(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グリース封入タイプの転がり軸受装置を使用し続けると、グリース溜り内のグリースに含まれる基油が供給されるのに伴い、グリース溜りと軸受との間の連通路付近において割れ(空隙)が生じる場合がある。この割れが周方向全周に亘って連なると、グリース溜りにグリースが残っているにも拘らず、転がり軸受への基油の供給が途絶えるという不具合が発生する。基油の供給が途絶えた場合、転がり軸受内の基油が完全に消費されると軸受の潤滑性能が失われるため、その後は転がり軸受装置を長期に亘って使用することが困難である。
【0007】
一方、特許文献2には、外輪と隙間形成片との間に微小な隙間が形成された構造によって、グリースの基油を外輪軌道面の付近まで供給できるようにし、軸受の潤滑性能の高寿命化を図る試みが開示されている。しかしながら、この特許文献2に開示の技術では、隙間形成片の形状を精密に設計して微小な隙間を形成する必要があるため、構造が複雑化するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、簡単な構造で、グリースに含まれる基油を長期に亘って軸受に供給し続けることができ、これにより、長寿命化が実現された転がり軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、内輪(5)、外輪(6)、およびこれら内外輪間に配置された複数の転動体(7)を有する転がり軸受(3)と、前記転がり軸受の軸方向一方側に隣接された環状の間座(4,15,16,18;4,15,16,218)であって、周方向に沿う溝状に形成されたグリース溜り(25;225)、および前記グリース溜りと前記転がり軸受内部とを連通させる流通路(24;224)が形成された間座とを含み、
前記間座が、前記グリース溜りを区画する内壁面(23,29,30;223,29,230)
として、前記間座の中心軸線を中心とする環状壁面(23)と、前記流通路側から見て奥側の奥側壁面(30;230)とを有し、前記環状壁面の軸方向全域が、平坦な円筒面で形成されており、前記環状壁面の、前記軸方向の前記転がり軸受側の端部が、前記流通路を区画しており、前記内壁面のうち、少なくとも前記奥側壁面に非粘着性表面処理が施されている、転がり軸受装置(1;201)を提供する。
【0010】
請求項
2に記載の発明は、前記非粘着性表面処理は、前記内壁面に配置されるフッ素系またはケイ素系の非粘着性樹脂層(NV)を含む、請求項
1に記載の転がり軸受装置である。
【0011】
請求項
3に記載の発明は、前記非粘着性表面処理は、前記グリースの基油と非相溶性を有する所定種類の油を前記内壁面に塗布する処理である、請求項
1に記載の転がり軸受装置である。
なお、前記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の構成によれば、内壁面に、非粘着性表面処理が施されているので、グリースにおける内壁面との境界部分には、グリースにおける内壁面との境界部分には、当該内壁面に対する付着力がほとんど発生しないか、または比較的弱い付着力しか発生しない。したがって、内壁面から離反する方向に向かう離反力がグリースに局所的に生じた場合には、グリース全体が壁面から離れるようになる。つまり、非粘着性表面処理が内壁面に施されているために、グリースに作用する付着力がグリース割れを生じさせる程大きくならず、そのため、グリースに割れの発生を防止または抑制できる。これにより、グリースに含まれる基油を転がり軸受に長期に亘って供給し続けることができ、転がり軸受の潤滑性能の高寿命化を図ることができる。しかも、非粘着性表面処理を、内壁面に施すだけでよいので、転がり軸受装置の構造が複雑化することを防止することもできる。
また、流通路側から見て奥側の奥側壁面に、非粘着性表面処理が施されている。奥側壁面にグリースが付着する場合の当該グリースに発生する付着力が、グリース溜り内でのグリースの割れに最も影響を及ぼすので、少なくとも奥側壁面には、非粘着性表面処理を施しておくことが望ましい。
【0013】
請求項
2に記載の構成によれば、フッ素系またはケイ素系の非粘着性樹脂層を内壁面に配置するだけでよいので、転がり軸受装置の構造が複雑化することをより一層防止できる。
【0014】
請求項
3に記載の構成によれば、内壁面に油を塗布するだけでよいので、転がり軸受装置の構造が複雑化することをより一層防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る転がり軸受装置1の断面図である。
転がり軸受装置1は、たとえば工作機械の主軸(転がり軸受が支持される軸)2を支持する装置である。
図1を参照して、転がり軸受装置1は、アンギュラ玉軸受からなる転がり軸受3と、転がり軸受3に隣接して設けられた本発明の間座の一例としてのグリース貯留部材4とを含む。
【0017】
図1に示すように、転がり軸受3は、主軸2に外嵌された内輪5と、工作機械のハウジング(図示しない)に内嵌された外輪6と、内輪5と外輪6との間に介在する転動体7と、複数の転動体7を周方向Yに一定間隔おきに保持する円筒状の保持器8と、内輪5と外輪6と間の環状空間の軸方向(主軸2の軸方向)Xの一方端(
図1の右端であって、グリース貯留部材4とは反対側の端部)を密封するシール9とを含む。
図1では、転がり軸受3としてアンギュラ型の玉軸受を採用しているが、これに代えて深溝玉軸受を採用してもよく、その他、円筒ころ軸受や円すいころ軸受等を用いてもよい。
【0018】
内輪5の外周の軸方向Xの中央部には、転動体7を転走させるための内輪軌道面10が形成されている。また、内輪5の外周の軸方向Xの両端部には、第1シール溝11が形成されている。軸方向Xに関してグリース貯留部材4から遠い側(
図1の右側)の第1シール溝11には、シール9の内周部(シールリップ)が嵌っている。
外輪6の内周の軸方向Xの中央部には、転動体7を転走させるための外輪軌道面12が形成されている。外輪6の内周の軸方向Xの両端部には、第2シール溝13が形成されている。軸方向Xに関してグリース貯留部材4から遠い側(
図1の右側)の第2シール溝13には、シール9の外周部(シールリップ)が嵌っている。
【0019】
軸方向Xに関してグリース貯留部材4に近い側(
図1の左側)の第2シール溝13は、グリースGを溜めるための環状溝14として機能する。環状溝14は、外輪6のグリース貯留部材4に近い側の端部に形成された環状の段部28によって構成されている。段部28は、外輪軌道面12につながっている。環状溝14には予め初期潤滑用のグリースGが充填されている。
【0020】
図1に示すように、グリース貯留部材4は、主軸2に外嵌された内輪間座15と、内輪間座15との間に環状空間17が形成されるように内輪間座15を取り囲んで形成され、工作機械のハウジング(図示しない)に内嵌された外輪間座16と、内輪間座15と外輪間座16との間の環状空間17に配置されたグリース収容環18とを含む。
内輪間座15は、主軸2の外周面に接する円筒状に形成されている。主軸2に外嵌された内輪間座15は、
図1に示すように、軸方向Xの一方側端面(
図1の右端面)が内輪5の端面に接した状態で位置決めされている。この位置決めは、内輪5および内輪間座15が連なった円筒体を、軸方向Xの両側から挟み込む間座K1,K2によってなされている。間座K1,K2は、それぞれ、主軸2に固定されている。
【0021】
外輪間座16は、筒状の周壁19および当該周壁19の軸方向の一端側周縁(
図1の右端縁)から径方向内側に延びる円環板状の底壁20を一体的に有する有底円筒状に形成されている。底壁20の中央開口を介して外輪間座16を内輪間座15に外嵌することによって、外輪間座16と内輪間座15との間には、転がり軸受3に対向する側が開放され、その反対側が底壁20で閉塞された環状空間17が区画されている。なお、以下において「外輪間座16の軸方向」とは、外輪間座16の周壁19の軸方向を指すものとし、この実施形態では、主軸2の軸方向Xに一致する。
【0022】
また、外輪間座16は、
図1に示すように、軸方向Xの一方側端面(
図1の右端面)が外輪6の端面に接した状態で位置決めされている。この位置決めは、たとえば、ハウジング(図示しない)に固定された位置決め部材(図示しない)によってなされている。
グリース収容環18は、環状空間17の内周面を形成する内輪間座15に沿う筒状部21と、当該筒状部21の、外輪間座16の軸方向一方側(
図1の右側)の周縁から、径方向外側に延びる円環板状の奥側フランジ部22とを一体的に有している。外輪間座16の周壁19、グリース収容環18を構成する筒状部21および奥側フランジ部22によって、転がり軸受3に面する開口24を有する断面略コ字環状のグリース溜り25が区画されている。より具体的には、グリース溜り25は、筒状部21の外周面23、周壁19の内周面29、および本発明の奥側壁面の一例としての奥側フランジ部22の内壁面30によって区画されている。
【0023】
奥側フランジ部22は、環状空間17にグリース収容環18を収容したときに、その外周面が外輪間座16の周壁19に接するように、環状空間17にほぼ収まる径で形成されている。一方、筒状部21は、奥側フランジ部22よりも小径を有する外周面
(環状壁面)23を有している。外周面23によって、グリース溜り25の内周が区画されている。外周面23の、外輪間座16の軸方向の転がり軸受3側の端部は、グリース収容環18の、保持器8に対向する対向端面18Aに連続している。また、外周面23の、外輪間座16の軸方向の転がり軸受3と反対側の端部は、奥側フランジ部22に接続されている。さらに、外周面23の全域が、外輪間座16の中心軸線を中心とする円筒面によって形成されている。換言すると、グリース溜り25の内周が、外輪間座16の軸方向における断面視で直線状に構成されており、グリース溜り25は、外輪間座16の軸方向の転がり軸受3側の径方向寸法が、外輪間座16の軸方向の転がり軸受3側の反対側の径方向寸法と同じである。
【0024】
外周面23の、外輪間座16の軸方向の転がり軸受3側の端部(
図1の右端部)は、転がり軸受3の内部、すなわち内輪5と外輪6との間に入り込んで、環状溝14の内方領域に位置している。外周面23の軸方向方向他方側端部と環状溝14とによって区画される円環状の隙間が、グリース溜り25と転がり軸受3の内部(環状溝14)とを流通可能にする本発明の流通路の一例としての開口24を形成している。
【0025】
また、グリース貯留部材4には、外輪間座16の底壁20およびグリース収容環18の筒状部21に跨って形成されたねじ穴26が形成されている。ねじ穴26のねじにボルト27の螺合部を螺合することによって、グリース収容環18は外輪間座16に固定されている。ねじ穴26は、外輪間座16の径方向から見て、グリース溜り25の位置と部分的にオーバーラップしている。ねじ穴26を、奥側フランジ部22ではなく肉厚の筒状部21に設けているので、奥側フランジ部22に設ける場合と比較して、ねじ穴26の深さを長く設けることができる。これにより、ボルト27による固定を強固に行うことができる。
【0026】
グリース溜り25および環状溝14に充填されたグリースGとしては、ウレア化合物、Baコンプレックス石鹸またはLiコンプレックス石鹸等を増ちょう剤とし、エステル、ポリアルファオレフィン等を基油としたものを用いることができる。転がり軸受3に対して基油を長期に亘って供給するためにはグリースGをグリース溜り25内に留めておく必要があるから、グリースGの流動を抑制すべく、グリースGにはある程度の粘性を持たせておくことが好ましい。
【0027】
図2は、
図1の要部を拡大した断面図である。
図2に示すように、グリース溜り25を区画する内壁面の全域、すなわち筒状部21の外周面23、周壁19の内周面29および奥側フランジ部22の内壁面30の各々の全域には、非粘着性表面処理が施される。具体的には、外周面23、内周面29および内壁面30の各々の全域に、非粘着性樹脂層NVが配置(コーティング)されている。非粘着性樹脂として、たとえばフッ素系樹脂やケイ素系樹脂を例示できる。フッ素系樹脂の具体例は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)などである。
【0028】
図2に示すように、転がり軸受装置1では、転がり軸受3の環状溝14に初期潤滑用のグリースGが充填されていると共に、グリース溜り25に補給用のグリースGが充填されている。この環状溝14のグリースGとグリース溜り25のグリースGとは、互いに繋がっている。そのため、転がり軸受3の運転によって環状溝14内のグリースGの基油が消費されると、その消費に従って、グリース溜り25に溜められたグリースGの基油が、グリースGの増ちょう剤の毛細管現象によって、転がり軸受3側へと浸透移動する。
【0029】
この場合、
図2に実線矢印で示すように、グリース溜り25の奥側から開口24へと向かう外輪間座16の軸方向に基油の流れが形成される。
図3は、グリース溜り25を区画する内壁面に非粘着性表面処理を施さない場合の、グリースGに含まれる基油の流れを説明するための参考図である。
図3の例では、筒状部21の外周面23、周壁19の内周面29および奥側フランジ部22の内壁面30のいずれにも、非粘着性樹脂層NVは配置されていない。換言すると、外周面23、内周面29および内壁面30のいずれにも、非粘着性表面処理は施されていない。
【0030】
グリース溜り25にグリースGが収容された状態では、グリースGがグリース溜り25の内壁面(外周面23、内周面29および内壁面30。以下、「内壁面23,29,30」と表す場合がある。)に付着している。グリースGがある程度の粘性を有しているために、グリースGの、グリース溜り25の内壁面23,29,30との境界部分には、当該23,29,30に対する付着力が生じている。
【0031】
一方、グリースGの供給が進むにつれて、グリースGが部分的に内壁面から離反しようとして、当該内壁面から離反する方向に向かう離反力がグリースGに局所的に生じる。これら離反力および付着力の力の向きは互いに逆向きであり、そのため、大きな離反力および付着力が作用すると、グリースGに割れが生じるおそれがある。 本願発明者は、グリース溜り25に生じるグリース割れの発生のメカニズムの一つとして、上記のようなメカニズムを推察している。
【0032】
図2に戻って、グリース溜り25の全ての内壁面23,29,30の全域に、非粘着性樹脂層NVが配置(コーティング)されているので、グリースGにおける内壁面23,29,30との境界部分には、当該内壁面23,29,30に対する付着力がほとんど発生しないか、または比較的弱い付着力しか発生しない。したがって、内壁面23,29,30から離反する方向に向かう離反力がグリースGに局所的に生じた場合には、グリースG全体が壁面から離れるようになる。つまり、非粘着性表面処理が内壁面23,29,30に施されているために、グリースGに作用する付着力がグリース割れを生じさせる程大きくならず、そのため、グリースGに割れの発生を防止または抑制できる。
【0033】
また、外周面23の全域が平坦面で形成されており、かつ外周面23に開口24が形成されているので、グリース溜り25の内部に形成される基油の流れは、円筒面からなる外周面23に沿う一方向の流れ(
図2に実線矢印で示す)のみである。したがって、グリース溜り25の内部において、基油の流れ易さに分布が生じるのを回避できる。そのため、グリース割れの発生を効果的に抑制または防止できる。
【0034】
以上により、グリースGに含まれる基油を転がり軸受3に長期に亘って供給し続けることができ、転がり軸受3の潤滑性能の高寿命化を図ることができる。しかも、内壁面23,29,30に非粘着性樹脂層NVを配置するだけでよいので、転がり軸受装置1の構造が複雑化することを防止することもできる。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る転がり軸受装置201の断面図である。
【0035】
第2の実施形態において、第1の実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1および
図2の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
第2の実施形態に係る軸受装置201は、前述したグリース収容環18(
図1参照)に代えて、以下に述べるようなグリース収容環218を備えている。
グリース収容環218は、内輪間座(図示しない)に沿う円筒部221と、当該円筒部221の軸方向に関して、外輪間座16の軸方向他方側(
図4の左側)周縁から径方向外側に延びる円環板状の奥側フランジ部222と、その反対側の周縁から径方向外側に延びる円環板状の供給側フランジ部233とを一体的に有している。外輪間座16の周壁19、グリース収容環218を構成する円筒部221、奥側フランジ部222および供給側フランジ部233によって、転がり軸受(図示しない)に対向する開口224を有する環状一体なグリース溜り225が区画されている。
【0036】
また、グリース収容環218の供給側フランジ部233は、転がり軸受3の内部、すなわち内輪5と外輪6との間に入り込むことによって、環状溝14の内方領域に位置している。この供給側フランジ部223は、奥側フランジ部222よりも小径に形成されている。具体的には、奥側フランジ部222は、環状空間17にグリース収容環218を収容したときに、その外周面が外輪間座16の周壁19に接するように、環状空間17にほぼ収まる径で形成されている。一方、供給側フランジ233は、この奥側フランジ部222よりも小径であり、これにより、供給側フランジ233と外輪間座16の周壁19との間に環状の隙間が形成され、この隙間がグリース溜り225と転がり軸受3の内部(環状溝14)とを流通可能にする本発明の流通路の一例としての開口224を形成している。
【0037】
図4に示すように、グリース溜り25を区画する内壁面のうち、円筒部221の外周面223、周壁19の内周面29および奥側フランジ部222の内壁面230の各々の全域には、非粘着性樹脂層NVが配置されている。
グリース溜り25の内壁面(外周面223、内周面29および内壁面230。以下、「内壁面223,29,230」と表す場合がある。)に非粘着性樹脂層NVが配置(コーティング)されているので、グリースGにおける内壁面223,29,230との境界部分には、当該内壁面223,29,230に対する付着力がほとんど発生しないか、または比較的弱い付着力しか発生しない。したがって、内壁面223,29,230から離反する方向に向かう離反力がグリースGに局所的に生じた場合には、グリースG全体が壁面から離れるようになる。つまり、非粘着性表面処理が内壁面223,29,230に施されているために、グリースGに作用する付着力がグリース割れを生じさせる程大きくならず、そのため、グリースGに割れの発生を防止または抑制できる。
【0038】
以上、本発明の2つの実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、以上の2つの実施形態では、非粘着性表面処理の一例として、非粘着性樹脂層NVを配置する場合を例に挙げたが、非粘着性表面処理は、たとえば、グリース溜り25,225の内壁面に、グリースGの基油と非相溶性を有する所定種類の油を、当該内壁面に塗布することにより実現することもできる。
【0039】
また、第1の実施形態では、グリース溜り25の全ての内壁面23,29,30に、非粘着性表面処理を施す場合を例に挙げたが、周壁19の内周面29および奥側フランジ部222の内壁面30にのみ非粘着性表面処理を施し、筒状部21の外周面23には、非粘着性表面処理を施さないようにしてもよい。また、少なくとも奥側フランジ部222の内壁面30には、非粘着性表面処理を施すことが望ましい。
【0040】
また、第2の実施形態では、グリース溜り225の内壁面のうち内壁面223,29,230に、非粘着性表面処理を施す場合を例に挙げたが、少なくとも奥側フランジ部222の内壁面230には、非粘着性表面処理を施すことが望ましい。
また、グリース溜り25,225の一例として、グリース溜り25,225が環状で一体である場合を例に挙げて説明したが、グリース溜り25,225は、外輪間座16の周方向に沿って複数室に分離された構造であってもよい。
【0041】
また、前述の実施形態では、内輪5および内輪間座15が、主軸2に伴って回転する回転側であり、外輪6および外輪間座16が、ハウジング(図示しない)に固定される静止状態にある固定側である場合を例に挙げて説明した。しかし、外輪6および外輪間座16を回転側とし、内輪5および内輪間座15を固定側とする場合にも、本願発明を適用できる。
【0042】
その他、特許請求の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。