(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.概要>
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を説明する。なお、説明において、各図面に示す三次元直交座標系(XYZ)を用いる。直交座標系は、ベースシャーシ2に対して相対的に固定され、方向及び向きを示す。X軸方向は左右方向、Y軸方向は前後方向、Z軸方向は上下方向である。+X側は表示パネル3の表示面の左側、−X側は表示面の右側である。+Y側は表示面の正面側、−Y側は表示面の背面側である。+Z側は上側、−Z側は下側である。
【0017】
図1は、本実施の形態の表示システム1の外観を示す斜視図である。表示システム1は、自動車等の車両に搭載され、車室内で利用される車載装置である。表示システム1は、目的地への経路を案内するナビゲーション機能や車室内に音声を出力するオーディオ機能を備える。
【0018】
表示システム1は、表示システム1全体を支持するベースシャーシ2、及び各種情報を表示する表示パネル3を備える。
【0019】
ベースシャーシ2は、固定対象となるダッシュボード内部(すなわち、車両)に締結具で固定される。ベースシャーシ2は、表示システム1全体を支持する箱形のハウジングである。ベースシャーシ2は、表示システム1の本体部として機能する。本実施の形態では、ベースシャーシ2は、その底面の方向が略水平方向に沿って固定される。したがって、X軸方向及びY軸方向は略水平方向に沿い、Z軸方向は略鉛直方向に沿う。ベースシャーシ2は、CDやDVD等の各種メディアの挿入口を備える。
【0020】
表示パネル3は、液晶等のディスプレイ31を表示面に備えた薄型の表示装置である。表示パネル3は、表示システム1の表示部として機能する。表示パネル3の表示面の形状は、長手方向と短手方向とを有する略長方形である。車両に乗車したユーザ(主に運転者)は、表示パネル3のディスプレイ31を視認し、各種情報を得る。
【0021】
ディスプレイ31は、タッチパネルを備え、ユーザの操作を受け付ける。ユーザは、ディスプレイ31に表示されたコマンドボタンをタッチ操作し、表示システム1に各種指示を与える。
【0022】
図2は、表示パネル3の駆動の概要を示す。表示パネル3は、チルト機構21の動作により表示面の向きを上下方向に変更する。チルト機構21は、表示パネル3の下端側(−Z側)に接続されたメインスライダ4を前後方向(Y軸方向)に移動させることにより、左右方向(X軸方向)に沿った回転軸を中心に表示パネル3を傾斜させる(チルトさせる)。表示パネル3が傾斜すると、ベースシャーシ2内部が露出し、CDやDVD等のメディア挿入口MI(下段図)が現れる。
【0023】
チルト機構21は、表示パネル3の表示面の向きを傾斜させることで、メディア挿入口を覆った状態(全閉状態)(上段図)から、メディア挿入口を半分覆った状態(半開状態)(中段図)を経て、メディア挿入口MIを露出した状態(全開状態)(下段図)の間を変更できる。なお、表示パネル3がメディア挿入口を覆った全閉状態は、表示パネル3がベースシャーシ2に収納された収納状態でもある。収納状態とは、表示パネル3がベースシャーシ2内部に収納される状態のみならず、表示パネル3の裏面(表示面と反対面)がベースシャーシ2の前面(メディア挿入口を備える面)に当接した状態である。要するに、収納状態とは、表示パネル3がメディア挿入口を覆った状態であればよい。
【0024】
チルト機構21がメインスライダ4をベースシャーシ2内部に駆動し、表示パネル3をベースシャーシ2に当接させることで、表示パネル3はベースシャーシ2に固定された全閉状態となる。
【0025】
しかし、チルト機構21が繰り返し駆動することによる経年劣化や設計上の微小な誤差により、表示パネル3下端をベースシャーシ2に当接させても、表示パネル3上端がベースシャーシ2に当接しない状態、いわゆる逆チルト状態が生じる恐れがある。逆チルト状態が生じると、表示パネル3下端をベースシャーシ2に当接させても、表示パネル3の上端がベースシャーシ2に当接しない。表示パネル3上端には、メインスライダ4が接続されておらず、ベースシャーシ2に固定しようとする力が伝わりにくいからである。このため、表示パネル3が逆チルト状態となると、表示パネル3上端に緩みが生じ、表示パネル3に異音やガタツキが生じる。
【0026】
図3は、逆チルト状態を示す。表示パネル3下端は、メインスライダ4によりベースシャーシ2の内部方向(−Y方向)に引かれるため、ベースシャーシ2に当接する。しかし、表示パネル3上端は、経年劣化等によりベースシャーシ2の外部方向(+Y方向)に反ってしまい、ベースシャーシ2に当接しない。表示パネル3上端は車両の振動等に応じて振動し、ガタツキを生じる。このようなガタツキは、ユーザにとって不快であり、逆チルト状態の防止が望まれる。
【0027】
なお、表示パネル3のベースシャーシ2に当接する面の四隅には、エラストマ32が付加されている。エラストマ32は、弾力性を有するゴム状部材である。表示パネル3は、エラストマ32を介してベースシャーシ2に当接すると、エラストマ32の反発力により、緩みなく当接する。
【0028】
<1−2.表示パネルの動作>
表示パネル3の動作を説明する。
図4ないし
図7は表示パネル3の傾斜状態を説明する図であり、表示システム1を側面(−X側)から見た側面図である。なお、各図は、説明の便宜上、一部部材を透過して示す。また、表示システム1の備える構成の一部を省略して図示する。
【0029】
図4は、表示パネル3の全開状態ST1を示す。表示パネル3の全開状態ST1では、表示パネル3は、ベースシャーシ2の高さ方向(Z軸方向)の中程に設けられた凸部SLに、表示パネル3上端のエラストマ32が当接して動作が固定される。この際、メインスライダ4とモーションリンク6とを当接させると、表示パネル3をベースシャーシ2に固定する力を高めることができる。表示パネル3がベースシャーシ2に強固に固定されると、振動によるガタツキを防止できる。
【0030】
チルト機構21は、メインスライダ4、サブスライダ5、モーションリンク6、及び図示しないモータを備える。
【0031】
メインスライダ4は、平面の板状部材で、左右(X軸方向)端部が前方向(+Y方向)へ伸びた腕状部を備える。メインスライダ4の腕状部の先端は、表示パネル3の下端と第1接続部41で回動可能に接続される。
【0032】
サブスライダ5は、平面の板状部材で、左右(X軸方向)端部が上方向(+Z方向)へ突き出た凸部を備える。サブスライダ5の凸部は、後述のモーションリンク6の一端と第3接続部51で回動可能に接続される。
【0033】
モーションリンク6は、表示パネル3を支持する略L字型の支持部材である。モーションリンク6の略L字型の長手側の長さは、表示パネル3の半分程度である。モーションリンク6の一端(略L字型の長手側)は、表示パネル3の上下端の中心付近に第2接続部61で回動可能に接続される。第2接続部61は、チルト機構21が表示パネル3を回転する際の回転軸となる。表示パネル3の回転方向は、表示パネル3下端に接続されたメインスライダ4の前後方向(Y軸方向)の移動距離により規定される。モーションリンク6の他端(略L字型の短手側)は、サブスライダ5の凸部に第3接続部51で回動可能に接続される。なお、モーションリンク6は、表示システム1の支持部として機能する。
【0034】
表示システム1は、メインスライダ4の一部に係合した可変抵抗器である位置センサ(図示せず)を利用し、メインスライダ4がいずれの位置にあるか検出する。これにより、表示システム1は、図示しないモータを駆動して、メインスライダ4を可動範囲の任意の位置に移動させる。
【0035】
メインスライダ4は、モータにより駆動力を得、ベースシャーシ2の底面と平行に直線的に前後方向(Y軸方向)へ往復移動する。メインスライダ4は、表示パネル3の上下端の距離の8分程度だけベースシャーシ2から正面方向(+Y方向)に移動する。なお、メインスライダ4は、表示システム1の第1移動部として機能する。
【0036】
サブスライダ5は、メインスライダ4から駆動力を得、ベースシャーシ2の底面と平行に直線的に前後方向(Y軸方向)へ移動する。サブスライダ5は、表示パネル3の上下端の距離の2分程度だけベースシャーシ2から正面方向(+Y方向)に移動する。なお、サブスライダ5は、表示システム1の第2移動部として機能する。
【0037】
メインスライダ4及びサブスライダ5がベースシャーシ2の正面方向(+Y方向)へ移動すると、表示パネル3は、回転軸となる第2接続部61を中心に回転する。表示パネル3上端に備わるエラストマ32がベースシャーシ2の凸部SLに当接すると、表示パネル3は、表示面を斜め上方へ傾斜させてベースシャーシ2内部を露出した全開状態ST1となる。なお、メインスライダ4及びサブスライダ5の動作は、後に詳述する。
【0038】
図5は、表示パネル3の半開状態ST2を示す。半開状態ST2は、
図4で示した表示パネル3の全開状態ST1から、メインスライダ4をベースシャーシ2の背面側(−Y側)へ移動させた状態である。
図4に示した全開状態ST1からメインスライダ4が背面側(−Y側)に移動すると、表示パネル3の下端は、回転軸を中心に背面側へ回転移動する。これにより、第1接続部41と第2接続部61とは、全開状態ST1に比較して垂直方向(Z軸方向)に近くなる。このため、表示パネル3の傾斜が垂直方向(Z軸方向)に近くなり、表示パネル3は半開状態ST2となる。
【0039】
図6は、表示パネル3の上端当接状態ST3を示す。上端当接状態ST3は、
図5で示した表示パネル3の半開状態ST2から、メインスライダ4及びサブスライダ5をベースシャーシ2の背面側(−Y側)へ移動させた状態であり、表示パネル3の上端がベースシャーシ2に当接した状態である。
図5に示した半開状態ST2から、表示パネル3の下端は回転軸を中心に背面側へさらに回転移動し、表示パネル3の傾斜が半開状態ST2よりも垂直方向(Z軸方向)に近づき、表示パネル3は上端当接状態ST3となる。上端当接状態ST3における表示パネル3の傾斜角度は、垂直方向(Z軸方向)に対して角度θである。角度θは、例えば、1.6[°]である。この際、表示パネル3の傾斜角度が角度θとなるよう、第1接続部41は第2接続部61より前面側(+Y側)、すなわちベースシャーシ2の外側に配置される。これにより、表示パネル3の上端は、下端よりも先にベースシャーシ2に当接する。すなわち、表示パネル3の上端のみベースシャーシ2に当接し、下端はベースシャーシ2に当接しない状態となる。このように、第1接続部41を第2接続部61よりベースシャーシ2外側に配置して、表示パネル3の上端のみベースシャーシ2に当接し、下端はベースシャーシ2に当接しない状態となるようメインスライダ4及びサブスライダ5を配置することで、表示パネル3が逆チルト状態でベースシャーシ2に当接するのを防止できる。すなわち、表示パネル3を角度θだけ傾斜させておくことで、経年劣化等により表示パネル3上端が多少外側へ反ったとしても(多少逆チルト状態を生じたとしても)、
図3に示したような完全な逆チルト状態を防止できる。また、メインスライダ4が接続されていないために当接させる力が伝わりにくい表示パネル3上端を先にベースシャーシ2に当接させ、メインスライダ4が接続された下端を後にベースシャーシ2に当接させることで、表示パネル3全体を緩みなくベースシャーシ2に当接できる。
【0040】
図7は、表示パネル3の全閉状態ST4を示す。全閉状態ST4は、
図6で示した表示パネル3の上端当接状態ST3から、メインスライダ4をベースシャーシ2の背面側(−Y側)へ移動させた状態であり、表示パネル3の上端及び下端がベースシャーシ2に当接した状態である。すなわち、表示パネル3の裏面(表示面と反対面)がベースシャーシ2に当接した状態である。
図5に示した上端当接状態ST3から、メインスライダ4がさらに平面側へ移動し、表示パネル3の下端のエラストマ32がベースシャーシ2に当接する。これにより、ベースシャーシ2の内部の全てが表示パネル3で覆われる全閉状態ST4となる。すなわち、上端当接状態ST3で示した角度θを0[°]にする動作である。
【0041】
メインスライダ4は、表示パネル3の状態ST1からST4に到る全ての経過において移動する。サブスライダ5は、表示パネル3の状態ST2からST3に到る経過において移動する。サブスライダ5が、表示パネル3の状態ST2からST3に到る経過においてメインスライダ4と共に移動することで、表示パネル3上端とベースシャーシ2との間に空間を生じ、表示パネル3上端がベースシャーシ2と接触せずに回転移動できる。かかる空間は、表示パネル3が全閉状態から半開状態に移行する際に特に有効となる。なお、表示パネル3を、全閉状態ST4から上端当接状態ST3及び半開状態ST2を経て全開状態ST1とするには、表示パネル3について上記と逆の動作が実行される。
【0042】
<1−3.スライダの動作>
メインスライダ4及びサブスライダ5の動作を説明する。
図8ないし
図11は、メインスライダ4及びサブスライダ5の動作を説明する図であり、表示システム1を上方(+Z側)から見た平面図である。なお、各図は、説明の便宜上、一部部材を透過して示す。また、表示システム1の備える構成の一部を省略して図示する。表示パネル3は点線で示す。
【0043】
図8は、表示パネル3の全開状態ST1を示す。
【0044】
ベースシャーシ2は、前後方向(Y軸方向)で背面側(−Y側)がややベースシャーシ2中心に向いた(いわゆる「ハ」の字型)2つのガイド溝2aを備える。
【0045】
メインスライダ4は、前後方向(Y軸方向)に延び、正面側(+Y側)端部がややベースシャーシ2中心方向に曲がった2つのガイド溝4aを備える。
【0046】
サブスライダ5は、左右方向(X軸方向)を向いた2つのガイド溝5aを備える。
【0047】
2つのガイド溝2a、ガイド溝4a、及びガイド溝5aは、2つの固定シャフト5bが各々嵌合する。なお、2つの固定シャフト5bは、ベースシャーシ2、メインスライダ4、及びサブスライダ5のいずれにも固定されない。固定シャフト5bは、表示パネル3の全開状態ST1では、ガイド溝2aの正面側(+Y側)端、ガイド溝4aの背面側(−Y側)端、及びガイド溝5aのベースシャーシ2外側(+X側又は−X側)端に位置する。
【0048】
チルト機構21は、駆動力を発生するモータ7、及びモータ7の駆動力を伝達する複数のギア71を備える。モータ7及び複数のギア71は、ベースシャーシ2の底面に配置される。
【0049】
メインスライダ4は、前後方向(Y軸方向)に沿ったラックギア72を備える。ラックギア72は、複数のギア71の一つと係合する。モータ7の駆動力は、複数のギア71及びラックギア72を介し、メインスライダ4に伝達される。
【0050】
表示パネル3の全開状態ST1において、モータ7が回転駆動すると、メインスライダ4は、2つのガイド溝4aに沿って背面側(−Y側)に移動する。この際、サブスライダ5は移動しない。駆動力が付与されていないからである。メインスライダ4が背面側(−Y側)に移動すると、やがて固定シャフト5bがガイド溝4aのベースシャーシ2中心方向に曲がった位置に到達する。
【0051】
図9は、表示パネル3の半開状態ST2を示し、固定シャフト5bがガイド溝4aのベースシャーシ2中心方向に曲がった位置に到達した状態を示す。
【0052】
表示パネル3の半開状態ST2において、モータ7がさらに回転駆動すると、メインスライダ4は、背面側(−Y側)に移動する力が付与される。メインスライダ4が、背面側(−Y側)に移動しようとすると、ガイド溝4aはベースシャーシ2中心方向に向けて曲がっているために、ガイド溝4aの内側の溝が固定シャフト5bを背面側(−Y側)に押し出すよう作用する。このため、固定シャフト5bに押し出されたサブスライダ5がガイド溝2aに沿って背面側(−Y側)に移動する。サブスライダ5は、前後方向(Y軸方向)には溝を備えないからである。また、固定シャフト5bは、ガイド溝5aを左右方向(X軸方向)に移動する。これにより、メインスライダ4及びサブスライダ5は、背面側(−Y側)へ同時に移動する。固定シャフト5bは、ガイド溝2a、ガイド溝4a、及びガイド溝5aを移動すると、やがてガイド溝2aの背面側(−Y側)端部に到達し、ガイド溝4aの正面側(+Y側)端部付近に到達する。
【0053】
なお、ガイド溝2aは、ガイド溝4aの前後方向(Y軸方向)部分より、背面側(−Y側)がややベースシャーシ2中心に向いているために、固定シャフト5bに応じて移動するサブスライダ5の移動速度は、メインスライダ4がガイド溝4aに沿って背面側(−Y側)に移動した速度よりも遅い。固定シャフト5bが移動するガイド溝2aは、前後方向(Y軸方向)で背面側(−Y側)がややベースシャーシ2中心に向いているため、すなわちガイド溝4aより斜めになっているため、前後方向における移動距離が短いからである。同じ駆動力で移動距離が短いので、前後方向への速度が遅くなる。
【0054】
図10は、表示パネル3の上端当接状態ST3を示し、固定シャフト5bがガイド溝2aの背面側(−Y側)端部に到達し、ガイド溝4aの正面側(+Y側)端部付近に到達した状態である。
【0055】
表示パネル3の上端当接状態ST3において、モータ7がさらに回転駆動すると、メインスライダ4は、背面側(−Y側)に移動する力が付与される。メインスライダ4が、背面側(−Y側)に移動しようとすると、固定シャフト5bがガイド溝4aの正面側(+Y側)端部に到達する。これにより、メインスライダ4が接続されている表示パネル3の下端がベースシャーシ2に当接する。すなわち、上述の表示パネル3の垂直方向に対する角度θを0[°]とし、表示パネル3は全閉状態となる。この際、表示パネル3の上端が先にベースシャーシ2に当接し、後にメインスライダ4が接続されている表示パネル3の下端がベースシャーシ2に当接する。したがって、逆チルト状態で表示パネル3の下端をベースシャーシ2に当接させるのを防止し、緩みなく表示パネル3をベースシャーシ2に収納できる。
【0056】
図11は、表示パネル3の全閉状態ST4を示し、固定シャフト5bがガイド溝4aの正面側(+Y側)端部に到達した状態である。この状態において、表示パネル3はベースシャーシ2に収納されている。
【0057】
なお、表示パネル3を、全閉状態ST4から上端当接状態ST3及び半開状態ST2を経て全開状態ST1とするには、メインスライダ4及びサブスライダ5等について上記と逆の動作が実行される。
【0058】
次に、メインスライダ4、サブスライダ5、及びモーションリンク6の位置関係を説明する。
図12ないし
図15は、メインスライダ4、サブスライダ5、及びモーションリンク6の位置関係を示す図であり、表示システム1を斜めから見た斜視図である。なお、各図において表示パネル3の図示は省略する。
【0059】
図12は、表示パネル3の全開状態ST1における、表示システム1の斜視図である。図において、メインスライダ4は、正面側(+Y側)端部は、ベースシャーシ2から離れて位置する。サブスライダ5は、ベースシャーシ2正面側(+Y側)に位置する。モーションリンク6と表示パネル3の第2接続部61は、ベースシャーシ2底面に近く位置する。このため、表示パネル3の表示面は斜め上側(Z側かつY側でZ側に寄る方向)を向き、全開状態となる。
【0060】
図13は、表示パネル3の半開状態ST2における、表示システム1の斜視図である。図において、メインスライダ4は、前端部分を残してベースシャーシ2内に位置する。サブスライダ5は、全開状態ST1と同位置である。モーションリンク6は、長手部が垂直方向(Z軸方向)に近くなる。すなわち、メインスライダ4が背面側(−Y側)に移動したため、第1接続部41と第2接続部61との前後方向(Y軸方向)の距離が短縮され、第1接続部41と第2接続部61とが垂直方向(Z軸方向)に近くなったためである。このため、表示パネル3の表示面は斜め正面側(Z側かつY側でY側に寄る方向)を向き、半開状態となる。
【0061】
図14は、表示パネル3の上端当接状態ST3における、表示システム1の斜視図である。図において、メインスライダ4は、前端部がわずかにベースシャーシ2外部に位置する。これにより、
図6で説明した角度θが形成される。サブスライダ5は、最も背面側(−Y側)に位置し、全体がベースシャーシ2内に位置する。モーションリンク6は、長手部が半開状態ST2に比較して、さらに垂直方向(Z軸方向)に近くなる。
【0062】
図15は、表示パネル3の全閉状態ST4における、表示システム1の斜視図である。図において、メインスライダ4及びサブスライダ5は、全体がベースシャーシ2内に位置する。モーションリンク6は、長手部が垂直方向(Z軸方向)に近くなる。これにより、第1接続部41と第2接続部61とが略垂直方向(Z軸方向)に並んで位置する。
【0063】
<1−4.電気的構成>
表示システム1の電気的構成を説明する。
図16は、表示システム1の電気的構成を示す。
【0064】
表示システム1は、表示パネル3及びチルト機構21の他、電気的処理部として、制御部22、記憶部23、ナビゲーション部24、及びオーディオ部25を備える。これら電気的処理部は、ベースシャーシ2内部に設けられた基板上に配置される。なお、これら電気的処理部の一部あるいは全部を表示パネル3内に設けてもよい。
【0065】
制御部22は、CPU、RAM、及びROMを備えたマイクロコンピュータであり、予め記憶されたプログラムを実行し、表示システム1全体を統括的に制御する。制御部22は、表示パネル3のディスプレイ31及びチルト機構21に電気的に接続され、ディスプレイ31及びチルト機構21の動作を制御する。後述の表示制御部22a及び駆動制御部22bの動作は、CPUがプログラムを実行して実現される機能の一部である。
【0066】
表示制御部22aは、地図や文字等の画像データを生成し、ディスプレイ31に画像を表示する。
【0067】
駆動制御部22bは、チルト機構21の備えるモータ7を回転駆動させ、メインスライダ4、サブスライダ5、及びモーションリンク6の動作を制御する。この際、駆動制御部22bは、チルト機構21に備えた図示しない位置センサの信号を受信し、表示パネル3の傾斜角度を検出する。そして、検出した表示パネル3の傾斜角度に基づき、チルト機構21を制御し、表示パネル3を
図4ないし
図7に示す全開状態ST1から全閉状態ST4までの間を変動させる。
【0068】
記憶部23は、各種データを記憶可能な不揮発性の記憶装置である。例えば、フラッシュメモリである。記憶部23は、表示システム1の動作に必要な各種データを記憶する。
【0069】
ナビゲーション部24は、記憶部23に記憶された地図を利用し、目的地までの経路を案内するナビゲーション機能を実現する。
【0070】
オーディオ部25は、記憶部23に記憶された音声データを利用し、車室内に音声を出力するオーディオ機能を実現する。
【0071】
以上のように、本実施の形態の表示システム1は、表示パネル3を傾斜状態として表示パネル3の上端をベースシャーシ2に当接させた後、メインスライダ4と接続された表示パネル3の下端をベースシャーシ2に当接させて、表示パネル3を全閉状態とする。これにより、表示パネル3が逆チルト状態でベースシャーシ2に当接するのを防止し、表示パネル3をベースシャーシ2に緩みなく収納できる。
【0072】
<2.第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、第1の実施の形態と同様の符号を用い、説明を省略して用いる。
【0073】
<2−1.課題>
図17は、表示パネル3のベースシャーシ2への上端当接状態ST3を示す。モーションリンク6と表示パネル3の第2接続部61は、メインスライダ4と表示パネル3の第1接続部41よりも、ベースシャーシ2内部方向(−Y方向)へ接近する。すなわち、垂直方向(Z軸に平行)に対して斜めに位置する。この際、第1接続部41と第2接続部61との垂直方向(Z軸に平行)の距離は、距離D1である。次に、メインスライダ4に動力F1を加え、ベースシャーシ2内部方向(−Y方向)へ移動させ、上端当接状態ST3から
図18に示す全閉状態ST4へ移行する。全閉状態ST4では、第1接続部41と第2接続部61とは、垂直(Z軸に平行)に位置する。第1接続部41と第2接続部61とが、垂直位置となると、両者の垂直方向(Z軸に平行)の距離は、距離D2である。この際、斜め位置から垂直位置となったので、距離D2は距離D1よりも垂直方向にわずかに長い。この距離D2の距離D1より長い分だけ、サブスライダ5が引き上げられる。
【0074】
すなわち、全閉状態ST4では、メインスライダ4は、表示パネル3をベースシャーシ2に当接させ、第1接続部41と第2接続部61とが垂直位置となる。第1接続部41と第2接続部61との距離が長くなった分だけ、押し上げ荷重F2として第2接続部61に伝達し、さらに引き上げ荷重F3として第3接続部51に伝達する。かかる引き上げ荷重F3は、第3接続部51に接続されたサブスライダ5を引き上げる引き上げ荷重F4となる。サブスライダ5は、引き上げ荷重F4により、例えば、0.1[mm]から0.6[mm]程度引き上げられる。
【0075】
表示パネル3の開閉動作が繰り返されることにより、サブスライダ5に繰り返し引き上げ荷重F4が加えられると、サブスライダ5が上方(Z方向)へ撓みを生じ、変形の原因となる。サブスライダ5が変形すると、振動及び異音の発生の原因となる。また、サブスライダ5が変形すると、円滑な表示パネル3の開閉動作が阻害され、チルト機構21の故障の原因ともなる。
【0076】
<2−2.構成>
第2の実施の形態の表示システム1は、サブスライダ5の撓みを抑制するバネ状部を備える。
図19は、サブスライダ5の撓みによる変形を抑制するバネ状部26を備えた表示システム1を示す。
【0077】
バネ状部26は、長手部と短手部が鈍角の略L字形状を形成し、X軸方向に幅を有する板状部材である。バネ状部26の略L字形状をなす鈍角外側がサブスライダ5と接する。なお、バネ状部26は、表示システム1の抑制部として機能する。
【0078】
バネ状部26は、長手部の一端がベースシャーシ2の内側壁面(ZY面)に配置された設置部26aに接続され、サブスライダ5へ引き上げ荷重F4と反対方向(−Z方向)へ抑制力F5を加える。
【0079】
図20は、表示システム1を上方(+Z方向)から下方(−Z方向)へ、各構成を透過して見た平面図である。バネ状部26は、サブスライダ5の左右(+X方向及び−X方向)両端に各々設置される。サブスライダ5がモーションリンク6と接続される位置、すなわちサブスライダ5の左右両端位置において、サブスライダ5への引き上げ荷重F4が各々生じるからである。
【0080】
このように、第2の実施の形態の表示システム1は、サブスライダ5の撓みによる変形を抑制するバネ状部26を備えた。したがって、サブスライダ5に引き上げ荷重F4が加えられても、サブスライダ5を上方(Z方向)へ撓ませる応力を緩和でき、サブスライダ5の変形を防止できる。また、サブスライダ5の変形に基づく、振動及び異音の発生を防止できる。このため、チルト機構21の故障の原因を防止でき、表示パネル3の円滑な開閉動作を維持できる。
【0081】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかし、本発明は上記実施の形態に限定されない。変形可能である。以下、変形例を説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全形態は、適宜組み合わせ可能である。
【0082】
上記実施の形態では、表示システム1は、自動車等の車両で使用されると説明した。しかし、表示システム1は、家庭や店舗、オフィス、工場等の建物で使用されてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、制御機能がプログラムに従ったCPUの演算処理によりソフトウェア的に実現されると説明した。しかし、制御機能の一部は、電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。