特許第6391113号(P6391113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391113
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20180910BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180910BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20180910BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180910BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B05D5/06 101A
   B05D7/24 303J
   B32B27/20 A
   C09D201/00
   C09D5/29
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-214383(P2014-214383)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-77998(P2016-77998A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉持 竜生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政之
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−157827(JP,A)
【文献】 特表2009−509752(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/087054(WO,A1)
【文献】 特開2011−001536(JP,A)
【文献】 特開2001−226612(JP,A)
【文献】 特開平11−080620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00−7/26
C09D1/00−10/00
101/00−201/10
B32B1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に、光輝性顔料分散体を塗装し、加熱乾燥させることを含んでなる塗膜形成方法において、
光輝性顔料分散体が、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含み、
上記水を、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として50〜90質量部含有し、
上記有機溶剤(A)が、20℃の水に1質量%以上溶解し、
温度20℃にて1mLの該有機溶剤(A)が90%以上蒸発するのに必要な時間が250秒以上であり、
水と有機溶剤(A)とを質量比で75/20で混合させた液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が100mPa・sとなるように調整したときの、ブリキ板に対する接触角が3〜40°であることを特徴とする塗膜形成方法であって、
光輝性顔料(B)が、蒸着金属フレーク顔料であって、光輝性顔料分散体を塗装することによって形成された膜の厚さが乾燥膜厚として、0.01〜1.0μmである塗膜形成方法
【請求項2】
被塗物に、光輝性顔料分散体を塗装し、加熱乾燥させることを含んでなる塗膜形成方法において、
光輝性顔料分散体が、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含み、
上記水を、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として50〜90質量部含有し、
上記有機溶剤(A)が、20℃の水に1質量%以上溶解し、
温度20℃にて1mLの該有機溶剤(A)が90%以上蒸発するのに必要な時間が250秒以上であり、
水と有機溶剤(A)とを質量比で75/20で混合させた液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が100mPa・sとなるように調整したときの、ブリキ板に対する接触角が3〜40°であることを特徴とする塗膜形成方法であって、
光輝性顔料(B)が、アルミニウムフレーク顔料であって、光輝性顔料分散体を塗装することによって形成された膜の厚さが乾燥膜厚として、0.05〜1.0μmである塗膜形成方法
【請求項3】
被塗物に、光輝性顔料分散体を塗装し、加熱乾燥させることを含んでなる塗膜形成方法において、
光輝性顔料分散体が、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含み、
上記水を、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として50〜90質量部含有し、
上記有機溶剤(A)が、20℃の水に1質量%以上溶解し、
温度20℃にて1mLの該有機溶剤(A)が90%以上蒸発するのに必要な時間が250秒以上であり、
水と有機溶剤(A)とを質量比で75/20で混合させた液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が100mPa・sとなるように調整したときの、ブリキ板に対する接触角が3〜40°であることを特徴とする塗膜形成方法であって、
光輝性顔料(B)が、光干渉性顔料であって、光輝性顔料分散体を塗装することによって形成された膜の厚さが乾燥膜厚として、0.1〜1.0μmである塗膜形成方法
【請求項4】
光輝性顔料分散体による塗膜上にトップクリヤー塗料を塗装し、次いで加熱硬化させることを含んでなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
被塗物が、金属素材の上に形成された電着塗膜の上に、中塗り塗料及び/またはベース塗料を塗装し、加熱硬化した塗膜または未硬化の塗膜である請求項1〜のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
被塗物がプラスチック素材の上にプライマー塗料及び/またはベース塗料を塗装し、加熱硬化した塗膜または未硬化の塗膜である請求項1〜のいずれか1項に記載の塗膜形成
方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の塗膜形成方法によって得られる塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属調光沢を有する塗膜を形成できる塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗装する目的は、主に素材の保護及び美観の付与である。工業製品においては、その商品力を高める点から、美観、なかでも特に「質感」が重要である。消費者が求める工業製品の質感は多様なものであるが、近年、自動車外板、自動車部品、家電製品等の分野において、金属や真珠のような光沢感が求められている(以下、「金属調光沢」と表記する)。
【0003】
金属調光沢とは、鏡面のように表面に粒子感がなく、さらに、塗板に対して垂直に近い状態で見たとき(ハイライト)は光り輝き、塗板に対して斜め上から見たとき(シェード)は暗く見える、すなわちハイライト領域とシェード領域の輝度差が大きいことを特徴とする質感である。
【0004】
かかる金属調光沢を工業製品の表面に付与する技術には、金属めっき処理や金属蒸着処理等(例えば、特許文献1)があるが、塗装によって金属調光沢が付与できれば、簡便さ及びコスト等の観点から有利である。
【0005】
特許文献2には、未硬化の塗面に、ノンリーフィングアルミニウムフレークおよび有機溶剤を含有する組成物を塗装し、次いでクリヤ塗料を塗装することを特徴とするメタリック塗膜形成方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、光輝材、樹脂を含む不揮発固形分及び溶剤を含有するメタリック塗料基剤を、高沸点溶剤と低沸点溶剤から成る希釈剤を用いて希釈率150〜500%の割合で希釈し、上記メタリック塗料基剤中の樹脂分100重量部に対して5〜10重量部の粘性樹脂を添加して成ることを特徴とするメタリック塗料が開示されている。
【0007】
特許文献4には、光輝材10〜30%と、分子量25,000〜50,000(MWn)のセルロースアセテートブチレート樹脂10〜50%と、残量としてのアクリル−メラミン樹脂を含有する固形分たる塗料基材を、エステル系溶剤及び/又はケトン系溶剤を用い、上記固形分が1〜10%となるような希釈率で希釈して成るメタリック塗料が開示されている。
【0008】
特許文献5には、貴金属および/または金属を含むコロイド粒子を含有し、さらに塗膜形成性樹脂および特定の混合溶剤を含有する光輝材含有ベース塗料を使用する複層塗膜形成方法が開示されている。
【0009】
特許文献6には、貴金属および/または金属を含むコロイド粒子、および塗膜形成性樹脂を含有する特定の光輝材含有ベース塗料を使用し、特定の塗布方法と組み合わせて使用する複層塗膜形成方法が開示されている。
【0010】
特許文献2〜6に開示されている塗料は溶剤系塗料である。しかし近年、低環境負荷等の観点から、金属調塗料の分野においても水性化が求められるようになった。
【0011】
特許文献7には、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料と、20〜150mgKOH/g(固形分)の酸価を有する水性セルロース誘導体とを含み、前記水性セルロース誘導体を主たるバインダー樹脂とし、前記光輝性顔料の含有量がPWCで20〜70質量%であることを特徴とする水性ベース塗料組成物が開示されている。
【0012】
しかし、特許文献7に記載の塗料によって形成される塗膜では、金属調光沢が不十分であった。さらに、バインダー樹脂を必須とする点でコスト面でも問題があった。
【0013】
また、特許文献8には、鱗片状光輝性顔料を含んでなる水性ベースコート塗料の塗装方法であって、塗料中の固形分が20〜40重量%になるように調整された水性ベースコート塗料(A1)を乾燥膜厚で1〜15μmとなるように被塗物に塗装した後、未硬化の塗膜の上に、塗料中の固形分が2〜15重量%になるように調整された水性ベースコート塗料(A2)を乾燥膜厚で0.1〜5μmとなるように塗装することを特徴とする水性ベースコート塗料の塗装方法が開示されている。
【0014】
しかし、近年、60°グロス値が150以上である鏡面のような金属調光沢を求められているところ、特許文献8に記載の塗装方法によって形成される塗膜では不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭63−272544号公報
【特許文献2】特開平11−90318号公報
【特許文献3】特開2003−313500号公報
【特許文献4】特開2005−120249号公報
【特許文献5】特開2009−28690号公報
【特許文献6】特開2009−28693号公報
【特許文献7】特開2009−155537号公報
【特許文献8】特開2006−95522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、金属調光沢に優れた金属調塗膜を形成することができる塗膜形成方法及び塗装物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、被塗物に、光輝性顔料分散体を塗装し、加熱乾燥させることを含んでなる塗膜形成方法において、
光輝性顔料分散体が、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含み、
上記水を、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として50〜90質量部含有し、
上記有機溶剤(A)が、20℃の水に1質量%以上溶解し、
温度20℃にて1mLの該有機溶剤(A)が90%以上蒸発するのに必要な時間が250秒以上であり、
水と有機溶剤(A)とを質量比で75/20で混合させた液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が100mPa・sとなるように調整したときの、ブリキ板に対する接触角が3〜40°であることを特徴とする塗膜形成方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の塗膜形成方法によれば金属調光沢に優れた外観の塗膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
被塗物
本発明の塗膜形成方法において、被塗物としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらを含む合金などの金属材、及びこれらの金属による成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。さらに、上記被塗物に下塗り塗膜、中塗り塗膜及びベース塗膜から選ばれる少なくとも1種の塗膜を形成させて被塗物とすることもでき、これらのものが特に好ましい。
【0020】
上記下塗り塗膜とは、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与したりするために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、プライマー塗料等を挙げることができる。
【0021】
上記中塗り塗膜とは、下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与したりするために形成されるものであり、乾燥硬化した下塗り塗膜又は未硬化の下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用できる。
【0022】
上記ベース塗膜とは、得られる塗膜に色味や質感を付与するために形成されるものであり、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を必須成分とし、必要に応じて光輝性顔料を含有する有機溶剤系又は水系のベース塗料を好ましく使用できる。
【0023】
また、被塗物として、下塗り塗膜、中塗り塗膜及びベース塗膜から選ばれる少なくとも1種の塗膜を形成させる場合においては、該塗膜を加熱し、架橋硬化後に本発明の塗料組成物を塗装することができる。あるいは、下塗り塗膜、中塗り塗膜及びベース塗膜から選ばれる少なくとも1種の塗膜が未硬化の状態で、塗装することもできる。
【0024】
被塗物の素材が金属である場合には、金属素材の上に形成された電着塗膜の上に、中塗り塗料及び/またはベース塗料を塗装し、加熱硬化した塗膜または未硬化の塗膜である被塗物を使用することが好ましい。
【0025】
また、被塗物の素材がプラスチックである場合には、プラスチック素材の上にプライマー塗料及び/またはベース塗料を塗装し、加熱硬化した塗膜または未硬化の塗膜である被塗物を使用することが好ましい。
【0026】
本発明の塗膜形成方法においては、上記の如き被塗物上に光輝性顔料分散体を塗装する。
光輝性顔料分散体
本発明の塗膜形成方法において、光輝性顔料分散体としては、水、特定の有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含み、上記水を、水、特定の有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として50〜90質量部含有する光輝性顔料分散体である。
【0027】
有機溶剤(A)
光輝性顔料分散体における有機溶剤(A)としては、以下の3つの要件を満足する溶剤である。
【0028】
要件1:有機溶剤(A)が、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、20℃の水に1質量%以上、好ましくは5質量%以上溶解する。
【0029】
本発明において、「有機溶剤が、20℃の水に1質量%溶解する」とは、有機溶剤1gと水100gとを攪拌容器に入れ、20℃で5分間振とうさせた後、得られる混合液の状態を肉眼で観察した際に、混合液に相分離がなく、均一の状態である有機溶剤をいう。
【0030】
要件2:有機溶剤(A)は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、温度20℃にて1mLの有機溶剤が90%以上蒸発するのに必要な時間が250秒以上、好ましくは900〜50000秒である。
【0031】
要件3:有機溶剤(A)は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、水と有機溶剤とを75/20で混合させた液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が100mPa・sとなるように調整したときの、ブリキ板に対する接触角が3〜40°、好ましくは5〜30°である。上記B型粘度計は、LVDV−I(商品名、BROOKFIELD社製)である。
【0032】
粘度調整は、ジメチルエタノールアミン及び「プライマルASE−60」(商品名、ダウケミカル社製、固形分28%)を用いて行ったものである。また、該接触角は、粘度調整後の水/有機溶剤(A)混合液をブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し30秒経過後に測定したときの接触角である。このとき、使用する接触角計は、協和界面科学社製 CA−X150である。
【0033】
上記有機溶剤(A)としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。具体的には例えば以下に列挙したものである。
【0034】
エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル3−メトキシブタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等。
【0035】
光輝性顔料(B)
光輝性顔料分散体における光輝性顔料(B)としては、例えば、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料、光干渉性顔料等を挙げることができる。中でも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から、蒸着金属フレーク顔料が好適である。
【0036】
蒸着金属フレーク顔料は、ベース基材上に金属膜を蒸着させ、ベース基材を剥離した後、蒸着金属膜を粉砕することにより得られる。上記基材としては、例えばフィルム等を挙げることができる。
【0037】
上記金属の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等が挙げられる。なかでも特に入手しやすさ及び取扱いやすさ等の観点から、アルミニウム又はクロムが好適である。本明細書では、アルミニウムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着アルミニウムフレーク顔料」と呼び、クロムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着クロムフレーク顔料」と呼ぶ。
【0038】
上記蒸着アルミニウムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「Hydroshine WS」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Decomet」シリーズ(商品名、シュレンク社製)、「Metasheen」シリーズ(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
【0039】
上記蒸着クロムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「Metalure Liquid Black」シリーズ(商品名、エカルト社製)等を挙げることができる。
【0040】
上記蒸着金属フレーク顔料の平均厚みは、0.01〜1.0μm、好ましくは、0.01〜0.1μmであることが好適である。
【0041】
蒸着アルミニウムフレーク顔料は、表面がシリカ処理されていることが、貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得る等の観点から好ましい。
【0042】
アルミニウムフレーク顔料は、一般にアルミニウムをボールミルやアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造され、塗料用としては通常平均粒子径(D50)が1〜50μm程度、特に5〜20μm程度のものが、塗料中における安定性や形成される塗膜の仕上がりの点から使用される。上記平均粒子径は、長径を意味する。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0043】
上記アルミニウムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「アルペースト」シリーズ(商品名、東洋アルミ社製)等を挙げることができる。
【0044】
上記アルミニウムフレーク顔料の平均厚みは、0.05〜1.0μm、好ましくは、0.1〜0.5μmであることが好適である。
【0045】
アルミニウムフレーク顔料は、表面がシリカ処理されていることが、貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得る等の観点から好ましい。
【0046】
上記光干渉性顔料は、透明又は半透明の鱗片状基材に、金属酸化物が被覆された顔料である。
【0047】
該鱗片状基材としては、例えば、天然マイカ、人工マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、ガラスフレーク等を挙げることができる。該天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材である。一方、上記人工マイカとは、フッ素金雲母(KMgAlSi10)、カリウム四ケイ素雲母(KMg25AlSi10)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg25AlSi10)、Naテニオライト(NaMgLiSi10)、LiNaテニオライト(LiMgLiSi10)等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。
【0048】
上記アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。該酸化アルミニウムは単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。
【0049】
上記シリカフレークとは、鱗片状のシリカである。上記ガラスフレークとは、鱗片状のガラスである。
【0050】
上記金属酸化物とは、酸化チタン、酸化鉄等を挙げることができる。上記鱗片状基材を被覆する金属酸化物の厚さによって異なる干渉色を発現することができるものである。
【0051】
上記光干渉性顔料は、表面処理されていることが、貯蔵安定性、及び耐候性に優れた塗膜を得る等の観点から好ましい。
【0052】
上記光干渉性顔料として使用できる市販品としては例えば、「イリオジン」シリーズ(商品名、メルクジャパン社製)、「シラリック」シリーズ(商品名、メルクジャパン社製)等を挙げることができる。
【0053】
上記光干渉性顔料の平均厚みは、0.1〜1.0μm、好ましくは、0.2〜0.8μmであることが好適である。
【0054】
粘性調整剤(C)
光輝性顔料分散体における粘性調整剤(C)としては、既知のものを使用できるが、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤等を挙げることができる。なかでも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から特に、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤を使用することが好ましい。
【0055】
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物及びバーミキュライト、又はこれらの置換体や誘導体、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0057】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の有効成分酸価としては、30〜300mgKOH/g、好ましくは80〜280mgKOH/gの範囲内であることができる。市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
これらのそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0058】
その他の成分
光輝性顔料分散体には、さらに必要に応じて、前記有機溶剤(A)以外の有機溶剤、前記光輝性顔料(B)以外の顔料、顔料分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等を適宜配合しても良い。
【0059】
光輝性顔料分散体は、基体樹脂や架橋剤を含むことができるが、これらを実質的に含まなくても本発明の効果を発揮することができる。金属調光沢に優れた塗膜を得る観点、及び薄膜化、膜厚安定性、コスト等の観点から基体樹脂及び又は架橋剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0060】
上記基体樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0061】
上記架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などが挙げられる。
【0062】
光輝性顔料分散体の各成分の配合量
光輝性顔料分散体は、水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含む。該光輝性顔料分散体において各成分の配合割合(固形分質量)は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から下記の範囲内であることが好ましい。
【0063】
水、有機溶剤(A)、光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として、
水:50〜90質量部、好ましくは60〜85質量部、さらに好ましくは65〜80質量部、
有機溶剤(A):5〜45質量部、好ましくは10〜35質量部、さらに好ましくは15〜30質量部、
光輝性顔料(B):0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜3.5質量部、
粘性調整剤(C):0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部、さらに好ましくは0.15〜2質量部。
【0064】
光輝性顔料分散体の接触角
光輝性顔料分散体の接触角は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、3〜40°、好ましくは5〜30°である。このとき、使用する接触角計は、協和界面科学社製 CA−X150であり、光輝性顔料分散体を、予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し30秒経過後に測定した値を指す。
【0065】
本発明における塗膜形成方法は、上記被塗物上に、上記光輝性顔料分散体を塗装する工程を含むものである。
【0066】
光輝性顔料分散体の塗装
光輝性顔料分散体は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、塗装時の固形分含有率を、光輝性顔料分散体に基づいて、0.15〜5質量%、好ましくは0.3〜4質量%に調整しておくことが好ましい。
【0067】
光輝性顔料分散体の粘度は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、温度20℃にて、60rpmで1分後の粘度が5〜1000mPa・sec、好ましくは30〜600mPa・secであることが好適である。このとき、使用する粘度計は、LVDV−I(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
【0068】
光輝性顔料分散体は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。本発明の塗膜形成方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。
【0069】
例えば、ロボットベル(ABB社製)を用いて静電塗装する場合において、塗装時の光輝性顔料分散体固形分含有率が1%の場合、ベル直径が50〜80mm、ベル回転数は20000〜30000rpm、シェーピングエア圧は1.5〜3.0kg/cm、電圧は−90〜−45kV、被塗物とロボットベルとの距離は20〜25cmの条件で塗装することができる。
【0070】
また、例えば、ワイダー100(アネスト岩田社製、エアスプレーガン)を用いてエアスプレー塗装する場合において、塗装時の光輝性顔料分散体固形分が1%の場合、霧化空気圧力は0.5〜4.0MPa、塗調開度は0.5〜3.0回転の範囲で調整し、被塗物とワイダー100との距離は20〜25cmの条件で塗装することができる。
【0071】
上記光輝性顔料分散体を塗装後、乾燥焼付けを行って塗膜とすることもできるし、上記光輝性顔料分散体を塗装して得られた膜の上に、トップクリヤー塗料を1層もしくは2層以上塗装してトップクリヤー塗膜を形成することもできる。上記光輝性顔料分散体を塗装後、トップクリヤー塗膜を形成する場合には、光輝性顔料分散体を塗装して得られた膜は乾燥していることが好ましい。上記光輝性顔料分散体を塗装して得られた膜を乾燥させる方法に特に制限はないが、例えば、常温で15〜30分間放置する方法、50〜100℃の温度で30秒〜10分間プレヒートを行なう方法、または70〜150℃の温度で20〜40分間加熱乾燥させる方法等が挙げられる。
【0072】
光輝性顔料分散体が被塗物に付着してから30秒後の膜厚は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、3〜12μm、好ましくは3〜10μm、さらに好ましくは3〜7μmであることが好適である。
【0073】
光輝性顔料分散体を塗装することによって形成された膜の厚さは、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、乾燥膜厚として、0.01〜1.0μm、好ましくは0.01〜0.8μmであることが好適である。
【0074】
特に、光輝性顔料分散体における光輝性顔料(B)が蒸着金属フレーク顔料である場合には、該光輝性顔料分散体を塗装することによって形成された膜の厚さは、乾燥膜厚として、0.01〜1.0μm、好ましくは0.01〜0.5μmであることが好適である。
【0075】
また、光輝性顔料分散体における光輝性顔料(B)がアルミニウムフレーク顔料である場合には、該光輝性顔料分散体を塗装することによって形成された膜の厚さは、乾燥膜厚として、0.05〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.5μmであることが好適である。
【0076】
また、光輝性顔料分散体における光輝性顔料(B)が光干渉性顔料である場合には、該光輝性顔料分散体を塗装することによって形成された膜の厚さは、乾燥膜厚として、0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.8μmであることが好適である。
トップクリヤー塗料
トップクリヤー塗料としては、従来公知のものが制限なく使用できる。例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0077】
上記トップクリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、該トップクリヤー塗料中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、30重量部以下、好ましくは0.01〜10重量部である。
【0078】
上記トップクリヤー塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜40μmの範囲内とするのが好ましい。
【0079】
本発明においては、前記トップクリヤー塗料を塗装した場合においては、トップクリヤー塗料を塗装後、加熱硬化せしめることができる。トップクリヤー塗料は70〜150℃の温度で10〜30分間加熱することで架橋硬化させることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0081】
後述する光輝性顔料分散体の製造に使用する有機溶剤(A)及び光輝性顔料(B)の性質を、それぞれ表1及び表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
(注1)
水/該有機溶剤(A)=75/20の割合で混合させた混合溶液を、予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し30秒経過後に接触角計(CA−X150、商品名、協和界面科学社製)を用いて測定したときの接触角
【0084】
【表2】
【0085】
光輝性顔料分散体の製造
製造例1
Hydroshine WS−3004(水性用蒸着アルミニウムフレーク顔料、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm)5部(固形分で0.5部)、エチレングリコールモノブチルエーテル 20部、蒸留水 75部、Acrysol ASE−60(ポリアクリル酸系粘性調整剤、ダウケミカル社製、固形分:28%)1.5部(固形分で0.42部)を配合して攪拌混合し、光輝性顔料分散体(X−1)を調整した。
【0086】
製造例2〜20
表3に記載の配合とする以外は全て製造例1と同様にして光輝性顔料分散体(X−2)〜(X−20)を得た。
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
製造例21
アクリル樹脂水溶液A(注2)70部(固形分)、80%「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ、メチル化メラミン樹脂)30 部(固形分)、りん酸基含有樹脂(注3)10部(固形分)、「Hydroshine WS−3004」40部(固形分)及びイソプロピルアルコール30部を混合し、さらに増粘剤「SNシックナー636」(商品名、サンノプコ社製)及び水を加えて、固形分2%の水性ベースコート塗料(B−1)を得た。
(注2)アクリル樹脂水溶液A:アクリル酸n−ブチル16.7部、メタクリル酸メチル15部、スチレン30部、アクリル酸2−エチルヘキシル20部、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル12部、アクリル酸6.3部からなる単量体成分の共重合体。数平均分子量が45,000、水酸基価が50mgKOH/g、酸価が50mgKOH/g。
(注3)りん酸基含有樹脂:アシッドホスホキシエチルメタクリレート25部、2−ヒドロキシエチルアクリレート25部及びメチルメタクリレート50 部からなる単量体成分の共重合体。数平均分子量13,000、水酸基価120mgKOH/g、酸価104mgKOH/g。
【0090】
参考例
溶剤系メタリック塗料(TB−516、商品名、関西ペイント社製)に蒸留水を添加したところ、ゲル化して塗装不能となった。
被塗物の調整
製造例22(被塗物1の作製)
脱脂及びリン酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント社製、アミン変性エポキシ樹脂系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて被塗物1を得た。
【0091】
製造例23(被塗物2の作製)
ABS板(黒色、脱脂処理済み)に、プライマー「ソフレックス1000」(商品名:関西ペイント社製、ポリオレフィン含有導電性有機溶剤型塗料)を乾燥膜厚で15μmになるようにエアスプレー塗装を行ない、80℃で30分間加熱し硬化させて被塗物2を得た。
試験板の作成
実施例1〜15、比較例1〜8
被塗物1上に、中塗塗料「ルーガベーク中塗りグレー」(商品名:関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系有機溶剤型塗料)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗り塗膜を形成した。該中塗り塗膜の上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(X−1)〜(X−20)、及び水性ベースコート(B−1)を、表4に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、表4に記載の乾燥塗膜となるように塗装した。
その後、室温にて3分間放置し、80℃で3分間加熱乾燥させた。ついで、これらの乾燥塗面に、トップクリヤー塗料「KINO6500」(商品名:関西ペイント株式会社、アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)をABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて各試験板とした。
ここで、表4に記載した乾燥塗膜の膜厚は、下記式から算出した。以下の実施例についても同様である。
x=sc/sg/S*10000
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
sg:塗膜比重[g/cm
S:塗着固形分の評価面積[cm
実施例16
被塗物1上に、中塗塗料「WP−505T」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚20μmになるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートし、さらにその上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(X−1)を、表4に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、0.1μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置し、ついで、この乾燥塗面に、トップクリヤー塗料「KINO6500」(商品名:関西ペイント株式会社、アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)をABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0092】
実施例17
被塗物1上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(X−1)を、表4に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、0.1μmとなるように塗装した。その後、室温にて3分間放置し、140℃で30分間加熱乾燥せしめて試験板とした。
【0093】
実施例18
被塗物2上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(X−1)を表4に記載の塗料粘度に調整し、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥膜厚で0.1μmとなるように静電塗装し、80℃で3分間プレヒート後、クリヤー塗料として「ソフレックス5200クリヤー」(関西ペイント社製、アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)を乾燥膜厚で約30μmとなるように静電塗装して、80℃で30分間加熱乾燥させて試験板を作成した。
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について外観及び性能を評価し、表4にその結果を示した。
【0094】
外観評価
塗膜外観は、60°鏡面光沢度、目視、及びはじきの有無によって評価した。
【0095】
60°鏡面光沢度による評価
60°鏡面光沢度が高い値であるほど、金属調光沢に優れる。該60°鏡面光沢度は、JIS K 5600−4−7:1999に基づいて測定した。
【0096】
目視による評価
上記で得られた試験板を、人工太陽灯(セリック社製、色温度6500K)で照明し、試照明に対する試験板の角度を変えて観察して、粒子感、ハイライト領域とシェード領域の輝度差を評価した。粒子感が少なく、ハイライト領域とシェード領域の輝度差が大きいほど金属調に優れた塗膜である。評価は、色彩開発に3年以上従事するデザイナー2名と技術者3名の計5名が5点満点で行ない、平均点を採用した。
5:輝度が非常に高く粒子感が無い
4:輝度が高く粒子感が少ない
3:輝度が高いが粒子感が大きい
2:輝度が低く粒子感が大きい
1:輝度が無く、粒子感が非常に大きい
はじきの有無による評価
上記で得られた試験板を、人工太陽灯(セリック社製、色温度6500K)で照明し、はじきの有無を観察した。はじきとは試験板に見られる凝集物である。該凝集物のうち、任意の100個の凝集物の直径を測定し、該直径の平均値が、1mm以上である場合を「はじきあり」と評価して、表4には「×」と記載した。該直径が1mm未満である場合を「はじきなし」と評価して、表4には「○」と記載した。
【0097】
性能評価
塗膜性能は、促進耐候性試験によって評価を行った。
【0098】
耐候性
各試験板について、JIS K 5600−7−7に準じ、「スーパーキセノンウエザーメーター」(スガ試験機社製、耐候性試験機)を用いて、試験片ぬれサイクル:18分/2時間、ブラックパネル温度:61〜65℃の条件で、促進耐候性試験を行った。次に、ランプの照射時間が800時間に達した時点で、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作った。次いで、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、そのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
○:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0099】
総合評価
前記外観評価及び性能評価の結果より総合評価を行った。
○:外観も性能も良い
△:外観は良いが性能が悪い
×:外観も性能も悪い
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車車体の内板、外板及び自動車部品に適用できる。