(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板水平後方向を基準として前記リテーナ基板当接面の法線方向の角度をリテーナ傾斜角とし、前記基準から下方向への回転角度を正の値とすると、前記蓋体により前記容器本体開口部が閉塞されていない状態における前記リテーナ傾斜角よりも、前記蓋体により前記容器本体開口部が閉塞された状態における前記リテーナ傾斜角が大きくなることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
前記リテーナ基板当接面において前記基板が当接する基板当接位置が、前記リテーナ基板受け部と前記アーム部が接続されたアーム部固定位置の中心よりも下方向に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板収納容器。
前記リテーナ基板当接面において前記基板が当接する基板当接位置が、前記リテーナ基板受け部と前記アーム部が接続されたアーム部固定位置の中心と同じ高さ又は上方向に位置し、
且つ、前記蓋体が前記容器本体開口部を閉塞していない状態のときに、前記基板水平後方向を基準として前記リテーナ基板当接面の法線方向が下側に所定の角度傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
複数の基板を収納可能な基板収納空間が内部に形成され、一端部に前記基板収納空間に連通する容器本体開口部を有する容器本体と、前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体を有する基板収納容器に用いられ、
前記蓋体の部分であって前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記基板収納空間に対応する側に配置され、前記複数の基板の端部を支持可能なリテーナにおいて、
リテーナ基板当接面において前記基板が当接する基板当接位置が、リテーナ基板受け部とアーム部が接続されたアーム部固定位置の中心と同じ高さ又は上方向に位置し、
且つ、前記蓋体が前記容器本体開口部を閉塞していない状態のときに、前記基板の厚さ方向の中心を通り厚さ方向に垂直で前記基板収納容器の後方向である基板水平後方向を基準として前記リテーナ基板当接面の法線方向が下側に所定の角度傾斜していることを特徴とするリテーナ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態による基板収納容器1及びリテーナ35について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1に基板Wが収納された様子を示す分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る容器本体2において、第二側壁26と上壁23の省略した上方斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る容器本体2において、基板支持板状部5の部分の拡大図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係る蓋体3において、基板収納空間27側からみた側方斜視図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係るリテーナ35の一部を拡大した側方斜視図である。
【0022】
ここで、説明の便宜上、後述の容器本体2から蓋体3へ向かう方向(
図1における右上から左下へ向かう方向)を前方向と定義し、その反対の方向を後方向と定義し、これらをあわせて前後方向と定義する。また、後述の下壁24から上壁23へと向かう方向(
図1における上方向)を上方向と定義し、その反対の方向を下方向と定義し、これらをあわせて上下方向と定義する。また、後述する第2側壁26から第1側壁25へと向かう方向(
図1における右下から左上へ向かう方向)を左方向と定義し、その反対の方向を右方向と定義し、これらをあわせて左右方向と定義する。
【0023】
また、基板収納容器1に収納される基板W(
図1参照)は、ボンデッドウェーハであり、ベース基板BWの上面に薄いウェーハTWを固定したものである(
図6等参照)。ベース基板BWは、円盤状のシリコンウェーハ、ガラスウェーハ等を利用可能である。本実施形態におけるベース基板BWは、直径300mm〜450mmのガラスウェーハである。薄いウェーハTWは、リシコーンウェーハの表面にデバイスが形成され、その後裏面が研磨され所定の厚とされたものである。
【0024】
図1に示すように、基板収納容器1は、上述のような基板Wを収納して、工場内の工程において搬送する工程内容器として用いられたり、陸運手段・空運手段・海運手段等の輸送手段により基板を輸送するための出荷容器として用いられるものであり、容器本体2と、蓋体3と、側方基板支持部としての基板支持板状部5と、基板支持板状部5の奥部に一体的に形成された後述する奥側基板支持部504(
図3等)と、蓋体側基板支持部としての後述するリテーナ35(
図4等)とを有している。
【0025】
容器本体2は、一端部に容器本体開口部21が形成され、他端部が閉塞された筒状の壁部20を有する。容器本体2内には基板収納空間27が形成されている。基板収納空間27は、壁部20により取り囲まれて形成されている。壁部20の部分であって基板収納空間27を形成している部分には、基板支持板状部5が配置されている。基板収納空間27には、
図1に示すように、複数の基板Wを収納可能である。
【0026】
図2や
図3に示すように、基板支持板状部5は、基板収納空間27内にリテーナ35と対をなすように壁部20に設けられている。基板支持板状部5は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されていないときに、基板を載置するための基板載置部501と、基板支持板上部の後側(奥側)に形成された基板Wの縁部に当接する奥側基板支持部504とにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板Wを支持可能である。基板載置部501には、基板載置部501の上面の前側に形成された前側載置突起502と、基板載置部501の上面の後側(奥側)で奥側基板支持部504の前側に近接する位置に形成された奥側載置部503が設けられている。基板Wは、前側載置突起502と奥側載置部に載置される。
【0027】
奥側基板支持部504は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより、複数の基板Wの縁部の後部を支持可能である。
【0028】
蓋体3は、容器本体開口部21を形成する開口周縁部31(
図1等)に対して着脱可能であり、容器本体開口部21を閉塞可能である。
図4に示すように、リテーナ35は、蓋体3の部分であって蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに基板収納空間27に対向する部分に設けられている。リテーナ35は、基板収納空間27の内部において基板支持板状部5と対をなすように配置されている。
【0029】
リテーナ35は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより複数の基板Wの縁部の前部を支持可能である。リテーナ35は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、基板支持板状部5と協働して複数の基板Wを支持することにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板Wを保持する。
【0030】
基板収納容器1は、プラスチック材等の樹脂で構成されており、特に説明が無い場合には、その材料の樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等が上げられる。これらの成形材料の樹脂には、導電性を付与する場合には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等の導電性物質が選択的に添加される。また、剛性を上げるためにガラス繊維や炭素繊維等を添加することも可能である。特に、リテーナ35は、基板Wを保持する際にある程度の弾性が必要であるので、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマーやポリエーテルエーテルケトンなどを用いることができる。
【0031】
以下、各部について、詳細に説明する。
図1等に示すように、容器本体2の壁部20は、奥壁22と上壁23と下壁24と第1側壁25と第2側壁26とを有する。奥壁22、上壁23、下壁24、第1側壁25、及び第2側壁26は、上述した材料により構成されており、一体成形されて構成されている。
【0032】
第1側壁25と第2側壁26とは対向しており、上壁23と下壁24とは対向している。上壁23の後端、下壁24の後端、第1側壁25の後端、及び第2側壁26の後端は、全て奥壁22に接続されている。上壁23の前端、下壁24の前端、第1側壁25の前端、及び第2側壁26の前端は、奥壁22に対向する位置関係を有し、略長方形状をした容器本体開口部21を形成する開口周縁部31を構成する。
【0033】
開口周縁部31は、容器本体2の一端部に設けられており、奥壁22は、容器本体2の他端部に位置している。壁部20の外面により形成される容器本体2の外形は箱状である。壁部20の内面、即ち、奥壁22の内面、上壁23の内面、下壁24の内面、第1側壁25の内面、及び第2側壁26の内面は、これらによって取り囲まれた基板収納空間27を形成している。開口周縁部31に形成された容器本体開口部21は、壁部20により取り囲まれて容器本体2の内部に形成された基板収納空間27に連通している。基板収納空間27には、最大で26枚の基板Wを収納可能である。
【0034】
図1に示すように、上壁23及び下壁24の部分であって、開口周縁部31の近傍の部分には、基板収納空間27の外方へ向かって窪んだ上側ラッチ係合凹部40A、40Bと下側ラッチ係合凹部41A、41Bが形成されている。上側ラッチ係合凹部40A、40B、下側ラッチ係合凹部41A、41Bは、上壁23及び下壁24の左右両端部近傍に1つずつ、計4つ形成されている。
【0035】
図1に示すように、上壁23の外面においては、リブ28が、上壁23と一体成形されて設けられている。このリブ28は、容器本体の剛性を高めるために設けられている。
【0036】
また、上壁23の中央部には、トップフランジ29が固定される。トップフランジ29は、AMHS(自動ウェーハ搬送システム)、PGV(ウェーハ基板搬送台車)等において基板収納容器1を吊り下げる際に、基板収納容器1において掛けられて吊り下げられる部分となる部材である。
【0037】
図1から
図2に示すように、容器本体2の基板収納空間27の第1側壁25と第2側壁26の内面には、基板支持板状部5が形成されている。
図3に示すように、本実施形態においては、基板支持板状部5は、第1側壁25に取り外し可能に固定されている。第1側壁25には基板支持板状部5を固定するために、第1側壁25の前側に円柱状の前側被係合部250が形成され、後側に後側中央被係合部251と後側被係合部252と後側被係合固定部253が形成されている。基板支持板状部5には、前側被係合部250と係合する孔形状の前側係合部500と、後側中央被係合部251と係合する後側中央係合部505と、後側被係合部252と係合する後側係合部506と、後側被係合部252と係合し基板支持板状部5を固定する後側係合固定部507が形成されている。
【0038】
基板支持板状部5は、略板状の基板載置部501が複数形成され、それらが上下方向に連結されている。本実施形態では、26個の基板載置部501が形成されている。基板載置部501は、本実施形態においては10mmごとに設けられている。この値は載置する基板Wの上下方向に収納される際のピッチ高さに対応しているので、適宜変更可能である。
【0039】
それぞれの基板載置部501は、基板Wと載置するための前側載置突起502と奥側載置部503を有している。また、奥側載置部503の後側には、基板Wの端部を支持するための平面である奥側基板支持部504が形成されている。この奥側基板支持部の基板Wを支持する平面の高さは載置する基板Wの厚さ以上が必要である。本実施形態においては5mmとした。この平面の高さは、容器1に収納する可能性のある基板の厚さ以上必要であり、ボンデッドウェーハ等に使用する場合には、2.5mm以上は必要である。また、本実施形態においては、基板の載置ピッチが10mmであるので、基板載置部501の厚さを考慮すると、奥側基板支持部504の基板Wを支持するための平面の高さは、最大でも9mmとなる。
【0040】
第1側壁25への基板支持板状部5の固定は次のように行う。基板支持板状部5を容器本体開口部21側から第1側壁25に沿って後方向に移動させて、基板支持板状部5の係合部である前側係合部500と後側中央係合部505と後側係合部506と後側係合固定部507を、第1側壁25の対応する被係合部である前側被係合部250と後側中央被係合部251と後側被係合部252とにスライドさせるように係合させる。その後、基板支持板状部5の後側係合固定部507と第1側壁25の後側被係合固定部253とで固定する。
【0041】
逆に、第1側壁25から基板支持板状部5を外す場合には、後側係合固定部507と後側被係合固定部253との係合を解除し、基板支持板状部5を前方向にスライドさせるように移動させ、他の係合部と被係合部との係合を解除する。
【0042】
第2側壁26に形成される基板支持板状部5についても、同様に係合固定・取り外しが可能である。
【0043】
図1等に示すように、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部31の形状と略一致する略長方形状を有している。蓋体3は容器本体2の開口周縁部31に対して着脱可能であり、開口周縁部31に蓋体3が装着されることにより、蓋体3は、容器本体開口部21を閉塞可能である。
図4に示すように蓋体3の内面であって、蓋体3が容器本体開口部21を閉塞しているときの開口周縁部31のすぐ後方向の位置に形成された段差の部分の面(シール面30)に対向する面には、環状のシール部材4が取り付けられている。シール部材4は、弾性変形可能なポリエステル系、ポリオレフィン系など各種熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム製、シリコンゴム製等により構成されている。シール部材4は、蓋体3の外周縁部を一周するように配置されている。
【0044】
蓋体3が開口周縁部31に装着されたときに、シール部材4は、シール面30と蓋体3の内面とにより挟まれて弾性変形し、蓋体3は、容器本体開口部21を密閉した状態で閉塞する。開口周縁部31から蓋体3が取り外されることにより、容器本体2内の基板収納空間27に対して、基板Wを出し入れ可能となる。
【0045】
蓋体3においては、ラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、蓋体3の左右両端部近傍に設けられており、
図4に示すように、蓋体3の上辺から上方向へ突出可能な2つの上側ラッチ部32A、32Bと、蓋体3の下辺から下方向へ突出可能な2つの下側ラッチ部33A、33Bと、を備えている。2つの上側ラッチ部32A、32Bは、蓋体3の上辺の左右両端近傍に配置されており、2つの下側ラッチ部33A、33Bは、蓋体3の下辺の左右両端近傍に配置されている。
【0046】
図1に示すように蓋体3の外面においては操作部34が設けられている。操作部34を蓋体3の前側から操作することにより、上側ラッチ部32A、32B、下側ラッチ部33A,33Bを蓋体3の上辺、下辺から突出させることができ、また、上辺、下辺から突出させない状態とすることができる。上側ラッチ部32A、32Bが蓋体3の上辺から上方向へ突出して、容器本体2の上側ラッチ係合凹部40A、40Bに係合し、且つ、下側ラッチ部33A、33Bが蓋体3の下辺から下方向へ突出して、容器本体2の下側ラッチ係合凹部41A、41Bに係合することにより、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部31に固定される。
【0047】
図4に示すように、蓋体3の内側においては、基板収納空間27の外方へ窪んだ凹部37が形成されている。凹部37の部分には、リテーナ35のリテーナ係合凸部36に係合するリテーナ被係合部(図示せず)が設けられており、蓋体3の凹部37にリテーナ35が取り外し可能に固定されている。
【0048】
図5に示すように、リテーナ35は、複数のリテーナ部301が所定の間隔で左右対をなすように上下方向に配置されている。このリテーナ部301は、長方形状のリテーナフレーム300の内側に固定されている。リテーナ部301は、基板Wの前側端を支持するためのリテーナ基板受け部303と、リテーナ基板受け部303をリテーナフレーム300と接続する弾性を有するアーム部302からなる。さらに、リテーナ基板受け部303は、基板Wの縁部の端縁と当接し支持するための平面であるリテーナ基板当接面306と、その上下に隣接して形成されている上側フランジ304と下側フランジ305を有している。このようなリテーナ基板受け部303は、左右方向に所定の間隔で離間して対をなすようにして配置されている。このように対をなすようにして配置されたリテーナ基板受け部303は、上下方向に26対並列した状態で設けられている。基板収納空間27内に基板Wが収納され、蓋体3が閉じられることにより、リテーナ基板受け部は、基板Wの縁部の端縁を挟持して支持する。
【0049】
上述のような基板収納容器1において、基板Wの支持は、以下のとおりに行われる。
工場内の工程において基板収納容器1が工程内容器として用いられているときには、容器本体2において下壁24は下部に位置し上壁23は上部に位置している。この基板収納容器1への基板Wの収納・保持をする場合は、まず、蓋体3を容器本体2から外した状態とする。
【0050】
次に、基板Wを水平に維持した状態で、容器本体開口部21から基板収納空間27に挿入し、基板支持板状部5に基板Wを載置する。
図6に示すように、本実施形態で用いる基板Wは、ベース基板BWの上面に薄基板TBを固定したものを用いる。薄基板TBはシリコンウェーハ基板の上面にデバイスを形成した後に、裏面が研磨され極薄化されたものである。薄基板TBの直径は、ベース基板BWの直径よりも1〜2mm程度小さいため、ベース基板BWの外形から薄基板TBは、はみださない。このような基板Wはボンデッドウェーハと呼ばれている。また、本実施形態で収納可能なボンデッドウェーハとしては、ベース基板BWに複数の薄基板TBが積層されたもの収納可能である。もちろん、基板Wとして、ボンデッドウェーハ以外にも、通常のシリコンウェーハを収納することもできる。
【0051】
図6に示すように、容器本体開口部21から収納されたベース基板BWに薄基板TBが固定された基板Wは、基板支持板状部5の所望の基板載置部501に載置される。その際、基板W(厳密にはベース基板BW)の下面は、前方は前側載置突起502に載置され、後方は奥側載置部503の上部に載置されるとともに、基板W(厳密にはベース基板BW)の後側(奥側)の縁部の端縁は、奥側基板支持部504に当接する。この際、基板W(厳密にはベース基板BW)の縁部の端縁が、奥側基板支持部504と当接しない場合もある。その場合は、次に説明する蓋体3で容器本体2を閉塞する際に、リテーナ部301で基板W(厳密にはベース基板BW)の縁部の端縁の前側を押すことで、奥側基板支持部504と当接することになる。
【0052】
次に、蓋体3で容器本体2を閉塞する際の基板Wの支持状況を説明する。
基板Wが基板載置部501に載置された状態で、蓋体3が容器本体2に取り付けられ、閉塞されようとする状態を
図7Aと
図8Aに示す。蓋体3が容器本体2を完全に閉塞する前に、リテーナ基板当接面306が基板Wの縁部の端縁の前側に当接する。
図7Aと
図8Aの状態では、基板Wとリテーナ基板当接面306が当接したのみで、アーム部302の弾性で基板Wを後方向に押してはいない。この時、リテーナ基板当接面306と基板Wの前側の縁部の端縁が当接した場所を基板当接位置307とし、リテーナ基板受け部303と接続されているアーム部302の中心をアーム部固定位置の中心308と定義する。そして、基板当接位置307を通り、基板Wに水平な面を基板水平面801とし、アーム部固定位置の中心308を通り、基板Wに水平な面をアーム部水平面802と定義する。基板水平面801とアーム部水平面は互いに並行で、その方向は、基板Wの中心軸方向に垂直となる。
【0053】
本実施形態においては、アーム部水平面802は、基板水平面801よりも高さh1だけ上方に位置している。言い換えると、基板当接位置307は、アーム部固定位置の中心308よりも高さh1だけ下方向に位置している。
【0054】
次に、蓋体3を容器本体2に完全に取り付け、蓋体3の操作部34を操作することで、蓋体3は容器本体2に着脱可能に固定され、基板収納容器1は閉塞される。すると、
図7Bと
図8Bに示すように、リテーナ部301は、アーム部302の弾性力により基板Wを基板水平面801にそって後方向である基板水平後方向803に押す。すると、基板Wは、リテーナ部301のリテーナ基板当接面306と奥側基板支持部504の平面により支持される。この支持力は、アーム部302の材質や形状により適宜調整可能である。
【0055】
この時、アーム部固定位置の中心308と基板当接位置307の上下方向の高さがずれていることから、リテーナ基板受け部303には回転モーメントが働き、わずかにリテーナ基板受け部303が回転する。つまり、本実施形態においては、基板水平後方向803を基準としてリテーナ基板当接面の法線方向804が下方向に所定の角度傾斜することになる。厳密にはこの傾斜は、リテーナ基板当接面306と基板Wの当接する位置により、上下方向以外にも傾斜するが、本発明に有用となる基板Wを押える力の方向のみを考慮すればよい。よって、リテーナ基板受け部303の回転による傾斜としては、上下方向の成分のみを考慮し、上記角度傾斜は上下方向の傾斜成分のみを意味するものとする。
【0056】
リテーナ基板当接面の法線方向804と基板水平後方向803のなす傾斜角をリテーナ傾斜角θとする。リテーナ傾斜角θは、
図8B等の基板当接位置307を中心として、基板水平後方向803を基準に時計まわり(下方向)をプラス(正)の値、その逆をマイナス(負)の値と定義する。本実施形態の場合、蓋体3により容器本体開口部21が完全に閉塞されていない状態である
図7Aや
図8Aに場合は、リテーナ傾斜角は0(ゼロ)度である。また、蓋体3により容器本体開口部21が完全に閉塞された状態である
図7Bや
図8Bに場合は、リテーナ傾斜角はプラス1度程度である。つまり、蓋体3により容器本体開口部21が完全に閉塞されていない状態におけるリテーナ傾斜角よりも、蓋体3により容器本体開口部21が完全に閉塞された状態におけるリテーナ傾斜角が大きくなる。
【0057】
図8Bにおいては、リテーナ基板受け部303の回転(傾斜)を分かりやすくするために、リテーナ基板受け部303の回転(傾斜量)を強調して表示している(以下、
図10Bも同様)。
【0058】
上述したように、蓋体3により容器本体開口部21が完全に閉塞することで、リテーナ基板受け部303に軽微な回転が発生する。蓋体3で容器本体2を閉塞する際に、リテーナ部301に働く基板Wを基板水平後方向803に押す力の一部は、このリテーナ基板受け部303の軽微な回転により、基板Wの縁部の端縁を下方向に押す力に変わり、基板Wを基板載置部501に押しつける力の成分が働く。これにより、リテーナ部301の基板当接位置307と基板支持板状部5の奥側基板支持部504により基板Wを支持する。
【0059】
上記構成の第1実施形態に係る基板収納容器1によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
本発明によれば、リテーナ部のリテーナ基板当接面の平面と、奥側基板支部の平面で基板を支持することを基本とし、リテーナ基板当接面の平面が所定の角度わずかに下方向に回転することで、基板を基板載置部に基板を押しつける力が働く。よって、ベース基板の上に薄いウェーハが張り合わされたボンデッドウェーハのような基板を支持する際に、その基板の上面にリテーナや奥側基板支持部に接触することなく基板を保持可能である。
【0061】
また、基板の基板載置部に押しつける力が働くため、基板収納容器が上下方向に振動したり衝撃を受けた場合であっても、基板載置部から浮き上がることを防ぐことができ、基板とリテーナや奥側基板支持部との接触部が擦れ合うことを防止でき、これらの接触部が擦れ合うことで発生するパーティクルを極限まで低減できる。パーティクルの低減により、基板上に作成されるデバイスの歩留まりや不良率を改善することができる。
【0062】
さらに、基板の縁部をリテーナ部と奥側基板支持部の平面で受けて保持する為、これら基板の支持部が基板の上面に接触することが無く、基板の上面の外周のぎりぎり近傍までデバイスを形成でき、デバイスを形成可能な有効面積や、一枚の基板から取れるデバイスの和を増やすことができ、デバイスのコストダウンに寄与する。
【0063】
さらに、リテーナ部のリテーナ基板当接面や奥側基板支持部の平面を基板の厚さよりも高くすることで、特定の厚さを持つ基板に限らず、リテーナ基板当接面の高さ或いは奥側基板支持部の平面の高さ以下の厚みをもつ基板を支持可能であり、さらに厚さの異なる基板をも1つの基板収納容器で収納可能である。
【0064】
ここで、本実施形態のリテーナ基板当接面306は、基板水平後方向803に対して垂直に位置している(リテーナ基板当接面306の法線に対しては水平な面としている)が、これに限られず、リテーナ基板当接面306は、基板水平後方向に対して、上方向あるいは下方向に若干傾斜していてもよい。本実施形態においては、蓋体3が容器本体2を閉塞した状態時に、リテーナ基板当接面306の法線が、基板水平後方向に対して下方向に傾斜していればよく、蓋体3が容器本体2を閉塞していない状態では、リテーナ基板当接面306の法線方向は本実施形態に限定されない。
【0065】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による基板収納容器1について
図9を参照しながら説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器1において、基板Wとリテーナ部301Aが当接した時を示す図である。本発明の第2実施形態に係る基板収納容器1のリテーナは、アーム部302とリテーナ基板受け部303Aの取り付け位置と、リテーナ基板受け部303Aの形状が第1実施形態のリテーナと異なる。これ以外の構成については、第1実施形態による基板収納容器1の構成と同様であるため、第1実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図9に示すように、本実施形態のリテーナ部301Aにおいては、アーム部302のアーム部固定位置の中心308と、基板Wがリテーナ基板受け部303Aのリテーナ基板当接面306Aと基板Wの縁部の端縁が当接する基板当接位置307が上下方向において同じ高さになっている。つまり、本実施形態は、基板水平面801とアーム部水平面802が同一平面となる実施形態である。さらに、蓋体3が容器本体2に閉塞されていない状態において、リテーナ基板当接面306Aの法線は、基板水平後方向803ではなく、基板水平後方向803に対して、下方向に傾斜している。この傾斜角は、非常に軽微であり、本実施形態においては下方向に1度とした。この値は適宜設計変更可能である。
【0067】
リテーナ部301Aを用いた本実施形態においては、蓋体3が容器本体2に閉塞されていない状態と、蓋体3が容器本体2に閉塞されアーム部302の弾性力により基板Wを基板水平後方向に押した状態とで、リテーナ基板受け部303Aが第1実施形態のように回転することはない。しかし、リテーナ部301Aのリテーナ基板当接面306Aが下方向に傾斜しているので、第1実施形態と同様に、奥側基板支持部504の平面とリテーナ基板当接面306Aとで基板Wを支持する際に、基板Wを基板載置部501に押しつける力の成分が働く。
【0068】
上記構成の第2実施形態に係る基板収納容器1によれば、第1実施形態と同様な効果をえることができる。
【0069】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態による基板収納容器1について
図10Aと
図10Bを参照しながら説明する。
図10Aは、第1実施形態の
図8Aに対応する図で、本発明の第3実施形態に係る基板収納容器1において、基板Wとリテーナ部301Bが当接した時を示す図である。
図10Bは、第1実施形態の
図8Bに対応する図で、本発明の第3実施形態に係る基板収納容器1において、基板Wとリテーナ部301Bが当接し、容器本体2を蓋体3で閉塞した状態時を表す図である。
【0070】
本発明の第3実施形態に係る基板収納容器1のリテーナは、アーム部302とリテーナ基板受け部303Aの取り付け位置が第2実施形態のリテーナとは異なる。これ以外の構成については、第2実施形態による基板収納容器1の構成と同様であるため、第1実施形態あるいは第2実施形態における各構成と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図10Aに示すように、本実施形態のリテーナ部301Bは、アーム部302のアーム部固定位置の中心308と、基板Wがリテーナ基板受け部303Bのリテーナ基板当接面306Aと基板Wの縁部の端縁が当接する基板当接位置307とが上下方向において、同じ高さになってない。第1実施形態の場合とは逆に、上下方向において、基板当接位置307がアーム部固定位置の中心308よりも上方向に位置している。つまり、本実施形態においては、アーム部水平面802は、基板水平面801よりも高さh2だけ下方に位置している。リテーナ基板受け部303Bの形状は第2実施形態と同じである。
【0072】
次に、蓋体3で容器本体2を閉塞する際の基板Wの支持状況を説明する。
【0073】
蓋体3が容器本体2を完全に閉塞する前に、リテーナ基板当接面306Aが基板Wの縁部の端縁の前側に若干斜めに当接する。
図10Aの状態では、基板Wとリテーナ基板当接面306Aが当接したのみで、アーム部302の弾性で基板Wを後方向に押してはいない。
【0074】
この時、リテーナ基板当接面306Aの法線方向をリテーナ基板当接面の法線方向804とし、基板水平後方向803との成す角をリテーナ初期傾斜角θ0とする。本実施形態においては、リテーナ初期傾斜角θ0はプラス2度とした。
【0075】
次に、蓋体3を容器本体2に完全に取り付け、蓋体3の操作部34を操作することで、蓋体3を容器本体2に着脱可能に固定され、基板収納容器1は閉塞される。すると、
図10Bに示すように、リテーナ基板受け部303Bは、アーム部302の弾性力により基板Wを基板水平面801にそって後方向である基板水平後方向803に押す。すると、基板Wは、リテーナ基板受け部303Bのリテーナ基板当接面306Aと奥側基板支持部504の平面により支持される。この時、アーム部固定位置の中心308と基板当接位置307の上下方向の高さがずれていることから、リテーナ基板受け部303Bには回転モーメントが働き、わずかにリテーナ基板受け部303Bが回転する。この回転方向は、実施形態1の場合とは逆の方向つまり、上方向に回転する。その場合でも、本実施形態においては、基板水平後方向803を基準として回転した後のリテーナ基板当接面の法線方向804が下方向に所定の角度傾斜する範囲となるように構成する。具体的には、リテーナ基板当接面の傾斜角であるリテーナ初期傾斜角と、アーム部固定位置の中心と基板当接位置の上下方向の差である高さh2を上記範囲になるように設計する。
【0076】
リテーナ回転後のリテーナ基板当接面の法線方向804と基板水平後方向803のなす傾斜角であるリテーナ傾斜角θは、第1実施形態と同様に、リテーナ傾斜角θはプラス1度程度である。つまり、蓋体3で容器本体2を閉塞する前後に置いて、閉塞後のリテーナ傾斜角θは、閉塞前のリテーナ初期傾斜角θ0よりも小さくなる。
【0077】
図10Aおよび
図10Bにおいては、リテーナ基板受け部303Bの回転(傾斜)を分かりやすくするために、リテーナ基板受け部303Bの傾斜量や回転量を強調して表示している。
【0078】
上述したように、蓋体3により容器本体開口部21が完全に閉塞することで、リテーナ部301の軽微な回転が発生する。蓋体3で容器本体2を閉塞する際に、リテーナ部301に働く基板Wを基板水平後方向803に押す力の一部は、このリテーナ部301の軽微な回転により、基板Wの縁部の端縁を下方向に押す力は第2実施形態に比べ弱まるが、基板Wを基板載置部501に押しつける力の成分が働くことになる。これにより、リテーナ部301Bのリテーナ基板当接面306Aと基板支持板状部5の奥側基板支持部504により基板Wを支持する。
【0079】
上記構成の第3実施形態に係る基板収納容器1によれば、第1実施形態の効果と同様な効果を得ることができる。
【0080】
本発明は、上述した複数の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。
【0081】
例えば、リテーナ部のアーム部やリテーナ基板受け部、基板支持板形状部の形状は、本実施形態の形状に限定されない。また、容器本体及び蓋体の形状、容器本体に収納可能な基板Wの枚数や寸法は、本実施形態における容器本体及び蓋体の形状、容器本体に収納可能な基板Wの枚数や寸法に限定されない。
【0082】
ここで、リテーナ35と基板支持板状部5は、それぞれ蓋体3や容器本体2に着脱可能に固定されている。よって、リテーナと基板支持板状部は、基板収納容器の目的により適したものに取り換えが可能である。よって、用途に適したリテーナや基板支持板状部を取り付けた出荷容器により基板を搬送後、この出荷容器のリテーナと基板支持板状部を本発明のリテーナと基板支持板状部に交換することで、工程内容器に容易に変更可能である。この場合、出荷容器の容器本体と蓋体を再利用できるメリットがある。
【0083】
また、上述した複数の実施形態において、基板支持板状部は基板載置部と奥側基板支持部を一体で形成した場合について説明した。しかし、これに限定されず、基板載置部と奥側基板支持部は、別部品として形成し、それぞれ第1側壁や第2側壁に固定してもことは言うまでもない。さらに、基板支持板状部を、第1側壁や第2側壁に対して着脱可能に構成されることに限定されず、第1側壁や第2側壁と一体的に形成しても良いことは言うまでもない。