(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390889
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】エキスパンション手摺
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20180910BHJP
E04B 1/68 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
E04F11/18
E04B1/68 100Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-44509(P2014-44509)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-168974(P2015-168974A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100079636
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】川口 隆尚
(72)【発明者】
【氏名】武内 麻美
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−050557(JP,A)
【文献】
特開2003−247278(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3166385(JP,U)
【文献】
特開2004−011385(JP,A)
【文献】
特開2012−144871(JP,A)
【文献】
特開2002−322887(JP,A)
【文献】
実開昭52−151958(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0184626(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/62−1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に配置され、それぞれが一垂直軸線の回りに回動可能に枢支される手摺ユニットと、両手摺ユニットにスライド可能に連結される中間ユニットからなり、前記手摺ユニットと中間ユニットはいずれも上下の横杆と、該上下の横杆を連結する縦杆よりなって縦格子状をなし、建築物同士を連絡する通路或いは建築物と、その外部との間を連絡する通路の両側に設けられるエキスパンション手摺であって、前記手摺ユニットと中間ユニットのうち、いずれか一方のユニットは、該ユニットを構成する上下の横杆が該横杆の長手方向に開口を備えたレール状をなす一方、他方のユニットを構成する上下の横杆は、前記一方のユニットのレール状をなす横杆にそれぞれスライド可能に内挿され、また前記他方のユニットの横杆を連結する縦杆は、前記一方のユニットの横杆を連結する縦杆とは適宜の間隔を存して該縦杆の前又は後側に配置され、かつ前記一方のユニットのレール状をなす横杆の前記開口を通して前記他方のユニットの横杆に連結されることを特徴とするエキスパンション手摺において、手摺ユニットの横杆と中間ユニットの横杆がスライドする方向に一定以上の負荷がかかると破断するゴム又は樹脂よりなるロックピンで連結されることを特徴とするエキスパンション手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物同士を繋ぐ渡り廊下等の通路、或いは建築物と、その外部との間を連絡する通路の両側に設けられるエキスパンション手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接する建築物の躯体が通路で繋がれている場合、地震等の揺れにより建築物の躯体間の間隔が変化することを考慮して、通路の両側に設置される手摺にはエキスパンション手摺が用いられる。こうしたエキスパンション手摺は、免震建築物と、外部の地面側とを連絡する通路の両側の手摺にも用いられている。
【0003】
この種のエキスパンション手摺として、通路の左右に配置される縦杆の上下に横杆を連結してなる枠内に一定間隔で立子を立設した縦格子よりなる手摺ユニットを一対、一側部を重ね合わせてスライド可能に連結し、各手摺ユニットをそれぞれ隣接する建築物の躯体にヒンジにより回動可能に連結して隣接する躯体が変動してもヒンジによって手摺ユニットが回動しつつ、互いにずれ合って上記変動に追従できるようにしたもの(特許文献1)、目地両側の建築物を連絡する渡り廊下の左右にそれぞれ支持杆を縦設し、各支持杆にそれぞれ伸縮管を側方に突設した回動管を差し込んで回動可能に嵌挿し、回動管を複数、縦向きに連設すると共に、目地両側の支持杆に嵌挿される伸縮管同士を、該伸縮管に連繋杆の両端部をスライド可能に差し込んで連結し、伸縮管の回動及び連繋杆のスライドにより地震時における建築物の変位に対し渡り廊下を対応させるようにしたもの(特許文献2)などが知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3708420号
【特許文献2】特許第3929558号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に開示されているものでは、手摺ユニットが一対、左右から張り出して一側部が重なり合うようにしているが、躯体から手摺ユニットが張り出す長さが長いため、強度上の問題から横杆のサイズを大きくして剛性を上げる必要があり、重量が嵩む。
【0006】
この点、特許文献2に開示されるものでは、左右の伸縮管に連繋杆を差し込んで連結しており、伸縮管は重なり合わず長くないため、軽量となるが、連繋杆は、その長手方向に一定範囲内ではあるが可動であるため、触ったとき連繋杆が不用意に動いて手指を挟む危険性がある。また上下の伸縮管や連繋杆は縦杆で互いに連結されておらず、縦杆で連結されて縦格子状をなすものに比べ、強度上の問題があるうえ、地面に近い場合、子供等が伸縮管や連繋杆に足を掛けてよじ登り易く、安全性に欠けがちで、壊れたり変形し易い。上下の伸縮管や連繋杆を縦格子で連結すれば、こうした問題はある程度解消できるが、この場合、地震等の揺れにより連繋杆が伸縮管に対しスライドしようとすると、伸縮管の縦杆と連繋杆の縦杆が互いに干渉し合うようになり、スライドできなくなる。
【0007】
本発明は、建築物同士を連絡する通路、或いは建築物と、その外部との間を連絡する通路の両側に設けられるエキスパンション手摺において、一垂直軸線の回りに回動可能に枢支される手摺ユニットと、左右の手摺ユニットにスライド可能に連結される中間ユニットからなり、手摺ユニットと中間ユニットにはそれぞれ縦杆を設けて縦格子状をなすように構成することに支障がないようにする
と共に、前記中間ユニットを常時は安全上、固定状態にして不用意に動かないようにし、地震等の揺れによって一定以上の負荷がかかったときには、中間ユニットが支障なくスライドできるように構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、左右に配置され、それぞれが一垂直軸線の回りに回動可能に枢支される手摺ユニットと、両手摺ユニットにスライド可能に連結される中間ユニットからなり、
前記手摺ユニットと中間ユニットはいずれも上下の横杆と、該上下の横杆を連結する縦杆よりなって縦格子状をなし、建築物同士を連絡する通路或いは建築物と、その外部との間を連絡する通路の両側に設けられるエキスパンション手摺であって、前記手摺ユニットと中間ユニットのうち、いずれか一方のユニットは、該ユニットを構成する上下の横杆が該横杆の長手方向に開口を備えたレール状をなす一方、他方のユニットを構成する上下の横杆は、前記一方のユニットのレール状をなす横杆にそれぞれスライド可能に内挿され、また前記他方のユニットの横杆を連結する縦杆は、前記一方のユニットの横杆を連結する縦杆とは適宜の間隔を存して該縦杆の前又は後側に配置され、かつ前記一方のユニットのレール状をなす横杆の前記開口を通して前記他方のユニットの横杆に連結されることを特徴とするエキスパンション手摺
において、手摺ユニットの横杆と中間ユニットの横杆がスライドする方向に一定以上の負荷がかかると破断するゴム又は樹脂よりなるロックピンで連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、手摺ユニットと中間ユニットはいずれも縦杆を備えた縦格子状をなすものであるが、縦格子状に構成しても、手摺ユニットの縦杆と中間ユニットの縦杆は前後に適宜の間隔を存して配置され、地震等の揺れによって中間ユニットがスライドしても互いに干渉しないようにできること、手摺ユニットと中間ユニットが上下の横杆と、これら両横杆を連結する縦杆とで縦格子状に構成されるため、縦杆を備えないものに比べ、強度を有するうえ、横杆が中間部になく上下にあるだけでは、子供等が足を掛けてよじ登りにくいこと、
手摺ユニットと中間ユニットはロックピンで常時固定状態で連結され、不用意に動いて手を挟む危険性を解消することができること等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るエキスパンション手摺の正面図。
【
図3】ストッパーを取付けた手摺ユニット端部の断面図。
【
図4】ロックピンを取付けた中間ユニットと手摺ユニットの断面図。
【
図8】縦杆を固着した上側の横杆の別の実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のエキスパンション手摺について図面により説明する。
図1は、隣接する建築物同士を連絡する渡り廊下等の通路の両側に配置されるエキスパンション手摺うち、通路片側のエキスパンション手摺1の全体構成を示すもので、左右の建築物の躯体2にヒンジ3によって一垂直軸線の回りに回動可能に枢支される手摺ユニット4と、左右の手摺ユニット4にスライド可能に連結される中間ユニット6からなっており、以下各ユニット4及び6について順に詳述する。
【0014】
手摺ユニット4は、前記躯体2にヒンジ3によって連結される支柱8と、該支柱8の上下に平行をなして横向きに固定される横杆9a、9bと、図の左右方向に適当間隔をなして上下の横杆9a、9bを連結する縦杆10よりなって縦格子状をなしている。そして
図2に示すように、上側の横杆9aは下面を開口した断面略C形の角形のレール状をなす一方、下側の横杆9bは上面を開口した同じく断面略C形の角形のレール状をなし、縦杆10が上下端において横杆9a、9bの開口縁に溶接等により固着されている。
【0015】
中間ユニット6は、平行な上下の横杆12a、12bと、両横杆12a、12bを適当間隔で連結する縦杆13よりなって縦格子状をなしている。そして上側の横杆12aは前記横杆9aにスライド可能に内挿される例えば角パイプ状をなす一方、下側の横杆12bは前記横杆9bにスライド可能に内挿される例えば板状をなし、縦杆13が前記縦杆10と前後方向に一定の間隔を存して上端が前記横杆9aの開口を通して横杆12aに溶接等により固着されると共に、下端が前記横杆9bの開口を通して横杆12bに溶接等により固着され、中間ユニット6が左右方向にすれ違って動くときに縦杆10、13同士が互いに干渉することがないようにしている。
【0016】
前述する縦杆10、13は、例えばパイプ又は中実のロッド(棒)等で構成されるが、この例の中ではパイプが軽量で望ましい。
【0017】
なお図示する例において、断面でみると、横杆12aは全面で横杆9aに密着し、横杆12bはその両端が横杆9bに密着しているが、実際には横杆12aと横杆12bのスライドがスムースに行えるように、横杆9aと横杆12aとの間及び横杆9bと横杆12bとの間には若干の隙間が設けられる。
【0018】
中間ユニット6の板状の横杆6bは、図示していないが、左右両端に下向きに突設される鉤部を備えており、該鉤部が
図3に示すように左右の手摺ユニット4の下側の横杆9b端部に固定されるボルト14とナット15よりなるストッパー16に係合することによって横方向の動きが規制され、ストッパー16を左右の手摺ユニット4に設けることにより横方向の動きが一定範囲内に収まるようにしている。
【0019】
横杆6bにはまた、
図4に示すように、ゴム又は樹脂等の弾性体よりなるボルト状のロックピン17が差込まれ、ロックピン先端は横杆9bの底部に形成される通し穴18に通され、該穴18より突出する端部にはナット19が捩じ込まれ固定されている。なお図示する例において、ロックピン17は端部にナット19が捩じ込まれることにより固定されているが、ナット19による固定を行わないで通し穴18に単に差し込んで取付けるだけでもよい。単に差し込む場合、差込みを容易にするため、通し穴18はロックピン17より若干大きめに形成されるが、大きめに形成すると、その分中間ユニット6は側方に若干動きうるが、その動きはごく僅かであり、中間ユニット6を手摺ユニット4に実質的に固定状態に維持することができる。
【0020】
ナット19による固定を行わないロックピンの例として、
図5、
図6或いは
図7に示すような断面形状のものが挙げられる。
図5は上下に頭部を供えたロックピン21を示すもので、下部の頭部を前記横杆9bに形成される通し穴18に強制嵌合することにより、前述のナット19を用いなくてもロックピン21は上下方向に抜け止めされ、揺れにより抜けることがない。
図6は断面が楔状をなすロックピン23を示すもので、先端は通し穴18に遊嵌されるため通し穴18への差込みが容易となり、差込後、強く押し込むことで通し穴18に密着させて固定することができる。
図7はサイズが上下方向に一定をなすロックピン25を示すもので、このロックピン25は構造が簡単で、製作も容易である。
【0021】
前記実施形態において、手摺ユニット4の横杆9a、9bは角形のレール状をなし、中間ユニット6の横杆12aは角パイプ状、横杆12bは板状をなしているが、横杆9aを
図8に示すように円弧形レール状をなすと共に、中間ユニット6の横杆12aを断面丸パイプ状にし、また下側の横杆12bを
図2に示すような板状に代えて上側の横杆6aと同様、各パイプ状又は丸パイプ状にしてもよい。横杆9a、9b及び12a、12bの断面形状は、一方が開口を備えた他方にスライド可能に嵌挿できるようになっていれば、楕円形、その他任意の形状をなしていてもよい。
【0022】
前記実施形態では、中間ユニット6の横杆12a、12bが手摺ユニット4の横杆9a、9bに内挿されているが、前記実施形態とは逆に手摺ユニット4の横杆を中間ユニット6の横杆に内挿させるような構造にすることも可能である。
【0023】
ロックピン17は左右の手摺ユニット4のうち、一方の手摺ユニット4の横杆9bに設けて手摺ユニット4の一方の側と中間ユニット6を固定状態にするのが望ましいが、左右の手摺ユニット4に設けて中間ユニット6と左右の手摺ユニット4をそれぞれ固定状態とさせるようにしてもよい。地震時には、左右の手摺ユニットが別々の動きをして手摺ユニット同士が近寄ったり離れたりするが、前者のように一方の手摺ユニットと中間ユニットをロックピンで固定し、他方の手摺ユニットと中間ユニットをロックピンで固定しないでおいた場合、地震時の動きが設計可動量の半分以下の僅かな揺れであれば、ロックピンは破損せず、他方の手摺ユニットと中間ユニット間が可動するだけで収まり、地震時の動きが設計可動量の半分以上になったときにロックピンが破損し、全体が可動するようになる。
【0024】
ロックピン17はまた、上側の横杆6aと9aを固定するのに用いることもでき、この場合、下側の横杆6aと9bを連結するロックピン17は省いてもよい。
【0025】
前記実施形態は建築物の躯体を連絡する渡り廊下の通路に設けられるエキスパンション手摺を示すものであるが、これ以外の例えば建築物と外部の地面側とを連絡する通路エキスパンション手摺についても同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0026】
1・・エキスパンション手摺
2・・建築物の躯体
3・・ヒンジ
4・・手摺ユニット
6・・中間ユニット
9a、9b、12a、12b・・横杆
10、13・・縦杆
16・・ストッパー
17、21、23、25・・ロックピン
18・・通し穴