特許第6391112号(P6391112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391112
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】コンデンサマイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20180910BHJP
   H04R 19/01 20060101ALI20180910BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H04R3/00 320
   H04R19/01
   H04R19/04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-147901(P2014-147901)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-109632(P2015-109632A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2017年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-218191(P2013-218191)
(32)【優先日】2013年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】沖田 潮人
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−101302(JP,A)
【文献】 特開2010−187264(JP,A)
【文献】 特開昭62−065590(JP,A)
【文献】 特開2006−101311(JP,A)
【文献】 特開2012−104906(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/073598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 19/01
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定極に対峙して振動板が配置された単一のコンデンサマイクロホンユニットと、
前記固定極に一端が接続された第1抵抗素子と、
前記第1抵抗素子の他端に一方の端部が接続され、第1抵抗素子を介して前記固定極に負または正電位を供給する第1成極電源と、
前記コンデンサマイクロホンユニットの前記固定極に接続されて、当該固定極に生成される第1電気信号を出力する第1FETを含む第1インピーダンス変換器と、
前記固定極と第1インピーダンス変換器の第1FETとの間に接続され、前記第1成極電源から前記第1FETへの直流電圧の印加を阻止する第1直流カットコンデンサと、
前記振動板に一端が接続された第2抵抗素子と、
前記第2抵抗素子の他端に一方の端部が接続され、第2抵抗素子を介して前記振動板に正または負電位を供給する第2成極電源と、
前記コンデンサマイクロホンユニットの前記振動板に接続されて、当該振動板に生成される第2電気信号を出力する第2FETを含む第2インピーダンス変換器と、
前記振動板と第2インピーダンス変換器の第2FETとの間に接続され、前記第2成極電源から前記第2FETへの直流電圧の印加を阻止する第2直流カットコンデンサとが備えられ、
前記第1成極電源と第2成極電源の他方の端部が、それぞれグランド接続されて、前記第1電気信号と第2電気信号が、前記単一のコンデンサマイクロホンユニットによる音声信号として平衡出力されることを特徴とするコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記第1電気信号と第2電気信号の位相は互いに逆相であることを特徴とする請求項1に記載されたコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記第1インピーダンス変換器における第1FETのゲート端子が前記第1直流カットコンデンサを介して前記固定極に接続され、ソース端子より前記第1電気信号を出力するソースフォロア回路を構成し、前記第2インピーダンス変換器における第2FETのゲート端子が前記第2直流カットコンデンサを介して前記振動板に接続され、ソース端子より前記第2電気信号を出力するソースフォロア回路をそれぞれ構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
前記第1インピーダンス変換器より出力される第1電気信号と、前記第2インピーダンス変換器より出力される第2電気信号とが、平衡シールドケーブルを介して外部機器に伝送されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたコンデンサマイクロホン。
【請求項5】
前記第1インピーダンス変換器と第2インピーダンス変換器の後段にそれぞれホット側端子とコールド側端子を備えるバッファ回路を接続し、前記ホット側端子とコールド側端子に前記第1電気信号と第2電気信号を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載されたコンデンサマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動板と固定極とによるコンデンサマイクロホンユニットより、音声信号を平衡出力させるコンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサマイクロホンは、対向する振動板と固定極との間の静電容量の変化に基づいて音声信号が生成される。
すなわち、固定極に対向して振動板が配置されてなる前記コンデンサマイクロホンユニットは、その静電容量が数十pF前後で、出力インピーダンスが極めて高いために、例えばFET(電界効果トランジスタ)などによるインピーダンス変換器を用いて音声信号を取り出すように構成される。
【0003】
前記コンデンサマイクロホンユニットをインピーダンス変換器に接続するには、前記固定極または振動板のいずれかの一方を回路の基準電位点(グランドライン)に接続し、前記いずれかの他方を、インピーダンス変換器の入力端子、すなわちFETのゲート端子に接続する回路構成が採用される。
そして、前記インピーダンス変換器は、一般的に前記FETのソース端子より、音声出力を得るソースフォロア回路により構成される。
【0004】
さらに、前記インピーダンス変換器を含むこの種のコンデンサマイクロホンにおいては、前記音声信号は平衡シールドケーブルを介してミキサー回路、もしくはマイクアンプなどの外部機器に供給され、また前記外部機器側に備えられた周知のファントム給電装置から、前記平衡シールドケーブルを介してコンデンサマイクロホン側に動作電流が供給されるように構成される。
【0005】
すなわち、前記したファントム給電装置を利用するコンデンサマイクロホンは、音声信号を互いに逆相関係とした平衡出力を、前記した平衡シールドケーブルを介して伝送することで、外来ノイズの影響を最小限にとどめる対策が採用されている。
【0006】
図6は、コンデンサマイクロホンからの音声信号を平衡出力させる手段として、位相反転回路を用いた従来例を示している。
図6に示す符号U1が、前記したコンデンサマイクロホンユニットであり、この例においては振動板もしくは固定極のいずれか一方に、エレクトレット誘電体膜を備えたエレクトレット型コンデンサマイクロホンユニットU1を構成している。また、コンデンサマイクロホンユニットU1を構成する例えば振動板が回路の基準電位点に接続され、固定極がインピーダンス変換器11に接続されている。
【0007】
さらに、インピーダンス変換器11により生成される音声信号は、例えばエミッタフォロア回路を含むバッファ回路12において電流増幅され、インバータ回路13に供給されるように構成されている。
そして、前記バッファ回路12からの非反転音声出力と、インバータ回路13を介した反転音声出力は、ファントム給電装置からの動作電流を受けるバッファ回路14を介して、それぞれホット側端子Out(+)およびコールド側端子Out(−)に平衡出力され、グランドラインGNDがシールドに接続される図示せぬ平衡シールドケーブルを介して、例えばミキサー回路などの外部機器に伝送される。
【0008】
また、前記外部機器側の図示せぬファントム給電装置から供給される直流動作電流は、前記したホット側およびコールド側の平衡シールドケーブルを介して、前記バッファ回路14において受けると共に、その直流動作電流は定電圧電源回路15に供給される。そして定電圧電源回路15からの出力電圧は、前記符号11〜14で示す各回路の動作電源として利用される。
なお、図6に示したインバータ回路(位相反転回路)13を用いることにより、音声信号を平衡出力させるコンデンサマイクロホンについては、特許文献1に開示されている。
【0009】
図7は、コンデンサマイクロホンからの音声信号を平衡出力させる手段として、トランスを用いた従来例を示している。
図7に示す符号U1,11,12は、前記した図6に示した同一符号の各部と同一の機能を果たすものであり、その詳細な説明は省略する。
【0010】
この図7に示す構成においては、2次側巻線に設けたセンタータップ付きのトランスT1が採用されており、バッファ回路12からの音声出力は、トランスT1の1次側巻線に供給される。そしてトランスT1の2次側巻線の両端部に生成される互いに逆相関係の音声信号が、ホット側端子Out(+)およびコールド側端子Out(−)に平衡出力され、グランドラインGNDを含む図示せぬ平衡シールドケーブルを介して、例えばミキサー回路などの外部機器に伝送される。
【0011】
また、前記外部機器側の図示せぬファントム給電装置から供給される直流動作電流は、前記した平衡シールドケーブルを介して、前記トランスT1の2次側巻線において受けると共に、2次側巻線のセンタータップを介して定電圧電源回路15に供給される。そして定電圧電源回路15からの出力電圧は、符号11,12で示す各回路の動作電源として利用される。
なお、図7に示したトランスT1を用いることにより、音声信号を平衡出力させるコンデンサマイクロホンについては、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭62−103390号公報
【特許文献2】特開2006−352622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献1に開示された図6に示すコンデンサマイクロホンによると、前記したコンデンサマイクロホンユニットU1、インピーダンス変換器11、バッファ回路12、インバータ回路13、およびバッファ回路14の全てが、他方をグランドラインとする不平衡の信号伝送ラインを構成している。
【0014】
したがって、図6に示す符号U1,11〜14で示す各回路において、例えば高周波ノイズ等が重畳した場合には、これを除去することはできず、外来ノイズを抑制するために格別な対策が必要であるという問題を抱えている。
また、図6に示す構成によると、インバータ回路13を介して反転音声出力を生成するために、インバータ回路13を介さない非反転音声出力との間で、信号伝送系の相違による信号のアンバランスが生じ、結果として音声信号の品質を低下させる要因になる。
【0015】
一方、特許文献2に開示された図7に示すコンデンサマイクロホンによると、前記したコンデンサマイクロホンユニットU1、インピーダンス変換器11、バッファ回路12、およびトランスT1の1次側巻線を含む各回路は、他方をグランドラインとする不平衡の信号伝送ラインを構成しているために、図6に示した例と同様に外来ノイズに対して弱いという問題を抱えている。
【0016】
さらに、図7に示す構成によるとトランスT1が持つ固有の周波数特性や歪み特性によって、マイクロホン全体の性能が制限されることになり、しかもトランスT1がコストを高騰させる要因となる。
【0017】
この発明は、従来のコンデンサマイクロホンにおける前記した問題点に着目してなされたものであり、コンデンサマイクロホンユニットを構成する振動板および固定極の初段より、互いに逆相の音声信号を平衡出力させることを特徴とするものである。
すなわち、前記した技術的な観点に基づいて、コンデンサマイクロホンユニットの直後より互いに逆相の音声信号を平衡伝送することにより、外来ノイズを効果的に相殺させることができると共に、音声信号の品質を十分に確保することができるコンデンサマイクロホンを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記した課題を達成するためになされたこの発明に係るコンデンサマイクロホンは、固定極に対峙して振動板が配置された単一のコンデンサマイクロホンユニットと、前記固定極に一端が接続された第1抵抗素子と、前記第1抵抗素子の他端に一方の端部が接続され、第1抵抗素子を介して前記固定極に負または正電位を供給する第1成極電源と、前記コンデンサマイクロホンユニットの前記固定極に接続されて、当該固定極に生成される第1電気信号を出力する第1FETを含む第1インピーダンス変換器と、前記固定極と第1インピーダンス変換器の第1FETとの間に接続され、前記第1成極電源から前記第1FETへの直流電圧の印加を阻止する第1直流カットコンデンサと、前記振動板に一端が接続された第2抵抗素子と、前記第2抵抗素子の他端に一方の端部が接続され、第2抵抗素子を介して前記振動板に正または負電位を供給する第2成極電源と、前記コンデンサマイクロホンユニットの前記振動板に接続されて、当該振動板に生成される第2電気信号を出力する第2FETを含む第2インピーダンス変換器と、前記振動板と第2インピーダンス変換器の第2FETとの間に接続され、前記第2成極電源から前記第2FETへの直流電圧の印加を阻止する第2直流カットコンデンサとが備えられ、前記第1成極電源と第2成極電源の他方の端部が、それぞれグランド接続されて、前記第1電気信号と第2電気信号が、前記単一のコンデンサマイクロホンユニットによる音声信号として平衡出力されるように構成される。
【0019】
この場合、前記第1電気信号と第2電気信号の位相は互いに逆相の関係になされる。
【0020】
また、前記第1インピーダンス変換器における第1FETのゲート端子が前記第1直流カットコンデンサを介して前記固定極に接続され、ソース端子より前記第1電気信号を出力するソースフォロア回路を構成し、前記第2インピーダンス変換器における第2FETのゲート端子が前記第2直流カットコンデンサを介して前記振動板に接続され、ソース端子より前記第2電気信号を出力するソースフォロア回路をそれぞれ構成することが望ましい。
【0021】
加えて、前記第1インピーダンス変換器より出力される第1電気信号と、前記第2インピーダンス変換器より出力される第2電気信号とが、平衡シールドケーブルを介して外部機器に伝送されるように構成される。
【0022】
そして、好ましい形態においては、前記第1インピーダンス変換器と第2インピーダンス変換器の後段にそれぞれホット側端子とコールド側端子を備えるバッファ回路を接続し、前記ホット側端子とコールド側端子に前記第1電気信号と第2電気信号を出力する構成が採用される。
【発明の効果】
【0023】
この発明に係る前記したコンデンサマイクロホンによると、固定極側の信号を第1インピーダンス変換器により、第1電気信号として得ると共に、振動板側の信号を第2インピーダンス変換器により、第2電気信号として得るように構成され、前記第1電気信号と第2電気信号とが正負の(互いに逆相の)音声信号として平衡出力される。
すなわち、コンデンサマイクロホンユニットの直後において、各インピーダンス変換器により互いに逆相の音声信号が平衡出力され、この平衡出力された音声信号は、必要に応じてそれぞれ電流増幅され、平衡シールドケーブルを介して外部機器に伝送するように構成される。
【0024】
したがって、インピーダンス変換器等を含む信号伝送路に、たとえ外来ノイズが重畳しても、第1と第2電気信号から音声信号を得る段階において、前記外来ノイズ成分を相殺(キャンセル)することができ、これによりコンデンサマイクロホンのS/Nの向上に貢献することができる。
また、平衡出力される第1および第2電気信号は、共に同一回路構成による信号伝送路を介して出力することができるので、音声信号の品質を十分に確保したコンデンサマイクロホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】固定極から音声信号を取り出す例を示した模式図である。
図1B】振動板から音声信号を取り出す例を示した模式図である。
図2】固定極と振動板からそれぞれ平衡出力信号を取り出すこの発明に係るコンデンサマイクロホンの模式図である。
図3】この発明に係るコンデンサマイクロホンの第1の形態を示した回路構成図である。
図4】同じく第2の形態を示した回路構成図である。
図5図3および図4に示す回路構成を含むコンデンサマイクロホンの全体構成を示したブロック図である。
図6】従来のコンデンサマイクロホンにおける音声信号を平衡出力させる例を示したブロック図である。
図7】同じく音声信号を平衡出力させる従来の他の例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明に係るコンデンサマイクロホンについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
前記したとおりコンデンサマイクロホンユニットは、振動板が固定極に対峙して配置され、振動板と固定極の間にコンデンサが形成されている。そして、図1Aおよび図1Bは、振動板1に対峙する固定極2側に、マイナス電荷が帯電されたエレクトレット誘電体膜2aを備えたエレクトレット型コンデンサマイクロホンユニットU1の例を示している。
【0027】
この図1Aおよび図1Bに示す例においては、前記したエレクトレット誘電体膜2aによる電荷量Qは一定と見なすことができ、音圧を受けたマイクロホンユニットU1の静電容量Cの変化が、Q=C×V(Vはコンデンサの両極間電圧)の関係にしたがって、電圧変化となって生成される。
そして、図1Aおよび図1Bに示すコンデンサマイクロホンユニットU1においては、振動板1に正の音圧を受けた場合には、振動板1側には正の電圧信号が生成され、固定極2側には負の電圧信号が生成される。
【0028】
したがって、図1Aに示すように、振動板1を基準電位点(グランドライン)に接続し、固定極2よりインピーダンス変換器11を介して、電気信号(音声信号)を得る構成においては、固定極2側に生成される負の電圧信号に基づいて、インピーダンス変換器11の出力端子Outに音声信号が出力されることになる。
また、図1Bに示すように、固定極2を基準電位点(グランドライン)に接続し、振動板1よりインピーダンス変換器11を介して、電気信号(音声信号)を得る構成においては、振動板1側に生成される正の電圧信号に基づいて、インピーダンス変換器11の出力端子Outに音声信号が出力されることになる。
【0029】
すなわち、コンデンサマイクロホンユニットU1の振動板1と固定極2には、振動板1の変位に伴って互いに逆相となる電圧信号が同時に発生していることになる。
したがって、この発明は図2に同じく模式図で示すように、固定極2と振動板1にそれぞれ高い値の入力インピーダンスを有する第1インピーダンス変換器11aと第2のインピーダンス変換器11bを接続し、振動板1の変位に基づいて発生する互いに逆相の電圧信号を、第1と第2のインピーダンス変換器11a,11bより平衡出力させることを基本構想とするものである。
【0030】
図3は、前記した技術的な観点にしたがって構成したコンデンサマイクロホンの要部、特にコンデンサマイクロホンユニットU1とインピーダンス変換器を具体的な回路構成図で示したものである。
すなわち、コンデンサマイクロホンユニットU1は、前記したとおり振動板1が固定極2に対峙した状態に構成されており、この実施の形態においては、前記固定極2にエレクトレット誘電体膜2aを備えた周知のエレクトレット型コンデンサマイクロホンユニットU1を構成している。
【0031】
そして、前記固定極2には第1インピーダンス変換器11aが接続され、また前記振動板1には第2インピーダンス変換器11bが接続されており、この構成により前記振動板1の変位に基づいて、振動板1と固定極2に生ずる互いに逆相となる電圧信号をそれぞれ取り出すように構成されている。
【0032】
前記第1インピーダンス変換器11aには、符号Q1aで示すnチャンネル型FETが搭載されており、このFETQ1aのゲート電極には固定極2が接続されている。
そして、直流電源VccとグランドラインGNDとの間には、電圧分割抵抗R1a,R2aが接続され、これらの接続点と前記ゲート電極との間にはバイアス供給抵抗R3aが接続されて、前記ゲート電極に対して所定のバイアス電圧が供給されるように構成されている。
【0033】
また、前記FETQ1aのドレイン電極には直流電源Vccが供給され、FETQ1aのソース電極とグランドラインGNDとの間には抵抗素子(ソースフォロア―抵抗)R4aが接続されて、ソース電極が出力端子Out(+)になされている。すなわち、このインピーダンス変換器11aは、ソースフォロア―回路を構成している。
【0034】
また、第2のインピーダンス変換器11bは、前記した第1のインピーダンス変換器11aと同一の回路により構成されており、それぞれ相当する素子には符号の末尾に示す“a”を“b”に代えて示している。したがって、第2のインピーダンス変換器11bの詳細な説明は省略する。
そして、第2のインピーダンス変換器11bに搭載されたFETQ1bのソース電極が出力端子Out(−)になされている。
【0035】
図3に示す構成によると、第1インピーダンス変換器11aの出力端子Out(+)と、第2インピーダンス変換器11bの出力端子Out(−)には、前記固定極2と振動板1に生ずる互いに逆相となる電圧信号が、それぞれ平衡出力されることになる。したがって、平衡出力される出力端子Out(+)と出力端子Out(−)との電位差(差分)を、コンデンサマイクロホンの音声信号として利用することができる。
【0036】
図4に示す構成は、コンデンサマイクロホンユニットU1とインピーダンス変換器の他の例を示したものである。
この図4に示す構成は、図3に示したエレクトレット誘電体膜2aに代えて成極電源を利用するものであり、図4に示すように固定極2に対して、高抵抗素子R5aを介して成極電源E1aによる負電位が供給されるように構成されている。
そして、固定極2とインピーダンス変換器11aのFETQ1aとの間には、直流カットコンデンサC1aが挿入されて、FETQ1aに対する成極電源E1aの印加が阻止されるように構成されている。
【0037】
一方、振動板1に対しては、高抵抗素子R5bを介して成極電源E1bによる正電位が供給されるように構成されている。
そして、振動板1とインピーダンス変換器11bのFETQ1bとの間には、直流カットコンデンサC1bが挿入されて、FETQ1bに対する成極電源E1bの印加が阻止されるように構成されている。
【0038】
この図4に示す第1および第2のインピーダンス変換器11a,11bは、図3に示した構成と同一であり、したがってその詳細な説明は省略する。
また図4に示す構成においても、図3に示した例とその作用は同一であり、固定極2と振動板1に生ずる互いに逆相となる電圧信号が、それぞれ第1のインピーダンス変換器11aの出力端子Out(+)と、第2のインピーダンス変換器11bの出力端子Out(−)から平衡出力されることになる。
【0039】
なお、図4に示す構成においては、固定極2と振動板1に対してそれぞれ負および正の成極電源E1a,E1bを印加して、コンデンサマイクロホンユニットU1の初段より回路にバランスを持たせた構成にされている。
しかしながら、図4に示す構成において、例えば振動板1に印加される成極電源E1bとその周辺の回路(R5b及びC1b)、もしくは固定極2に印加される成極電源E1aとその周辺の回路(R5a及びC1a)のいずれか一方を削除しても、振動板1と固定極2との間には所定の成極電圧を加えることができる。したがって、その作用効果は同一となる。
【0040】
図5は、前記した図3および図4に示す第1インピーダンス変換器11aおよび第2インピーダンス変換器11bの後段に、それぞれバッファ回路12a,12bと、外部のファントム給電装置からの動作電流を受けるバッファ回路14a,14bが接続される構成を示している。
前記バッファ回路12a,12bは、第1および第2インピーダンス変換器11a,11bからの平衡出力信号をそれぞれ電流増幅するものであり、このバッファ回路12a,12bは必要に応じて配置される。
【0041】
そして、最終段のバッファ回路14a,14bには、それぞれホット側端子Out(+)およびコールド側端子Out(−)が備えられ、この各端子にコンデンサマイクロホンの音声信号が平衡出力され、グランドラインGNDがシールドに接続される図示せぬ平衡シールドケーブルを介してミキサー回路などの外部機器に伝送されるように作用する。
【0042】
なお、バッファ回路14aのホット側端子Out(+)と、定電圧電源回路15aとの間、またバッファ回路14bのコールド側端子Out(−)と、定電圧電源回路15bとの間には、それぞれ図示せぬ抵抗素子が備えられ、前記したミキサー回路などの外部機器に備えられたファントム給電装置から送られる動作電流を、前記したそれぞれの抵抗素子を介して各定電圧電源回路15a,15bに供給するように構成されている。
そして、一方の定電圧電源回路15aからの出力電圧は、前記符号11a〜14aで示す各回路の動作電源Vccとして利用され、また他方の定電圧電源回路15bからの出力電圧は、前記符号11b〜14bで示す各回路の動作電源Vccとして利用される。
【0043】
以上の説明で明らかなとおり、前記した実施の形態によると、コンデンサマイクロホンユニットを構成する固定極2−振動板1間の静電容量の変化に基づく電気信号を、それぞれ第1と第2のインピーダンス変換器11a,11bによって正負の出力信号として平衡出力するように構成される。
【0044】
すなわち、初段の前記インピーダンス変換器を含めて正負の出力信号を平衡出力するように構成されるので、インピーダンス変換器の後段に接続される前記したバッファ回路12a,12bや、ファントム給電装置からの動作電流を受けるバッファ回路14a,14bを含む信号伝送路は、すべて同一回路の平衡伝送路として構成することができる。
これにより、外来ノイズについて十分な対策を図ることができると共に、音声信号の品質を十分に確保したコンデンサマイクロホンを提供することができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 振動板
2 固定極
11a,11b インピーダンス変換器
12a,12b バッファ回路
14a,14b バッファ回路
15a,15b 定電圧電源回路
Q1a,Q1b FET
R1a〜R4b 抵抗素子
R5 高抵抗素子
E1 成極電源
U1 コンデンサマイクロホンユニット
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7