特許第6391108号(P6391108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6391108-潤滑油基油の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391108
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】潤滑油基油の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 69/06 20060101AFI20180910BHJP
   C10G 67/04 20060101ALI20180910BHJP
   C10G 9/00 20060101ALI20180910BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20180910BHJP
   C10G 21/16 20060101ALI20180910BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20180910BHJP
   C10G 67/08 20060101ALI20180910BHJP
   C10G 17/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C10G69/06
   C10G67/04
   C10G9/00
   C10G45/08 Z
   C10G21/16
   C10G45/58
   C10G67/08
   C10G17/02
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-25053(P2014-25053)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-151431(P2015-151431A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】立谷 尚久
(72)【発明者】
【氏名】岩船 聖敏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 金次郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正樹
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−117585(JP,A)
【文献】 特開昭51−087506(JP,A)
【文献】 特表2011−504517(JP,A)
【文献】 特開2001−055585(JP,A)
【文献】 特開昭55−102690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解原料油を熱分解処理して熱分解処理油を得る工程(A)と、
該熱分解処理油を含有する脱硫原料油を、水素分圧13〜20MPaで、水素化脱硫して脱硫処理油を得る工程(B)と、
該脱硫処理油を蒸留して脱硫処理油留出油を得る工程(C)と、
溶剤抽出、フィルタープレス脱ろう、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうちのいずれか1種又は2種以上により、該脱硫処理油留出油を処理する工程(D)と、
を有する潤滑油基油の製造方法であり、
該熱分解原料油が、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油の混合油、又は常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油のうちの1種以上と他の炭化水素油(1)との混合油であり、
該脱硫原料油中の該熱分解処理油の含有量が60容量%以上であること、
を特徴とする潤滑油基油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油基油の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潤滑油基油には、原油を常圧蒸留や減圧蒸留により得られる潤滑油留分を原料に用いる石油系の基油(特許文献1、特許文献2)や、ポリ−α−オレフィン(PAO)などの合成油系の基油(特許文献3)などがある。
【0003】
そして、特許文献2のように潤滑油留分の精製処理の工程などで得られるワックス分を原料に用いて、水素化分解処理や異性化処理により、高性能化された潤滑油基油を製造する方法がある。
【0004】
ただし、原料入手の容易性やコストの面から、原油の潤滑油留分を原料に用いた潤滑油基油が多く製造されている。図1には、従来の原油の潤滑油留分を原料に用いた潤滑油基油の製造のフロー図を示す。先ず、原油1を常圧で蒸留する常圧蒸留2を行い、常圧蒸留留出分3と常圧蒸留残渣油4とに分ける。次いで、常圧蒸留残渣油4を減圧下で蒸留する減圧蒸留7を行い、減圧蒸留留出分である潤滑油留分8と減圧蒸留残渣油9とに分ける。次いで、潤滑油留分8に、脱ろう処理10を行い、潤滑油基油11を得る。なお、図1中、潤滑油留分8が、原油1中の潤滑油留分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−036391号
【特許文献2】特開平06−116572号
【特許文献3】特表平04−502775号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原油には、パラフィンリッチな原油やナフテンリッチな原油などがあり、原油によって組成は異なる。そのため、原油の潤滑油留分を原料に用いた潤滑油基油の製造においては、目標とする潤滑油基油の性状に応じて、原油種を選択する必要がある。そのため、製油所の原油処理において、原油種の選択に制限が生じる。
【0007】
従って、本発明の課題は、原油種によって制限を受けることが少なく、原油種選択の自由度が高い潤滑油基油の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明は、熱分解原料油を熱分解処理して熱分解処理油を得る工程(A)と、
該熱分解処理油を含有する脱硫原料油を、水素分圧13〜20MPaで、水素化脱硫して脱硫処理油を得る工程(B)と、
該脱硫処理油を蒸留して脱硫処理油留出油を得る工程(C)と、
溶剤抽出、フィルタープレス脱ろう、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうちのいずれか1種又は2種以上により、該脱硫処理油留出油を処理する工程(D)と、
を有する潤滑油基油の製造方法であり、
該熱分解原料油が、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油の混合油、又は常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油のうちの1種以上と他の炭化水素油(1)との混合油であり、
該脱硫原料油中の該熱分解処理油の含有量が60容量%以上であること、
を特徴とする潤滑油基油の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原油種によって制限を受けることが少なく、原油種選択の自由度が高い潤滑油基油の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来の原油の潤滑油留分を原料に用いた潤滑油基油の製造のフロー図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の潤滑油基油の製造方法は、熱分解原料油を熱分解処理して熱分解処理油を得る工程(A)と、
該熱分解処理油を含有する脱硫原料油を水素化脱硫して脱硫処理油を得る工程(B)と、
該脱硫処理油を蒸留して脱硫処理油留出油を得る工程(C)と、
溶剤抽出、フィルタープレス脱ろう、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうちのいずれか1種又は2種以上により、該脱硫処理油留出油を処理する工程(D)と、
を有する潤滑油基油の製造方法であり、
該熱分解原料油が、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油の混合油、又は常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油のうちの1種以上と他の炭化水素油(1)との混合油であり、
該脱硫原料油中の該熱分解処理油の含有量が60容量%以上であること、
を特徴とする潤滑油基油の製造方法である。
【0012】
本発明の潤滑油基油の製造方法に係る工程(A)は、熱分解原料油を熱分解装置で熱分解処理して、熱分解処理油を得る工程である。
【0013】
工程(A)において、熱分解処理される熱分解原料油は、常圧蒸留残渣油であるか、減圧蒸留残渣油であるか、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油の混合油であるか、又は常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油のうちの1種以上と他の炭化水素油(1)との混合油である。
【0014】
熱分解原料油に係る常圧蒸留残渣油は、特に制限はなく、原油を常圧蒸留して、蒸発留分を分離した後の残渣分である。熱分解原料油に係る減圧蒸留残渣油は、特に制限はなく、常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して、蒸発留分を分離した後の残渣分である。熱分解原料油は、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油の混合油であってもよく、熱分解原料油が、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油の混合油である場合、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油の混合割合は、特に制限されず、適宜調節される。
【0015】
常圧蒸留残渣油の蒸留原料となる原油としては、特に制限されない。本発明の潤滑油基油の製造方法は、原油種の使用が制限されないことが特徴であり、本発明の潤滑油基油の製造方法では、常圧蒸留残渣油の蒸留原料となる原油として、あらゆる原油が用いられる。つまり、本発明の潤滑油基油の製造方法に係る工程(A)の熱分解原料油となる常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油は、いかなる原油を蒸留原料に用いて得られたものであってもよい。原油種は特に制限されないが、例えば、アラビアンヘビー、アラビアンミディアム、アラビアンライト、アラビアンエクストラライト、クウェート、バスラ、オマーン、マーバン、ムバラスブレンド、ザクム、アッパーザクム、カタールランド、カタールマリン、ウムシャイフ、シリー、カフジ、エスポ等が挙げられ、いずれか1種であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0016】
また、熱分解原料油は、常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油のうちの1種以上と他の炭化水素油(1)の混合油、すなわち、常圧蒸留残渣油と他の炭化水素油(1)との混合油、減圧蒸留残渣油と他の炭化水素油(1)との混合油、又は常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油と他の炭化水素油(1)との混合油であってもよい。熱分解原料油が、常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油のうちの1種以上と他の炭化水素油(1)の混合油である場合、他の炭化水素油(1)は、本発明の効果を示す範囲の炭化水素油であればよく、例えば、流動接触分解処理のスラリーオイル、エチレンクラッカー残渣油等が挙げられ、熱分解原料油中の常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油の合計の含有量は、好ましくは40容量%以上、特に好ましくは70容量%以上である。また、工程(A)で熱分解原料油を熱分解して生成する熱分解生成物のうち、後述する熱分解処理油より重質な重質分も、他の炭化水素油(1)として用いることができる。そして、常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油のうちの1種以上と他の炭化水素油(1)の混合油は、常圧蒸留残渣油と他の炭化水素油(1)とを混合すること、あるいは、減圧蒸留残渣油と他の炭化水素油(1)とを混合すること、あるいは、常圧蒸留残渣油と減圧蒸留残渣油と他の炭化水素油(1)とを混合することにより得られる。このとき混合する他の炭化水素油(1)は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0017】
工程(A)における熱分解処理の条件であるが、熱分解温度は、好ましくは490〜510℃、特に好ましくは495〜505℃であり、また、熱分解処理の際の圧力(ゲージ圧)は、好ましくは0.01〜0.6MPaG、特に好ましくは0.05〜0.4MPaGである。また、熱分解処理の雰囲気は、スチームである。また、熱分解処理中に過度の発泡が認められる場合は、消泡剤を投入する事もある。消泡剤としては、一般的にシリコン系の消泡剤などを用いることができる。
【0018】
工程(A)では、熱分解原料油を熱分解装置で熱分解すると、熱分解生成物が生成するので、この熱分解生成物から、沸点範囲が170〜600℃、好ましくは沸点範囲が200〜570℃の留分を分留して、熱分解装置から留出させて、その留分を熱分解処理油として得る。熱分解処理油の硫黄分含有量は好ましくは2〜6質量%、窒素分含有量は好ましくは0.5〜6質量%、残留炭素は好ましくは0.1〜4質量%である。
【0019】
本発明の潤滑油基油の製造方法に係る工程(B)は、脱硫原料油を水素化脱硫して、脱硫処理油を得る工程である。
【0020】
そして、工程(B)では、脱硫原料油を、高温加圧下、脱硫触媒の共存下で水素化脱硫する。
【0021】
工程(B)において、水素化脱硫される脱硫原料油は、工程(A)を行い得られる熱分解処理油を、60容量%以上含有している。言い換えると、工程(B)において水素化脱硫される脱硫原料油は、工程(A)で得られる熱分解処理油であるか、又は工程(A)で得られる熱分解処理油の含有量が60容量%以上となるように、工程(A)で得られる熱分解処理油と他の炭化水素油(2)とを混合して得られる混合油である。
【0022】
工程(B)に係る脱硫原料油が、工程(A)で得られる熱分解処理油と他の炭化水素油(2)の混合油である場合、他の炭化水素油(2)としては、潤滑油の製造原料に用いられる炭化水素油であれば特に制限されず、例えば、減圧軽油が挙げられ、脱硫原料油中の工程(A)で得られる熱分解処理油の含有量は、60容量%以上、好ましくは80容量%以上、特に好ましくは90容量%以上である。
【0023】
脱硫触媒は、耐火性無機酸化物担体に水素化活性成分が担持されたものである。脱硫触媒の耐火性無機酸化物担体としては、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア等の単独物又は混合物が用いられ、あるいは、更にこれらにジルコニア、酸化ホウ素、酸化亜鉛等の各種酸化物やYゼオライト、ZSM−5ゼオライト等の各種ゼオライトが混合されたものが用いられる。脱硫触媒に担持されている水素化活性成分としては、モリブデン、タングステン等の長周期型周期表における第6族元素、コバルト、ニッケル等の長周期型周期表における第9族元素及び第10族元素が用いられ、また、必要に応じてこれらの金属の他、リン、鉄、白金等が用いられる。
【0024】
脱硫触媒の平均細孔直径は、好ましくは5〜15nm、特に好ましくは6〜12nmである。脱硫触媒の平均細孔径が上記範囲であることにより、安定した耐金属性能を有し、十分な脱硫性能を得易くなる。脱硫触媒の比表面積は、好ましくは150〜350m/g、特に好ましくは200〜320m/gである。脱硫触媒の比表面積が、上記範囲であることにより、十分な脱硫性能を得易くなる。また、脱硫触媒の平均細孔直径±1.5nmの細孔が占める容積は、好ましくは全細孔容積の50%以上、特に好ましくは60%以上必要である。脱硫触媒の平均細孔直径±1.5nmの細孔が占める容積が上記範囲であることにより、十分な脱硫活性を得易くなる。
【0025】
工程(B)では、原料油から金属分を除去するための脱金属触媒を用いて脱金属処理を行った後に、水素化脱硫処理を行うこともできる。例えば、原料油から金属分を除去するための脱金属触媒を前段に、脱硫触媒をその後段に充填し、原料油をそれぞれの触媒床に順に供給して、脱金属処理と水素化脱硫処理を行う。
【0026】
脱金属触媒は、耐火性無機酸化物担体に水素化活性成分が担持されたものであり、硫黄分、アスファルテン分、ニッケルやバナジウム等の重金属分を含有する原料油から金属分を効果的に除去するために、触媒床前段部分に充填される。脱金属触媒の耐火性無機酸化物担体としては、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ等の単独物又は混合物が用いられ、あるいは、更にこれらに酸化ホウ素、酸化亜鉛等の各種金属が混合されたものが用いられる。脱金属触媒に担持される水素化活性成分としては、モリブデン、タングステン等長周期型周期表における第6族元素、コバルト、ニッケル等の長周期型周期表における第9族元素及び第10族元素が用いられる。
【0027】
脱金属触媒の平均細孔直径は、好ましくは15〜25nm、特に好ましくは18〜23nmである。脱金属触媒の平均細孔直径が上記範囲であることにより、十分な脱金属活性が得易く、水素化活性及び触媒強度が高くなり易い。脱金属触媒の細孔容積は、好ましくは0.6〜0.8ml/g、特に好ましくは0.65〜0.8ml/gである。脱金属触媒の細孔容積が上記範囲であることにより、十分な触媒寿命と触媒強度を有し、安定した運転をし易くなる。
【0028】
脱硫触媒及び脱金属触媒の触媒強度は、SCS(Side Crushing Strength)で、好ましくは9N/mm以上、特に好ましくは13N/mm以上である。SCSは、触媒を横置きにして過重を加え、触媒が破壊される荷質量を求め、触媒長さで割った値であり、触媒単位長さ当たりの破壊強度を示している。脱硫触媒及び脱金属触媒のSCSが上記範囲であることにより、反応装置内での触媒割れが起こり難くなり、継続的な運転をし易くなる。
【0029】
脱金属触媒及び脱硫触媒は、新触媒であっても再生触媒であってもよい。また、脱硫触媒と脱金属触媒の割合は、その運転条件に合わせて適宜選択され、脱金属触媒の比率が高い程、金属による活性劣化を防ぐ効果が高くなり、また、脱硫触媒の比率が高い程、脱硫活性が高くなる。
【0030】
工程(B)における水素化脱硫処理の条件は、工程(B)を行い得ようとする脱硫処理油の目標硫黄含有量と脱硫触媒の活性とを考慮して、適宜選択される。工程(B)における水素化脱硫処理の反応温度は、好ましくは250〜450℃、特に好ましくは300〜400℃であり、水素分圧は、好ましくは3〜20MPa、より好ましくは5〜17MPa、特に好ましくは8〜15MPaであり、水素/油比は、好ましくは1000〜3000m(normal)/m、特に好ましくは1500〜2500m(normal)/mであり、液空間速度は、好ましくは0.1〜3.0h−1、特に好ましくは0.15〜2.0h−1である。
【0031】
水素化脱硫処理の反応温度が、上記範囲であることにより、脱硫触媒の活性が十分発揮され易く、原料油の熱分解が進行し過ぎないので、水素化脱硫処理を円滑に行い易くなり、また、脱硫触媒の活性劣化を抑制し易くなる。水素化脱硫処理の水素分圧が、上記範囲であることにより、水素化反応が十分に進行し易くなり、装置建設費用及び運転費用の増大を避け易くなる。水素化脱硫処理の水素/油比が、上記範囲であることにより、脱硫触媒の活性が発揮され易くなり、経済性が高くなり易い。水素化脱硫処理の液空間速度が、上記範囲であることにより、経済性を確保し易く、脱硫触媒の活性が十分に発揮され易くなる。
【0032】
工程(B)を行い得られる脱硫処理油中の硫黄分含有量は、好ましくは0.3質量%以下である。脱硫処理油中の硫黄分含有量が、上記範囲であることにより、潤滑油基油の原料として適切なものを供給し易くなり、また、流動接触分解装置の原料やC重油の基材としても利用できるので、脱硫処理油用のタンクを新設する必要がなくなる。
【0033】
本発明の潤滑油基油の製造方法に係る工程(C)は、工程(B)を行い得られる脱硫処理油を蒸留し、脱硫処理油のうちの軽質分を分留して、沸点範囲が200〜570℃、好ましくは沸点範囲が350〜500℃の留分を、脱硫処理油留出油として得る工程である。脱硫処理油留出油の初留点が上記範囲であることにより、引火点や動粘度の調整が容易になり、また、終点が上記範囲であることにより、動粘度の調整が容易となる。
【0034】
本発明の潤滑油基油の製造方法に係る工程(D)は、溶剤抽出、フィルタープレス脱ろう、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうちのいずれか1種又は2種以上により、工程(C)を行い得られる脱硫処理油留出油を処理する工程である。つまり、工程(C)では、溶剤抽出、フィルタープレス脱ろう、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうちのいずれか1種、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて、工程(C)を行い得られる脱硫処理油留出油を処理する。なお、工程(D)における処理又は処理の組み合わせは、脱硫処理油留出油及び工程(D)を行い得ようとする潤滑油基油の目標組成又は性状により、適宜選択される。
【0035】
工程(D)に係る溶剤抽出では、潤滑油基油の製造において、溶剤として、フルフラール、フェノール、N−メチルピロリドン等を用いて行われる通常の方法により、被処理油の溶剤抽出を行う。溶剤抽出では、被処理油中の芳香族化合物、特に多環芳香族化合物が除去される。
【0036】
工程(D)に係るフィルタープレス脱ろうでは、潤滑油基油の製造において行われる通常の方法により、被処理油のフィルタープレス脱ろうを行う。例えば、フィルタープレス脱ろうでは、被処理油に溶剤を加えずに冷却してワックスを析出させ、これをプレスろ過する。
【0037】
工程(D)に係る溶剤脱ろうでは、潤滑油基油の製造において行われる通常の方法により、例えば、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンの混合溶剤、ベンゼン、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等の溶剤を用いて、被処理油の溶剤脱ろうを行う。溶剤脱ろうでは、流動点を所望の潤滑油基油の流動点(概ね、流動点が−50〜0℃の範囲)に合わせるため、溶剤/油比、加熱温度(ろう分溶解時)、冷却温度、冷却時間等の条件を変える。これらの条件は設備の能力によって異なるが、一般に冷却温度が低い程、低い流動点の潤滑油基油が得られる。従って、所望の潤滑油基油の流動点によって、冷却温度が選択される。流動点を下げ過ぎると、ろう分を除去しすぎる事になるので、結果として得率が低くなり、粘度指数も低くなるため好ましくない。溶剤脱ろう条件は、脱ろう油の流動点を−25℃以下とするためには、溶剤/油比を1〜6倍とすることが好ましく、また、ろ過温度を−25℃以下とすることが好ましく、より好ましくは−45〜−26℃であり、更に好ましくは−40〜−26℃であり、特に好ましくは−35〜−26℃である。
【0038】
工程(D)に係る接触脱ろうでは、潤滑油基油の製造において行われる通常の方法により、脱ろう触媒の存在下で、流動点を下げるのに有効な処理条件で、被処理油を水素と反応させて、被処理油の接触脱ろうを行う。脱ろう触媒としては、目的とする凝固点を有する潤滑油基油が得られるものであれば特に制限はされず、例えば、モレキュラーシーブが挙げられ、具体的には、フェリエライト、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、シリコアルミノホスフェート類(SAPO)等が挙げられる。これらのモレキュラーシーブは、触媒金属成分と組み合わせて用いられてもよく、触媒金属成分は、1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
接触脱ろう条件は、特に制限されず、処理温度は200〜500℃が好ましく、水素分圧は1MPa〜20MPaが好ましい。また、フロースルー反応器の場合、水素処理速度は0.1〜10kg/l/hrが好ましく、液空間速度は0.1〜10h−1が好ましく、0.2〜2.0h−1が特に好ましい。接触脱ろうでは、潤滑油基油に含まれる、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下の、初留点が350〜400℃である物質をこの初留点未満の沸点を有する物質へと転換するように行うことが好ましい。
【0042】
工程(D)に係る水素化精製では、潤滑油基油の製造において行われる通常の方法により、水素化触媒の存在下で、被処理油中のオレフィン化合物や芳香族化合物を水素化する。水素化精製では、例えば、水素化触媒として、モリブデン等の長周期型周期表における第6族元素のうちの1種以上の金属と、コバルト、ニッケル等の長周期型周期表における第9族元素及び第10族元素のうちの1種以上の金属が担持されたアルミナ触媒を用いて、水素分圧5〜20MPa、反応温度300〜400℃、液空間速度0.5〜5.0hr−1の条件下で、被処理油の水素化精製を行う。
【0043】
工程(D)に係る硫酸洗浄では、潤滑油基油の製造において行われる通常の方法により、被処理油の硫酸洗浄を行う。
【0044】
工程(D)に係る白土処理では、潤滑油基油の製造において行われる通常の方法により、被処理油の白土処理を行う。
【0045】
また、工程(D)における各処理では、必要に応じて、各処理後に蒸留により軽質の成分を除去してもよい。
【0046】
なお、本発明の潤滑油基油の製造方法に係る工程(D)では、溶剤抽出、フィルタープレス脱ろう、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうちのいずれか1種の処理を行う場合と、溶剤抽出、フィルタープレス脱ろう、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄及び白土処理のうちの2種以上の処理を行う場合があるため、上記では、各処理において処理される油を被処理油と記載して説明した。
【0047】
本発明の潤滑油基油の製造方法を行い得られる潤滑油基油の性状及び組成は、40℃における動粘度が20〜100mm/s、粘度指数が100〜130、流動点が−20〜0℃、硫黄分が0〜0.03質量%、芳香族分が0〜3質量%、ナフテン分が5〜40質量%、パラフィン分が57〜95質量%である。また、本発明の潤滑油基油の製造方法を行い得られる潤滑油基油の蒸留性状は、初留点が280〜350℃、50%流出温度が400〜480℃、終点が500〜590℃である。
【0048】
本発明の潤滑油基油の製造方法では、工程(A)にて、熱分解処理を行うことにより、熱分解成分が生成すると同時に、熱的化学平衡により、その組成比が系の安定化方向へ収束する結果、原油種の特徴は、熱分解処理油の組成に反映されなくなるので、本発明の潤滑油基油の製造方法によれば、潤滑油基油の製造において、原油種の選択の自由度を高くすることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0050】
実施例及び比較例において、密度は、JIS K 2249−1「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表(振動式密度試験方法)」、硫黄分は、JIS K 2541−4「原油及び石油製品−硫黄分試験方法 第4部:放射線式励起法」、窒素分は、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」、蒸留性状はJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法(ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法)」、動粘度及び粘度指数はJIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」、流動点はJIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」、引火点はJIS K 2265−4「原油及び石油製品−引火点の求め方−第4部:クリーブランド開放法」、ヨウ素価はJIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価および不ケン化価」の指示薬滴定法、アニリン点はJIS K 2256「石油製品−アニリン点及び混合アニリン点試験方法」に準拠した。
ニッケル及びバナジウムの含有量は、石油学会規格 JPI−5S−62−2000「石油製品金属分析試験法(ICP発光分析法)」に準拠した。
組成の芳香族、ナフテン、飽和の割合は、それぞれASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる%C、%C、%Cを意味する。
【0051】
(実施例1)
<工程(A)>
カタールマリン原油由来の減圧蒸留残渣油Aを熱分解装置にて500℃、0.1MPaG(ゲージ圧)で熱分解処理を行い、沸点範囲200〜550℃の熱分解処理油Aを得た。減圧蒸留残渣油Aと熱分解処理油Aの性状を表1に示す。
<工程(B)>
該熱分解処理油Aを、以下に示す脱金属触媒と脱硫触媒を充填した脱硫装置にて、反応温度が350℃ 、水素分圧が13.0MPa 、水素/油比が1,200m(normal)/m、液空間速度が0.25h−1で水素化脱硫処理を行い、脱硫処理油Aを得た。なお、水素化脱硫処理に際しては、反応器に脱金属触媒、脱硫触媒を前段、中段、後段に充填し、それらを組み合わせて充填した。それぞれの触媒の充填比率を、前段の脱金属触媒/中段の脱硫触媒A/後段の脱硫触媒Bが、20/30/50(容量%)とした。
・脱金属触媒(前段):アルミナ担体に、ニッケル、コバルト、モリブデンを担持した触媒、平均細孔直径21nm、細孔容積0.74ml/g、比表面積132m/g
・脱硫触媒A(中段):アルミナ担体にコバルト、モリブデンを担持した触媒、平均細孔直径8nm、細孔容積0.63ml/g、比表面積280m/g
・脱硫触媒B(後段):アルミナ担体にニッケル、コバルト、モリブデンを担持した触媒、平均細孔直径8nm、細孔容積0.52ml/g、比表面積255m/g
<工程(C)>
該脱硫処理油Aを減圧蒸留し、380〜480℃留分の分取を目指して回収して脱硫処理油留出油Aを得た。脱硫処理油留出油Aの性状を表2に示す。
<工程(D)>
該脱硫処理油留出油Aを、下記条件にて、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水素化精製の順に処理を行い、潤滑油基油Aを得た。潤滑油基油Aの性状を表3に示す。
<溶剤抽出条件>
1Lの脱硫処理油留出油Aに、0.34Lのフルフラールを加え、110℃に加熱し、2分間機械攪拌した後、フルフラール相(下層)を分液留去する操作を7回繰り返した。処理油中に少量残留する軽質分(フルフラール)を、圧力2mmHg、温度160℃の条件で除去して、溶剤抽出処理油0.6Lを得た。
<溶剤脱ろう条件>
0.5Lの該溶剤抽出処理油に、トルエン/メチルエチルケトン(40/60体積%)の混合溶剤2.3Lを加え、70℃に加熱して溶解させた。溶解した溶液を−15℃に冷却して、WAX分を析出した後、減圧ろ過により脱ろう(ろう分を除去)した溶液を得た。さらに、同溶液を常圧蒸留により、トルエン/メチルエチルケトン混合溶剤の大部分を除去した後、少量残留する軽質分(トルエン/メチルエチルケトン混合溶剤)を圧力2mmHg、温度160℃の条件で除去して、溶剤脱ろう処理油0.35Lを得た。
<水素化精製条件>
オートクレーブに該溶剤脱ろう処理油60ml、市販のNiMo系水素化精製触媒20.5gを仕込み、水素分圧15.7MPa、温度333℃の条件で、3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却、回収した処理油中の軽質分を減圧蒸留(圧力2mmHg、温度160℃)で除去して、潤滑油基油Aを58ml得た。
【0052】
(実施例2)
減圧蒸留残渣油Aに代えて、アラビアンヘビー原油由来の減圧蒸留残渣油Bを用いて実施例1の工程(A)〜(C)を行い、脱硫処理油留出油Bを得た。減圧蒸留残渣油B及び熱分解処理油Bの性状を表1に、脱硫処理油留出油Bの性状を表2に示す。
次いで、脱硫処理油留出油Aに代えて、脱硫処理油留出油Bとすること以外は、実施例1と同様にして、実施例1の工程(D)を行い、潤滑油基油Bを得た。潤滑油基油Bの性状を表3に示す。
【0053】
(比較例1)
実施例1で得られた減圧蒸留残渣油Aを用いて、実施例1と同様にして、工程(B)及び工程(C)を行った。工程(C)で得られた脱硫処理油留出油aの性状を表2に示す。
次いで、脱硫処理油留出油Aに代えて、脱硫処理油留出油aとすること以外は、実施例1と同様にして、実施例1の工程(D)を行い、潤滑油基油aを得た。潤滑油基油aの性状を表3に示す。
つまり、比較例1では、工程(A)を行っていない。
【0054】
(比較例2)
減圧蒸留残渣油Aに代えて、減圧蒸留残渣油Bとすること以外は、比較例1と同様にして、潤滑油基油bを得た。脱硫処理油留出油bおよび潤滑油基油bの性状を、それぞれ、表2および表3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
実施例1と実施例2では、原油種が異なってはいるが、熱分解を経ることにより、表3に示すように、粘度指数が近似した潤滑油基油(潤滑油基油Aと潤滑油基油B)が得られている。
一方、比較例1は実施例1と原油種が同じであり、比較例2は実施例2と原油種が同じであり、いずれも、熱分解(熱分解油Aと熱分解油B)を経ずに、水素化脱硫と減圧蒸留を経て潤滑油基油が製造されている。そして、比較例1と比較例2では、原油種が異なっているために、それらの性状の差異が、得られる潤滑油基油(潤滑油基油Aと潤滑油基油B)に影響を与えており、表3に示すように、粘度指数が異なる潤滑油基油が得られている。
よって、本発明の潤滑油基油の製造方法によれば、従来の潤滑油基油の製造方法に比べ、原油種により制限を受けることが少なく、原油種選択の自由度が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、潤滑油基油の製造において、原油種の選択の自由度を高くでき、また、石油精製プロセス全体において、今後需要の減少傾向が続くことが想定されるガソリンやC重油の減産に貢献できる。
【符号の説明】
【0060】
1 原油
2 常圧蒸留
3 常圧蒸留留出分
4 常圧蒸留残渣油
5 減圧蒸留
6 減圧蒸留留出分
7 減圧蒸留残渣油
8 脱ろう処理
9 潤滑油基油
図1