特許第6391179号(P6391179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長谷川香料株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391179
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】乳化組成物および粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/10 20160101AFI20180910BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20180910BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20180910BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20180910BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20180910BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20180910BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20180910BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20180910BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20180910BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20180910BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20180910BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20180910BHJP
   A23G 4/06 20060101ALI20180910BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20180910BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A23L29/10
   A61K8/06
   A61K8/34
   A61K8/35
   A61K8/60
   A61Q11/00
   A61Q13/00 101
   A61Q1/02
   A61Q1/12
   A61Q19/10
   A61Q5/00
   A23L2/00 B
   A23L2/02 B
   A23L2/38 J
   A23L2/56
   A23G4/06
   C11B9/00 D
   C11B9/00 N
   C11D3/50
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-74574(P2016-74574)
(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2017-184636(P2017-184636A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】大久保 康隆
(72)【発明者】
【氏名】増田 唯
(72)【発明者】
【氏名】村澤 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】川畑 和也
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/054737(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/115034(WO,A1)
【文献】 特開2013−91630(JP,A)
【文献】 特開2016−84418(JP,A)
【文献】 BERNAL, P. and TAMARIZ, J.,Synthesis of novel β-functionalized α-oximinoketones via hetero-Michael addition of alcohols and m,Tetrahedron Letters,2006年,Vol.47,p.2905-2909
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/10
C11B 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)を含有する乳化組成物。
(A)下記式(1)で示されるメンチルエーテル類、
【化1】
[式(1)でXは部分構造式(1−a)もしくは(1−b)を示し、RおよびRはメチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基を示す。]
(B)水、
(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上、
(D)乳化剤
【請求項2】
更に(E)食用油脂類を含有する、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
メンチルエーテル類が下記式(2)で示される2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールである、請求項1または2に記載の乳化組成物。
【化2】
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の乳化組成物を乾燥してなる粉末組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含有させた飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含有させた香粧品。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含有させることによる、飲食品または香粧品の香気付与乃至香気変調方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を飲食品に含有させることによる、飲食品の苦味付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特異な香気と苦味を有する、香味変調剤として有用な、特定のメンチルエーテル類化合物を含有する乳化組成物および粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人は食により、エネルギー源を摂取することのほか、食による体調の維持、食のおいしさや食感による満足感を受けており、食は人に対し重要な機能をはたしている。食のおいしさは、飲食品の炭水化物、脂肪などの栄養成分に由来するとともに、その飲食品の味と香りが重要な要素であると言われている。口で知覚される味覚と、鼻で知覚される嗅覚は独立した感覚ではあるが、近年の研究により、飲食時に味覚と嗅覚は脳内で統合され、食のおいしさと食の満足感として認知されると言われている。
【0003】
飲食品の香気は鼻から吸い込んだ香気が鼻粘膜で感知するオルソネーザル(たち香)も重要であるが、飲食品が口で味覚を刺激し、喉から鼻に抜ける香気を感知するレトロネーザル(あと香)が最も重要であると言われている。
【0004】
従来から匂い物質として嗅覚を刺激し、同時に味覚に対しても刺激を与える化合物が知られている。このような化合物の代表的な例として知られているメントールは強力な清涼香と粘膜に配する刺激感を有し、様々な飲食品、香粧品に広く用いられている。同時に、味覚に関しては特有の苦味を有することが知られている。メントールを使用する場合、対象となる飲食品、香粧品に対してこれらの性質が有利に働く場合と、不利に働く場合がある。
【0005】
例えば、メントールの清涼感を目的として飲食品に使用する場合は、揮発性が高いため、清涼感が持続しないこと、および、その特有の苦味が不利な点として指摘されている。そこで、このメントールに存在する欠点である苦味を克服するためのマスキング方法が多数考案されている。一例を挙げると、香料として使用するグリシド酸エステルが苦味のマスキング剤となることが開示されている(特許文献1)。
【0006】
一方、メントールの清涼感を持続させ、同時に苦味を抑制する目的でメントールの化学構造を変更する試みも広く行われ、有用な誘導体が合成されている。この目的で開発された化合物は、メントールの水酸基を利用したエステル誘導体、メントールの構成炭素骨格にカルボン酸を導入した、パラメンタンカルボン酸誘導体が合成されている。より具体的な化合物として、3−ヒドロキシ酪酸メンチル、メントールグリセリンエーテル(Coolact 10、高砂香料社登録商標、特許文献2)、乳酸メンチル(Frescolate ML、Symrise AG社登録商標)、コハク酸モノメンチル(Physcool、V.Mane fils社登録商標)、N−エチル−p−メンタンカルボン酸アミド(WS−3)、エチル 2−[(5−メチル−2−プロパン−2−イルシクロヘキサンカルボニル)アミノ]アセテート(WS−5)、N−(4−メトキシフェニル)−p−メンタンカルボン酸アミド(WS−12)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタン酸アミド(WS−23)などが知られている(特許文献3)。これらの化合物はさわやかな香気を有し、清涼感持続作用を有し、苦味がないことを特徴として、化合物単体で、あるいはメントールと併用することで様々な製品に利用されている。
【0007】
一方、苦味は食品の特徴を表現する重要な構成要素であり、苦味成分としては渋柿・ワインなどに含まれるタンニン、茶に含まれるカテキン、コーヒーに含まれるクロロゲン酸、ホップに含まれ、ビールの苦味を特徴づけるアルファ酸などがある。これらの成分はそれぞれ特有な苦味を有し、これらを含む飲食品を構成する上で重要な化合物と認識されている(非特許文献1)。しかしながら、天然由来の苦味素材は、特有な苦味に加え、原料に由来する天然物特有の香味を有するため一般的な飲食品への応用が限られている。そこで、原料素材に由来する天然物特有の香気がなく、良質な苦味を有する化合物の開発が望まれている。
【0008】
メントール特有の刺激と苦味を応用した例は少なく、薬物の乱用を阻止する目的でメントールを添加した例が開示されているのみである(特許文献4)。また、メントールは、強力な清涼香を有するために、従来、苦味を付与する目的で一般的な飲食品に配合することは困難であった。この欠点を克服すため、メントール特有の苦味を良質な苦味として追求し、同時に強力な清涼香を抑制する目的でメントール誘導体を研究する試みは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5198533号公報
【特許文献2】特開昭58−88334号公報
【特許文献3】特開昭47−16648号公報
【特許文献4】特表2005−500364号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】山田恭正、「New Food Industry」2002年、44巻、2号、49〜55頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者らは、前記課題にかんがみ、雑味のない苦みを有し、冷涼感および清涼感が抑えられたメントール誘導体を有効成分とする香味変調剤を提供することについて鋭意研究し、その結果、2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールなどの特定のメンチルエーテル類が有用であることを見出し、先に特許出願を行った(特願2014−218169)。
【0012】
これらの化合物は、メントールおよびその誘導体によく見られるような冷涼感および清涼感が抑えられており、香気的にはややウッディー、スパイシーでハーバルな香気を有するとともに、苦味については、雑味のない良質な苦みを有し、その苦味が持続するものであった。しかしながら、飲食品に苦味付与目的で配合するためには、苦味の立ち上がりを遅くし、よりさわやかでマイルドな苦味とすることにより、飲食品中において甘味、酸味などとのバランスをとることが望まれている。また、これらのメンチルエーテル類は油溶性であるため、水分の多い食品に配合する場合に、均一に混合することが困難であり、保存中に分離してしまうなどの問題点があった。
【0013】
そこで、本発明の課題は飲食品に配合しやすく、保存においても安定で、さらに、苦味の立ち上がりが遅く、よりさわやかでマイルドな苦味を有する素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、4−メンチルオキシ−2−ブタノンなどの特定のメンチルエーテル類について、さらに鋭意研究した結果、本化合物を含有する乳化組成物、または、乳化組成物とした後乾燥して粉末組成物の形態とすることにより、飲食品や香粧品にも配合しやすく、また特に飲食品に添加した場合、切れの良い苦味特性を維持しつつも、乳化組成物としない場合と比べ、苦味の立ち上がりを遅くし、よりさわやかでマイルドな苦味とすることが可能であり、さらに、乳化組成物中に油脂を配合することで苦味をより長時間持続可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
なお、本発明でメンチルエーテル類として開示する4−メンチルオキシ−2−ブタノンは有機化学研究の中で合成された化合物であるが、その香味に関する特性は何ら記載がなく、その誘導体についても報告は見出されない(Tetrahedron Lett., 47,2905(2006))。
【0016】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1]下記(A)〜(D)を含有する乳化組成物。
(A)下記式(1)で示されるメンチルエーテル類、
【0017】
【化1】
【0018】
[式(1)でXは部分構造式(1−a)もしくは(1−b)を示し、R1およびR2はメチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基を示す。]
(B)水、
(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上、
(D)乳化剤
[2]更に(E)食用油脂類を含有する、[1]の乳化組成物。
[3]メンチルエーテル類が下記式(2)で示される2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールである、[1]または[2]に記載の乳化組成物。
【0019】
【化2】
【0020】
[4][1]〜[3]のいずれかの乳化組成物を乾燥してなる粉末組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の組成物を含有させた飲食品。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の組成物を含有させた香粧品。
[7][1]〜[4]のいずれかに記載の組成物を含有させることによる、飲食品または香粧品の香気付与乃至香気変調方法。
[8][1]〜[4]のいずれかに記載の組成物を飲食品に含有させることによる、飲食品の苦味付与方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特定のメンチルエーテル類を含有する乳化組成物または粉末組成物はわずかな冷涼感および清涼感と、ややウッディー、スパイシーでハーバルな香気を有し、さらに、雑味がなく良質で切れの良い苦味を有し、乳化していない前記メンチルエーテル類と比べ、苦味の立ち上がりを遅くし、よりさわやかでマイルド苦味とすることができた。その結果、ナリンジンなどの柑橘類の苦味を想起させるような苦味を付与することができた。また、前記乳化組成物中に油脂を配合することで前記メンチルエーテル類特有の苦味が、より長時間持続可能となった。これら本発明の乳化組成物または粉末組成物を香味変調剤として香料組成物、飲食品に配合することにより、香気と良質な苦味を利用してこれまでに知られていなかった新しい香味を有する飲食品の開発が可能となり、新たな応用範囲に拡げることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は式(1)で表されるメンチルエーテル類は、該化合物を含有する乳化組成物および粉末組成物に関する。式(1)で表されるメンチルエーテル類は乳化等せずに、そのもの自体、香味変調剤、冷涼感付与剤、苦味付与剤としての効果を示しており有用性がある。
【0023】
しかしながら、式(1)で表されるメンチルエーテル類を含有する乳化組成物または粉末組成物とすることにより、水への分散性を向上させ、飲食品や香粧品に配合しやすくするとともに、苦味の立ち上がりを遅くし、よりさわやかでマイルドにすることが可能になった。また、必要に応じて前記乳化組成物に食用油脂類を含有させ、さらに食用油脂含有量を増加させることでることにより、メンチルエーテル類の苦味をより長時間持続させることが可能となった。
【0024】
例えば、グレープフルーツ風味飲料に、香気と苦味を付与する目的で2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールを配合する場合に、油溶性香料中に配合して添加すると、油溶性香料が油浮きし、油中に含まれる2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールが口腔内に直接作用することになる。一方、乳化組成物とした場合には、2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールの微細な粒子が均一に口腔内に作用する。その結果、より、グレープフルーツらしい苦味を付与することが可能になった。
【0025】
本発明の乳化したメンチルエーテル類は、乳化していないメンチルエーテル類と比べ、苦味の立ち上がりが遅くなり、それに伴い苦味がよりさわやかでマイルドに感じられる。
【0026】
本発明の乳化組成物または粉末組成物に使用する式(1)のメンチルエーテル類としては、特に限定はないが、具体的には式(3)で表される4−メンチルオキシアルキルケトン、例えば、4−メンチルオキシ−2−ブタノンを例示することができる。また、式(4)で表されるアルキル−4−メンチルオキシアルカノール、例えば、2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノール(2)などを例示することができるが、この限りではない。
【0027】
式(1)で表されるメンチルエーテル類を得るためには以下に示す反応式1に従って工程(1)により式(3)で表される4−メンチルオキシアルキルケトンを合成し、さらに工程(2)により式(4)で表されるアルキル−4−メンチルオキシアルカノールを合成することができる。
【0028】
【化3】
【0029】
反応式1:[RおよびRはメチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基を示す。MはLiもしくはMgXを表し、Xはハロゲン原子を表す。]
反応式1の各工程を概説すると、工程(1)としてメントールを触媒の存在下、アルキルビニルケトンにマイケル型付加反応を行い、4−メンチルオキシアルキルケトン(3)を合成する。工程(2)として、工程(1)で得られた4−メンチルオキシアルキルケトン(3)に対して、アルキル金属試薬を反応させることによりアルキル−4−メンチルオキシアルカノール(4)を合成することができる。
【0030】
以下、詳細に工程(1)および工程(2)を説明する。工程(1)の原料として用いるメントール(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール)は8種類の異性体が存在するが、優れた香気を有する天然型のl−メントールの使用が望ましいがこの限りではない。一方の反応ブロックであるアルキルビニルケトンは3−ブテン−2−オン(メチルビニルケトン)または1−ペンテン−3−オン(エチルビニルケトン)、1−ヘキセン−3−オン(プロピルビニルケトン)または4−メチル−1−ペンテン−3−オン(イソプロピルビニルケトン)は市場より調達も可能であるが、既知の方法に従って合成して使用することも可能である。
【0031】
反応に使用するアルキルビニルケトンはメントールに対して当量以上であれば特に制約はないが、経済的な観点から1.5当量から5当量、好ましくは2当量から4等量を挙げることができる。
【0032】
マイケル型付加反応には触媒の利用が効果的であり、酸性型または塩基性型の触媒が利用可能である。酸性型触媒は、例えば、ブレンステッド酸触媒として硫酸、塩酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸などを挙げることができ、パラトルエンスルホン酸の使用が好ましい。また、ルイス酸触媒である三フッ化ホウ素エーテル錯体、四塩化チタン、三塩化アルミニウムなどを挙げることができ、三フッ化ホウ素エーテル錯体の使用が好ましい。塩基性型の触媒も使用可能であり、三級アミン類、水酸化四級アルキルアミン類を用いることも可能である。
【0033】
反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を使用することも可能であり、反応原料のメントール、アルキルビニルケトンおよび使用する触媒に不活性な性質を有する溶媒が好ましく、トルエン、ヘプタン、ヘキサンなどの炭化水素溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系触媒、塩化メチレンなどの塩素系溶媒の使用が好ましく、さらに好ましくは塩化メチレンなどの塩素系溶媒の使用が好ましい。
【0034】
反応温度は使用する触媒の使用量・活性、使用する溶媒に影響を受けるが、−78℃〜50℃が好ましく、さらに好ましくは0℃〜30℃の温度条件を挙げることができる。また、反応時間は使用する触媒の使用量・活性、使用する溶媒に影響を受けるが、特に制限はなく数時間から数日を挙げることができる。反応時間は、反応の進行をガスクロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーなどでモニタリングしながら反応時間を決定することができる。工程(1)で得た4−メンチルオキシアルキルケトン(3)は必要に応じてカラムクロマトグラフィー、減圧蒸留等の手段を用いて精製することができる。
【0035】
工程(2)では4−メンチルオキシアルキルケトン(3)のカルボニル基にアルキル金属化合物を付加反応することによりアルキル−4−メンチルオキシアルカノール(4)を合成する。式(3)と反応するアルカリ金属化合物はメチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウムなどのアルキルリチウムまたは塩化メチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウムなどのアルキルグリニャール試薬を使用することができる。これらのアルキル金属試薬は市場より調達したものでも、対応する金属とハロゲン化アルキルから調製した試薬も使用できる。反応に使用するアルキル金属化合物は、4−メンチルオキシアルキルケトン(3)に対して等モルから2倍モル、特に1.05倍モルから1.5倍モルの使用が好ましい。
【0036】
使用する反応溶媒は使用するアルキル金属試薬の性質に依存するが、一般的にアルキル金属試薬に不活性でアルキル金属試薬を溶媒に分散し、反応基質である4−メンチルオキシアルキルケトン(3)を溶解する溶媒であれば特に制限はない、例えば、ジエチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンの使用が好ましい。
【0037】
反応条件は使用するアルキル金属化合物の性質に影響を受けるが、一般的に、カルボニル化合物とアルキル金属化合物の反応は発熱反応であること、溶媒中の水分、雰囲気中または溶媒に溶存している酸素の影響を受けることからこれらを回避する反応条件下で行うことが好ましく、窒素雰囲気下、脱水した溶媒などの使用が好ましい。
【0038】
反応温度は使用するアルキル金属化合物の種類、使用する溶媒に影響を受けるが、−78℃〜40℃が好ましく、さらに0℃〜30℃の温度条件が好ましい。また、反応時間は使用するアルキル金属化合物の種類、使用する溶媒に影響を受けるが、数時間で反応が終了する。反応の進行をガスクロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーなどでモニタリングしながら反応時間を決定することが好ましい。工程(2)で得たアルキル−4−メンチルオキシアルカノール(4)は必要に応じてカラムクロマト、減圧蒸留等の手段を用いて精製することが好ましい。
【0039】
式(1)で表されるメンチルエーテル類は2種以上任意の割合で混合して用いることができ、特に他の清涼感持続剤との併用で、清涼感の持続とメントールの苦みを改質する効果を発揮することもできる。
【0040】
本発明の式(1)のメンチルエーテル類を含有する乳化組成物は、特に限定はなく式(1)のメンチルエーテル類を公知の方法で乳化したものを採用することができ、例えば、(A)として本発明の香味変調化合物成分である式(1)のメンチルエーテル類の他に、(B)水、(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上、(D)乳化剤を含み、これらを混合・撹拌・乳化して得ることができる。
【0041】
前記乳化の際、例えば、(A)式(1)のメンチルエーテル類を油相部とし、(B)水および(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上を水相部として、水中油型乳化物として調製することができる。
【0042】
これにより式(1)のメンチルエーテル類の苦味の立ち上がりを、乳化組成物としない場合と比べ、より遅くし、それに伴い苦味がよりさわやかでマイルドに感じられるようになる。なお、苦味の立ち上がりが遅いという意味は、口腔に含んでからやや遅れて苦味が感じられることをいう。苦味は、一般的に忌避的な呈味であり、苦味物質が口腔に入ったとき、直ちに苦味が発現し、強いインパクトのある不快感を与えることが多い。しかしながら、苦味物質の中にも好ましい苦味を発現するものがある。例えば、柑橘に含まれるナリンジンは、柑橘果実や柑橘ジュース中においてはさわやかでマイルドな苦味を呈するといわれる。本発明の乳化物は、この柑橘中のナリンジンの苦味に近い呈味特性を有する。
【0043】
また、前記油相部には、(A)式(1)のメンチルエーテル類の他(E)食用油脂類を含有させることができる。必要に応じて前記乳化組成物に食用油脂類を含有させることで、苦味をより長時間持続させることができる。前記食用油脂類の配合量は苦味の持続時間に影響を与える。すなわち、食用油脂類の配合量を増加させることで、苦味の持続時間をより長時間とすることができ、食用油脂類の配合量を低減させることにより、苦味の持続時間を相対的に短めとすることができる。
【0044】
さらにまた、式(1)のメンチルエーテル類を溶解するための溶剤として、前記食用油脂類の他に比重調整剤としてSAIB(シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート)や式(1)のメンチルエーテル類以外の香味成分として一般的な各種香料を含有させることもできる。
【0045】
使用することのできる(E)成分の食用油脂類としては、式(1)のメンチルエーテル類と容易に混和するものが好ましく、例えば、大豆油、ごま油、コーン油、菜種油、米糠油、綿実油、ひまし油、落花生油、オリーブ油、パーム油、サフラワー油、小麦胚芽油、椰子油、ヒマワリ油、つばき油、ココア脂、イワシ油、サケ油、サバ油、サメ油、マグロ油、鯨油、イルカ油、イカ油、サンマ油、にしん油、たら油、牛脂、鶏油、豚脂、バターなどの動植物油脂類及びそれらの硬化油類、中鎖飽和脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTと称する)などを挙げることができる。殊にMCTが好適である。かかるMCTとしては、例えば、カプロン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、及びこれらの任意の混合物の如き炭素原子数6〜12の中鎖飽和脂肪酸のトリグリセリドを挙げることができ、これらの中、特にカプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド及びこれらの任意の混合物が好ましい。これらのMCT混合物は市場で安価に且つ容易に入手することができる。本発明の乳化組成物における、動植物油脂の含有量は、特に限定されるものではないが、式(1)のメンチルエーテル類1質量部に対し、通常0.01〜2000質量部、好ましくは0.1〜500質量部、より好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは2〜50質量部の範囲内であることができる。
【0046】
SAIB(シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート)は本発明の乳化組成物中の油相部の比重調整のために配合されるものであり、本発明の乳化組成物が配合される最終製品(飲食品、香粧品)が水性組成物である場合に、乳化組成物が比重差により分離することを防止するために配合することができる。
【0047】
使用し得るSAIBとしては、例えば、その比重が約1.13〜約1.19、好ましくは約1.14〜約1.15の範囲内にあるSAIBを挙げることができる。本発明の乳化組成物におけるSAIBの含有量は、使用するSAIBの比重、乳化組成物が配合される飲料の比重等に応じて変えることができるが、一般的には、本発明の乳化組成物中の油相部全体の比重と、本発明の乳化組成物が配合される最終製品である水性組成物との比重差が0.05以下、特に0.03以下となるような量であることが望ましい。この比重差が0.05を越えると、本発明の乳化組成物が配合された水性組成物を長期にわたり保存した場合に、リングや油浮きが発生しやすくなる。油相部中のSAIBの混合割合は、SAIBを含めた油相部全体を1質量部とした場合に、通常約0.2質量部〜約0.6質量部、好ましくは約0.3質量部〜約0.5質量部の範囲内を例示することができる。しかしながら、最終的には、本発明の乳化組成物が配合される水性組成物の比重および該乳化組成物中の油相部の比重を測定しながら比重差が0.05以下となるSAIBの含有量を経験的に見出すことが望ましい。
【0048】
メントキシエーテルと共に含有しうる他の一般的な各種香料としては、例えば清涼感持続剤としては、3−ヒドロキシ酪酸メンチル、メントールグリセリンエーテル(Coolact 10、高砂香料社登録商標)、乳酸メンチル(Frescolate ML、Symrise AG社登録商標)、コハク酸モノメンチル(Physcool、V.Mane fils社登録商標)、N−エチル−p−メンタンカルボン酸アミド(WS−3)、エチル 2−[(5−メチル−2−プロパン−2−イルシクロヘキサンカルボニル)アミノ]アセテート(WS−5)、N−(4−メトキシフェニル)−p−メンタンカルボン酸アミド(WS−12)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタン酸アミド(WS−23)などを挙げることができる。
【0049】
また、メントキシエーテルと共に含有しうる上記以外の香料成分としては「特許庁、周知慣用技術集(香料)第II部食品香料、頁8−87、平成12年1月14日発行」に記載されている合成香料、天然精油、天然香料、動植物エキス等を挙げることができる。
【0050】
これらの香料成分としては、例えば、炭化水素化合物としてα−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5−ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0051】
アルコール化合物としてブタノール、ペンタノール、イソアミルアルコール、ヘキサノールなどの直鎖・飽和アルカノール、プレノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、2,6−ノナジエノールなどの直鎖・不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フルフリルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0052】
アルデヒド化合物としてアセトアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、ノナナール、デカナールなどの脂肪族飽和アルデヒド、(E)−2−ヘキセナール、2,4−オクタジエナールなどの脂肪族不飽和アルデヒド、シトロネラール、シトラールなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フルフラール、ヘリオトロピンなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0053】
ケトン化合物として2−ヘプタノン、2−ウンデカノン、1−オクテン−3−オンなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン、アセトイン、ジアセチル、2,3−ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンなどの直鎖および環状ジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α−イオノン、β−イオノン、β−ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0054】
フラン・エーテル化合物としてローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピランなどの環状エーテル類、メチルチャビコール、アネトールなどの芳香族エーテル類が挙げられる。
【0055】
エステル化合物として酢酸エチル、酢酸イソアミルなどの脂肪族アルコールの酢酸エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリルなどのテルペンアルコールの酢酸エステル、酪酸エチル、カプロン酸エチルなどの脂肪酸と低級アルコールとのエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0056】
ラクトン化合物としてγ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
【0057】
酸化合物として酪酸、4−メチル−3−ペンテン酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0058】
含窒素化合物としてインドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチルなどが挙げられる。
【0059】
含硫化合物としてメタンチオール、フルフリルメルカプタン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジフルフリルジスルフィド、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0060】
天然精油としてはスイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、グレープフルーツ、ライム、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、フェンネル、スターアニス、クローブ、シナモン、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、ホップ、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0061】
また、各種のエキスとしてハーブ・スパイス抽出物、コーヒー・緑茶・紅茶・ウーロン茶抽出物、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼ・プロテアーゼなどの酵素分解物も挙げられる。
【0062】
本発明のメントキシエーテルを含有する香料組成物には、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている、水、エタノールなどの溶剤、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、グリセリン、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセリドなどの香料保留剤を含有することができる。
【0063】
本発明で使用する(B)成分である水は(C)成分である糖類、1価アルコールまたは多価アルコールと共に前記水相部を構成するが、水相部中の含水率は、通常50%以下、特に約0〜25%の範囲内の含水状態で使用することが好ましく、含水率が50%を越えると防腐性が失われる可能性がある。
【0064】
本発明の(C)成分である糖類、1価アルコールまたは多価アルコールは、乳化の安定のために配合する。糖類としては、例えば、グルコース、フラクトース、シュークロース、トレハロース、セロビオース、マルトトリオース、ラムノース、ラクトース、マルトース、リボース、キシロース、アラビノースおよび水飴などが挙げられ、1価アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールなどが挙げられ、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトールおよび澱粉分解還元物などが挙げられ、これらの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0065】
本発明の乳化組成物における前記水相部の使用量は、油相部1質量部に対し、通常、約1質量部〜約10質量部、特に約1.5質量部〜約5質量部の範囲内が好適である。また、前記水相部には、所望により、保存性を向上させる目的で、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸を添加することもできる。
【0066】
なお、(A)式(1)のメンチルエーテル類および前記各種香料は低濃度であれば(C)成分である糖類、1価アルコールまたは多価アルコールにも溶解するため、前記水相部に配合することも可能である。
【0067】
本発明で使用する(D)成分である乳化剤としては、特に制限されるものではなく、従来から飲食品等に用いられる各種の乳化剤が使用可能であり、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインなどを例示することができる。
【0068】
これらの乳化剤のうち特に、HLBが8以上の親水性界面活性剤が好ましく、この場合は、水相部に乳化剤を混合する。具体的にはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、平均重合度3以上のポリグリセリンと炭素数8以上の脂肪酸とのエステル、例えば、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノミリステートなどで且つ、HLBが8以上、好ましくは8〜14の範囲内のものを挙げることができる。HLBが8を下回るポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合には、一般に、均一で粒子径の小さな乳化粒子を調製することが困難であり、また、乳化物が不安定で飲料に添加すると、沈殿、油分離などの分離現象を起こす傾向が強い。
【0069】
ポリグリセリン脂肪酸エステル類の含有量は、油相部1質量部に対し、通常0.05質量部〜0.5質量部、好ましくは0.15質量部〜0.3質量部の範囲内であることができる。
【0070】
本発明の乳化組成物の調製法の一実施態様を例示すれば以下のとおりである。まず、前記の油相部に使用する原料を混合して、油相部1質量部を調製する。これとは別に、(B)水、(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上、および、(D)乳化剤を混合溶解した溶液(水相部)約2〜約50質量部(水分含有量約0.5質量%〜約10質量%)を調製し、油相部と水相部を混合し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて乳化処理することにより、粒子径約0.2μm〜約2μmの極めて微細で安定性に優れた乳化液を得ることができる。
【0071】
該乳化組成物中には、式(1)のメンチルエーテル類を該乳化組成物の質量を基準として、一般に0.01%〜30%の濃度で含有させることができ、下限値としては、好ましくは0.02%、より好ましくは0.05%、さらに好ましくは0.1%を例示でき、また、上限値としては、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは2%を例示でき、これらの下限値と上限値は任意の組み合わせで範囲を設定することができる。
【0072】
本発明の粉末組成物は前記乳化組成物を乾燥することにより得ることができる。乾燥方法としては真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段が例示できる。乾燥に際しては、前記乳化物にさらに賦形剤として、デキストリン類、デンプン類、天然ガム類、糖類その他の賦形剤を添加することもできる。
【0073】
式(1)のメンチルエーテル類を含有する乳化または粉末組成物を使用する場合は、飲食品または香粧品に対し、質量基準で、式(1)のメンチルエーテル類として、一般に0.1ppm〜300ppmの濃度で含有させることができ、下限値としては、好ましくは0.2ppm、より好ましくは0.5ppm、さらに好ましくは1ppmを例示でき、また、上限値としては、好ましくは100ppm、より好ましくは50ppm、さらに好ましくは20ppmを例示でき、これらの下限値と上限値は任意の組み合わせで範囲を設定することができる。この濃度範囲で添加することにより、飲食品または香粧品にややウッディー、スパイシーでハーバルな香気を付与することができ、また、飲食品にはナリンジンの様な苦味、すなわち乳化組成物としない場合と比べ、苦味の立ち上がりが遅く、かつ、さわやかでマイルドな苦味を付与することができる。
【0074】
本発明の乳化組成物または粉末組成物によって香味を付与または改良・増強することができる飲食品の具体例として、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料などの炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類及びそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類及びそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類、歯磨きなどの口腔用組成物を挙げることができるが何ら限定されるものではない。
【0075】
また、本発明の乳化または粉末組成物によって、ややウッディー、スパイシーでハーバルな香気を増強することができる香粧品の具体例としては、例えば、香水;シャンプー、リンス、ヘアクリーム、ポマードなどのヘアケア製品;オシロイ、口紅などの化粧品類;フェイス用石鹸、ボデイ用石鹸、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤などの保健・衛生用洗剤類;ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内芳香剤、カーコロンなどの芳香製品;を挙げることができる。
【0076】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
実施例において反応粗製物、精製物の測定は次の分析機器を用いて行なった。
【0078】
GC測定:GC−2014(島津製作所社製)およびクロマトパックC−R8A(島津製作所社製)
GC測定用GCカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1(長さ30m、内径0.53mm、液層膜厚1.50マイクロメータ)、ジーエルサイエンス社製TC−1701(長さ30m、内径0.53mm、液層膜厚1.00マイクロメータ)
GC/MS測定:5973N(Agilent社製)
GC/MS測定用GCカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1701(長さ30m、内径0.25mm、液層膜厚0.25マイクロメータ)
NMR測定:ECX−400A(JEOL RESONANCE社製)。
【0079】
参考例1:4−メンチルオキシ−2−ブタノンの調製
窒素置換した100mLフラスコにl−メントール(7.81g,50mmol)、ジクロロメタン(50.0g)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.71g,5mmol)を加えて撹拌混合した後、そこにメチルビニルケトン(10.51g,150mmol)を加え、そのまま20℃で4日間撹拌した。反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30.0g)に注入して反応を停止させた。有機層を分離した後、水層をジクロロメタン(15.0g)で2回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。吸引濾過して硫酸マグネシウムを除いた後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。得られた粗生成物12.99gを減圧蒸留することで4−メンチルオキシ−2−ブタノン(参考品1:収量7.28g,収率64.3%,純度99.1%)を得た。
【0080】
4−メンチルオキシ−2−ブタノン(参考品1)の物性データ
沸点:85〜88℃/0.1kPa
H NMR(CDCl,400MHz) δ 0.74(d,3H,J=7.2Hz),0.81(m,1H),0.85(d,3H,J=7.2Hz),0.89(d,3H,J=6.4Hz),0.95(m,1H),1.16(m,1H),1.32(m,1H),1.60(m,2H),2.09(m,2H),2.16(s,3H),2.64(m,2H),3.01(dt,1H,J=4.0,6.4Hz),3.54(ddd,1H,J=9.6,6.8,6.0Hz),3.84(dt,1H,J=9.2,6.0Hz).
13C NMR(CDCl,100MHz) δ 16.30,20.97,22.39,23.41,25.66,30.57,31.55,34.60,40.29,44.24,48.24,63.51,79.58,207.69。
【0081】
MS(EI,70eV) m/z 41(29),43(96),55(44),71(100),81(44),83(26),87(23),95(39),123(18),138(30),141(40),155(25),169(1),211(1),226(M+,0.2).
[α](20℃、D線、c=2.04 in CHCl)=−80.8。
【0082】
実施例1:4−メンチルオキシ−2−ブタノンを含有する乳化組成物の調製
油相部として4−メンチルオキシ−2−ブタノン(1.0g)、SAIB9.0gおよびMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)9.0gを混合溶解した。一方、水相部としてグリセリン66g、イオン交換水11gおよびデカグリセリンモノオレエート(4.0g)を混合溶解した。水相部と油相部をTK−ホモジナイザー(プライミクス社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとした(本発明品1:4−メンチルオキシ−2−ブタノン濃度1.0%)。
【0083】
香気評価
本発明品1の1%水溶液をサンプル瓶に用意し、5名のパネラーにより、瓶口からの香気評価および香気評価液を含浸させたにおい紙により香気評価を行った。
【0084】
5名のパネラーによる平均的な評価結果:微かにウッディーでハーバルな香気
苦味評価
4−メンチルオキシ−2−ブタノンを99.5%エタノールに対し10(W/W)%溶解した溶液を調製した(参考品2)。本発明品1および参考品2を純水にて希釈し、4−メンチルオキシ−2−ブタノンを表1に示した濃度とした溶液を調製した。それぞれの溶液を、5名のパネラーにより、そのまま口に入れた時、さらに飲み下した時の苦味を総合して評価した。苦味の強度を以下の基準(苦味が全く感じられない=0点、苦味をわずかに感じる=2点、苦味を多少感じる=4点、苦味を明らかに感じる=6点、苦味を強く感じる=8点、苦味を非常に強く感じる=10点)とし、苦味の質についてコメントを付した。5名のパネラーの平均的な評価結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示した通り、4−メンチルオキシ−2−ブタノンの水溶液は、エタノール希釈品および乳化組成物のいずれも1ppm〜200ppmの範囲で苦味を感じると評価された。乳化組成物を水に希釈した場合と、エタノール溶液を水に希釈した場合の比較では、同一濃度の4−メンチルオキシ−2−ブタノンの水溶液において、苦味の強度はそれほど差がないが、乳化組成物を水に希釈した場合の方がエタノール溶液を水に希釈した場合よりも、苦味の立ち上がりが遅く、苦味がよりさわやかでマイルドであった。また、乳化物の苦味はナリンジンの苦味を想起させる苦味であるという評価であった。
【0087】
実施例2:4−メンチルオキシ−2−ブタノンを含有する乳化組成物の調製
水相部としてグリセリン81g、イオン交換水14gおよびデカグリセリンモノオレエート(4.0g)を混合溶解した。水相部と4−メンチルオキシ−2−ブタノン(1.0g)をTK−ホモゲナイザー(プライミクス社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとした(本発明品2:4−メンチルオキシ−2−ブタノン濃度1.0%)。
【0088】
実施例3:油脂を配合した4−メンチルオキシ−2−ブタノンを含有する乳化組成物の調製(2)
油相部として4−メンチルオキシ−2−ブタノン(1.0g)、SAIB17.5gおよびMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)17.5gを混合溶解した。一方、水相部としてグリセリン50g、イオン交換水8gおよびデカグリセリンモノオレエート(6.0g)を混合溶解した。水相部と油相部をTK−ホモゲナイザー(プライミクス社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとした(本発明品3:4−メンチルオキシ−2−ブタノン濃度1.0%)。
【0089】
苦味評価
前記本発明品1および参考品2ならびに本発明品2および本発明品3を純水にて希釈し、4−メンチルオキシ−2−ブタノンを10ppmとした溶液を調製した。それぞれの溶液を、5名のパネラーにより、そのまま口に入れた時、さらに飲み下した時の苦味の立ち上がりと持続を比較評価した。その平均的評価結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示した通り、乳化組成物中の食用油脂量の増加に伴い、苦味の持続時間が長くなることが認められた。
【0092】
参考例2:2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールの調製
温度計、滴下漏斗を装着した200mLフラスコを窒素置換した後、テトラヒドロフラン(モレキュラーシーブス5Aにて乾燥、50mL)と塩化メチルマグネシウムの3.0Mテトラヒドロフラン溶液(21.7mL,65mmol)を注入し、水浴にて冷却した。そこに4−メンチルオキシ−2−ブタノン(11.32g,50mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶かした溶液を滴下漏斗から内温が30℃以下を保つ速度で滴下した。滴下終了後、そのまま室温で3時間撹拌した後、反応液を25%塩化アンモニウム水溶液(100g)に注入し、分液漏斗で有機相と水相部を分離した。水相部をt−ブチルメチルエーテル(30g)で2回抽出した後、合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。得られた粗生成物12.54gに炭酸ナトリウムを少量添加して減圧蒸留することで2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノール(参考品3:収量10.25g,収率84.6%,純度98.2%)を得た。
【0093】
2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノール(参考品3)の物性データ
沸点:87℃/0.1kPa
H NMR(CDCl,400MHz) δ 0.76(d,3H,J=6.8Hz),0.79−0.88(m,2H),0.86(d,3H,J=6.8Hz),0.90(d,3H,J=6.8Hz),0.96(m,1H),1.18(m,1H),1.22(s,3H),1.22(s,3H),1.33(m,1H),1.61(m,2H),1.69(ddd,1H,J=14.4,6.8,4.4Hz),1.77(ddd,1H,J=14.4,7.6,4.4Hz),2.13(m,2H),3.03(dt,1H,J=4.4,10.8Hz),3.50(ddd,1H,J=9.2,6.8,4.4Hz),3.68(s,1H),3.89(ddd,1H,J=9.2,7.6,4.4Hz)。
13C NMR(CDCl,100MHz) δ 16.13,21.03,22.37,23.25,25.77,29.07,29.44,31.57,34.53,40.10,41.68,48.23,65.71,70.49,79.89。
【0094】
MS(EI,70eV) m/z 41(63),43(59),55(73),57(49),59(55),67(20),69(100),71(90),81(50),83(96),87(21),89(23),95(37),97(22),101(23),123(17),138(39),139(55),155(17),157(22),167(1),181(1),224(1),227(1),242(M+,0.1)。
[α](20℃、D線、c=2.05 in CHCl)=−85.4。
【0095】
実施例4:2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールを含有する乳化組成物の調製
油相部として2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノール(1.0g)、SAIB9.0gおよびMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)9.0gを混合溶解し、水相部としてグリセリン66g、イオン交換水11gおよびデカグリセリンモノオレエート(4.0g)を混合溶解し、両液をTK−ホモジナイザー(プライミクス社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとした(本発明品4:2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノール濃度1.0%)。
【0096】
香気評価
本発明品4の1%水溶液をサンプル瓶に用意し、5名のパネラーにより、瓶口からの香気評価および香気評価液を含浸させたにおい紙により香気評価を行った。
【0097】
5名のパネラーによる平均的な評価結果:スパイシーでハーバルな香気
苦味評価
2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールを99.5%エタノールに対し10(W/W)%溶解した溶液を調製した(参考品4)。本発明品4および参考品4を純水にて希釈し、2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールを表3に示した濃度とした溶液を調製した。それぞれの溶液を、5名のパネラーにより、そのまま口に入れた時、さらに飲み下した時の苦味を総合して評価した。苦味の強度を以下の基準(苦味が全く感じられない=0点、苦味をわずかに感じる=2点、苦味を多少感じる=4点、苦味を明らかに感じる=6点、苦味を強く感じる=8点、苦味を非常に強く感じる=10点)とし、苦味の質についてコメントを付した。5名のパネラーの平均的な評価結果を表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
表3に示した通り、2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノールの水溶液は、エタノール希釈品および乳化組成物のいずれも0.5ppm〜100ppmの範囲で苦味を感じると評価された。乳化組成物を水に希釈した場合と、エタノール溶液を水に希釈した場合の比較では、同一濃度の4−メンチルオキシ−2−ブタノールの水溶液において、苦味の強度はそれほど差がないが、乳化組成物を水に希釈した場合の方がエタノール溶液を水に希釈した場合よりも、苦味の立ち上がりが遅く、苦味がよりさわやかでマイルドであった。また、乳化物の苦味はナリンジンの苦味を想起させる苦味であるという評価であった。
【0100】
実施例5:ビールテイスト飲料に対する添加効果
市販のビールテイスト飲料への本発明品1を0.1%(4−メンチルオキシ−2−ブタノン濃度10ppm)または本発明品4を0.1%(2−メチル−4−メンチルオキシ−2−ブタノール濃度10ppm)添加し、それぞれ5名のパネラーにより、苦味、飲みごたえ、咽喉ごし、味の切れ、後味の観点から官能評価した。その平均的な官能評価結果は、以下の通りである。
【0101】
本発明品1を添加したビールテイスト飲料は、無添加品に比べて、良好な苦味が感じられ、また、喉越しおよび味のきれに関して顕著な効果が感じられた。また、飲みごたえに関してはわずかに増し、後味も多少改善された。
【0102】
本発明品4を添加したビールテイスト飲料は、無添加品に比べて、良好な苦味が感じられ、また、喉越しおよび味のきれに関して顕著な効果が感じられた。また、飲みごたえに関してはわずかに増し、後味も多少改善された。
【0103】
実施例6:オレンジ様乳化香料組成物
表4に従って参考品5〜7のオレンジ調合香料組成物を調整した。
【0104】
【表4】
【0105】
油相部として表4のオレンジ様調合香料組成物(参考品5、参考品6または参考品7)100g、水相部としてグリセリン312.5g、イオン交換水65gにデカグリセリンモノステアレート22.5g溶解したものを調製し、両液をTK−ホモジナイザー(プライミクス社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとしたオレンジ様乳化香料組成物を得た。参考品5の乳化組成物を比較品1、参考品6の乳化組成物を本発明品5、参考品7の乳化組成物を本発明品6とした。
【0106】
それぞれのオレンジ様乳化香料組成物(比較品1、本発明品5および本発明品6)を下記表5に示した処方の飲料基材に添加しオレンジ果汁飲料を調製した。
【0107】
【表5】
【0108】
香味評価は熟練したパネラー5名を選定し、比較品1、本発明品5または本発明品6を添加したオレンジ果汁飲料を飲食した時の苦味と香味評価項目としてオレンジ果汁飲料の果肉感、新鮮感、果皮感、完熟感について評価した。評価は比較品1の香味を基準として、果汁飲料をそのまま口に入れた時、さらに飲み下した時の香味を総合して評価した。苦味は以下の基準(苦味が全く感じられない=−点、苦味が明確に感じられない=+/−点、苦味を感じる=+点、苦味を強く感じる=++点、苦味が強すぎる=+++点)として、飲食時の香味評価として、果肉感、新鮮感、果皮感、完熟感については以下の基準(感じられない=−点、明確に感じられない=+/−点、感じる=+点、強く感じる=++点)として評価を行った。また、香味評価のコメントを記載した。その平均的な香味評価結果を表6に示す。
【0109】
【表6】
【0110】
表6に示すとおり、本発明品が添加されたオレンジ果汁飲料は、天然感を有するオレンジの風味が再現されていた。すなわち、オレンジの果皮感が賦与され、新鮮な生のオレンジを食した時を連想させる香味が強調されているとの評価であった。
【0111】
実施例7:ミント様乳化香料組成物
表7に従って参考品8〜10のミントフレーバーを調製した。
【0112】
【表7】
【0113】
油相部として表7のミント様調合香料組成物(参考品8、参考品9または参考品10)100g、水相部としてグリセリン312.5g、イオン交換水65gにデカグリセリンモノステアレート22.5g溶解したものを調製し、両液をTK−ホモジナイザー(プライミクス社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行い、O/W型エマルジョンとしたミント様乳化香料組成物を得た。参考品8の乳化組成物を比較品2、参考品9の乳化組成物を本発明品7、参考品10の乳化組成物を本発明品8とした。
【0114】
それぞれのミント様乳化香料組成物(本発明品7、8または比較品2)を下記表8に示した処方の飲料基材に添加し、常法にしたがってミント風味チューイングガムを調製した。
【0115】
【表8】
【0116】
香味評価は熟練したパネラー5名を選定し、本発明品7、8または比較品2を添加したミント風味チューイングガムを咀嚼した時の香味評価項目としてミント風味チューイングガムの苦味、清涼感、ハーブ感、天然感、薬品感について評価した。評価は比較品2を添加したものを基準として、チューイングガムを噛み始めた時、さらに10分間咀嚼した時の香味を総合して評価した。苦味は以下の基準(苦味が全く感じられない=−点、苦味が明確に感じられない=+/−点、苦味を感じる=+点、苦味を強く感じる=++点、苦味が強すぎる=+++点)として、咀嚼時の香味評価として、清涼感、ハーブ感、天然感、薬品感については以下の基準(感じられない=−点、明確に感じられない=+/−点、感じる=+点、強く感じる=++点)として評価を行った。香味評価を表9に示す。
【0117】
【表9】
【0118】
表9に示すとおり、比較品2を添加したミント風味チューイングガムは、清涼感は強いが、苦味、ハーブ感が弱く、薬品感もあり天然感に乏しかった。それに対し本発明品7または8を添加したミント風味チューイングガムはさわやかな苦味がミントの清涼感と一体化し、天然感が賦与され、比較品2で感じられた薬品感が抑制されているとの評価であった。