特許第6390903号(P6390903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6390903-貯湯給湯システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390903
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】貯湯給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   F24H1/18 G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-237520(P2014-237520)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-99073(P2016-99073A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】江田 秋人
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−236713(JP,A)
【文献】 特開昭58−047947(JP,A)
【文献】 特開昭62−268926(JP,A)
【文献】 特開2008−082692(JP,A)
【文献】 特開2010−255986(JP,A)
【文献】 特開2006−226557(JP,A)
【文献】 特開2015−021717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、この貯湯タンクの湯水を出湯するタンク出湯通路と、このタンク出湯通路に設置された加圧ポンプと、前記タンク出湯通路が接続される給湯通路と、この給湯通路に設置された補助熱源機と、前記貯湯タンクに接続され且つ低温の水を供給するタンク給水通路と、前記加圧ポンプの下流側に接続されるバイパス給水通路とを備えた貯湯給湯システムにおいて、
前記タンク出湯通路から前記給湯通路を介して給湯先に湯水を給湯する給湯運転を実行する場合には、前記加圧ポンプの吐出圧力を前記バイパス給水通路の供給圧力よりも高く設定することで、前記バイパス給水通路から前記給湯通路へ水が流入しないように前記加圧ポンプを駆動制御するポンプ制御手段を備えたことを特徴とする貯湯給湯システム。
【請求項2】
前記バイパス給水通路には、前記給湯通路側への水の流れを許容し且つその逆の流れを禁止する逆止弁が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯システム。
【請求項3】
前記加圧ポンプの吐出流量には、前記貯湯タンクの耐圧に応じた上限が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯システム。
【請求項4】
前記貯湯タンク内の湯水温度を検知する湯水温度センサが設けられ、
前記ポンプ制御手段は、前記湯水温度センサによって検知された湯水温度が給湯設定温度以下である場合には、前記加圧ポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の貯湯給湯システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯湯給湯システムに関し、特に貯湯タンクの湯水を加圧ポンプで圧送して補助熱源機へ供給する構造を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高温の湯水を生成して貯湯し、給湯栓等の所望の給湯先に供給可能な貯湯給湯システムが実用に供されている。この種の貯湯給湯システムは、高温の湯水を貯留する貯湯タンク、貯湯タンクの湯水を加熱する主熱源機、貯湯タンクに貯留されている湯水温度が低い場合等に再加熱する補助熱源機、湯水混合弁等の各種の弁類や各種の通路類等を備えている。
【0003】
ところで、上記の補助熱源機を備えた貯湯給湯システムにおいて、貯湯タンクから補助熱源機に供給される湯水の圧力は、貯湯タンクの耐圧に応じた給水圧力になる。即ち、貯湯タンクに上水源から流入する湯水は、一般的に、減圧弁によって減圧されているので、貯湯タンクの湯水は補助熱源機に対して上水源の給水圧力より低い給水圧力で供給されてしまう。このため、補助熱源機への供給量不足が発生する虞がある。従来では、貯湯タンクの下流側に加圧ポンプを設置し、加圧ポンプの駆動を介して貯湯タンクの湯水を圧送することで、補助熱源機の供給量不足を解消している。
【0004】
上記の加圧ポンプが設置された貯湯給湯システムは、種々の文献に開示されている。例えば、特許文献1の貯湯式給湯装置においては、給湯通路の途中部に設置された加圧ポンプと、この加圧ポンプをバイパスするバイパス路と、このバイパス路に設置され且つ給湯側に向かって開成する逆止弁等を備え、操作リモコンのポンプスイッチの操作を介して、給湯運転時に、加圧ポンプを駆動して給湯を行うか、又は、加圧ポンプを駆動させずに逆止弁を経由して給湯を行うかを選択可能な構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−112644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような、加圧ポンプによって貯湯タンクの湯水を補助熱源機へ圧送する構造では、貯湯タンク側と補助熱源機側とでは設定水圧が異なる場合が多いので、加圧ポンプを駆動する際には、貯湯タンク側と補助熱源機側とを同一水圧に調整する為に、給水通路に開閉弁等の専用の部材を設置する必要があったり、貯湯タンク内の貯湯状況に応じた制御を行なう必要があるので、部品点数が増加する上、加圧ポンプの制御が複雑化し、コスト高になるという問題がある。
【0007】
特許文献1の貯湯式給湯装置では、加圧ポンプに対応した専用のバイパス路及び逆止弁を設けたり、操作リモコンに給湯運転時に加圧ポンプを駆動するか否かを選択する専用のポンプスイッチを設けたりするので、部品点数が増加する上、加圧ポンプの駆動・停止の設定を手動で行う必要があるので、手間がかかり、コスト高になるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、低コストで且つ簡単な構造でもって補助熱源機の供給量不足を解消可能な貯湯給湯システムを提供すること、要求流量に応じて貯湯タンクから上水源へ自動的に切換え可能な貯湯給湯システムを提供すること、等である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の貯湯給湯システムは、貯湯タンクと、この貯湯タンクの湯水を出湯するタンク出湯通路と、このタンク出湯通路に設置された加圧ポンプと、前記タンク出湯通路が接続される給湯通路と、この給湯通路に設置された補助熱源機と、前記貯湯タンクに接続され且つ低温の水を供給するタンク給水通路と、前記加圧ポンプの下流側に接続されるバイパス給水通路とを備えた貯湯給湯システムにおいて、前記タンク出湯通路から前記給湯通路を介して給湯先に湯水を給湯する給湯運転を実行する場合には、前記加圧ポンプの吐出圧力を前記バイパス給水通路の供給圧力よりも高く設定することで、前記バイパス給水通路から前記給湯通路へ水が流入しないように前記加圧ポンプを駆動制御するポンプ制御手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項2の貯湯給湯システムは、請求項1の発明において、前記バイパス給水通路には、前記給湯通路側への水の流れを許容し且つその逆の流れを禁止する逆止弁が設置されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3の貯湯給湯システムは、請求項1又は2の発明において、前記加圧ポンプの吐出流量には、前記貯湯タンクの耐圧に応じた上限が設定されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4の貯湯給湯システムは、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記貯湯タンク内の湯水温度を検知する湯水温度センサが設けられ、前記ポンプ制御手段は、前記湯水温度センサによって検知された湯水温度が給湯設定温度以下である場合には、前記加圧ポンプの駆動を停止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、貯湯給湯システムは、タンク出湯通路から給湯通路を介して給湯先に湯水を給湯する給湯運転を実行する場合には、加圧ポンプの吐出圧力をバイパス給水通路の供給圧力よりも高く設定することで、バイパス給水通路から給湯通路へ水が流入しないように加圧ポンプを駆動制御するポンプ制御手段を備えたので、給湯運転時には、加圧ポンプによって貯湯タンクから出湯された湯水の一部がバイパス給水通路に押し込まれることで、バイパス給水通路から給湯通路側への水の流入を防止する。
【0014】
従って、加圧ポンプの吐出圧力をバイパス給水通路の供給圧力よりも高く設定することで、貯湯タンク側からの湯水を、補助熱源機側の設定水圧に合わせた状態で優先的に補助熱源機へ供給可能となるので、バイパス給水通路に開閉弁を追加的に設置する必要がなくなり、その上、加圧ポンプに対して複雑な制御を行う必要がなくなり、故に、低コストで且つ簡単な構造でもって補助熱源機の供給量不足を解消することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、バイパス給水通路には、給湯通路側への水の流れを許容し且つその逆の流れを禁止する逆止弁が設置されているので、加圧ポンプによって押し込まれた湯水がバイパス給水通路の上流側へ逆流するのを防止することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、加圧ポンプの吐出流量には、貯湯タンクの耐圧に応じた上限が設定されているので、加圧ポンプの吐出流量が増加して過大出湯になるのを防止することで、貯湯タンクが負圧により破損するのを防止することができる。このとき、要求流量に応じて、加圧ポンプの吐出圧力がバイパス給水通路の供給圧力より低くなると、バイパス給水通路から水が補助熱源機へ自動的に供給されるので、補助熱源機の供給量不足を回避することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、貯湯タンク内の湯水温度を検知する湯水温度センサが設けられ、ポンプ制御手段は、湯水温度センサによって検知された湯水温度が給湯設定温度以下である場合には、加圧ポンプの駆動を停止するので、加圧ポンプの無駄な駆動を防止することで消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係る加圧ポンプ駆動時における貯湯給湯システムの概略構成図である。
図2】加圧ポンプ停止時における貯湯給湯システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
先ず、本発明に係る貯湯給湯システム1の全体構成について説明する。
図1に示すように、貯湯給湯システム1は、大容量な貯湯タンク2と、タンク給水通路3と、タンク出湯通路4と、バイパス給水通路5と、主熱源機6と、循環加熱回路7と、複数の補助熱源機8と、給湯通路9と、制御ユニット10と、各種の弁類や各種のセンサ類及び各種のポンプ類等を備え、ホテルや病院等の大量の出湯が要求される大型施設に設置され、複数の給湯栓11に高温水を供給可能な給湯設備である。
【0021】
貯湯タンク2は、主熱源機6で加熱された高温の湯水(例えば65〜90℃)を貯留可能なタンクで構成され、貯留された湯水の放熱を防ぐ為にタンク周囲は断熱材で覆われている。貯湯タンク2の外周部には、下側から上側に向かって等間隔に複数の湯水温度センサ2a〜2dが順に設けられ、これら複数の湯水温度センサ2a〜2dにより貯湯タンク2内の複数の貯留層の湯水温度が検出される。
【0022】
タンク給水通路3は、上水源から低温水を貯湯タンク2等に供給するものであり、上流給水通路部3a、下流給水通路部3bを有し、上流端が上水源に接続され、下流端が貯湯タンク2の下部に接続されている。上流給水通路部3aと下流給水通路部3bとの間からタンク出湯通路4に接続するバイパス給水通路5が分岐されている。上流給水通路部3aに逆止弁12が設置され、下流給水通路部3bに減圧弁13が設置されている。
【0023】
減圧弁13は、上水源から供給される低温水を予め設定された設定値(貯湯タンク2の耐圧に対応した値、例えば170kPa)に減圧する為にタンク給水通路3に設置されている。このため、貯湯タンク2に供給される低温水の給水圧力P2は、例えば170kPaに減圧される。尚、上水源の給水圧力は、一般的な水道の給水圧力であり、例えば280kPaに設定されている。
【0024】
タンク出湯通路4は、貯湯タンク2に貯湯された湯水を給湯通路9に供給するものであり、上流出湯通路部4a、下流出湯通路部4bを有し、上流端が貯湯タンク2の上部に接続され、下流端が給湯通路9に接続されている。上流出湯通路部4aには、上流側から下流側に向かって、貯湯タンク2の湯水を圧送する加圧ポンプ15と、給湯通路9側への水の流れを許容し且つその逆の流れを禁止する逆止弁16が設置されている。
【0025】
加圧ポンプ15は、貯湯タンク2の湯水を給湯通路9(複数の補助熱源機8)へ圧送するものであり、タンク出湯通路4を流れる湯水の流量を調整可能な容量可変の公知のポンプで構成されている。給湯運転時に、加圧ポンプ15は、その吐出圧力P3が後述するバイパス給水通路5の供給圧力P1より高い圧力に、例えば300kPaになるように制御される。尚、加圧ポンプ15の吐出流量には、貯湯タンク2の耐圧に応じた上限(例えば20L/min)が設定されている。
【0026】
上流給水通路部3aと下流給水通路部3bとの間から分岐したバイパス給水通路5が、加圧ポンプ15の下流側であって、上流出湯通路部4aと下流出湯通路部4bとの間に接続されている。バイパス給水通路5には、給湯通路9側への水の流れを許容し且つその逆の流れを禁止する逆止弁17が設置されている。バイパス給水通路5の供給圧力P1は、上水源の給水圧力と同様であり、例えば280kPaになる。
【0027】
主熱源機6としては、ヒートポンプ式熱源機が活用される。このヒートポンプ式熱源機は、圧縮機、湯水加熱用の凝縮熱交換器、高圧の冷媒を急膨張させて温度と圧力を下げる膨張弁、外気熱吸収用の蒸発熱交換器等を有し、これら機器が冷媒配管を介して接続されてヒートポンプ回路を構成し、冷媒配管に封入された冷媒を利用して貯湯運転を行う公知のヒートポンプ式熱源機で構成されている。
【0028】
貯湯タンク2の湯水を循環させる為の循環加熱回路7が、貯湯タンク2と主熱源機6との間に設置されている。尚、主熱源機6として、ヒートポンプ式熱源機が活用されているが、特にこれらに限定する必要はなく、ヒートポンプ式熱源機に代えて、燃料電池発電装置を活用しても良く、適宜変更可能である。
【0029】
給湯通路9は、タンク出湯通路4からの湯水を複数の給湯栓11に供給するものであり、上流給湯通路部9a、下流給湯通路部9bを有し、上流端がタンク出湯通路4の下流端に接続され、下流端が複数の給湯栓11に接続されている。上流給湯通路部9aと下流給湯通路部9bとの間には、並列的に連結された複数の補助熱源機8が設置されている。即ち、各補助熱源機8の入水部が上流給湯通路部9aの下流端に接続され、各補助熱源機8の出湯部が下流給湯通路部9bの上流端に接続されている。
【0030】
給湯通路9の供給圧力P4は、加圧ポンプ15が駆動し、その吐出流量が上限に達していない場合には、加圧ポンプ15の吐出圧力P3と同じ圧力になり、加圧ポンプ15の吐出流量が上限に達して吐出圧力P3がバイパス給水通路5の供給圧力P1を下回った場合には、バイパス給水通路5の供給圧力P1と同じ圧力になる。
【0031】
各補助熱源機8は、燃焼用空気を供給する為の送風ファン、燃料ガスを燃焼させるバーナーユニット、燃焼ガスの主として顕熱を回収する顕熱回収用熱交換器、顕熱回収後の燃焼排気ガスの主として潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器等を備え、燃料ガスを燃焼して湯水の加熱を行う公知のガス給湯器で構成されている。複数の補助熱源機8は、貯湯タンク2内の湯水温度や給湯通路9を流れる湯水温度が低下した場合に燃焼作動され、目標給湯設定温度となるように湯水を加熱するものである。
【0032】
下流給湯通路部9bの下流端と上流給湯通路部9aの上流端との間には、即湯通路21が設けられている。即ち、複数の補助熱源機8と給湯通路9と即湯通路21とから即湯循環回路20が構成されている。即湯通路21には、補助熱源機8側への水の流れを許容し且つ給湯栓11への流れを禁止する逆止弁23と、即湯循環回路20内に湯水を循環させる循環ポンプ24とが設置されている。
【0033】
給湯運転停止時に、即湯循環回路20内に滞留する湯水の温度が低下した場合、循環ポンプ24の駆動を介して、即湯循環回路20に湯水を強制的に循環させ、複数の補助熱源機8を燃焼作動させ、即湯循環回路20内の湯水を加熱して給湯設定温度に維持する。即湯循環回路20のうちの循環ポンプ24と複数の補助熱源機8との間に、タンク出湯通路4の下流端が接続され、複数の給湯栓11から湯水が給湯されるに伴いタンク出湯通路4から湯水が導入される。
【0034】
貯湯給湯システム1は、制御ユニット10によって制御される。制御ユニット10は、給湯運転等の各種運転を実行する為のCPU,ROM,RAMを主要部として構成されている。各種のセンサの検知信号が制御ユニット10に送信され、制御ユニット10により、主熱源機6の動作、補助熱源機8の動作、各種のポンプ類の作動・停止、各種の弁類の開閉状態の切り換え及び開度調整等を制御し、各種運転(貯湯運転、給湯運転、即湯循環運転等)を実行する。
【0035】
制御ユニット10は、ユーザーが操作可能な操作リモコン(図示略)とデータ通信可能である。操作リモコンのスイッチ操作により各種の運転が設定されると、その指令信号が操作リモコンから制御ユニット10に送信される。例えば、操作リモコンのスイッチ操作により目標給湯設定温度が設定されると、その目標給湯設定温度データが操作リモコンから制御ユニット10に送信される。
【0036】
次に、本発明に関連するポンプ制御手段について説明する。
制御ユニット10(ポンプ制御手段に相当する)は、給湯通路9から給湯先に湯水を給湯する給湯運転を実行する場合には、加圧ポンプ15の吐出圧力P3をバイパス給水通路5の供給圧力P1よりも高く設定することで、バイパス給水通路5から給湯通路9へ水が流入しないように加圧ポンプ15を駆動制御するポンプ制御を実行可能である。
【0037】
また、制御ユニット10は、貯湯タンク2の上部に設置された湯水温度センサ2dによって検知された貯湯タンク2の湯水温度が給湯設定温度以下である場合には、加圧ポンプ15の駆動を停止するポンプ制御を実行可能である。
【0038】
次に、本発明の貯湯給湯システム1の作用及び効果について説明する。
図1に示すように、例えば、1つの給湯栓11が開放されることで、タンク出湯通路4から給湯通路9を介して給湯先に湯水を給湯する給湯運転を実行する場合には、貯湯タンク2の上部からタンク出湯通路4に出湯される湯水は、加圧ポンプ15によって吐出圧力P3(300kPa)に加圧されてタンク出湯通路4から給湯通路9に圧送され、給湯通路9に流入した湯水は、補助熱源機8を経由した後に給湯栓11から給湯される。このとき、給湯通路9の供給圧力P4は、加圧ポンプ15の吐出圧力P3と同じ圧力になる。
【0039】
加圧ポンプ15は、その吐出圧力P3がバイパス給水通路5の供給圧力P1(280kPa)より大きくなるように制御され、給湯通路9の供給圧力P4もバイパス給水通路5の供給圧力P1より大きくなるので、タンク出湯通路4の湯水は少量だけ常時バイパス給水通路5へ押し込まれ、これによってバイパス給水通路5に設置された逆止弁17は常時閉成され、バイパス給水通路5から給湯通路9側に低温の水が流入するのを防止する。
【0040】
しかし、複数の給湯栓11が開放されて、貯湯タンク2の出湯可能量以上の湯需要が生じた場合には、加圧ポンプ15の吐出流量は、貯湯タンク2の耐圧に応じた上限である出湯可能量(例えば20L/min)で制限されるので、加圧ポンプ15の吐出圧力P3は、その初期の圧力(300kPa)を維持できずに徐々に低下し、それに伴い、給湯通路9の供給圧力P4も低下する。
【0041】
給湯通路9の供給圧力P4が、バイパス給水通路5の供給圧力P1よりも低くなると、逆止弁17が自動的に開成され、貯湯タンク2からの湯水の不足分がバイパス給水通路5から供給される。このように、加圧ポンプ15の吐出圧力P3の低下によって生じるバイパス給水通路5の供給圧力P1との圧力差に応じて、バイパス給水通路5からの給水流量が調整される。給湯通路9には、貯湯タンク2からの給湯設定温度の湯水とバイパス給水通路5からの低温水とが混合した温度が低下した湯水が流入するが、補助熱源機8の燃焼作動を介して、給湯設定温度に調整した湯水を給湯栓11から供給することができる。
【0042】
そして、湯水温度センサ2dにより検知される貯湯タンク2の上部の湯水温度が、給湯設定温度以下になった場合には、図2に示すように、加圧ポンプ15の駆動を停止し、バイパス給水通路5から低温水を給湯通路9に供給し、補助熱源機8の燃焼作動を介して、給湯設定温度に調整した湯水を複数の給湯栓11から供給する。尚、加圧ポンプ15を停止した場合には、逆止弁16によってバイパス給水通路5から貯湯タンク2側への逆流が防止される。
【0043】
以上説明したように、貯湯給湯システム1は、給湯通路9から給湯先に湯水を給湯する給湯運転を実行する場合には、加圧ポンプ15の吐出圧力P3をバイパス給水通路5の供給圧力P1よりも高く設定することで、バイパス給水通路5から給湯通路9へ水が流入しないように加圧ポンプ15を駆動制御する制御ユニット10(ポンプ制御手段)を備えたので、給湯運転時には、加圧ポンプ15によって貯湯タンク2から出湯された湯水の一部がバイパス給水通路5に押し込まれることで、バイパス給水通路5から給湯通路9側への水の流入を防止する。
【0044】
従って、加圧ポンプ15の吐出圧力P3をバイパス給水通路5の供給圧力P1よりも高く設定することで、貯湯タンク2側からの湯水を、補助熱源機8側の設定水圧に合わせた状態で優先的に補助熱源機8へ供給可能となり、バイパス給水通路5に開閉弁を追加的に設置する必要がなくなり、その上、加圧ポンプ15に対して複雑な制御を行う必要がなくなり、故に、低コストで且つ簡単な構造でもって補助熱源機8の供給量不足を解消することができる。
【0045】
また、バイパス給水通路5には、給湯通路9側への水の流れを許容し且つその逆の流れを禁止する逆止弁17が設置されているので、加圧ポンプ15によって押し込まれた湯水がバイパス給水通路5の上流側へ逆流するのを防止することができる。
【0046】
さらに、加圧ポンプ15の吐出流量には、貯湯タンク2の耐圧に応じた上限が設定されているので、加圧ポンプ15の吐出流量が増加して過大出湯になるのを防止することで、貯湯タンク2が負圧により破損するのを防止することができる。このとき、要求流量に応じて、加圧ポンプ15の吐出圧力P3がバイパス給水通路5の供給圧力P1より低くなると、バイパス給水通路5から水が補助熱源機8へ自動的に供給されるので、補助熱源機8の供給量不足を回避することができる。
【0047】
さらにまた、貯湯タンク2内の湯水温度を検知する湯水温度センサ2dが設けられ、制御ユニット10は、湯水温度センサ2dによって検知された湯水温度が給湯設定温度以下である場合には、加圧ポンプ15の駆動を停止するので、加圧ポンプ15の無駄な駆動を防止することで消費電力を低減することができる。
【0048】
次に、前記実施例を部分的に変更した形態について説明する。
[1]前記実施例において、バイパス給水通路5の供給圧力P1、減圧弁13の供給圧力P2,加圧ポンプ15の吐出圧力P3等の圧力値は、ほんの一例を示したに過ぎず、貯湯タンク2の出湯可能量以内で給湯運転を実行する場合には、加圧ポンプ15の吐出圧力P3が、バイパス給水通路5の供給圧力P1より高くなるように設定されていれば、適宜変更可能である。
【0049】
[2]前記実施例において、複数の補助熱源機8と給湯通路9と即湯通路21とから即湯循環回路20を構成しているが、特に即湯循環回路20を設ける必要はなく、即湯通路21、逆止弁23及び循環ポンプ24を省略して、給湯通路9と複数の補助熱源機8のみの構造であっても良い。
【0050】
[3]前記実施例において、貯湯タンク2、主熱源機6、補助熱源機8の能力や台数、給湯栓11の数は適宜変更可能である。
【0051】
[4]その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0052】
1 貯湯給湯システム
2 貯湯タンク
3 タンク給水通路
4 タンク出湯通路
5 バイパス給水通路
8 補助熱源機
9 給湯通路
10 制御ユニット(ポンプ制御手段)
15 加圧ポンプ

図1
図2