【実施例1】
【0024】
以下、
図1及び
図2(a)(b)を参照して、本発明に係る重量物支持ケーブルの張力検出装置の好適な実施例1について詳細に説明する。
本実施例1は、建造物の重量物として、斜張橋において橋桁を支持する重量物支持ケーブルの張力変動を検出する装置に適用したものである。後述するように、本発明は、斜張橋の例に限られるものではない。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
図6に示すように、斜張橋1は、河川に立設された主塔2と、車両などが通行する橋桁3と、主塔2と橋桁3とに連結されて橋桁3を支持する複数本の重量物支持ケーブル4とで構成されている。
【0025】
前記主塔2は、橋桁3を挟み込むように幅方向両側に2面吊りや1面吊り等で配置されている例を示している。
【0026】
前記複数本の重量物支持ケーブル4は、所定間隔で上下の連結部5と6間に張設されている。なお、斜張橋1は、主塔2、橋桁3及び複数本の重量物支持ケーブル4を1組とし、斜張橋1を架設する河川の幅に応じて、これらの組が複数連結される。
【0027】
図7は、主塔2と重量物支持ケーブル4との連結部5を示した断面図である。主塔2には、重量物支持ケーブル4の張設方向に向いた貫通孔10が形成され、この貫通孔10には、重量物支持ケーブル4を固定するためのアンカーパイプ11が埋設されている。
【0028】
前記アンカーパイプ11は、略円筒状に形成されており、重量物支持ケーブル4が挿通可能となっている。このアンカーパイプ11における橋桁3の反対側の端部11aは、外径が橋桁3側から橋桁3の反対側に向けて拡径して、肉厚となって、アンカーパイプ11は、主塔2から橋桁3側に抜け落ちるのが防止され、また、橋桁3の反対側の端面11bは、橋桁3側からの荷重を大きな面積で受け止めることが可能となっている。
【0029】
前記主塔2に連結される重量物支持ケーブル4は、その端部が複数本のピアノ線が亜鉛などの金属で固められて拡径化しており、アンカーパイプ11に貫通される略円筒状のソケット12が固定されている。
【0030】
前記アンカーパイプ11の内径は、ソケット12が挿通するために、ソケット12の外径よりもやや大きくなっている。ソケット12の内径は、拡径化された重量物支持ケーブル4の端部を係止するために、橋桁3の反対側から橋桁3側に向けて狭まるテーパ状に形成されている。このソケット12は、下側に橋桁3側からの荷重を受け止める段部12aが形成されている。
【0031】
前記アンカーパイプ11と、このアンカーパイプ11を貫通したソケット12との間に、ベアリングプレート13と、本発明による油圧ロードセル14と、アタッチメント15とが嵌め込まれる。
前記ベアリングプレート13は、中央部に重量物支持ケーブル4が貫通される貫通孔が形成されたセンターホール型の円環状に形成されている。このベアリングプレート13は、円周方向に沿って2つ割り、3つ割りなど、複数割になっている。このため、アンカーパイプ11からソケット12をケーブル引き込み用ジャッキなどで引っ張り出した後に、重量物支持ケーブル4を跨いでアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込むことが可能となっている。また、このベアリングプレート13は、外径がアンカーパイプ11の内径よりも大きくなっており、内径がソケット12の外形よりも小さくなっている。このため、アンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込まれたベアリングプレート13に、アンカーパイプ11の端面11b及びソケット12の段部12aが直接的又は間接的に係止され、ソケット12がアンカーパイプ11から引き出された状態を維持することが可能となっている。
【0032】
前記本発明の油圧ロードセル14は、ベアリングプレート13とアタッチメント15との間に配置されて、アンカーパイプ11とソケット12との間の圧力を測定する油圧式圧力測定装置である。
【0033】
図1は、油圧ロードセル14の一部切り欠いた平面図、
図2(a)は、
図1に示すA−A線断面図である。
図1及び
図2(a)において、油圧ロードセル14は、互いに独立して機能する略同一の中心角(120度)の円弧状の3組の第1油圧ロードセル14aと第2油圧ロードセル14bと第3油圧ロードセル14cを同一円周上に配置し、連結部材16で1つの円環状に連結して構成することにより、中央部に重量物支持ケーブル4が貫通される貫通孔28が形成されたセンターホール型の円環状に形成されている。このため、油圧ロードセル14は、ベアリングプレート13と同様に、アンカーパイプ11からソケット12を引き出した後に、重量物支持ケーブル4を跨いでアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込むことが可能となっている。
【0034】
このように3つ割りされた油圧ロードセル14aと,14bと,14cは、ベアリングプレート13に当接される油圧ロードセル本体17と、アタッチメント15に当接される上部プレート18とを備えており、油圧ロードセル本体17と上部プレート18とは、油圧ロードセル14の縦方向(
図2の上下方向)に上下動自在に形成されている。
【0035】
第1油圧ロードセル14aと、第2油圧ロードセル14bと、第3油圧ロードセル14cで構成された油圧ロードセル本体17には、上部プレート18に当接されるピストン20が嵌め込まれた複数個、例えば、4個ずつの油圧シリンダ21が同一円周上に設けられている。
【0036】
前記油圧シリンダ21には、第1油圧ロードセル14aと、第2油圧ロードセル14bと、第3油圧ロードセル14cとが独立して作動油が充填されて上部プレート18側に開口を有する油圧シリンダ室21aが形成されており、油圧シリンダ室21aには、ピストン20が油圧ロードセル14の縦方向に摺動可能に嵌め込まれている。このため、各油圧ロードセル14a,14b,14cは、各上部プレート18から受ける圧力を充填された作動油の油圧でそれぞれ独立して受け止めるように構成されている。
【0037】
更に各油圧ロードセル14a,14b,14cの油圧ロードセル本体17には、各油圧シリンダ21の油圧シリンダ室21aを互いに独立して連通して各油圧シリンダ室21aに充填される作動油の圧力を各組毎に平均化(イコライズ)する連通路23が設けられている。また、各油圧ロードセル14a,14b,14c毎に連通路23に連通されてジャッキの原理により油圧シリンダ室21aに充填される作動油の油圧を調整する油圧注入口(逆止弁内蔵)24と、連通路23に連通されて作動油の油圧を電気信号に変換する圧力変換器25とがそれぞれ設けられている。
【0038】
各油圧ロードセル14aと,14bと,14cは、互いに独立しているので、1つの油圧ロードセル14aについて説明するが、他の油圧ロードセル14bと14cについても同様である。
前記油圧ロードセル14aは、手動ポンプなどの圧力注油装置27から油圧注入口(逆止弁内蔵)24を経て油圧を調整することにより、ピストン20が上部プレート18に対向する油圧ロードセル本体17の上面17aから所定の高さだけ突出しており、油圧ロードセル本体17の上面17aと上部プレート18との間にピストン20を介した空間Sが形成されている。このとき、油圧ロードセル本体17は、連通路23により各油圧シリンダ室21aに充填された作動油が相互に出入り可能となるため、各油圧シリンダ21に充填される作動油の圧力が平均化された状態で、ピストン20が油圧ロードセル14の縦方向に摺動可能となる。このため、各ピストン20が摺動することにより、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が各組毎に傾動することが可能となる。また、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が傾動しても、各ピストン20が摺動することにより、全てのピストン20が上部プレート18に当接された状態が維持される。
前記ピストン20と上部プレート18は、ねじ29で連結され、上部プレート18は、ねじ29がねじ孔に遊嵌することにより、傾きの動きが可能である。また、前記角ピストン20と上部プレート18との間に荷重がかかり、反力が作用すると、上部プレート18は、深さ方向に0.5mm程度塑性変形をして安定する。
【0039】
なお、油圧ロードセル本体17の上面17aと上部プレート18との間の空間S、又は、油圧ロードセル本体17の上面17aよりも上部プレート18側におけるピストン20のストローク長は、予想される重量物支持ケーブル4の傾動角度に応じて、上部プレート18が油圧ロードセル本体17の上面17aに当接することなく、かつ、ピストン20が上部プレート18から離間しない範囲に調整される。例えば、油圧ロードセルの直径が600mmである場合は、傾斜角を考慮すると空間Sの幅を5mm以上とすることが好ましい。
【0040】
また、各ピストン20は、上部プレート18に当接する先端面20aが湾曲している。このため、上部プレート18とピストン20とが点接触又は極く小さい領域での面接触となるため、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が傾いたとしても、上部プレート18から受ける圧力がピストン20の中心方向に向けられる。これにより、上部プレート18から受ける圧力が発散するのを抑制することができる。
【0041】
図7に示すように、アタッチメント15は、油圧ロードセル14とソケット12との間に配置されて、外径がソケット12側からベアリングプレート13側に向けて拡径するテーパ状に形成されている。このアタッチメント15は、台形断面を有する円環状に形成されており、内径がベアリングプレート13の内径よりも小さく、ソケット12に当接する一方端面15aの外径がソケット12の外径と略同一寸法で、ベアリングプレート13に当接する他方端面15bの外径がベアリングプレート13の外径と略同一寸法に形成されている。しかし、この例に限られず、上下面が同一径でもよい。このアタッチメント15も、ベアリングプレート13及び油圧ロードセル14と同様に、2つ割り又は3つ割りにされている。
【0042】
前記重量物支持ケーブル4への張力導入は、橋桁3側から図示しないセンターホールジャッキを用いて行う。
架設完了後、重量物支持ケーブル4等のなじみがあるため、2〜3日後に注油を行う。
(1) 注油手順(第1例)
3組の油圧ロードセル14aと14bと14cに同時に注油して圧力をかけ、ストロークが現れた組が出たら、ストロークが現れない組に注油して圧力を上げ、全ての組に所定のストロークが出るようにする方法とする。
(2)注油手順(第2例)
3分割された油圧ロードセル14aと14bと14cに1組ずつ各ストロークを0.5mm程度ずつ順次増大させる。注油時は、圧力変換器25のデータを監視しながら行う。油圧ロードセル14aと14bと14cは、3分割されているので、順次注油を行っても各油圧ロードセル14aと14bと14cのデータは、ある1組に集中することなく計測が行える。
注油を各組毎に順次繰り返し行い、各油圧ロードセル14aと14bと14cのストロークが3mm程度になるまで行う。注油イコライズは、各ピストン20に均等な荷重となろうとするため、上部プレート18が傾いても所期のストロークに収まろうとする。偏心等で全てのロードセル14aと14bs14cのストロークが均等にならない場合は、圧力変換器25のデータを確認し、各ロードセルのストロークを2〜3mm間で調整する。このとき、圧力変換器25のデータも監視し、各ロードセルも監視し、各ロードセル本体の能力を超えないものとする。
(3)注油後(2〜3日後)、ストローク、油漏れ等の点検を行う。
点検後、油漏れ、ストロークの変化がなければ終了。
以上の手順ですべての油圧ロードセル14aと14bと14cの設置を行い、張力計測(モニタリング)をリアルタイムで行うことによって斜長橋の健全度を監視できる。
【0043】
以上の操作により、重量物支持ケーブル4が主塔2に連結され、橋桁3を支持する重量物支持ケーブル4の張力がアンカーパイプ11に対するソケット12の圧力となって3組の油圧ロードセル14aと14bと14cに現れる。そこで、各組の油圧ロードセル14aと14bと14cの圧力変換器25により作動油の圧力を計測して、重量物支持ケーブル4の張力変動を求め、一括表示して監視する。なお、圧力変換器25が計測した作動油の圧力から重量物支持ケーブル4の張力への換算は、事前に実験などにより求められる所定の換算式により求めることができる。
【0044】
前記油圧ロードセル14は、第1図に示すように、3組の油圧ロードセル14aと14bと14cが略同一の中心角(120度)で、かつ、同一数、例えば、4個の油圧シリンダ21を配置し、等しい機能を有するもので構成した。
ここで、各油圧ロードセル14aと14bと14cの仮想支持点aとbとcは、次のようにして求められる。
第1油圧ロードセル14aにおいて、4個の油圧シリンダ21のうち、両端の第1と第4の油圧シリンダ21の仮想支持点は、これらの中心点を結ぶ線上の中点a1であり、また、中央の第2と第3の油圧シリンダ21の仮想支持点は、これらの中心点を結ぶ線上の中点a2であるから、これらa1とa2の中間点が第1油圧ロードセル14aの仮想支持点aとなる。
同様にして、第2油圧ロードセル14bの仮想支持点bが得られ、第3油圧ロードセル14cの仮想支持点cが得られる。
これら3組の仮想支持点aとbとcを結ぶ正3角形の内部に支持ケーブル14の中心Oがあれば、3点支持のため、支持高さが変化しても反力がほとんど変化せず安定する。
【0045】
図3(a)は、本発明の他の例を示すもので、重量物支持ケーブル4が非円形などで、中心OがOaのように偏心したものについて使用するときには、偏心した側の油圧ロードセル14aは、中心角を大きくして4個の油圧シリンダ21を配置して大きな容量とし、偏心した側と反対側の油圧ロードセル14bと14cは、3個ずつ油圧シリンダ21を配置して小さな容量とすることにより、3点の仮想支持点を結ぶ3角形は、やや縦長になり、縦方向の偏心により安定して対応できる。
また、
図3(b)に示すように、重量物支持ケーブル4が非円形などで、中心OがObのように偏心したものについて使用するときには、偏心した側と反対側の油圧ロードセル14aは、中心角を小さくして2個の油圧シリンダ21を配置して小さな容量とし、偏心した側の油圧ロードセル14bと14cは、4個ずつ油圧シリンダ21を配置して大きな容量とすることにより、3点の仮想支持点を結ぶ3角形は、やや横長になり、横方向の偏心により安定して対応できる。
このような構成とすることで、偏心した荷重の方向に応じていずれかを採用することができる。
【0046】
前記実施例1では、3組の油圧ロードセル14aと14bと14cを同一円周上に配置してなる油圧ロードセル14を構成した例を示したが、これに限られるものではなく、実施例2では、
図4に示すように、4組の油圧ロードセル14aと14bと14cと14dを同一円周上に配置してなる油圧ロードセル14を構成することができる。ただし、例えば、片側の油圧ロードセル14aに大きな荷重がかかると、対向する油圧ロードセル14cの荷重が極端に低くなる恐れがあるので、できるだけ全周囲に均等に荷重がかかるよう場合に限定される。
【0047】
また、
図5に示すように、5組の油圧ロードセル14aと14bと14cと14dと14eを同一円周上に配置してなる油圧ロードセル14を構成することができる。ただし、この場合も、片側の油圧ロードセル14aに大きな荷重がかかると、対向する油圧ロードセル14cや14dの荷重が極端に低くなる恐れがあるので、できるだけ全周囲に均等に荷重がかかるよう場合に限定される。ロードセルの組数は、6組以上とすることもできる。
【0048】
前記実施例では、重量物支持ケーブル4における油圧ロードセル14の取り付け位置は、斜長橋1の主塔側2の連結部5に設けた例を示したが、これに限るものではなく、吊り橋1の橋桁3側の連結部6に設けることもできる。さらに、橋梁以外の建造物の重量構造物等を主塔等で吊り下げる例であっても本発明は利用できる。