特許第6391161号(P6391161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391161
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】重量物支持ケーブルの張力検出装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 11/04 20060101AFI20180910BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   E01D11/04
   E01D22/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-265792(P2014-265792)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125232(P2016-125232A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】宇野 名右衛門
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨山 剛
(72)【発明者】
【氏名】マイナ ヴィクタ
(72)【発明者】
【氏名】得地 智信
(72)【発明者】
【氏名】滝 直也
(72)【発明者】
【氏名】細渕 誠二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】中村 司
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−117215(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3055078(JP,U)
【文献】 特開2002−257654(JP,A)
【文献】 特開2011−196845(JP,A)
【文献】 特開2006−337058(JP,A)
【文献】 特開2008−070205(JP,A)
【文献】 実開昭63−031109(JP,U)
【文献】 特開2002−061115(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0277252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
G01L 1/00−1/26
G01L 5/00−5/28
G01L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物支持ケーブルで重量物を吊り下げ支持し、この重量物支持ケーブルの張力変動を油圧ロードセルで検出する装置であって、前記油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の少なくとも3組を同一円周上に配置して1つの円環状に連結し、これら少なくとも3組のそれぞれの油圧ロードセルは、独立して作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、前記各組毎の油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、前記各組毎のピストンに当接して前記重量物支持ケーブルの張力変動を受ける上部プレートと、前記連通路により平均化された前記それぞれの油圧ロードセル毎の作動油の圧力を検出する圧力変換部とを備え、前記各油圧ロードセルは、前記各上部プレートから受ける圧力を充填された作動油の油圧でそれぞれ独立して受け止めるように構成されていることを特徴とする重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項2】
油圧ロードセルは、互いに独立して機能する略同一中心角度の円弧状の3組を同一円周上に配置したことを特徴とする請求項1に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項3】
油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の3組を同一円周上に配置し、このうち、1組は、大容量で、他の2組は、これより小さな容量としたたことをことを特徴とする請求項1に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項4】
油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の3組を同一円周上に配置し、このうち、1組は、小容量で、他の2組は、これより大きな容量としたたことをことを特徴とする請求項1に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項5】
油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の4組以上を同一円周上に配置したことを特徴とする請求項1に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【請求項6】
油圧ロードセルと重量物支持ケーブルの間に軟質材を介在することで、重量物支持ケーブルの偏心を極力抑えるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の重量物支持ケーブルの張力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁などの重量物を多数本の支持ケーブルで吊り下げたときに、これらの支持ケーブルに作用する大張力を永続的に計測し、一括表示して監視するための重量物支持ケーブルの張力検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、従来、斜張橋1は、主塔2に連結された多数本の支持ケーブル4により橋桁(重量物)3を保持している。このような斜張橋1では、橋桁3や主塔2が大型車両などの通行により活荷重変形をする。
【0003】
通常、ケーブル張力の測定は、ケーブルを強制的に加振する等の方法で加速度計により固有振動数を求め、ケーブルの長さを単位長さ重量から計算により張力を求めていた。
小形のケーブル張力を測定する一体型の電気式歪線計測式のロードセルは、存在するが、大型のものはない。電気式歪線計測器では、上下の支圧版の間にコラム(柱)を立て、この歪を測定することにより、荷重を測定しているため構造上大型にできない。分割した場合、相互を正確に同じにすることは、困難である。
【0004】
そこで、本出願人は、斜張橋1の架設時に、油圧のロードセル14を用いて支持ケーブル4の張力を常時計測し、監視する技術を提案した(特許文献1)。
前記油圧ロードセル14は、図7に示すように、ベアリングプレート13とアタッチメント15との間に配置されて、アンカーパイプ11とソケット12との間の圧力を測定する油圧式圧力測定装置である。
この油圧ロードセル14は、図8に示すように、半円弧状に2つ割りされて第1分割体14aと第2分割体14bとを構成し、連結部材16aと16bで連結し、中央部に重量物支持ケーブル4が貫通される貫通孔26が形成されたセンターホール型の円環状に形成されている。
【0005】
このように2つ割りされた油圧ロードセル14は、図9に示すように、それぞれ油圧ロードセル本体17と、上部プレート18とを備えており、各油圧ロードセル本体17には、複数個、例えば、各6個の油圧シリンダ21が円周方向に沿って等間隔に設けられている。これらの油圧シリンダ室21aに、それぞれピストン20が嵌合している。このようにして、第1分割体14aと第2分割体14bが構成されている。
【0006】
前記第1分割体14aと第2分割体14bは、各油圧シリンダ21の油圧シリンダ室21aを連通する連通路23と、前記第1分割体14aと第2分割体14bを連通する連通路23cで連通されて全周囲の作動油の圧力を平均化(イコライズ)する。この連通路23又は連通路23cには、油圧シリンダ室21aに充填された作動油の油圧を調整する油圧注入口(逆止弁内蔵)24と作動油の油圧を電気信号に変換する圧力変換器25が設けられる。
【0007】
そして、ピストン20が油圧ロードセル14の縦方向に摺動可能となることにより、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が図9(a)のように、水平に上下動し、また、図9(b)のように、傾いて上下動することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−117215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人は、従来の電気式歪計測器の問題点を解決するために、前述したように、図8に示すような油圧ロードセル14を提案したが、やや問題があることが判明した。それは、図9に示すように、油圧ロードセル14のすべての油圧シリンダ室21aが連通路23で連通しているために、重量物支持ケーブル4が偏心(油圧ロードセル14の中心点からのずれ)が発生したり、架台部に誤差があり、ケーブルと架台面が直角でない場合は、アタッチメント15が油圧ロードセル14に均一に当接せず片当りが発生したりしたようなときに、油圧ロードセル14の片側に偏荷重がかかり、図9(b)に示すように、最大荷重がかかるピストン20が油圧シリンダ室21aの底面に密着して、ストロークが0になり、この部分では、油圧ロードセル本体17で荷重を受けて荷重を測定ができなくなるという問題があった。ストローク0を避けるために油圧シリンダ21を深くしても最大荷重と最小荷重の差が大きすぎると、依然としてストロークが0になる恐れがあるだけでなく、油圧ロードセル14の高さが高くなりすぎて小型化に難点がある。さらに、全ての油圧シリンダ21が連通路23で連通しているため、重量物支持ケーブル4の設置時に、油圧ロードセル14のセンターからわずかでもずれると、油圧ロードセル14全体に均等な荷重をかけるのが困難になる等の問題があった。
【0010】
本発明は、斜張橋等の重量物支持ケーブルの大張力を永続的に計測して、監視することにより、斜張橋等の長期間の維持管理を可能とする装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、油圧ロードセルを互いに独立して機能するように3分割して荷重を受けることにより、全周囲で均等に荷重を受けやすく、片当りも避けられることに思い至ってなされたもので、本発明に係る重量物支持ケーブルの張力検出装置は、重量物支持ケーブルで重量物を吊り下げ支持し、この重量物支持ケーブルの張力変動を油圧ロードセルで検出する装置であって、前記油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の少なくとも3組を同一円周上に配置し、それぞれの油圧ロードセルは、作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、前記各油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、前記連通路により平均化された作動油の圧力を検出する圧力検出部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、互いに独立した少なくとも3組の油圧ロードセルにより張力を計測することにより、両端のストローク差が小さくなって、全ての油圧シリンダが所定のストロークを維持する。このため、小型の油圧シリンダを用いながら、重量物支持ケーブルに作用する13MNを超えるような高い張力を計測することができる。さらに、この油圧ロードセルは、複数の油圧シリンダを連通路により連通することで、各組毎に、複数の油圧シリンダに充填された作動油が出入りして各油圧シリンダのピストンが摺動するため、各油圧シリンダによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を平均化して受けることができる。しかも、アンカーパイプに対してソケットが傾いたとしても、各組毎にこの傾きに追従するように各油圧シリンダのピストンが摺動することで、アンカーパイプとソケットとの間に隙間が生じるのを防止できるため、常に、各組毎に各油圧シリンダによりアンカーパイプとソケットとの間の圧力を平均化して受けることができる。このため、重量物支持ケーブルの張力を精度よく永続的に計測し監視することができる。
【0013】
各組の油圧ロードセルは、3組の場合には、略同一の中心角の円弧状とし、3組の組み合わせで中央部に重量物支持ケーブルが貫通する貫通孔が形成された円環状に形成し、各組の油圧シリンダは、円周方向に沿って等間隔に配置されていることが好ましい。このように、円環状の油圧ロードセルに油圧シリンダを円周方向に沿って等間隔に配置することで、各組毎の各油圧シリンダが受ける圧力を更に均一化することができる。
【0014】
斜長橋のように、斜めに張設された重量物支持ケーブルが下向きに偏心し易い場合や円形以外で重心がセンターからずれている場合等には、3組の油圧ロードセルを等角度とせずに、より大きな荷重の掛かる組を3分割以上の大きな容量とし、残りをそれより小容量とすることもできる。
また、油圧ロードセルと重量物支持ケーブルの間にネオプレンゴム等の軟質材を介在することで、重量物支持ケーブルの偏心を極力抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、重量物支持ケーブルで重量物を吊り下げ支持し、この重量物支持ケーブルの張力変動を油圧ロードセルで検出する装置であって、前記油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の少なくとも3組を同一円周上に配置して1つの円環状に連結し、これら少なくとも3組のそれぞれの油圧ロードセルは、独立して作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、前記各組毎の油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、前記各組毎のピストンに当接して前記重量物支持ケーブルの張力変動を受ける上部プレートと、前記連通路により平均化された前記それぞれの油圧ロードセル毎の作動油の圧力を検出する圧力変換部とを備え、前記各油圧ロードセルは、前記各上部プレートから受ける圧力を充填された作動油の油圧でそれぞれ独立して受け止めるように構成されているので、重量物支持ケーブルが偏心して油圧ロードセルの片側に偏荷重がかかっても、ストロークが0になることがなくなり、全周囲での荷重を測定することができる。ストロークが0になる恐れがないので、油圧ロードセルの薄型化と小型化ができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、油圧ロードセルは、互いに独立して機能する略同一中心角度の円弧状の3組を同一円周上に配置したので、重量物支持ケーブルの偏心に対応することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の3組を同一円周上に配置し、このうち、1組は、大容量で、他の2組は、これより小さな容量としたので、片側に荷重がかかるような場合でも用いることができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の3組を同一円周上に配置し、このうち、1組は、小容量で、他の2組は、これより大きな容量としたので、片側に荷重がかかるような場合でも用いることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の4組以上を同一円周上に配置することにより、大口径の支持ケーブルにも対応可能である。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、油圧ロードセルと重量物支持ケーブルの間に軟質材を介在することで、重量物支持ケーブルの偏心を極力抑えるようにしたので、重量物支持ケーブルのアンカーパイプへの組み立てが正確で容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による重量物支持ケーブルの張力検出装置の実施例1を示すもので、互いに独立して機能する同一構成の3組の油圧ロードセルを同一円周上に配置してなる油圧ロードセルの一部切り欠いた平面図である。
図2】(a)は、図1に示す油圧ロードセルのA−A線で断面した一部拡大図、(b)は、上部プレートの下面をピストンの上面に合わせて窪ませた例を示す断面図である。
図3図1の変形例を示すもので、(a)は、大きな容量1個と、それより小さな容量2個とからなる例を示し、(b)は、小さな容量1個と、それより大きな容量2個とからなる例を示し平面図である。
図4】本発明の他の実施例を示す4組を同一円周上に配置した油圧ロードセルの一部切り欠いた平面図である。
図5】本発明の他の実施例を示す5組を同一円周上に配置した油圧ロードセルの一部切り欠いた平面図である。
図6】斜張橋を示した正面図である。
図7】主塔と重量物支持ケーブルとの連結部を示した断面図である。
図8】従来の油圧ロードセルの平面図である。
図9】従来の油圧ロードセルの一部拡大断面図で、(a)は、均等に荷重がかかったときの断面図、(b)は、片側に荷重がかかったときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の重量物支持ケーブルの張力検出装置は、重量物支持ケーブルで重量物を吊り下げ支持し、この重量物支持ケーブルの張力変動を油圧ロードセルで検出する装置であって、前記油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の少なくとも3組を同一円周上に配置して1つの円環状に連結し、これら少なくとも3組のそれぞれの油圧ロードセルは、独立して作動油が充填されてピストンが突出した状態で摺動可能に嵌め込まれた複数の油圧シリンダと、前記各組毎の油圧シリンダに連通されて前記各油圧シリンダに充填された作動油の圧力を平均化する連通路と、前記各組毎のピストンに当接して前記重量物支持ケーブルの張力変動を受ける上部プレートと、前記連通路により平均化された前記それぞれの油圧ロードセル毎の作動油の圧力を検出する圧力変換部とを備え、前記各油圧ロードセルは、前記各上部プレートから受ける圧力を充填された作動油の油圧でそれぞれ独立して受け止めるように構成されている。
【0023】
油圧ロードセルは、互いに独立して機能する略同一中心角の円弧状の3組を同一円周上に配置する。
同一中心角に限られず、3組のうち、1組は、大きな中心角の大容量で、他の2組は、これより小さな容量とすることも、さらに、1組は、小さな中心角の小容量で、他の2組は、これより大きな容量とすることができる。
使用目的によっては、油圧ロードセルは、互いに独立して機能する円弧状の4組以上を同一円周上に配置することができる。
油圧ロードセルと重量物支持ケーブルの間に軟質材を介在することで、重量物支持ケーブルの偏心を極力抑えるようする。
【実施例1】
【0024】
以下、図1及び図2(a)(b)を参照して、本発明に係る重量物支持ケーブルの張力検出装置の好適な実施例1について詳細に説明する。
本実施例1は、建造物の重量物として、斜張橋において橋桁を支持する重量物支持ケーブルの張力変動を検出する装置に適用したものである。後述するように、本発明は、斜張橋の例に限られるものではない。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
図6に示すように、斜張橋1は、河川に立設された主塔2と、車両などが通行する橋桁3と、主塔2と橋桁3とに連結されて橋桁3を支持する複数本の重量物支持ケーブル4とで構成されている。
【0025】
前記主塔2は、橋桁3を挟み込むように幅方向両側に2面吊りや1面吊り等で配置されている例を示している。
【0026】
前記複数本の重量物支持ケーブル4は、所定間隔で上下の連結部5と6間に張設されている。なお、斜張橋1は、主塔2、橋桁3及び複数本の重量物支持ケーブル4を1組とし、斜張橋1を架設する河川の幅に応じて、これらの組が複数連結される。
【0027】
図7は、主塔2と重量物支持ケーブル4との連結部5を示した断面図である。主塔2には、重量物支持ケーブル4の張設方向に向いた貫通孔10が形成され、この貫通孔10には、重量物支持ケーブル4を固定するためのアンカーパイプ11が埋設されている。
【0028】
前記アンカーパイプ11は、略円筒状に形成されており、重量物支持ケーブル4が挿通可能となっている。このアンカーパイプ11における橋桁3の反対側の端部11aは、外径が橋桁3側から橋桁3の反対側に向けて拡径して、肉厚となって、アンカーパイプ11は、主塔2から橋桁3側に抜け落ちるのが防止され、また、橋桁3の反対側の端面11bは、橋桁3側からの荷重を大きな面積で受け止めることが可能となっている。
【0029】
前記主塔2に連結される重量物支持ケーブル4は、その端部が複数本のピアノ線が亜鉛などの金属で固められて拡径化しており、アンカーパイプ11に貫通される略円筒状のソケット12が固定されている。
【0030】
前記アンカーパイプ11の内径は、ソケット12が挿通するために、ソケット12の外径よりもやや大きくなっている。ソケット12の内径は、拡径化された重量物支持ケーブル4の端部を係止するために、橋桁3の反対側から橋桁3側に向けて狭まるテーパ状に形成されている。このソケット12は、下側に橋桁3側からの荷重を受け止める段部12aが形成されている。
【0031】
前記アンカーパイプ11と、このアンカーパイプ11を貫通したソケット12との間に、ベアリングプレート13と、本発明による油圧ロードセル14と、アタッチメント15とが嵌め込まれる。
前記ベアリングプレート13は、中央部に重量物支持ケーブル4が貫通される貫通孔が形成されたセンターホール型の円環状に形成されている。このベアリングプレート13は、円周方向に沿って2つ割り、3つ割りなど、複数割になっている。このため、アンカーパイプ11からソケット12をケーブル引き込み用ジャッキなどで引っ張り出した後に、重量物支持ケーブル4を跨いでアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込むことが可能となっている。また、このベアリングプレート13は、外径がアンカーパイプ11の内径よりも大きくなっており、内径がソケット12の外形よりも小さくなっている。このため、アンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込まれたベアリングプレート13に、アンカーパイプ11の端面11b及びソケット12の段部12aが直接的又は間接的に係止され、ソケット12がアンカーパイプ11から引き出された状態を維持することが可能となっている。
【0032】
前記本発明の油圧ロードセル14は、ベアリングプレート13とアタッチメント15との間に配置されて、アンカーパイプ11とソケット12との間の圧力を測定する油圧式圧力測定装置である。
【0033】
図1は、油圧ロードセル14の一部切り欠いた平面図、図2(a)は、図1に示すA−A線断面図である。
図1及び図2(a)において、油圧ロードセル14は、互いに独立して機能する略同一の中心角(120度)の円弧状の3組の第1油圧ロードセル14aと第2油圧ロードセル14bと第3油圧ロードセル14cを同一円周上に配置し、連結部材16で1つの円環状に連結して構成することにより、中央部に重量物支持ケーブル4が貫通される貫通孔28が形成されたセンターホール型の円環状に形成されている。このため、油圧ロードセル14は、ベアリングプレート13と同様に、アンカーパイプ11からソケット12を引き出した後に、重量物支持ケーブル4を跨いでアンカーパイプ11とソケット12との間に嵌め込むことが可能となっている。
【0034】
このように3つ割りされた油圧ロードセル14aと,14bと,14cは、ベアリングプレート13に当接される油圧ロードセル本体17と、アタッチメント15に当接される上部プレート18とを備えており、油圧ロードセル本体17と上部プレート18とは、油圧ロードセル14の縦方向(図2の上下方向)に上下動自在に形成されている。
【0035】
第1油圧ロードセル14aと、第2油圧ロードセル14bと、第3油圧ロードセル14cで構成された油圧ロードセル本体17には、上部プレート18に当接されるピストン20が嵌め込まれた複数個、例えば、4個ずつの油圧シリンダ21が同一円周上に設けられている。
【0036】
前記油圧シリンダ21には、第1油圧ロードセル14aと、第2油圧ロードセル14bと、第3油圧ロードセル14cとが独立して作動油が充填されて上部プレート18側に開口を有する油圧シリンダ室21aが形成されており、油圧シリンダ室21aには、ピストン20が油圧ロードセル14の縦方向に摺動可能に嵌め込まれている。このため、各油圧ロードセル14a,14b,14cは、各上部プレート18から受ける圧力を充填された作動油の油圧でそれぞれ独立して受け止めるように構成されている。
【0037】
更に各油圧ロードセル14a,14b,14cの油圧ロードセル本体17には、各油圧シリンダ21の油圧シリンダ室21aを互いに独立して連通して各油圧シリンダ室21aに充填される作動油の圧力を各組毎に平均化(イコライズ)する連通路23が設けられている。また、各油圧ロードセル14a,14b,14c毎に連通路23に連通されてジャッキの原理により油圧シリンダ室21aに充填される作動油の油圧を調整する油圧注入口(逆止弁内蔵)24と、連通路23に連通されて作動油の油圧を電気信号に変換する圧力変換器25とがそれぞれ設けられている。
【0038】
各油圧ロードセル14aと,14bと,14cは、互いに独立しているので、1つの油圧ロードセル14aについて説明するが、他の油圧ロードセル14bと14cについても同様である。
前記油圧ロードセル14aは、手動ポンプなどの圧力注油装置27から油圧注入口(逆止弁内蔵)24を経て油圧を調整することにより、ピストン20が上部プレート18に対向する油圧ロードセル本体17の上面17aから所定の高さだけ突出しており、油圧ロードセル本体17の上面17aと上部プレート18との間にピストン20を介した空間Sが形成されている。このとき、油圧ロードセル本体17は、連通路23により各油圧シリンダ室21aに充填された作動油が相互に出入り可能となるため、各油圧シリンダ21に充填される作動油の圧力が平均化された状態で、ピストン20が油圧ロードセル14の縦方向に摺動可能となる。このため、各ピストン20が摺動することにより、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が各組毎に傾動することが可能となる。また、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が傾動しても、各ピストン20が摺動することにより、全てのピストン20が上部プレート18に当接された状態が維持される。
前記ピストン20と上部プレート18は、ねじ29で連結され、上部プレート18は、ねじ29がねじ孔に遊嵌することにより、傾きの動きが可能である。また、前記角ピストン20と上部プレート18との間に荷重がかかり、反力が作用すると、上部プレート18は、深さ方向に0.5mm程度塑性変形をして安定する。
【0039】
なお、油圧ロードセル本体17の上面17aと上部プレート18との間の空間S、又は、油圧ロードセル本体17の上面17aよりも上部プレート18側におけるピストン20のストローク長は、予想される重量物支持ケーブル4の傾動角度に応じて、上部プレート18が油圧ロードセル本体17の上面17aに当接することなく、かつ、ピストン20が上部プレート18から離間しない範囲に調整される。例えば、油圧ロードセルの直径が600mmである場合は、傾斜角を考慮すると空間Sの幅を5mm以上とすることが好ましい。
【0040】
また、各ピストン20は、上部プレート18に当接する先端面20aが湾曲している。このため、上部プレート18とピストン20とが点接触又は極く小さい領域での面接触となるため、油圧ロードセル本体17に対して上部プレート18が傾いたとしても、上部プレート18から受ける圧力がピストン20の中心方向に向けられる。これにより、上部プレート18から受ける圧力が発散するのを抑制することができる。
【0041】
図7に示すように、アタッチメント15は、油圧ロードセル14とソケット12との間に配置されて、外径がソケット12側からベアリングプレート13側に向けて拡径するテーパ状に形成されている。このアタッチメント15は、台形断面を有する円環状に形成されており、内径がベアリングプレート13の内径よりも小さく、ソケット12に当接する一方端面15aの外径がソケット12の外径と略同一寸法で、ベアリングプレート13に当接する他方端面15bの外径がベアリングプレート13の外径と略同一寸法に形成されている。しかし、この例に限られず、上下面が同一径でもよい。このアタッチメント15も、ベアリングプレート13及び油圧ロードセル14と同様に、2つ割り又は3つ割りにされている。
【0042】
前記重量物支持ケーブル4への張力導入は、橋桁3側から図示しないセンターホールジャッキを用いて行う。
架設完了後、重量物支持ケーブル4等のなじみがあるため、2〜3日後に注油を行う。
(1) 注油手順(第1例)
3組の油圧ロードセル14aと14bと14cに同時に注油して圧力をかけ、ストロークが現れた組が出たら、ストロークが現れない組に注油して圧力を上げ、全ての組に所定のストロークが出るようにする方法とする。
(2)注油手順(第2例)
3分割された油圧ロードセル14aと14bと14cに1組ずつ各ストロークを0.5mm程度ずつ順次増大させる。注油時は、圧力変換器25のデータを監視しながら行う。油圧ロードセル14aと14bと14cは、3分割されているので、順次注油を行っても各油圧ロードセル14aと14bと14cのデータは、ある1組に集中することなく計測が行える。
注油を各組毎に順次繰り返し行い、各油圧ロードセル14aと14bと14cのストロークが3mm程度になるまで行う。注油イコライズは、各ピストン20に均等な荷重となろうとするため、上部プレート18が傾いても所期のストロークに収まろうとする。偏心等で全てのロードセル14aと14bs14cのストロークが均等にならない場合は、圧力変換器25のデータを確認し、各ロードセルのストロークを2〜3mm間で調整する。このとき、圧力変換器25のデータも監視し、各ロードセルも監視し、各ロードセル本体の能力を超えないものとする。
(3)注油後(2〜3日後)、ストローク、油漏れ等の点検を行う。
点検後、油漏れ、ストロークの変化がなければ終了。
以上の手順ですべての油圧ロードセル14aと14bと14cの設置を行い、張力計測(モニタリング)をリアルタイムで行うことによって斜長橋の健全度を監視できる。
【0043】
以上の操作により、重量物支持ケーブル4が主塔2に連結され、橋桁3を支持する重量物支持ケーブル4の張力がアンカーパイプ11に対するソケット12の圧力となって3組の油圧ロードセル14aと14bと14cに現れる。そこで、各組の油圧ロードセル14aと14bと14cの圧力変換器25により作動油の圧力を計測して、重量物支持ケーブル4の張力変動を求め、一括表示して監視する。なお、圧力変換器25が計測した作動油の圧力から重量物支持ケーブル4の張力への換算は、事前に実験などにより求められる所定の換算式により求めることができる。
【0044】
前記油圧ロードセル14は、第1図に示すように、3組の油圧ロードセル14aと14bと14cが略同一の中心角(120度)で、かつ、同一数、例えば、4個の油圧シリンダ21を配置し、等しい機能を有するもので構成した。
ここで、各油圧ロードセル14aと14bと14cの仮想支持点aとbとcは、次のようにして求められる。
第1油圧ロードセル14aにおいて、4個の油圧シリンダ21のうち、両端の第1と第4の油圧シリンダ21の仮想支持点は、これらの中心点を結ぶ線上の中点a1であり、また、中央の第2と第3の油圧シリンダ21の仮想支持点は、これらの中心点を結ぶ線上の中点a2であるから、これらa1とa2の中間点が第1油圧ロードセル14aの仮想支持点aとなる。
同様にして、第2油圧ロードセル14bの仮想支持点bが得られ、第3油圧ロードセル14cの仮想支持点cが得られる。
これら3組の仮想支持点aとbとcを結ぶ正3角形の内部に支持ケーブル14の中心Oがあれば、3点支持のため、支持高さが変化しても反力がほとんど変化せず安定する。
【0045】
図3(a)は、本発明の他の例を示すもので、重量物支持ケーブル4が非円形などで、中心OがOaのように偏心したものについて使用するときには、偏心した側の油圧ロードセル14aは、中心角を大きくして4個の油圧シリンダ21を配置して大きな容量とし、偏心した側と反対側の油圧ロードセル14bと14cは、3個ずつ油圧シリンダ21を配置して小さな容量とすることにより、3点の仮想支持点を結ぶ3角形は、やや縦長になり、縦方向の偏心により安定して対応できる。
また、図3(b)に示すように、重量物支持ケーブル4が非円形などで、中心OがObのように偏心したものについて使用するときには、偏心した側と反対側の油圧ロードセル14aは、中心角を小さくして2個の油圧シリンダ21を配置して小さな容量とし、偏心した側の油圧ロードセル14bと14cは、4個ずつ油圧シリンダ21を配置して大きな容量とすることにより、3点の仮想支持点を結ぶ3角形は、やや横長になり、横方向の偏心により安定して対応できる。
このような構成とすることで、偏心した荷重の方向に応じていずれかを採用することができる。
【0046】
前記実施例1では、3組の油圧ロードセル14aと14bと14cを同一円周上に配置してなる油圧ロードセル14を構成した例を示したが、これに限られるものではなく、実施例2では、図4に示すように、4組の油圧ロードセル14aと14bと14cと14dを同一円周上に配置してなる油圧ロードセル14を構成することができる。ただし、例えば、片側の油圧ロードセル14aに大きな荷重がかかると、対向する油圧ロードセル14cの荷重が極端に低くなる恐れがあるので、できるだけ全周囲に均等に荷重がかかるよう場合に限定される。
【0047】
また、図5に示すように、5組の油圧ロードセル14aと14bと14cと14dと14eを同一円周上に配置してなる油圧ロードセル14を構成することができる。ただし、この場合も、片側の油圧ロードセル14aに大きな荷重がかかると、対向する油圧ロードセル14cや14dの荷重が極端に低くなる恐れがあるので、できるだけ全周囲に均等に荷重がかかるよう場合に限定される。ロードセルの組数は、6組以上とすることもできる。
【0048】
前記実施例では、重量物支持ケーブル4における油圧ロードセル14の取り付け位置は、斜長橋1の主塔側2の連結部5に設けた例を示したが、これに限るものではなく、吊り橋1の橋桁3側の連結部6に設けることもできる。さらに、橋梁以外の建造物の重量構造物等を主塔等で吊り下げる例であっても本発明は利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1:斜張橋、2:主塔、3:橋桁、4:重量物支持ケーブル、5:連結部、6:連結部、10:貫通孔、11: アンカーパイプ、11a: 端部、11b :端面、12:ソケット、12a:段部、13:ベアリングプレート、14:油圧ロードセル、14a:第1油圧ロードセル、14b:第2油圧ロードセル、14c:第3油圧ロードセル、15:アタッチメント、15a:一方端面、15b:他方端面、16a:連結部材、16b:連結部材、17:油圧ロードセル本体、17a:上面、18:上部プレート、20:ピストン、20a:先端面、21:油圧シリンダ、21a:油圧シリンダ室、23:連通路、23a:連通路、23b:連通路、23c:連通路、24:油圧注入口(逆止弁内蔵)、25:圧力変換器、26:ネオプレン等の軟質材、27:手動ポンプなどの圧油注入装置、28:貫通孔、29:ねじ、S:空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9