(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定面は、前記係止部と前記測定面の前記係止部から離れた位置との間の測定面が、前記係止部と前記測定面の前記位置とを結ぶ平面に対して膨らんだ曲面により構成される請求項1〜3のいずれかに記載の開口測定器。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の開口測定器の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
実施形態1の開口測定器10は、上顎と下顎との開口量を測定する場合に用いられる。より具体的には、開口測定器10は、下顎の前歯(後述の第1基準歯21)と上顎の前歯(後述の第2基準歯31)との間の距離を、開口量として測定する場合に用いられる(
図5参照)。
この開口測定器10は、
図1及び
図2に示すように、断面形状が略扇型の柱状の形状を有する。
実施形態1の開口測定器10は、
図1〜3に示すように、係止部11と、測定面12と、第1目盛13と、第2目盛14と、基準線16と、一対の把持面15とを備える。
係止部11は、開口測定器10における曲面部分の周方向LDの一端部に設けられる。この係止部11は、
図1〜3に示すように、第1基準歯当接面111と、凹面112とを備える。
【0019】
第1基準歯当接面111は、係止部11の幅方向WDの中央部に配置される。
凹面112は、
図1〜3に示すように、第1基準歯当接面111の幅方向WDの両側に配置される。この凹面112は、第1基準歯当接面111よりも凹んで形成される。
【0020】
測定面12は、
図1及び2に示すように、開口測定器10における曲面部分に設けられる。測定面12は、
図2に示すように、係止部11と測定面の所定の箇所121(測定面12の係止部11から離れた位置)との間の測定面12が、係止部11と測定面の所定の箇所121とを結ぶ平面Fに対して膨らんだ曲面により構成される。なお、
図2においては1箇所しか示さないが、実施形態1においては、測定面の所定の箇所121とは、測定面12において、測定時に、後述する第2基準歯31が当接する全ての箇所をいう。また、より詳細には、測定面12は、係止部11から離れるに従って曲率が大きくなる曲面により構成される。
【0021】
第1目盛13は、
図1及び2に示すように、測定面12に設けられる。第1目盛13は、係止部11から測定面12の周方向LDに向かって所定の間隔で、幅方向WDに設けられる。この第1目盛13は、係止部11からの距離を表示する。ここで、係止部11からの距離とは、係止部11(第1基準歯当接面111)から第1目盛13が付された点までの直線距離を示し、
図2に示す平面F上の距離である。実施形態1では、第1目盛13は、係止部11からの距離が30mmまでは10mm間隔、その後は5mm間隔で付されている。
第2目盛14は、
図1及び3に示すように、測定面12の周方向LDに直交する幅方向WDに1mm間隔で設けられる。この第2目盛14は、第1目盛13が設けられる方向に直交する方向に関する位置を示す。実施形態1では、第2目盛14は、それぞれの第1目盛13に対応して設けられる。
基準線16は、測定面12における幅方向WDの中央に配置され、測定面12の周方向LDに延びる。この基準線16は、開口測定器10により開口量を測定する場合の基準位置となる。
【0022】
一対の把持面15は、
図1〜3に示すように、測定面12を挟んで配置される。把持面15は、
図2に示すように、測定面12の幅方向WDにおいて略扇型の形状を有する。実施形態1では、把持面15は、
図1及び2に示すように、幅広面部152と、幅狭面部151と、連結面部153と、を備える。
幅広面部152は、測定面12に連続して設けられ、測定面12に対して直交して配置される。即ち、一対の幅広面部152間の距離(幅)は、測定面12の幅方向WDの長さと等しい。
幅狭面部151は、把持面15の扇型形状の中心角側に配置される。一対の幅狭面部151は、一対の幅広面部152間の距離(幅)よりも短い距離(幅)で配置される。
連結面部153は、幅広面部152と幅狭面部151とを連結する。実施形態1では、連結面部153は、幅広面部152及び幅狭面部151に対して直交して延びる。
【0023】
次に、実施形態1の開口測定器10の使用方法について説明する。
実施形態1の開口測定器10を用いて上顎30と下顎20との開口量を測定するために、まず、
図4に示すように、被験者に開口させる。次に、
図5に示すように、下顎20における第1基準歯21に、開口測定器10の係止部11(具体的には、
図2及び
図3に示されるように切り欠かれた第1基準歯当接面111)を係止し、係止部11が第1基準歯21に係止された状態で、測定面12を、上顎30における第2基準歯31に当接させる。
この際、被験者の第2基準歯31を測定面12に近づけると、第1基準歯21の両側に位置する下顎側切歯22が、第1基準歯当接面111の両側に当接しやすくなる。下顎側切歯22が第1基準歯当接面111の両側に当接すると、第1基準歯当接面111から第1基準歯21が離れてしまうため、第1基準歯21を第1基準歯当接面111に安定して係止させることができなくなる。
しかし、実施形態1においては、第1基準歯当接面111の両側に位置する凹面112は、第1基準歯当接面111よりも凹んで形成される。これにより、第2基準歯31を測定面12に近づけたときに、下顎側切歯22が、第1基準歯当接面111の両側に位置する凹面112に当接しにくい。よって、第1基準歯21を第1基準歯当接面111に安定して係止させることができる。なお、第1基準歯21は、
図4及び5に示すように、下顎20における下顎中切歯を指す。第2基準歯31は、
図4及び5に示すように、上顎30における上顎中切歯を指す。
【0024】
次に、
図5に示すように、第1基準歯21に係止部11を係止させ、かつ、第2基準歯31に測定面12を当接させた状態で、第1目盛13に基づいて、係止部11から、測定面12における第2基準歯31の当接した位置までの距離を測定する。これにより、測定面12により上顎の第2基準歯31を安定的に支持させられるので、測定面12上における第2基準歯31の位置を正確に読み取れる。よって、開口量を高い精度で測定できる。
【0025】
また、
図6及び7に示すように、第1基準歯21に係止部11を係止させ、かつ、第2基準歯31に測定面12を当接させた状態で、第2目盛14に基づいて、基準線16から、測定面12のおける第2基準歯31の当接した部位までの距離を測定する。このとき、
図7に示すように、第2基準歯31の当接した部位のうち、2本の第2基準歯31の間までの距離を測定する。これにより、開口時の下顎切歯の側方への変位を上下切歯の正中のずれとして測定することができる。このように測定した場合において、
図6は、開口時に下顎切歯の側方への変位がないことを示し、
図7は、開口時に下顎切歯の側方への変位があることを示す。
【0026】
また、第1基準歯21に係止部11を係止させ、かつ、第2基準歯31に測定面12を当接させた状態を保ちながら、被験者を徐々に開口させ、第2目盛14に基づいて、測定面12のおける第2基準歯31の当接した部位を連続して測定する。これにより、開口時の下顎切歯の側方への変位を、開口量に応じて連続して記録することができるので、どのような動きをしながら開口されるかを把握することができる。
【0027】
以上説明した実施形態1の開口測定器10によれば、以下のような効果を奏する。
【0028】
開口測定器10を、下顎における第1基準歯21に係止される係止部11と、係止部11が第1基準歯21に係止された状態で上顎における第2基準歯31が当接する測定面12と、測定面12に設けられ、係止部11からの距離を示す第1目盛13とを含んで構成した。これにより、測定面12により上顎の第2基準歯31を安定的に支持させられるので、測定面12上における第2基準歯31の位置を正確に読み取れる。よって、開口量を高い精度で測定できる。また、測定時の安定性及び測定精度に優れるので、高い再現性を得ることができる。
【0029】
左右の顎関節の可動性に不調和が生じる(例えば、片側顎関節の前方滑走運動が阻害されている場合等に)と、開口路の側方変位が生じる。従来用いられてきた開口測定器は、上下顎切歯間距離を測定する機能に特化し、左右の顎関節の可動性の不調和の結果である開口路の側方への変位を開口度に応じて適切に測定する機能を有していなかった。そこで、実施形態1においては、開口測定器10を、測定面12に設けられ、第1目盛13が設けられる方向に直交する方向に関する位置を示す第2目盛14を含んで構成した。これにより、開口時の下顎切歯の側方への変位を上下切歯の正中のずれとして測定することができる。更に、これにより、開口時の下顎切歯の側方への変位を、開口量に応じて連続して記録することができるので、どのような動きをしながら開口されるかを把握することができる。
【0030】
開口測定器10における測定面12が平面であった場合、測定を行う際に、被験者の唇が開口測定器10に当たってしまうので、測定を行いにくい。そこで、実施形態1においては、開口測定器10における測定面12を、係止部11と測定面の所定の箇所121との間の測定面が、係止部11と測定面の所定の箇所121とを結ぶ平面Fに対して膨らんだ曲面により構成した。これにより、測定を行う際に、被験者の唇が開口測定器10に当たらないので、測定を行いやすい。
【0031】
開口測定器10における測定面12が平らであった場合、開口時の下顎切歯の側方への変位を測定する際に、開口量が増す毎に、測定面12が測定者とは反対の方向を向いてしまうので、測定者は第2目盛14を視認するのが難しくなる。そこで、実施形態1においては、測定面12の曲面の曲率を、係止部11から離れるに従って大きくなるように構成した。これにより、開口時の下顎切歯の側方への変位を測定する際に、開口量が増しても、測定面12における第2基準歯が当接する位置は、測定者とは反対の方向を向きにくいので、測定者は第2目盛14を視認しやすい。
【0032】
係止部11を、第1基準歯21が当接する第1基準歯当接面111と、第1基準歯当接面111の両側において第1基準歯当接面111よりも凹んで形成される凹面112とを含んで構成した。これにより、第1基準歯21を第1基準歯当接面111に当接させた場合に、第1基準歯21の両側に位置する下顎側切歯22を第1基準歯当接面111の両側に位置する凹面112に接触しにくくできる。よって、第1基準歯21を係止部11に正確に位置決めできるので、開口量をより正確に測定できる。
【0033】
開口測定器10を、測定面12を挟んで配置される一対の把持面15を含んで構成し、一対の把持面15を、測定面12における第2目盛14が設けられる方向の幅よりも狭い幅で配置される幅狭面部151を含んで構成した。これにより、測定者は、幅狭面部151を手で持つことにより、開口測定器10を持ちやすくなるので、測定を行いやすい。
【0034】
以下に、上記実施形態1とは異なる実施形態2に係る開口測定器10Aについて説明する。なお、実施形態1と共通する点については、説明を省略する。
【0035】
開口測定器10Aは、上記で述べた実施形態1の構成に加え、
図8に示すように、第1水平面17と、第3目盛171と、鍔部18と、切欠き部19とを更に備える。
【0036】
第1水平面17は、
図9に示すように、後述する前方滑走量FDを測定する際に第1基準歯21が当接する面に設けられる。第1水平面17は、水平な面で構成される。
【0037】
第3目盛171は、第1水平面17に設けられる。第3目盛171は、前方滑走量FDを表示する。より具体的には、実施形態2においては、第3目盛171は、
図8に示すように、鍔部18の先端に対する距離を表示する。前方滑走量FDは、第2基準歯31に対する第1基準歯21の距離を示し、この前方滑走量FDは、下顎20が上顎30に対し前後に移動する前方滑走運動による、前方への滑走距離に関する距離である。実施形態2に係る開口測定器10Aにおいては、第3目盛171は、1mmの間隔で、付されている。
【0038】
前方滑走量FDは、
図9に示すように、第2基準歯31を後述の鍔部18上に載置し、下顎20を滑走させる前の状態から、第1基準歯21を第1水平面17に当接させながら、下顎20を前方に滑走させ、第1水平面17における滑走後の第1基準歯21が当接した位置を測定する。そして、第2基準歯31の載置位置と第1基準歯21の当接位置との差を読み取ることによって求める。
図9において、滑走前の下顎20の状態を
図9の点線で示し、滑走後の下顎20の状態を
図9の実線で示す。
【0039】
鍔部18は、開口測定器10Aにおいて、
図8及び
図9に示すように、前方滑走量FDを測定する際に第2基準歯31を載置する部分に設けられている。この鍔部18は、第1水平面17から第2基準歯31を載置する部分に伸びる方向に突出している。開口測定器10Aにおいては、鍔部18は5mm突出している。このように、開口測定器10Aにおいては、鍔部18は突出した形状であるため、前方滑走量FDを測定する際に安定して第2基準歯31を載置可能である。なお、
図8に示すように、第3目盛171は、鍔部18の先端まで付されているが、
図9では、鍔部18における第3目盛171の図示を省略している。
【0040】
切欠き部19は、
図8及び
図9に示すように、測定面12と第1水平面17との間に配置される。この切欠き部19は、
図9に示すように、前方滑走量FDを測定する際に、被験者の上唇が開口測定器10Aの測定面12に当たらず、鍔部18上に載置した第2基準歯31が収まるように測定面12に対して凹んだ形状で構成される。
【0041】
以上で述べた実施形態2によると、以下のような効果を奏する。
【0042】
開口測定器10Aにおいて、第2基準歯31に対する第1基準歯21の前方滑走量FDを示す第3目盛171を備えて構成した。これにより、下顎20が上顎30に対し前後にどの程度前方滑走運動したかを測定することが可能であるため、前方滑走量FDの値を、上述の開口量の値と組み合わせて、顎関節症の治療のための検査に用いることができる。
【0043】
開口測定器10Aを、測定面12に対して凹んだ形状である切欠き部19を更に備えて構成した。これにより、前方滑走量FDを測定する際に、上唇が開口測定器10Aに当たらず、鍔部18上に載置した第2基準歯31が切欠き部19に収まる。また、第1基準歯21と第2基準歯31によって鍔部18が挟まれ、測定時に開口測定器10Aが上下に動くことがない。そのため、測定が行いやすくなり、正確な測定が可能となる。なお、前方滑走量FDは、第2基準歯31を鍔部18の先端に当接させ、第1基準歯21を前方に滑走させることによって求めることもできる。この場合、第1水平面17における滑走後の第1基準歯21の当接位置を読み取れば、そのまま前方滑走量FDとなる。
【0044】
以上、本発明の開口測定器の好ましい実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、実施形態1、2では、下顎中切歯を第1基準歯とし、上顎中切歯を第2基準歯として測定を行うが、これに限らない。即ち、上顎中切歯を第1基準歯とし、下顎中切歯を第2基準歯として、第1基準歯に係止部を係止させ、かつ、第2基準歯に測定面を当接させた状態で、第1目盛又は第2目盛に基づいて、測定面12における第2基準歯31の当接した位置を測定することができる。これにより、開口量及び開口時の下顎切歯の側方への変位を測定することができる。
【0045】
被測定者の中には、咬合位において下顎が側方に変位している者も存在する。その場合においても、本発明の開口測定器によれば、側方に変位している位置を基準として、開口時の側方への変位、即ち、下顎開口路の側方への偏位量を測定することができる。
【0046】
実施形態1、2においては、測定面12において、測定面の所定の箇所121を、測定時に第2基準歯31が当接する全ての箇所となるように構成したが、これに限らない。即ち、測定面12において、測定面の所定の箇所121を、測定時に第2基準歯31が当接する1箇所となるように構成してもよい。
【0047】
実施形態1、2では、測定面12の曲面の曲率を、係止部11から離れるに従って大きくなるように構成したが、これに限らない。即ち、測定面12の曲面の曲率を、その全部が係止部11から離れるに従って大きくなるように構成するのではなく、その一部が係止部11から離れるに従って大きくなるように構成してもよい。
【0048】
実施形態1、2では、凹面112を、第1基準歯当接面111の両側において第1基準歯当接面111よりも凹んで形成されるように構成したが、これに限らない。即ち、凹面112を、第1基準歯当接面111の少なくとも片側において第1基準歯当接面111よりも凹んで形成されるように構成してもよい。
【0049】
実施形態1、2の材質は、特に限定されず、例えば、各種合成樹脂の他、金属素材等により構成してもよい。
【0050】
実施形態1、2では、第1目盛13は、10mm間隔、又は5mm間隔で付されているが、これに限らない。即ち、1mm間隔、2mm間隔等、目的に応じて適宜目盛りを付す間隔を設定してもよい。例えば、第1目盛13を全て1mm間隔とし、基準線16にも1mm間隔で目盛を設け、第1目盛13及び基準線16のそれぞれについて5mm毎に目盛の数値を付することができる。
また、第2目盛の幅及び第2目盛の設けられる間隔も限定されず、目的に応じて適宜設定してもよい。
【0051】
実施形態2では、第3目盛171を第1水平面17に設けたが、これに限らない。前方滑走量FDを測定するには、開口測定器が、第2基準歯31が開口測定器に当接した状態で第1基準歯21が当接可能な面を備え、その第1基準歯21が当接可能な面が水平であり、かつ、第1基準歯21をその当接可能な面に当接させた状態で下顎20を前方に滑走可能に構成されればよい。例えば、
図8に示す、幅広面部152の係止部11側に配置され、水平な面で構成される第2水平面113に第3目盛171を設けてもよく、あるいは、測定面12の一部を水平な面で構成した場合、測定面12の水平部に第3目盛171を設けてもよい。この場合、第2水平面113の係止部11側又は測定面12の水平部の一端側に第2基準歯31を当接させ、第1基準歯21を測定面12の水平部又は第2水平面113に当接させながら下顎20を前方に滑走させることで、前方滑走量FDを測定することができる。このように、第2水平面113又は測定面12の水平部に第3目盛171を設けた場合、第3目盛171は、第2水平面113又は測定面12の水平部における第2基準歯31を当接させる位置に対する距離を表示するように設けられる。
【0052】
実施形態2では、第3目盛171を1mm間隔で設けたが、特に限定されず、目的に応じて適宜設定してもよい。
【0053】
実施形態2では、鍔部18を5mm突出するように構成したが、これに特に限定されず、例えば、鍔部18を1〜10mm突出するように構成してもよく、あるいは、突出しないように構成してもよい。
また、鍔部18には、上顎30の切歯の切縁が当たる水平面に、第2目盛14と同様の目盛を追加することもできる。これにより、前方滑走時の左右の振れ(側方変位量)も測定できるようになる。