(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の解体方法では、既存建物内の屋上階に仮設柱を設置するが、この仮設柱をどのように設置するかが問題であった。
【0005】
本発明は、構造物を解体するための仮設屋根を支持し、かつ、所定階に確実に設置できる仮設
柱の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の仮設柱は、構造物(例えば、既存建物1)を解体するための仮設屋根(例えば、仮設屋根61)を支持する仮設柱(例えば、仮設柱20)であって、当該仮設柱の下端側に開閉可能に設けられた第1かんぬき部材(例えば、第1かんぬき部材30A)と、開閉可能に設けられた第2かんぬき部材(例えば、第2かんぬき部材30B)と、当該第2かんぬき部材を前記仮設柱に沿って昇降させるジャッキ(例えば、ステップロッドジャッキ25)と、を備えること
が好ましい。
【0007】
請求項
1に記載の仮設柱の設置方法は、構造物を解体するための仮設屋根を支持する仮設柱の設置方法であって、当該仮設柱は、当該仮設柱の下端側に開閉可能に設けられた第1かんぬき部材と、開閉可能に設けられた第2かんぬき部材と、当該第2かんぬき部材を前記仮設柱に沿って昇降させるジャッキと、を備え、前記第1かんぬき部材を開いて前記構造物の構造体(例えば、既存梁12)に係止させる第1工程(例えば、ステップS2)と、前記第2かんぬき部材を閉じて、前記ジャッキを駆動し、当該第2かんぬき部材を上層の所定階の床レベルまで移動する第2工程(例えば、ステップS3)と、前記第2かんぬき部材を開いて、前記所定階の構造体に係止させる第3工程(例えば、ステップS4)と、前記第1かんぬき部材を閉じる第4工程(例えば、ステップS5)と、前記ジャッキを駆動して、前記第2かんぬき部材を前記仮設柱に対して下方に相対移動する第5工程(例えば、ステップS6)と、前記第1工程から第
5工程までを繰り返す第6工程(例えば、ステップS7)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、仮設柱を構造物内部の下階で組み立てて、その後、この仮設柱を上階まで上昇させる。
具体的には、まず、構造物内部の下階に仮設柱を搬入して組み立てる。このとき、第1かんぬき部材を開いて下階の構造体に係止させておく。これにより、仮設柱の荷重は、第1かんぬき部材を介して構造物に支持される。
次に、第2かんぬき部材を閉じて、ジャッキを駆動し、この第2かんぬき部材を上階まで移動する。
次に、この第2かんぬき部材を開いて、この上階の構造体に係止させる。
【0009】
次に、第1かんぬき部材を閉じる。これにより、仮設柱の荷重は、第2かんぬき部材を介して構造物に支持される。
次に、ジャッキを駆動して、第2かんぬき部材を仮設柱に対して下方に相対移動する。すると、第2かんぬき部材は上階の構造体に係止しているので、仮設柱は構造物に対して上昇することになる。
以上の手順を繰り返すことで、仮設柱を下階から上階まで上昇させる。
【0010】
このように、仮設柱を下階で組み立てて、この組み立てた仮設柱を下階ら上階に移動したので、仮設柱を所定階に確実に設置できる。また、仮設柱の組み立てを下階で行うため、この仮設柱を組立てるための資材の搬出入が容易となるうえに、高所作業を極力削減できるから、仮設柱を容易かつ低コストで設置できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、仮設柱を下階で組み立てて、この組み立てた仮設柱を下階ら上階に移動したので、仮設柱を所定階に確実に設置できる。また、仮設柱の組み立てを下階で行うため、この仮設柱を組立てるための資材の搬出入が容易となるうえに、高所作業を極力削減できるから、仮設柱を容易かつ低コストで設置できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る仮設柱が適用された構造物としての既存建物1の断面図である。
既存建物1は、ここでは、24階建ての鉄骨造であり、複数本の角形鋼管である既存柱11と、これら既存柱11同士を連結する複数の鉄骨梁である既存梁12と、既存梁12に支持される既存スラブ13と、を備える。
【0014】
この既存建物1には、既存建物1を解体するために、解体作業スペース60が構築されている。解体作業スペース60は、仮設屋根61と、この仮設屋根61の外周に設けられた外周足場62と、で囲まれた空間である。
【0015】
仮設屋根61は、24階床レベルの外周側の既存梁12と、24階の外周側の既存柱11と、R階床レベルの一部の既存梁12である仮設梁63と、この仮設梁63の上に張り付けられた透光性を有する板材64と、仮設梁63の梁下に設置された2段式のガーター65と、このガーター65に沿って走行する走行クレーン66と、を備える。
外周足場62は、仮設梁63に支持されている。
【0016】
既存建物1の既存柱11の近傍には、既存建物1の構造体に支持されて略鉛直方向に延びて仮設屋根61を支持する仮設柱20が設置される。
【0017】
図2は、仮設柱20の正面図および側面図である。
図3は、
図2のA−A断面図である。
図4は、
図2のB−B断面図である。
図5は、仮設柱20の側面図である。
図6は、
図2のC−C断面図である。
図7は、
図2のD−D断面図である。なお、
図2では、理解の容易のため、後述の水平支持レール23Bを省略している。
【0018】
図2に示すように、仮設柱20は、鉛直方向に略平行に延びる一対の柱部材21と、これら2本の柱部材21を連結する連結部材22と、柱部材21に沿って延びる水平支持レール23A、23Bと、を備える。
【0019】
各柱部材21は、長さ方向に三分割されており、断面略H形状の下部211と、この下部211の上に設けられた断面略箱形状の中央部212と、この中央部212の上に設けられた断面略H形状の上部213と、を備える。
【0020】
水平支持レール23A、23Bは、断面略H形状の下部211に設けられている。
具体的には、水平支持レール23Aは、柱部材21の断面略H形状である下部211のウエブに略平行に延びる当接面を有している。一方、水平支持レール23Bは、柱部材21の断面略H形状である下部211のフランジに略平行に延びる当接面を有している。
【0021】
この仮設柱20には、仮設柱20の下端側に取り付けられた一対の直線状のかんざし部材27と、このかんざし部材27に支持されて開閉可能な第1かんぬき部材30Aと、仮設柱20の長さ方向に沿って延びるステップロッド24と、このステップロッド24に沿って移動可能なステップロッドジャッキ25と、このステップロッドジャッキ25の下端に取り付けられて開閉可能な第2かんぬき部材30Bと、が内蔵されている。
【0022】
仮設柱20の上端面には、水平に直線状に延びる支持部材28が設けられており、仮設柱20の上端面は、支持部材28を介して、仮設屋根61の仮設梁63に連結されている(
図1参照)。
また、仮設柱20の上部213の側面には、継手29が設けられている。仮設柱20の側面は、この継手29を介して、仮設屋根61の一部である24階の既存柱11の上側の側面に連結されている(
図1参照)。
【0023】
図4および
図6に示すように、仮設柱20は、既存建物1の既存スラブ13を貫通して延びている。すなわち、既存柱11の近傍の各階の既存スラブ13には、床開口14が形成されており、仮設柱20は、各階の床開口14に挿通される。
【0024】
図4および
図5に示すように、下部211には、互いに対向する一対の貫通孔214が長さ方向に沿って形成されている。この貫通孔214の周囲は、補強プレート215で補強されている。
【0025】
一対のかんざし部材27は、柱部材21の貫通孔214に挿通されている。
第1かんぬき部材30Aの上面は、かんざし部材27の下面に当接して固定されている。これにより、第1かんぬき部材30Aは、仮設柱20とともに略鉛直方向に移動するようになっている。
【0026】
以下、第1かんぬき部材30Aの構造について説明するが、第2かんぬき部材30Bも、第1かんぬき部材30Aと同様の構造である。
第1かんぬき部材30Aは、一対の柱部材21の間に挿通され、開閉することで軸方向の長さが変更可能な構造で、第1かんぬき部材30Aは、所定長さの本体31と、この本体31の両端側に水平方向に回動自在に設けられた係止部32と、を備える。
【0027】
係止部32および本体31を一直線上に配置することで、第1かんぬき部材30Aが開いた状態となり、第1かんぬき部材30Aの軸方向の長さを長くできる。一方、係止部32を水平方向に折り曲げることで、第1かんぬき部材30Aが閉じた状態となり、第1かんぬき部材30Aの軸方向の長さを短くできる。
第1かんぬき部材30Aを閉じた状態では、第1かんぬき部材30Aの軸方向の長さが床開口14の内法寸法よりも短くなるため、第1かんぬき部材30Aは、床開口14を通って鉛直方向に移動可能となる。
【0028】
第1かんぬき部材30Aを所定高さに配置して、この第1かんぬき部材30Aを開くことで、第1かんぬき部材30Aは、既存柱11から互いに直交して延びる2つの既存梁12に跨って配置される。このとき、これら2本の既存梁12の上面には既存スラブ13が残っているため、第1かんぬき部材30Aは、既存梁12の直上の既存スラブ13に載置される。
【0029】
この状態では、第1かんぬき部材30Aが既存梁12に係止し、この第1かんぬき部材30Aにかんざし部材27が係止するので、仮設柱20は第1かんぬき部材30Aを介して既存梁12に支持されることになる。
【0030】
また、床開口14のうち仮設柱20の下部211が挿通されるものには、既存建物1に支持されて仮設柱20の側面に当接する一対の水平反力受け部材51、52が設けられる。すなわち、水平反力受け部材51、52は、既存梁12上に取り付けられて仮設柱20の側面に当接する略コの字形状の第1水平反力受け部材51と、既存スラブ13上に取り付けられて仮設柱20の側面に当接する略コの字形状の第2水平反力受け部材52と、からなる。
【0031】
各水平反力受け部材51、52は、水平支持レール23Aの当接面に当接する長尺状の第1ガイド部53と、この第1ガイド部53の両端から直交して延びて水平支持レール23Bの当接面に当接する第2ガイド部54と、を備える。これにより、仮設柱20を下方に向かって円滑に移動可能となっている。
水平反力受け部材51、52は、仮設柱20を挟んで略矩形枠状に配置されており、かんぬき部材30A、30Bの上下方向の移動に干渉しないようになっている。
【0032】
次に、既存建物1を解体する手順について説明する。
まず、
図1に示すように、屋上階としてのR階の設備機器、目隠し壁、およびフレーム等を解体する。また、R階床レベルの既存梁12の一部を残して解体して、残った既存梁12を仮設梁63とする。さらに、24階床レベルの外周の既存梁12を残して、24階の外壁を含む立上りおよび24階床レベルの内側の既存梁12を解体する。
また、仮設柱20の外側に仮設梁63に支持される外周足場62を設ける。
【0033】
次に、仮設梁63の梁下にガーター65および走行クレーン66を取り付ける。この走行クレーン66は軽量であるため、R階床レベルの仮設梁63を補強する必要はない。また、仮設梁63に透光性を有する板材64を貼り付けて、仮設屋根61を完成させることで、仮設屋根61および外周足場62で囲まれた解体作業スペース60を形成する。
なお、図示しないが、仮設屋根61には、雨水を利用した散水設備およびドライミスト装置を設ける。
【0034】
各階の既存スラブ13に床開口14を形成し、21〜23階床レベルの床開口14に水平反力受け部材51、52を設置する。
その後、既存建物1の最上階外周の既存柱11の近傍に仮設柱20を配置する。
【0035】
ステップロッドジャッキ25駆動して、23階床レベルの既存梁12に第2かんぬき部材30Bを係止させ、仮設柱20を23階床の既存梁12に支持させる。また、第1かんぬき部材30Aを収縮させておく。
その後、23階の既存柱11を柱頭部で切断し、23階の外壁を含む立上がりを解体する。
【0036】
図8に示すように、ステップロッドジャッキ25を駆動して、ステップロッド24の上方に向かって移動させる。
これにより、仮設柱20が下降し、仮設屋根61および外周足場62も下降し、第1かんぬき部材30Aは21階床レベルの高さに位置する。このとき、水平反力受け部材51、52により、仮設柱20の移動を案内する。
第1かんぬき部材30Aを伸長させて、この第1かんぬき部材30Aを21階床レベルの既存梁12に係止させ、仮設柱20の荷重を21階床の既存梁12に支持させる。
【0037】
図9に示すように、ステップロッドジャッキ25を駆動して、第2かんぬき部材30Bを上方に向かってわずかに移動し、解体対象である23階床から退避させる。
また、23階床レベルに設置した水平反力受け部材51、52を20階床レベルに盛り替える。
解体作業スペース60内で、23階の床から22階の外壁を含む立上りまで(
図9中破線で示す部分)を解体する。このとき、走行クレーン66を利用して、解体材を図示しない搬出口に移動し、図示しないホイストで下階に搬出する。下階に搬出した解体材は、リサイクル可能な材料と産業廃棄物との仕分けを行って、場外に搬出する。
【0038】
図10に示すように、ステップロッドジャッキ25を駆動して、第2かんぬき部材30Bを下方に向かって移動し、22階床レベルの既存梁12に係止させ、仮設柱20を22階床の既存梁12に支持させる。また、第1かんぬき部材30Aを収縮させておく。
【0039】
そして、以上の工程を繰り返すことで1層毎に解体して、1階まで解体する。
【0040】
以下、仮設柱20を最上階に設置する手順について、
図11にフローチャートを参照しながら説明する。すなわち、仮設柱20を1階床レベルで組み立てて、この組み立てた仮設柱20を既存建物1の最上階まで上昇させる。
【0041】
ステップS1では、
図12に示すように、既存建物1の内部に仮設柱20を搬入して、地表面レベルつまり1階床レベルで組み立てる。また、各階の既存スラブ13に床開口14を形成し、2層毎に水平反力受け部材51、52を設ける。
ステップS2では、
図12に示すように、第1かんぬき部材30Aを開いて既存建物1の既存梁12に係止させておく。これにより、仮設柱20の荷重は、第1かんぬき部材30Aを介して既存建物1に支持される。
【0042】
ステップS3では、
図13に示すように、第2かんぬき部材30Bを閉じて、ステップロッドジャッキ25を駆動して、5階の床レベルまで移動する。
ステップS4では、
図13に示すように、第2かんぬき部材30Bを開いて、この5階の既存梁12に係止させる。
【0043】
ステップS5では、第1かんぬき部材30Aを閉じる。これにより、仮設柱20の荷重は、第2かんぬき部材30Bを介して既存建物1に支持される。
【0044】
ステップS6では、
図14に示すように、ステップロッドジャッキ25を駆動して、第2かんぬき部材30Bを仮設柱20に対して下方に既存建物1の2層分だけ相対移動する。すると、第2かんぬき部材30Bが5階の既存梁12に係止しているので、仮設柱20は既存建物1に対して2層分上昇する。
ステップS7では、ステップS2〜S6を繰り返して、仮設柱20を1階から最上階まで上昇させる。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)仮設柱20を1階床レベルで組み立てて、この組み立てた仮設柱20を1階から最上階に移動させたので、仮設柱20を最上階に確実に設置できる。また、仮設柱20の組み立てを1階レベルで行うため、この仮設柱20を組立てるための資材の搬出入が容易となるうえに、高所作業を極力削減できるから、仮設柱20を容易かつ低コストで設置できる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、ステップロッドジャッキ25用いたが、これに限らず、油圧ジャッキを用いてもよい。