特許第6391041号(P6391041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391041
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】真空処理設備
(51)【国際特許分類】
   F27D 7/06 20060101AFI20180910BHJP
   F27B 5/02 20060101ALI20180910BHJP
   F27B 5/05 20060101ALI20180910BHJP
   C21D 1/773 20060101ALI20180910BHJP
   B22F 3/10 20060101ALN20180910BHJP
【FI】
   F27D7/06 A
   F27B5/02
   F27B5/05
   C21D1/773 J
   !B22F3/10 L
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-171218(P2014-171218)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-44933(P2016-44933A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098615
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】丸山 崇
(72)【発明者】
【氏名】廣野 靖昌
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正之
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−063363(JP,A)
【文献】 特開2008−170116(JP,A)
【文献】 特開2013−064184(JP,A)
【文献】 特開平06−174377(JP,A)
【文献】 特開2011−241469(JP,A)
【文献】 特開2001−240954(JP,A)
【文献】 特開平09−255791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/773
F27B 5/00−7/42
F27D 7/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの移動可能な真空処理ユニットを含む複数の真空処理ユニットを備えた真空処理設備であって、
真空中で被処理品に必要な処理を施し且つ少なくとも一方が移動可能である一対の真空処理ユニット間互い真空状態で接続する該一対の真空処理ユニットの接続部同士において、何れか一方の真空処理ユニットの接続部には、他方の真空処理ユニットの内部に開口する真空引き用管が配管されると共に、他方の真空処理ユニットの内部と連通するための開閉可能な扉が配置されている、
ことを特徴とする真空処理設備。
【請求項2】
前記移動可能な真空処理ユニットは、フロア上に固定された複数の真空処理ユニット同士の間を移動し、係る固定された真空処理ユニットごととの間で被処理品を受け渡しする真空搬送ユニットであると共に、上記フロア上に固定された複数の真空処理ユニットごとに前記真空引き配管および扉が配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の真空処理設備。
【請求項3】
前記一対の真空処理ユニットは、双方がフロア上を移動可能であり、且つ互いに接近および接続可能である真空処理ユニットである、
ことを特徴とする請求項1に記載の真空処理設備。
【請求項4】
前記真空引き用管の中間には、該配管が設置された前記一方の真空処理ユニットの内部も、真空引きするための開口部を含む分岐管を併設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の真空処理設備。
【請求項5】
前記真空引き用管の基端側には、モータで駆動する真空ポンプが接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の真空処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空熱処理炉などのような真空処理設備において、例えば、複数の真空熱処理ユニットの何れかと移動可能な真空処理ユニットとの間で被処理品を受け渡しするべく、両ユニットの接続部を接続する際にし、一方のユニット側にのみ取り付けた真空引き用配管などの真空設備によって、接続される両ユニットの内側を確実且つ迅速に真空雰囲気にし得る真空処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
真空雰囲気中において熱処理する被処理品の処理量の増減に容易に対応したり、多様なヒートパターンに対応するため、複数の熱処理チャンバを並列に設置し、該複数の熱処理チャンバごとの接続部側に沿って敷設したレール上を走行する搬送ユニットを配設しており、熱処理チャンバごとにそれらの内部を真空雰囲気にする真空用配管を設けると共に、保温チャンバと受け渡しチャンバとからなる上記搬送ユニットには、前記各チャンバ内を真空雰囲気にするための真空用配管、真空ポンプ、および該ポンプを駆動するためのモータなどからなる真空設備を配置した熱処理設備が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
あるいは、移動可能な搬送ユニットに真空用配管を搭載し、該真空用配管と別の位置に配設した真空ポンプとの間を、上記搬送ユニットの移動量に対応できるフレキシブルで且つ長尺な真空用ホースにより接続し、且つ搬送ユニットの移動と共に該ホースが変形しつつ移動可能とした別の熱処理設備も提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された前記熱処理設備の場合、大がかりな真空設備を搬送ユニットに搭載して移動させるため、該搬送ユニットおよびその移動のための動力設備の大容量化とも伴って、該搬送ユニットの全体が大型化および重量化し、且つ設備コストが嵩むと共に、前記熱処理チャンバとの接続時や移動時において広いスペースが必要となる、という問題点があった。
一方、前記別の熱処理設備の場合、長尺な真空用ホース自体が高価であると共に、係る真空用ホースの変形を許容しつつ移動させるための広いスペースが必要となる、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−170116号公報(第1〜9頁、図1〜7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、真空設備に伴う大型化、重量化、およびコスト高を防ぎ、且つ過度に広いスペースを必要とせず、複数の真空処理ユニットを含み且つ該真空処理ユニット同士の接続に際し、両ユニットの内部を確実且つ迅速に真空化できる真空処理設備を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、接続すべき一対の真空処理ユニット同士における一方の接続部に、他方の内部に開口する真空引き用配管を配管すると共に、該一方の真空処理ユニットに他方の真空処理ユニットの内部と連通するための開閉可能な扉を配置する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の真空処理設備(請求項1)は、少なくとも1つの移動可能な真空処理ユニットを含む複数の真空処理ユニットを備えた真空処理設備であって、真空中で被処理品に必要な処理を施し且つ少なくとも一方が移動可能である一対の真空処理ユニット間互い真空状態で接続する該一対の真空処理ユニットの接続部同士において、何れか一方の真空処理ユニットの接続部には、他方の真空処理ユニットの内部に開口する真空引き用管が配管されると共に、他方の真空処理ユニットの内部と連通するための開閉可能な扉が配置されている、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、互いに接続される前記一対の真空処理ユニットにおける一方の真空処理ユニットの接続部には、接続時に他方の真空処理ユニットの内部に開口する真空引き用管が配管され、且つ他方の真空処理ユニットの内部と連通するための開閉可能な扉が配置されている。その結果、一方の真空処理ユニットの接続部と他方の真空処理ユニットの接続部とを接続すると同時に、一方の真空処理ユニットに配管された真空引き用管の開口部は、他方の真空処理ユニットの内部に開口した状態となる。かかる状態で、他方の真空処理ユニットの内部を真空引きすることにより、接続対象である当該他方の真空処理ユニットの内部を真空することができる。そのため、予め真空状態とされているか、あるいは、上記のように他方の真空処理ユニットの内部を真空引きし、更に、一方の真空処理ユニットの内部を真空引きした後、該一方の真空処理ユニットの接続部における前記扉を開放することで、両ユニットの内部を真空状態にして連通することができる。
従って、接続すべき相手方の真空処理ユニット内を確実且つ迅速に真空化できるので、複数の真空処理ユニットに要する真空設備と、そのために要するスペースと、設備コストとを低減することが可能となる。
【0008】
尚、前記真空処理設備は、真空中で行われる各種の処理(熱処理や焼結処理など)を行うための複数の真空処理ユニットを有し、これらの真空処理ユニットのうち、少なくとも1つは、真空状態で被処理品を搬送する搬送専用の真空処理ユニットであるか、真空熱処理を行いつつ別の真空処理ユニットに被処理品を搬送する真空熱処理と搬送を兼ねる真空処理ユニットである。付言すれば、上記熱処理には、浸炭処理や窒化処理なども含まれる。
また、前記複数の真空処理ユニットは、その一部がフロア上に固定された真空処理ユニットで且つ残りがフロア上を移動する真空処理ユニットである形態のほか、全てのユニットが移動可能な真空処理ユニットからなる形態であっても良い。
更に、前記真空引き用管の開口部付近(管端部)は、前記一方のユニットの接続部における前記扉の開閉に支障のない接続部の位置に配管されている。
加えて、前記一対の真空処理ユニットにおける少なくとも一方の接続面には、該接続面の外周側に沿って、弾性変形可能なシール材が配設されている。
【0009】
また、本発明には、前記移動可能な真空処理ユニットは、フロア上に固定された複数の真空処理ユニット同士の間を移動し、係る固定された真空処理ユニットごととの間で被処理品を受け渡しする真空搬送ユニットであると共に、上記フロア上に固定された複数の真空処理ユニットごとに前記真空引き配管および扉が配設されている、真空処理設備(請求項2)も含まれる。
これによれば、移動可能な真空処理ユニットが、フロア上に固定された複数の真空処理ユニット同士の間を移動して、被処理品を受け渡しするので、固定側の真空処理ユニットごとに前記真空引き配管および扉を配設することにより、真空用の長尺なホースが不要となり、比較的少容量で且つ低コストの真空ポンプおよびモータによって、真空引き操作を確実且つ迅速に行うことが可能となる。
尚、前記フロア上を移動可能な真空処理ユニットは、フロア上に固定された複数の真空処理ユニット間に敷設されたレール上を走行可能であるか、あるいは、複数のタイヤを装着した真空搬送ユニットから垂下したガイドピンを受け入れる凹溝、またはフロアに直線状などにして埋設された磁気誘導路またはレーザなどの光誘導路などからなるガイド手段に沿ってフロア上を移動可能とされている。
また、本発明には、前記真空引き用配管および扉をフロア上を移動する真空処理ユニット側にのみ配設し、フロア上に固定された真空処理ユニットには、上記真空引き用配管および扉を配設していない形態も含まれる。
【0010】
更に、本発明には、前記一対の真空処理ユニットは、双方がフロア上を移動可能であり、且つ互いに接近可能および接続可能である真空処理ユニットである、真空処理設備(請求項3)も含まれる。
これによれば、相互に平行な2組のレール上などを平行移動して互いに接続可能となる一対の真空処理ユニットにおける一方の接続部に前記真空引き配管および扉を配設するか、あるいは、同一のレール上などを直線状に移動して互いに直列状に接続可能となる一対の真空処理ユニットにおける一方の接続部に前記真空引き配管および扉を配設することにより、一対の真空処理ユニット同士の内部を、確実か迅速に真空化することが可能となる。
尚、前記一対の真空処理ユニット同士の接続は、一方のユニットをレール上などで停止させ且つ他方のユニットを移動して接続させる相対的な接続のほか、双方のユニット同士をレール上などのおける所定の位置まで互いに接近させて接続する形態の何れであっても良い。

【0011】
また、本発明には、前記真空引き用管の中間には、該配管が設置された前記一方の真空処理ユニットの内部も、真空引きするための開口部を含む分岐管を併設されている、真空処理設備(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記真空引き用管によって、他方の真空処理ユニットの内部とほぼ同時に、前記分岐管を介して一方の真空処理ユニットの内部も、真空状態にすることができる。その結果、一対の真空処理ユニットに必要な真空設備の小型化、少容量化、およびコスト低減を一層図ることが可能となる。
尚、前記一方の真空処理ユニットの内部において、該内部に被処理品を真空雰囲気で熱処理するための断熱室を更に内設している場合には、前記分岐管を並列にした2本とし、該断熱室の内側と外側に個別に開口する形態としても良い。
また、前記真空引き用管の中間に切り換え弁を介して、前記分岐管を併設することで、例えば、予め、該分岐管を介して一方の真空処理ユニットの内部を真空状態とした後、上記弁を切り換えて上記真空引き用管を介して、他方の真空処理ユニットの内部を真空化できるので、処理速度を高めることが可能となる。
【0012】
加えて、本発明には、前記真空引き用管の基端側には、モータで駆動する真空ポンプが接続されている、真空処理設備(請求項5)も含まれる。
これによれば、前記真空引き用管、モータ、および真空ポンプを含む真空設備が前記真空処理ユニットの接続部に配設されるので、上記真空引き用管の開口部を介して他方の真空処理ユニットの内部を真空化し、あるいは前記分岐管の開口部を介して一方の真空処理ユニットの内部を真空化することが確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による一形態の真空処理設備を示す平面図。
図2図1中のX−X線の矢視に沿った垂直断面図。
図3】(A)は図2中の一点鎖線部分Yの部分拡大図、(B),(C)は上記真空処理設備の使用状態を順次示す(A)と同様の部分拡大(概略)図。
図4】(A),(B)は応用形態の真空引き用配管付近を示す前期同様の概略図。
図5】(A),(B)は更なる応用形態の真空引き用配管付近を示す部分概略図。
図6】本発明における異なる形態の真空処理設備を示す平面図。
図7】本発明における更に異なる形態の真空処理設備を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による一形態の真空処理設備1を示す平面図、図2は、図1中のX−X線の矢視に沿った垂直断面図、図3(A)は、図2中の一点鎖線部分Yの部分拡大図である。
係る真空処理設備1は、図1図2に示すように、直線状のレール2,2上を走行する移動可能な真空処理ユニット3と、該レール2,2に沿ってフロアFL上に立設する複数の支柱33により、該フロアFL上に隣接して固定された2つ(複数)の真空熱処理ユニット(真空処理ユニット)20a,20bとを備えている。
移動可能な真空処理ユニット3は、熱処理すべき被処理品Wを真空状態で保温する保温室4と、該被処理品Wを真空熱処理ユニット20a,20bの何れかとの間で受け渡しする受け渡し室(内部)5とを併有している。
【0015】
前記真空処理ユニット3は、図2の右側に示すように、円筒形状の容器6とドーム形状の端板7とに囲まれた保温室4内に、扉10を含む断熱室9を内設し、該断熱室9の内壁付近には、被処理品Wを所定温度以上に加熱および保持する複数のヒータhが配置され、該断熱室9の床付近には、被処理品Wを支持する炉床Rfまたは該被処理品Wを移動可能に支持する複数のローラ(図示せず)が配置されている。断熱室9の天井付近には、該断熱室9内に不活性ガス(Arあるいは窒素と水素との混合ガスなど)、あるいは浸炭処理や窒化処理などに用いる反応性ガスを供給および排出するための複数のガス管14の一端側が開口している。
上記扉10は、保温室4と受け渡し室5とを開閉可能に仕切る扉11に接続片12を介して固定され、該扉11は、上方に位置するスライド機構13によって図2の奥行き方向に沿ってスライドされることにより、保温室4と受け渡し室5とを連通可能とし、同時に断熱室9を開放可能としている。
【0016】
また、図2に示すように、円筒形状の容器8に囲まれ且つ接続部側に開口部(接続部)15を有する受け渡し室5は、その床付近に水平方向に沿ってスライド可能な複数枚の耐熱板からなる移載手段Trを配置している。尚、該移載手段Trに替えて、前記複数のローラを配置しても良い。
更に、図3(A)に示すように、上記開口部15を包囲する接続面には、断面がJ字形状のシール材(パッキング)42が全周に沿って配置されている。
前記保温室4および受け渡し室5は、台枠16上に固定され、該台枠16は、複数箇所に配置されたコロベアリング18を介して、左右一対の車輪19を有する台車17上に支持され、且つ図2で左右方向に沿って進退可能とされている。
【0017】
一方、真空熱処理ユニット20a,20bは、図2の左側に示す真空熱処理ユニット20bで例示するように、円筒形状の容器22とドーム形状の端板23とに囲まれた処理室21内に、扉25を含む断熱室24を内設している。該断熱室24の内壁付近には、ジグザグ形状などを呈するヒータhが配置され、該断熱室24の床付近には、前記同様の炉床Rfまたはローラが配置されている共に、係る断熱室24の天井付近には、不活性ガス(Arあるいは窒素と水素との混合ガスなど)、もしくは浸炭処理や窒化処理などに用いる反応性ガスを供給または排出するための複数のガス管30の一端側が開口している。
尚、真空熱処理ユニット20a,20bは、互いが同一または同種の熱処理を施す形態と、互いに異種の熱処理を施す形態とに切り換えることが可能である。
【0018】
前記断熱室24の扉25は、複数の接続片27を介して、処理室21の扉26に固定され、該扉26は、図3(A)に示すように、支持金具29を介し上方のスライド機構28に支持されている。そのため、上記扉25および扉26は、上記スライド機構28によって、図2図3(A)の奥行き方向に沿ってスライドされることで、処理室21と前記受け渡し室5とを連通可能とすると同時に、上記断熱室24も開放可能としている。
また、前記端板23側の断熱室24の外壁には、モータ32が取り付けられ、該モータ34の回転軸は、該断熱室24の側壁を貫通し、該回転軸の先端には、断熱室24内の不活性ガスなどを攪拌することで伝熱効率を高めるためのファン31が固定されている。
更に、図2図3(A)に示すように、処理室21における扉26側の床側または側面には、側面視または平面視が逆L字形状を呈する真空引き管34が配管され、該真空引き管34における水平部の先端は、接続すべき真空処理ユニット3の受け渡し室5側に開口している。係る真空引き管34における垂直部の基端側は、前記容器22の底壁または側壁を貫通し、その端部には、モータ36により駆動される真空ポンプ35が接続され、且つ該ポンプ35からは、排気管37が容器22の下方または上方を水平方向に沿って延びている。
【0019】
以上のような真空処理設備1は、例えば、以下のようにして使用される。
例えば、鋼材などを熱処理するための被処理品Wは、予め、真空熱処理ユニット3の保温室4内の断熱室9に装入され、該断熱室9内を不活性ガスに置換した後に、前記ヒータhにより所定の温度帯まで加熱され且つ保持される。
次いで、図1図2に示すように、被処理品Wを有する真空処理ユニット3の受け渡し室5を真空熱処理ユニット20bの右側に隣接させた後、図3(A)に示すように、上記受け渡し室5の開口部15を、前記コロベアリング18を含む進退機構によって、同図中の白抜きの矢印で示すように、真空熱処理ユニット20bの処理室21における扉26側に接近させる。
尚、真空熱処理ユニット20bの処理室21内および断熱室24内は、予め、所要の真空状態(例えば、約0.001Pa〜0.1Paレベル)にされている。
【0020】
次に、図3(B)に示すように、圧縮されたシール材42を介して、真空処理ユニット3と真空熱処理ユニット20bとの接続部同士が密着した状態で、真空熱処理ユニット20b側の前記真空引き管34の先端側の開口部から、真空処理ユニット3の受け渡し室5内のエアを吸引して、該受け渡し室5を真空化する。
更に、前記ユニット20b側の扉25,26を開放し、且つ前記ユニット3側の扉10,11を開放した後、図3(C)中の白抜きの矢印で示すように、前記保温室4内の断熱室9内から前記炉床Rf上の被処理品Wを、受け渡し室5内の前記移載手段Trを用いて、該受け渡し室5を横向きに通過させた後、真空熱処理ユニット20bの断熱室24内に搬送する。
そして、断熱室24の扉25を前記扉26と共に閉鎖した後、該断熱室24内で所要の温度帯に加熱および保持されることにより、上記被処理品Wに対して所定の熱処理、例えば、浸炭処理が施される。
尚、上記熱処理を施された被処理品Wは、前記の順序とは逆の順序で、真空処理ユニット3の保温室4内の断熱室9内に戻され、必要に応じて、更に、別の真空熱処理ユニット20aの断熱室24内に送られ、仕上げの熱処理、例えば、焼き入れが施される。その結果、所要の被熱処理品Wとされて、真空処理設備1の外部に搬出される。
【0021】
以上のような真空処理設備1によれば、真空処理ユニット3の接続部と真空熱処理ユニット20bの接続部とを接続すると同時に、真空熱処理ユニット20b側の真空引き用管34の開口部は、真空処理ユニット3の受け渡し室5内に開口した状態となる。係る状態で、真空処理ユニット3の受け渡し室5内を真空引きすることにより、接続対象である該真空処理ユニット3の受け渡し室5内を真空化することができる。そのため、予め、真空状態とされている真空熱処理ユニット20bの内部を真空引きし、更に、真空処理ユニット2の受け渡し室内を真空引きした後、真空熱処理ユニット20bの接続部における前記扉26を開放することによって、上記両ユニット3,20bの内部同士を真空状態で連通することができる。
従って、接続すべき相手方の真空処理ユニット3の内部を確実且つ迅速に真空化できるので、複数の真空処理ユニット3,20bに要する真空設備(34〜37)と、そのためのスペースと、該設備コストとを低減することが可能となる。
【0022】
図4(A),(B)は、本発明における応用形態の真空引き管34の付近を示す前記図3(A),(B)と同様な概略図である。
図4(A)に示すように、真空熱処理ユニット20b側の真空引き管34における中間には、処理室21内に先端が開口する分岐管38の基端部が垂直に接続され、且つ断熱室24内に先端が開口し且つ側面視がL字形状を呈する別の分岐管39の基端部が水平に接続されている。
上記分岐管38,38を併有する真空引き管34を有する真空熱処理ユニット20bの接続部を、図4(B)に示すように、前記と同様に真空処理ユニット3の受け渡し室5の開口部18と接続した状態で、モータ36によって真空ポンプ35を駆動する。その結果、真空引き管34によって受け渡し室5内が真空化され、上記分岐管38,38によって処理室21内と断熱室24内とが個別に真空化される。係る状態で、前記同様に、保温室4内の断熱室9内から被処理品Wが、受け渡し室5を経て真空熱処理ユニット20bの断熱室24内に搬送とされる。
【0023】
図5(A),(B)は、本発明における応用形態の真空引き管34の付近を示す前記図3(A),(B)と同様な概略図である。
図5(A)に示すように、真空熱処理ユニット20b側の真空引き管34における中間に、切り換え弁40を配設し、該切り換え弁40を介して、処理室21内に先端が開口する前記分岐管38の基端部が接続され、且つ断熱室24内に先端が開口する前記別の分岐管39の基端部が水平に接続されている。
予め、切り換え弁40を操作して、真空引き管34の先端側を閉鎖し、且つ分岐管38,39を開放した状態で、真空熱処理ユニット20bの処理室21内と断熱室24内とを真空化しておく。次に、図5(B)に示すように、真空熱処理ユニット20bの接続部を、前記同様に真空処理ユニット3の受け渡し室5の開口部18と接続した状態で、上記切り換え弁40を操作して、分岐管38,39を閉鎖し、且つ真空引き管34の先端側を開放する。
【0024】
係る状態で、該真空引き管34を介して、真空処理ユニット3側の受け渡し室5内を真空化する。この後は、前記と同様にして、被処理品Wを保温室4内の断熱室9内から、受け渡し室5を経て、真空熱処理ユニット20bの断熱室24内に搬送して所要の熱処理が施される。
以上のような分岐管38,39を併有するか、これらに加えて更に切り換え弁40を併設した真空引き管34を用いることによって、真空処理ユニット3と真空熱処理ユニット20b(20a)との内部同士間における被処理品Wの受け渡しを、該被処理品Wの酸化などの劣化を生じることなく、所要の真空雰囲気中においてに一層迅速且つ確実に行うことが可能となる。
【0025】
図6は、真空処理ユニット3が走行するための前記レール2,2と平行に、真空熱処理ユニット20a,20bをそれぞれ短い距離ごとにより、上記真空処理ユニット3と平行で且つ個別に走行可能とする比較的短いレール2a,2aを更に敷設した真空処理設備1aを示す平面図である。
係る真空処理設備1aでは、短いレール2a,2aにおける所定の位置ごとに真空熱処理ユニット20a,20bを停止させた状態で、前記同様に真空処理ユニット3が順次接続され、前記被処理品Wの受け渡しが行われる。
以上のように、真空熱処理ユニット20a,20bを比較的短いレール2a,2a上を移動可能で且つ調整可能にすると共に、上記ユニット20a,20bごとに用いる真空設備である前記真空引き管34、真空ポンプ35、モータ36、および排気管37や、更に、前記分岐管38,39や切り換え弁40を併有する形態の真空設備となっても、係る真空設備の大型化、大容量化、および高コスト化を防いで、前記真空処理設備1と同様な効果を奏することが可能である。
【0026】
図7は、真空処理ユニット3が走行するための前記レール2,2と平行に、真空熱処理ユニット20a,20bを上記と同様なレール2,2上を走行して移動可能とした真空処理設備1bを示す平面図である。
係る真空処理設備1bでは、真空処理ユニット3と、真空熱処理ユニット20a,20bとがそれぞれ専用のレール2,2上を走行して移動可能となっている。そして、真空熱処理ユニット20a,20bを共通で且つ専用のレール2,2上における所定の位置ごとに移動して且つ停止させた状態で、前記同様に真空処理ユニット3が順次接続され、前記被処理品Wの受け渡しが行われる。
上記真空処理設備1bでは、前記真空ポンプ35を駆動するモータ36に給電するための電気ケーブルが若干長尺化し得るが、係る点以外は、前記真空処理設備1と同様な効果を奏することが可能である。
【0027】
本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記真空引き管、真空ポンプ、およびモータを含む真空設備を移動可能な真空処理ユニット側に配置し、これと接続される固定側の真空処理ユニットには、上記真空設備を有していない形態も、本発明の真空処理設備に含まれる。
また、前記受け渡し室5を含む真空処理ユニット3は、その断熱室9内で被処理品Wに対し、比較的低温度域の熱処理を行いつつ搬送する形態でも良い。
更に、前記レール2,2、2a,2aは、直線状に形態に限らず、平面視が円形状や長円形状やU字形状などの曲線を含む形態であっても良い。尚、上記レール2,2、2a,2aに替えて、ガイド溝や非接触式のガイド手段としても良い。
加えて、本発明の真空処理設備には、例えば、搬送用の真空処理ユニットと真空焼結用の真空処理ユニットとを含む真空焼結設備や、搬送用の真空処理ユニットと真空溶接用の真空処理ユニットとを含む真空溶接設備なども含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、真空設備の配設に伴う大型化、重量化、およびコスト高を防ぎ、且つ過度に広いスペースを必要とせず、複数の真空処理ユニットを含み且つ該真空処理ユニット同士の接続に際し、両ユニットの内部を確実且つ迅速に真空化できる真空処理設備を提供できる。
【符号の説明】
【0029】
1,1a,1b…真空処理設備
3…………………真空処理ユニット
5…………………受け渡し室(内部)
20a,20b…真空熱処理設備(真空処理設備)
21………………処理室(内部)
24………………断熱室(内部)
26………………扉
34………………真空引き管
35………………真空ポンプ
36………………モータ
38,39………分岐管
FL………………フロア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7