【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 石澤誠也、宮田英男、松野泰行、井上貴志が発明した「スクリーン引出装置」を組み込んだ「破砕機(フジウッドホッガー、型式:SL1560D)」を、平成25年(2013年)10月1日に、丸玉産業株式会社向けに出荷した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
すなわち、スクリーン上には様々な種類の破砕片が落下し、その一部がそこを通過していく。その為、経年変化により目詰まり、過大な摩耗、変形等の状態が発生し、それらの状態を放置すると、破砕機としての破砕性能が低下してしまうことになる。
そこで、定期的に、スクリーンをケーシング内から引き出して、目詰まり状態を清掃し解消する作業や、摩耗や変形したスクリーン開口穴を再生すべくスクリーン交換作業が行われる。
ところが、長期間使用されたスクリーンはケーシングに強固に固着された状態になっており、これをケーシングから引き出すことは極めて困難な作業であった。具体的には、長尺の棒体を適宜の状態で差し込んでそれをハンマで叩くことにより引き出す、ワイヤを連結して機械で引き出す、主軸側とスクリーンとの間に別途部材を介在させ主軸を回転させることにより引き出す、といったような作業が必要になる。
そのため、スクリーン引出作業に多くの労力と長い時間を要してしまい、それによって、破砕機の稼働率が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、スクリーンの引出作業を容易に行うことができ、それによって、稼働率の向上を図ることが可能な破砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による破砕機は、ケーシングと、上記ケーシング内に設置された破砕用回転体と、上記ケーシング内下部に設置され破砕片を所定の寸法以下に破砕するために開口を設けたスクリーンと、上記破砕用回転体に取り付けられたラチェットディスクと、上記ラチェットディスクを回転駆動する往復動式駆動手段と、上記スクリーン
の先端部に取り付けられるスクリーン引出用治具と、を具備し、上記往復動式駆動手段により上記ラチェットディスクを回転駆動することにより上記破砕用回転体を回転させ、上記破砕用回転体の切刃を上記スクリーン引出用治具に係合させ、それによって、上記スクリーンを外部に引き出すようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項2による破砕機は、請求項1記載の破砕機において、バックストッパアームが設置されていて、上記往復式駆動手段が複動したときの上記ラチェットディスクの戻りを規制するようにしたこと特徴とするものである。
又、請求項3による破砕機は、請求項1又は請求項2記載の破砕機において、上記破砕用回転体が鋭利な切刃
の先端部を有し、上記スクリーン引出用治具は上記切刃の先端部に直接接触しないように構成されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように本発明の請求項1による破砕機によると、ケーシングと、上記ケーシング内に設置された破砕用回転体と、上記ケーシング内下部に設置され破砕片を所定の寸法以下に破砕するために開口を設けたスクリーンと、を具備し、上記破砕用回転体の回転を利用して上記スクリーンを外部に引き出すように構成したので、煩雑な作業を要することなく、スクリーンを容易に引き出すことができ、スクリーンの引出作業に要する労力の軽減、時間の短縮を図ることができる。
又、請求項2による破砕機によると、請求項1記載の破砕機において、上記破砕用回転体にはラチェットディスクが取り付けられていて、このラチェットディスクを往復式駆動手段より回転駆動することより上記破砕用回転体を回転させるようにしたので、比較的簡単な構成で、スクリーンをン確実に引き出すことができる。
又、請求項3による破砕機によると、請求項2記載の破砕機において、バックストッパアームが設置されていて、上記往復式駆動手段が複動したときの上記ラチェットディスクの戻りを規制するようにしたので、往復動式駆動手段の複動時におけるラチェットディスクの不用意な戻りを規制することができる。
又、請求項4による破砕機によると、請求項1〜請求項3の何れかに記載の破砕機において、上記スクリーンにスクリーン引出用治具を取り付け、該スクリーン引出用治具に上記破砕回転体を当ててスクリーンを引き出すようにしたので、その治具の形状を様々工夫することにより、様々な構成の破砕用回転体に対応することができる。
又、請求項5による破砕機によると、上記破砕用回転体が鋭利な切刃を使用するタイプのものである場合、上記スクリーン引出用治具は上記切刃に直接接触しないように構成されているので、切刃の不用意な損傷を防止した上で、スクリーンの確実な引き出しを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1乃至
図5を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。まず、
図2に示すように、ケーシング1があり、このケーシング1の上部には、
図3にも示すように、横断面形状が半円形をなす開閉蓋3がヒンジ4を介して開閉自在に設置されている。
図3では、開閉蓋3が開放された状態にあり、機能時には、この開閉蓋3が閉じられることになる。又、開閉蓋3が閉じられた状態で、
図3中左側には、ケーシング1と開閉蓋3との間に空間が形成され、その空間が被破砕物導入口5となる。被破砕物は、
図3中矢印aで示す方向から、例えば、ベルトコンベア或いはローラコンベアで搬送され、上記被破砕物導入口5を介して、ケーシング1内に導入される。
【0012】
図2に示すように、上記ケーシング1内には主軸7が回転可能な状態で設置されていて、この主軸7の両端は軸受9、11によって回転可能に支持されている。上記軸受9、11は上記ケーシング1に設置されている。上記主軸7の一端側(
図2中右端)にはプーリ13が固着されている。このプーリ13の近傍には図示しない駆動モータが設置されていて、この駆動モータの回転軸にも図示しないプーリが固着されている。これら図示しないプーリとプーリ13にはベルト15(
図2中仮想線で示す)が巻回されている。よって、上記駆動モータが回転することにより駆動モータ側のプーリ、ベルト15、プーリ13を介して上記主軸7が回転することになる。
【0013】
上記主軸7には複数枚(この実施の形態の場合には5枚)の円板17が取付・固定されている。上記5枚の円板17を軸方向から挟むように固定用端板19、21が設置されていて、上記5枚の円板17はこれら固定用端板19、21によって挟持・固定されている。
【0014】
上記各円板17の外周部には、
図1、
図3に示すように、120°間隔の均等3箇所において、切刃取付部23が放射方向に突出・形成されている。そして、これら切刃取付部23には切刃25が2本の固定ネジ27によって取付・固定されている。又、上記5枚の各円板17は、上記切刃取付部23の位置が所定ピッチずつずれるように積層・固定されている。その結果、
図3に示すように、隣接・配置されている円板17、17の上記切刃取付部23の位置が重合することはない。
【0015】
一方、
図3に示すに、上記ケーシング1の内周面であって、被破砕物導入口5の下部位置には受刃29が設置されている。上記5枚の円板17に取り付けられた切刃25と上記受刃29とのせん断作用によって、被破砕物がせん断・破砕されるものである。
【0016】
上記ケーシング1内であって上記5枚の円板17の外周側下方位置にはスクリーン31が着脱可能に設置されている。このスクリーン31は所定の大きさのメッシュ状に構成されていて、上記切刃25と受刃29とのせん断作用によってせん断・破砕された破砕片を受け、その内所定の大きさ以下のものを下方に通過・落下させるものである。
【0017】
次に、上記スクリーン31を引き出すための構成を説明する。
まず、
図1乃至
図3に示すように、主軸7の他端側(
図1中右端、
図2中左端)にはラチェットディスク33が固着されている。このラチェットディスク33は、
図1、
図3、
図4に示すように、複数個(この実施の形態の場合には6個)のラチェット爪35を備えている。
【0018】
又、
図1、
図4に示すように、往復式駆動手段としての油圧シリンダ機構37が設置されている。この油圧シリンダ機構37は、シリンダ39と、このシリンダ39に対して出没可能に設置されたピストンロッド41と、このピストンロッド41に取り付けられたラチェット爪駆動用治具43と、から構成されている。このラチェット爪駆動用治具43は先端にピン44を備えていて、このピン44を上記ラチェットディスク33のラチェット爪35に当接させるものである。
【0019】
そして、上記油圧シリンダ機構37を駆動することにより上記ピストンロッド41を、
図4中矢印dで示すように、往復動させ、それによって、ラチェット爪駆動用治具43のピン44を介してラチェット爪35ひいてはラチェットディスク33を、
図4中反時計方向に回転させる。このラチェットディスク33の回転より既に説明した主軸7が回転される。
【0020】
又、上記ラチェットディスク33の近傍にはバックストッパアーム45が設置されている。このバックストッパアーム45は、ラチェットディスク33の戻り方向(
図4中時計方向)への回転を規制するためのものであり、基部46に対してピン44を介して回動可能に設置されている。又、バックストッパアーム45はその横断面形状がU字形状をなすものであり、先端にはピン48が取り付けられている。そして、上記ピン48が上記ラチェットディスク33のラチェット爪35に係合し、それによって、ラチェットディスク33の戻り方向への回転を規制するようにしいる。
又、上記バックストッパアーム45と基部46との間にはコイルスプリング50が設置されている。又、上記バックストッパアーム45は、機能時には
図4中実線で示すような位置にあり、ピン48が上記ラチェットディスク33のラチェット爪35に係合し、上記ラチェットディスク33の戻り方向への回転を規制する。この状態では、上記バックストッパアーム45はコイルスプリング50によって
図4中時計方向に回動・付勢されている。これに対して、非機能時には
図4中仮想線で示すような待機位置にある。この状態では、上記バックストッパアーム45はコイルスプリング50によって
図4中反時計方向に回動・付勢されている。
【0021】
又、スクリーン31の先端部にはスクリーン引出用治具51、51がそれぞれ取付・固定置される。上記スクリーン引出用治具51は、
図5に示すような構成をなしている。まず、取付座53があり、スクリーン引出用治具51はこの取付座53を介して、図示しない固定ボルトによって、上記スクリーン31の先端鍔部31aに着脱可能に取付・固定される。
【0022】
上記取付座53にはアーム取付部55が設けられていて、このアーム取付部55には一対のアーム57、57が軸59を介して取付・固定されている。上記アーム57、57間には別の軸61が設置されている。上記アーム57、57の先端部には係合部63、63が形成されている。これら係合部63、63に既に説明した切刃25が係合することになる。又、上記係合部63、63の奥には、切刃先端収容凹部64、64が設けられている。すなわち、上記切刃25は、上記係合部63、63に係合することになるが、その際、切刃25の先端部25a(
図5(c)に示す)は、上記切刃先端収容凹部64、64内に非接触の状態で収容される。それによって、切刃25の先端部25aの損傷を防止するようにしている。
【0023】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、破砕機としての一般的な作用から説明する。まず、駆動モータの駆動により、主軸7及び複数枚の円板17が、
図3中反時計方向(矢印b方向)に回転される。一方、被破砕物が、
図3中矢印aで示すように、被破砕物導入口5を介してケーシング1内に導入される。導入された被破砕物は、回転する円板17に取り付けられている複数の切刃25と、ケーシング1の内周面に設置されている受刃29とのせん断作用によりせん断・破砕される。せん断・破砕された破砕片はスクリーン31上に落下する。
【0024】
スクリーン31上に落下した破砕片は、上記複数の切刃25によって、スクリーン31側に押し付けられ、その結果、スクリーン31のメッシュより小さなものはスクリーン31を通過して下方に落下する。落下した破砕片は、例えば、吸引又はコンベアにて排出される。
これに対して、スクリーン31を通過しなかった破砕片は、主軸7及び円板17の回転によりケーシング1内を回って被破砕物導入口5部分に戻され、再度、切刃25と受刃29とによるせん断に供せられる。
【0025】
次に、スクリーン31の引出作業について説明する。
まず、
図3に示すように、開閉扉3を開放する(或いは撤去する。)。次に、
図1に示すように、スクリーン31の先端鍔部31aにスクリーン引出用治具51、51を取り付ける。又、バックストッパアーム45が、
図4中実線で示すように、機能位置に位置させる。次に、油圧シリンダ機構37を駆動して、ピストンロッド41を往復動させ、ラチェットディスク33を
図4中反時計方向に回転させる。
【0026】
上記ラチェットディスク33の回転より主軸7及び円板17が、
図4中矢印cで示すように、同方向に回転する。この円板17の回転により、切刃25が上記スクリーン引出用治具51、51に係合し、スクリーン31を同方向に回転させる。それによって、
図4に示すように、スクリーン31は所定のセット位置から上方に引き出されることになる。引き出されたスクリーン31にはオーバーホールが施され、再生された後、再度、所定のセット位置にセットされることになる。
尚、新しいスクリーン31と交換されることもある。
【0027】
上記ラチェットディスク33の回転に関して詳しく説明すると、油圧シリンダ機構37が駆動して、ピストンロッド41が往動することにより、ラチェット爪駆動用治具43及びラチェット爪35を介して、ラチェットディスク33が、バックストッパアーム45を押し退けながら、
図4中反時計方向に所定角度だけ回転する。次に、ピストンロッド41が復動することになるが、その際には、バックストッパアーム45のピン48がラチェット爪35に係合し、それによって、ラチェットディスク33の戻り方向への回転は規制される。
以下、同様の作用が繰り返され、その結果、上記したように、スクリーン31の引出作業が行われることになる。
【0028】
又、円板17の回転によりスクリーン31が引き出される際、円板17の切刃25の先端部は、
図3、
図4に示すように、スクリーン引出用治具51、51の切刃先端収容凹部64、64内に非接触の状態で収容されている。よって、切刃25の先端部が不用意に損傷するようなこともない。
【0029】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、主軸7と円板17を油圧シリンダ機構23によって回転させることによりスクリーン31を引き出すようにしているので、スクリーン31を容易に引き出すことができる。すなわち、従来のように、煩雑で面倒な作業を行う必要はなく、スクリーン31にスクリーン引出用治具51、51を取り付けて油圧シリンダ機構23を駆動するだけで、スクリーン31を引き出すことができ、スクリーン31の引出作業に要する労力の軽減と時間の短縮を図ることができる。
又、上記スクリーン引出用治具51は切刃25の先端部25aを不用意に損傷させないような構成になっているので、切刃25の健全性の維持を図ることができる。
又、上記スクリーン引出用治具51は、主軸7の軸方向に2箇所にわたって設置されるので、力を左右方向にバランス良く作用させることができ、それによっても、スクリーン31の引出作業の容易化を図ることができる。
【0030】
次に、
図6を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。前記第1の実施の形態の場合には、切刃タイプの破砕機を例に挙げて説明したが、この第2の実施の形態の場合には、固定ハンマタイプの破砕機を例に挙げて説明するものである。基本的な構成は、前記第1の実施の形態の場合と同じであるが、スクリーン引出用治具の構成が異なるものである。
【0031】
まず、破砕機の構成をみると、
図6(a)に示すように、円板17には180°対抗する位置にハンマ取付部123、123が放射方向に突出・形成されていて、これらハンマ取付部123、123には、ハンマ125、125がそれぞれ固定されている。
【0032】
又、この第2の実施の形態の場合のスクリーン引出用治具151は次のような構成になっている。すなわち、スクリーン引出用治具151は、スクリーン31の先端に着脱可能に取り付けられている。このスクリーン引出用治具151は、治具本体153と、この治具本体153に取り付けられた板体157とから構成されている。上記治具本体153の
図6(b)中右端は鉤状に屈曲されていて係合部155となっている。この係合部155をスクリーン31の上端鍔部31aに係合させ、その状態で、複数本の固定ボルト159をねじ込む。それによって、スクリーン取出用治具151がスクリーン31の先端に取り付けられることになる。又、治具本体153と板体157とによって係合部161が形成されている。
【0033】
そして、
図6(a)に示すように、上記係合部161に、上記ハンマ125が係合することになる。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0034】
破砕機としての作用、スクリーン31を引き出す場合の作用は、基本的に前記第1の実施の形態の場合と同じである。
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0035】
次に、
図7を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。前記第2の実施の形態の場合には、固定ハンマタイプの破砕機を例に挙げて説明したが、この第3の実施の形態の場合には、フリーハンマタイプの破砕機を例に挙げて説明するものである。
【0036】
まず、
図7(a)に示すように、円板17には複数個(この実施の形態の場合には6個)フリーハンマ225が取り付けられている。これらフリーハンマ225は、軸223を介して、上記円板17に回転可能に取り付けられている。
【0037】
一方、この第3の実施の形態の場合のスクリーン引出用治具251は、次のような構成をなしている。まず、着座部253があり、スクリーン引出用治具251は、この着座部253を介して、複数本の固定ボルト255によって、スクリーン31の先端鍔部31aに取付・固定されている。
【0038】
上記着座部253にはアーム257、257が取り付けられていて、これらアーム257、257の先端部は鉤状に屈曲されており、その屈曲部が既に説明した軸203に係合されることになる。
尚、その他の構成は前記第1、第2の実施の形態の場合と同様であり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0039】
破砕機としての作用、スクリーン31を引き出す場合の作用は、基本的に前記第1の実施の形態の場合と同じである。
よって、前記第1、第2の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0040】
尚、本発明は前記第1、第2、第3の実施の形態に限定されるものではない。
まず、スクリーン引出用治具の構成については図示したものに限定されず様々な構成のものが想定され、適用される破砕機のハンマや切刃の形状に応じて適宜決定される。
又、スクリーン引出用治具の個数についてもこれを特に限定するものではない。
往復動式駆動手段としては、油圧シリンダ機構以外に、エアーシリンダー機構、等でもよい。
又、往復動式駆動手段以外にも、ラック・ギヤ方式、ネジ・ナット方式、等でもよい。
又、破砕用回転体の構成としても図示したものに限定されない。
その他、図示した構成はあくまで一例であり、様々な変形が想定される。