(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390977
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】薄膜堆積反応器及び薄膜層をインサイチューで乾式浄化するプロセス及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20180910BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20180910BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20180910BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20180910BHJP
C23C 16/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/31 B
H01L21/302 101H
H01L21/302 102
C23C16/44 J
C23C16/02
【請求項の数】25
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-546781(P2015-546781)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-516287(P2016-516287A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】CA2012001164
(87)【国際公開番号】WO2014094103
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年11月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515063389
【氏名又は名称】シースター ケミカルズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】オデドラ,ラエシュ
【審査官】
高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/037991(WO,A1)
【文献】
特開2004−146787(JP,A)
【文献】
特開平06−013351(JP,A)
【文献】
特開昭50−071272(JP,A)
【文献】
特開平06−005558(JP,A)
【文献】
特開平03−174725(JP,A)
【文献】
特表2010−522985(JP,A)
【文献】
特表2007−530792(JP,A)
【文献】
特開平02−018926(JP,A)
【文献】
特開2010−272807(JP,A)
【文献】
特開平06−310468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/02
C23C 16/44
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III−V族半導体の薄膜堆積用の化学反応器槽の内表面、および前記化学反応器槽内の基板に堆積した反応生成物を除去する方法であって、
反応器槽を少なくとも200℃の高温に加熱する工程;
一般式AOmXn[式中、Aは、N及びSからなる群から選択され;Oは酸素であり;Xはハロゲンであり;下付き添字m及びnは0を超える]であるエッチャントガスを前記反応器槽に導入する工程;
前記導入の前又は後に前記エッチャントガスを活性化する工程;
前記エッチャントガスと前記反応生成物の間でエッチング反応を進めて、前記反応器槽内のエッチング反応で生成される副生成物の再堆積なく前記反応生成物を除去する工程;及び
前記エッチング反応の副生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程を含み、
前記エッチング反応中に前記反応器槽内の圧力を20mBarから1000mBarの間とし、前記反応器槽の温度を少なくとも200℃とすることによって、前記反応器槽内のエッチング反応の副生成物の前記反応器槽内への再堆積をなくすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応器槽への前記導入前に前記エッチャントガスを発生させるさらなる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応器槽への前記エッチャントガスの前記導入前に、搬送ガスを液体化学的成分に通して泡立たせて前記液体化学的成分を前記エッチャントに揮発させるさらなる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の液体化学的成分に通して搬送ガスを泡立たせ、次いで、結果として得られたガスを合わせることにより前記エッチャントガスを発生させる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
2種以上の化学的成分ガスを混合することにより前記エッチャントガスを発生させる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記反応器槽への導入前に、加熱、紫外線及びプラズマ放電からなる群から選択される、ガス活性化槽中の活性化機構に前記エッチャントガスを曝露することによってそれを活性化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応器槽への導入後に、前記反応器槽内の全体加熱及び前記反応器槽内の局所熱源からなる群から選択される熱活性化機構に前記エッチャントガスを曝露することによってそれを活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチャントガスが一般式RX
[式中、Rは、H及びMeからなる群から選択され;
XはF、Cl、Br及びIからなる群から選択される。]の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エッチャントガスがまたハロゲンガス添加剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
III−V族半導体の薄膜堆積用の化学反応器槽の内表面、および前記化学反応器槽内の基板に堆積した反応生成物を除去する方法であって、
反応器槽を少なくとも100℃の高温に加熱する工程;
一般式AOmXnYp[式中、Aは、N及びSからなる群から選択され;Oは酸素であり;X及びYは相異なるハロゲンであり;下付き添字m、n及びpは0を超える]であるエッチャントガスを前記反応器槽に導入する工程;
前記導入の前又は後に前記エッチャントガスを活性化する工程;
前記エッチャントガスと前記反応生成物の間でエッチング反応を進めて、前記反応器槽内のエッチング反応で生成される副生成物の再堆積なく前記反応生成物を除去する工程;及び
前記エッチング反応の副生成物と一緒に前記エッチャントガスを排気する工程を含み、
前記エッチング反応中に前記反応器槽内の圧力を20mBarから1000mBarの間とし、前記反応器槽の温度を少なくとも200℃とすることによって、前記反応器槽内のエッチング反応の副生成物の前記反応器槽内への再堆積をなくすることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記反応器槽への前記導入前に前記エッチャントガスを発生させるさらなる工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器槽への前記エッチャントガスの前記導入前に、液体化学成分に通して搬送ガスを泡立たせて前記液体化学成分を前記エッチャントに揮発させるさらなる工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
複数の液体化学的成分に通して搬送ガスを泡立たせ、次いで、結果として得られたガスを合わせることにより前記エッチャントガスを発生させる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
2種以上の化学的成分ガスを混合することにより前記エッチャントガスを発生させる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前期反応器槽への導入前に、加熱、紫外線及びプラズマ放電からなる群から選択される、ガス活性化槽中の活性化機構に前記エッチャントガスを曝露することによってそれを活性化させる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記反応器槽への導入後に、前記反応器槽内の全体加熱及び前記反応器槽内の局所熱源からなる群から選択される熱活性化機構に前記エッチャントガスを曝露することによってそれを活性化させる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記エッチャントガスが一般式RX
[式中、Rは、H及びMeからなる群から選択され;
XはF、Cl、Br及びIからなる群から選択される。]の添加剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記エッチャントガスがまたハロゲンガス添加剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記圧力を500mBarから1000mBarの間とする、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項20】
前記高温を200℃から400℃の間とする、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項21】
前記高温を250℃から400℃の間とする、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項22】
前記エッチング反応中、前記温度を一定とする、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項23】
前記エッチング反応中、前記圧力を一定とする、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項24】
前記反応生成物が金属酸化物を含む、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項25】
前記反応生成物が酸化ガリウムを含む、請求項1又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜堆積反応器の内表面を乾式エッチング又は浄化するための方法、組成物及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属有機気相エピタキシー(MOVPE)は、有機金属気相エピタキシー(OMVPE)又は金属有機化学的気相成長法(MOCVD)としても知られ、整った化学的気相成長法である。MOVPEにおいて、超純粋ガスは反応器に注入され、精細に投与されて、半導体ウエハー上に原子の非常に薄い層を堆積する。必要とする化学元素を含む有機化合物又は金属有機物及び水素化物の表面反応は、材料及び化合物半導体の結晶成長エピタキシーのための状態を作る。伝統的なシリコン半導体と異なり、これらの半導体は、III族及びV族、II族及びVI族、IV族、又はIV、V及びVI族元素の組み合わせを含んでいてもよい。
【0003】
気相エピタキシー(VPE)技法において、反応体ガスを反応器中で高温で合わせて、化学的相互作用を引き起こし、基板上に材料の堆積をもたらす。原子層堆積(ALD)システムにおいては、反応体ガスは連続して導入されて所望の材料のコンフォーマルな薄膜の自己制御式成長が得られる。どちらの事例においても、反応器は、使用されている化学物質と反応しない材料で製造された槽である。それは高温にも耐えなければならない。この槽は、反応器壁、ライナー、支持台、ガス圧入法ユニット及び温度調整ユニットを含む。通常、反応器壁はステンレス鋼又は石英から製造されている。多くの場合、セラミック又は石英などの特殊ガラスが、反応器槽のライナーとして反応器壁と支持台の間に使用される。過熱を阻止するために、水などの冷媒を、反応器壁内の流路に流すことができる。基板は、制御された温度で保持された支持台に静置される。支持台は、使用される金属有機化合物に耐性のある材料から製造され、グラファイトが時には使用される。窒化物及び関連材料の成長のためには、グラファイト支持台上の特殊な被膜がアンモニア(NH
3)ガスによる腐食を阻止するのに必要である。
【0004】
MOCVDを実行するために使用される1つの種類の反応器は冷水壁反応器である。冷水壁反応器において、基板は、支持台としても働く架台によって支持される。架台/支持台は、反応槽中で熱エネルギーの第一の発生源である。支持台のみが加熱されるので、高温のウエハー面に届くまでガスは反応しない。架台/支持台は、炭素などの照射を吸収する材料で製造される。対照的に、冷水壁反応器の反応槽の壁は、通常、電磁波に概して透明な石英で製造される。冷水壁反応器の反応槽壁は、高温の架台/支持台から放射する熱によって間接的に加熱されてもよいが、架台/支持台より、また架台/支持台上に支持された基板より低温である。
【0005】
高温壁CVDなどの幾つかの状況においては、槽全体が加熱される。このことが特定のガスについては必要な場合があり、基板表面に達して基板に付着する前にガスを予め分解しておかねばならない。
【0006】
ガスはバブラーとして公知の仕組みによって反応器槽に導入される。バブラーにおいて、搬送ガス(通常、窒素又は水素)を金属有機液体中に泡立たせ、ガスに金属有機蒸気を拾い上げ、反応器に気相でそれを輸送する。輸送される金属有機蒸気の量は、搬送ガス流の速度、バブラー温度及び金属有機前駆体の蒸気圧に依存する。
【0007】
薄膜の堆積が実行されるとき、所望の表面にのみでなく、また支持台、壁及び天井を含むMOCVD又はALD反応器のあらゆる内表面にも膜は堆積する。反応器が浄化されずに頻繁に使用されるほど、堆積は厚くなる。堆積は最終的には層剥がれし始め、基板ウエハー上に落下し得る粒子を発生させ、それを汚染しウエハーの低い収率又は全損のいずれかをもたらす。反応器槽を流れる反応体ガスも堆積によって汚染され得る。これを避けるためには、反応器は定期的に浄化されなければならない。反応器に使用される構成及び材料に応じて、効果的な浄化は、反応器全部の剥ぎ取り及び湿式浄化を必要とし得るが、これは時間浪費であり反応器の効率を低下させる。さらに、反応器は、通常、316L及び304ステンレス鋼、炭化ケイ素、グラファイト、タングステン、アルミニウム、熱分解窒化ホウ素及び/又はエチレンプロピレンジエン(EPDN)ポリマーなどの広範囲の材料で構成されている。相異なる種類のエッチャント又は他の清浄剤を使用せずに、これらの種類の表面のすべてから堆積を浄化することは困難である場合がある。したがって、反応器内部のより単純で、より効果的な浄化手段が望まれる。
【0008】
パージガスと一緒に、乾燥HClガス、HFガス又は他の反応性ガスを、乾式エッチングによって特定の堆積を除去するために使用することができる。反応性ガスと接触すると、金属部材は揮発性ハロゲン化物に転換され、パージガスを用いて除去される。これらの高反応性エッチャントの使用は困難であるが、その理由は容器内の部材に対して腐食性であり、高温を必要とするからである。
【0009】
Miyaらへの(特許文献1)は、ハフニウム、ジルコニウム又は酸化アルミニウムなどの高誘電率膜を反応器槽から除去するために加熱エッチングする技法を開示している。BCl
3などのハロゲン化物系エッチャントガスは、槽に供給され、そこで、ハロゲン化物成分が放出され、ホウ素を解放して堆積した酸化物膜から優先的に酸素と結合し、堆積した膜内の化学結合を壊す。次いで、反応生成物はすべて反応槽からパージすることができる。保護性のB
xCl
y膜が膜堆積を覆って形成している場合、酸素系成分をエッチャントガスに加えてもよく、これはエッチング反応を加速する。エッチング反応が実行される温度及び圧力を変化させても、エッチング速度に影響を及ぼすことができる。エッチングする手順は、堆積した膜を申し分なく除去するために数サイクル行うことができる。
【0010】
有機系材料を使用して、MOCVD反応器を浄化することも公知である。Hessらへの(特許文献2)は、プロセス槽中の支持台に配置された基板上に複数成分の半導体層、特にIII−V材料の堆積の方法を説明している。プロセス槽内の1種又は複数のプロセスガスの熱分解は、基板の堆積層及びプロセス槽の表面への望ましくない接着物を生み出す。堆積の後又はその前に、接着物は、遊離ラジカル、好ましくはアルキルラジカル又は他の炭化水素化合物を含有する反応性物質を含むパージガスのプロセス槽への導入により除去される。
【0011】
Sarigiannisらへの(特許文献3)は、反応器槽の内部壁上の堆積の極小化しつつ基板上に層を堆積させるための堆積方法を開示している。プロセスガスは、基板が加熱した支持台によって担持されているプロセス槽へ導入される。プロセスガスは、加熱したプロセス槽の内部で熱分解する。層が基板上に形成され、若干の物質はプロセス槽表面に接着する。反応性パージガスは堆積槽に供給され、ただし基板からは離れて、槽壁の表面を覆って反応性ガスカーテンを有効に形成する。接着物質は、パージガスと反応して揮発性生成物を形成し、次いで、これはプロセス槽から除去される。
【0012】
代替として、反応容器の部材を湿式エッチングによって浄化してもよいが、これには容器の分解と、次に、適切な試薬中での部材の浄化が必要である。湿式エッチングは、乾燥反応性ガスエッチングと比較して時間及び労働の浪費であるので不利である。
【0013】
乾式エッチングプロセスは、好ましい層材料の堆積を極大化し、及び/又は堆積の位置をよりよく制御するために使用されている。例えば、Kadomuraへの(特許文献4)は、SOF
2、SOCl
2及びSOBr
2を含む含硫化合物を含むイオン化したエッチャントガスを使用する、TiON、Si
3N
4又はTiNなどの窒素系化合物膜によってマスクしたSi又はAl系基板材料用の乾式エッチング法を開示している。イオウ化合物の存在は、マスキング層上に保護層を形成する遊離の硫黄を発生させ、エッチングの異方性を改善する。プロセスの効果は、ハロゲン及び/又は窒素系の化合物をエッチャントガスに加えることにより改善することができる。
【0014】
Yanagidaへの(特許文献5)は、フルオロカーボン化合物及びオキシハロゲン化合物(カルボニル、チオニル、スルフリル、ニトロシル又はハロゲン化ニトリルなど)を含むイオン化したエッチャントガスを使用する、SiO
2系の材料用の乾式エッチングする方法を開示している。オキシハロゲンは、SiO
2から酸素を抜き取る効果があり、それによってイオン化したフルオロカーボンによるシリコンのエッチングを高める。
【0015】
またYanagidaへの(特許文献6)は、チオニル又はスルフリルなどの官能基を有するハロゲン化合物及びハロゲン原子を有するエッチャントガスを使用する、Al系金属化層用の乾式エッチングプロセスを記載している。エッチャントガスはまた硫黄系化合物を含んでもよい。
【0016】
Shojiへの(特許文献7)は、混合物を破砕し、COCl
2、CCl
4又はSOCl
2などの炭素及び塩化物ガスの存在下でそれを加熱することによって、TiO
2、Co
2O
3、Al
2O
3、SiO
2などの金属酸化物の基材からルテニウムを回収する方法を開示している。基材の金属酸化物はガス状の塩化物を形成し、蒸発によって除去されるが、Ruの塩化物は高温で解離し、比重選別法によって残渣からのRu金属の回収が可能になる。
【0017】
これらの参考文献は、一般にエッチングを達成するための複数のエッチャント混合物及びプラズマの組み合わせを詳述している。また、これらの参考文献中の詳細は、極めて特殊であり、特殊な基板及び堆積材料を対象とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009130860号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/117064 A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0033310号明細書
【特許文献4】米国特許第5326431号明細書
【特許文献5】米国特許第5445712号明細書
【特許文献6】米国特許第5378653号明細書
【特許文献7】日本特許第62280336号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は、前述の困難を克服又は極小化する、反応器槽を浄化する方法を提供することを目的とする。
【0020】
さらに本発明の目的は、プロセス槽を浄化する低温で有効な方法を提供することである。
【0021】
また本発明のさらなる目的は、堆積プロセスの前に基板を浄化する方法を提供することである。
【0022】
さらなる本発明の目的は、基板上のマスク層をエッチングする方法を提供することである。
【0023】
本発明のこれら及び他の目的は、以下の本発明の要旨、及び好ましい実施形態の詳細な記載への参照によって理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、反応器の実質的な中断時間又は分解の必要がなく、簡単で有効に堆積を除去するために望ましくない堆積を内部反応槽から乾式エッチングする方法及び材料を提供する。特に、本発明は、経時的に蓄積する堆積を除去するためにMOCVD及びALD反応器を乾式エッチング(又は乾式浄化)するための塩化チオニル(SOCl
2)の使用及び関連材料に関する。これは、特に、ヒ素、窒素及びリンの1つ又は複数と組み合わせたインジウム、ガリウム及びアルミニウム(In、Ga、Al)の1つ又は複数を含む元素を含有するIII−V半導体系の高輝度LED及び他の装置の製作において使用されるMOCVD反応器に適合させることができる。
【0025】
本発明の特色は、所望の効果を達成するために、加熱乾式浄化、UV活性化乾式浄化、及び塩化チオニル又は関連する非金属ハロゲン化物(SOCl
2、SOBr
2、COCl
2、NOCl、NOBr、SOCl、SOBrのニート材料、又はCO及びCl
2、NO及びBr
2などのガスの組み合わせ)の使用を含む。Cl
2又はBr
2などの活性ハロゲンは、エッチング/浄化の有効性及び/又は効率を改善するガス混合物に加えることができる。
【0026】
本発明の利点は、インサイチューで浄化化合物を発生させる、純粋な化合物又はガス混合物の単純な使用である。この新しいプロセスは、効率的な乾式エッチングを達成するために熱又は光による活性化に依存する。
【0027】
一態様において、本発明は、化学反応器槽の内表面からの、又は化学反応器槽内の基板からの反応生成物の堆積を浄化する方法であって、反応器槽を少なくとも100℃の高温に加熱する工程;エッチャントガスを反応器槽に導入しエッチャントガスを活性化する工程;エッチャントガスと反応生成物堆積の間でエッチング反応を進めて、前記反応器槽内のエッチング反応生成物の実質的な再堆積なしに反応生成物の堆積を除去する工程;及び、反応器槽内の圧力を20mBarから1000mBarの間にしつつエッチング反応のガス状生成物の実質的にすべてと一緒にエッチャントガスを排気する工程を含む方法を含む。
【0028】
エッチャントガスは、一般式AO
mX
n[式中、Aは、C、N及びSからなる群から選択され;Oは酸素であり;Xはハロゲンであり;下付き添字m及びnは0を超える。]であってもよい。代替として、エッチャントガスは、一般式AO
mX
nY
p[式中、Aは、C、N及びSからなる群から選択され;Oは酸素であり;X及びYは相異なるハロゲンであり;下付き添字m、n及びpは0を超える。]であってもよい。別の代替として、エッチャントガスは、一般式A
mX
n[式中、Aは、C、N及びSからなる群から選択され;Xはハロゲンであり;下付き添字m及びnは0を超える。]であってもよい。
【0029】
別の態様において、本発明は、エッチャントガスを、槽への導入前に発生させるさらなる工程を含む。この発生は、複数の液体化学的成分に通して搬送ガスを泡立たせ、次いで、結果として得られたガスを合わせ及び/又は2種以上の化学的成分ガスを混合する形態をとってもよい。代替として又はその上に、搬送ガスは、エッチャントガスの槽への導入前に、液体化学的成分に通して泡立たせて液体化学的成分をエッチャントに揮発させてもよい。
【0030】
またさらなる態様において、本発明は、反応器槽への導入前に、ガス活性化槽中の活性化機構にエッチャントガスを曝露することによって、それを活性化する工程を含んでもよい。ガス活性化機構は、加熱、紫外線及びプラズマ放電のいずれか1つ又は複数であってもよい。代替としてエッチャントガスは、反応器槽への導入後、熱活性化機構にそれを曝露することによって活性化されてもよく、熱活性化機構は、反応器槽内の全体加熱(overall temperature)及び反応器槽内の局所熱源からなる群から選択される。
【0031】
またさらなる態様において、エッチャントガスはまた添加剤を含んでいてもよい。添加剤はハロゲンガスであってもよく、又は、一般式RX[式中、Rは、H及びMeからなる群から選択され;XはF、Cl、Br及びIからなる群から選択されるハロゲンである。]であってもよい。
【0032】
前述のものは広範な要旨のみとして意図され、本発明の態様の一部のみのものである。本発明の限界又は要件を規定することは意図されない。本発明の他の態様は、好ましい実施形態の詳細な記載への、及び特許請求の範囲への参照によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の好ましい実施形態は、以下の図面を参照することによって記載される。
【
図1】典型的なMOCVD反応器の概略断面図である。
【
図2】熱、UV光又はプラズマ放電への曝露によって槽中を流れるエッチャントガスを活性化するために使用されるガス活性化槽である。
【
図3】MOVPE反応器中の堆積に典型的な材料で被覆された基板上の、熱により活性化される乾式エッチングを実証するために使用される実験装置である。
【
図4】MOVPE反応器中の堆積に典型的な材料で被覆された基板上の、複数のエッチャント成分を用いて熱により活性化される乾式エッチングを実証するために使用される実験装置である。
【
図5】MOVPE反応器中の堆積に典型的な材料で被覆された基板上の、UV光で活性化される乾式エッチングを実証するために使用される実験装置である。
【
図6】本発明による試薬ガスの混合物を使用する、熱により活性化される乾式エッチングを実証するために使用される実験装置である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、典型的な反応器は、支持台プレート2が1つ又は複数の基板4を支持することができる反応器槽1を備える。1つ又は複数の加熱素子3は、効果的な薄膜堆積のための適正範囲において必要なときに、加熱素子を保持する支持台2の温度を制御するために使用されてもよい。反応性プロセスガスは1つ又は複数の供給管路9を通って槽1に入り、シャワーヘッド5などの分散手段を介して槽1を通って分配され、槽1の全体にわたってガス供給を均一に広げる複数のオリフィス7を有する下側プレート6を備える。堆積サイクルが済んだ後、槽は、供給管路8を通してパージガスを供給することによってパージされてもよい。槽は、1つ又は複数のオリフィス11を備えるガス出口リング10を通って、システムに応じて真空ポンプ及びガスの処分手段又はリサイクル手段に連結されてもよいガス排気管路12へガスを除去することにより排気される。
【0035】
使用する場合、乾式エッチングプロセスは、通常100℃から400℃の間の範囲の高温に反応器槽1全体を加熱する工程、及びエッチャントガスを供給し、1つ又は複数のプロセスガス供給管路9を介して反応器槽1へ導入される工程からなる。ガスは、シャワーヘッド5などのガス配分機構を通して、又は供給ガス管路8を介して導入されてもよい。エッチャントガスは反応器槽1中を流れ、その後、何らかの生成された反応生成物と一緒にガス排気リング10を通って排気され、ガス排気管路12を通ってポンプ輸送される。反応器槽1中のガス圧力は、乾式エッチングサイクル中、通常、20mBarから1000mBar(大気圧)の間に維持される。
【0036】
エッチャントガスは、好ましくは、遊離ラジカルの発生を増強しまたそれによってエッチングプロセスを増強するために活性化される。これは、
図2に示す熱による活性化、紫外線(UV)励起又はプラズマ放電によって達成することができる。エッチャントガス14は入口13を通って活性化槽に進入する。活性化槽内では、大部分のガス15が、ヒーター(熱による活性化)、UVランプ(UV活性化)又はイオン化RF電界(プラズマ活性化)などの活性化エネルギー源16に曝露される。熱による活性化はMOVPE反応容器の加熱によって達成されてもよく、又は、エッチャントガスは、反応容器への注入前に加熱槽中で予備加熱されてもよい。UV又はプラズマ放電による活性化の場合には、エッチャントガスは、容器への注入前に、UV光又は高周波プラズマ放電への曝露によって活性化槽で活性化される。活性ガスは出口17を通って活性化槽を出て、MOCVD反応器槽1(図示せず)へ進む。
【0037】
エッチャントガスは、ハロゲン:塩素、臭素又はヨウ素(Cl、Br又はI)と組み合わせたカルボニル、チオニル又はニトロシル基(CO、SO又はNO)を含む。COCl
2、COBr
2、COI
2、SOI
2、SOCl
2、SOBr
2、SO
2Cl
2、SO
2Br
2、NOCl、NOBr、NOI、S
2Cl
2、S
2Br
2、SCl
2、SBr
2、SOClBr、SOClF及びSOFBrは、適切なエッチャントガスの例である。エッチャントガスは、ニート材料に由来してもよく、又は代替として、Cl
2、Br
2又はI
2と混合したCO、SO、SO
2又はNOなどの別々の成分の組み合わせによって発生させてもよい。エッチャントガスは、アルゴン、窒素又は水素などの搬送ガスと混合されてもよい。エッチャントガス又はその成分は、気体状態で利用可能なエッチャント成分の場合には、1つ又は複数のガスシリンダーから直接供給されてもよい。通常、液体状態であるエッチャントガス成分の場合には、必要とする気体状態は、好ましくは液体エッチャント成分を含む容器中で搬送ガスを泡立たせ、液体成分をエッチャントへ揮発させ、それによって搬送ガス及びエッチャント蒸気の混合物を生成することによって達成される。代替として、液体化学的成分は、蒸発するまで加熱し、必要なら、その時点で蒸気を搬送ガスと組み合わせ、反応器槽1へ導入してもよい。エッチャントガスは、エッチングを増強する追加の量のハロゲンを含んでいてもよい。エッチャントガスは、エッチングを増強する追加の量のハロゲン化メチル、ハロゲン化水素又は他のハロゲン化合物を含んでいてもよい。
【0038】
反応槽内では、エッチャントガスは、金属含有堆積と反応して揮発性金属ハロゲン化物を形成し、これはエッチャントガスのパージで除去される。典型的な反応は、金属酸化物のパージガスとの反応を伴い、カルボニル/チオニル/ニトロシル基と結合している残りの酸素と金属ハロゲン化物を形成する。例えば:
Ga
2O
3 + 3 SOBr
2 → 2 GaBr
3 + 3 SO
2
2Ga
2O
3 + 6 SOBrCl → GaClBr
2 + GaBrCl
2 + GaCl
3 + GaBr
3 + 6SO
2
Ga
2O
3 + 3 NOBr → GaBr
3 + 3 NO
2
In
2O
3 + 3 COCl
2 → 2 InCl
3 + 3 CO
2
【0039】
他の金属含有堆積も反応して金属ハロゲン化物を形成する。酸化物は、酸素に対する金属の強い親和力により除去するには最も困難な堆積の例である。
【0040】
金属ハロゲン化物が形成されたら、反応槽から除去されなければならない。そうする1つの方法は、反応器槽を減圧にして槽から除去するためにハロゲン化物を移動させることである。単独で又は低下させた槽圧力と組み合わせて使用されてもよい別の選択肢は、ハロゲン化物を蒸発又は昇華させるのに十分な温度に槽を加熱することである。表1は幾つかの典型的な反応生成物及びその沸点を列挙する。
【0042】
実験結果 一般に
図3を参照すると、本発明の乾式エッチングプロセスの第1の実施形態は、以下のように配置された実験的反応槽27において実行される。反応槽27は、入口端部フランジ26及び出口端部フランジ33を有する石英管であり、テスト基板32を支持することができる第1の基板ホルダー28を備える。第2の基板ホルダー30も提供されるが、この実験目的としては基板を保持しない。各基板は、例えば、赤外線ヒーターであってもよい適切なヒーター31によって加熱される。予備加熱ゾーンが基板ホルダー30のまわりに作られ、そこで、基板ホルダー28上のテスト基板32に達する前にエッチャントガス流は予備加熱される。基板ホルダー28の温度は、必要なら、反応器槽の端部35を通り、記録計36で読み出しできる熱電対ワイヤー29によってモニターされてもよい。反応器槽内の温度は、好ましくは、冷却した区分37が出口端部フランジ33近くに維持されるように制御される。真空ポンプ(図示せず)に連結された出口バルブ34は、反応器槽内の圧力を調節する。
【0043】
ガス入口管路20は、アルゴン、窒素又は水素などの搬送ガスをシステムへ供給する。搬送ガス供給は、パージサイクル中に必要とされ得るように、直結入口バルブ21に通して反応槽へ直接通してもよいが、バブラーバルブ22に通してもよい。バブラー23に入る搬送ガスは、液体試薬エッチング成分24中を通り、そこでエッチャント蒸気を拾い上げ、バルブ25によって制御され、反応器に気相でそれを輸送する。基板ホルダーの動作温度に達したら、搬送ガスの流れは、バルブ21を閉じバルブ22及び25を開くことにより、試薬24の中に導かれる。結果として生じたエッチャントガスは、テスト基板32を横切って流れ、基板32上の反応器堆積を乾式エッチングする。揮発性の非ガス状反応生成物は、槽27の冷却した区分37上に凝縮する。
【0044】
これらの実験のために、テスト基板32は、MOVPE反応器構造材料に典型的な材料であるステンレス鋼を含む。基板はそれぞれ、III−V製作プロセス、すなわちMOCVDを使用する高温(>700℃)でトリメチルガリウムGa(CH
3)
3及びアンモニアNH
3を使用するGaNの堆積中に形成された被膜から結果として生じた典型的なMOPVE反応器の堆積を有していた。
【実施例1】
【0045】
SOCl
2 200℃
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を200℃に加熱した。基板が200℃の温度に達したら、SOCl
2がエッチャントガスを形成する搬送ガスに拾い上げられるように、搬送ガスの流れを、バブラーバルブ22を通して試薬24(SOCl
2)を含むバブラー23へ転換した。エッチャントガスはバルブ25を通って反応器槽27に入り、基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をエッチングした。反応は最初の5分にわたって非常に高速で、次いで、よりゆっくり進み、その結果、エッチングプロセスは10−13分を要して、基板を輝きのあるステンレス状態に浄化した。副生物は、主としてGaCl
3及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【実施例2】
【0046】
SOBr
2 200℃
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を200℃に加熱した。基板が200℃に達したら、SOBr
2がエッチャントガスを生成する搬送ガスに拾い上げられるように、搬送ガスの流れを、バブラーバルブ22を通して試薬24(SOBr
2)を含むバブラー23へ転換した。エッチャントガスはバルブ25を通して反応器槽27に入り、基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をエッチングした。この反応は、非常に迅速で効率的であり、7−9分以内に完全に基板を浄化した。副生物は、主としてGaBr
3及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【実施例3】
【0047】
SOBr
2 200
o 予備加熱300℃
被覆した基材32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を200℃に加熱した。第2の基板ホルダー30を、IRヒーター31を用いて300℃に加熱した。好適な温度に達したら、SOBr
2が搬送ガスに拾い上げられるように、搬送ガスの流れを、バブラーバルブ22を通して試薬24(SOBr
2)を含むバブラー23へ転換し、エッチャントガスが生成した。エッチャントガスは、バルブ25を通して反応器槽27に入り、基板ホルダー30を通るときに熱により活性化され、基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をエッチングした。この反応は、非常に迅速で効率的であり、3−5分以内に完全に基板を浄化した。副生物は、主としてGaBr
3及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【実施例4】
【0048】
SOClBr 200℃
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を200℃に加熱した。基板が200℃に達したら、SOClBrがエッチャントガスを生成する搬送ガスに拾い上げられるように、搬送ガスの流れを、バブラーバルブ22を通して試薬24(SSOClBr)を含むバブラー23へ転換した。エッチャントガスはバルブ25を通して反応器槽27に入り、基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をエッチングした。この反応は、迅速で効率的であり、3−5分以内に完全に基板を浄化した。副生物は、主としてGaClBr
2、GaBrCl
2、GaBr
3、GaCl
3及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【実施例5】
【0049】
250℃で5%Br
2を含むSOBr
2
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を250℃に加熱した。第2の基板ホルダー30を、IRヒーター31を用いて300℃に加熱した。好適な温度に達したら、SOBr
2/Br
2が搬送ガスに拾い上げられるように、搬送ガスの流れを、バブラーバルブ22を通して試薬24(SOBr
2及び5体積%のBr
2))を含むバブラー23へ転換し、エッチャントガスが生成した。エッチャントガスは、バルブ25を通して反応器槽27に入り、基板ホルダー30を通るときに熱により活性化され、基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をエッチングした。この反応は、非常に迅速で効率的であり、5−6分以内に完全に基板を浄化した。副生物は、主としてGaBr
3及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【0050】
ここで
図4を参照すると、本発明の第2の実施形態を実行するための実験装置は、入口端部フランジ26及び出口端部フランジ33による境界の反応槽27の同様の配置を含む。第1及び第2の基板ホルダー28、30を設け、例えば赤外線ヒーター又は任意の適切なヒーターであってもよいヒーター31によってそれぞれを加熱する。第1の配置でのように、基板ホルダー28のみがテスト基板32を支持するが、第2の基板ホルダー30は、テスト基板に達する前にエッチャントガス流が加熱される予熱ゾーンを作るために使用する。記録計36及び熱電対ワイヤー29は必要に応じて基板温度をモニターする。冷却した区分37は、出口端部フランジ33近くに維持する。真空ポンプ(図示せず)に連結した出口バルブ34は、反応器槽内の圧力を調節する。
【0051】
この実施形態において、反応槽27に入る前に、入口ガスは異なる仕方で処理する。前述の通り、搬送ガス供給は、パージサイクル中に必要とされ得るように、直結入口バルブ21に通して反応槽へ直接通してもよいが、しかし、この実施形態は、相異なる液体試薬エッチング成分40、44を含む別々のバブラー39、43をそれぞれ利用するための2つのバブラーバルブ、38、42を備える。バブラー39、43に入る搬送ガスは、それにより2つの相異なる微量のエッチャント蒸気を拾い上げ、バルブ41、45によって制御され、反応器に気相でそれを輸送することができる。基板ホルダーの動作温度に達したら、搬送ガスの流れは、バルブ21を閉じ、第1の試薬についてバルブ38及び41を、第2の試薬についてはバルブ42及び45を開くことにより、試薬40、44の中に導かれ、2種の相異なるエッチャントガスを作る。2種のエッチャントガスは、反応器槽27に入る前に混合し、混合エッチャントガスの流れはテスト基板32上の反応器堆積を乾式エッチングする。揮発性の非ガス状反応生成物は、槽27の冷却した区分37上に凝縮する。
【実施例6】
【0052】
SOBr
2+Br
2 200℃
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を200℃に加熱した。好適な温度に達したら、SOBr
2及びBr
2が搬送ガス流に拾い上げられるように、ガスの流れを、バブラーバルブ38を通して試薬40(SOBr
2)を含むバブラー39へ、及びバブラーバルブ42を通して試薬44(Br
2)を含むバブラー43へ転換した。SOBr
2及びBr
2を含有するガスは、それぞれバルブ41及び45を通って出、反応器槽27に入る前に合わせてエッチャントガスを形成した。エッチャントガスは基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をエッチングした。エッチングプロセスはほとんどの被膜を基板から除去したが、灰色がかったオレンジ色の条痕の執拗な膜が、15分間のエッチング後も基板に残存した。副生物は、主としてGaBr
3及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【実施例7】
【0053】
SOBr
2+MeBr 200℃
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を200℃に加熱した。好適な温度に達したら、SOBr
2及びMeBr(SOBr
2と比較して約4−6%)が搬送ガス流に拾い上げられるように、ガスの流れを、バブラーバルブ38を通して試薬40(SOBr
2)を含むバブラー39へ、及びバブラーバルブ42を通して試薬44(MeBr)を含むバブラー43へ転換した。SOBr
2及びMeBrを含有するガスは、それぞれバルブ41及び45を通って出、反応器槽27に入る前に合わせてエッチャントガスを形成した。エッチャントガスは基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をおよそ6分で完全にエッチングした。副生物は、主としてGaBr
3、MeGaBr
2、Me
2GaBr及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【0054】
図5を参照すると、本発明の第3の実施形態を実行するための実験装置は、入口端部フランジ26及び出口端部フランジ33による境界の反応槽27の同様の配置を含む。唯1つの基板ホルダー28を設け、適切なヒーター31によって加熱し、テスト基板32を支持する。記録計36及び熱電対ワイヤー29は、必要に応じて基板温度をモニターする。冷却した区分37は、出口端部フランジ33近くに維持する。真空ポンプ(図示せず)に連結した出口バルブ34は、反応器槽27内の圧力を調節する。
【0055】
この装置において、反応槽27に入る前に、入口ガスは第1の実施形態と同一の方式で処理する。ガス入口管路20はシステムに搬送ガスを供給する。搬送ガス供給は、直結入口バルブ21に通って直接反応槽へ通してもよいが、バブラーバルブ22を通してもよい。バブラー23に入る搬送ガスは、液体試薬エッチング成分24中に通し、そこでエッチャント蒸気を拾い上げ、バルブ25によって制御され、反応器に気相でそれを輸送する。基板ホルダーの動作温度に達したら、搬送ガスの流れは、バルブ21を閉じバルブ22及び25を開くことにより、試薬24の中に導かれ、エッチャントガスを生成する。次いで、エッチャントガスを活性化槽(この場合、UV活性化槽46)に通し、そこで、ガス流に照射してエッチャントガスを活性化する。活性化ガスは、テスト基板32を横切って流れ、基板32上の反応器堆積を乾式エッチングする。揮発性の非ガス状反応生成物は、槽27の冷却した区分37上に凝縮する。
【実施例8】
【0056】
SOCl
2 150℃ − UV予備励起
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続搬送ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を150℃に加熱する。基板が150℃に達したら、SOCl
2がガスに拾い上げられるように、ガスの流れを、バブラーバルブ22を通して試薬24(SOCl
2)を含むバブラー23へ転換した。SOCl
2はバルブ25を通ってバブラーを出、活性化槽46を通り、次いで、反応槽27に入り、そこで基板32を通り、ステンレス鋼基板32上の堆積をエッチングした。この反応は、非常に迅速で効率的であり、3−5分以内に完全に基板を浄化した。副生物は、主としてGaCl
3及びSO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【0057】
図6は、本発明の第4の実施形態の実行のための実験装置を示す。反応器槽27及びその中味はすべて第1の実施形態と同じであるが、しかし、この場合、エッチャントガスは、バルブ48、50によって調節される圧縮ガスの1つ又は複数のシリンダー47、49から直接供給される。ガス入口管路20は、アルゴンなどの搬送ガスをシステムに供給する。搬送ガス供給は、パージサイクル中に必要とされ得るように、直結入口バルブ21に通して反応槽へ直接通してもよい。基板ホルダーの動作温度に達したら、搬送ガスの流れはバルブ21を閉じることにより停止し、圧縮ガスシリンダー47及び49からのエッチャントガス成分の流れは、バルブ48及び50を開くことによって開始する。ガスは反応槽27に入る前に合流し、結果として生じた合流エッチャントは、テスト試験基板32を横切って流れ、テスト基板32上の反応器堆積を乾式エッチングする。揮発性の非ガス状反応生成物は槽27の冷却した区分37上に凝縮する。
【実施例9】
【0058】
搬送ガスなし、CO+Br
2 200℃;300℃への予熱
被覆された基板32を第1の基板ホルダー28に置いた。ガス入口20及び直結入口バルブ21から反応器槽27を通る連続ガス(Ar)流の下で、IRヒーター31を用いて基板32を200℃に加熱した。第2の基板ホルダー30を、IRヒーター31を用いて300℃に加熱した。好適な温度に達したら、バルブ21を閉じることにより搬送ガスの流れを停止し、続けてバルブ48及び50を開け、エッチャントガス(Br
2及びCO; COと比較して約5%のBr
2)を合わせて反応器槽27に入れた。エッチャントガスの組み合わせは、基板ホルダー30を越えて加熱領域を通るときに熱により活性化された。活性化されたガスが基板32を通ったとき、基板32上の被膜のかなりの部分がエッチングされたが、非常にかすかな膜が表面に残存した。副生物は、主としてGaBr
3及びCO
2であるが、槽27の冷却した領域37で収集した。
【0059】
室温で液体であるチオニルハライドは、取り扱いがより簡単であるので、これらの実験ほとんどは、SOX
2系を使用して行った。それがまた、効果的なことを示した。カルボニル(COX
2)及びニトロシル基(NOX)などの他の同様の系の化学現象(すなわち反応性)が非常に類似しているので、これらの化学物質も本明細書に略述した用途に効果のあることが予想される。すべての事例において、金属酸化物のエッチングプロセスは、エッチャントガスからのSO
2、CO
2及びNO
2ガスの発生によって推進されるが、それはこれらのガスが出発材料より安定であり、また非常に揮発性であるからである。プロセス温度でやはり安定で、しかも揮発性である金属ハロゲン化物GaCl
3、GaBr
3の形成によってもまた、反応を推進する。
【0060】
さらに、材料のそれぞれは、通常個々のガスの反応によって調製することができる。例えば、NO及びCl
2は気相で反応してNOClを発生する。したがって、個々のガスが加熱活性化を伴う槽を通るとき、活性種が発生し、次いで、これが表面酸化物と反応して基板上の被膜をエッチングすると予想される。
【0061】
本明細書及び以下の特許請求の範囲への参照によって適切に定義されている、本発明の範囲から離れることなく、本明細書に記載される好ましい実施形態に対する他の変形を実施することができることは当業者によって認識されるであろう。