(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クロスアームユニット側に取り付けられたカップリング間ピッチを伸縮可能に構成すると共に、クロスバー側に取り付けられたカップリング間ピッチが固定されていることを特徴とする請求項1に記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような特許文献1のワーク搬送装置にあっては、左右アームユニットの先端のカップリング間ピッチと、これと対応して連結(係合)し合うクロスバーユニット側のカップリング間ピッチと、を完全に一致させる必要がある。
【0006】
すなわち、
(1)連結し合うカップリング間ピッチが少しでも異なると、機械(装置)にストレスがかかり破損の原因となる。
このため、複数のクロスバーユニットを着脱交換するような場合には、すべてのクロスバーユニットのすべてのカップリング間ピッチを精確に合わせることが必要であるが、このようなことは実際には難しく、複数のクロスバーユニットを着脱交換することへの対応は実際には難しいといった実情がある。
(2)また、高速搬送等の要請からクロスバーは軽量化、高剛性化されるため、材料にCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)が使用されることが多いが、アームはアルミまたは鋳鉄が多い。CFRPと金属(アルミや鋳鉄など)は線膨張係数が大きく異なり温度変化によってカップリング間ピッチが変化するため、着脱が円滑にできなくなると共に、上述した破損の問題が一層顕著になるといった実情がある。
【0007】
なお、特許文献2に記載されるワーク搬送装置のように、右アームユニット及び左アームユニット(スカラロボット)と、クロスバーユニットと、が一つのカップリングにて着脱可能に連結される構造としたものも提案されており、かかるワーク搬送装置においては、上述したような2つのカップリング同士のピッチ間の寸法差(製造誤差や熱膨張等の変形による寸法差など)の問題はない。
しかしながら、クロスバーを一点支持する構造(単一のカップリングで支持する構造)であるため、剛性が低く、左右方向(ワーク搬送横方向)においてサイズの大きいワークを搬送する場合などにおいて、搬送時の揺れが大きくなるため高速搬送が難しいといった実情がある。
【0008】
また、クロスバーを一点支持する構造であっても、クロスバーの厚みを増して断面積を大きくすれば剛性を改善することも期待できるが、クロスバーの厚みが増した分だけプレス装置のスライドとの隙間が減るため、高速搬送には適さなくなる、といった実情がある。すなわち、上下動するスライドとの干渉を避けつつクロスバーが金型上まで浸入してワークを金型に対して搬入或いは搬出するため、クロスバーの高さ方向の厚みが増すと、その分だけスライドと干渉しないようにクロスバーの侵入を遅らせる必要があるため、高速搬送を阻害する要因となる。
【0009】
本発明は、上述したような実情に鑑みなされたもので、右アームユニット及び左2アームユニット(2台のスカラロボット)と、これらの先端に連結される共通のクロスアームユニットに対して着脱可能に連結されるクロスバーユニットと、を有するワーク搬送装置において、クロスアームユニットと、クロスバーユニットと、を円滑かつ高精度に着脱可能に連結することができると共に、高い装置剛性を実現できるワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、
基端側が第1関節を介して水平面内を回転自在に支持される第1アームと、
該第1アームの先端側にその基端側が第2関節を介して水平面内を回転自在に支持される第2アームと、
第1アームを第1関節廻りに回転駆動する第1アーム駆動機構と、
第2アームを第1アームに対して第2関節廻りに回転駆動する第2アーム駆動機構と、
を含んでそれぞれ構成される右アームユニット及び左アームユニットを備えたプレス機械のワーク搬送装置であって、
ワーク搬送方向の右側に配設される右アームユニット及びワーク搬送方向の左側に配設される左アームユニットの第2アームの先端同士を、第3関節を介して水平面内を回転自在に連結するクロスアームユニットと、
クロスアームユニットに着脱可能に連結されるクロスバーに支持されるワーク保持ツールを介してワークを解放可能に保持するクロスバーユニットと、
を備え、
クロスアームユニットと、クロスバーと、は、クロスアームユニットの長手方向において異なる位置に配設された少なくとも2組のカップリングを介して着脱可能に連結されると共に、
対応するカップリング同士を
接近させて連結する際の
対応するカップリング同士間の遊動により、クロスアームユニット側に取り付けられたカップリング間ピッチ或いはクロスバー側に取り付けられたカップリング間ピッチを伸縮可能に構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明において、クロスアームユニット側に取り付けられたカップリング間ピッチを伸縮可能に構成すると共に、クロスバー側に取り付けられたカップリング間ピッチが固定されていることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明において、
クロスアームユニットが
、右アームユニットと一体的なクロスアームユニット側と、左アームユニットと一体的なクロスアームユニット側と、に分かれており、それぞれの側のクロスアームユニットが、クロスアームユニットの長手方向における相対距離を伸縮可能に連結されていることで、
右アームユニットと一体的なクロスアームユニット側に固定される一のカップリングと、
左アームユニットと一体的なクロスアームユニット側に固定される一のカップリングと、
のカップリング間ピッチが、対応するカップリング同士を連結する際に伸縮可能に構成されたことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、右アームユニット及び左アームユニット(2台のスカラロボット)と、これらの先端に連結される共通のクロスアームユニットに対して着脱可能に連結されるクロスバーユニットと、を有するワーク搬送装置において、クロスアームユニットと、クロスバーユニットと、を円滑かつ高精度に着脱可能に連結することができると共に、高い装置剛性を実現できるワーク搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るプレス機械のワーク搬送装置の一例を示す実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0016】
本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置1は、例えば、
図1に示すように、プレス加工工程(ワーク搬送方向)上流側のプレスマシン2(図ではベッドのみが示されている)と、プレス加工工程
下流側のプレスマシン3(図ではベッドのみが示されている)と、の間に配設され、プレスマシン2によりプレス加工されたワークを金型から取り出して、プレスマシン3へ搬送してプレスマシン3の金型にワークをセットした後、再びプレスマシン2へ戻って次のワークを搬送するといった一連の動作を繰り返すように構成されている。
【0017】
但し、本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置1は、上記の他にも、プレスマシンに対するワークの搬入・搬出に利用することができると共に、複数のプレスマシンが上流工程から下流工程へ並べられたプレスラインのプレスマシン間におけるワークの搬送にも利用することができる。従って、ワークには、素材としての金属板状部材、プレス成形後の完成製品の他、複数のプレスマシンによるプレス加工を受ける場合は加工途中の製品が含まれると共に、一枚の金属板状部材がプレス加工後に複数に分割されたものなども含まれる。
【0018】
ここで、本実施の形態に係るワーク搬送装置1は、
図1に示すように、
ワーク搬送方向であるX軸方向の幅方向であるY軸方向に沿ってコラム等に(或いは単独で)設置されるフレーム1Aに対して上下方向であるZ軸方向に移動可能に支持される昇降フレーム10(10A、10B)と、
該昇降フレーム10(10A,10B)に支持され、水平面内において(水平方向に)回動可能な右アームユニット20及び左アームユニット30と、
右アームユニット20の先端に水平面内にて回転可能に連結されると共に、この右アームユニット20との連結位置とは長手方向の異なる位置にて左アームユニット30の先端に水平面内にて回転可能に連結されるクロスアームユニット40と、
クロスアームユニット40に着脱可能に連結されるクロスバー61に支持されるワーク保持ツールを介してワークを解放可能に保持するクロスバーユニット60と、
を含んで構成され、
クロスアームユニット40と、クロスバーユニット60(クロスバー61)と、は少なくとも2つのカップリング52、62にて連結されている。
【0019】
右アームユニット20(左アームユニット30)は、
図1に示すように、
昇降フレーム10(10A,10B)にその基端側が第1関節21A(31A)を介して水平面内を回転自在に支持される第1アーム21(31)と、
該第1アーム21(31)の先端側にその基端側が第2関節21B(31B)を介して水平面内を回転自在に支持される第2アーム22(32)と、
第1アーム21(31)を昇降フレーム10に対して第1関節廻りに回転駆動する第1アーム駆動機構23(33)と、
第2アーム22(32)を第1アーム21(31)に対して第2関節21B(31B)廻りに回転駆動する第2アーム駆動機構24(34)と、
を含んで構成されている。
【0020】
なお、右アームユニット20は、ワーク搬送中心を通る垂直面(XZ平面)に関して、左アームユニット30と略対称(面対称)に構成され、右アームユニット20はワーク搬送方向の右側(上流側から見て右側)に配設され、左アームユニットはワーク搬送方向の左側(上流側から見て左側)に配設されている。
【0021】
また、本実施の形態に係るワーク搬送装置1には、前記2台の右アームユニット20(左アームユニット30)(スカラロボット)を昇降フレーム10(10A,10B)を介してZ軸方向に移動可能に構成された昇降機構11(11A,11B)が備えられている。例えば、昇降機構11(11A,11B)は、サーボモータ、ボールネジ、ボールネジナット(スクリュウ)、リニアガイドレールを含んで構成され、略垂直(Z軸方向)に配設されるボールネジに対して昇降(上下動)されるボールネジナットに昇降フレーム10(10A,10B)が接続された構成とすることができる。
【0022】
但し、本実施の形態において、昇降フレーム10(10A,10B)及び昇降機構11(11A,11B)を省略し、右アームユニット20と左アームユニット30を共通のフレーム等に支持させる構成とすることなども可能である。
【0023】
ここで、クロスアームユニット40は、前記2台の右アームユニット20及び左アームユニット30(スカラロボット)の第2アーム22、32の先端同士を、第3関節22A、32Aを介して水平面内を回転自在に連結しているが、より詳しくは、以下のように構成されている。
【0024】
すなわち、前記クロスアームユニット40は、
図2〜
図4に示すように、下記の右チルト駆動装置41、右フランジ42、右ピン43、右ブラケット44、右ブロック45、右固定ブロック46、左チルト駆動装置47、左フランジ48、左ピン49、左ブラケット50、左バー51を含んで構成されている。
【0025】
右チルト駆動装置41は、一端側(
図2において右端側)が右アームユニット20の第2アーム22の先端に第3関節22Aを介して水平面内において回転可能に連結されると共に、他端側(
図2において左端側)が右フランジ42に接続され、一端側に対して他端側の右フランジ42をクロスアームユニット40の長手方向軸(Y軸)廻りに所定に回転駆動可能(チルト動作可能)な回転駆動装置を含んで構成されることができる。
なお、かかる回転駆動装置はサーボモータ、減速機等を含んで構成されることができるが、本実施の形態において、当該回転駆動装置は省略することもできる。
【0026】
右フランジ42は、右チルト駆動装置41の他端である出力部(減速機出力軸)に連結されると共に、該右フランジ42の外周には一対の右ピン43がワーク搬送方向に沿って水平にそれぞれ逆向きに(ワーク搬送方向上流側と下流側に向かって)突出して設けられている。
【0027】
右ブラケット44は、
図2において右端側に突出する一対の脚部44Aが設けられていて、この脚部44Aが右ピン43の周囲に(ワーク搬送方向X軸廻りに)回転自在に支持されている右ブロック45を介して、略垂直面内において回動自在に右フランジ42に支持される一方、
図2において左端側は、ブラケット44の外周には搬送方向に沿って水平にそれぞれ逆向きに突出して設けられている一対の略矩形状の右固定ブロック46を介して、対応する左バー51を支持している。
【0028】
なお、右ブラケット44の一対の脚部44Aに開口され、右ブロック45を収容する開口44Bは、その垂直方向における開口寸法が右ブロック45の垂直方向寸法とほぼ同じに設定されることで上下方向における遊動を所定に規制しつつ、クロスアーム長手方向(ワーク搬送横方向、左右方向)における開口寸法が右ブロック45のクロスアーム長手方向寸法より若干大きく設定されることで、右ブラケット44と、右ブロック45延いては右フランジ42と、がクロスアーム長手方向に関して所定に(微小に)相対移動可能に、右ブロック45延いては右フランジ42を支持している。
【0029】
また、各左バー51の右端側にそれぞれ開口され、右固定ブロック46を収容する開口51Aは、その垂直方向における開口寸法が略矩形状の右固定ブロック46の垂直方向寸法とほぼ同じに設定されることで上下方向における遊動を所定に規制し、クロスアーム長手方向(ワーク搬送横方向、左右方向)における開口寸法が右固定ブロック46のクロスアーム長手方向寸法より若干大きく設定されることで、左バー51と、右固定ブロック46と、がクロスアーム長手方向に関して所定に(微小に)相対移動可能に右固定ブロック46を支持している。
また、右ブラケット44の下面には、カップリング雄52(52A)が固定的に取り付けられている。
【0030】
なお、前記右ブロック45は、外形が矩形形状を有し略中央に穴が開けられた形状(四角柱状の外形形状)で、この穴と右ピン43が連結され、ワーク搬送方向軸(右ピン43の軸方向)廻りに回転可能に右ピン43に支持されている。
【0031】
前記右固定ブロック46は、外形が矩形形状を有する形状(四角柱状の外形形状)で、搬送方向上流側と下流側に向かってそれぞれ所定に突出するように右ブラケット44に固定的に備えられている。
【0032】
左チルト駆動装置47は、一端側(
図2において左端側)が左アームユニット30の第2アーム32の先端に第3関節32Aを介して水平面内において回転可能に連結されると共に、他端側(
図2において右端側)が左フランジ48に接続され、一端側に対して他端側の左フランジ48をクロスアームユニット40の長手方向軸(Y軸)廻りに所定に回転駆動可能(チルト動作可能)な回転駆動装置を含んで構成されることができる。
なお、かかる回転駆動装置はサーボモータ、減速機等を含んで構成されることができるが、本実施の形態において、当該回転駆動装置は省略することもできる。
【0033】
左フランジ48は、左チルト駆動装置47の他端である出力部(減速機出力軸)に連結され、該左フランジ48の外周には一対の左ピン49がワーク搬送方向に沿って水平にそれぞれ逆向きに(ワーク搬送方向上流側と下流側に向かって)突出して設けられている。
【0034】
左ブラケット50は、
図2において左端側に突出する一対の脚部50Aが設けられていて、この脚部50Aに設けられた開口50Bが左ピン49に(ワーク搬送方向X軸廻りに)回転自在に支持される一方、
図2において右端側は、ワーク搬送方向の上流側及び下流側に備えられる一対の左バー51を締結等(接着、溶接などであってもよい)により固定的に支持している。なお、削り出しなどの方法によれば、左バー51を右ブラケット44と一体で形成することも可能である。
また、左ブラケット50の下面には、カップリング雄52(52B)が固定的に取り付けられている。
【0035】
左バー51は、クロスアームユニット40の長手方向(ワーク搬送横方向:Y軸方向)に沿って延在され、一端(
図2において左端、基端)側は左ブラケット50に固定的に取り付けられ、他端(
図2において右端、先端)側の先端付近には矩形の開口(穴)51Aが設けられている。なお、開口51Aは、上述したように、右ブラケット44に設けられている右固定ブロック46に垂直方向への遊動は規制しつつワーク搬送横方向への所定の遊動を許容した状態で係合され、これにより、右固定ブロック46及び右ブラケット44は、左バー51をクロスアームユニット40の長手方向(ワーク搬送横方向:Y軸方向)に沿って所定に移動可能に支持している。
【0036】
カップリング雄52(52A、52B)は、右ブラケット44と左ブラケット50の下面に、それぞれ固定的に配置される。
カップリング雄52(52A、52B)に対応するカップリング雌62(62A、62B)が、クロスバーユニット60のクロスバー61上に配置され、カップリング雄52(52A、52B)とカップリング雌62(62A、62B)は接近してエア供給等により係合される係合状態(
図4の状態)と、エア供給等が停止されることで係合が解放されて相互に離間可能な解放状態(
図3の状態)と、を切り換え可能に構成され、これによりクロスアームユニット40に対してクロスバーユニット60を着脱自在(連結・取り外し)自在に支持させることが可能となっている。
但し、カップリング雄とカップリング雌は、
図2等に例示された場合に限らず、その位置を入れ替えて取り付けることも可能である。
【0037】
なお、カップリング雄52(52A、52B)とカップリング雌62(62A、62B)としては、例えば、入手容易な市販のクイックチェンジャ(ツールチェンジャ)(ビー・エル・オートテック株式会社製)などを採用することができる。
【0038】
例えば、
図6に示すように、カップリング雄52(52A、52B)は円筒状突起部521を有し、該円筒状突起部521には球状要素522が外内周に脱落しない程度に遊動可能に収容(
図6では周方向に均等に4箇所に収容)されており、エア(圧縮空気)が供給されるとピストン523が円筒状突起部521の内側を先端側に向けて移動し球体522を外側に押し出すことで、球体522が円筒状突起部521の外周から所定に突出維持されるように構成されている。
【0039】
なお、エア供給が停止されるとピストン523は円筒状突起部521の基端側(原位置)に移動され、ピストン523が球体522を外側に押し出すことが停止され、球体522はフリーとなって円筒状突起部521の収容穴で遊動し円筒状突起部521の外周への突出が無くなるように構成されている。
【0040】
一方、カップリング雌62(62A、62B)は、カップリング雄52(52A、52B)の円筒状突起部521を所定隙間で収容する円筒状開口部621を有し、カップリング雌62とカップリング雄52とを連結(係合)する際に、円筒状突起部521を収容するように構成されている。また、円筒状開口部621の内壁には、円筒状突起部521の外周から突出する球体522の外周側を収容する内周溝622が周方向に形成されていて、カップリング雌62とカップリング雄52とを連結(係合)する際に、エア供給により移動されるピストン523に内側から押されて球体522が円筒状突起部521の外周から所定に突出するが、この突出した球体522の外周側が内周溝622に収容されることで、カップリング雄52とカップリング雌62との上下方向への相対移動が規制され、カップリング雄52とカップリング雌62とが離脱することなく確実に連結(係合)されるようになっている(
図4(A)の状態)。
【0041】
なお、エア供給が停止されると図示しないバネの作用によりピストン523が元の位置へ戻り、これにより球体522を外側に押し出すことが停止されるため、球体522は円筒状突起部521の外周への突出が無くなり、球体522の外周側が内周溝622から解放されることとなり、カップリング雄52とカップリング雌62との連結(係合)が解放され、相互に離間することが可能となっている(
図3の状態)。
【0042】
なお、カップリング雄52とカップリング雌62との周方向における位置決めは、例えば、位置決めピン524と、これを収容する位置決め穴623と、によりなすことができる。
【0043】
クロスバーユニット60は、ワーク搬送方向に直交する方向(Y軸方向:シフト方向)に長い棒状のクロスバー61、及び図示しないワークを保持(把持)するワーク保持ツールを含んで構成されている。ワーク保持ツールはスパイダー(パイプ状要素)、バキュームカップ等の真空吸着手段或いは電磁石等の電磁吸着手段等を含んで構成され、バキュームカップや電磁石によりワークを吸着保持したり、吸着保持しているワークを解放することができるように構成されている。
【0044】
上記の構成を備えた本実施の形態に係るワーク搬送装置1においては、
図2や
図3に示すように、クロスバー61側(カップリング雌62A、62B)のカップリング間ピッチL2は固定であるが、クロスアームユニット40側(カップリング雄52A、52B)のカップリング間ピッチL1は、「左バー51の開口51Aと右ブラケット44の右固定ブロック46の間のクロスアームユニット40の長手方向(ワーク搬送横方向)における遊動分」及び「右ブラケット44の開口44Bと右フランジ42に支持されている右ブロック45との間のクロスアームユニット40の長手方向(ワーク搬送横方向)における遊動分」によって、クロスアームユニット40の長手方向(ワーク搬送横方向)において微小に変動(伸縮)可能となる。
【0045】
すなわち、本実施の形態においては、クロスアームユニット40が長手方向と略直交する方向に関して二つに(左右に)分割されている(右ブラケット44と、左ブラケット50と、に分割されている)と共に、右アームユニットと一体的なクロスアームユニット側(右ブラケット44)と、左アームユニットと一体的なクロスアームユニット側(左ブラケット50)と、が、長手方向における相対距離を伸縮可能に連結される(左バー51及び右固定ブロック46を介して長手方向における相対距離を伸縮可能に連結されている)ことで、
右アームユニットと一体的なクロスアームユニット側(右ブラケット44)に固定される一のカップリング(カップリング雄52A)と、
左アームユニットと一体的なクロスアームユニット側(左ブラケット50)に固定される一のカップリング(カップリング雄52B)と、
のカップリング間ピッチL1が、対応するカップリング同士(カップリング雄52Aに対してカップリング雌62A、カップリング雄52Bに対してカップリング雌62B)を連結する際に伸縮可能に構成されている。
【0046】
このため、カップリング間ピッチL1と、カップリング間ピッチL2と、が微小に異なっていても、カップリング間ピッチL1がカップリング間ピッチL2に合わせて変化(伸縮)することができる。従って、カップリング雄52A、52Bと、カップリング雌62A、62Bと、の間にピッチ誤差があっても、カップリング雄52A、52Bと、カップリング雌62A、62Bと、を円滑に連結(係合)させることができ、以ってクロスバーユニット60(クロスバー61)をクロスアームユニット40に対して円滑に着脱することが可能となる。
【0047】
更に、カップリング雄52A、52Bとカップリング雌62A、62Bとをエア等を供給して連結(係合)状態としても、右アームユニット20や左アームユニット30等の機械にストレスがかかることがないため、破損等によるトラブルの発生し難いワーク搬送装置を提供することに貢献可能である。
【0048】
ところで、例えば、カップリング雄52Aとカップリング雌62Aの中心位置(円筒状突起部521の中心と円筒状開口部621の中心と)を合わせたときにおけるカップリング雄52Bに対するカップリング雌62Bのワーク搬送方向における微小な位置ズレ(傾斜)は、左バー51が水平方向に撓み変形することで吸収することができるため、これによっても、カップリング雄52A、52Bとカップリング雌62A、62Bとをエア等を供給して連結(係合)状態としても、右アームユニット20や左アームユニット30等の機械にストレスがかかることがないため、破損等によるトラブルの発生し難いワーク搬送装置を提供することに貢献可能である。
但し、右アームユニット20や左アームユニット30の制御によって、第3関節22A,32Aの位置を微調整することで、前述した位置ズレ(傾斜)を吸収することも可能である。
【0049】
なお、カップリング雄52A、52Bと、カップリング雌62A、62Bと、は、円筒状突起522を円筒状開口部621に挿入する際には、それぞれある程度の位置ズレ(誤差)を許容するものであるが、エア等を供給して連結(係合)状態とされる際には、各カップリング雄雌間にて芯合わせがなされるから、ピッチ誤差があると、カップリング雄52A、52Bと、カップリング雌62A、62Bと、の間に無理な力が作用し、正しくチャック(係合)できない、或いは破損等が生じるおそれがあるが、本実施の形態によれば、このようなおそれを解消することができる。
【0050】
すなわち、本実施の形態に係るワーク搬送装置1によれば、クロスバー61側(カップリング雌62A、62B)のカップリングピッチL2が、クロスアームユニット40側(カップリング雄52A、52B)のカップリングピッチL1に対してある程度の誤差範囲内で製造されていれば、カップリング雄52A、52Bとカップリング雌62A、62Bとを連結(係合)する際に、カップリング雄52A、52B側のカップリングピッチL1が変動(伸縮)することにより、加えて左バー51が水平方向に撓み変形することも相俟って、その誤差を吸収することができ、以ってクロスバーユニット60(クロスバー61)をワーク搬送装置1のクロスアームユニット40に円滑に着脱可能に取り付けることが可能となるため、搬送すべきワークの仕様(形状等)に応じて予め設定されている複数種類のクロスバーユニット60を、容易かつ円滑に着脱(取り付け/取り外し)が可能となる。
【0051】
また、クロスアームユニット40とクロスバーユニット60とが係合して連結された状態では、クロスアームユニット40の長手方向に所定に変動(伸縮、或いは遊動)することが許容されているカップリングピッチL1を有するクロスアームユニット40側のカップリング雄52A、52Bが、カップリングピッチL2にて固定されているクロスバー61側のカップリング雌62A、62Bと係合することでクロスバー61側のカップリング雌62A、62Bと同じ剛性(クロスバー61が持つ剛性)を持つようになる(
図5参照)。
【0052】
つまり、本実施の形態に係るワーク搬送装置1におけるクロスバー61(クロスバーユニット60)の連結(係合)経路は、
図5において右側から、右アームユニット20の第2アーム22の先端、右ブラケット44、カップリング雄52A、カップリング雌62A、クロスバー61、カップリング雌62B、左ブラケット50、左アームユニット30の第2アーム32の先端を通ることになるため、連結前のような伸縮(遊動する部分がなく、極めて高い連結剛性を達成することができ、以ってワーク搬送装置1の剛性を高く維持することができる。
【0053】
すなわち、本実施の形態によれば、クロスアームユニット40とクロスバーユニット60とを連結(係合)する際には、カップリング雄52A、52B側のカップリングピッチL1(右アームユニット20の先端と左アームユニット30の先端との間隔)を微小に変動(伸縮)させて円滑な連結(係合)動作を実現する一方で、クロスアームユニット40とクロスバーユニット60とを連結(係合)した後には、右アームユニット20の先端と左アームユニット30の先端とを非常に高い剛性で連結した状態とすることができ、以ってワーク搬送装置1の剛性を上げることができる。
【0054】
ここにおいて、クロスバー61は比較的単純形状なため、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)により成形(製造)することができ、軽量、高剛性な構成を実現することが可能である。
一方で、比較的複雑な構成のクロスアームユニット40は軽量で低剛性な材料、形状などとしても、上述したようにクロスバーユニット60(クロスバー61)と連結した後には高い剛性を持つことができるため、ワーク搬送装置の低コスト化に貢献することができる。
【0055】
すなわち、本実施の形態によれば、右アームユニット及び左2アームユニット(2台のスカラロボット)と、これらの先端に連結される共通のクロスアームユニットに対して着脱可能に連結されるクロスバーユニットと、を有するワーク搬送装置において、クロスアームユニットと、クロスバーユニットと、を円滑かつ高精度に着脱可能に連結することができると共に、高い装置剛性を実現できるワーク搬送装置を提供することができる。
【0056】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。