特許第6391213号(P6391213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391213
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   F24F7/06 101A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-51362(P2013-51362)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-178056(P2014-178056A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月4日
【審判番号】不服2017-16314(P2017-16314/J1)
【審判請求日】2017年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏村 桂一
【合議体】
【審判長】 紀本 孝
【審判官】 宮崎 賢司
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−162979(JP,A)
【文献】 特開2011−56402(JP,A)
【文献】 特開2007−163009(JP,A)
【文献】 特開平4−225743(JP,A)
【文献】 特開2012−229856(JP,A)
【文献】 特開2012−82973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理により発生する油煙をフードの内面パネルにより捕集するレンジフードであって、
空気の流れを発生させるファンと、
前記空気の流れの流路上であって前記ファンより上流側に存在し、前記空気の流れを通過させる円盤状のフィルタと、
前記フィルタを回転させる電動機と、
前記フード内面に前記ファンと連通する連通口と、を備え、
前記フィルタは、前記連通口に設けられ、
前記ファンが空気の流れを発生させると共に前記電動機が前記フィルタを回転させることにより調理によって発生する空気に含まれる油分を捕集し、
前記フィルタが停止時には前記フィルタの下面は、前記内面パネルと面一となる、
レンジフード。
【請求項2】
前記フィルタは昇降手段を有し、前記フィルタの下面は、通常運転時には前記内面パネルより奥まって位置し、メンテナンス時には前記内面パネルと面一となることを特徴とする請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
メンテナンス時に前記フィルタの上面に当接する当接部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記フィルタは、メンテナンス時に回転しないように固定する固定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関し、特にフィルタを回転させるレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
調理器の上方または周囲に設置され、調理により発生した煙や油粒子、臭気を捕集して排気または室内に循環するレンジフードには、捕集した空気から油を分離回収するためのフィルタが設けられている。このフィルタは、油捕集率を高めることがフィルタの下流側の送風機やダクト等の汚れを防止し、これらのメンテナンス周期の長期化や長寿命化に貢献することから、円盤状のフィルタを高速回転させることで高い油捕集率を実現したレンジフードを本出願人自ら出願している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2011−290150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなレンジフードでは、フィルタの油捕集率は高いものの、構造の複雑さ故にフィルタ部分のメンテナンスが未だに手間がかかっている。
【0005】
そこで、本発明は、フィルタの設置位置に着目することでレンジフードおよびフィルタの優れたメンテナンス性(清掃性)を有するレンジフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、調理により発生する油煙をフードの内面パネルにより捕集するレンジフードであって、空気の流れを発生させるファンと、空気の流れの流路上であってファンより上流側に存在し、空気の流れを通過させる円盤状のフィルタと、フィルタを回転させる電動機と、フード内面にファンと連通する連通口と、を備え、フィルタは、連通口に設けられ、ファンが空気の流れを発生させると共に電動機がフィルタを回転させることにより調理によって発生する空気に含まれる油分を捕集し、フィルタが停止時にはフィルタの下面は内面パネルと面一となる、レンジフードが提供される。
これによれば、油分が付着するフィルタの下面と内面パネルとが面一となるため、清掃の際にはフード内面に付着した油分を拭き取る動作と一連に、フィルタ下面に付着した油分を拭き取ることが可能となり、清掃性が向上したレンジフードを提供することができる。
【0007】
さらに、フィルタは昇降手段を有し、フィルタの下面は、通常運転時には内面パネルより奥まって位置し、メンテナンス時には内面パネルと面一となることを特徴としてもよい。
これによれば、フィルタが通常運転時には内面パネルより奥まった位置で回転するため、フィルタ下面に付着した油分がフード内面に油分が飛び散ることがなくなる。
【0008】
さらに、メンテナンス時にフィルタの上面に当接する当接部材を備えることを特徴としてもよい。
これによれば、拭き掃除の際に、フィルタの上面からフィルタに当接することで、フィルタの変形や傾斜が抑えられるので、しっかりと拭き取ることができ、清掃性が向上する。
【0009】
さらに、フィルタは、メンテナンス時に回転しないように固定する固定手段を備えることを特徴としてもよい。
これによれば、拭き掃除の際にフィルタが回転しないため、拭き取り易くなり清掃性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、レンジフードおよびフィルタの優れたメンテナンス性(清掃性)を有するレンジフードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る第一実施例のレンジフードの(A)断面図、(B)第一変形例の断面図、(C)第二変形例の断面図。
図2】本発明に係る第二実施例のレンジフードの(A)通常運転時の断面図、(B)メンテナンス時の断面図。
図3】本発明に係る第三実施例のレンジフードの(A)通常運転時の断面図、(B)メンテナンス時の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1(A)を参照し、本発明にかかるレンジフード1について説明する。図1は、本実施例におけるレンジフード1の断面図である。なお、本明細書における断面図は、レンジフードの設置時における垂直方向であって左右方向の断面における断面図であるが、これらは、垂直方向であって前後方向の断面と捉えてもよい。
【0013】
レンジフード1は、下方または周囲で行われる調理によって発生する湯気や油煙等を捕集するための、上方に凹状の内面パネル5を内面に有する薄型のフード2を有する。フード2は、そのほぼ中央に位置する連通口20付近で、排気ダクト7に接続された送風機ボックス3と連結される。送風機ボックス3は、内部にシロッコファンであり空気の流れを発生させるファン4を有する。従って、ファン4が稼働すると連通口20は負圧となり、内面パネル5の下方の空気は連通口20を通して吸入され、排気ダクト7を通して外部に排出される。即ち、連通口20は、ファン4と連通し、ファン4が発生させた空気の流れの流路上であって、ファン4より上流側に位置する。
【0014】
連通口20には、空気の流れを通過させる孔を有する円盤状のフィルタ10と、フィルタ10の円盤の中心に回転軸を連結され、フィルタ10を回転させる電動機6が設けられる。従って、レンジフード1は、ファン4が発生させる空気の流れの流路上であって、ファン4よりその流れの上流側に存在し、その空気の流れ(D1)を図視で下から上に通過させる孔を有する円盤状のフィルタ10を、回転可能に備える。
【0015】
内面パネル5の下方の空気は、調理によって発生する湯気や油煙等を含んでおり、ファン4が稼働すると、連通口20に存在する、即ちファン4が発生させた空気の流れの流路上であってファン4より上流側に位置するフィルタ10の孔に吸引され、その孔を通過することになる。フィルタ10は、電動機6により回転可能に設けられており、レンジフード1が稼働(通常運転)すると、ファン4が空気の流れを発生させると共に電動機6がフィルタ10を回転させる。レンジフード1は、フィルタ10を回転させることにより、空気に含まれる油分を捕集する。
【0016】
フィルタ10の両側の表面における孔以外の部分は、突起物や凹凸がなく、平らで滑らかである平滑な面であることが望ましく、またフィルタ10の表面には親水性塗装等の表面処理が施されていることが望ましいものである。そして、フィルタ10は、フィルタ10の下面11が内面パネル5とほぼ面一となるように、具体的には、内面パネル5の表側表面とほぼ面一になるように設置される。これによれば、清掃の際にはフード内面に付着した油分を拭き取る動作と一連に、フィルタ下面に付着した油分を拭き取ることが可能となり、清掃性が向上したレンジフードを提供することができる。また、油分のほとんどはフィルタの表面で捕集され、フィルタの孔の側面で油分を捕集することはほとんどないので、フィルタの孔が油で目詰まりすることがさらに少なくなり、フィルタ自身の清掃/洗浄が容易になる。
【0017】
本実施例では、図1(B)に示すように、フィルタ10の外周縁を囲むように油分捕集部材60を着脱自在に備えることが好ましい。調理等で発生した油分は、空気の流れと共に流されてフィルタ10の下面付近に到達する。その下面付近に到達した油分の多くは、下面11の表面(孔のない部分)やその近傍で、フィルタ10の外周縁方向に弾き飛ばされる。その結果、円盤状のフィルタ10の外周縁を取り囲むように備えられた油分捕集部材60に、油分として捕集される。また、油分捕集部材60は、本図が示すように、油分捕集部材の60の下端に油溜まり61を備えることが好ましい。油分捕集部材60に油分として捕集された油分は油溜まり61に垂れ、回収できる。メンテナンス時に油分捕集部材60が取り外されると、下面11が内面パネル5の内面とほぼ面一となるように設置されたフィルタ10が現れ、清掃の際フード内面に付着した油分を拭き取る動作と一連に、フィルタ下面に付着した油分を拭き取ることができる。
【0018】
また、図1(C)が示すレンジフード1’は、内面パネル5’が一段奥まって形成されており、フィルタ10’は、フィルタ10’の下面11’が内面パネル5’の一段奥まった内面52’とほぼ面一となるように設置されてもよい。これによれば、内面パネル5’の段差部分51’が上記油分捕集部材の役割を果たすことができ、上記油分捕集部材は不要となる。その段差部分51’の下端に油溜まり61’を設けることで同様の機能を果たすことができる。これによると、メンテナンス時に油溜まり61’が取り外されると、下面11’が内面パネル5’の一段奥まった内面52’とほぼ面一となるように設置されたフィルタ10’が現れ、清掃の際フード内面に付着した油分を拭き取る動作と一連に、フィルタ下面に付着した油分を拭き取ることができる。
【0019】
<第二実施例>
図2を参照し、本発明にかかるレンジフード1Aについて説明する。図2(A)は、通常運転時のレンジフード1Aの断面図、図2(B)メンテナンス時のレンジフード1Aの断面図である。なお、上記実施例との重複記載を避けるため、異なる点に焦点を当てて説明する。レンジフード1Aの内面パネル5Aは、上記実施例の内面パネル5’と同じ構成をしており、内面パネル5Aは一段奥まった内面52Aを備える。
【0020】
本実施例では、フィルタ10Aは、通常運転時には、上記実施例のように下面11Aが内面パネル5Aの一段奥まった内面52Aとほぼ面一となるように設置されておらず、一段奥まった内面52Aより下方であり、かつ、内面パネルの全体的な内面5Aより上方、即ち、上下方向において内面パネル5Aの段差部分51Aのほぼ中央辺りに位置し、フィルタ10Aの下面11Aは、内面パネル5Aより奥まって位置している。これによれば、内面パネル5Aの段差部分51Aが油分捕集部材の役割を果たすことができる。
【0021】
フィルタ10Aは、電動機6Aとフィルタ10Aを一体的に上下方向に昇降する昇降手段30Aを有する。昇降手段30Aは、メンテナンス時には、内面パネル5Aと下面11Aとが面一となるように、通常運転時より下方に降下させる。また、昇降手段30Aは、メンテナンス時から通常運転時になるとき、上記通常運転時の位置になるように、上方へ上昇させる。また、油溜まり61Aの下面は、内面パネル5Aと面一になるように取り付けられている。ここで、メンテナンス時とは、運転停止時であってもメンテナンスモード設定時であってもよい。なお、メンテナンスモードとは、メンテナンスモードスイッチを押すことで、ファン4Aや電動機6Aの動作を停止すると共に、その他の駆動スイッチ(運転ON/OFF等)が無効となり、誤操作によるレンジフードの運転を回避した状態で清掃やメンテナンスが行えるというモードである。これによれば、フィルタ10Aが通常運転時には内面パネル5Aより奥まった位置で回転するため、フィルタ下面11Aに付着した油分がフード内面に油分が飛び散ることがなくなると共に、清掃の際フード内面5Aと油溜まり61Aに付着した油分を拭き取る動作と一連に、フィルタ下面に付着した油分を拭き取ることができる。
【0022】
<第三実施例>
図3を参照し、本発明にかかるレンジフード1Bについて説明する。図3(A)は、通常運転時のレンジフード1Bの断面図、図3(B)メンテナンス時のレンジフード1Bの断面図である。なお、上記実施例との重複記載を避けるため、異なる点に焦点を当てて説明する。レンジフード1Bの内面パネル5Bは、上記第一実施例の内面パネル5と同じ構成をしている。レンジフード1Bは、連通口20Bの側壁において、フィルタ10Bの上面12Bの周縁付近に当接部材40Bを備える。当接部材40Bは、通常運転時には側壁からわずかに突出している程度であり、フィルタ10Bの上面12Bには当接していない。
【0023】
当接部材40Bは、メンテナンス時には、通常運転時より側壁から長く突出することで、フィルタ10Bの上面12Bの周縁部に当接する。これによれば、フード内面5Bとフィルタ10Bの下面11Bに付着した油分を拭き取る際に、当接部材40Bがフィルタの上面12Bからフィルタ10Bに当接することで、フィルタ10Bの変形や傾斜が抑えられるので、しっかりと拭き取ることができ、清掃性が向上する。なお、当接部材40Bの出し入れの方法は特に限定されず、手動であっても電動であってもよい。また、当接部材40Bは、安定するので連通口20Bの側壁の90度毎に4か所設けることが好ましい。
【0024】
また、フィルタ10Bは、メンテナンス時に回転しないように固定する固定手段(図示せず)を備えてもよい。なお、固定手段は、機械的にフィルタ10Bや電動機6Bの回転軸を固定してもよいし、無励磁作動型電磁ブレーキを採用してもよい。これによれば、拭き掃除の際にフィルタが回転しないため、拭き取り易くなり清掃性が向上する。
【0025】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。即ち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に関し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状等の限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 レンジフード
2 フード
3 送風機ボックス
4 ファン
5 内面パネル
51 段差部分
52 奥まって形成された内面
6 電動機
7 排気ダクト
10 フィルタ
11 下面
12 上面
20 連通口
30 昇降手段
40 当接部材
60 油分捕集部材
61 油溜まり
D1 空気の流れる方向
図1
図2
図3