(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391292
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】移動局、通信システム及びバックオフインジケータ適用方法
(51)【国際特許分類】
H04W 74/08 20090101AFI20180910BHJP
H04W 76/18 20180101ALI20180910BHJP
H04W 76/50 20180101ALI20180910BHJP
【FI】
H04W74/08
H04W76/18
H04W76/50
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-98140(P2014-98140)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-216504(P2015-216504A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】ウリ アンダルマワンティ ハプサリ
(72)【発明者】
【氏名】矢葺 匠吾
(72)【発明者】
【氏名】内野 徹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
【審査官】
齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/065593(WO,A1)
【文献】
特開2013−258665(JP,A)
【文献】
特開2013−258666(JP,A)
【文献】
特開2000−209661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立するためのメッセージを送信するランダムアクセス手順処理部と、
前記メッセージに応じて、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視するか否かを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報と、バックオフインジケータとを含むメッセージを前記基地局から受信する緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報受信部と、
ランダムアクセス手順が失敗した場合、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼であるか否かを判定する呼種別判定部と、
送信対象の呼が緊急呼又は重要呼である場合、前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報に従って前記バックオフインジケータを適用するか否かを判断するバックオフインジケータ適用部と、
を有する移動局。
【請求項2】
前記バックオフインジケータ適用部は、
前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報がバックオフインジケータを無視することを示す場合、緊急呼又は重要呼についてランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視し、
前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報がバックオフインジケータを無視しないことを示す場合、緊急呼又は重要呼についてランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを適用する、請求項1に記載の移動局。
【請求項3】
基地局と、当該基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立する移動局とを有する通信システムであって、
前記基地局は、
緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視するか否かを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を設定する緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報設定部と、
緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を送信する送信部と、
を有し、
前記移動局は、
前記基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立するためのメッセージを送信するランダムアクセス手順処理部と、
前記メッセージに応じて、前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報と、バックオフインジケータとを含むメッセージを前記基地局から受信する緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報受信部と、
ランダムアクセス手順が失敗した場合、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼であるか否かを判定する呼種別判定部と、
送信対象の呼が緊急呼又は重要呼である場合、前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報に従って前記バックオフインジケータを適用するか否かを判断するバックオフインジケータ適用部と、
を有する通信システム。
【請求項4】
基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立する移動局におけるバックオフインジケータ適用方法であって、
前記基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立するためのメッセージを送信するステップと、
前記メッセージに応じて、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視するか否かを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報と、バックオフインジケータとを含むメッセージを前記基地局から受信するステップと、
ランダムアクセス手順が失敗した場合、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼であるか否かを判定するステップと、
送信対象の呼が緊急呼又は重要呼である場合、前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報に従って前記バックオフインジケータを適用するか否かを判断するステップと、
を有するバックオフインジケータ適用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局、通信システム及びバックオフインジケータ適用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LTE(Long Term Evolution)システムでは、移動局(UE:User Equipment)が発信時やハンドオーバにより基地局(eNB:evolved Node B)とコネクションを確立する場合に、ランダムアクセス(RA:Random Access)が行われる。
【0003】
図1に、LTEシステムにおけるランダムアクセス手順を示す。移動局は、セル内に用意された複数のプリアンブル(RA preamble)からランダムに選択したプリアンブルを送信する(ステップS11)。RA preambleはメッセージ1(Msg. 1)とも呼ばれる。基地局は、プリアンブルを検出すると、その応答情報(RA Response)を送信する(ステップS12)。RA responseはメッセージ2(Msg. 2)とも呼ばれる。RA Responseを受信した移動局は、RA Response内に自分宛のRA preambleが含まれていた場合、コネクション要求信号(RRC(Radio Resource Control) Connection Request)を送信する(ステップS13)。RRC Connection Requestはメッセージ3(Msg. 3)とも呼ばれる。基地局は、RRC Connection Requestを受信すると、コネクション確立のためのセル設定情報等を含むコネクション設定信号(RRC Connection Setup)を送信する(ステップS14)。RRC Connection Setupはメッセージ4(Msg. 4)とも呼ばれる。RRC Connection Setup内に自分宛の識別子(RNTI:Radio Network Temporary Identifier)及びメッセージ3の内容が含まれていた場合、移動局はランダムアクセス処理を完了し、コネクション設定完了通知(RRC Connection Setup Complete)を送信することにより、コネクションを確立する(ステップS15)。一方、自分宛の識別子又はメッセージ3の内容が含まれていなかった場合、移動局は、ランダムアクセスの失敗とみなし、再度、プリアンブル送信(ステップS11)から処理を行う(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
このように、ランダムアクセスチャネルのリソースを移動局がランダムに選択するランダムアクセス手順をコンテンションベースのランダムアクセス手順と呼ぶ。コンテンションベースのランダムアクセス手順では、コンテンション解決(Contention Resolution)に成功した場合にコネクションが確立される。コンテンション解決に成功しない場合、すなわち、メッセージ2内に自分宛のRA preambleが含まれていない場合又はメッセージ4内に自分宛の識別子又はメッセージ3の内容が含まれていない場合、再度、プリアンブル送信から処理をやり直す。なお、ランダムアクセスを再開するまでの待ち時間を示すバックオフインジケータ(バックオフタイマ値)がメッセージ2内に含まれている場合、移動局は、メッセージ1の送信をバックオフインジケータで指定された時間だけ遅らせる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 36.300 V12.1.0 (2014-03)
【非特許文献2】3GPP TS 36.321 V12.1.0 (2014-03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のランダムアクセス手順では、基地局はメッセージ1を受信したときに緊急呼(AC10)又は重要呼(AC11〜15)を区別することができない。ランダムアクセス手順における信号でネットワークの輻輳が生じる場合、基地局は、移動局からのランダムアクセス手順を無視又は拒否することによって輻輳を軽減している。ランダムアクセス手順の無視とは、メッセージ2に他の移動局のRA preambleを入れて返信すること、メッセージ3に対してメッセージ4を返信しないこと、メッセージ4に他の移動局の識別子を入れて返信すること、又はメッセージ4にメッセージ3の内容を入れずに返信することを意味する。また、ランダムアクセス手順の拒否とは、メッセージ3に対してRRC Connection Rejectを送信することを意味する。
【0007】
ランダムアクセス手順を無視する場合、基地局は、緊急呼又は重要呼を見分けることができず、バックオフインジケータにより、緊急呼又は重要呼のランダムアクセスの試みがバックオフされる。その結果、緊急呼又は重要呼の通信ができなくなる可能性がある。
【0008】
また、ランダムアクセス手順を拒否する場合、基地局は、メッセージ3の接続理由(Establishment Cause)を確認してからメッセージ3を拒否することができるが、メッセージ3を処理する必要があるため、処理負荷が高くなる。更に、ネットワークが輻輳している場合、基地局がメッセージ3を処理できない可能性がある。
【0009】
本発明は、ランダムアクセス手順において移動局が自律的に緊急呼又は重要呼を区別してバックオフインジケータを適用することにより、緊急呼又は重要呼の処理を優先させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る移動局は、
基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立する
ためのメッセージを送信するランダムアクセス手順処理部と、
前記メッセージに応じて、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視するか否かを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報と、バックオフインジケータとを含むメッセージを前記基地局から受信する緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報受信部と、
ランダムアクセス手順が失敗した場合、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼であるか否かを判定する呼種別判定部と、
送信対象の呼が緊急呼又は重要呼である
場合、
前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報に従って前記バックオフインジケータを適用するか否かを判断するバックオフインジケータ適用部と、
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一形態に係る通信システムは、
基地局と、当該基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立する移動局とを有する通信システムであって、
前記基地局は、
緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視する
か否かを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を設定する緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報設定部と、
緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を送信する送信部と、
を有し、
前記移動局は、
前記基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立するためのメッセージを送信するランダムアクセス手順処理部と、
前記メッセージに応じて、前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報
と、バックオフインジケータとを含むメッセージを
前記基地局から受信する緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報受信部と、
ランダムアクセス手順が失敗した場合、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼であるか否かを判定する呼種別判定部と、
送信対象の呼が緊急呼又は重要呼である
場合、
前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報に従って前記バックオフインジケータを適用するか否かを判断するバックオフインジケータ適用部と、
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一形態に係るバックオフインジケータ適用方法は、
基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立する移動局におけるバックオフインジケータ適用方法であって、
前記基地局との間でランダムアクセス手順を使用してコネクションを確立するためのメッセージを送信するステップと、
前記メッセージに応じて、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視するか否かを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報と、バックオフインジケータとを含むメッセージを前記基地局から受信するステップと、
ランダムアクセス手順が失敗した場合、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼であるか否かを判定するステップと、
送信対象の呼が緊急呼又は重要呼である
場合、
前記緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報に従って前記バックオフインジケータを適用するか否かを判断するステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ランダムアクセス手順において移動局が自律的に緊急呼又は重要呼を区別してバックオフインジケータを適用することにより、緊急呼又は重要呼の処理を優先させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】LTEシステムにおけるランダムアクセス手順を示す図
【
図3】本発明の実施例で用いられるMACヘッダの概略図
【
図4】本発明の実施例で用いられるバックオフパラメータ値の例
【
図6】本発明の実施例に係る移動局におけるバックオフインジケータ適用方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0016】
本発明の実施例では、移動局と基地局との間のランダムアクセス手順について説明する。移動局は、コネクションを確立する際に、基地局との間でランダムアクセス手順を使用する。ランダムアクセス手順が失敗した場合、移動局は、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼である場合、ランダムアクセス手順において通知されたバックオフインジケータを無視し、例えば、次の送信タイミングでメッセージ1(RA preamble)を送信する。
【0017】
また、基地局は、移動局の上記の動作を制御するため、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視することを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を移動局に送信してもよい。移動局は、緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を受信した場合、緊急呼又は重要呼についてランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視する。
【0018】
基地局及び移動局の構成及び動作について、以下に詳細に説明する。
【0019】
<基地局の構成及び動作>
図2に、本発明の実施例に係る基地局の構成を示す。基地局10は、上りリンク(UL)信号受信部101と、下りリンク(DL)信号送信部103と、緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報設定部105と、ランダムアクセス(RA)手順処理部107とを有する。
【0020】
UL信号受信部101は、移動局からの上りリンクの信号を受信する。ランダムアクセス手順に関して、UL信号受信部101は、メッセージ1(RA preamble)、メッセージ3(RRC Connection Request)、RRC Connection Setup Completeを受信する。
【0021】
DL信号送信部103は、移動局に下りリンクの信号を送信する。ランダムアクセス手運に関して、DL信号送信部103は、メッセージ2(RA Response)、メッセージ4(RRC Connection Setup)を送信する。
【0022】
緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報設定部105は、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視することを示す緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を設定する。緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報は、バックオフインジケータを通知するために使用されるメッセージ2内に設定されてもよい。
【0023】
図3に、本発明の実施例で用いられるメッセージ2のMAC(Medium Access Control)ヘッダの例を示す。
図3(A)に示すように、メッセージ2のMACヘッダは、複数のサブヘッダに分割され、その先頭のサブヘッダ(E/T/R/R/BI subheader又はBackoff Indicator MAC subheader)においてバックオフインジケータ(BI:Backoff Indicator)が通知される。
図4に示すように、バックオフインジケータは、例えば、インデックス0〜15に対応して、メッセージ1の送信を遅らせるバックオフタイマ値が設定されている。
【0024】
図3(B)に示すように、先頭のサブヘッダの1つの未使用ビット(R:Reserved)を緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報(Cビット:Congestion bit)として使用することができる。例えば、Cビット=1は、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視することを示し、Cビット=0は、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際であっても、移動局がバックオフインジケータを適用することを示す。
【0025】
RA手順処理部107は、移動局との間のランダムアクセス手順を制御する。移動局からのメッセージ1を受け付ける場合、RA手順処理部107は、移動局から受信したRA preambleをメッセージ2に入れてDL信号送信部103から移動局に送信する。また、メッセージ1を無視した移動局に対してランダムアクセス手順の再開を遅らせるため、バックオフインジケータをメッセージ2に入れる。更に、移動局からのメッセージ3を受け付ける場合、RA手順処理部107は、移動局から受信した識別子(RNTI)及びメッセージ3の内容をメッセージ4に入れてDL信号送信部103から移動局に送信する。
【0026】
<移動局の構成及び動作>
図5に、本発明の実施例に係る移動局の構成を示す。移動局20は、下りリンク(DL)信号受信部201と、上りリンク(UL)信号送信部203と、緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報受信部205と、呼種別判定部207と、バックオフインジケータ適用部209と、ランダムアクセス(RA)手順処理部211とを有する。
【0027】
DL信号受信部201は、基地局からの下りリンクの信号を受信する。ランダムアクセス手順に関して、DL信号受信部201は、メッセージ2(RA Response)、メッセージ4(RRC Connection Setup)を受信する。
【0028】
UL信号送信部203は、基地局に上りリンクの信号を送信する。ランダムアクセス手順に関して、UL信号送信部203は、メッセージ1(RA preamble)、メッセージ3(RRC Connection Request)、RRC Connection Setup Completeを送信する。
【0029】
緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報受信部205は、DL信号受信部201で受信した信号(メッセージ2)の中に含まれる緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を受信する。
【0030】
呼種別判定部207は、送信対象の呼の種別を判定する。具体的には、呼種別判定部207は、ランダムアクセス手順が失敗した場合、送信対象の呼が緊急呼(AC10)又は重要呼(AC11〜15)であるか否かを判定する。ランダムアクセス手順の失敗には、メッセージ2に自分宛のRA preambleが含まれていないこと、メッセージ3に対してメッセージ4が返信されないこと、メッセージ4に他の移動局の識別子が含まれていること、又はメッセージ4にメッセージ3の内容が含まれていないこと等がある。
【0031】
バックオフインジケータ適用部209は、送信対象の呼が緊急呼又は重要呼であるか否かに基づいて、ランダムアクセス手順において通知されたバックオフインジケータを適用するか否かを判断する。具体的には、バックオフインジケータ適用部209は、バックオフインジケータと共に緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報が受信された場合、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを無視する。この場合、緊急呼又は重要呼のメッセージ1(RA preamble)は次の送信タイミングで送信されてもよい。緊急呼又は重要呼以外のメッセージ1は、通常通り、バックオフインジケータが適用され、バックオフインジケータで指定された時間だけ遅れて送信される。
【0032】
また、バックオフインジケータ適用部209は、バックオフインジケータと共に緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報が受信されない場合、緊急呼又は重要呼について移動局がランダムアクセス手順を再開する際にバックオフインジケータを適用する。この場合、緊急呼又は重要呼を含む全てのメッセージ1(RA preamble)は、通常通り、バックオフインジケータで指定された時間だけ遅れて送信される。
【0033】
RA手順処理部211は、基地局との間のランダムアクセス手順を制御する。RA手順処理部211は、コネクションを確立するためにメッセージ1(RA preamble)をUL信号送信部203から基地局に送信する。また、RA手順処理部211は、基地局から受信したメッセージ2に自分宛のRA preambleが含まれていた場合、メッセージ3に移動局の識別子(RNTI)を入れて送信する。一方、RA手順処理部211は、基地局から受信したメッセージ2に自分宛のRA preambleが含まれていない場合、RA preambleの衝突によりランダムアクセス手順が失敗したとみなし、メッセージ1(RA preamble)の送信手順からやり直しランダムアクセス手順を再開する。また、RA手順処理部211は、メッセージ4に自分宛の識別子(RNTI)及びメッセージ3の内容が含まれていた場合、RRC Connection Setup CompleteをUL信号送信部203から基地局に送信する。一方、RA手順処理部211は、メッセージ3が無視された場合やメッセージ4を受信しても自分宛の識別子(RNTI)またはメッセージ3で送信した内容が入っていない場合、コンテンション解決(Contention Resolution)の失敗によりランダムアクセス手順が失敗したとみなし、メッセージ1の送信手順からランダムアクセス手順を再開する。ランダムアクセス手順の再開は、バックオフインジケータ適用部209によりバックオフインジケータを無視することが判断された場合、例えば次の送信タイミングで行われる。一方、ランダムアクセスの再開は、バックオフインジケータ適用部209によりバックオフインジケータを適用することが判断された場合、メッセージ2内のバックオフインジケータで指定された時間だけ待って行われる。
【0034】
図6に、本発明の実施例に係る移動局におけるバックオフインジケータ適用方法を示す。
【0035】
移動局は、基地局とのコネクションを確立するために、メッセージ1(RA preamble)を送信し(ステップS101)、その応答情報であるメッセージ2(RA Response)を受信する(ステップS103)。
【0036】
受信したメッセージ2内に自分のRA preambleが含まれている場合(ステップS105:YES)、移動局は、通常通り、メッセージ3を送信することにより、ランダムアクセス手順を継続する(ステップS107)。
【0037】
一方、受信したメッセージ2内に自分のRA preambleが含まれていない場合(ステップS105:NO)、移動局は、メッセージ2内の先頭のサブヘッダであるバックオフインジケータ(BI)サブヘッダを読み取り、その中の緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報(Cビット)を確認する。
【0038】
Cビットが0である場合(ステップS109:NO)、通常通り、ランダムアクセス手順を継続する(ステップS107)。すなわち、緊急呼又は重要呼についてランダムアクセス手順を再開する際であっても、バックオフインジケータが適用され、メッセージ1が送信される。
【0039】
Cビットが1である場合(ステップS109:YES)、移動局は、緊急呼又は重要呼であるか否かを判定する。重要呼又は緊急呼である場合(ステップS111:YES)、移動局は、バックオフインジケータを無視し、例えば、次の送信タイミングでメッセージ1の送信を再開する(ステップS113)。重要呼又は緊急呼でない場合(ステップS111:NO)、移動局は、バックオフインジケータを適用し、メッセージ1の送信をバックオフインジケータで指定された時間だけ遅らせる(ステップS115)。
【0040】
なお、
図6では、メッセージ1が無視された場合について説明しているが、メッセージ3が無視された場合にも同様に適用可能である。この場合、ステップS105において、メッセージ4に自分宛の識別子(RNTI)及びメッセージ3の内容が含まれているか否かが判断され、自分宛の識別子及びメッセージ3の内容が含まれている場合、ステップS107が実行され、自分宛の識別子又はメッセージ3の内容が含まれていない場合、ステップS109が実行される。
【0041】
<本発明の実施例の効果>
本発明の実施例によれば、ランダムアクセス手順において移動局が自律的に緊急呼又は重要呼を区別してバックオフインジケータを適用することにより、緊急呼又は重要呼の処理を優先させることが可能になる。このため、ネットワークが輻輳した場合であっても、緊急呼又は重要呼のコネクションが確立されやすくなる。
【0042】
また、移動局が自律的に緊急呼又は重要呼を区別するため、基地局による処理が軽減される。更に、基地局は、緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報を使用することにより、移動局による緊急呼又は重要呼の処理を制御することが可能になる。
【0043】
説明の便宜上、本発明の実施例に係る基地局及び移動局は機能的なブロック図を用いて説明しているが、本発明の実施例に係る基地局及び移動局は、ハードウェア、ソフトウェアまたはそれらの組み合わせで実現されてもよい。また、各機能部が必要に応じて組み合わせて使用されてもよい。また、本発明の実施例に係る方法は、実施例に示す順序と異なる順序で実施されてもよい。
【0044】
以上、ランダムアクセス手順において移動局が自律的に緊急呼又は重要呼を区別してバックオフインジケータを適用することにより、緊急呼又は重要呼の処理を優先させるための手法について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々の変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 基地局
101 UL信号受信部
103 DL信号送信部
105 緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報設定部
107 RA手順処理部
20 移動局
201 DL信号受信部
203 UL信号送信部
205 緊急呼・重要呼用バックオフ変更情報受信部
207 呼種別判定部
209 バックオフインジケータ適用部
211 RA手順処理部