セパレータは、基材の少なくとも一方の面に塗工層を有するものであればよく、基材の両面に塗工層を有するものであってもよいが、基材の片面に塗工層を有するものであることが好ましい。なお、電池用セパレータは塗工層を有するものであるが塗工層を形成する電池用セパレータ塗液の一部は、基材の微多孔の内部に侵入していてもよい。このような状態は、電池用セパレータ塗液の一部が、基材の表層領域に染みこんでいる状態とも言える。
【0100】
電池用セパレータは上述した電池用セパレータ塗液を基材上に塗工することにより形成される。塗工により形成された塗工層は電池用セパレータ塗液用増粘剤を含むものであり、上述した微細繊維状セルロースを含む。微細繊維状セルロースは、リン酸化セルロースであることが好ましい。
【0101】
微細繊維状セルロースの平均重合度は、400未満であればよく、395以下であることが好ましく、380以下であることがより好ましい。また、微細繊維状セルロースの平均重合度は100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。
【0102】
なお、電池用セパレータ中の微細繊維状セルロースの平均重合度を算出する際には、以下の手順にて微細繊維状セルロースを電池用セパレータから単離した後に、測定を行う。
この場合は、まず、電池用セパレータの表面を透過型電子顕微鏡で観察し、微細繊維状セルロースの存在を確認する。次いで、固体NMRを用いて、セルロースのI型結晶を検出する。
【0103】
電池用セパレータ表面に、微細繊維状セルロースの存在が確認された場合、以下の手順に従って微細繊維状セルロースを単離する。
まず、電池用セパレータを1cm角程度に断裁後、カッターミルを用いて1mm角程度にまで粉砕する。次いで、電池用セパレータの粉砕物1gに対し、100mlの割合となるように0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌して微細繊維状セルロースを溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除いた後、水中に滴下し、再生セルロースを得る。この再生セルロースは微細繊維状セルロースが銅エチレンジアミン溶液中で溶解し、水中で再生されたものである。得られた再生セルロースはろ別し、十分に水洗後、乾燥させる。
【0104】
そして、得られた再生セルロースの乾燥重量を測定する。この重量と、この重量を得るために用いた電池用セパレータの重量とから電池用セパレータに含まれる微細繊維状セルロースの含有量を求める。
【0105】
上記のようにして得られた再生セルロースの乾燥物0.14g以上0.16g以下に対し、30mlの0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌してセルロースを再度溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除く。その後キャノンフェンスケ粘度計に調製したろ液10mlを入れ、5分置いた後、25℃における落下時間を測定する。測定した落下時間から、前述の方法に従って固有粘度を求め、重合度に換算する。
【0106】
塗工層は微粒子を含む。微粒子としては、上述した微粒子を列挙することができ、無機微粒子であることが好ましい。好ましい具体例は上述した通りである。
【0107】
塗工層の坪量は、特に限定されるものではないが、本発明においては、塗工層の坪量が小さい場合であっても、塗工ムラのない塗工層を形成できる点に特徴がある。例えば、本発明においては、塗工層の坪量を4.5g/m
2以下とすることもでき、4.0g/m
2以下とすることもでき、3.0g/m
2以下とすることもできる。本発明においては、塗工層の坪量を上記範囲とした場合であっても、表面性状が良好であり、塗工ムラのない塗工層が形成される。
【0108】
塗工層の厚みは、基材側の孔径、および厚さによって異なってくるが、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。また、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。また、塗工層の厚みは4.5μm以下とすることもでき、4.0μm以下とすることもでき、3.0μm以下とすることもできる。本発明においては、塗工層を薄膜化することができ、薄膜化した場合であっても塗工ムラのない塗工層が得られる。
【0109】
<基材>
電池用セパレータは基材を含む。基材は、電解液に対し安定なものであって、多孔性基材であることが好ましい。
【0110】
基材の具体的な構成材料としては、例えば、セルロース、セルロース変成体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリオレフィン(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料(無機酸化物)が挙げられる。
中でも基材の構成材料は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン又はポリエチレンであることがより好ましい。基材はポリプロピレン又はポリエチレンからなる不織布もしくはフィルムであることが特に好ましい。
【0111】
基材がポリエチレンからなる不織布である場合は、ポリエチレン繊維を湿式抄紙法にて抄紙し不織布を形成することが好ましい。不織布においては、ポリエチレン繊維はランダムに配向していることが好ましい。
【0112】
基材がポリエチレンからなるフィルムである場合は、フィルムは延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0113】
電池用セパレータ基材は接着剤を有してもよい。電池用セパレータ基材が接着剤を有する場合は、接着剤としてアクリル系樹脂を含有することが好ましい。アクリル系樹脂としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂、プロピレン−(メタ)アクリル酸系樹脂などを挙げることができる。接着剤は基材表面に噴霧されることが好ましく、基材の表層領域に存在することが好ましい。このような接着剤は、基材と塗工層の接着性を高める働きをする。
また、必要に応じて、他の樹脂を併用することもできる。併用可能な樹脂としては、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
【0114】
基材の坪量は、10g/m
2以上であることが好ましく、20g/m
2以上であることがより好ましい。また、基材の坪量は、100g/m
2以下であることが好ましく、80g/m
2以下であることがより好ましい。
【0115】
基材の密度は、0.1g/cm
3以上であることが好ましく、0.2g/cm
3以上であることがより好ましく、0.3g/cm
3以上であることがさらに好ましい。また、基材の密度は、3.0g/cm
3以下であることが好ましく、2.0g/cm
3以下であることがより好ましく、1.0g/cm
3以下であることがさらに好ましい。
【0116】
<電池用セパレータの製造方法>
電池用セパレータの製造工程は、基材の少なくとも一方の面に電池用セパレータ塗液を塗布する工程と、電池用セパレータ塗液が塗布された基材を乾燥する工程とを含むことが好ましい。電池用セパレータ塗液を基材表面に塗布する際には、従来から知られている塗工機を用いることができる。塗工機としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、スクイズロールコーター、カーテンコーター、ブレードコーター、ナイフコーターなどを挙げることができる。なお、電池用セパレータ塗液は基材の片面に塗布されることが好ましい。
【0117】
電池用セパレータ塗液の塗布量(塗工層坪量)は、1g/m
2以上であることが好ましく、1.5g/m
2以上であることがより好ましい。また、電池用セパレータ塗液の塗布量は50g/m
2以下であることが好ましく、20g/m
2以下であることがより好ましい。また、電池用セパレータ塗液の塗布量は4.5g/m
2以下であってもよく、4.0g/m
2以下であってもよく、3.0g/m
2以下であってもよい。
【0118】
(用途)
本発明の電池用セパレータは、リチウム二次電池等に代表される電気化学素子に好ましく用いられる。電気化学素子としては、有機電解液を用いるリチウム電池(一次電池および二次電池)の他、スーパーキャパシタなどの用途にも用いることができる。
【0119】
リチウム二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)や金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ形とすることもできる。
【0120】
リチウムイオン電池を構成している部材は、正極電極、負極電極、セパレータ、電解液に大きく分けることができる。正極電極及び負極電極は各々、電子を送り出し受け取る酸化/還元反応を行う活物質を含有する。正極電極と負極電極とは、電池用セパレータを介して積層した積層構造の電極群や、更にこれを巻回した巻回構造の電極群の形態で用いることができる。
【0121】
正極としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている正極であれば特に制限はない。正極は、Li
+イオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する。
負極としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている負極であれば特に制限はない。負極はLi
+イオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する。
【0122】
正極と負極とは、本発明の電池用セパレータを介して積層した積層構造の電極群や、更にこれを巻回した巻回構造の電極群の形態で用いることができる。
【0123】
電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLi
+イオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に制限はない。有機溶媒としては、リチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。
【0124】
リチウムイオン電池は、携帯電話、ノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器、電気自動車、ハイブリッド式自動車、電動バイク、電動アシスト自転車、電動工具、シェーバーなどの各種機器の電源用途などに加えて、従来から知られている各種用途に用いられる。
【実施例】
【0125】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0126】
<微細繊維状セルロース1(実施例用)の製造>
乾燥質量100質量部の針葉樹クラフトパルプに、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸させ、リン酸二水素アンモニウムが49質量部、尿素が130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
【0127】
得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12以上13以下のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を添加した。撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
【0128】
得られた脱水シートに対し、先と同様にして、リン酸基を導入する工程、濾過脱水する工程を繰り返し、二回リン酸化セルロースの脱水シート1を得た。得られた脱水シート1の赤外線吸収スペクトルをFT−IRで測定した。その結果、1230cm
-1以上1290cm
-1以下にリン酸基に基づく吸収が観察され、リン酸基の付加が確認された。
【0129】
得られた脱水シート1(二回リン酸化セルロース)にイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で200MPaの圧力にて15回処理し、微細繊維状セルロース1を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロース1はセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
【0130】
<微細繊維状セルロース2(実施例用)の製造>
湿式微粒化装置における200MPaの圧力処理の回数を12回とした以外は、微細繊維状セルロース1の製造と同様にして、微細繊維状セルロース2を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロース2はセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
【0131】
<微細繊維状セルロース3(実施例用)の製造>
湿式微粒化装置における200MPaの圧力処理の回数を10回とした以外は、微細繊維状セルロース1の製造と同様にして、微細繊維状セルロース3を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロース3はセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
【0132】
<微細繊維状セルロースA(比較例用)の製造>
湿式微粒化装置における圧力処理を、245MPaで6回とした以外は、微細繊維状セルロース1の製造と同様にして、微細繊維状セルロースAを得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースAはセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
【0133】
<微細繊維状セルロースB(比較例用)の製造>
湿式微粒化装置における圧力処理を、245MPaで3回とした以外は、微細繊維状セルロース1の製造と同様にして、微細繊維状セルロースBを得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースBはセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
【0134】
<微細繊維状セルロースC(比較例用)の製造>
<中性TEMPO酸化処理>(以下、Mはモル濃度mol/Lを表す)
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプと、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)1.6質量部と、80%亜塩素酸ナトリウム113質量部とを、9000質量部の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に懸濁した(液A)。
2Mの次亜塩素酸ナトリウム50mLに、0.1Mになるまで0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)を加えた(液B)。
液Aに液Bを注いで、直ちに密閉した後、マグネチックスターラーを用いて500rpmで攪拌しながら、温度60℃で72時間反応させ、パルプスラリーを得た。
【0135】
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シート2を得る工程を2回繰り返した。得られた脱水シート2をFT−IRで赤外線吸収スペクトルを測定した。その結果、1730cm
-1にカルボキシル基に基づく吸収が観察され、カルボキシル基の付加が確認された。この脱水シート2(TEMPO酸化セルロース)を用いて、微細繊維状セルロースを調製した。
【0136】
得られた脱水シート2(TEMPO酸化セルロース)にイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で245MPaの圧力にて3回処理し、微細繊維状セルロースCを得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースCはセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
【0137】
(微細繊維状セルロースの物性)
<繊維幅の測定>
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
湿式微粒化装置にて処理をした微細繊維状セルロースの上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL−2000EX)により観察した。微細繊維状セルロース1〜3及び微細繊維状セルロースA〜Cは、繊維幅4nm程度の微細繊維状セルロースになっていることを確認した。
【0138】
<置換基量の測定>
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基もしくはカルボン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基もしくはカルボン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、
図1(リン酸基)及び
図2(カルボキシル基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。算出した結果は以下の表1に示した。
【0139】
<重合度の測定>
微細繊維状セルロースを構成するセルロース分子の平均重合度の評価は下記の論文を参考に行なった。
TAPPI International Standard; ISO/FDIS 5351, 2009.
Smith, D. K.; Bampton, R. F.; Alexander, W. J. Ind. Eng. Chem.,Process Des. Dev. 1963, 2, 57-62.
【0140】
対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が2±0.3質量%となるように希釈した懸濁液30gを、遠沈管に分取して冷凍庫に一晩静置し、凍結させた。さらに凍結乾燥機で5日間以上乾燥させた後、105℃に設定した定温乾燥機で3時間以上4時間以下加熱し、絶乾状態の微細繊維状セルロースを得た。
リファレンスを測定するために、50ml容量の空のスクリュー管に純水15mlと1mol/Lの銅エチレンジアミン15mlを加え、0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液を調製した。キャノンフェンスケ粘度計に上記の0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液10mlを入れ、5分間置いた後、25℃における落下時間を測定して溶媒落下時間とした。
【0141】
次に、微細繊維状セルロースの粘度を測定するため、絶乾状態の微細繊維状セルロース0.14g以上0.16g以下を空の50ml容量のスクリュー管に量り取り、純水15mlを添加した。さらに1mol/Lの銅エチレンジアミン15mlを加え、自転公転式スーパーミキサーで1000rpm10分撹拌し、0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液とした。リファレンスの測定と同様に、キャノンフェンスケ粘度計に調製した0.5mol/Lの銅エチレンジアミン溶液10mlを入れ、5分間置いた後、25℃における落下時間を測定した。落下時間の測定は三回行い、その平均値を微細繊維状セルロース溶液の落下時間とした。
【0142】
測定に用いた絶乾状態の微細繊維状セルロースの質量、溶媒落下時間、及び微細繊維状セルロース溶液の落下時間から下式を用いて重合度を算出した。なお、下記の平均重合度は三回測定した値の平均値である。
測定に用いた絶乾状態の微細繊維状セルロース質量:a(g)(但し、aは0.14以上0.16以下)
溶液のセルロース濃度:c=a/30(g/mL)
溶媒落下時間:t
0(sec)
微細繊維状セルロース溶液の落下時間:t(sec)
溶液の相対粘度:η
rel=t/t
0
溶液の比粘度:η
sp=η
rel―1
固有粘度:[η]=η
sp/c(1+0.28η
sp)
重合度:DP=[η]/0.57
【0143】
【表1】
【0144】
<実施例1>
シリカ微粒子(富士シリシア化学(株)製、サイリシア310、粒子径:1.4μm)100gに分散媒として水51gを加え、T.K.ホモディスパー(特殊機化工業製)で3000rpmにて15分間撹拌した。その後、固形分濃度が2質量%の微細繊維状セルロース1の懸濁液50g(微細繊維状セルロース1の固形分1gと水49gの懸濁液)を加え、ディスパーザーでさらに1時間撹拌した。このようにして、シリカ微粒子50質量%、分散媒100質量部(上記分散媒51g+水49g)に対する微細繊維状セルロースの固形分濃度が1質量部の電池用セパレータ塗液を得た。
【0145】
<実施例2>
微細繊維状セルロース1を微細繊維状セルロース2に代えた以外は実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
【0146】
<実施例3>
微細繊維状セルロース1を微細繊維状セルロース3に代えた以外は実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
【0147】
<比較例1>
微細繊維状セルロース1を微細繊維状セルロースAに代えた以外は実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
【0148】
<比較例2>
微細繊維状セルロース1を微細繊維状セルロースBに代えた以外は実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
【0149】
<比較例3>
微細繊維状セルロース1を微細繊維状セルロースCに代えた以外は実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
【0150】
<参考例1>
比較例1と同様に電池用セパレータ塗液を得た。ただし、参考例1では、後述する(電池用セパレータの作製)において、乾燥後の塗工層坪量が5.0g/m
2となるようにし、塗工評価を行った。
【0151】
<参考例2>
比較例3と同様に電池用セパレータ塗液を得た。ただし、参考例2では、後述する(電池用セパレータの作製)における、乾燥後の塗工層坪量が5.0g/m
2となるようにし、塗工評価を行った。
【0152】
(基材の作製)
ポリエチレン繊維(繊維長:5mm、繊維強度:28cN/dtex、弾性率:900cN/dtex)を0.2質量%となるように水に分散し、湿式抄紙法にて、ランダムな配向のウェブを形成した。このウェブに接着剤としてエチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂(東邦化学製、ハイテックS−3148、エチレン/アクリル酸=80質量部/20質量部、樹脂末端にウレタン基を有する)を、対ポリエチレン繊維比で10質量%となるように噴霧した後、110℃に設定した熱風乾燥機にて乾燥することによって30g/m
2の不織布を得た。この不織布に対しカレンダー処理を行い密度が0.64g/cm
3の不織布を得た。この不織布を、電池用セパレータ塗液を塗工するための不織布基材とした。
【0153】
(電池用セパレータの作製)
上記不織布基材に乾燥後の塗工層坪量が2.5g/m
2となるよう、電池用セパレータ塗液を塗工して電池用セパレータを作製した。なお、参考例1及び2においては、乾燥後の塗工層坪量が5.0g/m
2となるように電池用セパレータ塗液を塗工して電池用セパレータを作製した。
【0154】
(電池用セパレータの評価)
<塗工性>
不織布基材に乾燥後の塗工層坪量が2.5g/m
2(実施例及び比較例)もしくは5.0g/m
2(参考例)となるよう、電池用セパレータ塗液を塗工し、塗工性を以下の基準で評価した。
○:塗工後の外観観察で全面にムラがない。
△:塗工後の外観観察で一部にムラ部分がある。
×:塗工後の外観観察で全面にムラがみられる。もしくは塗工自体が出来ない。
【0155】
【表2】
【0156】
表2からわかるように、実施例で得られた電池用セパレータ塗液は、塗工層を薄くした場合であっても塗工性が良好であった。一方、比較例で得られた電池用セパレータ塗液においては、塗工層を薄くした場合の塗工性が悪かった。