特許第6391008号(P6391008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391008
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】雨水貯溜管路構造とそれに用いる雨水桝
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/03 20060101AFI20180910BHJP
   E03B 11/14 20060101ALI20180910BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   E03B3/03 B
   E03B11/14
   E03F1/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-215078(P2014-215078)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-79763(P2016-79763A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】真山 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 啓二郎
(72)【発明者】
【氏名】片岡 史朗
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−109141(JP,A)
【文献】 特開2005−248679(JP,A)
【文献】 特開2010−127020(JP,A)
【文献】 特開2014−190098(JP,A)
【文献】 特開2002−166105(JP,A)
【文献】 特開2010−090605(JP,A)
【文献】 実開昭62−185779(JP,U)
【文献】 実開昭64−019682(JP,U)
【文献】 米国特許第06796325(US,B1)
【文献】 特開2000−073414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 1/00−11/16
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される複数の雨水桝を繋ぐ貯溜管路の内部に、雨水を貯溜する雨水貯溜管路構造であって、
貯溜管路の一端の近傍であって、貯溜管路の管頂よりも高い位置に、雨水を外部に排出するための排出口を設け、貯溜管路に流入した雨水は、水位が該排出口に達するまで貯溜管路の内部に貯溜されるようになっており、
上記排出口が設けられた貯溜管路の一端の雨水桝よりも他端側に埋設される雨水桝であって、該一端の雨水桝と他端の雨水桝の間に位置する雨水桝、又は/及び、他端の雨水桝において、貯溜管路の略管頂に開口部が形成されており、
上記開口部の周縁から、少なくともその基端部が上向きに立ち上がる延設口が設けられており、
上記雨水桝の底面に挿通孔が形成されており、該挿通孔に上記延設口が隙間なく挿通されていることを特徴とする雨水貯溜管路構造。
【請求項2】
上記貯溜管路の一端に、上方に向けられる第一の口と、貯溜管路の一端が接続される第二の口と、を少なくとも備える堰き止め部材が設けられており、該第一の口が、雨水を外部に排出するための排出口となっていることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯溜管路構造。
【請求項3】
上記延設口が管接続口となっていることを特徴とする請求項1または請求項に記載の雨水貯溜管路構造。
【請求項4】
上記管接続口にフィルター部材が取付けられていることを特徴とする請求項に記載の雨水貯溜管路構造。
【請求項5】
上記貯溜管路の一端の雨水桝と他端の雨水桝の間に埋設される雨水桝において、貯溜管路が、複数の貯溜管路接続口と上記開口部を有する継手を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の雨水貯溜管路構造。
【請求項6】
雨水桝の底面が、貯溜管路の略上側半分に沿った形状を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の雨水貯溜管路構造。
【請求項7】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の雨水貯溜管路構造に用いられる雨水桝であって、
底面に、下方から貯溜管路が収まる溝部が形成されていると共に、該溝部に雨水桝内と連通する挿通孔が形成されていることを特徴とする雨水桝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅地内などの地中に埋設される複数の雨水桝を繋ぐ貯溜管路の内部に雨水を貯溜し、その貯溜した雨水を植物の水やり等に有効利用できるようにした雨水貯溜管路構造及びその貯溜管路構造に用いる雨水桝に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路や空き地(駐車場等)の舗装化が急速に進み、未舗装部分の殆どない都市化の進んだ地域が増えてきている。このような地域では、雨水が殆ど地中に浸透することなく、道路の側溝や下水道排水管などを通じて河川へ流れ込むため、短時間で河川の容量を超えて、所謂、都市型洪水を引き起し、社会問題となってきている。その一方で、乾期には雨が殆ど降らず、各地で取水制限が実施されている実態がある。これらの問題は、地球温暖化が要因の一つとも言われる昨今の異常気象に伴い、これから益々深刻化していくものと思われる。
【0003】
かかる事情に鑑みて、宅地内に埋設された雨水桝とそれらを繋ぐ配管の内部に雨水を一時的に貯溜することにより、都市型洪水の被害を軽減したり、その貯溜した雨水を有効利用する試みがなされている。その一つとして、雨水が流入する流入管が接続されると共に、流入管の管頂より上方に開口して貯溜された雨水を越流させて排水する越流管を備える雨水桝が設置される雨水利用システムであって、雨水桝には貯溜された雨水を取水するための取水管が接続されると共に、取水管の管頂の位置は流入管の管底よりも低くなるように配置された雨水利用システムに係る発明が提案されている(特許文献1)。
【0004】
上記特許文献1の雨水利用システムにおいては、流入管より雨水桝内に流入してきた雨水が、越流口部の上端に達するまで流入管及び雨水桝内に貯溜されるようになっており、このように、宅地内に降った雨水を一時的に貯溜することにより、雨水が河川へ一気に流入するのが抑制されて、都市型洪水の被害が軽減されると共に、乾期の水不足の際には、その貯溜した雨水を有効利用することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−090605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の雨水利用システムは、流入管より流入した雨水は、流入管内だけでなく雨水桝内にも貯溜されることから、流入管と雨水桝の接続部分(挿込孔周縁)から雨水が漏れ出してしまうことがあり、せっかくの貯溜した雨水の貯溜量が減少してしまうことがあった。特に、宅地内に埋設される雨水桝と流入管とは、接着剤を用いずに、単に流入管を雨水桝の挿込孔に挿入するだけの簡易な作業で接続されていることから、貯溜した雨水の水圧によって、そこに隙間が生じ易く、その隙間から漏水することが多かった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、貯溜管路に貯溜した雨水の漏水を防止することにより、貯溜した雨水を無駄なく有効利用することのできる雨水貯溜管路構造とそれに用いる雨水桝を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る雨水貯溜管路構造は、
地中に埋設される複数の雨水桝を繋ぐ貯溜管路の内部に、雨水を貯溜する雨水貯溜管路構造であって、
貯溜管路の一端の近傍であって、貯溜管路の管頂よりも高い位置に、雨水を外部に排出するための排出口を設け、貯溜管路に流入した雨水は、水位が該排出口に達するまで貯溜管路の内部に貯溜されるようになっており、
上記排出口が設けられた貯溜管路の一端の雨水桝よりも他端側に埋設される雨水桝であって、該一端の雨水桝と他端の雨水桝の間に位置する雨水桝、又は/及び、他端の雨水桝において、貯溜管路の略管頂に開口部が形成されており、
上記開口部の周縁から、少なくともその基端部が上向きに立ち上がる延設口が設けられており、
上記雨水桝の底面に挿通孔が形成されており、該挿通孔に上記延設口が隙間なく挿通されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の雨水貯溜管路構造においては、上記貯溜管路の一端に、上方に向けられる第一の口と、貯溜管路の一端が接続される第二の口と、を少なくとも備える堰き止め部材が設けられており、該第一の口が、雨水を外部に排出するための排出口となっていることが好ましい。また、上記延設口が管接続口となっていることがより好ましい。特に、上記管接続口にフィルター部材が取付けられていることが好ましい。更に、上記貯溜管路の一端の雨水桝と他端の雨水桝の間に埋設される雨水桝において、貯溜管路が、複数の貯溜管路接続口と上記開口部を有する継手を介して接続されていることが好ましい。また、雨水桝の底面が、貯溜管路の略上側半分に沿った形状を有していることがより好ましい。

【0010】
次に、上記のような雨水貯溜管路構造に用いる本発明の雨水桝は、底面に、下方から貯溜管路が収まる溝部が形成されていると共に、該溝部に雨水桝内と連通する挿通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のもう一つの雨水桝は、第一の接続口と第二の接続口を有し、第一の接続口は桝底面に形成されると共に、第二の接続口は第一の接続口よりも下方の桝側面に形成されており、上記第一の接続口と第二の接続口は、閉じられた貯溜管路により連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の雨水貯溜管路構造は、貯溜管路の一端の近傍に、貯溜管路の管頂よりも高い位置にある排水口を設けることにより、貯溜管路に流入した雨水は、その水位が排水口に達するまでは、貯溜管路の内部に貯溜されるようになっている。そして、雨水がオーバーフローする開口部は、貯溜管路の略管頂に形成されていることから、貯溜管路の略管頂に達するまで雨水は貯溜されることになり、貯溜管路の略全てを貯溜スペースとして利用することができる。
【0013】
特に、上記貯溜管路の一端に、上方に向けられる第一の口と、貯溜管路の一端が接続される第二の口と、を少なくとも備える堰き止め部材が設けられており、該第一の口が、雨水を外部に排出するための排出口となっている雨水貯溜管路構造は、貯溜管路に流入した雨水が堰き止め部材によって堰き止められて、貯溜管路の内部に貯溜されるようになるため、従来のように、雨水桝と貯溜管路の接続部分(挿込孔周縁)から貯溜管路の内部の雨水が漏れ出すことがなく、自然蒸発などを除いては、貯溜した雨水が減少してしまうことが皆無に等しくなる。
【0014】
また、上記開口部の周縁から、少なくともその基端部が上向きに立ち上がる延設口が設けられている雨水貯溜管路構造は、その延設口を種々の用途に利用することができるようになる。即ち、上記延設口が管接続口となっていると、その管接続口に、水位を調節するための高さ調整用筒や、後述する雨水を濾過するフィルター部材などを接続することができるようになる。
【0015】
そして、上記管接続口にフィルター部材が取付けられていると、流入した雨水に異物が混入していたとしても、その異物はフィルター部材によって取り除かれて、きれいな雨水のみが貯溜管路内に貯溜されるようになる。
【0016】
また、上記貯溜管路の一端の雨水桝と他端の雨水桝の間に埋設される雨水桝において、貯溜管路が、複数の貯溜管路接続口と上記開口部を有する継手を介して接続されている雨水貯溜管路構造は、継手を用いることにより、貯溜管路の配管の自由度が飛躍的に向上する。しかも、この継手は、開口部をもともと有することから、貯溜管路自体に開口部を形成するという手間も省くことができる。貯溜管路とこの継手とは、接着剤を用いて接続されるため、接続部分から漏水してしまう心配はない。
【0017】
更に、雨水桝の底面に挿通孔が形成されており、該挿通孔に管接続口が隙間なく挿通されている雨水貯溜管路構造は、地面を掘削することにより形成した配管溝に貯溜管路を配設し、継手に接続してから、雨水桝を設置することができるようになるため、雨水貯溜管路構造の施工性に優れる。
【0018】
特に、雨水桝の底面が、貯溜管路の略上側半分に沿った形状を有している雨水貯溜管路構造は、貯溜管路の上に雨水桝を載置すると、雨水桝の底面が貯溜管路の略上側半分に嵌合するため、雨水桝が安定して設置され、施工がより容易となる。
【0019】
以上のような構成の本発明の雨水貯溜管路構造には、底面に、下方から貯溜管路が収まる溝部が形成されていると共に、該溝部に雨水桝内と連通する挿通孔が形成されている雨水桝が好適に用いられ、この雨水桝は、溝部が貯溜管路に嵌合することから、雨水桝を安定的に設置することができるようになる。このような雨水桝は、貯溜管路を地中に配設して継手に接続した後から設置することができるので、施工性に優れ、前述したような効果を奏する雨水貯溜管路構造を容易に構築することができる。
【0020】
また、本発明のもう一つの雨水桝は、第一の接続口と第二の接続口を有し、第一の接続口は桝底面に形成されると共に、第二の接続口は第一の接続口よりも下方の桝側面に形成されており、上記第一の接続口と第二の接続口は、閉じられた貯溜管路により連通していることを特徴とし、この雨水桝を用いることで、別途継手を用いなくとも、雨水桝内において貯溜管路同士を接続することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る雨水貯溜管路構造を示す概略断面図である。
図2】同貯溜管路構造の概略斜視図である。
図3】同貯溜管路構造に用いる継手を示す正面図である。
図4】同貯溜管路構造に用いる堰き止め部材を示す斜視図である。
図5】同堰き止め部材により雨水を堰き止めた状態を示す断面図である。
図6】同堰き止め部材による雨水の堰き止めを解除した状態を示す断面図である。
図7】同貯溜管路構造に用いる種々の継手を示す概略平面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る雨水貯溜管路構造を示す概略断面図である。
図9】本発明の更に他の実施形態に係る雨水貯溜管路構造を示す概略断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る雨水桝を示す分解斜視図である。
図11】同雨水桝の断面図である。
図12】同雨水桝の底面に形成された溝部を説明する説明図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る雨水桝を示す断面図である。
図14】本発明の更に他の実施形態に係る雨水桝を示す平面図である。
図15】同雨水桝の正面図である。
図16】同雨水桝の左側面図である。
図17】同雨水桝の背面図である。
図18】同雨水桝の底面図である。
図19】同雨水桝に継手を接続した状態を示す断面図である。
図20】本発明の更に他の実施形態に係る雨水桝を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0023】
図1図2に示す本発明の雨水貯溜管路構造は、宅地内の地中に埋設される複数の雨水桝1を繋ぐ貯溜管路2の内部に雨水を貯溜することにより、植物の水やり等に有効利用できるようにすると共に、併せて、集中豪雨時の河川や下水道施設への負荷を低減するために開発されたものである。
尚、便宜上、図1中には、雨水桝1が3つのみの態様が記載されているが、雨水桝1は、2つでもよく、3つより多い態様であってもよい。
【0024】
本発明の雨水貯溜管路構造においては、宅地内の家屋の屋根に降った雨水は、軒樋5に集水されて竪樋6を流下し、流入管7より雨水桝1の内部に流入するようになっている。このようにして雨水桝1の内部に流入した雨水は、フィルター部材4によって枯れ葉等のゴミが取り除かれて濾過されたのち、貯溜管路2の内部に流入し、開口部2Aや堰き止め部材3の第一の口3aからオーバーフローするまで貯溜されるようになっている。
【0025】
宅地内に埋設される雨水桝1は、耐久性や施工性に優れるポリプロピレン製又は塩化ビニル樹脂製のものが好適に用いられる。この雨水桝1は、図1等に示すように、上部が開口し下部が閉口したバケツ型をしており、その上部開口は、蓋体10により覆われている。雨水桝1の周面には、図5図6に示すように、貯溜管路2を挿込接続するための挿込孔1aが穿孔されており、挿込孔1aの周縁には、雨水桝1と貯溜管路2との密着性及び止水性を確保するためのゴムパッキン1bが取付けられている。このような雨水桝1において、流入管7から流入してきた雨水は、少量が直接フィルター部材4から貯溜管路2の内部へと流入し、残りの雨水は、一旦雨水桝1の内部に貯溜されることになる。そして、雨水桝1内部の水位がフィルター部材4まで上昇すると、フィルター部材4から貯溜管路2の内部に流入するようになっている。このとき、雨水桝1の内部に流入してくる雨水には、泥砂や枯れ葉等の異物も混入してくるが、フィルター部材4よりも下の空間が泥溜め部として機能するので、フィルター部材4がすぐに目詰まりすることを防止でき、雨水桝1のメンテナンスが容易となる。
【0026】
また、上記雨水桝1に、流入した雨水が周囲の地中に浸透するような機能を付与してもよく、そのような機能を付与する場合は、図8に示すように、雨水桝1の周面に小孔やスリットなどの開口1cを複数穿孔すればよい。そして、開口1cが穿孔された雨水桝1の周囲に砕石を敷き詰めて、透水シート(不図示)で周囲の土砂等のエリアと区画することにより、雨水桝1の内部の雨水がスムーズに周囲の地中に浸透するようになる。このような小孔やスリットなどの開口1cを穿孔した雨水桝1を埋設すると、貯溜管路2が満水となって貯溜管路2の開口部2Aより溢れ出した雨水が、周囲の地中にスムーズに浸透していくようになるため、雨水桝1から雨水が溢れ出したりする心配がなくなる。
【0027】
次に、その内部に雨水を貯溜する貯溜管路2は、他端(上流側)の雨水桝1と一端(下流側)の雨水桝1を繋ぐ宅地内に埋設される円筒管であって、図1に示すように、この貯溜管路2の一端には堰き止め部材3が設けられており、他端にはエルボ継手21が設けられている。また、堰き止め部材3が設けられた貯溜管路2の一端の雨水桝1よりも他端側に埋設される雨水桝1であって、該一端の雨水桝1(図1中の右側に位置する雨水桝1)と他端の雨水桝1(図1中の左側に位置する雨水桝1)の間に位置する雨水桝1(図1中の真ん中に位置する雨水桝1)、及び、他端の雨水桝1において、貯溜管路2の略管頂には、雨水が流入したりオーバーフローしたり、或いは、取水口ともなる開口部2Aが形成されている。
ここでいう「管頂」とは、貯溜管路2の中心から上方に向いて半径の40%の高さ以上の位置に開口部2Aが形成されていることが好ましく、貯溜管路2の少なくとも90%の高さ位置で開口していればよい。
【0028】
上記貯溜管路2は、通常の塩化ビニル樹脂製の円筒形のパイプであって、本実施形態のように、宅地内の配管設備が、公共の屋外排水管9に連通している場合は、他端(上流側)から一端(下流側)にかけて、貯溜管路2に1/100〜3/100程度の流れ勾配が付けられていることが多く、貯溜管路2に流入した雨水は、その流れ勾配に沿って下流側へと流れ、堰き止め部材3により堰き止められることにより、貯溜管路2の内部に貯溜されるようになっている。そして、図5に示すように、貯溜管路2が満水になると雨水は堰き止め部材3の第一の口3aから越流し、排水管8を経由して屋外排水管9に流出するようになっている。
尚、宅地内に埋設される貯溜管路2には、必ずしも流れ勾配が付けられている必要はなく、本実施形態でいう下流側(一端)とは、屋外排水管9に近い箇所のことを指し、それとは反対側のことを上流側(他端)というが、流れ勾配が付けられていない場合は、どちらを一端又は他端と捉えてもよく、他端に堰き止め部材3を設けてもよい。
【0029】
このような貯溜管路2は、一端の雨水桝1と他端の雨水桝1の間に位置する雨水桝1内において、複数の貯溜管路接続口20bと、少なくともその基端部(根元部分)が上向きに立ち上がる管接続口20aを有する継手20を介して、貯溜管路2同士が接続されている。この継手20は、図3図7の(a)に示すように、2つの貯溜管路接続口20b,20bが、継手20の下部より一直線状に突設された略T字型の継手20、所謂チーズ継手である。そして、この管接続口20a内周面の基端部分であって、貯溜管路2の管頂と略同じ高さの開口部分(図3の仮想線が示す部分)が、雨水の流入口やオーバーフロー口、或いは、取水口ともなる貯溜管路2の開口部2Aとなっている。
【0030】
また、他端の雨水桝1においては、エルボ継手21の一部分が、雨水の流入口やオーバーフロー口、或いは、取水口となる貯溜管路2の開口部2Aとなっている。即ち、貯溜管路2の他端(上流側)に設けられるエルボ継手21は、図1に示すように、2つの接続口が略90°湾曲した円筒管で繋がれた通常の90°エルボ継手であって、一方の接続口には貯溜管路2の端部が接続され、他方の接続口にはフィルター部材4が取付けられている。このようなエルボ継手21において、湾曲した円筒管の貯溜管路2の管頂と略同じ高さの箇所が開口部2Aとなっており、他方の接続口は、この開口部2Aから上向きに立ち上がっている。
【0031】
上記開口部2Aは、前述したように、雨水の流入口やオーバーフロー口となると共に、雨水の取水口ともなるものであるが、貯溜管路2の略管頂と同じ高さに形成されていることから、貯溜管路2が満水になるまでは開口部2Aよりオーバーフローすることがない。従って、貯溜管路2の略全部が貯溜スペースとなって、植物の水やり等に利用するのに必要十分な雨水量を貯溜管路2の内部に貯溜することができる。
尚、開口部2Aは、一続きの貯溜管路2の略管頂に円孔を穿孔することにより形成してもよいが、本実施形態のように、継手20やエルボ継手21の一部分を開口部2Aとすることで、開口部2Aを形成する手間が省けると共に、様々な方向から貯溜管路2が配設されている場合にも対応することができるので、配管の自由度が向上する。
【0032】
また、本実施形態では、一端と他端の間に埋設された雨水桝1内において、貯溜管路2と貯溜管路2を接続するため、上記のように、所謂チーズ継手20が用いられているが、貯溜管路2を接続する継手20はこの形状に限定されるものではなく、図7の(b)に示すように、一直線状の貯溜管路接続口20b,20bに直交する貯溜管路接続口20bをもう一つ形成することにより、3方向から貯溜管路2を接続できるようにした継手20を用いてもよい。また、図7の(c)に示すように、90°間隔で貯溜管路接続口20bを4つ形成することにより、4方向から貯溜管路2を接続できるようにした継手20であってもよく、図7の(d)に示すように、2つの貯溜管路接続口20b,20bが一直線状ではなく角度が付けられた継手20であれば、貯溜管路2が一直線に配設されていないような場合でも接続することができる。更に、図7の(e)に示すように、貯溜管路接続口20bが、継手20の下部より120°間隔で3つ突設された継手20も好適に用いられる。このように種々の形態の継手20を用いることで、貯溜管路2を配管する自由度が飛躍的に向上する。
【0033】
上記の図7の(a)〜(e)に示す継手20は、その全部が上向きに立ち上がる管接続口20aを有するものであるが、継手20は、管接続口20aの少なくとも基端部が上向きに立ち上がってさえすればよいものであり、図示はしないが、基端部より一旦立ち上がって、その後、下方に向けられたり、或いは、貯溜管路2と平行になる管接続口20aを有する継手20であってもよい。
【0034】
上記継手20の管接続口20a及びエルボ継手21には、図1に示すように、枯れ葉等の異物の混入を阻止するフィルター部材4が取付けられている。このフィルター部材4を取付けることにより、流入管7より雨水桝1内に流入してきた枯れ葉等の異物は取り除かれて、きれいな雨水のみが貯溜管路2の内部に流入して貯溜されるようになっている。本実施形態のフィルター部材4は、肉厚の円筒体であって、円筒体の周面にスリットなどの小開口が穿孔されたものを用いているが、異物を取り除けて、且つ、通水性を有するものであればフィルター部材4はこれに限定されるものではなく、例えば、管接続口20aの開口部分にネットを取り付けて、そのネットをフィルター部材4とすることもできる。また、本実施形態のフィルター部材4は、管接続口20aの内側に挿入するタイプのものであるが、管接続口20aに外挿する態様のフィルター部材4であってもよい。
【0035】
尚、貯溜管路2に勾配が付けられている場合は、継手20の管接続口20aやエルボ継手21に高さ調整用筒(単なる円筒体でよい。)を接続して高さを調整すると、貯溜管路2の略全てを、貯溜スペースして利用することができる。即ち、低い箇所に位置する継手20の高さ(フィルター部材4を接続する場合は、フィルター部材4の開口の下端位置)を、最も高い箇所に位置する継手20又はエルボ継手21の上端の高さに合わせることにより、貯溜管路2が満水になるまで雨水が開口部2Aよりオーバーフローすることがなくなるため、貯溜管路2の略全部を貯溜スペースとして利用することができる。この高さ調整用筒を任意の高さに調整することにより、貯溜管路2に貯留する雨水の貯溜量をコントロールすることもできる。
【0036】
一方、貯溜管路2の一端(下流側)に設けられる堰き止め部材3は、図4に示すように、上方に向けられる第一の口3aと、雨水桝1の挿込孔1aに接続される第二の口3bと、下方に向けられる第三の口3cとからなる筒状体であって、図5に示すように、下方に向けられる第三の口3cは閉口されている。第一の口3aは、貯溜管路2の管頂よりも高い位置にあり、この第一の口3aが、雨水を外部に排出するための排出口となっていて、貯溜管路2が満水になると、雨水はこの第一の口3aを越流して、外部(排水管8)に排出されるようになっている。また、第三の口3cは、オリフィスのような小径孔ではなく、貯溜した雨水を速やかに外部に排出することができる程度の直径を有する円孔で、図6に示すように、メンテナンス時は、この第三の口3cより雨水を排出して配管内部のメンテナンスを行う。通常は、この第三の口3cに、脱着可能な閉塞部材3dが取付けられて、第三の口3cは完全に閉塞されている。
【0037】
上記第三の口3cに取付けられる閉塞部材3dは、水回りの止水栓として好適に使用されるゴム栓であって、図5図6等に示すように、この閉塞部材3dには、上方から閉塞部材3dの脱着を可能とするガイド部材3eが備えられている。このガイド部材3eは、止水栓に好適に備えられるボールチェーンであって、その上端は、第一の口3aの外周面に設けられた突起3fに取付けられている。第三の口3cは、第一の口3aに対向する位置、即ち、第一の口3aの開口から見える位置に形成されており、且つ、閉塞部材3dにはガイド部材3eが備えられているので、閉塞部材3dを取付けたり取外したりする脱着作業を、上方から容易に行うことができ、堰き止め部材3の底面まで手を突っ込む必要がないため、メンテナンス性に優れる。
尚、閉塞部材3dは、本実施形態のようにゴム栓に限定されるものではなく、上方から開閉可能な蓋部材などでもよいが、貯溜された雨水によって生じる浮力によって浮き上がらない程度の比重を有するものが好ましく、必要に応じて第三の口3cと閉塞部材3dとの間に嵌合構造や係止構造などを設け、浮力のみで閉塞部材3dが第三の口3cから外れないようにすることが好ましい。また、ガイド部材3eも、上方から閉塞部材3dの脱着を可能とするのであればボールチェーンに限定されるものはなく、線材の折り曲げ加工品等でもよい。更に、本実施形態のガイド部材3eの上端は、第一の口3a近傍に取付けられているが、上方からの脱着が可能な位置、例えば、雨水桝1の蓋受部近傍や蓋体10等に取付けてもよく、このように、ガイド部材3eの上端を、雨水桝1の蓋受部近傍や蓋体10等に取付けると、雨水桝1が深く埋設されている場合であっても、地表に近いところで閉塞部材3dの脱着作業が可能となり、閉塞部材3dに手が届かなくて特別な工具が必要になるといったこともなく、メンテナンス性が良い。
【0038】
また、上記のような形態の堰き止め部3の代わりに、前述したエルボ継手21を堰き止め部材3として用いることもできる。この場合、貯溜した雨水を排水する際は、エルボ継手21を貯溜管路2を軸に180°回転させることにより排水することができる。
【0039】
上記の貯溜管路2と継手20、貯溜管路2とエルボ継手21、及び、貯溜管路2と堰き止め部3は、全て接着剤を用いて接続されている。従って、単に貯溜管路2を挿込孔1aに挿込接続する場合と比較すると、それぞれの部材同士が隙間なく強固に接続されることから、漏水することがなく、せっかく貯溜管路2の内部に貯溜した雨水が減少してしまうことがない。そして、このように貯溜した雨水は、開口部2Aや堰き止め部3の第一の口3aに取水ポンプ(不図示)を設けることにより取水され、植物の水やり等に有効利用することができる。
【0040】
図8は本発明の他の実施形態に係る雨水貯溜管路構造を示す概略断面図である。
【0041】
前述した図1図7に示す実施形態の雨水貯溜管路構造は、貯溜管路2の一端(下流側)に堰き止め部材3を設けることにより、雨水を貯溜管路2の内部に貯溜していたのに対して、本実施形態の雨水貯溜管路構造は、その堰き止め部材3の代わりに、屋外排水管9に連通する排水管8の下端位置を、貯溜管路2の管頂よりも高い位置に配設することにより、雨水を貯溜管路2の内部に貯溜するようにしたものである。本実施形態では、排水管8が、雨水を外部に排出するための排出口となっており、貯溜管路2の内部に流入した雨水は、その水位が排水管8の下端に達するまでは、雨水桝1の内部にも貯溜されることになっている。
【0042】
また、本実施形態の雨水貯溜管路構造では、図8に示すように、多数の浸透孔10aが穿孔された蓋体10が用いられている。従って、家屋の屋根に降った雨水が軒樋5に集水されて、竪樋6を流下して流入管7より雨水桝1の内部に流入すると共に、宅地内に降った雨水も、雨水桝1の上部開口を覆う蓋体10の浸透孔10aより雨水桝1の内部に流入するようになっている。
尚、泥砂が多い場所や蚊等の虫の発生が多い場所に雨水桝1を埋設する場合は、浸透孔10aを穿孔していない蓋体10を用いればよく、そのような場所に設置する際でも、浸透孔10aにネット等を被せると、泥砂の侵入や蚊等の虫の発生を抑えることができ、また、蓋体10のフィルター部材4の上方の位置以外(浸透孔10aからの流入水がフィルター部材4に流下しない位置)のみに浸透孔10aを穿孔するようにすれば、フィルター部材4の目詰まりや貯溜管路への流入を防止することができる。
【0043】
以上のような構成の雨水貯溜管路構造は、貯溜管路2と雨水桝1の接続部分(挿込孔1a周縁)より多少の漏水の恐れはあるが、堰き止め部材3を設ける手間が省け、その挿込孔1a周縁の一箇所のみを確実に止水処理することにより、漏水の危険性を最小限に抑えることができる。また、その漏水の恐れがある箇所の雨水桝1を、後述する図10図20に示す雨水桝1に変更すると、漏水する恐れは皆無に等しくなる。
【0044】
図9は本発明の更に他の実施形態に係る雨水貯溜管路構造を示す概略断面図である。
【0045】
前述した図1図8に示す実施形態の雨水貯溜管路構造は、宅地内に埋設された配管設備が公共の下水道施設などに繋がる屋外排水管9と連通していたのに対して、本実施形態に係る雨水貯溜管路構造は、宅地内の配管設備が屋外排水管9などに一切連通しておらず、宅地内のみにおいて完結する場合の態様である。従って、本実施形態の貯溜管路2には、流れ勾配が一切付けられていない。そのため、ここでは便宜上、どちらか一方を一端(本実施形態では右側)といい、もう一方を他端(本実施形態では左側)という。また、一端の雨水桝1と他端の雨水桝1の間に位置する雨水桝1内において、前述した実施形態とは異なり、貯溜管路2は、略T字型のチーズ継手20ではなく、1つの貯溜管路接続口20bと管接続口20aを有する、上記のエルボ継手21に接続されている。そして、このエルボ継手21の湾曲した円筒管の内周面であって、貯溜管路2の管頂と略同じ高さの部分が、雨水の流入口やオーバーフロー口、或いは、取水口となる開口部2Aとなっている。このように、本発明は、一端の雨水桝1と他端の雨水桝1を繋ぐ貯溜管路2が、完全に連通していなくとも、成立し得るものである。
尚、一端の雨水桝1と他端の雨水桝1の間に位置する雨水桝1内において、貯溜管路2は、前述した略T字型のチーズ継手20に接続してもよいことはいうまでもなく、取水するところ(取水ポンプを設けたところ)に向って流れ勾配を付けてもよい。
【0046】
このような雨水貯溜管路構造は、屋外排水管9に連通していないことから、雨水桝1に、雨水が周囲の地中に浸透(排出)する機能を付与する必要がある。従って、本実施形態では、周面に開口1cが複数穿孔された雨水桝1が用いられている。このとき、真ん中に位置する雨水桝1の開口1cは、右側に位置する雨水桝1の開口1cよりも小さくなっている(オリフィス程度の大きさでもよい)。これは、真ん中に位置する雨水桝1に流入管7が接続されていなくとも、左側に位置する貯溜管路2(真ん中に位置する雨水桝1に対しての左側の貯溜管路2)からのオーバーフロー水が、真ん中に位置する雨水桝1を介して、右側に位置する貯留管路2に貯溜され易くするためである。また、雨水桝1の水位がフィルター部材4に達してから貯溜管路2に流入することから、流入管7が接続される雨水桝1は、開口1cが穿孔されていない通常の雨水桝1を用いれば、少量の降雨でも貯溜管路2に貯溜することができる。
尚、図9中では、便宜上、真ん中に位置する雨水桝1及び右側に位置する雨水桝1に浸透機能を付与しているが、真ん中に位置する雨水桝1に流入管7が接続されていてもよく、その場合は、真ん中に開口1cが穿孔されていない通常の雨水桝1を用いて、左側に位置する雨水桝1に、開口1cが穿孔された雨水桝1を埋設すればよい。そのようにすると、浸透能力が足りなくなる恐れもあるが、右側の雨水桝1の容量を大きくしたり、雨水桝1の周囲の砕石によって形成する浸透空間を大きくしたりするなどして、浸透能力不足を補ったり、一時貯溜できる量を増やして、雨水が溢れることを防止することができる。
【0047】
このように本発明の雨水貯溜管路構造は、宅地内の配管設備が公共の下水道施設などに繋がる屋外排水管9に連通しておらず、宅地内のみで完結するような場合でも、雨水桝1に浸透機能を付与することにより、植物の水やり等に有効利用する雨水を貯溜管路2の内部に貯溜することができる。
【0048】
図10は本発明の一実施形態に係る雨水桝を示す分解斜視図、図11は同雨水桝の断面図、図12は同雨水桝の底面に形成された溝部を説明する説明図である。
【0049】
上記のような本発明の雨水貯溜管路構造は、図10図12に示す雨水桝1を用いて構築してもよい。即ち、この雨水桝1は、ポリプロピレン又は塩化ビニル樹脂で成形された合成樹脂製の雨水桝1であって、その底面に、下方から貯溜管路2が収まる溝部1dが形成されたものである。
【0050】
この溝部1dは、貯溜管路2が収まるように、雨水桝1の底面を略半円形状に切欠かれたものであって、この溝部1dを上方から貯溜管路2に被せて嵌合させることにより、雨水桝1は貯溜管路2の上に安定して設置され、特に、雨水桝1の下端を貯溜管路2(継手20)と同じ高さに形成することにより、雨水桝1をより安定的に設置することができる。本実施形態の雨水桝1は、図12の(a)に示すように、底面から見て十字型に2条の溝部1d,1dが形成されており、貯溜管路2が四方から配設されている場合、即ち、前述した図7(a)、(b)、(c)等の継手20と嵌合接続することが可能となっている。
【0051】
一方、図12の(b)に示すように、1条の溝部1dが雨水桝1の底面を突っ切るように形成された雨水桝1は、雨水桝1の下方に継手20(チーズ継手)を配置する際、好適に用いられる。また、図12の(c)に示すように、1条の溝部1dが雨水桝1の底面の途中までで終了する雨水桝1は、エルボ継手21を用いる場合に好適に用いられ、この図12の(c)に示す雨水桝1は、泥溜め部の体積が大きいことからメンテナンス性が最もよい。
【0052】
上記溝部1dの中心(雨水桝1の中心部分)には、雨水桝1内と連通する挿通孔1eが形成されている。この挿通孔1eの内周面には、継手20の管接続口20aが隙間なく挿通されるようになっており、これによって貯溜管路2と雨水桝1が連通するようになっている。この挿通孔1eに縁を設けてもよく、その場合は、縁の高さと管接続口20aの高さの関係について、管接続口20aが受け口の場合は、縁が高くても低くてもよいが、段差ができるとゴミがたまり易いので、略同じ高さにすることが好ましい。また、管接続口20aの高さより高くする場合は、その高さ分だけ貯溜量が増える(オーバーフローの高さが高くなる)ので、例えば、フィルター部材4の開口下端よりも低い位置にするなど、貯溜量との兼ね合いで調整すればよい。一方、管接続口20aが差し口の場合は、管接続口20aが突出していないと接続できないため、縁を管接続口20aよりも低くする必要がある。
【0053】
このような雨水桝1は、溝部1dを形成することにより生じる、雨水桝1内部の凹み部分が、泥砂や枯れ葉等が堆積する泥溜め部となっている。この泥溜め部をそのまま泥溜めとして利用してもよいが、本実施形態では、この泥溜め部に、泥溜め部に沿った外面形状を有する清掃用バケツ体1fが上方より嵌め込まれている。従って、雨水桝1をメンテナンスする際は、清掃用バケツ体1fを上方から取り出すだけで、内部に溜まった泥砂や枯れ葉等を容易に取り除くことができるので、メンテナンス性が非常に良好なものとなって、また、泥溜め部の先端部分(底面の裏面)が、雨水桝1の脚部としての機能を果たすため、設置した際の安定性が向上する。
【0054】
次に、上記のような部材を用いて本発明の雨水貯溜管路構造を構築する施工方法を説明する。
【0055】
まず、上記構成の配管設備を配設する地面を掘削し、掘削したことにより形成された配管溝(不図示)に貯溜管路2を配設する。そして、上記貯溜管路2と継手20を接着剤を用いて接着接続していく。次に、上記雨水桝1にシール材20cを充填し、ゴムパッキン20dを取付けて、雨水桝1を継手20に被せるように配設する。このとき、貯溜管路2に流れ勾配を付ける場合は、雨水桝1の上端が地面と水平になるように固定する。雨水桝1の貯溜管路2に当接する溝部1dに貯溜管路2の流れ勾配に対応した傾斜が形成された雨水桝1を使用してもよい。
尚、上記シール材20c及びゴムパッキン20dは、本実施形態のように、両方を取付けてもよいし、どちらか一方のみを取付けるだけでもよい。
【0056】
上記のように、雨水桝1を配設すると、次に、接着剤を用いて貯溜管路2の一端に堰き止め部材3を接続すると共に、他端にエルボ継手21を接続して、継手20及びエルボ継手21にフィルター部材4を取付ける。このように、貯溜管路2と継手20、貯溜管路2とエルボ継手21、及び、貯溜管路2と堰き止め部材3は、全て接着剤を用いて接続することにより、単に貯溜管路2を挿込孔1aに挿込接続する場合と比較すると、それぞれの部材同士が隙間なく強固に接続されることから、漏水することがなく、せっかく貯溜管路2の内部に貯溜した雨水が減少してしまうことがない。
【0057】
最後に、雨水桝1の内部に埋め戻しの土砂が侵入しないように養生蓋などの仮蓋(不図示)で養生した後、地面を埋め戻す。雨水桝1が開口1cを穿孔した浸透桝である場合は、ある程度土砂で埋め戻して、砕石を充填するエリアを透水シートで区画してから砕石を充填するようにする。そして、雨水桝1の仮蓋を取外して蓋体10により雨水桝1の上部開口を覆うことにより、雨水貯溜管路構造が完成する。この雨水貯溜管路構造に貯溜された雨水は、開口部2Aや堰き止め部材3の第一の口3aに取水ポンプ(不図示)を設けることにより取水され、植物の水やり等に有効利用することができる。この取水ポンプは常設してもよいし、使用時だけ雨水桝1の蓋体10を取外して取水してもよい。
【0058】
以上のような構成の雨水桝1は、溝部1dを上方から貯溜管路2に被せて嵌合させることにより、雨水桝1を安定的に設置することができ、それに加えて、貯溜管路2を宅地内に配設した後から、雨水桝1を設置していくことができるので、施工性にも優れる。
【0059】
図13は本発明の他の実施形態に係る雨水桝を示す断面図である。
【0060】
この実施形態の雨水桝1は、図13に示すように、少なくとも第一の接続口1iと第二の接続口1jを有するものであって、第一の接続口1iは桝底面に形成されると共に、第二の接続口1jは第一の接続口1iよりも下方の桝側面に形成されており、上記第一の接続口1iと第二の接続口1jは、閉じられた貯溜管路2により連通している。
【0061】
上記第二の接続口1jには、左右両側から貯溜管路2,2が接続されており、これにより密閉されて、貯溜管路2と連通している。また、第一の接続口1iには、フィルター部材4が接続されており、このような雨水桝1を用いて貯溜管路構造を構築すると、継手20やエルボ継手21を用いる必要がなくなることから、挿込孔1aと管接続口20aとの隙間がなくなって、そこからの漏水の恐れが皆無に等しくなり、雨水桝1の内部において、貯溜管路2を継手20又はエルボ継手21に接続するといった作業が不要となるメリットがある。
【0062】
図14図19は本発明の更に他の実施形態に係る雨水桝を示すものであり、図20は本発明の更にもう一つの実施形態に係る雨水桝を示す正面図である。
【0063】
図14図19に示す実施形態の雨水桝1は、雨水桝1の内部と連通する挿通孔1eが後側に偏位して形成されていると共に、下方から貯溜管路2が収まる溝部1dが、雨水桝1の底面に3方向(前方向、右方向、左方向)に向って形成されたものである。この雨水桝1は、上記のように、挿通孔1eが後側に偏位して形成されていることから、該挿通孔1eに連通する左右の溝部1d,1dも同様に、後側に偏位して形成されている。
【0064】
上記雨水桝1の挿通孔1eの上端部は、図19に示すように、内側下方向に向う縁が突設されており、その縁により形成された凹部に、継手20の管接続口20aを挿入するようになっている。この継手20の管接続口20aを挿入する際は、止水性及び密着性を向上させるため、シール材20cが充填されていると共に、ゴムパッキン20dが取付けられている。また、図19の仮想線に示すように、雨水桝1の挿通孔1eには、フィルター部材4が取付けられている。本実施形態の雨水桝1に取付けられるフィルター部材4は、ネット状のパイプであって、このフィルター部材4の下端を、継手20の底面に当接するまで挿入することにより、フィルター部材4は立設されている。そして、このフィルター部材4の上端は、雨水桝1の蓋体10に当接乃至その僅か下まで達しており、このように、フィルター部材4を、雨水桝1の蓋体10と継手20の底面により挟み込むように取付けることにより、フィルター部材4は安定的に取付けられるようになると共に、直接異物が侵入する隙間がなくなるため、枯れ葉等の異物が貯溜管路2に流入することがなくなる。
この実施形態の雨水桝1のその他の構成は、前述した図10図13に示す実施形態の雨水桝1と同様であるので、同一部材に同一符号を附して、説明を省略する。
【0065】
上記のように、挿通孔1e及び左右の溝部1d,1dが後側に偏位して形成された雨水桝1は、それに伴い、泥溜め部も一方に偏位して形成されることになるので、メンテナンス性に優れる。
【0066】
また、図20に示す雨水桝1は、雨水桝1の内部と連通する挿通孔1eが左後側に偏位して形成されていると共に、下方から貯溜管路2が収まる溝部1dが、雨水桝1の底面に2方向(前方向、右方向)に向って形成されたものである。この前方向に向う溝部1dは、雨水桝1の左側に偏位して形成されており、右方向に向う溝部1dは、雨水桝1の後側に偏位して形成されている。そして、2条の溝部1d,1dによって挟まれた空間が、泥溜め部となっている。
この実施形態の雨水桝1のその他の構成は、前述した図14図19に示す実施形態の雨水桝1と同様であるので、同一部材に同一符号を附して、説明を省略する。
【0067】
上記のような、挿通孔1eが左後側に偏位して形成された雨水桝1は、泥溜め部が一方に偏位して形成されると共に、泥溜め部の最も深い部分が一箇所に集中して面積を大きくとることができるので、メンテナンス性が非常に良好となる。
【0068】
以上、本発明の雨水貯溜管路構造及び雨水桝の代表的な実施形態を詳述してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の設計変更を許容し得るものである。例えば、雨水桝1が上半分と下半分の2部材から構成されるものであり、この上半分が下半分に対して回動自在な雨水桝1を用いてもよい。このような雨水桝1を用いて雨水貯溜管路構造を構築すると、上半分に挿込孔1aを予め穿孔していても、雨水桝1の上半分を回動させることにより、様々な角度の貯溜管路2を接続することができるようになる。
【符号の説明】
【0069】
1 雨水桝
1a 挿込孔
1b ゴムパッキン
1c 開口
1d 溝部
1e 挿通孔
1f 清掃用バケツ体
1g アーチ部
1h 嵌合孔
1i 第一の接続口
1j 第二の接続口
10 蓋体
10a 浸透孔
2 貯溜管路
2A 開口部
20 継手
20a 管接続口
20b 貯溜管路接続口
20c シール材
20d ゴムパッキン
21 エルボ継手
3 堰き止め部材
3a 第一の口(排出口)
3b 第二の口
3c 第三の口
3d 閉塞部材
3e ガイド部材
3f 突起
4 フィルター部材
5 軒樋
6 竪樋
7 流入管
8 排水管
9 屋外排水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20