特許第6391151号(P6391151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6391151浄化槽管理装置およびそれを用いた管理装置付き浄化槽
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391151
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】浄化槽管理装置およびそれを用いた管理装置付き浄化槽
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20180910BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C02F3/00 A
   G01N21/59 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-137506(P2014-137506)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-13525(P2016-13525A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514170064
【氏名又は名称】有限会社西本衛生
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】西本 和史
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−218378(JP,A)
【文献】 特開2010−060392(JP,A)
【文献】 実開昭62−192242(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00、3/00、12
G21N 21/00−61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈澱槽において汚水に含まれる汚濁物質を汚泥として沈殿させ、その上澄み液を消毒槽において消毒処理して放流するよう設定された浄化槽に取り付けられ、上記上澄み液の汚れを経時的に把握するために用いられる浄化槽管理装置であって、
内外に液を通過させるための透孔が多数形成されたケーシングと、このケーシングを取り付けるための取り付け手段と、上記ケーシング内に設けられる発光手段と、同じく上記ケーシング内に設けられ上記発光手段から投射される光を受光する受光手段と、この受光手段による受光量を検知して検知信号を出力する検知手段と、上記検知信号に基づいてケーシング内を通過する液の汚れ具合を表示する表示手段とを備え、
上記ケーシングが、浄化槽の、消毒槽手前の上澄み液貯留部に浸漬された状態で取り付けられ、上記表示手段が、浄化槽の外部に配置されるようになっていることを特徴とする浄化槽管理装置。
【請求項2】
上記ケーシングに形成された透孔の開口径が、1〜10mmに設定されている請求項1記載の浄化槽管理装置。
【請求項3】
上記取り付け手段が、浄化槽内におけるケーシングの配置を、高さ方向に調整できるようになっている請求項1または2記載の浄化槽管理装置。
【請求項4】
汚水に含まれる汚濁物質を汚泥として沈殿させる沈澱槽と、その上澄み液を放流前に消毒処理する消毒槽と、上記上澄み液の汚れを経時的に把握するための、下記の浄化槽管理装置(A)とを備えた浄化槽であって、
下記の浄化槽管理装置(A)のケーシングが、浄化槽内の、上記消毒槽手前の上澄み液貯留部に浸漬された状態で取り付けられているとともに、同じくその表示手段が、浄化槽の外部に配置されており、
上記ケーシング内の検知手段から出力される検知信号に基づいて、ケーシング内を通過する液の汚れ具合が、上記表示手段に表示されるようになっていることを特徴とする管理装置付き浄化槽。
(A)内外に液を通過させるための透孔が多数形成されたケーシングと、このケーシングを浄化槽内に取り付けるための取り付け手段と、上記ケーシング内に設けられる発光手段と、同じく上記ケーシング内に設けられ上記発光手段から投射される光を受光する受光手段と、この受光手段による受光量を検知して検知信号を出力する検知手段と、上記検知信号に基づいてケーシング内を通過する液の汚れ具合を表示する表示手段とを備えた浄化槽管理装置。
【請求項5】
上記浄化槽管理装置(A)のケーシングに形成された透孔の開口径が、1〜10mmに設定されている請求項4記載の管理装置付き浄化槽。
【請求項6】
上記浄化槽管理装置(A)の取り付け手段が、浄化槽内におけるケーシングの配置を、高さ方向に調整できるようになっており、上記受光手段における受光部が、上澄み液の液面から深さ100〜10mmの位置に位置決め固定されている請求項4または5記載の管理装置付き浄化槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽内を清浄に保つための浄化槽管理装置と、それを用いた管理装置付き浄化槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部では、公共下水道が普及し、広域下水処理場がつぎつぎと建設されているが、人口密度の低い地方では、戸建住宅や共同住宅ごとに、その建物から発生するし尿や汚水の量に応じた規模の浄化槽を設置して、個別に浄化処理を行った後、側溝や河川等に放流することが行われている。
【0003】
上記浄化槽の使用に際しては、浄化処理が不充分な汚水がそのまま放流されないようにすることが重要であり、その保守・点検や清掃を適正に行う管理義務が、浄化槽の所有者(実際には委託業者に任されることが多い)に課せられている。そして、その保守・点検を行うタイミングについては、浄化槽のタイプや処理対象人数に応じて法令で定められている。
【0004】
ところで、浄化槽は、通常地中に埋め込まれており、その上面開口が重たいマンホールで蓋されているため、浄化槽の所有者(素人)がわざわざその内側を覗くことはなく、よほど異臭が生じたりしない限りは、業者の定期点検に任せているのが実情である。
【0005】
このため、次回の定期点検までまだ間がある時期に、何らかの不具合が生じた場合、その不具合が見過ごされて汚水が汚れたまま放流されてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、そのようなことのないよう、複数の浄化槽と中央管理装置を電話回線で接続して、保守・点検が必要な所定の項目について常時遠隔管理する方法が提案されている(特許文献1を参照)。また、水処理槽の水質を常時水質検出センサで計測し、これを離れた場所に設置された集中監視装置に送信して継続的に監視することができるようにした水質管理方法が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−208193号公報
【特許文献2】特許第4873931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような、遠隔管理システムを組むには、初期投資が必要であり、また保守点検の作業者とは別に、常時監視するための監視員やシステム自体の保守作業等が必要となるため、浄化槽の保守管理費のコストアップにつながるという問題がある。このため、複数の戸建住宅を一括管理する場合や、共同住宅を対象とする場合には適していても、一軒ずつ独立した個別の住宅が点在する地域では、上記遠隔管理システムの普及が難しく、何らかのトラブルや浄化槽内の汚れによって、充分に浄化されていない汚水が放流されるおそれが、依然として存在する。
【0009】
したがって、一軒ずつ独立した個別の住宅において、何らかの原因で浄化槽内の浄化性能が低下して汚水が放流されるおそれがある場合、それを検知して浄化槽の所有者に直ちに報知するような、簡易的な検知装置を浄化槽に個別に取り付けることが望まれているが、そのようなものは未だ実用化されていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、浄化槽内の汚れ具合を常時検知し、その浄化性能が低下して汚水が放流されるおそれがある場合には、それを直ちに報知することのできる、簡易な浄化槽管理装置と、それを用いた管理装置付き浄化槽の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、沈澱槽において汚水に含まれる汚濁物質を汚泥として沈殿させ、その上澄み液を消毒槽において消毒処理して放流するよう設定された浄化槽に取り付けられ、上記上澄み液の汚れを経時的に把握するために用いられる浄化槽管理装置であって、内外に液を通過させるための透孔が多数形成されたケーシングと、このケーシングを取り付けるための取り付け手段と、上記ケーシング内に設けられる発光手段と、同じく上記ケーシング内に設けられ上記発光手段から投射される光を受光する受光手段と、この受光手段による受光量を検知して検知信号を出力する検知手段と、上記検知信号に基づいてケーシング内を通過する液の汚れ具合を表示する表示手段とを備え、上記ケーシングが、浄化槽の、消毒槽手前の上澄み液貯留部に浸漬された状態で取り付けられ、上記表示手段が、浄化槽の外部に配置されるようになっている浄化槽管理装置を第1の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記ケーシングに形成された透孔の開口径が、
1〜10mmに設定されている浄化槽管理装置を第2の要旨とし、上記取り付け手段が、浄化槽内におけるケーシングの配置を、高さ方向に調整できるようになっている浄化槽管理装置を第3の要旨とする。
【0013】
さらに、本発明は、汚水に含まれる汚濁物質を汚泥として沈殿させる沈澱槽と、その上澄み液を放流前に消毒処理する消毒槽と、上記上澄み液の汚れを経時的に把握するための、下記の浄化槽管理装置(A)とを備えた浄化槽であって、下記の浄化槽管理装置(A)のケーシングが、浄化槽内の、上記消毒槽手前の上澄み液貯留部に浸漬された状態で取り付けられているとともに、同じくその表示手段が、浄化槽の外部に配置されており、上記ケーシング内の検知手段から出力される検知信号に基づいて、ケーシング内を通過する液の汚れ具合が、上記表示手段に表示されるようになっている管理装置付き浄化槽を第4の要旨とする。
(A)内外に液を通過させるための透孔が多数形成されたケーシングと、このケーシングを浄化槽内に取り付けるための取り付け手段と、上記ケーシング内に設けられる発光手段と、同じく上記ケーシング内に設けられ上記発光手段から投射される光を受光する受光手段と、この受光手段による受光量を検知して検知信号を出力する検知手段と、上記検知信号に基づいてケーシング内を通過する液の汚れ具合を表示する表示手段とを備えた浄化槽管理装置。
【0014】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記浄化槽管理装置(A)のケーシングに形成された透孔の開口径が、1〜10mmに設定されている管理装置付き浄化槽を第5の要旨とし、上記浄化槽管理装置(A)の取り付け手段が、浄化槽内におけるケーシングの配置を、高さ方向に調整できるようになっており、上記受光手段における受光部が、上澄み液の液面から深さ100〜10mmの位置に位置決め固定されている管理装置付き浄化槽を第6の要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
すなわち、本発明の浄化槽管理装置は、委託業者による定期的な浄化槽の保守点検だけでは、突発的な故障や負荷の増大によって汚水の浄化が不充分となった場合に迅速に対応できないことから、その管理を、業者まかせにせず、浄化槽を所有する所有者もしくは使用者自身が、自分で浄化槽の状態を経時的に把握できるようにしたものである。この装置によれば、委託業者が浄化槽の状態を遠隔で検知するような大がかりなシステムを組む必要がなく、低コストで、個々の浄化槽の状態に応じて、その浄化槽における放流前の液の汚れ具合(具体的には、浄化槽内の、消毒槽手前の上澄み液貯留部における液の汚れ具合)を検知して浄化槽の所有者等に報知することができる。そして、放流前の液が突然、浄化不充分の状態になったことが報知された場合定期点検を待つことなく、即座に業者に連絡して対処することができ、連絡を受けた業者は、即座に浄化槽を点検して、浄化槽内の清掃や不具合個所の修理等、必要な手当てを講じることができる。したがって、浄化の不充分な汚水が、そのまま浄化槽から放流されるようなことがなく、河川等の環境を清浄に保つことができる。
【0016】
また、本発明のなかでも、特に、上記ケーシングに形成された透孔の開口径が、1〜10mmに設定されているものは、装置を保持するための一定の強度を備え、しかも、ケーシング内に流入した液(浄化の過程にある汚水)が、ケーシング内で滞ることなくスムーズに移動することができ、好適である。
【0017】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記取り付け手段が、浄化槽内におけるケーシングの配置を、高さ方向に調整できるようになっているものは、浄化槽のタイプや、浄化槽ごとに異なる液面の高さに応じて、装置の検知部を最も適切な位置に調整して取り付けることができ、好適である。
【0018】
そして、本発明の管理装置付き浄化槽によれば、すでに述べたように、その浄化槽の、放流前の液の汚れ具合(具体的には、浄化槽内の、消毒槽手前の上澄み液貯留部における液の汚れ具合)を表示して、浄化槽の所有者等に報知することができるため、定期点検を待つことなく、突然の浄化槽の汚れがあれば、即座に業者に連絡して対処することができる。このため、周囲の環境汚染を未然に防止することができる。そして、その管理のための負担が、経済的にも時間的にも、ごく小さくて済むという利点を有する。
【0019】
また、上記管理装置付き浄化槽のなかでも、特に、その浄化槽管理装置(A)の取り付け手段が、浄化槽内におけるケーシングの配置を、高さ方向に調整できるようになっており、上記受光手段における受光部が、上澄み液の液面から深さ100〜10mmの位置に位置決め固定されているものは、液面の多少の変化に影響されることなく、信頼性の高い検知動作を維持することができ、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態である浄化槽管理装置の外観斜視図である。
図2】(a)は上記浄化槽管理装置の正面図、(b)はそのA−A′断面を模式的に示す説明図である。
図3】上記実施の形態に用いられる表示手段の説明図である。
図4】上記実施の形態における内部回路の構成を示す模式的な説明図である。
図5】上記実施の形態における動作のフローチャートである。
図6】上記実施の形態である浄化槽管理装置を浄化槽に取り付けた状態を示す模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態である浄化槽管理装置(以下、単に「管理装置」という)を斜め後ろ方向からみた外観斜視図であり、図2(a)は、その正面図、図2(b)は、そのA−A′断面を模式的に示す説明図である。これらの図において、1は、全体の輪郭形状が直方体のケーシングで、底面部2と、天面部3と、背面部4と、左右の側面部5、6とを備え、ケーシング1の正面部7は、上下の一部7a、7bを残して大きな開口8になっている〔図2(a)を参照〕。そして、上記左右の側面部5、6には、ケーシング1の内外に液が通過して流動するように、5mm×5mmの正方形の透孔9が、縦横に多数並んだ状態で形成されている。
【0023】
上記ケーシング1の内側は、図2(a)に示すように、正面の開口8より上側の部分と下側の部分とが、透明アクリル板からなる仕切り板10、11で仕切られており、その仕切られた上下の内側空間12、13は、それぞれ液体が入らないようパッキン等(図示せず)で密封されている。
【0024】
上記ケーシング1の、下側の内側空間13には、図2(b)に示すように、上向きに光を投射するLED(例えば、LB T673−L2N1−35:OSRAM社製)14が設けられており、通電のためのコード14aが、ケーシング1内の、向かって右奥に設けられたガイド筒15内を通って、ケーシング1の上面から外側まで延びている。
【0025】
また、上記ケーシング1の、上側の内側空間12には、上記LED14からの光を受光するための受光センサ16(例えば、SFH320−3 OSRAM社製)が設けられており、上下の透明な仕切り板10、11の間に充満する液(汚水)が浄化不充分になると汚水の透明度が低下することを利用して、その汚れ度を、受光量の変化として検知するようになっている。なお、17は、上記受光センサ16を取り付けた基板であり、図示していないが、受光センサ16を駆動し、その受光量を検知して検知信号として出力するためのCPUやメモリ等が搭載されている。そして、上記受光センサ16やCPU等に通電するための電気配線18は、ケーシング1の外側に延びるコード14aと合流するようになっている(図1を参照)。
【0026】
上記コード14aの先端には、図3に示すように、モジュラージャック型のコネクタ20が取り付けられており、浄化槽の外側に設置される警報表示手段30の差し込み口31に、着脱自在に接続されるようになっている。
【0027】
上記警報表示手段30には、この装置を外部電源(図示せず)に接続するための電源コード32と、電源スイッチ33と、警報ランプ34とが設けられている。そして、上記ケーシング1(図1参照)から延びるコード14aを接続し、上記電源スイッチ33を「オン」にすると、ケーシング1内のLED14が点灯し、受光センサ16に到達するその光量が検知されるようになっている。また、上記電源スイッチ33には、電源ランプ33aが内蔵されており、電源スイッチ33を「オン」にすると、内側の電源ランプ33aが黄緑色に点灯して、それが透明な電源スイッチ33を透かして見えるようになっている。そして、ケーシング1内で受光センサ16によって検知される光量が予め設定された値より低下すると、それは即ち、ケーシング1内の液が汚れて浄化槽内の清掃を要する状態に近くなっていることから、上記警報ランプ34が赤色に点灯するようになっている。
【0028】
したがって、上記警報ランプ34が点灯しているのを認めた浄化槽所有者(使用者)は、即座に、この浄化槽の保守管理業者に連絡をとり、浄化槽の点検および清掃を行わせるようにする。これによって、浄化が不充分な汚水がそのまま放流されるような事態の発生を回避することができ、周囲を、清浄で衛生的な環境に保つことができる。
【0029】
なお、上記受光センサ16によって浄化槽内の清掃の要否を報知するために設けられる回路構成の一例を、図4に示す。すなわち、この例では、全体の動作制御が、制御回路40によって行われるようになっており、この制御回路40に、外部電源41、LED14、受光センサ16、警報ランプ34、電源ランプ33aと、これらに対し動作指示を行う操作部42とが接続されている。そして、この浄化槽管理装置の動作は、例えば図5に示すようなフローチャートに従うようになっている(その説明は省略)。
【0030】
一方、上記ケーシング1(図1に戻る)の背面には、このケーシング1を浄化槽内に取り付けるための取り付け手段50として、上部が鉤形に折り曲げられたブラケット51と、その取り付け高さを調整するための長穴52と、調整ねじ53とが設けられている。そして、ケーシング1の内側には、上記調整ねじ53を固定するためのナット54〔図2(b)を参照〕が設けられており、上記調整ねじ53を緩めてブラケット51をケーシング1に対し適宜の高さとなるよう調整した後、調整ねじ53によって、その高さを固定することができる。なお、上記調整ねじ53の下に設けられた突起55は、上記ブラケット51を上下動させる際のガイドである。
【0031】
このようにして、取り付け高さが調整されたブラケット51の鉤形部を、浄化槽の、例えば消毒槽の手前の仕切り壁に引っ掛けて、固定ねじ56をねじ込むことにより、ケーシング1が液(放流前の浄化された汚水)に浸漬した状態で、この装置を浄化槽内に取り付けることができる。
【0032】
上記浄化槽管理装置を、浄化槽に取り付けた一例を、図6に示す。この浄化槽60は、処理人数が50人までの浄化槽で、第1沈澱槽(嫌気槽)61と、第2沈澱槽(嫌気槽)62と、曝気槽(好気槽)63と、最終沈澱槽(嫌気槽)64と、消毒槽65とを備えており、向かって左側の流入口66から流入する汚水を、矢印のように移動させながら浄化し、最終的に、消毒槽65で消毒した後、放流口67から放流するようになっている。68は、消毒剤を経時的に供給するよう構成された消毒筒、69は曝気槽63に空気を送るためのブロワである。
【0033】
図1に示す浄化槽管理装置は、例えば、上記最終沈澱槽64と消毒槽65とを仕切る仕切り壁70の、最終沈澱槽64側の面の上端部に、上記取り付け手段50のブラケット51を引っ掛けて固定することにより取り付けられる。この状態で、ケーシング1は液中に完全に浸漬され、ケーシング1内の発光・受光部分が、液中の適度な深さに位置するよう配置されている。また、ケーシング1から延びるコード14aは、ブロワ69の送風配管69a(または新設配管)を経由して浄化槽60の外に引き出され、屋外の、浄化槽所有者(使用者)の目に止まりやすい場所に設置された警報表示手段30と接続されている。そして、上記警報表示手段30の電源コード32は、別途設けられる外部電源(図示せず)に接続されている。
【0034】
したがって、この浄化槽60によれば、その最終沈澱槽64の上澄み液が貯留する部分に、浄化槽管理装置が取り付けられており、そのケーシング1内においてLED14から投射される光を受光センサ16が検知し、その光量の変化から、常時、その最終沈澱槽64の上澄み液がきちんと浄化されているか、すなわち、放流できる水質になっているか、を監視するようになっている。そして、予め設定された、清掃を要する汚れ具合に近づいた所定値に受光量が低下した時点で、警報表示手段30の警報ランプ34が赤く点灯するため、これを見た浄化槽所有者は、直ちに委託業者に保守・点検を依頼し、必要に応じて浄化槽の清掃や付属品の補修を行わせることによって、浄化槽の問題を解決する。これにより、浄化処理が不充分な汚水がそのまま近隣の河川等に放流されることを未然に防止することができ、周囲の環境を清浄に保つことができる。
【0035】
そして、上記浄化槽60に取り付ける浄化槽管理装置は、全体の構成も警報の報知システムも単純で、価格も安価であるため、これを利用する浄化槽所有者の経済的負担と監視に要する時間的な負担が小さく、個々の住宅に普及しやすいという利点を有する。
【0036】
なお、上記の例では、ケーシング1の輪郭形状を直方体としたが、ケーシング1内の一方にLED14等の発光手段を設け、所定距離だけ離して、受光センサ16等の受光手段を設け、これらを、基板17等とともに液密状態で保持して受光量の変化が検知できる構成になっていれば、その配置や全体の形状は、どのようになっていても差し支えない。また、その材質は、耐水性とある程度の強度があれば、どのような材質であってもよく、例えば、ステンレス、アルミニウム、ポリプロピレン等を好適に用いることができる。
【0037】
そして、上記の例では、ケーシング1の正面に大きく開口8を設けたが、このような開口8を設けず、正面部も、左右の側面部5、6と同様、透孔9を有する板材で構成してもよい。このように、ケーシング1の壁面は、その内外を液がスムーズに出入りするように透孔9を設けることが好ましく、透孔9の開口形状は、上記の例のように矩形であっても円形であってもよい。また、パンチングメタルやステンレスネットを利用してもよいが、繰り返し使用すると透孔9の開口縁に水垢等の汚れが付着するため、洗浄の手間等を考慮すると、できるだけ単純で洗浄しやすい形状が好ましく、開口形状が円形や正方形である透孔9が好ましい。
【0038】
上記透孔9の開口径(開口が円形以外の場合は最大開口幅をいう)は、例えば、1〜10mm、なかでも、3〜5mmに設定することが好適である。すなわち、透孔9の開口径が上記の範囲よりも小さいと、ケーシング1内に液が滞って流れにくくなって、順次浄化処理されて流れてくる汚水の汚れ具合を正確に検知できなくなるおそれがあり、逆に、透孔9の開口径が上記の範囲よりも大きいと、管理装置を取り扱う上で、強度的に弱くなるおそれがあるため、好ましくない。
【0039】
また、上記の例では、浄化槽60内の液の汚れ具合を表示する表示手段として、赤色の警報ランプ34を用いたが、表示手段の構成は、これに限るものではなく、例えば、検知される浄化槽60内の汚れ具合(受光手段による受光量)から、汚れの程度を三段階で評価し、「問題なし」の場合、緑色のランプが点灯し、「要注意」の場合、黄色のランプが点灯し、「緊急要請」の場合、赤色のランプが点灯して、ランプの色に応じて浄化槽内の汚れ具合が一目でわかるようにしてもよい。あるいは、ランプ表示に代えて、ブザーやアナウンスの音声によって、警報を知らせるようにしてもよい。そして、電源コード32を電源まで延ばすのではなく、警報表示手段30に電池ユニットを内蔵させて、電池によって電源を確保するようにしてもよい。また、受光センサ16による受光量の検知は、必ずしも常時継続して行う必要はなく、例えば、一日一回というように、短い間隔で周期的に、警報表示手段30の電源スイッチ33を「オン」にして、そのときの警報ランプ34の状態を見るようにしても差し支えない。
【0040】
さらに、上記の例では、鉤形のブラケット51に長穴52を設けて、調整ねじ53を用いてブラケット51のケーシング1への取り付け高さを変えることによって、装置全体の取り付け高さを調整できるようにしたが、高さの調整手段は、この構成に限るものではない。例えば、ケーシング1の一面にスライダユニットを取り付けて、所定の長さだけケーシング1を下方に延ばして位置決めできるようにしてもよい。また、より簡易な構成として、浄化槽60の上面開口からロープやチェーンで所定深さまでケーシング1を下ろし、その位置でつり下げ固定するようにしてもよい。
【0041】
このように、ケーシング1の、浄化槽60内における取り付け高さを調整可能にしておけば、どのようなタイプの浄化槽に取り付ける場合であっても、ケーシング1内における受光量を検知するのに最も適した位置に、ケーシング1を配置することができ、汎用性が高い。ちなみに、受光量の変化を安定した状態で検知するには、ケーシング1内における受光部を、液面から深さ100〜10mm、なかでも、70〜30mm程度の深さに位置決め固定することが好適である。上記範囲よりも浅すぎると、液面の変化によって受光量が影響を受けるおそれがあり、逆に、上記範囲よりも深すぎると、浄化槽60の下方に沈澱した沈澱物の影響を受けるおそれがあるからである。
【0042】
なお、特定の浄化槽の専用付属品として、本発明の浄化槽管理装置を用いる場合、上記のような高さ調整手段は、必ずしも必要ではない。
【0043】
そして、本発明は、図6に示すような浄化槽60に限らず、汚水に含まれる汚濁物質を汚泥として沈殿させ、その上澄み液を消毒処理して放流するよう設定された浄化槽であれば、どのようなタイプの浄化槽に対しても、適用することができる。ただし、本発明の浄化槽管理装置の取り付け位置は、どの浄化槽においても、その放流口に近い部分に設定される。すなわち、最終的に消毒剤を投入する消毒槽にこれを設置すると、電気系統に好ましくない影響がでるおそれがあるため、上記消毒槽の手前の、最終沈澱槽もしくはそれに相当する槽の上澄み液貯留部に、そのケーシング1を浸漬した状態で取り付ける。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、浄化槽内の汚れ具合を常時検知し、その浄化性能が低下して汚水が放流されるおそれがある場合には、それを直ちに報知することのできる、簡易な浄化槽管理装置と、それを用いた管理装置付き浄化槽に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ケーシング
9 透孔
14 LED
16 受光センサ
50 取り付け手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6