特許第6390968号(P6390968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6390968-ガラスラン 図000002
  • 特許6390968-ガラスラン 図000003
  • 特許6390968-ガラスラン 図000004
  • 特許6390968-ガラスラン 図000005
  • 特許6390968-ガラスラン 図000006
  • 特許6390968-ガラスラン 図000007
  • 特許6390968-ガラスラン 図000008
  • 特許6390968-ガラスラン 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390968
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20180910BHJP
【FI】
   B60J10/76
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-65616(P2015-65616)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-182939(P2016-182939A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】安達 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】寺本 光伸
(72)【発明者】
【氏名】高屋 雅博
(72)【発明者】
【氏名】子林 勇平
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−046476(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0033614(US,A1)
【文献】 特開2002−187434(JP,A)
【文献】 特開2006−347485(JP,A)
【文献】 特開2013−209093(JP,A)
【文献】 特開2013−184627(JP,A)
【文献】 特開2001−301542(JP,A)
【文献】 実開平07−031434(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランにおいて、
該ガラスランは、押出成形により形成され、上記ドアフレームの上辺に取付けられる上辺部と、押出成形により形成され、上記ドアフレームの縦辺に取付けられる縦辺部と、型成形により形成され、上記上辺部と上記縦辺部とを接続して上記ドアフレームのコーナー部に取付けられるコーナー部とから形成され、
上記上辺部は、ドアガラスをシールするガラスラン部と、上記ドアフレームに取付けられるトリム部が一体的に形成され、
上記ガラスラン部は、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、上記車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設し、
上記トリム部は、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなし、上記上辺部の上記ボディー側側壁には、上記車体開口部周縁と当接する上辺トリム部シールリップが形成され、
上記コーナー部は、上記ガラスラン部と上記トリム部が一体的に形成され、上記上辺部と接続する上辺接続部と、上記縦辺部と接続する縦辺接続部を有し、上記コーナー部の上記上辺接続部には、上記トリム部に上記車体開口部周縁と当接するコーナートリム部シールリップが形成され、
上記コーナー部の上記上辺接続部と上記上辺部は接続面が長手方向に対して傾斜し、上記上辺トリム部シールリップと上記コーナートリム部シールリップは、接続面が長手方向に対して傾斜していることを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
上記上辺トリム部シールリップは、上記コーナートリム部シールリップの剛性よりも大きく形成された請求項1に記載のガラスラン。
【請求項3】
上記上辺トリム部シールリップと上記コーナートリム部シールリップの接続面は、上記上辺トリム部シールリップの根元部は、上記コーナートリム部シールリップの先端部よりも上記コーナートリム部シールリップ側に入り込んで傾斜して形成されている請求項1又は請求項2に記載のガラスラン。
【請求項4】
上記上辺トリム部シールリップの上記車体開口部周縁と当接する面には、低摺動層が形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガラスラン。
【請求項5】
上記コーナー部の上記上部接続面では、上記上辺部のガラスラン部の上記車外側側壁及び上記トリム部底壁と、上記コーナー部の上記ガラスラン部の上記車外側側壁と上記トリム部底壁は、接続面が長手方向に対して傾斜している請求項1に記載のガラスラン。
【請求項6】
上記上辺接続部と上記上辺部の接続面及び上記上辺部の上記トリム部底壁と、上記コーナー部の上記トリム部底壁は、傾斜角度が15〜45度傾斜している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガラスラン。
【請求項7】
上記トリム部のガラスラン側側壁と上記ガラスラン部のガラスラン部底壁は、合体して形成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガラスラン。
【請求項8】
上記トリム部のトリム部底壁と上記ガラスラン部の車外側側壁の外面に上記上辺部から連続して装飾部材が設けられた請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアサッシュが設けられているドアの自動車の車体開口部周縁とドアとの間をシールするシール構造においては、例えば、車体開口部周縁のフランジにオープニングトリムウエザストリップを取り付け、ドアサッシュの外周にドアウエザストリップを取り付け、ドア閉時にオープニングトリムウエザストリップの中空シール部がドアサッシュの膨出部に当接し、ドアウエザストリップの中空シール部およびシールリップが車体開口部周縁のアウターパネルに当接してドアとの間をシールしていた。
【0003】
このとき、ドアの内部において昇降するドアガラスは、その周囲をドアサッシュの内周側に取付けられたガラスランによって保持され、ガラスランの断面略コ字状の溝部内を昇降しており、このドアガラスとドアサッシュとの間のシールは、このガラスランによりなされている。
【0004】
自動車の側面の外観では、ドアガラスの周囲にガラスラン、ドアサッシュやセンターピラーが目立つこととなり、デザイン的に改良の必要性があった。また、ドアサッシュやセンターピラーとドアガラスの間に、ガラスランが存在するため、ドアサッシュとドアガラスとの間の表面でギャップが存在してデザイン的に好ましくなかった。
【0005】
このため、図6に示すように、サッシュレスドアタイプの自動車車体として、ドアサッシュの車外側の面をなくしてフランジのみとして、ドア1のベルトライン部位よりも上部では、ドアガラス5だけを自由に昇降させることが行われている。これによって、自動車の側面では、ドア1のベルトライン部位から上の部分では、ドアガラス5のみの外観とすることができる。
【0006】
この場合に、図7に示すように、ガラスラン110は、ドアガラス5とドアフレーム2の間をシールするガラスラン部120と、ガラスラン110をドアフレーム2の先端のフランジ部3に取付けるトリム部130から構成されている(例えば、特許文献1参照。)。ガラスラン部120は、車外側側壁121、車内側側壁122及び底壁123からなる断面略コ字状の本体と、車外側側壁121及び車内側側壁122の先端からそれぞれ断面略コ字状の内部斜め方向に延設される車外側シールリップ124と車内側シールリップ125から構成されている。そして、車外側シールリップ124と車内側シールリップ125トでドアガラス5をシールしている。
【0007】
トリム部130は、ガラスラン部120の底壁123と一体に形成されるガラスラン側側壁131と、ボディー側側壁132とトリム部底壁133からなる断面略コ字状に形成され、ボディー側側壁132の外面には、ドア閉時に車体開口部周縁6に当接してシールする車外側トリム部シールリップ134と車内側トリム部シールリップ135が形成されている。
【0008】
そして、ドアフレームのコーナー部においては、押出成形された上辺部のガラスラン110と縦辺部のガラスラン110を型成形されたガラスランで接続している。
このガラスラン110を製造する過程における取り回しや、ドアパネルへの取付け作業時に湾曲させる場合等において、押出成形された部分と型成形された部分の接続面に負荷がかかり、割れ目が生じる場合がある。
【0009】
この場合に、図8に示すように、上辺部211と縦辺部212を接続するコーナー部213の接続面214に肉盛部215を設けて、接続面214を補強することも行われている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、意匠面やシール面には意匠性やシール性が低下するため、肉盛部215を設けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−46476号公報
【特許文献2】特開2001−301542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このため、サッシュレスドアタイプの自動車において、シール性に優れて、接続面に亀裂の生じない、製造が容易なガラスランが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランにおいて、
ガラスランは、押出成形により形成され、ドアフレームの上辺に取付けられる上辺部と、押出成形により形成され、ドアフレームの縦辺に取付けられる縦辺部と、型成形により形成され、上辺部と縦辺部とを接続してドアフレームのコーナー部に取付けられるコーナー部とから形成され、
上辺部は、ドアガラスをシールするガラスラン部と、ドアフレームに取付けられるトリム部が一体的に形成され、
ガラスラン部は、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設し、
トリム部は、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなし、上辺部のボディー側側壁には、車体開口部周縁と当接する上辺トリム部シールリップが形成され、
コーナー部は、ガラスラン部とトリム部が一体的に形成され、上辺部と接続する上辺接続部と、縦辺部と接続する縦辺接続部を有し、コーナー部の上辺接続部には、トリム部に車体開口部周縁と当接するコーナートリム部シールリップが形成され、
コーナー部の上辺接続部と上辺部は接続面が長手方向に対して傾斜し、上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップは、接続面が長手方向に対して傾斜していることを特徴とするガラスランである。
【0013】
請求項1の本発明では、上辺部は、ドアガラスをシールするガラスラン部と、ドアフレームに取付けられるトリム部が一体的に形成される。このため、ガラスラン部及びトリム部を同時に押出成形することができ、製造が容易である。また、ガラスラン部及びトリム部を合わせた寸法を小さくすることができ、ドアの上辺部をすっきりさせることができ、美観を向上させることができる。
【0014】
ガラスラン部は、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設する。このため、ガラスラン部でドアガラスの昇降を案内するとともに、車外側シールリップと車内側シールリップで保持して、外周部をシールすることができる。
【0015】
トリム部は、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなしている。このため、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状の部分でドアフレームの先端を挟持して、ガラスランを取付けることができ、ドアガラスが昇降しても、ガラスラン部がドアガラスのシールを確実にすることができる。
上辺部のボディー側側壁には、車体開口部周縁と当接する上辺トリム部シールリップが形成されている。このため、上辺トリム部シールリップは、ドア閉時に車体開口部周縁と当接して、ドアと車体開口部周縁とのシールをすることができる。
【0016】
コーナー部は、ガラスラン部とトリム部が一体的に形成され、上辺部と接続する上辺接続部と、縦辺部と接続する縦辺接続部を有し、上辺接続部には、トリム部に車体開口部周縁と当接するコーナートリム部シールリップが形成されている。このため、コーナー部のガラスラン部とトリム部により上辺部と縦辺部のガラスラン部とトリム部を加硫接着することができる。コーナートリム部シールリップによりコーナー部における車体開口部周縁とドアフレームの間をシールすることができる。
コーナー部の上辺接続部には、トリム部に車体開口部周縁と当接するコーナートリム部シールリップが形成されている。このため、コーナートリム部シールリップは、ドア閉時に車体開口部周縁と当接して、ドアのコーナー部と車体開口部周縁のコーナー部とのシールをすることができる。
【0017】
コーナー部の上辺接続部と上辺部は接続面が長手方向に対して傾斜している。このため、接続面の面積を大きくして接続強度を大きくするとともに、接続面に対する応力が剥がれ方向とせん断方向とに分かれるため、接続面での剥がれが抑制されることができる。
上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップは、接続面が長手方向に対して傾斜している。このため、上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップの接続面の面積を大きくして接続強度を大きくするとともに、接続面に対する応力が剥がれ方向とせん断方向とに分かれるため、接続面での上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップの剥がれが抑制されることができる。
【0021】
請求項2の本発明は、上辺トリム部シールリップは、コーナートリム部シールリップの剛性よりも大きく形成されたガラスランである。
【0022】
請求項2の本発明では、上辺トリム部シールリップは、コーナートリム部シールリップの剛性よりも大きく形成されているため、コーナー部の型成形が容易であるとともに、接続面で剛性が異なっても接続面が長手方向に対して傾斜していため、接続面の面積を大きくして接続強度を大きくすることができ、接続面の剥離を防止できる。
【0023】
請求項3の本発明は、上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップの接続面は、上辺トリム部シールリップの根元部は、上辺トリム部シールリップの先端部よりもコーナートリム部シールリップ側に入り込んで傾斜して形成されているガラスランである。
【0024】
請求項3の本発明では、上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップの接続面は、上辺トリム部シールリップの根元部は、上辺トリム部シールリップの先端部よりもコーナートリム部シールリップ側に入り込んで傾斜して形成されている。このため、コーナー部を型成形するときに、ガラスランの上辺部の長手方向の先端を金型に挟持するが、上辺トリム部シールリップの幅方向の先端は根元部から序変しつつ保持されているので、型成形の材料の流れによっても、上辺トリム部シールリップを変形することなく接続することができる。
【0025】
請求項4の本発明は、上辺トリム部シールリップの車体開口部周縁と当接する面には、低摺動層が形成されているガラスランである。
【0026】
請求項4の本発明では、上辺トリム部シールリップの車体開口部周縁と当接する面には、低摺動層が形成されているため、ドア開閉時の異音発生が抑制される。
【0027】
請求項5の本発明は、コーナー部の上部接続面では、上辺部のガラスラン部の車外側側壁及びトリム部底壁と、コーナー部のガラスラン部の車外側側壁及びトリム部底壁は、接続面が長手方向に対して傾斜しているガラスランである。
【0028】
請求項5の本発明は、コーナー部の上部接続面では、上辺部のガラスラン部の車外側側壁及びトリム部底壁と、コーナー部のガラスラン部の車外側側壁及びトリム部底壁は、接続面が長手方向に対して傾斜している。このため、上辺部のガラスラン部の車外側側壁及びトリム部底壁と、コーナー部のガラスラン部の車外側側壁及びトリム部底壁の接続面の面積を大きくして接続強度を大きくするとともに、接続面に対する応力が剥がれ方向とせん断方向とに分かれるため、接続面での上辺部のトリム部底壁とコーナー部の上辺接続部のトリム部底壁の剥がれが抑制されることができる。
【0029】
請求項6の本発明は、上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップの接続面及び上辺部のトリム部底壁とコーナー部の上辺接続部のトリム部底壁の接続面は、傾斜角度が15〜45度傾斜しているガラスランである。
【0030】
請求項6の本発明では、上辺トリム部シールリップとコーナートリム部シールリップの接続面及び上辺部のトリム部底壁とコーナー部の上辺接続部のトリム部底壁の接続面は、傾斜角度が15〜45度傾斜しているため、接続面の面積を充分に大きくして接続強度を大きくするとともに、接続面に対する応力が剥がれ方向とせん断方向とに適切に分かれるため、接続面での剥がれが抑制されることができる。
傾斜角度が15度未満の場合には、接続面が長手方向に傾斜して広がりすぎて、成形の手間がかかり、傾斜角度が45度を超える場合には、接続面の面積が小さくなり、接続面の強度が不十分となる。
【0031】
請求項7の本発明は、トリム部のガラスラン側側壁とガラスラン部のガラスラン部底壁は、合体して形成されたガラスランである。
【0032】
請求項7の本発明では、トリム部のガラスラン側側壁とガラスラン部のガラスラン部底壁は、合体して形成されたため、ガラスラン側側壁とガラスラン部底壁の合計の厚さを薄くすることができ、ガラスランの軽量化に貢献することができる。また、ガラスランの寸法を小さくすることができる。
【0033】
請求項8の本発明は、トリム部のトリム部底壁とガラスラン部の車外側側壁の外面に上辺部から連続して装飾部材が設けられたガラスランである。
【0034】
請求項8の本発明では、トリム部のトリム部底壁とガラスラン部の車外側側壁の外面に上辺部から連続して装飾部材が設けられたため、ドアフレームの上辺部分の美観を向上させることができる。
【発明の効果】
【0035】
コーナー部の上辺接続部と上辺部は、接続面が長手方向に対して傾斜しているため、接続面の面積を大きくして接続強度を大きくするとともに、接続面に対する応力が剥がれ方向とせん断方向とに分かれるため、接続面での剥がれが抑制されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施の形態における、ガラスランの上辺部の断面図であり、図6のA−A線に沿った断面図である。
図2】本発明の実施の形態における、ガラスランのコーナー部の正面図である。
図3】本発明の実施の形態における、ガラスランのコーナー部の背面図である。
図4】本発明の実施の形態における、ガラスランの上辺部とコーナー部を接続する部分の平面図である。
図5】本発明の実施の形態における、ガラスランの正面図である。
図6】自動車の側面図である。
図7】従来のガラスランの断面図である。
図8】従来の他のガラスランのコーナー部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の形態を図1図6に基づき説明する。
図1図6は、本発明の実施の形態を示すものである。図6は、自動車の側面図である。図6に示すように、本発明のガラスラン10は、サッシュレスドアタイプの自動車に使用されるもので、自動車の側面のドア1であるフロントドアとリヤドアの両方のベルトライン部位よりも上部には、ドアサッシュの車外側の面がなくドアガラス5が車外側からは、ほぼ全面に見えるように構成され、ドアガラス5は、ドア1から上下に昇降することができる。
【0038】
図5に示すように、ガラスラン10は、ドアフレーム2の上辺に取付けられる上辺部11と、ドアフレーム2のフロント側縦辺に取付けられるフロント側縦辺部12と、ドアフレーム2のリヤ側縦辺に取付けられるリヤ側縦辺部13と、上辺部11とフロント側縦辺部12とを接続してドアフレーム2のコーナー部に取付けられるフロント側コーナー部14と、上辺部11とリヤ側縦辺部13とを接続してドアフレーム2のコーナー部に取付けられるリヤ側コーナー部15とから形成される。
【0039】
このため、ドアフレーム2の上辺ばかりでなく、ドアガラス5の側端の縦辺側の部分をガラスラン10が保持してシールすることができる。また、ドアフレーム2のコーナー部もフロント側コーナー部14とリヤ側コーナー部15で確実にシールすることができる。
【0040】
上辺部11、フロント側縦辺部12及びリヤ側縦辺部13は、それぞれ押出成形により成形され、所定寸法に切断されて形成される。フロント側コーナー部14とリヤ側コーナー部15は、型成形により成形される。それぞれフロント側コーナー部14は、上辺部11とフロント側縦辺部12を、リヤ側コーナー部15は、上辺部11とリヤ側縦辺部13とを、型成形時に加硫接着により接続する。
【0041】
本発明は、ドアフレーム2に取付けられるガラスラン10に関するものであり、特にコーナー部の上辺部11側の部分に関するものである。本発明を、フロントドアのリヤ側コーナー部15、特にリヤ側コーナー部15の上辺部11側の部分に関するものを例にとり説明するが、リヤドアのフロント側コーナー部14にも使用することができる。
まず、上辺部11の形状を説明し、次に、リヤ側コーナー部15とその部分に使用された上辺部11の切欠き部分と、リヤ側コーナー部15の形状を説明する。
【0042】
ガラスラン10の上辺部11の形状は、図1に示すように、ドアフレーム2の内周に取付けられるガラスラン部20と、ドアフレーム2の先端に形成されるフランジ部3に取付けられるトリム部30とから構成される。まず、ガラスラン部20、トリム部30のそれぞれの形状について説明する。
【0043】
ガラスラン部20は、車外側側壁21、車内側側壁22及びガラスラン部底壁23からなる断面略コ字状の本体部と、車外側側壁21及び車内側側壁22の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップ24と車内側シールリップ25を延設している。このため、車外側側壁21、車内側側壁22及びガラスラン部底壁23からなる断面略コ字状の内部をドアガラス5の端部が摺動して、ドアガラス5を保持し、シールすることができる。
【0044】
ガラスラン部20の車内側側壁22、車外側シールリップ24と車内側シールリップ25は、軟質部材から形成されている。軟質部材として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。軟質部材を使用するため、車外側シールリップ24と車内側シールリップ25が柔軟に撓むことができ、ドアガラス5が上昇するときに、ドアガラス5の端部を確実に当接して、ドアガラス5とドアフレーム2の間をシールすることができる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用すると、トリム部30がオレフィン系合成樹脂を使用した場合に、両者を一体的に同時に成形しやすく、リサイクルも容易である。なお、微発泡体を使用することもできる。
【0045】
車内側側壁22と車内側シールリップ25を車外側側壁21と車外側シールリップ24よりも大きく、肉厚に形成することが好ましい。この場合には、ドアガラス5が上昇してガラスラン10内に位置したときに、ドアガラス5を車外側にシフトさせることができ、ドア1の車外側面の段差を小さくして、見栄えを良くし、風切り音を減少させることができる。
【0046】
車外側シールリップ24と車内側シールリップ25の表面(ドアガラス5と接触する面)には、低摺動部材を塗布することが好ましい。低摺動部材として、低摺動性のTPV(動的架橋型オレフィン系熱可塑性 エラストマー)を薄層に形成したり、シリコン塗料、ウレタン塗料等を塗布したりして使用することができる。これにより、ドアガラスの昇降をスムースにするとともに、異音の発生を防止できる。
【0047】
ガラスラン部底壁23の内面側に、車内側側壁22との連結部分から底壁リップ26を形成することができる。底壁リップ26は、ドアガラス5が上昇したときに、ドアガラス5の上端が底壁リップ26に当接して、ガラスラン部底壁23への衝撃を吸収することができる。底壁リップ26の表面にも低摺動部材を塗布することが好ましい。
【0048】
車内側側壁22の先端の外面に車内側取付凹部29が形成されている。ガラスラン10をドアフレーム2に取付けたときに、車内側取付凹部29には、ドアフレーム2の突部が係合されて、ガラスラン部20の車内側側壁22が係止される。
車内側側壁22の先端には、断面略コ字状の外方に向かって車内側カバーリップ28が形成されて、ドアフレーム2の突部に当接している。
【0049】
次に、トリム部30について説明する。図1に示すように、トリム部30は、ガラスラン部底壁23と合体して形成されるガラスラン側側壁31と、車体開口部周縁6と対向するボディー側側壁32及びトリム部底壁33からなる断面略コ字状をなしている。この断面略コ字状の内部に、ドアフレーム2の先端のフランジ部3が挿入され、トリム部30で挟持し、ガラスラン10をドアフレーム2に保持する。
【0050】
トリム部30のボディー側側壁32の外面(車体開口部周縁6と対向する面)には、上辺トリム部シールリップ34が形成されている。ドア閉時に、上辺トリム部シールリップ34が車体開口部周縁6に当接して、車体開口部周縁6とドアフレーム2の間をシールする。上辺トリム部シールリップ34は、2本形成することができ、その場合には、ドアフレーム2の間を二重にシールする。
【0051】
なお、図1に示すように、ドアフレーム2には、ガラスラン10よりも車内側に車体開口部周縁6と当接する中空シール部61が形成されたドアウエザストリップ60が取付けられている。ガラスラン10の上辺トリム部シールリップ34とドアウエザストリップ60の中空シール部61によっても二重にシールすることができる。
【0052】
ボディー側側壁32の断面略コ字状の内面には、トリム部保持リップ36が複数本形成され、ガラスラン側側壁31の断面略コ字状の内面には、トリム部保持突条37が複数本形成されている。図1に示すように、ドアフレーム2のフランジ部3がトリム部30の断面略コ字状の内部に挿入されたときに、フランジ部3の一方の面をトリム部保持リップ36で保持し、フランジ部3の他方の面をトリム部保持突条37で保持することができる。
【0053】
トリム部30は、ガラスラン側側壁31と、ボディー側側壁32、トリム部底壁33、トリム部保持突条37は、硬質部材で形成され、上辺トリム部シールリップ34、トリム部保持リップ36は軟質部材で形成される。トリム部30は、ガラスラン部20と合わせて、硬質部材と軟質部材の同時成形により押出成形される。
【0054】
これにより、トリム部30の本体部分は剛性が強く、フランジ部3を保持することができるとともに、上辺トリム部シールリップ34は、車体開口部周縁6の形状に合わせて、柔軟に当接してシールし、トリム部保持リップ36はフランジ部3に柔軟に当接して、シールすることができる。
【0055】
フロント側縦辺部12及びリヤ側縦辺部13の形状は、上辺部11のガラスラン部20と同様に、車外側側壁21、車内側側壁22及び底壁23からなる断面略コ字状の本体部と、車外側側壁21及び車内側側壁22の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップ24と車内側シールリップ25を延設している。このため、車外側側壁21、車内側側壁22及びガラスラン部底壁23からなる断面略コ字状の内部をドアガラス5の端部が摺動して、ドアガラス5を保持し、シールすることができる。
車外側シールリップ24と車内側シールリップ25は断面略コ字状の本体部の内側の底壁23寄りにそれぞれ補助シールリップを設けることができる。
【0056】
次に、図2図4に基づき、リヤ側コーナー部15について説明する。
リヤ側コーナー部15は、上辺部11とリヤ側縦辺部13とを接続するコーナー接続部50と、コーナー接続部50からリヤ側に延設されてドアフレーム2のリヤ側の先端に係合されるコーナー係合部40から構成される。このため、リヤ側コーナー部15を型成形するときに、同時にコーナー接続部50で上辺部11とリヤ側縦辺部13とを加硫接着することができる。また、コーナー係合部40でリヤ側コーナー部15をドアフレーム2のリヤ側の先端に取付けて、リヤ側コーナー部15がドアフレーム2から外れることを防止できる。
【0057】
コーナー接続部50は、図2図3に示すように、上辺部接続部51のコーナー部上部接続面54で上辺部11と接続し、縦辺部接続部52のコーナー部下部接続面55でリヤ側縦辺部13と接続している。
コーナー接続部50は、上辺部11のガラスラン部20の形状から変化して、リヤ側縦辺部13の形状に連続している。
【0058】
コーナー部上部接続面54では、ガラスラン10の上辺部11の上辺トリム部シールリップ34とコーナー接続部50のコーナートリム部シールリップ53が接続されている。
さらに、コーナー部上部接続面54では、上辺部11のガラスラン部20の車外側側壁21及びトリム部底壁33と、コーナー接続部50のガラスラン部20の車外側側壁相当部とトリム部底壁相当部が接続されている。
【0059】
上辺トリム部シールリップ34とコーナートリム部シールリップ53は、コーナー部上部接続面54が上辺部11の長手方向に対して傾斜している。
また、コーナー部上部接続面54では、上辺部11のガラスラン部20の車外側側壁21及びトリム部底壁33と、コーナー接続部50のガラスラン部20の車外側側壁相当部とコーナー接続部50のトリム部底壁相当部のコーナー部上部接続面54が上辺部11の長手方向に対して傾斜している。
このため、コーナー部上部接続面54の面積を大きくして、コーナー部上部接続面54の接続強度を大きくすることができる。
【0060】
ガラスラン10をドアフレーム2に取付けるときや、ガラスラン10を接続型から外すときに、ガラスラン10を撓ませるが、接続面を傾斜させることにより撓みに伴い生じるコーナー部上部接続面54に対する応力が剥がれ方向とせん断方向とに分かれるため、コーナー部上部接続面54での剥がれが抑制されることができる。
【0061】
コーナー部上部接続面54は、上辺部11の長手方向の垂直な面に対して傾斜角度が15〜45度傾斜形成することが好ましい。この場合には、コーナー部上部接続面54の面積を充分に大きくして、コーナー部上部接続面54の接続強度を大きくするとともに、上記のコーナー部上部接続面54に対する応力が剥がれ方向とせん断方向とに適切に分かれるため、コーナー部上部接続面54での剥がれが抑制されることができる。
【0062】
コーナー部上部接続面54の傾斜角度が45度を越える場合には、コーナー部上部接続面54が長手方向に広がりすぎて、コーナー成形部が大きくなりすぎてコスト的に不利となったり、型成形性が低下したりする。
傾斜角度が15度未満の場合には、コーナー部上部接続面54の面積が小さくなり、コーナー部上部接続面54の強度が不十分となるとともに、剥がれ方向の分力もあまり小さくならない。
【0063】
ガラスラン10をドア1に取付けた状態では、ガラスラン10は車両の上方向に凸となるように常時撓んでいるため、各接続面に常時応力がかかっている。接続面を上述のように傾斜面とすることで、接続面にかかる剥がれ方向の応力を小さくすることができる。
なお、ガラスラン10は車両の上方向に凸となるように常時撓んでいるため、上辺トリム部シールリップ34の先端は、撓みによる変形の外周側に位置するため、もっとも大きな応力を受けることとなる。
【0064】
また、ガラスラン10は車両の上方向に凸となるように常時撓んでいるときに、ドア1が開かれているときは、上辺トリム部シールリップ34は倒れ方向に変形することで応力を緩和させることができるが、ドア1が閉じられている場合(この状態が常時続く)には、上辺トリム部シールリップ34は、車体開口部周縁6に当接して、上辺トリム部シールリップ34の動きは規制されるため、上記のような倒れによる応力を緩和することができない。このため、傾斜面による応力の低下が大きな効果をもたらすことができる。
【0065】
上辺トリム部シールリップ34は、コーナートリム部シールリップ53の剛性よりも大きく形成されている。これは、コーナー部を型成形するときに、コーナー部全体を同じ材料で成形する必要があり、コーナー接続部50の全体の剛性を低くして、ドアフレーム2に取付けやすくするためである。
【0066】
上辺トリム部シールリップ34は、上述のとおりコーナートリム部シールリップ53の剛性よりも大きく形成されているため、コーナー部上部接続面54の応力がかかったときに、コーナー部上部接続面54が剥がれやすくなるが、コーナー部上部接続面54が上辺部11の長手方向に対して傾斜しているため、コーナー部上部接続面54の面積を大きくして接続強度を大きくすることができるとともに、応力が剥がれ方向とせん断方向とに分かれるため、コーナー部上部接続面54の剥離を防止できる。また、ガラスラン部20の車外側側壁21とトリム部底壁33も同様である。
【0067】
上辺トリム部シールリップ34とコーナートリム部シールリップ53の接続面は、上辺トリム部シールリップ34の根元部は、上辺トリム部シールリップ34の先端部よりもコーナートリム部シールリップ53側に入り込んで傾斜(図2における上端が左側に傾斜)して形成されている。
【0068】
このため、コーナー部を型成形するときに、ガラスラン10の上辺部11の長手方向の先端を金型に挟持するが、剛性の低い上辺トリム部シールリップ34の幅方向の先端は根元部で保持されているので、型成形の材料の流れによっても、押出成形で形成された上辺トリム部シールリップ34が変形することなく接続することができる。
【0069】
上辺トリム部シールリップ34とコーナートリム部シールリップ53の車体開口部周縁6と当接する面には、低摺動層を形成することが好ましい。この場合には、ドア開閉時に車体開口部周縁6と上辺トリム部シールリップ34とコーナートリム部シールリップ53からの異音発生が抑制される。低摺動層は、車外側シールリップ24と車内側シールリップ25の表面に形成された摺動部材と同じものを使用することができる。
【0070】
また、図1に示すように、トリム部底壁33と車外側側壁21の外面に、装飾部材である装飾モール33aを取付けると、ドアフレーム2の上辺部分の美観を向上させることができる。装飾モール33aは、リヤ側コーナー部15の上辺部側のコーナー部上部接続面54までトリム部底壁33とともに延設される。
【0071】
さらに、図2及び図3に示すように、リヤ側コーナー部15において、コーナー接続部50の上辺部接続部51の先端側にコーナー係合部40が形成される。コーナー係合部40の先端付近にドアフレーム2の先端に係合する係合部41が形成される。
コーナー接続部50の縦辺部接続部52とリヤ側縦辺部13の接続面であるコーナー部下部接続面55は、直線状に形成されている。
【0072】
ガラスラン10は、軟質部材では、ソリッド材もスポンジ材もいずれも、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂が使用され、例えば熱可塑性エラストマーでは、オレフィン系エラストマー、軟質合成樹脂では、軟質塩化ビニル等が使用される。硬質部材では、オレフィン系合成樹脂が使用され、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が使用される。
【符号の説明】
【0073】
1 ドア
6 車体開口部周縁
10 ガラスラン
20 ガラスラン部
21 車外側側壁
22 車内側側壁
23 ガラスラン部底壁
30 トリム部
31 ガラスラン側側壁
32 ボディー側側壁
33 トリム部底壁
34 上部トリム部シールリップ
50 コーナー接続部
51 上辺部接続部
54 コーナー部上部接続面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8