特許第6391323号(P6391323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391323
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】手持工作機械
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/00 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   B25D17/00
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-133689(P2014-133689)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2015-9361(P2015-9361A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】10 2013 212 691.3
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュレーゲル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フリーゼ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リーガー
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/174594(WO,A1)
【文献】 特開2010−173053(JP,A)
【文献】 特開2011−104736(JP,A)
【文献】 特開平10−212728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 11/00 − 17/32
B25F 5/00
B23Q 17/00
B25B 21/02
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃機構ユニット(12)と、
少なくとも前記打撃機構ユニット(12)を駆動するために設けられている駆動ユニット(16)と、
少なくとも1つの動作パラメータを検出するためのセンサユニット(20)、及び、前記センサユニット(20)によって検出された動作パラメータに基づいて、少なくとも前記駆動ユニット(16)を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)を有する電子装置(18)と、
を備える手持工作機械において、
前記電子装置(18)は、前記少なくとも1つの動作パラメータの推移を評価するために設けられている評価ユニット(26)を有しており、
前記評価ユニット(26)は、前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する前に、前記少なくとも1つの動作パラメータの最大値に到達する時点を少なくとも近似的に推定するために設けられており、
前記開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)は前記センサユニット(20)によって検出された前記動作パラメータに基づいて、前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、前記駆動ユニット(16)の回転数を少なくとも1つのより高い値に調整するために設けられている、
ことを特徴とする手持工作機械。
【請求項2】
前記開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)は前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、前記駆動ユニット(16)の回転数を増加させるために設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の手持工作機械。
【請求項3】
前記開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)は、少なくとも1つの回転数制御エレメント(24)を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の手持工作機械。
【請求項4】
前記センサユニット(20)によって検出可能な前記少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも前記打撃機構ユニット(12)の負荷特性量を含む、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の手持工作機械。
【請求項5】
前記センサユニット(20)によって検出可能な前記少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも前記打撃機構ユニット(12)の打撃周波数を含む、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の手持工作機械。
【請求項6】
前記打撃機構ユニット(12)は、先端工具(14)に対して打撃を形成するために設けられている、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項記載の手持工作機械。
【請求項7】
打撃機構ユニット(12)と、
少なくとも前記打撃機構ユニット(12)を駆動するために設けられている駆動ユニット(16)と、
を有する手持工作機械を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための電子装置(18)において、
前記電子装置(18)は、
少なくとも1つの動作パラメータを検出するためのセンサユニット(20)と、
前記センサユニット(20)によって検出された動作パラメータに基づいて、少なくとも前記駆動ユニット(16)を開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)と、
前記少なくとも1つの動作パラメータの推移を評価するために設けられている評価ユニット(26)と、
を備えており、
前記評価ユニット(26)は、前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する前に、前記少なくとも1つの動作パラメータの最大値に到達する時点を少なくとも近似的に推定するために設けられており、
前記開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)は前記センサユニット(20)によって検出された前記動作パラメータに基づいて、前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、前記駆動ユニット(16)の回転数を少なくとも1つのより高い値に調整するために設けられている、
ことを特徴とする電子装置(18)。
【請求項8】
前記開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)は前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、前記駆動ユニット(16)の回転数を増加させるために設けられている、
ことを特徴とする請求項記載の電子装置(18)。
【請求項9】
前記開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)は、少なくとも1つの回転数制御エレメント(24)を含む、
ことを特徴とする請求項7又は8記載の電子装置(18)。
【請求項10】
前記センサユニット(20)によって検出可能な前記少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも前記打撃機構ユニット(12)の負荷特性量を含む、
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項記載の電子装置(18)。
【請求項11】
前記センサユニット(20)によって検出可能な前記少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも前記打撃機構ユニット(12)の打撃周波数を含む、
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項記載の電子装置(18)。
【請求項12】
前記打撃機構ユニット(12)は、先端工具(14)に対して打撃を形成するために設けられている、
ことを特徴とする請求項7から11のいずれか一項記載の電子装置(18)。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項記載の手持工作機械(10)の駆動ユニット(16)を、開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット(22)を用いて開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法において、
少なくとも1つの動作パラメータを、センサユニット(20)によって検出するステップ(28)と、
前記センサユニット(20)によって検出された前記少なくとも1つの動作パラメータの推移を、評価ユニット(26)によって評価し、前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する前に、前記少なくとも1つの動作パラメータの最大値に到達する時点を少なくとも近似的に推定するステップ(32)と、
前記センサユニット(20)によって検出された動作パラメータに基づいて、前記少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、前記駆動ユニット(16)の回転数をより高い値に調整するステップ(30)と、
を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項1の上位概念に記載の手持工作機械は、既に提案されている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、とりわけ先端工具に対して打撃を形成するために設けられている打撃機構ユニットと、少なくとも前記打撃機構ユニットを駆動するために設けられている駆動ユニットと、少なくとも1つの動作パラメータを検出するためのセンサユニット、及び、該センサユニットによって検出された動作パラメータに基づいて少なくとも前記駆動ユニットを開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットを有する電子装置と、を備える手持工作機械を前提としている。
【0003】
開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットは、少なくとも部分的に、センサユニットによって検出された動作パラメータに基づいて、少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、駆動ユニットの回転数を少なくとも1つのより高い値に調整するために設けられている。「打撃機構ユニット」という用語は、本発明の関連においては特に、少なくとも部分的に、手持工作機械の駆動ユニットの回転運動を線形運動に変換することによって、とりわけ手持工作機械の先端工具に対して打撃を形成するため、及び/又は、動作状態において先端工具を回転駆動させるために設けられているユニットであると理解されたい。打撃機構ユニットは、とりわけ少なくとも1つのピストンエレメントを含み、ピストンエレメントは、有利には手持工作機械に含まれている駆動ユニットと、有利には少なくとも部分的に機械的に結合されている。ピストンユニットは、有利には動作状態において線形運動を実施するために設けられている。ガイドエレメントは、有利にはハンマーパイプによって形成されており、さらに有利には、ピストンエレメントを線形にガイドするために設けられている。特に有利な実施形態においては、打撃機構ユニットは、空気式の打撃機構を含む。
【0004】
「駆動ユニット」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、動作状態において、少なくとも部分的に、手持工作機械と結合されている先端工具を駆動するために設けられているユニットであると理解されたい。「設けられている」という用語は、とりわけ特別に構成、設計、又は、装備されたという意味である。駆動ユニットは、有利には少なくとも1つの電気モータを含む。しかしながら、駆動ユニットを、少なくとも部分的に空気式で、及び/又は、当業者にとって意義深いと思われる方法で駆動できるよう構成することも考えられる。「電子装置」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、少なくとも、手持工作機械の動作状態において、とりわけ手持工作機械の駆動ユニットを少なくとも部分的に開ループ制御及び/又は閉ループ制御するために設けられているユニットであると理解されたい。有利には、電気モータは、少なくとも1つの駆動ユニットのモータ制御装置を含む。電子ユニットは有利には、とりわけ少なくとも1つのトランジスタ、少なくとも1つのコンデンサ、少なくとも1つのプロセッサ、特に有利には少なくとも1つの電界効果トランジスタ(MOSFET)、及び/又は、とりわけ絶縁ゲート電極(IGBT)を備える少なくとも1つのバイポーラトランジスタのような電子構成素子を有する。
【0005】
「センサユニット」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、少なくとも部分的に、少なくとも1つのパラメータを検出するため、とりわけ少なくとも1つの化学的特性及び/又は有利には少なくとも1つの物理的特性を表す及び/又は含む少なくとも1つの動作パラメータを検出するために設けられているユニットであって、かつ、アナログ、バイナリ、及び/又は、有利にはデジタルの電気信号に変換し、電気信号を、とりわけ少なくとも1つの電子装置の開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットに供給するために設けられているユニットであると理解されたい。センサユニットは、有利には少なくとも1つのひずみゲージ、少なくとも1つのマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)のセンサ、とりわけ少なくとも1つのジャイロセンサ、少なくとも1つのピエゾ圧電センサプレート、及び/又は、当業者にとって意義深いと思われる他の形態の少なくとも1つのセンサエレメントを含むことができる。「動作パラメータ」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、少なくとも1つの化学的特性及び/又は有利には少なくとも1つの物理的特性を示す及び/又は含むパラメータであって、少なくとも部分的に打撃機構ユニットの動作状態に基づいて構成されているパラメータであると理解されたい。
【0006】
「開ループ制御及び/又は閉ループ制御」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、少なくとも部分的に駆動ユニット及び/又は電子ユニットの動作状態に依存しないプロセス、とりわけ少なくとも部分的に駆動ユニットの回転数から分離されたプロセスであると理解され、このプロセスは少なくとも部分的に、手持工作機械の動作に対して、特に駆動ユニットの動作に対して少なくとも部分的に能動的に影響を与えるため、及び/又は、手持工作機械の動作、とりわけ駆動ユニットの動作を、少なくとも部分的に、予め定められたシーケンスに適合及び/又は近似させるため、及び/又は、とりわけ動的に変化し得る手持工作機械の動作パラメータ、とりわけ駆動ユニットの動作パラメータを、有利にはアルゴリズムに応じて、とりわけ能動的に変化させるために設けられている。開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットは、とりわけ少なくとも部分的に機械的に構成することができ、特に有利には少なくとも部分的に電子的に構成することができる。開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットは、有利には付加的に計算ユニットを含み、とりわけ計算ユニットに加えてメモリユニットを含む。メモリユニットの中には、計算ユニットによって実施されるために設けられている、開ループ制御及び/又は閉ループ制御プログラムが保存されている。
【0007】
「〜に基づいて」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、少なくとも部分的に直接的な関係であることを意味する。「直前に」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットによる駆動ユニットの開ループ制御及び/又は閉ループ制御と、少なくとも1つの動作パラメータの最大値の到達との間に、とりわけ5秒以下、有利には1秒以下、有利には50ミリ秒以下、特に有利には10ミリ秒以下の時間間隔が存在することと理解されたい。
【0008】
本発明による手持工作機械の構成によって、有利には手持工作機械のエネルギ効率を向上させ、有利には電力消費量を低減することが可能となる。
【0009】
さらに開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットは、少なくとも1つの回転数制御エレメントを含む。これによって、手持工作機械の開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットの構成を、有利には精確かつ確実にすることが可能となり、有利には簡単かつ低コストにすることが可能となる。
【0010】
さらに開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットは、少なくとも部分的に、少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、駆動ユニットの回転数を増加させるために設けられている。特に有利な実施形態においては、回転数を測定する際、とりわけ駆動ユニットの電気モータにおいて、駆動ユニットの駆動スピンドルの回転の予め定められた数によって、平均回転数を算出することができる。駆動ユニットの回転数は、とりわけ、有利には先行する測定から算出された近似的及び/又は固定的な所定の値だけ加速乃至増加される。これによって、通常の動作回転数と、とりわけ負荷ピークのせいで低下する回転数、乃至、少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する際に低下する回転数との間の差を、有利には小さくすることが可能である。これによってさらに、有利には通常の動作回転数に対する目標値を低くすること、ひいては、手持工作機械の少なくとも部分的な領域における熱負荷を小さくすることが可能である。これによってさらに、動作状態において、とりわけ負荷ピークにおいて駆動ユニットによって消費される電流強度の最大値を、有利には低減して低く維持することができる。このようにして有利には、損失を小さくすることが可能である。この損失の計算の際には、電流強度がとりわけ2乗によって考慮される。
【0011】
さらに、センサユニットによって検出可能な少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも打撃機構ユニットの負荷特性量を含む。「負荷特性量」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、打撃機構ユニットの1つのパラメータであって、動作状態において打撃機構ユニットに対して作用する負荷、ひいてはとりわけ駆動ユニットに対して作用する負荷に直接的に基づいて形成されるパラメータであると理解されたい。これによって有利には、本発明の手持工作機械の構成を、効率的、確実、かつ高出力にすることが可能となる。
【0012】
さらには、センサユニットによって検出可能な少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも打撃機構ユニットの打撃周波数を含む。「打撃周波数」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、とりわけ物理的な1つの特性量であって、少なくとも部分的に、予め定められた時間間隔内に打撃機構ユニットが先端工具に伝達するパルスの数を表す特性量であると理解されたい。これによって有利には、単一の打撃エネルギを増加させ、ひいては有利には手持工作機械の構成を効率的にすることが可能となる。
【0013】
さらに電子装置は、少なくとも1つの動作パラメータの推移を評価するために設けられている評価ユニットを有する。「評価」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、少なくとも1つの動作パラメータ、乃至、少なくとも1つの動作パラメータのとりわけ時間的な推移が、チェック乃至処理されるプロセス、とりわけ開ループ制御及び/又は閉ループ制御アルゴリズムに基づいて分析されるプロセスであると理解されたい。「推移」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、少なくとも1つの動作パラメータの個々の値の時間的なシーケンスであると理解されたい。これによって有利には、手持工作機械の開ループ制御及び/又は閉ループ調整が精確になり、有利には操作快適性を向上することが可能となる。
【0014】
さらには、少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する前に、少なくとも1つの動作パラメータの最大値の時点を少なくとも近似的に推定するための、評価ユニットが設けられている。「近似的に推定」という用語は、本発明の関連においてはとりわけ、算出された最大値の時点が、とりわけ1秒以下、有利には50ミリ秒以下、有利には10ミリ秒以下、特に有利には5ミリ秒以下だけ、実際の最大値の時点と相違することであると理解されたい。これによって、手持工作機械を特に精確に開ループ及び/又は閉ループ制御することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明による手持工作機械の電子装置が提案される。
【0016】
本発明はさらに、本発明の手持工作機械の駆動ユニットを、開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニットを用いて開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための方法を前提としている。この方法は、少なくとも1つの動作パラメータを、センサユニットによって検出する少なくとも1つのステップと、センサユニットによって検出された動作パラメータに基づいて、少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する直前に、駆動ユニットの回転数をより高い値に調整する少なくとも1つの別のステップと、を少なくとも有する。
【0017】
さらにこの方法は、センサユニットによって検出された少なくとも1つの動作パラメータの推移を、少なくとも部分的に評価し、少なくとも1つの動作パラメータが最大値に到達する前に、少なくとも1つの動作パラメータの最大値の時点を少なくとも近似的に推定する、少なくとも1つの別のステップを有する。
【0018】
本発明による手持工作機械は、上で説明した適用方法及び実施形態に制限すべきではない。とりわけ本発明の手持工作機械は、本明細書で説明した機能方式を達成するために、本明細書で挙げた数とは異なる数の個々の要素、構成部材、ユニットを有することができる。
【0019】
さらなる利点は、以下の図面の詳細な説明から判明する。図面には、本発明の1つの実施例が図示されている。図面、明細書、及び、特許請求の範囲は、数多くの特徴的構成の組み合わせを含んでいる。当業者であれば、これらの特徴を目的に応じて個々に捉えることも、統合してより意義深い別の組み合わせにすることもできるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の手持工作機械の概略側面図である。
図2】電子装置と、駆動ユニットと、打撃機構ユニットとを有する、本発明の手持工作機械の一部の概略ブロック図である。
図3】本発明の手持工作機械の駆動ユニットの回転数の概略的な推移を例示した線図である。
図4】本発明の手持工作機械の駆動ユニットを開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法の概略フローチャートである。
【実施例】
【0021】
図1には、ドリルハンマーによって構成される手持工作機械10が図示されている。しかしながら、当業者にとって意義深いと思われる別の形態の手持工作機械10、例えばインパクトドリル、チッピングハンマー、解体ハンマー、セーバーソー、又は、ジグソーとして構成することも考えられる。手持工作機械10は、電動式手持工作機械によって構成されている。手持工作機械10の前方領域には工具収容部34が配置されており、この工具収容部34は、とりわけアタッチメント式のドリル又はたがねである先端工具14を収容するために設けられている。手持工作機械10の前方領域にはさらにサブハンドグリップ36が配置されており、手持工作機械10の前方領域とは反対の側にはメインハンドグリップ38が配置されており、操作者は、これらを介して手持工作機械10を操作することが可能である。サブハンドグリップ36は、ロッド形に形成されている。メインハンドグリップ38は、U字形に形成されている。しかしながら、当業者にとって意義深いと思われる別の形態のメインハンドグリップ及び/又はサブハンドグリップも考えられる。メインハンドグリップ38には、操作者によって操作可能なスイッチエレメント40が配置されている。スイッチエレメント40は、駆動ユニット16を操作するために設けられている。手持工作機械10のケーシング42は、スイッチエレメント40を用いて操作可能な、電気モータによって構成される駆動ユニット16(詳細には図示せず)を包囲している。駆動ユニット16は、手持工作機械10の打撃機構ユニット12を駆動するために設けられている。
【0022】
手持工作機械10は、打撃機構ユニット12を含む。打撃機構ユニット12は、工具収容部34の中に保持されている先端工具14に対して打撃(インパクト)を形成するために設けられている。打撃機構ユニット12は、手持工作機械10の工具収容部34の中に保持されている先端工具14を、並進的に乃至打撃しながら駆動するために設けられている。詳細には図示していない打撃機構ユニット12は、リベットによって構成されている伝達エレメントを含む。伝達エレメントは、ハンマー動作状態において、及び、打撃穿孔動作状態において、先端工具14に打撃を伝達するために設けられている。打撃機構ユニット12はさらに、詳細には図示していないガイドエレメントを有する。ガイドエレメントは、少なくとも1つの伝達エレメントを、打撃機構ユニット12の動作状態においてガイドするために設けられている。ガイドエレメントは、ハンマー孔によって構成されている。ガイドエレメントは、伝達エレメントと、打撃エレメントと、ピストンエレメントとを、打撃機構ユニット12の軸方向46を形成している先端工具14の加工軸44に対して平行に、線形にガイドするために設けられている。ガイドエレメント内では、駆動ユニット16によって駆動されるピストンユニットが軸方向46にガイドされている。駆動ユニット16から工具収容部34の方に向かって見て、軸方向にピストンエレメントの後ろに、この打撃エレメントが配置されている。打撃エレメントも同様に、ガイドエレメント内で軸方向46に可動に支承されている。
【0023】
手持工作機械10はさらに、電子装置18を含む。電子装置18は、動作パラメータを検出するためのセンサユニット20と、センサユニット20によって検出された動作パラメータに基づいて駆動ユニットを開ループ制御及び/又は閉ループ制御するための、開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット22とを含む(図2)。開ループ制御及び/又は閉ループ制御ユニット22は、センサユニットによって検出された動作パラメータに基づいて駆動ユニットを閉ループ制御するために設けられた、閉ループ制御ユニット50によって構成されている。付加的に、打撃機構ユニット12の1つ以上の別の動作パラメータ及び/又は1つ以上の周囲パラメータを検出するためのセンサユニット20を設けることができる。センサユニット20は、動作パラメータを検出するためのセンサエレメント48を有する。センサユニット20のセンサエレメント48は、加速度センサによって構成されている。しかしながら、当業者にとって意義深いと思われる別の形態のセンサユニット20のセンサエレメント48も考えられる。電子装置18のセンサユニット20によって検出可能な動作パラメータは、打撃機構ユニット12の負荷特性量を含む。電子装置18のセンサユニット20によって検出可能な動作パラメータは、打撃機構ユニット12の打撃周波数によって構成されている。動作パラメータは、打撃機構ユニット12の動作状態と、これに関連する駆動ユニットの負荷とに基づいている。打撃機構ユニット12が無負荷運転からハンマー動作状態又は打撃穿孔動作状態に移行すると、駆動ユニット16には負荷ピークが生じる。これに加え、打撃機構ユニット12の動作パラメータは最大値に到達する。負荷ピークにおける負荷の増加によって、駆動ユニット16の回転数は減少する。
【0024】
手持工作機械10の電子装置18はさらに、評価ユニット26を含む。評価ユニット26は、センサユニット20と電子的に接続されている。評価ユニット26は、動作パラメータの推移を評価するために設けられている。評価ユニット26は、動作パラメータが最大値に到達する時点を少なくとも近似的に推定するために設けられている。打撃機構ユニット12の打撃周波数によって構成されるこの動作パラメータは、センサユニット20によって検出されて、評価ユニット26に転送される。動作パラメータは、評価ユニット26にデジタルに転送される。しかしながら、動作パラメータを、アナログに又は当業者にとって意義深いと思われる別の形態で評価ユニット26に転送することも考えられる。動作パラメータは、データケーブルを介して評価ユニット26に送信される。しかしながら、当業者にとって意義深いと思われる別の形態で、例えば無線を介してワイヤレスに送信することも考えられる。
【0025】
評価ユニット26は、センサユニット20によって検出された動作パラメータの推移を、評価ユニット26に保存されている評価アルゴリズムに基づいて評価する。評価ユニット26の評価アルゴリズムを用いた評価により、駆動ユニット16が負荷ピークに到達する時点、つまりひいては打撃機構ユニット12の動作パラメータが最大値に到達する時点を、動作パラメータが最大値に到達する前に近似的に決定することができる。評価ユニット26が、動作パラメータが最大値に到達する時点を決定すると直ぐに、評価ユニット26は、相応の情報を有する信号を電子装置18の閉ループ制御ユニット50に転送する。このために評価ユニット26は、閉ループ制御ユニット50と電子的に接続されている。相応の情報を有するこの信号は、閉ループ制御ユニット50にデジタルに転送される。しかしながら、相応の情報を有するこの信号を、アナログ又は当業者にとって意義深いと思われる別の形態で閉ループ制御ユニット50に転送することも考えられる。相応の情報を有するこの信号は、データケーブルを介して閉ループ制御ユニット50に送信される。しかしながら、当業者にとって意義深いと思われる別の形態で、例えば無線を介してワイヤレスに送信することも考えられる。
【0026】
閉ループ制御ユニット50は、マイクロコントローラを含む。電子装置18の閉ループ制御ユニット50は、駆動ユニット16と電子的に接続されている。閉ループ制御ユニット50は、回転数制御器24を含む。閉ループ制御ユニット50は、駆動ユニット16の回転数を閉ループ制御するために設けられている。このために閉ループ制御ユニット50は、駆動ユニット16と電子的に結合されている。閉ループ制御ユニット50は、駆動ユニット16と双方向に結合されている。駆動ユニット16から閉ループ制御ユニット50へは、駆動ユニット16の実際の回転数の値が送信される。閉ループ制御ユニット50において、この駆動ユニット16の実際の回転数の値が、駆動ユニット16の回転数の予め定められた目標値と比較される。閉ループ制御ユニット50は、駆動ユニット16の実際の回転数の値を予め定められた回転数の目標値に近づけるための、制御信号を計算する。その後、駆動ユニット16の回転数の値を回転数の目標値に合わせるためのこの制御信号は、閉ループ制御ユニット50から駆動ユニット16へと転送され、これによって駆動ユニット16が閉ループ制御される。
【0027】
制御信号、及び、駆動ユニット16の実際の回転数の値は、駆動ユニット16と閉ループ制御ユニット50の間においてデジタルに送信される。しかしながら、制御信号、及び、駆動ユニット16の実際の回転数の値を、駆動ユニット16と閉ループ制御ユニット50の間において、アナログに又は当業者にとって意義深いと思われる別の形態で送信することも考えられる。制御信号、及び、駆動ユニット16の実際の回転数の値は、駆動ユニット16と閉ループ制御ユニット50の間において、データケーブルを介して送信される。しかしながら、当業者にとって意義深いと思われる別の形態で、例えば無線を介してワイヤレスに送信することも考えられる。択一的又は付加的に、電子装置18が、センサユニット20によって検出された動作パラメータに基づいて駆動ユニット16を開ループ制御するために設けられた、開ループ制御ユニットを含むことも考えられる。さらに付加的に、閉ループ制御ユニット50を、例えば操作者によって操作可能な調整ボタン又は調整ホイールを用いて手動で調整するために設けることも考えられる。
【0028】
閉ループ制御ユニット50は、センサユニット20によって検出された動作パラメータに基づいて、動作パラメータが最大値に到達する直前に、駆動ユニット16を閉ループ制御するよう構成されている。閉ループ制御ユニット50はさらに、評価ユニット26から閉ループ制御ユニット50に送信された、動作パラメータが最大値に到達する時点に関する相応の情報を有する信号に基づいて、回転数の目標値を適合させる。このようにして回転数の目標値は、動作パラメータが最大値に到達する直前に最大目標値まで増加され、これによって、閉ループ制御ユニット50から駆動ユニット16に送信される制御信号は、駆動ユニット16の回転数を相応に増加させる。閉ループ制御ユニット50は、駆動ユニット16の回転数を、動作パラメータが最大値に到達する直前に増加させるために設けられている。負荷ピークが生じる時点、及び、動作パラメータが最大値に到達する際に、駆動ユニット16の回転数は低下してしまう。閉ループ制御ユニット50によって駆動ユニット16の回転数を前もって増加させておくことにより、負荷ピークのせいで低下する回転数の値と、平均動作回転数との間の差を、有利にも小さく留めることができるのである(図3)。
【0029】
負荷ピークの時点tを上回った後、駆動ユニット16の回転数は再び上昇し、したがって閉ループ制御ユニット50は、最大目標値を再び通常目標値まで低減することができる。閉ループ制御ユニット50の通常目標値は、駆動ユニット16の平均動作回転数に相当する。閉ループ制御ユニット50はさらに、手持工作機械10の動作状態における駆動ユニット16の回転数の値を、2つの負荷ピークの間の期間において、少なくともほぼ一定に、平均動作回転数の値に維持する、乃至、通常目標値に維持するために設けられている。
【0030】
手持工作機械10の駆動ユニット16の閉ループ制御は、センサユニット20によって動作パラメータを検出するステップ28を含む方法によって実施される。この方法はさらに、センサユニット20によって検出された動作パラメータを評価ユニット26に転送し、センサユニット20によって検出された動作パラメータの推移を評価ユニット26によって評価し、少なくとも1つの動作パラメータの最大値の時点を、動作パラメータが最大値に到達する前に少なくとも近似的に推定する、別の方法ステップ32を有する。この情報は、閉ループ制御ユニット50に送信される。この方法は、センサユニット20によって検出された動作パラメータに基づいて、動作パラメータが最大値に到達する直前に駆動ユニット16を閉ループ制御する、別の方法ステップ30を有する。この方法の当該別の方法ステップ30においては、評価ユニット26によって評価された、動作パラメータが最大値に到達する時点に基づいて、並びに、駆動ユニット16の予め定められた通常目標値と予め定められた最大目標値とに基づいて、閉ループ制御ユニット50が閉ループ制御する。しかしながら、この方法が、当業者にとって意義深いと思われる別のステップを択一的又は付加的に有することも考えられる。
図1
図2
図3
図4