【実施例3】
【0033】
保管庫内の保持時間を120時間とした以外は実施例1と同様の処理を施して香り卵Bを製造した。
【0034】
これらの実施例1〜実施例3にかかる香り卵Bに着香物質αとしての柚子の香りが付着していることを確認するため、次の実験を高知県工業技術センターに委嘱して行った。先ず、着香物質αとした柚子の果皮0.1gをヘッドスペース付ガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。その結果を
図2に示す。柚子の香気成分には種々の成分があるが、本実験では柚子を始め柑橘類の果皮に多く含まれ、その香りを構成する代表的物質の一つであるリモネン(limonene)の有無を基準として柚子の香りが香り卵Bに付着しているか否かを基準とした。
図2に示すように、柚子の果皮には、リモネンのピークが検出された。
【0035】
一方、
図17は柚子の香りを着香する前の従来の鶏卵Aの全卵0.15gを、
図18は柚子の香りを着香する前の従来の鶏卵Aの卵白0.15gを、前記した柚子の果皮と同様の条件でガスクロマトグラフを使用して分析した定性分析グラフである。
図17,
図18に示すように、リモネンのピークは検出されなかった。なお、全卵とは、卵殻を割って取り出した卵白と卵黄を撹拌したものである。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
ステップ10に示す着香工程を終了した日に実施例1〜3にかかる香り卵Bの全卵0.15gと卵白0.15gをそれぞれ前記した柚子の果皮と同様の条件でガスクロマトグラフを使用して分析した定性分析グラフを
図3〜
図5(全卵)と
図9〜
図11(卵白)に示す。
図3〜
図5,
図9〜
図11に示すように、いずれのグラフにおいてもリモネンのピークが検出されており、実施例1〜3の全卵,卵白にはステップ10に示す着香工程を行うことによって、柚子の香りが付着し、柚子の香りを発散していることが判る。実施例1に示すように、着香物質αとしての柚子の果皮との保持時間が24時間あれば、十分に柚子の香りを鶏卵Aに付着させることができる。そして、保持時間が72時間,120時間と長くなるにつれて、付着する香りの量は増加しており、120時間保持すれば十分な柚子の香りが鶏卵Aに付着していることが判る。
【0038】
上記実験に加えて、香り卵Bにおける着香物質αとしての柚子の香りの付着状況の詳細なデータを入手するために食品分析の専門機関である「日本認証サービス株式会社(神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎東4丁目5番17号:http://www.pure-foods.co.jp/)に依頼して検査を行った。検査内容は次の通りである。通常の卵である鶏卵Aの卵白を検体1、実施例2にかかる香り卵Bの卵白を検体2とし、検体1及び検体2をサンプル瓶にそれぞれ10g採取し、室温で3時間吸着処理を行った後、加熱脱着装置付きGC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を用いて吸着した臭気成分を分析した。臭気成分の解析については本検査で使用したGC/MSに予め登録されている標準マススペクトルを用いて自動解析を行った。
【0039】
日本認証サービス株式会社からは、2013年6月4日付けで報告書番号:N060924として下記の検査結果が報告された。
図15は検体2(本発明にかかる香り卵の卵白)の定性分析グラフ、
図16は検体1(従来の鶏卵の卵白)の定性分析グラフであり、これらのグラフ及びそのGC/MS分析の解析結果を示す表2とともに、次の所見が述べられていた。該所見に示す通り、検体2、即ち香り卵Bには、柚子の香りが付着していることが明りょうとなった。
【0040】
【表2】
【0041】
「日本認証サービス株式会社の所見」
「本検査において、検体2からは、検体1には認められない1-ブタノール,ミルセン,ピネン,リモネン,γ−テルピネン,o−シメン,3−カレン,p−シメネン,リナロール,カプロン酸,ヘプタン酸,オクタン酸,ノナン酸と推定される臭気成分が特異的に検出された。また、検体1及び検体2のいずれの検体においても、ゲラニオール,ネロール,酢酸リナリル,デカナール,ヌートカトン,シトラール,ベルガプテンと推定される臭気成分は認められなかった。」
【0042】
検体2から特異的に検出された臭気成分は、表3に示すようにそれぞれテルペン類又は脂肪族カルボン酸に分類される。また、検体2から特異的に検出された臭気成分の概要は表4に示す通りである。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
次に、香りの継続性を確認するためにステップ10に示す着香工程終了後2週間を経過した実施例1〜3にかかる香り卵Bの全卵0.15gと卵白0.15gをそれぞれ前記した柚子の果皮と同様の条件でガスクロマトグラフを使用して分析した定性分析グラフを
図6〜
図8(全卵)と
図12〜
図14(卵白)に示す。
図6〜
図8,
図12〜
図14に示すように、いずれのグラフにおいてもリモネンのピークが検出されており、実施例1〜3の全卵,卵白にはステップ10に示す着香工程を行うことによって、鶏卵の賞味期間である出荷後2週間は継続して香りを発散することが判る。
【0046】
図3〜
図8に示す全卵と
図9〜
図14に示す卵白とでは、卵白の方がリモネンの付着量が多いことから、柚子の香りは主として卵白に付着していることが判る。なお、実施例1〜実施例3にかかる香り卵Bから全卵を取り出した後の卵殻のみをガスクロマトグラフを使用して分析したところ、リモネンのピークは検出されなかった。そこで、ステップ10に示す着香工程を終了した日、及び2週間を経過した実施例1〜3にかかる香り卵Bの卵殻のみを人間の嗅覚によって香りを嗅いだところ、爽やかな柚子の香りを感知することができた。そのため、ガスクロマトグラフではリモネンのピークは検出されなかったが、人間の嗅覚では卵殻にも柚子の香りが付着していることが判った。
【0047】
さらに、実施例1〜実施例3から全卵を取り出すために卵殻を割る前に、ステップ10に示す着香工程を終了した日、及び2週間を経過した日における実施例1〜3にかかる香り卵Bを卵殻のまま人間の嗅覚によって香りを嗅いだところ、爽やかな柚子の香りを卵殻のみの香りよりも強く感知することができた。これは、卵殻に付着した柚子の香りとともに、卵白に付着した香りが卵殻の気孔を介して外部から感知できていると考えられる。よって、卵殻への香りの付着の有無にかかわらず、卵白に付着した香りによって、卵殻を割る前、即ち流通段階、或いは調理前の状態においても香り卵Bから柚子の香りを感知することができる。これらの結果をまとめて表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
次に、本発明にかかる香り卵が香りによって鶏卵特有の生臭さをなくすとともに、鶏卵に香りという新たな付加価値を付与した新規な鶏卵として需要者に認知されるか否かを確認するために官能試験を行った。官能試験は、柚子の香りを着香させるためのステップ10に示す着香工程を終了した日に実施例2の香り卵Bの卵白及び全卵と、柚子の香りを着香する前の従来の鶏卵Aの卵白及び全卵を試料として行った。試験方法は高知県工業技術センター食品試作室において、無作為に抽出した成人男女38名(男性10名,女性28名)をパネラーとして、2種類の試料を与え、香りや味などについて好ましいものを選ばせる「2点嗜好試験法」によって行った。その結果を表6,表7に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
パネラーが38名の場合、5%有意差のある数値は表8に示すように26となる。そこで、表6,表7において、香り卵Bが26以上の数値を得た項目を有意差ありとして○印を付した。
【0053】
【表8】
【0054】
卵白については、表6に示すように、香り卵Bでは、柚子に起因する柑橘類の香りを殆どのパネラーが感じ、鶏卵特有の生臭さを柑橘類の香りで解消することができ、殆どの人が従来の鶏卵Aに比較して生臭さを感じないと判断している。そして、これらの2つの項目の数値34,36は5%有意差のあると判断できる26を大きく超えている。その結果、総合的にも香り卵Bの方が鶏卵Aに比べて31:7という大差で支持を得ており、香り卵Bは香りという新たな付加価値を意図した通りに安定して有していると判断できる。
【0055】
全卵については、表7に示すように、香り卵Bでは、柚子に起因する柑橘類の香りを殆どのパネラーが感じているが、鶏卵特有の生臭さについては5%有意差のある数値である26に僅か足りない23であった。それでも、鶏卵特有の生臭さを柑橘類の香りで解消することができ、従来の鶏卵Aに比較して生臭さを感じないと判断しているパネラーが圧倒的に多い。その結果、総合的にも香り卵Bの方が鶏卵Aに比べて24:13いう大差で支持を得ており、香り卵Bは香りという新たな付加価値を意図した通りに安定して有していると判断できる。