特許第6390908号(P6390908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390908
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】流体冷却方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20180910BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20180910BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20180910BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   F17C5/06
   H01M8/06
   H01M8/00 Z
   F25B1/00 304S
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-259241(P2014-259241)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-118275(P2016-118275A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優介
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−148197(JP,A)
【文献】 実開昭63−066781(JP,U)
【文献】 特開昭54−124357(JP,A)
【文献】 特開2009−127853(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0229701(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0261874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
F25B 1/00
H01M 8/00
H01M 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒循環ラインに設けられた圧縮部、凝縮部、自動コントロール弁、及び膨張部を経由された冷媒を、流体冷却器を構成する蒸発部に供給することで、前記流体冷却器を構成する流体冷却ラインを流れる流体を冷却する流体冷却方法であって、
流体消費部に前記流体を充填していない状態において、前記凝縮部と前記膨張部との間に設けられた前記自動コントロール弁の開度を第1の開度に調節することで前記蒸発部に連続的に冷媒を供給し、該冷媒により、周囲温度よりも低い第1の制御温度となるように前記流体冷却ラインの温度を制御する工程と、
前記流体消費部に流体を充填する流体充填工程と、
を含み、
前記流体充填工程は、前記自動コントロール弁の開度を前記第1の開度よりも大きい第2の開度にして、前記蒸発部に該第1の開度のときよりも多くの冷媒を供給するとともに、前記流体冷却ラインに流体を供給することで、該冷媒により該流体を冷却する第1の段階と、
前記流体冷却ラインの温度が、ピーク温度に到達し、その後、前記ピーク温度よりも低下した際、前記自動コントロール弁を閉じ、前記自動コントロール弁と前記蒸発部との間の前記冷媒循環ラインに残存する前記冷媒により前記流体冷却ラインの温度が、前記ピーク温度よりも低い第2の制御温度まで降下させる第2の段階と、
を有することを特徴とする流体冷却方法。
【請求項2】
前記流体充填工程の終了時において、前記自動コントロール弁と前記膨張部との間に位置する前記冷媒循環ライン内に存在する前記冷媒が消費し尽くされるように、前記第2の開度とされた前記自動コントロール弁を閉じる操作の開始時から前記流体充填工程の終了時までの時間を設定することを特徴とする請求項1記載の流体冷却方法。
【請求項3】
前記第2の段階において、前記自動コントロール弁を閉じ、かつ前記流体冷却ラインの温度が前記第2の制御温度まで降下した後に、前記流体冷却ラインの温度が前記第2の制御温度よりも上昇した際、前記自動コントロール弁を開け、その後、前記自動コントロール弁を閉じる操作を行うことを特徴とする請求項1または2記載の流体冷却方法。
【請求項4】
前記流体として、水素ガスを用い、
前記流体消費部として、水素自動車の燃料タンクを用いることを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載の流体冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒により流体を冷却する流体冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の自動車として、燃料である水素ガスが充填される燃料タンクを備えた燃料電池搭載車両(以下、「水素自動車」という)の開発が進められている。水素自動車は、炭酸ガス、NO、SO等の排出がなく、水を排出するだけの環境にやさしい自動車とされている。
【0003】
水素自動車は、燃料補給時には通常のガソリン自動車と同様に、その燃料である水素ガス(流体)を充填する水素ステーションまで走行し、該水素ステーションから水素ガスを補給する。
【0004】
水素自動車に水素ガスを充填する場合、流路に設けられている各種弁や流量計等での断熱膨張による温度上昇に加え、水素自動車の燃料タンクに高圧で圧縮充填する際の圧縮熱によっても、水素ガスの温度は上昇する。
【0005】
このように水素ガスの温度が上昇して、燃料タンクの上限温度である85℃を超えると、燃料タンクの耐久性の問題が発生してしまう。また、水素ガスの温度が上昇すると、水素ガス充填後の冷却に伴う充填圧力の降下等の問題が発生してしまう。
【0006】
このような問題を解決可能な技術として、特許文献1に開示された水素ガス充填装置がある。
特許文献1には、貯蔵容器より下流側の充填経路(充填ライン)を流れる水素ガスを冷却する冷却手段を備えた水素ガス充填装置が開示されている。特許文献1に開示された冷却手段は、シェル&チューブ熱交換器であり、冷媒により水素ガスを冷却する構成とされている。特許文献1では、上記冷却手段により水素ガスを冷却することで、水素ガスの温度上昇を抑制している。
【0007】
なお、水素ガスを供給するラインの冷却については、低温脆性の対策として、高圧ガス保安法の一般高圧ガス保安規則の第7条の3の第1項第1号に、配管温度は−40℃よりも下げてはならないことが定められている。
【0008】
ここで、上記冷却手段を備えた従来の水素ガス冷却システムの構成について説明する。従来の水素ガス冷却システムは、冷媒循環ラインと、冷媒循環ラインに設けられた圧縮部、凝縮部、開閉弁、膨張部、及び蒸発部が設けられた冷却手段と、水素自動車に充填する水素ガスが流れる水素ガス充填ラインと、を有する。蒸発部で発生させた冷熱により、水素ガス充填ラインの一部を冷却していた。
【0009】
開閉弁は、全開か全閉のどちらか一方の状態のみに切り替えることの可能な弁である。また、開閉弁は、安価な弁であり、切り替えに要する時間が短く、短時間で開閉を切り替えて使用する弁である。
冷却手段は、筐体と、筐体内に収容され、かつ両端が冷媒循環ラインと接続された蒸発部と、筐体内に収容され、かつ一端が水素ガス供給源と接続され、他端が水素ガス充填ラインと接続された水素ガス冷却ラインと、を有する。
【0010】
上記構成とされた従来の水素ガス冷却システムでは、水素自動車の燃料タンクに水素ガスを充填していない状態では、開閉弁が完全に閉じられており、開閉弁の下流側への冷媒の供給が停止される。
一方、水素自動車に水素を充填するときには、開閉弁が全開とされ、開閉弁を通過し、かつ膨張部を経由した冷媒が蒸発部に送られることで、水素ガス冷却ラインを流れる水素ガスが冷却される。
そして、水素自動車への水素ガスの充填が終了すると、水素ガス冷却ラインへの水素ガスの供給が停止されるとともに、開閉弁が完全に閉じられることで、冷媒の供給が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−239956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した従来の水素ガス冷却システムは、水素自動車の燃料タンクの充填圧力が35MPaG程度で、現状よりもゆっくりと充填する場合(例えば、水素ガスの充填開始から終了までの充填時間が5〜15分程度)に用いられていた。
【0013】
しかしながら、近年、燃料タンクの充填圧力の仕様の変更により、従来の2倍である70MPaGの充填圧力の燃料タンクに、水素ガスを短時間(例えば、3分程度)で充填する必要がでてきた。
【0014】
図3は、従来の水素ガス冷却システムを用いて、70MPaGの充填圧力の燃料タンクに水素ガスを充填する水素ガス充填期間、及び水素ガス充填期間前後の水素ガス充填停止期間における開閉弁の開閉状態、水素ガス冷却ラインの温度、燃料タンク内の圧力、及び燃料タンク内への水素ガスの充填流量の関係を模式的に示す図(グラフ)である。
なお、図3に示す「周囲温度」とは、水素ガス冷却システムの各機器の周囲の外気温度のことをいう。
【0015】
ここで、上述した水素ガス冷却システムを用いた従来の水素ガス冷却方法(流体冷却方法)の問題点について説明する。
図3に示すように、従来の水素ガス冷却方法では、水素ガス充填停止期間において、開閉弁を完全に閉じていたため、水素ガス冷却ラインの温度は、周囲温度と略同じ温度になっていた。また、水素ガス冷却ラインを流れる水素ガスの温度も、周囲温度と略同じ温度であった。
【0016】
このため、水素ガス充填期間において、周囲温度とされた水素ガス冷却ラインの温度を、できるだけ早く目標とする水素ガス冷却ラインの冷却温度(例えば、−40〜−33℃の範囲内の所定の温度)にする必要があるが、周囲温度と目標とする水素ガス冷却ラインの冷却温度との差が大きいため、該冷却温度となるように、短時間で水素ガス冷却ラインを冷却することが困難であった。
【0017】
そのため、燃料タンクに目標とする冷却温度とされた水素ガスを充填する時間が非常に短くなる。また逆に、燃料タンクに十分に冷却されていない状態の水素ガスが充填される時間が長くなることで、燃料タンクの温度が上限温度である85℃を超える恐れがあった。
【0018】
また、従来の水素ガス冷却方法では、水素ガスの充填終了の瞬間まで開閉弁を全開状態にしていたため、水素ガスの充填終了後において、開閉弁と膨張部との間に位置する冷媒循環ラインに蒸発に適した冷媒が残存してしまう。
よって、冷却対象の水素ガスがなくなった後も、上記残存した冷媒が蒸発部において水素ガス冷却ラインをさらに冷却することで、オーバーシュートという現象が発生するため、水素ガス冷却ラインなどの低温脆性が懸念された。
【0019】
そこで本発明は、流体の充填開始から短時間で流体が流れるラインの温度(流体の温度)を目標の温度まで冷却することが可能で、かつオーバーシュートの発生を抑制することの可能な流体冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、冷媒循環ラインに設けられた圧縮部、凝縮部、自動コントロール弁、及び膨張部を経由された冷媒を、流体冷却器を構成する蒸発部に供給することで、前記流体冷却器を構成する流体冷却ラインを流れる流体を冷却する流体冷却方法であって、流体消費部に前記流体を充填していない状態において、前記凝縮部と前記膨張部との間に設けられた前記自動コントロール弁の開度を第1の開度に調節することで前記蒸発部に連続的に冷媒を供給し、該冷媒により、周囲温度よりも低い第1の制御温度となるように前記流体冷却ラインの温度を制御する工程と、前記流体消費部に流体を充填する流体充填工程と、を含み、前記流体充填工程は、前記自動コントロール弁の開度を前記第1の開度よりも大きい第2の開度にして、前記蒸発部に該第1の開度のときよりも多くの冷媒を供給するとともに、前記流体冷却ラインに流体を供給することで、該冷媒により該流体を冷却する第1の段階と、前記流体冷却ラインの温度が、ピーク温度に到達し、その後、前記ピーク温度よりも低下した際、前記自動コントロール弁を閉じ、前記自動コントロール弁と前記蒸発部との間の前記冷媒循環ラインに残存する前記冷媒により前記流体冷却ラインの温度が、前記ピーク温度よりも低い第2の制御温度まで降下させる第2の段階と、を有することを特徴とする流体冷却方法が提供される。
【0021】
また、請求項2に係る発明によれば、前記流体充填工程の終了時において、前記自動コントロール弁と前記膨張部との間に位置する前記冷媒循環ライン内に存在する前記冷媒が消費し尽くされるように、前記第2の開度とされた前記自動コントロール弁を閉じる操作の開始時から前記流体充填工程の終了時までの時間を設定することを特徴とする請求項1記載の流体冷却方法が提供される。
【0022】
また、請求項3に係る発明によれば、前記第2の段階において、前記自動コントロール弁を閉じ、かつ前記流体冷却ラインの温度が前記第2の制御温度まで降下した後に、前記流体冷却ラインの温度が前記第2の制御温度よりも上昇した際、前記自動コントロール弁を開け、その後、前記自動コントロール弁を閉じる操作を行うことを特徴とする請求項1または2記載の流体冷却方法が提供される。
【0023】
また、請求項4に係る発明によれば、前記流体として、水素ガスを用い、前記流体消費部として、水素自動車の燃料タンクを用いることを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載の流体冷却方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の流体冷却方法によれば、流体消費部に流体を充填していない状態において、凝縮部と膨張部との間に設けられた自動コントロール弁の開度を第1の開度に調節することで蒸発部に連続的に冷媒を供給し、かつ蒸発させることにより、周囲温度よりも低い第1の制御温度となるように流体冷却ラインの温度を制御する工程を有することで、流体充填工程の開始時の温度を周囲温度(つまり流体の温度)よりも低い温度に維持することが可能となる。
【0025】
これにより、流体充填工程において、従来よりも短時間で流体冷却ラインの温度を第2の制御温度(充填時における目標とする流体冷却ラインの温度)に到達させ、かつ第2の制御温度程度に長い時間維持することができる。
したがって、流体消費部に十分に冷却された流体を、従来よりも長い時間供給することが可能となるので、流体消費部の流体が充填されるタンクの温度が該タンクの上限温度に到達することを抑制できる。
【0026】
また、流体の充填時において、流体冷却ラインの温度が、ピーク温度に到達し、その後、ピーク温度よりも低下した際、自動コントロール弁を閉じ、自動コントロール弁と蒸発部との間の冷媒循環ラインに残存する冷媒により流体冷却ラインの温度を、ピーク温度よりも低い第2の制御温度まで降下させるため、流体充填工程が終了した時点において、自動コントロール弁と膨張部との間の冷媒循環ラインに残存する冷媒を従来よりも消費することが可能となる。
【0027】
これにより、自動コントロール弁と膨張部との間に位置する冷媒循環ライン内に残存する冷媒に起因するオーバーシュート(水素ガス冷却ラインの温度が流体充填期間の温度よりも下がる現象)の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係る流体冷却方法を実施する際に使用する水素ガス冷却システムの概略構成を示す図(系統図)である。
図2図1に示す水素ガス冷却システムを用いて、70MPaGの充填圧力の燃料タンクに水素ガスを充填する水素ガス充填期間、及び水素ガス充填期間前後の水素ガス充填停止期間における自動コントロール弁の開度、水素ガス冷却ラインの温度、燃料タンク内の圧力、及び燃料タンク内への水素ガスの充填流量の関係を模式的に示す図(グラフ)である。
図3】従来の水素ガス冷却システムを用いて、70MPaGの充填圧力の燃料タンクに水素ガスを充填する水素ガス充填期間、及び水素ガス充填期間前後の水素ガス充填停止期間における開閉弁の開閉状態、水素ガス冷却ラインの温度、燃料タンク内の圧力、及び燃料タンク内への水素ガスの充填流量の関係を模式的に示す図(グラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示する各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の水素ガス冷却システムの寸法関係とは異なる場合がある。
【0030】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る流体冷却方法を実施する際に使用する水素ガス冷却システムの概略構成を示す図(系統図)である。
初めに、図1を参照して、水素ガス冷却システム10の構成について説明する。なお、本実施の形態では、流体の一例として水素ガスを用い、流体消費部の一例として水素自動車Bを用いた場合を例に挙げて以下の説明を行う。
【0031】
水素ガス冷却システム10は、冷媒循環ライン11と、圧縮部13と、凝縮部14と、自動コントロール弁16と、膨張部17と、流体冷却器である水素ガス冷却器18と、水素ガス導入ライン21と、水素ガス充填ライン22と、水素ガス供給源23と、自動水素ガス供給弁24と、第1の制御部26と、温度測定器28と、第2の制御部29と、を有する。
【0032】
冷媒循環ライン11は、その一端11Aが水素ガス冷却器18を構成する蒸発部18−2の一端と接続されており、他端11Bが蒸発部18−2の他端と接続されている。冷媒循環ライン11は、その一部が水素防爆エリアA内に配置されている。
冷媒循環ライン11は、蒸発部18−2に、膨張部17を経由し、低温低圧で、かつ液状とされた冷媒を供給するとともに、熱交換後、蒸発部18−2から導出された冷媒を回収する。冷媒循環ライン11は、冷媒を循環させるためのラインである。
冷媒としては、例えば、フロン、代替フロン、アンモニア、二酸化炭素、炭化水素等を用いることができる。
【0033】
圧縮部13は、水素防爆エリアAの外側に位置する冷媒循環ライン11に設けられている。圧縮部13は、蒸発部18−2から回収され、かつ凝縮部14により低圧の気体とされた冷媒を圧縮することで、高温高圧の気体状態とされた冷媒を生成する。圧縮部13としては、例えば、圧縮機を用いることができる。
【0034】
凝縮部14は、圧縮部13の前段に位置する冷媒循環ライン11の一部と、圧縮部13の後段に位置する冷媒循環ライン11の一部と、を収容するように設けられている。凝縮部14は、水素防爆エリアAの外側に配置されている。
凝縮部14は、圧縮部13から導出され、かつ高温高圧の気体とされた冷媒の熱を、低温低圧の気体とされた冷媒に移動させ(熱交換させ)、冷媒を凝縮(液化)させることで、低温高圧の液体とされた冷媒を生成する。
低温高圧の液体とされた冷媒は、冷媒循環ライン11を介して、自動コントロール弁16に供給される。また、凝縮部14は、低温低圧の気体とされた冷媒を低圧の気体として、圧縮部13に供給する。凝縮部14としては、例えば、凝縮器を用いることができる。
【0035】
自動コントロール弁16は、冷媒循環ライン11の一端11Aと凝縮部14との間に位置する冷媒循環ライン11に設けられている。自動コントロール弁16は、水素防爆エリアAの外側に配置されている。
自動コントロール弁16は、開度の調節が可能なバルブであり、完全に閉じた状態から所定の開度まで開く際にある程度の時間(例えば、1〜2秒)を要する。また、自動コントロール弁16は、所定の開度から完全に閉じた状態になるときにもある程度の時間(例えば、1〜2秒)を要する。
【0036】
水素自動車Bに水素ガスを充填していない状態において、自動コントロール弁16は、第1の開度を維持する。これにより、蒸発部18−2には、膨張部17を介して、常時、一定量(例えば、200kg/hour)の低温低圧の液体とされた冷媒が供給される。
したがって、水素自動車Bに水素ガスを充填していない状態において、蒸発部18−2の温度は、周囲温度よりも低い第1の制御温度(以下、「第1の制御温度T1」という)に維持される。第1の制御温度T1としては、例えば、−35〜−5℃の範囲内の温度を用いることができる。
なお、本発明における周囲温度とは、水素ガス冷却システム10を構成する各機器の周囲の外気温度のことをいう。
【0037】
よって、水素自動車Bに水素ガスを充填する流体充填工程において、従来よりも短時間で蒸発部18−2の温度を充填時における目標とする流体冷却ラインの温度(後述する第2の制御温度(以下、「第2の制御温度T2」という))に到達させることが可能となるので、水素自動車Bに十分に冷却された流体を、従来よりも長い時間供給することが可能となる。
したがって、水素自動車Bの燃料タンクの温度が、該燃料タンクの上限温度(例えば、85℃)に到達することを抑制できる。
【0038】
また、流体充填工程の初期において、自動コントロール弁16の開度は、第1の開度よりも大きい第2の開度に維持される。これにより、蒸発部18−2には、膨張部17を介して、第1の開度のときよりも多くの量の冷媒が供給される。
【0039】
膨張部17は、自動コントロール弁16と冷媒循環ライン11の一端11Aとの間に位置する冷媒循環ライン11のうち、水素防爆エリアA内に位置する部分に設けられている。
膨張部17は、自動コントロール弁16を通過した低温高圧の液体とされた冷媒を膨張させることで、冷媒循環ライン11に低温低圧の液体とされた冷媒を導出する。
そして、低温低圧の液体とされた冷媒は、冷媒循環ライン11を介して、蒸発部18−2に供給される。膨張部17としては、例えば、膨張弁や膨張機等を用いることができる。
【0040】
水素ガス冷却器18は、水素防爆エリアAに配置されており、熱交換領域を区画する筐体18−1と、蒸発部18−2と、流体冷却ラインである水素ガス冷却ライン18−3と、を有する。
蒸発部18−2は、筐体18−1内に収容されており、その両端が筐体18−1の上板部から露出されている。蒸発部18−2の形状は、例えば、U字形状とすることができる。
【0041】
水素ガス冷却ライン18−3は、筐体18−1内に収容されており、その両端が筐体18−1の上板部から露出されている。水素ガス冷却ライン18−3は、その一端が水素ガス導入ライン21の他端と接続されており、他端が水素ガス充填ライン22の一端と接続されている。水素ガス冷却ライン18−3の形状は、例えば、U字形状とすることができる。
【0042】
上記構成とされた水素ガス冷却器18は、水素ガス導入ライン21を介して、水素ガス冷却ライン18−3に水素ガスが供給され、かつ蒸発部18−2に低温低圧で液体とされた冷媒が供給されて蒸発した際、該水素ガスの熱を、蒸発部18−2を流れる低温の冷媒に移動させることで熱交換を行う。
そして、水素ガス冷却器18により、冷却された水素ガスは、水素ガス充填ライン22に導出される。
【0043】
水素ガス導入ライン21は、水素防爆エリアA内に配置されており、その一端が水素ガス供給源23と接続されている。水素ガス充填ライン22は、その他端側に水素自動車Bの燃料タンク(図示せず)に対して着脱可能な構成とされた接続部(図示せず)を有する。水素ガス充填ライン22は、水素防爆エリアA内に配置されている。
【0044】
水素ガス供給源23は、水素防爆エリアA内に配置されており、水素ガス導入ライン21に水素ガスを供給する。水素ガス供給源23としては、例えば、水素ガスが高圧で蓄圧された蓄圧器を用いることができる。
なお、水素ガス供給源23の圧力が低い場合には、水素ガス供給源23の二次側に図示していない圧縮機を設けてもよい。
【0045】
自動水素ガス供給弁24は、水素ガス導入ライン21に設けられている。自動水素ガス供給弁24は、水素ガス導入ライン21に供給する水素ガスの流量を調整するための弁である。自動水素ガス供給弁24としては、例えば、自動コントロール弁を用いることができる。
【0046】
第1の制御部26は、自動水素ガス供給弁24と電気的に接続されている。第1の制御部26は、記憶部(図示せず)を有する。該記憶部には、流体冷却方法を実施するために必要なプログラムが格納されている。第1の制御部26は、該プログラムに基づいて、自動水素ガス供給弁24を制御する。
【0047】
温度測定器28は、水素ガス冷却ライン18−3の温度を測定可能な構成とされている。温度測定器28は、第2の制御部29と電気的に接続されている。
温度測定器28は、測定した水素ガス冷却ライン18−3の温度に関するデータをリアルタイムで第2の制御部29に送信する。温度測定器28としては、例えば、熱電対や温度センサー等を用いることができる。
【0048】
第2の制御部29は、自動コントロール弁16と電気的に接続されている。第2の制御部29は、記憶部(図示せず)を有する。
該記憶部には、予め、流体冷却方法を実施するために必要なプログラム、自動コントロール弁16の制御に関するプログラム、第1の制御温度T1に関するデータ、第2の制御温度T2に関するデータ、後述する所定時間t、及び後述する所定温度Δtに関するデータ等が格納されている。
【0049】
第2の制御部29は、水素自動車Bへの水素ガスの充填停止期間中において、自動コントロール弁16の開度が第1の開度となるように制御することで、水素ガス冷却ライン18−3の温度が第1の制御温度T1となるように保持する。
なお、第1の制御温度T1、第2の制御温度T2、所定時間t、及び所定温度Δtの詳細については、本実施の形態の流体冷却方法を説明する段階で説明する。
【0050】
また、水素自動車Bへの水素ガスの充填開始時において、第2の制御部29は、自動コントロール弁16の開度が第1の開度よりも大きい第2の開度となるように制御する。
そして、水素自動車Bへの水素ガスの充填期間中において、第2の制御部29は、温度測定器28が測定した水素ガス冷却ライン18−3の温度に基づいて、水素ガス冷却ライン18−3の温度が、周囲温度よりも低いピーク温度(以下、「ピーク温度Tp」という)に到達し、その後、ピーク温度Tpよりも低下した際、自動コントロール弁16を閉じる制御をする。
また、自動コントロール弁16を閉じた後、水素ガス冷却ライン18−3の温度が、周囲温度よりも低い第2の制御温度T2よりも上昇した際、5秒未満の短時間自動コントロール弁16を開度10%程度まで開け、その後、自動コントロール弁16を閉じる操作を繰り返し、第2の制御温度T2となるように制御する。
【0051】
上記構成とされた水素ガス冷却システム10は、圧縮部13において、低温低圧の気体状態とされた冷媒を圧縮し、凝縮器14において、高温高圧の気体状態とされた冷媒を凝縮(液化)させ、膨張部17において、低温高圧の液体状態とされた冷媒を断熱膨張させ、水素ガス冷却器18において、低温低圧の気体状態とされた冷媒を蒸発(気化)させ、発生させた冷熱により、水素自動車Bに充填する水素ガスを冷却する。
このように、水素ガス冷却システム10では、冷媒を圧縮する処理、冷媒を凝縮(液化)させる処理、冷媒を膨張させる処理、及び冷媒を蒸発(気化)させる処理を順次繰り返し行う。
【0052】
図2は、図1に示す水素ガス冷却システムを用いて、70MPaGの充填圧力の燃料タンクに水素ガスを充填する水素ガス充填期間、及び水素ガス充填期間前後の水素ガス充填停止期間における自動コントロール弁の開度、水素ガス冷却ラインの温度、燃料タンク内の圧力、及び燃料タンク内への水素ガスの充填流量の関係を模式的に示す図(グラフ)である。図2に示すCは、従来、オーバーシュートが発生しやすかった領域(以下、「領域C」という)を示している。
【0053】
次に、図1及び図2を参照して、図1に示す水素ガス冷却システム10を用いた場合の本実施の形態の流体冷却方法(具体的には、水素ガス冷却方法)について説明する。
水素ガスの充填停止期間(水素自動車に水素ガスの充填をしていない期間)では、自動コントロール弁16の開度を第1の開度に調節することで、蒸発部18−2に連続的に冷媒を供給し、該冷媒を蒸発させることにより、周囲温度(例えば、+5〜+35℃の範囲内の温度)よりも低い第1の制御温度T1となるように水素ガス冷却ライン18−3の温度を制御する。
この段階では、自動水素ガス供給弁24は完全に閉じられており、水素ガス冷却ライン18−3に水素ガスは供給されていない。
【0054】
第1の制御温度T1は、図2に示す水素ガス充填期間における水素ガス冷却ライン18−3のピーク温度Tpを考慮して決定するとよい。
また、図2に示すように、水素自動車Bへの水素ガスの充填流量が多い場合や周囲温度が高い場合など、温度上昇が大きいと予想される場合には、第1の制御温度T1は、例えば、−40℃よりも高く、かつ第2の制御温度T2よりも低い温度にするとよい。具体的には、第2の制御温度T2が−33℃で、周囲温度(水素ガスの温度)が+35℃の場合、流体の温度をできるだけ早く第2の制御温度T2に近づけるため、第1の制御温度T1は、例えば、−35℃とすることが望ましい。
【0055】
一方、水素自動車Bへの水素ガスの充填流量が少ない場合や周囲温度が低い場合など、温度上昇が小さいと予想される場合には、第1の制御温度T1は、周囲温度よりも低く、かつ第2の制御温度T2よりも高い温度であってもよい。
この場合、具体的には、周囲温度が+5℃、第2の制御温度T2が−33℃の場合、第1の制御温度T1は、例えば、−5℃とすることができる。
なお、第1の開度は、微開な開度であるため、自動コントロール弁16から流れる冷媒の流量は、第2の開度のときに流れる冷媒の1/10から1/5程度であり、非常に少ない。
【0056】
次いで、水素ガス充填工程(流体充填工程)について説明する。
水素ガス充填工程では、最初に、第2の制御部29により、自動コントロール弁16の開度を第1の開度よりも大きい第2の開度することで、第1の開度のときよりも多くの冷媒を供給するとともに、自動水素ガス供給弁24を所定の開度で開けることで、水素ガス供給源23から供給された水素ガスを水素ガス冷却ライン18−3に導入させて、冷媒を蒸発させることにより水素ガスを冷却する(第1の段階)。
【0057】
このとき、自動コントロール弁16がある程度の時間(例えば、1〜2秒程度)をかけて、第1の開度から第2の開度となる。このため、蒸発部18−2を流れる冷媒の量では、自動コントロール弁16が第2の開度になる前の段階において、水素ガス冷却ライン18−3を流れる水素ガスを十分に冷却することができないため、水素ガス冷却ライン18−3の温度は、目標とする冷却温度である第2の制御温度T2を超えて、ピーク温度Tpに到達する。
【0058】
自動コントロール弁16の開度が第2の開度になると、水素ガス冷却ライン18−3を流れる水素ガスを冷却するために必要な冷媒が十分に供給されるため、水素ガス冷却ライン18−3の温度は、ピーク温度Tpに到達し、その後、ピーク温度Tpよりも低い温度となる。
【0059】
次に、流体冷却ラインの温度がピーク温度Tpに到達し、かつ周囲温度よりも低い温度となり、その後、ピーク温度Tpよりも所定温度(以下、「所定温度Δt」という)低下した際、自動コントロール弁16を閉じる。また、自動コントロール弁16と蒸発部18−2との間の冷媒循環ライン11に残存する冷媒により、水素ガス冷却ライン18−3の温度を、周囲温度よりも低い第2の制御温度T2まで降下させる(第2の段階)。
その後、水素ガス冷却ライン18−3の温度が、第2の制御温度T2よりも上昇した場合、自動コントロール弁を短時間微開させ、温度を第2の制御温度T2付近に維持する。
所定温度Δtは、自動コントロール弁16を閉じるか否かの判定を行う際の判断基準となる値である。
【0060】
その後、水素自動車Bの燃料タンク(図示せず)の圧力が充填終了圧力(本実施の形態の場合、70MPaG)に到達すること、水素自動車Bへの水素ガスの充填(流体充填工程)が終了する。
そして、流体充填工程が終了すると、自動コントロール弁16の開度が閉状態から第1の開度に変更され、蒸発部18−2に連続的に冷媒が供給され、該冷媒により、周囲温度よりも低い第1の制御温度T1となるように流体冷却ライン18−3の温度が制御される。
【0061】
本発明の流体冷却方法(具体的には、水素ガス冷却方法)によれば、水素自動車B(流体消費部)に流体を充填していない状態において、凝縮部14と膨張部17との間に設けられた自動コントロール弁16の開度を第1の開度に調節することで蒸発部18−2に連続的に冷媒を供給し、該冷媒により、周囲温度よりも低い第1の制御温度T1となるように水素ガス冷却ライン18−3の温度を制御する。このことで、流体充填工程(本実施の形態の場合、流体が水素なので、水素ガス充填工程)の開始時の温度を周囲温度よりも低い温度に維持することが可能となる。
【0062】
これにより、流体充填工程において、従来よりも短時間で水素ガス冷却ライン18−3の温度を第2の制御温度T2(充填時における目標とする水素ガス冷却ライン18−3の温度)に到達させ、かつ第2の制御温度T2程度に長い時間維持することができる。
したがって、水素自動車Bに十分に冷却された水素ガスを、従来よりも長い時間供給することが可能となるので、水素自動車Bの燃料タンクの温度が該燃料タンクの上限温度に到達することを抑制できる。
【0063】
また、水素ガスの充填時において、水素ガス冷却ライン18−3の温度が、周囲温度よりも低いピーク温度Tpに到達し、その後、ピーク温度Tpよりも所定温度Δt低下した際、自動コントロール弁16を閉じ、自動コントロール弁16と蒸発部18−2との間の冷媒循環ライン11に残存する冷媒により、水素ガス冷却ライン18−3の温度を、ピーク温度Tpよりも低い第2の制御温度T2まで降下させることで、流体充填工程が終了した時点において、自動コントロール弁16と膨張部17との間の冷媒循環ライン11に残存する冷媒を従来よりも消費することが可能となる。
【0064】
これにより、自動コントロール弁16と膨張部17との間に位置する冷媒循環ライン11内に残存する冷媒に起因するオーバーシュート(水素ガス冷却ライン18−3の温度が流体充填期間の温度よりも下がる現象)の発生を抑制できる(図2に示す領域C参照。)。
【0065】
また、上記流体冷却方法において、流体充填工程の終了時において、自動コントロール弁16と膨張部17との間に位置する冷媒循環ライン11内に存在する冷媒がなくなるように、第2の開度とされた自動コントロール弁16を閉じる操作の開始時から流体充填工程の終了時までの時間を設定するとよい。
これにより、水素ガス充填期間後に行う水素ガス充填停止期間の開始時において、自動コントロール弁16と膨張部17との間に位置する冷媒循環ライン11内に冷媒が残存することがなくなるため、オーバーシュートを完全に抑制することができる。
【0066】
また、第2の段階の後において、自動コントロール弁16を閉じた後に、水素ガス冷却ライン18−3の温度が第2の制御温度T2よりも上昇した際、1秒未満の短時間自動コントロール弁16を開度10%程度まで開け、その後、自動コントロール弁16を閉じる操作を繰り返し行ってもよい。
これにより、第2の段階において、水素ガス冷却ライン18−3の温度をより高い精度で第2の制御温度T2となるように制御することが可能となるので、水素自動車Bの燃料タンク(図示せず)に、十分に冷却された水素ガスを確実に充填することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、流体として水素ガス、流体消費部として水素自動車Bの燃料タンクを用いた場合を例に挙げて説明したが、流体は、水素ガスに限定されない。
例えば、流体として酸素ガスやメタンガス等を用い、流体消費部として充填用FRP容器を用いた場合も、本実施の形態の流体冷却方法と同様な手法で、充填ガスを冷却することができ、効果を得ることができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0069】
本実施の形態では、自動コントロール弁16の開度を調節することで、上記流体冷却方法を行う場合を例に挙げて説明したが、例えば、圧縮部13の圧縮速度を調節することで、実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、冷媒により流体を冷却する流体冷却方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10…水素ガス冷却システム、11…冷媒循環ライン、11A…一端、11B…他端、13…圧縮部、14…凝縮部、16…自動コントロール弁、17…膨張部、18…水素ガス冷却器、18−1…筐体、18−2…蒸発部、18−3…水素ガス冷却ライン、21…水素ガス導入ライン、22…水素ガス充填ライン、23…水素ガス供給源、24…自動水素ガス供給弁、26…第1の制御部、28…温度測定器、29…第2の制御部、A…水素防爆エリア、B…水素自動車
図1
図2
図3