特許第6391105号(P6391105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6391105シリカグラウトの製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6391105
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】シリカグラウトの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/16 20060101AFI20180910BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20180910BHJP
   C01B 33/142 20060101ALI20180910BHJP
   C09K 17/12 20060101ALI20180910BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20180910BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B28C5/16
   E02D3/12 101
   C01B33/142
   C09K17/12 P
   C09K17/02 P
   B01F7/16 L
   B01F7/16 G
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-145577(P2017-145577)
(22)【出願日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年1月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162652
【氏名又は名称】強化土エンジニヤリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】角田 百合花
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 正
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−002170(JP,A)
【文献】 特表平10−513100(JP,A)
【文献】 特開2012−115808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 5/12−5/16
C01B 33/12−33/193
B01F 7/16−7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシリカ溶液を含む原料成分を混合してシリカグラウトを得るシリカグラウトの製造装置において、
前記原料成分が導入される攪拌槽と、該攪拌槽内に、攪拌軸が鉛直方向になるように配置された攪拌機とを備え、前記攪拌槽が、上部開口部および下部開口部を備えるとともに、鉛直方向に沿って、流路断面積の相対的に広い部位と狭い部位とを繰り返し2箇所以上有し、前記攪拌機が、せん断力を発生させる攪拌翼を、前記攪拌槽の、前記流路断面積の相対的に広い部位に備え、かつ、前記原料成分が前記攪拌槽内を上方から下方に流下しながら攪拌、混合されて、製造された前記シリカグラウトが前記下部開口部から連続的に排出されることを特徴とするシリカグラウトの製造装置。
【請求項2】
前記攪拌槽の内周面に邪魔板が設けられて、前記流路断面積の相対的に狭い部位が形成されている請求項1記載のシリカグラウトの製造装置。
【請求項3】
前記邪魔板が、前記攪拌槽の周方向に沿って略等間隔で複数個設けられている請求項2記載のシリカグラウトの製造装置。
【請求項4】
前記攪拌槽が、鉛直方向に沿って、前記流路断面積の相対的に広い部位と狭い部位とを、略等間隔で、繰り返し2箇所以上有する請求項1〜3のうちいずれか一項記載のシリカグラウトの製造装置。
【請求項5】
複数の前記攪拌槽が直列に連結されている請求項1〜4のうちいずれか一項記載のシリカグラウトの製造装置。
【請求項6】
複数の前記攪拌槽が並列に連結されている請求項1〜4のうちいずれか一項記載のシリカグラウトの製造装置。
【請求項7】
少なくともシリカ溶液を含む原料成分を混合してシリカグラウトを得るシリカグラウトの製造方法において、
請求項1〜6のうちいずれか一項記載のシリカグラウトの製造装置を用いて、前記攪拌槽内で前記原料成分を攪拌し、混合することを特徴とするシリカグラウトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカグラウトの製造装置および製造方法(以下、単に「製造装置」および「製造方法」とも称する)の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液状化防止等に非アルカリ性シリカ溶液が用いられるようになってきている。液状化防止注入は、いつ起こるか分からない地震に対しての地盤強化であるので、長期耐久性が要求される。よって、水ガラスの劣化要因となるアルカリを酸で除去して製造される酸性領域のシリカグラウトの使用が適切であることが分かっている。
【0003】
シリカグラウトの製造に係る技術は、例えば、特許文献1〜6に開示されている。このうち特許文献2,3中には、Y字管を用いて水ガラスと酸とを酸過剰に合流混合する方法(Y字方式)が開示されており、特許文献4、5中には、容器中に過剰の酸性液を計量して、酸性液中において所定の量の水ガラスを噴出混合する方法(バッチ方式)が開示されている。また、特許文献6には、2種の液体を降下させながら混合する構造の混合装置(連続方式)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−75692号公報
【特許文献2】特開2005−194463号公報
【特許文献3】特開2001−247865号公報
【特許文献4】特公平7−8723号公報
【特許文献5】特許第5861852号公報
【特許文献6】実開平3−26331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、大規模地盤改良工事の迅速な施工が求められており、このため、注入時におけるグラウトの製造についても、さらなる迅速化が求められている。また、改良地盤の高強度化を図るためには、高濃度のシリカグラウトの使用が有効である。かかる観点から、高濃度のシリカグラウトの製造を、従来よりもさらに迅速に行うための技術が求められている。
【0006】
しかし、従来の方法では、攪拌能力に限度があることから、不均質なゲルの析出を防止しつつ、装置を大容量化し、大量の注入液を作ることが困難であった。部分ゲルの発生を防止するためには、急速なゲル化が生じないように酸を過剰に配合したり、水ガラスを希釈して混合したりするなどの手法を用いざるを得ないが、酸を過剰に添加したシリカグラウトでは、環境や構造物への影響を考慮する必要があり、希釈した水ガラスでは、水ガラス濃度が低く、改良地盤において十分な高強度が得られないという問題があった。
【0007】
たとえば、特許文献1〜3に開示されているようなY字式の製造装置では、酸成分とシリカ成分の2液を正確な混合比率で混合し合流させることが難しく、合流する液量にバラつきが生じやすいため、高濃度のシリカグラウトを製造しようとすると、塊状シリカゲルが析出しやすく、部分ゲルが生じやすいという問題があった。また、特許文献1に係る技術では、水ガラスを希釈しなくてはシリカゾルを製造できず、水ガラスを原液で使用することができないという難点もあった。さらに、練り混ぜ水に海水を使用すると、瞬時にゲル化してしまい、使用することができなかった。
【0008】
これに対し、特許文献4および5に開示されているような製造装置では大容量化に伴い、攪拌槽を大きくすると混合が不十分になりやすく、正確な混合ができないおそれがあった。一方、小さい攪拌槽を用いれば、十分にかつ正確な混合を行うことが可能であるが、一度に製造できるシリカグラウトの量が少なくなって、製造効率が低下してしまう。
【0009】
特許文献6に開示されているような装置もあるが、この装置では、攪拌中に薬液の共回りが起きてしまい、完全に混合することが難しいため、高濃度薬液を混合することができないとの問題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、シリカグラウトを大量に製造するにあたり、特に高濃度のシリカグラウトを、部分ゲル化を生ずることなく、高効率で製造することができ、さらに、水ガラスの原液を用いることや、海水を練り混ぜ水として使用することも可能なシリカグラウトの製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、シリカグラウトの製造に用いる攪拌槽の形状および攪拌翼の配置条件の観点から鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のシリカグラウトの製造装置は、少なくともシリカ溶液を含む原料成分を混合してシリカグラウトを得るシリカグラウトの製造装置において、
前記原料成分が導入される攪拌槽と、該攪拌槽内に、攪拌軸が鉛直方向になるように配置された攪拌機とを備え、前記攪拌槽が、上部開口部および下部開口部を備えるとともに、鉛直方向に沿って、流路断面積の相対的に広い部位と狭い部位とを繰り返し2箇所以上有し、前記攪拌機が、せん断力を発生させる攪拌翼を、前記攪拌槽の、前記流路断面積の相対的に広い部位に備え、かつ、前記原料成分が前記攪拌槽内を上方から下方に流下しながら攪拌、混合されて、製造された前記シリカグラウトが前記下部開口部から連続的に排出されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の製造装置においては、前記攪拌槽の内周面に邪魔板が設けられて、前記流路断面積の相対的に狭い部位が形成されているものとすることができ、前記邪魔板は、前記攪拌槽の周方向に沿って略等間隔で複数個設けるものとすることができる。また、本発明の製造装置においては、前記攪拌槽が、鉛直方向に沿って、前記流路断面積の相対的に広い部位と狭い部位とを、略等間隔で、繰り返し2箇所以上有することが好ましい。さらに、本発明の製造装置において、複数の前記攪拌槽は、直列または並列に連結することもできる。
【0014】
また、本発明のシリカグラウトの製造方法は、少なくともシリカ溶液を含む原料成分を混合してシリカグラウトを得るシリカグラウトの製造方法において、
上記シリカグラウトの製造装置を用いて、前記攪拌槽内で前記原料成分を攪拌し、混合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高濃度のシリカグラウトを、大量に、かつ部分ゲル化を生ずることなく、連続的に高効率で製造することができ、さらに、水ガラスの原液を用いることや、海水を練り混ぜ水として使用することもできるシリカグラウトの製造装置および製造方法を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るシリカグラウトの製造装置の鉛直方向概略断面図である。
図2】(a)〜(f)は、本発明に係る邪魔板の配置形態を示す水平方向概略断面図例である。
図3】本発明の他の実施の形態に係るシリカグラウトの製造装置の垂直方向概略断面図である。
図4】本発明のさらに他の実施の形態に係るシリカグラウトの製造装置の垂直方向概略断面図である。
図5】本発明のシリカグラウトの製造装置を用いたシリカグラウトの製造方法の一実施形態に係る説明図である。
図6】本発明のシリカグラウトの製造装置を用いたシリカグラウトの製造方法の他の実施形態に係る説明図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係るシリカグラウトの製造装置の説明図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態に係るシリカグラウトの製造装置の説明図である。
図9】本発明のさらに他の実施形態に係るシリカグラウトの製造装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の一実施の形態に係るシリカグラウトの製造装置の鉛直方向概略断面図を示す。本発明のシリカグラウトの製造装置は、少なくともシリカ溶液を含む原料成分を混合してシリカグラウトを得るために用いられるものであり、原料成分が導入される攪拌槽1と、攪拌槽1内に、攪拌軸が鉛直方向になるように配置された攪拌機2と、を備えている。図中では、原料成分として酸性溶液Aおよびシリカ溶液Bを用いる場合を示しているが、本発明においては、これに限定されない。
【0018】
本発明の製造装置においては、攪拌槽1が、鉛直方向に沿って、流路断面積の相対的に広い部位1Aと狭い部位1Bとを繰り返し2箇所以上有しており、攪拌機2が、せん断力を発生させる攪拌翼4を、攪拌槽1の、流路断面積の相対的に広い部位1Aに備えている点が重要である。図1に示す例では、攪拌槽1の内周面に邪魔板3が設けられて、流路断面積の相対的に狭い部位1Bが形成されている。
【0019】
このような構成としたことにより、攪拌槽1の上部から導入された原料成分A,Bの混合液は、流路断面積の相対的に広い部位1Aと狭い部位1Bとを交互に通過しながら、流路断面積の広い部位1Aに配置された攪拌翼4によって攪拌されて、攪拌槽1内を上方から下方に流下することになる。すなわち、本発明の製造装置においては、攪拌槽1内に、流路断面積の相対的に広い部位1Aと狭い部位1Bとが設けられていることで、攪拌槽1内において乱流が生じやすくなるので、混合液は、垂直方向でも水平面内でも乱れて激しく混合されることになり、流下しながらであっても十分に攪拌、混合が行われるものとなる。また、従来の装置におけるような、共回りによる攪拌不足の問題も生じない。
【0020】
これにより、本発明においては、濃度の高いシリカ溶液を用いても部分ゲルの発生を防止しつつ、高濃度のシリカグラウトを、連続的に高効率で製造することが可能となった。本発明によれば、シリカゾルグラウトを連続的に大量に製造することができるので、従来よりも施工日数を削減することができ、コストダウンを図ることができる。また、本発明においては、酸性溶液Aやシリカ溶液B等の原料成分の量を正確に配合することができるので、従来よりもシリカ濃度を高くすることができ、高強度の地盤改良が可能である。さらに、原料成分の量を正確に配合できるので、酸を過剰に加える必要がなく、酸の使用量を最低限に抑えることができるので、環境性にも優れている。
【0021】
図1に示す例では、原料成分A,Bは、攪拌槽1の上方に設けられた上部開口部1a,1bから攪拌槽1内に導入されて、内部で混合され、攪拌される。原料成分は、上部開口部1a,1bから注入してもよく、また、噴射により導入してもよい。この場合、さらに他の上部開口部を設けて、3成分以上を同時に攪拌槽1内に導入して、混合することもできる。上部開口部の形状についても、図1に示すように上方から導入する形状に限られず、図4に示すようにY字管1dを用いても導入してもよく、図3に示すように攪拌槽11の上部を開口させて、鉛直方向上方から、または、Y字管を用いて導入してもよく、特に制限されない。また、図示はしないが、原料成分は、Y字管等を用いて、攪拌槽の側面部から導入してもよい。なお、本発明においては、最初に、酸性溶液と海水を混合して、その後にシリカ溶液を混合することもできるため、海水を練り混ぜ水として使用しても、海水による直接の影響を受けないというメリットもある。これにより、コスト性をより向上することができる。
【0022】
図1に示す例では、攪拌槽1の内周面のうち、攪拌槽の軸方向に沿って3箇所に邪魔板3が設けられて、流路断面積の相対的に狭い部位1Bが3箇所形成されている。この流路断面積の相対的に狭い部位1Bは、攪拌槽の鉛直方向に沿って、少なくとも2箇所以上で設けることが必要であるが、その数および間隔は、攪拌槽1の軸方向長さおよび攪拌翼4の寸法等に応じて適宜選定することができ、特に制限されるものではない。少なくとも2箇所以上で設けられるこの流路断面積の相対的に狭い部位1Bは、略等間隔にて設けることが好ましい。また、流路断面積の相対的に狭い部位1Bの1箇所あたりに設ける邪魔板3は、攪拌槽の周方向に沿って2枚以上とすることが好ましい。
【0023】
本発明において、攪拌槽1の水平方向の断面形状や、攪拌槽1の内周面に設ける邪魔板3の形状および配置条件については、特に制限はなく、いかなる形状および配置であってもよい。例えば、図1に示す例では、断面円形状の攪拌槽1の内周面に、平板状の邪魔板3が、厚み方向が水平方向となるように、攪拌槽の周方向に沿って等間隔に2箇所に配置されている。図2に、本発明に係る邪魔板の配置形態を示す、流路断面積の相対的に狭い部位における攪拌槽の水平方向概略断面図を示す。図2(a)が、図1に示す攪拌槽1の断面図に相当する。
【0024】
攪拌槽1の水平方向における断面形状としては、円形状に限られず、図2(b)に示すような四角形状や図2(c)に示すような八角形状等の多角形状であってもよい。また、攪拌槽1の鉛直方向の断面形状としては、図1等に示すような、実質的に矩形であって下方の下部開口部1c近傍が小径となっている形状の他、後述する図3に示すような、鉛直方向に沿って幅が繰り返し増減している形状の攪拌槽11や、図9に示すような、上方から下方にわたり鉛直方向に沿って幅が減少している形状の攪拌槽21であってもよい。
【0025】
また、攪拌槽1の内周面における邪魔板3の配置条件としては、図2(a)に示すように、周方向に適宜間隔をあけて2箇所に設けてもよく、図2(b),(c)に示すように、周方向に適宜間隔をあけて4箇所に設けてもよく、特に制限されないが、複数箇所に設ける場合は、攪拌効率の観点から、攪拌槽の周方向に沿って略等間隔で設けることが好ましい。また、攪拌効率の観点から、邪魔板3は、攪拌槽1の内周面から軸中心に向かう方向に、鉛直方向から見た際に、少なくとも攪拌翼4と重なる位置まで延在して配置されていることが好ましい。なお、断面四角形状の攪拌槽1については、図2(b)に示すように、四角形状の4つの角部にそれぞれ邪魔板3を配置することが好ましく、これにより、角部における混合液の滞留を抑制しつつ、攪拌・混合を促進することができる。
【0026】
邪魔板3の形状および配置条件については、適宜選定することができ、特に制限されるものではない。例えば、図1,2(a)では、平板状の邪魔板3を、厚み方向が水平方向となるように配置しているが、図2(d)に示すように、平板状の邪魔板3を、厚み方向が鉛直方向となるように配置してもよい。乱流を発生させて混合液を攪拌しつつ、効率良く鉛直方向下方に流下させる観点からは、図1,2(a)に示すように、邪魔板3を厚み方向が水平方向となるように、鉛直方向に延在させて配置することが好ましい。すなわち、邪魔板は、水平方向における断面積が小さくなるように、かつ、鉛直方向における断面積が大きくなるように、配置することが好ましい。また、図示はしないが、本発明においては、例えば、平板状の邪魔板を、鉛直方向断面で見たときに、攪拌槽の内周面から攪拌槽の軸中心に向かって鉛直方向上方から下方に傾斜するように設けることも好ましい。これにより、十分に攪拌、混合を行いつつ、混合液を効率よく鉛直方向下方に流下させることができる。
【0027】
邪魔板3の形状としては、図1等に示す平板状の他、略半円柱状や略多角柱状(図示せず)とすることもでき、図4に示すように、半球状としてもよい。図4の攪拌槽1の水平方向の断面図は、図2(e)に対応する。邪魔板3はどのような形状であってもよいが、均一な攪拌、混合の観点から、図示するように、角部が面取りされて丸くなっていることが好ましい。
【0028】
図3に、本発明の他の実施の形態に係るシリカグラウトの製造装置の鉛直方向概略断面図を示す。図3に示すような、鉛直方向断面において、鉛直方向に沿って幅が繰り返し増減している形状を有する攪拌槽11の場合、内周面に邪魔板を設けることなく、攪拌槽11の幅が減少している部位において流路断面積の相対的に狭い部位11Bが形成されている。この場合、攪拌槽11の幅が増大している部位が流路断面積の相対的に広い部位11Aに相当し、この部位に攪拌機2の攪拌翼4が配置されている。図3の攪拌槽1の水平方向の断面図は、図2(f)に対応する。図2(f)は、流路断面積の相対的に広い部位11Aにおける断面から攪拌槽を見た断面図に相当する。但し、攪拌槽における、流路断面積の相対的に狭い部位は、それが邪魔板3により形成されている場合でも、攪拌槽自体の形状により形成されている場合でも、攪拌翼4の均一な回転や、それによる均一な攪拌を得るために、攪拌槽1の高さ方向に略等間隔で設けることが好ましい。なお、図3に示す攪拌槽11の場合も、水平方向の断面形状は、円形状の他、四角形状等の多角形状であってもよく、特に制限はない。
【0029】
また、攪拌機2に設ける攪拌翼4としては、例えば、タービン翼を挙げることができ、回転数200rpm以上のものを好適に使用することができるが、原料成分の注入速度などに応じて適宜設定することができ、特に制限されない。攪拌効率の観点からは、攪拌槽の鉛直方向に沿って設ける攪拌翼4の数は多いほどよい。なお、鉛直方向上下方向における流路断面積の相対的に狭い部位と攪拌翼との配置順は特に制限されず、図1等に示すように攪拌翼を攪拌槽の最も上方に配置してもよく、図4に示すように流路断面積の相対的に狭い部位を攪拌槽の最も上方に配置してもよい。また、図1に示すように流路断面積の相対的に狭い部位を攪拌槽の最も下方に配置してもよく、図4等に示すように攪拌翼を攪拌槽の最も下方に配置してもよい。
【0030】
図5に、本発明に係るシリカグラウトの製造装置を用いたシリカグラウトの製造方法の一実施形態に係る説明図を示す。本発明の製造方法においては、上記本発明の製造装置に係る攪拌槽内で少なくともシリカ溶液を含む原料成分を攪拌し、混合することにより、シリカグラウトを製造する。図示する例では、原料成分A,Bをそれぞれ上部開口部1a,1bから攪拌槽1内に導入し、攪拌槽1内で攪拌、混合されて製造されたシリカグラウトCを、攪拌槽1の下部開口部1cから受け容器5内に抜き出すことができる。製造されたシリカグラウトCは、受け容器5の上方からホース等で取り出しても、受け容器5の側面に取出し口を設けて取り出してもよい。この場合、受け容器5内でのシリカグラウトCの液面Xは、例えば、攪拌槽1の下方端と接触しない位置とすることができる。
【0031】
図6に、本発明のシリカグラウトの製造装置を用いたシリカグラウトの製造方法の他の実施形態に係る説明図を示す。本発明においては、製造装置として、攪拌槽1の下部開口部1cを閉塞できる開閉自在の蓋部6を設けたものを用いて、シリカグラウトの製造を行うこともできる。この場合、図示するように、攪拌槽1の下部開口部1cを閉塞した状態で、原料成分A,Bをそれぞれ上部開口部1a,1bから攪拌槽1内に導入して、攪拌槽1内で攪拌、混合することによりシリカグラウトCを製造し、その後、蓋部6を開放することで、製造されたシリカグラウトを、攪拌槽1の下部開口部1cから受け容器5内に抜き出すことができる。この場合、攪拌槽1内でのシリカグラウトCの液面Yは、例えば、攪拌槽1内において、最も上方に配置された攪拌翼4の上端付近とすることが好ましく、これにより、確実に攪拌、混合を行うことができる。
【0032】
図6に示す装置を用いる場合には、原料成分を、攪拌槽1の側方または下部から導入してもよく、製造されたシリカグラウトを、攪拌槽1の上部または側方から取り出すこともできる。
【0033】
図7,8に、本発明のさらに他の実施形態に係るシリカグラウトの製造装置の説明図を示す。図示するように、本発明のシリカグラウトの製造装置においては、複数の攪拌槽1を、直列または並列に連結して用いることもできる。複数の攪拌槽1を直列に連結することにより、攪拌効率をより一層向上させることができる。また、複数の攪拌槽1を並列に連結することにより、生産速度をより一層向上させることができる。
【0034】
図9に、本発明のさらに他の実施形態に係るシリカグラウトの製造装置の説明図を示す。図示する製造装置は、原料成分A,Bが導入される攪拌槽21と、攪拌槽内21に、攪拌軸が鉛直方向になるように配置された攪拌機22とを備え、攪拌槽21の鉛直方向に沿って、その内周面に邪魔板23が設けられることで、流路断面積の相対的に広い部位21Aと狭い部位21Bとが繰り返し2箇所以上存在している。また、攪拌機22は、せん断力を発生させる攪拌翼24を、攪拌槽21の、流路断面積の相対的に広い部位21Aに備えている。攪拌槽21は、上部開口部21aから原料成分A,Bが導入可能であって、下部開口部21cから混合液を排出可能であり、排出された混合液は貯留槽27内に配置された攪拌翼28により、貯留槽27内の酸成分とさらに混合することができる。すなわち、本発明においては、流路断面積の相対的に広い部位と狭い部位とを有する攪拌槽内で原料成分の一部を攪拌、混合した後、その混合液をさらにバッチ式の貯留槽内に導入して、他の成分と混合することも可能である。なお、図中の符号29はポンプを示す。
【0035】
なお、図示はしないが、本発明の製造装置において、混合量の管理には流量計を用いることができる。かかる流量計としては、電磁式、超音波式、羽根車式等のいかなるものであってもよい。
【0036】
本発明の製造装置においては、上記攪拌槽および攪拌機を備える以外の点については、特に制限はなく、常法に従い、適宜構成することが可能である。例えば、攪拌槽1内に、原料成分を導入する手法としては、ノズルを用いて噴射するか、または、配管を介して自由落下で流入させる方法などを用いることができる。この場合、使用するノズルや配管の数については特に制限はなく、1箇所または2箇所以上、例えば、3〜6箇所とすることができる。特に、噴射ノズルを用いる場合、液中で各原料成分が拡散して落下するので、均一な混合の点で好ましい。噴射ノズルの噴射圧力は、例えば、0.1MPa以上、好適には0.1〜0.5MPaとすることができる。
【0037】
なお、一度に製造できるシリカグラウトの量は、従来のバッチ式の製造装置では100リットルから150リットルであり、Y字式の製造装置では、毎分65リットルから150リットルであった。これに対し、本発明の製造装置においては、例えば、連続式の場合、毎分200リットル以上のシリカグラウトを製造することが可能であり、高性能のポンプを複数使用するなどにより、毎分400リットル以上の製造も可能である。
【0038】
また、本発明の製造装置は、簡易な構造を有し、比較的小型であるため、車上に搭載して使用することも可能である。
【0039】
本発明におけるシリカグラウトの原料成分としては、少なくともシリカ溶液が用いられるが、他の成分も適宜用いることができ、特に制限はない。本発明において、酸性溶液に用いる酸としては、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、スルファミン酸等の無機酸、および、これらの混酸を用いることができる。また、シリカ溶液としては、活性シリカ、コロイダルシリカ、金属シリカ等のシリカの他、水ガラスの原液を希釈せずに使用することもでき、これらから選択される複数種を併用してもよい。さらに、シリカコロイドと水ガラスと酸とを加えるか、または、コロイドと酸性シリカゾルを混合した酸性の複合シリカコロイドの他、コロイダルシリカと塩と水を混合した配合や、これにさらに酸が含まれる配合、コロイダルシリカが含まれない水ガラスと酸のみの配合などを用いることもできる。ここで、酸性シリカコロイドは、pH1〜8程度のものである。
【0040】
水ガラスをイオン交換樹脂膜やイオン交換膜で処理して得られた活性シリカあるいは金属シリカは、シリカ粒径が1〜5nmに成長して数日後にはゲル化するが、微量の苛性アルカリや水ガラスを加えて弱アルカリ性に安定化させたコロイダルシリカは、上述の活性シリカを加熱することにより濃縮増粒し、pHを9〜10に調整して安定化して得られる。このようにして得られたコロイダルシリカはシリカ濃度が5質量%以上、通常は30質量%程度であり、また通常粒径が10〜20nmである。本発明においては、コロイダルシリカ単体または併用の場合は、シリカ濃度が2〜20質量%、特には40質量%以下程度までの高濃度のシリカ溶液を用いることができる。水ガラスのみを用いたシリカゾルグラウトの場合はシリカ濃度25質量%までが使用可能であり、コロイダルシリカを併用した場合は40質量%まで使用可能である。また、水ガラスのシリカの粒径は0.1nm、水ガラスのアルカリを酸で除去した酸性シリカゾルの粒径はほぼ1nmである。
【0041】
なお、従来のシリカグラウト製造時の希釈水ガラスの比重は1.05〜1.15(1.15以下)までであったが、本発明においては、水ガラスの比重1.15を超えるものが使用可能であり、好ましくは1.25〜1.43である。
【0042】
本発明においては、シリカグラウトの原料成分として、マイクロバブルまたはマイクロバブル水を混合してもよい。マイクロバブルまたはマイクロバブル水を併用することにより、液状化対策等に使用でき、経済的にも従来の注入材より優れたものとなる。マイクロバブル水は、地震動に伴う間隙水圧の上昇を空気が収縮することにより抑制する効果を有することが、実験によって確認されている。しかし、実地盤においては地下水流があることや、地下水流の影響を排除すべく格子状に閉鎖して行った実験では、浸透したマイクロバブル水が上方に移動する現象などが確認されるなど、長期的な耐久性については明確な結論に至っていない。しかし、マイクロバブルが長期間地盤中に固定されていれば非常に経済的な技術である。
【0043】
なお、本発明において、図1に示すような連続式の製造装置を用いる場合には、すべての原料成分を同時に攪拌槽内に導入して、攪拌、混合を行うことができる。また、酸性溶液と水ガラス液とを先に混合し、後からシリカコロイドやその他の液を投入することもできる。さらに、酸性溶液を先行して投入し、その後に水ガラス液やシリカコロイド液を投入して攪拌することもできる。一方、図6に示すような製造装置を用いる場合には、各成分の攪拌槽への投入順序は特に制限されず、同時に入れる必要があるものは同時に投入する。また、シリカ溶液のうちでも特に水ガラスは、ポンプ等を用いて勢いよく噴射投入することが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。なお、本発明がこれらの例に制限されるものではない。
【0045】
下記の表1中に示す各成分を、攪拌槽の上部開口部から攪拌槽内に自由落下により供給し、攪拌機を回転数800rpmの条件で回転させて、攪拌、混合を行った。各溶液の容積は、毎分に供給した量を示す。また、各実施例、比較実験例ではそれぞれ以下の攪拌槽(容量:150リットル)を用い、内部に、高さ方向に4枚のタービン翼を備える攪拌機(東京硝子機械(株)製,品名:Fineスリーワンモータ)を配置した製造装置を用いて、シリカグラウトの製造を行った。
【0046】
実施例1〜3については、図1に示すような、攪拌槽と、攪拌槽内に、攪拌軸が鉛直方向になるように配置された攪拌機とを備える製造装置を用いた。攪拌槽の内周面には、邪魔板を、攪拌槽の軸方向に沿って等間隔に3箇所に、かつ、攪拌槽の周方向に沿って2箇所に設けた。また、邪魔板の存在しない、攪拌槽の、流路断面積の相対的に広い部位となる3箇所には、攪拌機の3枚のタービン翼がそれぞれ配置されるようにした。
【0047】
実施例4,5については、図3に示すような、鉛直方向断面において、鉛直方向に沿って幅が繰り返し増減している形状を有する攪拌槽を備えた製造装置を用いた。この攪拌槽においても、流路断面積の相対的に狭い部位が、攪拌槽の軸方向に沿って3箇所に、かつ、攪拌槽の全周にわたって形成されていた。また、攪拌槽の、流路断面積の相対的に広い部位となる3箇所には、攪拌機の3枚のタービン翼がそれぞれ配置されるようにした。
【0048】
比較実験例1〜3については、上部に開口部を有し、上部より底部の断面積が小さい略円錐台形状を有する攪拌槽(容量:150リットル)の内部に、高さ方向に2枚のタービン翼を備える攪拌機(東京硝子機械(株)製,品名:Fineスリーワンモータ)を配置した製造装置を用いて、シリカグラウトの製造を行った。また、比較実験例4〜6については、実施例1〜3で用いた製造装置における攪拌槽から、邪魔板を除いたものを用いた。
【0049】
各例について、シリカグラウトの製造時におけるゲルの発生の有無の判定結果を、下記の表中に示す。完全な液体状態である場合を「正常」とし、部分的にであってもゲル化していれば「ゲル化」とした。
【0050】
【表1】
*1)コロイダルシリカ:比重1.21、シリカ濃度30質量%、Na0.7、モル比103、
*2)硫酸:75%、比重1.674
*3)5号水ガラス:比重1.32、シリカ濃度25.5質量%
【0051】
実施例1〜3で用いた装置においては、実施例1の配合では問題なく正常に混合でき、また、実施例2および実施例3のようにシリカ濃度が高濃度であっても正常に混合できた。実施例4および実施例5で用いた装置においても、シリカ濃度が高濃度であっても正常に混合された。
【0052】
一方で、従来のバッチ式の装置では、比較実験例1に示すように、シリカ濃度6%程度であれば問題なく混合することはできたが、比較実験例2や比較実験例3に示すようにシリカ濃度が高濃度になると、攪拌槽内で部分ゲルが生じた。また、邪魔板がない攪拌槽でも、比較実験例4に示すように、シリカ濃度6%程度であれば問題なく混合することはできたが、比較実験例5や比較実験例6に示すようにシリカ濃度が高濃度になると攪拌装置の中でゲルが発生し、混合しきれなかった。
【0053】
次に、下記の表2中に示す各成分を、攪拌槽の上部開口部から攪拌槽内に自由落下により供給し、攪拌機を回転数800rpmの条件で回転させて、攪拌、混合を行った。各溶液の容積は、毎分に供給した量を示す。また、各実施例、比較実験例ではそれぞれ以下の攪拌槽(容量:150リットル)を用い、内部に、高さ方向に3枚のタービン翼を備える攪拌機(東京硝子機械(株)製,品名:Fineスリーワンモータ)を配置した製造装置を用いて、シリカグラウトの製造を行った。
【0054】
実施例6,7については、実施例1〜3と同様の製造装置を用いた。また、比較実験例7,8については比較実験例1〜3と同様の製造装置、比較実験例9,10については、比較実験例4〜6と同様の製造装置を用いた。
【0055】
各例について、ゲルの発生の有無の判定結果を、下記の表中に示す。完全な液体状態である場合を「正常」とした。
【0056】
【表2】
*4)塩化ナトリウム:比重2.18
【0057】
上記表中に示すように、各比較実験例においては、混合時に部分的にゲルの析出が発生してしまい、適正な混合ができなかった。
【符号の説明】
【0058】
1,11,21 攪拌槽
1A,11A 流路断面積の相対的に広い部位
1B,11B 流路断面積の相対的に狭い部位
1a,1b,21a 上部開口部
1c,21c 下部開口部
1d Y字管
2,22 攪拌機
3,23 邪魔板
4,24,28 攪拌翼
5 受け容器
6 蓋部
27 貯留槽
A 酸性溶液
B シリカ溶液
C シリカグラウト
X 液面
Y 液面
【要約】
【課題】シリカグラウトを大量に一度に製造でき、さらに高濃度のシリカグラウトを、部分ゲル化を生ずることなく、高効率で製造することができ、さらに、水ガラスの原液を用いることや、海水を練り混ぜ水として使用することも可能なシリカグラウトの製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともシリカ溶液を含む原料成分を混合してシリカグラウトを得るシリカグラウトの製造装置である。原料成分が導入される攪拌槽1と、攪拌槽内に、攪拌軸が鉛直方向になるように配置された攪拌機2とを備え、攪拌槽が、鉛直方向に沿って、流路断面積の相対的に広い部位1Aと狭い部位1Bとを繰り返し2箇所以上有し、かつ、攪拌機が、せん断力を発生させる攪拌翼4を、攪拌槽の、流路断面積の相対的に広い部位に備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9