特許第6391350号(P6391350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391350
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】スカム除去装置及びスカム除去方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   C02F1/40 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-158232(P2014-158232)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-34615(P2016-34615A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】504036291
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(74)【代理人】
【識別番号】100101306
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 秀雄
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−047690(JP,U)
【文献】 実開昭62−059193(JP,U)
【文献】 特開平11−277056(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0264088(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
B01D 21/24−26
E02B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の上面に生成されたスカムをポンプを用いてその水槽から水に同伴させて除去するスカム除去装置であって、
両端部が共に開口した直線状のパイプ材からなり、そのパイプ材の上端開口部が前記水槽の水面より所定距離下方に位置するとともに、そのパイプ材の下端開口部がその水槽の底面から所定距離上方に位置し、かつ、そのパイプ材の軸心方向が鉛直方向に向くように前記水槽内に設けられたスカム吸引パイプと、
開口した下端部が前記スカム吸引パイプ内の上端側に位置し、その開口から圧力水を前記スカム吸引パイプの下端側に向けて噴出し、そのスカム吸引パイプ内に旋回を伴う下降流を発生させるとともに、その旋回を伴う下降流によって前記水槽の水面に生成された渦巻き状の水流により、その水面に生成されているスカムを破壊する圧力水管と、
を備え、
前記ポンプでスカムを除去するときに、前記圧力水管に圧力水を供給して前記水槽の上面に生成されたスカムを前記スカム吸引パイプ内を通過させて前記ポンプ側へ導くことを特徴とするスカム除去装置。
【請求項2】
前記水槽は、下水処理施設に設けられ、その下水処理施設で発生するスカムや汚泥を処理するために用いられる槽であることを特徴とする請求項1に記載のスカム除去装置。
【請求項3】
前記水槽には、前記圧力水管を備えた前記スカム吸引パイプが互いに所定の間隔を保ち、その水槽の容積に応じて複数個設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のスカム除去装置。
【請求項4】
水槽の上面に生成されたスカムを除去するスカム除去方法であって、
両端部が共に開口した直線状のパイプ材からなるスカム吸引パイプと、前記スカム吸引パイプの上端開口部から下端側に向けて圧力水を噴出する圧力水管とを備えてなるスカム除去装置を前記水槽内に配設するステップと、
前記圧力水管に圧力水を供給して前記水槽の上面に生成されたスカムを前記スカム吸引パイプ内を通過させ、前記水槽に配置したポンプ側へ導くステップと、
を備え、
前記スカム吸引パイプは、パイプ材の上端開口部が前記水槽の水面より所定距離下方に位置するとともに、そのパイプ材の下端開口部がその水槽の底面から所定距離上方に位置し、かつ、そのパイプ材の軸心方向が鉛直方向に向くように前記水槽内に設けられ、前記圧力水管は、開口した下端部が前記スカム吸引パイプ内の上端側に位置し、その開口から前記圧力水を前記スカム吸引パイプの下端側に向けて噴出し、そのスカム吸引パイプ内に旋回を伴う下降流を発生させるとともに、その旋回を伴う下降流によって前記水槽の水面に生成された渦巻き状の水流により、その水面に生成されているスカムを破壊することを特徴とするスカム除去方法。
【請求項5】
前記水槽は、下水処理施設に設けられ、その下水処理施設で発生するスカムや汚泥を処理するために用いられる槽であることを特徴とする請求項4に記載のスカム除去方法。
【請求項6】
前記水槽には、前記圧力水管を備えた前記スカム吸引パイプが互いに所定の間隔を保ち、その水槽の容積に応じて複数個設けられることを特徴とする請求項4又は5に記載のスカム除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカム除去装置及びスカム除去方法に係り、特に、水面上に浮上しているスカムを簡単に除去できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下水処理施設においては、施設内で発生したスカムをドラムスクリーン等の固液分離機や汚泥焼却炉等を備えた汚泥処理工場に移送して処理するようにしている。したがって、下水処理施設の沈殿池に原水(下水)を供給する導水渠に発生したスカムも汚泥処理工場に移送されて処理される。
【0003】
導水渠に発生したスカムの移送は、ポンプの移送水に同伴させて行われるが、スカムは水面に浮上しているので、導水渠に付設されているスカムピット内の水を単にポンプで吸引排出しただけではスカムを移送することができない。そこで、本出願人は、スカムピット内のスカムを効率よく除去できるスカム除去装置を提案している(特許文献1)。この提案に係るスカム除去装置は、スカムピット内に圧力水を噴射する噴射ノズルを設けてスカムピット内の水に旋回流を発生させ、その発生させた旋回流で浮上しているスカムを破砕してスカムピット内の水に均一に分散させるようにしている、そして、スカムの分散されている水をポンプで吸引してスカムピットからスカムを除去するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−218306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記提案に係るスカム除去装置は、噴射ノズルによりスカムをスカムピット内の水に均一に分散させることができるので、スカムをポンプで効率よく吸引除去できる特長を有している。しかしながら、使用する圧力水を沈殿池の処理水としたときは、下水処理施設全体の水ロスを高めるので、より少ない圧力水の使用量でスカムを排出させることができるスカム除去装置の出現が待たれていた。また、スカムピット内に圧力水を噴射する噴射ノズルを設けてスカムピット内の水に旋回流を発生させるには、噴射ノズルの配置及びスカムピットの底面形状に左右されるので、スカムピットの底面形状等に左右されることなく、既設のスカムピットにも容易に適用することのできるスカム除去装置及びスカム除去方法の出現が待たれていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望に応えるものであって、その目的は、少ない圧力水の使用量でスカムを水槽内から排出させることができ、しかも既設の水槽にも容易に実施することのできるスカム除去装置及びスカム除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスカム除去装置は、上記目的を達成するために、水槽の上面に生成されたスカムをポンプを用いてその水槽から水に同伴させて除去するスカム除去装置であって、両端部が共に開口した直線状のパイプ材からなり、そのパイプ材の上端開口部が前記水槽の水面より所定距離下方に位置するとともに、そのパイプ材の下端開口部がその水槽の底面から所定距離上方に位置し、かつ、そのパイプ材の軸心方向が鉛直方向に向くように前記水槽内に設けられたスカム吸引パイプと、開口した下端部が前記スカム吸引パイプ内の上端側に位置し、その開口から圧力水を前記スカム吸引パイプの下端側に向けて噴出し、そのスカム吸引パイプ内に旋回を伴う下降流を発生させるとともに、その旋回を伴う下降流によって前記水槽の水面に生成された渦巻き状の水流により、その水面に生成されているスカムを破壊する圧力水管と、を備え、前記ポンプでスカムを除去するときに、前記圧力水管に圧力水を供給して前記水槽の上面に生成されたスカムを前記スカム吸引パイプ内を通過させて前記ポンプ側へ導くことを特徴としている。
【0008】
上記構成からなるスカム除去装置は、水槽内に設けられたスカム吸引パイプ内に圧力水管から圧力水が供給されると、水槽内の上面の水がスカム吸引パイプに吸引される。この吸引により、水槽の水面に浮遊するスカムは破壊されてスカム吸引パイプ内に吸引され、ポンプの吸入側に導かれる。そして、その吸引されたスカムは、ポンプにより水槽から除去される。
【0009】
本発明に係るスカム除去装置は、水槽は下水処理施設に設けられ、その下水処理施設で発生するスカムや汚泥を処理するために用いられる槽であることを特徴としている。
【0010】
上記構成からなるスカム除去装置は、スカム吸引パイプ内に圧力水管から圧力水が供給されると、槽内の上面の水がスカム吸引パイプに吸引される。この吸引により、槽の水面に浮遊するスカムは破壊されながらスカム吸引パイプに吸引される。そして、その吸引されたスカムは、ポンプにより汚泥処理工場に送出される。
【0011】
本発明に係るスカム除去装置は、水槽には圧力水管を備えたスカム吸引パイプが互いに所定の間隔を保ち、その水槽の容積に応じて複数個設けられることを特徴としている。
【0012】
上記構成からなるスカム除去装置では、圧力水管を備えた複数個のスカム吸引パイプにより、水面に浮遊するスカムが破壊されながらスカム吸引パイプに吸引される。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、水槽の上面に生成されたスカムを除去するスカム除去方法であって、両端部が共に開口した直線状のパイプ材からなるスカム吸引パイプと、前記スカム吸引パイプの上端開口部から下端側に向けて圧力水を噴出する圧力水管とを備えてなるスカム除去装置を前記水槽内に配設するステップと、前記圧力水管に圧力水を供給して前記水槽の上面に生成されたスカムを前記スカム吸引パイプ内を通過させ、前記水槽に配置したポンプ側へ導くステップと、を備え、前記スカム吸引パイプは、パイプ材の上端開口部が前記水槽の水面より所定距離下方に位置するとともに、そのパイプ材の下端開口部がその水槽の底面から所定距離上方に位置し、かつ、そのパイプ材の軸心方向が鉛直方向に向くように前記水槽内に設けられ、前記圧力水管は、開口した下端部が前記スカム吸引パイプ内の上端側に位置し、その開口から前記圧力水を前記スカム吸引パイプの下端側に向けて噴出し、そのスカム吸引パイプ内に旋回を伴う下降流を発生させるとともに、その旋回を伴う下降流によって前記水槽の水面に生成された渦巻き状の水流により、その水面に生成されているスカムを破壊することを特徴とする。
【0014】
上記構成からなるスカム除去方法は、水槽内に設けられたスカム吸引パイプ内に圧力水管から圧力水が供給されると、水槽内の上面の水がスカム吸引パイプに吸引される。この吸引により、水槽の水面に浮遊するスカムは破壊され、そして、その吸引されたスカムは、ポンプの吸入側に導かれ、そのポンプにより水槽から除去される。
【0015】
本発明からなるスカム除去方法は、水槽は下水処理施設に設けられ、その下水処理施設で発生するスカムや汚泥を処理するために用いられる槽であることを特徴としている。
【0016】
上記構成からなるスカム除去方法は、スカム吸引パイプ内に圧力水管から圧力水が供給されると、槽内の上面の水がスカム吸引パイプに吸引される。この吸引により、槽の水面に浮遊するスカムは破壊されながらスカム吸引パイプに吸引される。そして、その吸引されたスカムは、ポンプにより汚泥処理工場に送出される。
【0017】
本発明からなるスカム除去方法は、水槽には圧力水管を備えたスカム吸引パイプが互いに所定の間隔を保ち、その水槽の容積に応じて複数個設けられることを特徴としている。
【0018】
上記構成からなるスカム除去方法は、圧力水管を備えた複数個のスカム吸引パイプで、水面に浮遊するスカムは破壊されながらスカム吸引パイプに吸引される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水槽内にスカム吸引パイプを設けるとともに、そのスカム吸引パイプ内に圧力水管から圧力水を供給するようにしているので、簡単な構成により、水槽内の上面に浮遊するスカムをスカム吸引パイプ内に吸引させることができる。この吸引時には、浮遊するスカムが破壊されてスカム吸引パイプ内に吸引されてポンプの吸入位置に導かれるから、水槽からポンプによりスカムを簡単に除去でき、また、簡単にスカム処理施設に移送させることができる。しかも、圧力水管に供給する圧力水は、スカム吸引パイプにエゼクタ効果を生じさせる使用量で済むので、少ない使用量で足りるという特長を有する。また、本発明に係るスカム除去装置は、構造が簡単であるから、既設の水槽にも容易に適用することのできる特長を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置の縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置の平面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置のスカム除去動作を説明する説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置を下水処理施設の沈澱池に原水を供給する導水渠に適用したときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るスカム除去装置の縦断面図、図2は、当該スカム除去装置の平面図である。
【0022】
水槽Tは、上部が開口し、内部に所定の容量を有している。そして、この水槽Tは、後述するポンプPで水槽T内の水が排出されても、常時、所定の水位を維持できるように構成されている。図1の矢印は、ポンプPで水槽T内の水が排出されても、水槽T内の水位を、常時、所定の水位に維持できるように水槽T内に水が供給されることを表している(図3の矢印も同じ)。なお、このような水槽Tとしては、後述する図4に示されるような下水処理施設の沈殿池に原水(下水)を供給する導水渠に付設されるスカムピットの他、例えば、混合槽等の各槽が存在している。
【0023】
スカムSは、水槽T内に供給されている水に含まれている固形物のうち、水よりも比重の小さい固形物が浮上して水面上に固形状に生成されたものであり、後述するポンプPで水槽T内の水を単に排出するだけでは、水面上に浮上したままのスカムSはポンプPによって排出されない性質を有している。
【0024】
ポンプPは、水槽T内の水を吸引して水槽Tから離れた所定の場所に移送できるように構成されていて、周知のポンプが使用される。例えば、下水処理施設で使用されている横軸ポンプが使用される。もちろん水中ポンプ等の他の種類のポンプも使用できるが、いずれにしても、保守管理の容易なポンプが使用される。
【0025】
スカム吸引パイプ1は、両端が共に開口した所定の内径及び所定の長さを有する直線状のパイプ材で構成されている。そして、そのスカム吸引パイプ1は、図1に示されるように、その軸心方向が鉛直状を呈するように、かつ、図2に示されるように、水槽Tの底面の中心位置に位置するように、図示しない支持機構により水槽T内に設けられている。なお、支持機構は、水槽Tの開口上端に架け渡した桟材に垂下する形で簡単に付設することができる。
【0026】
スカム吸引パイプ1の材質は、合成樹脂製又は金属製のいずれでも採用することができる。そして、そのパイプ材の内径、すなわちスカム吸引パイプ1の内径は、後述する圧力水管2でスカム吸引パイプ1に圧力水が供給されたときに、エゼクタ効果により水槽T内の水を吸引してスカム吸引パイプ1内の水に旋回を伴う下降流を生じさせるように決める。ここでは、例えば、300φ前後のパイプ材を使用する。また、このスカム吸引パイプ1の長さは、パイプの上端部が水面より少し下側であって、その水面に生成されるスカムSの下面位置より少し下側に位置し、パイプの下端部が水槽Tの低壁面より少し上側となるようにする。なお、スカム吸引パイプ1の長さ、すなわち、その上端部と水面との距離、及び下端部と水槽Tの低壁面との距離は、設置現場の状況等に応じて、適宜、調整可能である。また、スカム吸引パイプ1は、通常、円形のパイプとすることができるが、角形のパイプとすることもできる。
【0027】
圧力水管2は、スカム吸引パイプ1の径に比べて十分に小さい径の直線状のパイプ材からなり、合成樹脂製又は金属製のいずれでも採用することができる。例えば、スカム吸引パイプ1が300φ前後の場合は、圧力水管2は、25φ前後とすることができる。
【0028】
圧力水管2は、開口している下端部がスカム吸引パイプ1内で、かつ、そのスカム吸引パイプ1の上端部から所定距離下側(例えば、スカム吸引パイプ1の全長の1/3程度)に位置するようにして設けられ(図1参照)、さらに、圧力水管2の軸心とスカム吸引パイプ1の軸心とが一致するようにして設けられている(図2参照)。この圧力水管2の支持は、図示しない支持機構を用いて行われる。なお、スカム吸引パイプ1が上述した水槽Tの開口上端に架け渡した桟材を用いて支持されているときは、圧力水管2もその桟材を用いて支持することができる。
【0029】
圧力水管2の上端部は、図示しないポンプに接続されていて、スカム吸引パイプ1内に下向きの圧力水を噴出できるように構成されている。圧力水管2からスカム吸引パイプ1内に噴出される圧力水の圧力及び水量は、スカム吸引パイプ1内に下向きの圧力水が供給されたときに、エゼクタ効果によりスカム吸引パイプ1の上端部から水槽T内の上面側の水が吸引され、スカム吸引パイプ1内に旋回を伴う下降流を生じさせるように決める。
【0030】
以下、図3を用いて一実施の形態に係るスカム除去装置のスカム除去作用を説明する。今、水槽Tの水面上に生成されたスカムS(図1参照)が所定の量に達して、スカムSを水槽Tから除去してスカム処理施設に移送する時期が到来したとする。
【0031】
スカムの移送時期が到来すると、スカム吸引パイプ1内には、圧力水管2から圧力水が供給されるとともに、ポンプPが駆動される。スカム吸引パイプ1内に圧力水が供給されるとエゼクタ効果によりスカム吸引パイプ1の上端部から水槽T内の上面側の水が吸引される。スカム吸引パイプ1の上端部から水槽T内の上面側の水が吸引されると、水槽Tの水面が時計方向又は反時計方向の渦巻き状に生成され、水槽T内の上面側の水がスカム吸引パイプ1内に円滑に吸引される。そして、吸引されたスカム吸引パイプ1の水は、例えば、図3において螺旋状の矢印で示すように、旋回を伴う下降流となってスカム吸引パイプ1内を通り、その下端部から排出される。その結果、水面に生成された渦巻き状の水流により、水槽Tの水面上に生成されたスカムSは、破壊されるとともにスカム吸引パイプ1内を通過してポンプPの吸入側に導かれる。
【0032】
ポンプPに吸入されたスカムSは、ポンプPにより水に同伴されてスカム処理施設に移送される。水槽TからスカムSが除去された時点でポンプPの駆動が停止されるとともに、圧力水管2への圧力水の供給が停止される。なお、ポンプPが水槽T内の容量とほぼ等しい水量の移送で水槽TからスカムSを除去できるので、その移送タイミングでポンプPの駆動と圧力水管2への圧力水の供給とを自動的に制御するようにしてもよい。
【0033】
ポンプPの駆動停止及び圧力水管2への圧力水の供給停止が行われると、水槽Tの水面上には、再びスカムSが徐々に生成される。生成されたスカムSが所定の量に達したときには、上述したと同様に、ポンプPの駆動及び圧力水管2への圧力水の供給が開始されてスカムSの除去・移送が行われる。
【0034】
上記構成に係るスカム除去装置は、水槽T内にスカム吸引パイプ1を設けるとともに、そのスカム吸引パイプ1内に圧力水管2から圧力水を供給するようにしているので、簡単な構成により、水槽T内の上面側の水に渦巻き状の水流を発生させつつ、スカム吸引パイプ1内での旋回を伴う下降流によって水を吸引することができる。そして、その吸引により水槽Tの水面上に生成されたスカムSを破壊しながらスカム吸引パイプ1内に吸引してポンプPの吸入側に導くことができるので、水槽TからポンプPによりスカムSを簡単に除去してスカム処理施設に簡単に移送させることができる。しかも、圧力水管2に供給する圧力水は、スカム吸引パイプ1にエゼクタ効果を生じさせる使用量で済むので、少ない水の使用量で足りるという特長を有する。また、構造が簡単であるから既設の水槽Tにも容易に適用することができる特長を有している。
【0036】
図4は、上述した水槽Tを導水渠10に付設されるスカムピット11に適用した例が示されている。すなわち、このスカムピット11は、下水処理施設に設けられている沈殿池20、20…に原水(下水)を供給する導水渠10の下流側(図4では上側)に堰12を介して設けられていて、原水中に含まれている浮上性の固形物が集積できるように構成されている。
【0037】
このスカムピット11は、所定の表面積を有しているので、例えば3m×6mの表面積を有しているため、圧力水管2を備えたスカム吸引パイプ1が互いに所定の間隔を保って複数本(図示の例では4本)設けられている。複数本の圧力水管2を備えたスカム吸引パイプ1により、スカムピット11内の全ての上面側の水をスカム吸引パイプ1に吸引にさせることができる。このように、設置される圧力水管2を備えたスカム吸引パイプ1の数は、スカムピット11内の全ての上面側の水を吸引できるにように決められる。
【0038】
スカムピット11に生成されたスカムを図示しないスカム及び汚泥処理施設に移送するときは、圧力水管2から圧力水が供給されるとともに、ポンプPが駆動される。スカム吸引パイプ1内に圧力水管2から圧力水が供給されると、上述した図3に示されると同様に、エゼクタ効果によりスカム吸引パイプ1の上端部からスカムピット11内の水が吸引される。スカム吸引パイプ1の上端部からスカムピット11内の水が吸引されると、スカムピット11の水面が時計方向又は反時計方向の渦巻き状に生成されてスカムピット11内の水が効率よく吸引され、その吸引されたスカム吸引パイプ1の水は、旋回を伴う下降流となってスカム吸引パイプ1の下端部から排出される。これにより、スカムピット11の上面側の水は、スカム吸引パイプ1に吸引される。この吸引及び水面に生成された渦巻き状の水流により、スカムピット11の水面上に生成されたスカムは、破壊されつつスカム吸引パイプ1に吸引され、ポンプPの吸入側に導かれる。
【0039】
ポンプPの吸入側に導かれたスカムは、ポンプPによりスカムピット11から除去されて水に同伴されてスカム及び汚泥処理施設に移送される。スカムピット11からスカムが除去されたときに、ポンプPの駆動が停止されるとともに、圧力水管2への圧力水の供給が停止される。なお、ポンプPを介して汚泥処理工場に送出されたスカムを含む水は、その工場内で固液分離後、固形分は焼却や埋立処分等が行なわれ、液分は下水処理施設の原水側に返送されるように構成されている。
【0040】
上述のように、本発明に係るスカム除去装置が下水処理施設の導水渠10に付設されたスカムピット11に適用されたときは、スカムピット11に圧力水管2を備えたスカム吸引パイプ1を設けるだけでよいので、スカムピット11からスカムSを簡単に除去できるとともに、スカムを簡単に汚泥処理工場に移送することができる。しかも、圧力水管2に供給される圧力水の使用量も少なくて済むので、圧力水として沈殿池20の処理水を使用しても、下水処理施設の水ロスを小さくすることができる特長を有している。また、構造が簡単であるから既設のスカムピット11にも容易に適用できるという特長を有している。
【0041】
以上、本発明に係るスカム除去装置について図面を参照して詳説したが、具体的な構成は、上記実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計変更等が可能である。
また、上述の例では、水槽Tを下水処理施設の導水渠10に付設されるスカムピット11としたが、下水処理施設に設けられるスカムや汚泥等を受け入れる、例えば、混合槽等の各槽であってもよい。
さらにまた、水槽Tが有価物のスカムを処理する水槽の場合にも適用することができる。したがって、スカムは、下水処理施設で発生する物だけでなく、スカム自身が有価物で、そのスカムを含む液体が水でなく他の液体であってもよい。したがって、本発明で水というときは、水以外の液体をも含んでいる。
【符号の説明】
【0042】
T……水槽
S……スカム
P……ポンプ
1……スカム吸引パイプ
2……圧力水管
10……導水渠
11……スカムピット
12……堰
20……沈殿池
図1
図2
図3
図4