(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャンバ内の圧力を段階的に変更するためには、減圧速度を調節する必要がある。特許文献1に記載の減圧乾燥装置では、減圧処理中、チャンバ内の気体を排気しつつ、不活性ガスをチャンバ内に供給することにより、減圧速度を調節している。また、減圧速度を適切に調節するため、不活性ガスの供給源とチャンバとの間に複数段階に開度を変更できるバルブが設けられている。
【0006】
また、チャンバ内の減圧速度を調節するその他の方法として、チャンバと排気装置との間に、複数段階に開度を変更できるバルブを設けてもよい。この場合、チャンバからの排気量を段階的に調整できる。
【0007】
不活性ガスの供給量およびチャンバからの排気量のいずれを調整する場合であっても、所望の減圧速度で減圧処理を行うためには、上記バルブを、その減圧速度に応じた開度に設定する必要がある。しかしながら、同機種の減圧乾燥装置に対して同一のバルブ開度を設定した場合であっても、装置の個体差や設置環境の違い等により、減圧速度にばらつきが生じる。そのため、所望の減圧速度と現実の減圧速度との間に乖離が生じる場合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、複数段階に開度を変更できるバルブを有する減圧乾燥装置において、より所望の減圧速度に近い減圧速度で減圧処理を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、処理液が付着した基板を減圧乾燥する減圧乾燥装置であって、前記基板を収容するチャンバと、前記チャンバ内を減圧排気する減圧排気手段と、前記チャンバと前記減圧排気手段との間に介在し、その開度により減圧排気の流量を調節するバルブと、前記バルブの所定の開度毎に、減圧排気による前記チャンバ内の圧力変化を示す減圧曲線データを取得する学習手段と、目標圧力値および目標到達時間が入力される入力手段と、前記バルブの開度を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記減圧曲線データと、入力された前記目標圧力値および前記目標到達時間とに基づいて前記バルブの開度を調節
し、前記減圧曲線データは、時間の経過に従って前記チャンバ内の圧力が下降する圧力下降部と、前記チャンバ内の圧力が所定の圧力値で安定する圧力安定部とを含み、前記制御部は、前記目標圧力値が前記チャンバ内の元の圧力値よりも低い期間では前記圧力下降部を参照して前記バルブの開度を設定し、前記目標圧力値が前記チャンバ内の元の圧力値と略同一である期間では前記圧力安定部を参照して前記バルブの開度を設定する。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の減圧乾燥装置であって、前記入力手段には、連続する複数の前記目標圧力値および前記目標到達時間が入力される。
【0011】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の減圧乾燥装置であって、複数の前記バルブを有し、前記制御部は、複数の前記バルブの全てを同一の開度で動作させる。
【0012】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの減圧乾燥装置であって、前記バルブは、弁の角度を変えることによって開度を調節する。
【0014】
本願の第
5発明は、第1発明ないし第
4発明のいずれかの減圧乾燥装置であって、複数の前記チャンバを有し、前記学習手段は、前記チャンバのそれぞれに対して、固有の前記減圧曲線データを取得する。
【0015】
本願の第
6発明は、前記基板に対してレジスト液の塗布と現像を行う基板処理装置であって、露光処理前の前記基板に前記レジスト液を塗布する塗布部と、前記レジスト液が付着した前記基板を減圧乾燥する、
第1発明ないし
第5発明のいずれか
の減圧乾燥装置と、前記露光処理が施された前記基板に対して現像処理を行う現像部とを有する。
【0016】
本願の第
7発明は、処理液が付着した基板をチャンバ内に収容して前記チャンバ内を減圧することにより、前記基板を乾燥させる減圧乾燥方法であって、a)前記チャンバからの減圧排気の流量を調節するバルブの所定の開度毎に、減圧排気による前記チャンバ内の圧力変化を示す減圧曲線データを取得する学習工程と、b)目標圧力値および目標到達時間を入力する入力工程と、c)前記工程a)および前記工程b)の後で、前記減圧曲線データと、入力された前記目標圧力値および目標到達時間とに基づいて、前記バルブの開度を調節する減圧乾燥工程とを有
し、前記減圧曲線データは、時間の経過に従って前記チャンバ内の圧力が下降する圧力下降部と、前記チャンバ内の圧力が所定の圧力値で安定する圧力安定部とを含み、前記工程c)において、前記目標圧力値が前記チャンバ内の元の圧力値よりも低い期間では前記圧力下降部を参照して前記バルブの開度を設定し、前記目標圧力値が前記チャンバ内の元の圧力値と略同一である期間では前記圧力安定部を参照して前記バルブの開度を設定する。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明から第
7発明によれば、使用するチャンバの設置環境における減圧曲線データを取得し、当該減圧曲線データに基づいて、バルブの開度を調節する。このため、装置の個体差や設置環境に拘わらず、より所望の減圧速度に近い減圧速度で減圧処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<1.第1実施形態>
<1−1.基板処理装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る減圧乾燥装置1を備えた基板処理装置9の構成を示した概略図である。本実施形態の基板処理装置9は、液晶表示装置用ガラス基板G(以下、基板Gと称する)に対して、レジスト液の塗布、露光、および露光後の現像を行う装置である。
【0021】
基板処理装置9は、複数の処理部として、搬入部90、洗浄部91、デハイドベーク部92、塗布部93、減圧乾燥部としての減圧乾燥装置1、プリベーク部94、露光部95、現像部96、リンス部97、ポストベーク部98、および搬出部99を有する。基板処理装置9の各処理部は、上記の順に互いに隣接して配置される。基板Gは、搬送機構(図示せず)により、破線矢印で示すように、処理の進行に従って各処理部へ上記の順に搬送される。
【0022】
搬入部90は、基板処理装置9において処理される基板Gを、基板処理装置9内に搬入する。洗浄部91は、搬入部90へ搬入された基板Gを洗浄し、微細なパーティクルをはじめ、有機汚染や金属汚染、油脂、自然酸化膜等を除去する。デハイドベーク部92は、基板Gを加熱し、洗浄部91において基板Gに付着した洗浄液を気化させることによって、基板Gを乾燥させる。
【0023】
塗布部93は、デハイドベーク部92で乾燥処理を行った後の基板Gに対して、その表面に処理液を塗布する。本実施形態の塗布部93では、基板Gの表面にレジスト液を塗布する。そして、減圧乾燥装置1は、基板Gの表面に塗布された当該レジスト液の溶媒を減圧により蒸発させて、基板Gを乾燥させる。プリベーク部94は、減圧乾燥装置1において減圧乾燥処理が施された基板Gを加熱し、基板G表面のレジスト成分を固化させる加熱処理部である。これにより、基板Gの表面に処理液の薄膜、すなわちレジスト膜が形成される。
【0024】
次に、露光部95は、レジスト膜が形成された基板Gの表面に対して、露光処理を行う。露光部95は、回路パターンが描画されたマスクを通して遠紫外線を照射し、レジスト膜にパターンを転写する。現像部96は、露光部95においてパターンが露光された基板Gを現像液に浸して、現像処理を行う。
【0025】
リンス部97は、現像部96において現像処理した基板Gをリンス液ですすぐ。これにより、現像処理の進行を停止させる。ポストベーク部98は、基板Gを加熱し、リンス部97において基板Gに付着したリンス液を気化させることによって、基板Gを乾燥させる。基板処理装置9の各処理部において処理が施された基板Gは、搬出部99へ搬送される。そして、搬出部99から基板Gが基板処理装置9の外部へ搬出される。
【0026】
なお、本実施形態の基板処理装置9は露光部95を有しているが、本発明の基板処理装置においては、露光部が省略されていてもよい。その場合、基板処理装置を、別体の露光装置と組み合わせて使用すればよい。
【0027】
<1−2.減圧乾燥装置の構成>
図2は、本実施形態に係る減圧乾燥装置1の構成を示した概略図である。減圧乾燥装置1は、上述の通り、レジスト液等の処理液が塗布された基板Gを減圧乾燥する装置である。
図2に示すように、減圧乾燥装置1は、チャンバ20、排気ポンプ30、配管部40、不活性ガス供給部50、制御部60および入力部70を有する。
【0028】
チャンバ20は、ベース部21および蓋部22を有する。ベース部21は、略水平に拡がる板状の部材である。蓋部22は、ベース部21の上方を覆う有蓋筒状の部材である。ベース部21および蓋部22により構成される筐体の内部には、基板Gが収容される。また、蓋部22の下端部には、シール材221が備えられている。これにより、ベース部21と蓋部22との接触箇所における、チャンバ20の内部と外部との連通が遮断される。
【0029】
ベース部21には、排気口23が設けられている。これにより、チャンバ20内の気体を、排気口23を介してチャンバ20外へ排出できる。本実施形態のチャンバ20には、4つの排気口23が設けられている。
図2には、4つの排気口23のうち2つの23のみが図示されている。なお、チャンバ20に設けられる排気口23の数は1つ〜3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0030】
チャンバ20の内部には、支持機構24が設けられている。支持機構24は、支持板241、複数の支持ピン242および支持柱243を有する。支持板241は、略水平に拡がる板状の部材である。支持板241は、複数の支持ピン242を保持する。複数の支持ピン242は、その上端に基板Gが載置され、基板Gを裏面から支持する。支持ピン242はそれぞれ、支持板241から上方へ延びる。複数の支持ピン242は、水平方向に分散して配置される。これにより、基板Gが安定的に支持される。支持柱243は、支持板241を支える部材である。支持柱243の下端部は、ベース部21に固定されている。なお、支持柱243の下端部は、昇降装置等の他の部材に固定されてもよい。
【0031】
また、チャンバ20には、チャンバ20内の圧力を測定する圧力センサ25が設けられている。本実施形態の圧力センサ25は、ベース部21に設けられているが、配管部40の個別配管41または第1共有配管42に、圧力センサが設けられてもよい。
【0032】
排気ポンプ30は、チャンバ20内の気体を排出するポンプである。排気ポンプ30は、配管部40を介してチャンバ20の排気口23と接続されている。これにより、排気ポンプ30が駆動すると、排気口23および配管部40を介してチャンバ20内の気体が減圧乾燥装置1の外部へと排出される。この排気ポンプ30は、一定の出力で駆動することによって、チャンバ20内を減圧排気する。チャンバ20からの排気速度の調節は、後述するバルブ45によって行われる。
【0033】
配管部40は、4つの個別配管41、第1共有配管42、第2共有配管43および2つの分岐配管44を有する。個別配管41はそれぞれ、上流側の端部が排気口23に接続され、下流側の端部が第1共有配管42に接続される。なお本実施形態では、2つの個別配管41の下流側の端部が第1共有配管42の一端に接続され、他の2つの個別配管41の下流側の端部が第1共有配管42の他端に接続される。
【0034】
第2共有配管43は、下流側の端部が排気ポンプ30に接続される。2つの分岐配管44はそれぞれ、上流側の端部が第1共有配管42の管路途中に接続され、下流側の端部が第2共有配管43の上流側の端部に接続される。これにより、チャンバ20の内部と排気ポンプ30とは、4つの排気口23、4つの個別配管41、第1共有配管42、2つの分岐配管44および第2共有配管43を介して連通する。
【0035】
分岐配管44にはそれぞれ、バルブ45が介挿されている。バルブ45は、チャンバ20と排気ポンプ30との間に介在し、減圧排気の流量を調節する。本実施形態のバルブ45は、弁の角度を変えることによってその開度を調節するバタフライバルブである。なお、本実施形態ではバルブ45にバタフライバルブが用いられているが、その開度により減圧排気の流量を調節することができるバルブであればグローブバルブ(玉型弁)や、その他のバルブが用いられてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、2つのバルブ45は、同じ開度で動作する。すなわち、制御部60がバルブ45の開度を20%と設定すると、2つのバルブ45の開度がともに20%に調節される。
【0037】
不活性ガス供給部50は、チャンバ20内に不活性ガスを供給する。不活性ガス供給部50は、不活性ガス供給配管51、不活性ガス供給源52および開閉弁53を有する。不活性ガス供給配管51は、一端がチャンバ20の内部空間に接続し、他端が不活性ガス供給源52に接続する。本実施形態の不活性ガス供給源52は、不活性ガスとして、乾燥した窒素ガスを供給する。開閉弁53は、不活性ガス供給配管51に介挿されている。このため、開閉弁53が開放されると、不活性ガス供給源52からチャンバ20内へ不活性ガスが供給される。また、開閉弁53が閉鎖されると、不活性ガス供給源52からチャンバ20への不活性ガスの供給が停止する。
【0038】
なお、不活性ガス供給部50は、窒素ガスに代えて、アルゴンガス等の他の乾燥した不活性ガスを供給するものであってもよい。また、減圧乾燥装置1は、不活性ガス供給部50に代えて、大気を供給する大気供給部を有していてもよい。
【0039】
制御部60は、減圧乾燥装置1の各部を制御する。
図2中に概念的に示したように、制御部60は、CPU等の演算処理部61、RAM等のメモリ62およびハードディスクドライブ等の記憶部63を有するコンピュータにより構成されている。また、制御部60は、圧力センサ25、排気ポンプ30、2つのバルブ45、開閉弁53および入力部70と、それぞれ電気的に接続されている。
【0040】
制御部60は、記憶部63に記憶されたコンピュータプログラムやデータを、メモリ62に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムおよびデータに基づいて、演算処理部61が演算処理を行うことにより、減圧乾燥装置1内の各部の動作を制御する。これにより、減圧乾燥装置1における減圧乾燥処理が実行される。なお、制御部60は、減圧乾燥装置1のみを制御するものであってもよいし、基板処理装置9の全体を制御するものであってもよい。
【0041】
入力部70は、ユーザが目標圧力値および目標到達時間を入力するための入力手段である。本実施形態の入力部70は、基板処理装置9に設けられた入力パネルであるが、入力部70は、その他の形態の入力手段(例えば、キーボードやマウスなど)であってもよい。目標圧力値および目標到達時間が入力部70へ入力されると、当該データは制御部60へと取り込まれる。
【0042】
<1−3.減圧乾燥処理の流れ>
続いて、この減圧乾燥装置1における減圧乾燥処理について、
図3〜
図5を参照しつつ説明する。
図3は、減圧乾燥装置1における減圧乾燥処理の流れを示したフローチャートである。
図4は、減圧曲線データDの一例を示した図である。
図5は、目標減圧波形Rの一例を示した図である。
【0043】
図3に示すように、減圧乾燥装置1は、はじめに学習工程を行う(ステップST101)。学習工程において、減圧乾燥装置1は、予め決められたバルブ45の開度毎に、減圧排気によるチャンバ20内の圧力変化を示す減圧曲線データD(
図4参照)を取得する。
【0044】
ステップST101の学習工程では、大気開放によりチャンバ20内の圧力を大気圧である100,000[Pa]にした後、排気ポンプ30を駆動させるとともに、所定の開度にバルブ45を開放する。そして、バルブ45の開放後所定の時間が経過するまで、圧力センサ25によりチャンバ20内の圧力変化を計測する。これにより、制御部60は、減圧曲線データDを取得する。このような圧力計測を予め決められた開度毎に行うことにより、複数の開度についてそれぞれ減圧曲線データDが取得される。減圧曲線データDは、例えば、バルブ45の開度毎に、経過時間と圧力値との対応関係を示したテーブルデータとして、記憶部63内に保持される。
【0045】
本実施形態では、
図4に示すように、バルブ45の開度が5%、7%、8%、10%、12%、15%、20%、50%および100%の場合について、それぞれ減圧曲線データDを取得する。このように、本実施形態では、圧力センサ25および制御部60が、バルブ45の所定の開度毎に減圧曲線データDを取得する学習手段80を構成する。
【0046】
本実施形態では、ステップST101の学習工程を行った後、基板Gの減圧乾燥処理が進められる。まず、目標圧力値および目標到達時間が入力手段70へ入力される(ステップST102)。本実施形態では、連続する複数の目標圧力値および目標到達時間が、入力手段70へ入力される。当該複数の目標圧力値および目標到達時間により構成される目標減圧波形Rの一例が、
図5に示されている。
【0047】
図5の例の目標減圧波形Rでは、第1期間T1では、目標圧力値が10,000[Pa]、目標到達時間が20[sec]である。第2期間T2では、目標圧力値が400[Pa]、目標到達時間が10[sec]である。第3期間T3では、目標圧力値が400[Pa]、目標到達時間が10[sec]である。すなわち、第3期間T3では、圧力値を400[Pa]に維持することを目標とする。また、第4期間T4では、目標圧力値が20[Pa]、目標到達時間が5[sec]である。そして、第4期間T4で目標圧力値に到達した後、不活性ガスパージによりチャンバ20内の圧力を大気圧まで戻す。
図5の例の目標減圧波形Rのように、段階的に減圧を行うことにより、基板Gの表面に塗布された処理液が突沸するのが抑制される。
【0048】
次に、チャンバ20内に基板Gが搬入される(ステップST103)。このとき、バルブ45および開閉弁53が閉鎖された状態で、チャンバ20の蓋部22をチャンバ開閉機構(図示せず)により上昇させる。これにより、チャンバ20が開放される。そして、処理液が塗布された基板Gがチャンバ20内へ搬入され、支持ピン242上に載置される。その後、チャンバ開閉機構により蓋部22を下降させる。これにより、チャンバ20が閉鎖されて、チャンバ20内に基板Gが収容される。
【0049】
本実施形態では、ステップST102の入力工程の後でステップST103の基板の搬入工程が行われるが、ステップST102とステップST103の順番は逆であってもよい。
【0050】
続いて、ステップST102において入力された目標圧力値および目標到達時間に基づいて、チャンバ20内を減圧させることにより、処理液が付着した基板Gを乾燥させる(ステップST104)。ステップST104では、制御部60は、目標圧力値および目標到達時間により構成される目標減圧波形Rに沿った波形を有する減圧曲線データDを選択し、当該減圧曲線データDにおけるバルブ45の開度に基づいて、各期間におけるバルブ45の開度を選択する。
【0051】
図4に示すように、減圧曲線データDは、それぞれ、圧力下降部D1と圧力安定部D2とを含む。圧力下降部D1では、時間の経過に従ってチャンバ20内の圧力が下降する。一方、圧力安定部D2では、チャンバ20内の圧力と減圧排気の排気圧とが平衡状態となるか、あるいは、チャンバ20内から排気ポンプ30への排気量と、チャンバ20外部からチャンバ20内への気体の流入量とが平衡状態となることによって、チャンバ20内の圧力が所定の圧力値で安定する。
【0052】
ステップST104において、圧力が下降する第1期間T1、第2期間T2および第4期間T4では、減圧曲線データDの圧力下降部D1からバルブ45の開度を決定する。また、圧力が維持される第3期間T3では、減圧曲線データDの圧力安定部D2からバルブ45の開度を決定する。
【0053】
例えば、第1期間T1では、20[sec]の間に大気圧100,000[Pa]から10,000[Pa]へ減圧する必要がある。制御部60は、減圧曲線データDの圧力下降部D1を参照し、開度が8%の場合、100,000[Pa]から10,000[Pa]へ減圧される期間が約20[sec]であることに基づいて、第1期間T1におけるバルブ45の開度を8%に設定する。
【0054】
次に、第2期間T2では、10[sec]の間に第1期間T1における目標圧力値10,000[Pa]から400[Pa]へ減圧する必要がある。一方、減圧曲線データDの圧力下降部D1を参照すると、開度が12%の場合、10,000[Pa]から400[Pa]へ減圧される期間が約9[sec]である。また、開度が10%の場合、10,000[Pa]から400[Pa]へ減圧される期間が約12[sec]である。
【0055】
これに基づいて、本実施形態では、制御部60は第2期間T2におけるバルブ45の開度を10%に設定する。すなわち、減圧曲線データDを取得した複数の開度の中に、所望の目標減圧波形Rに合致する開度がない場合、本実施形態の制御部60は、近似する2つの開度のうち、開度の小さいものを選択する。このように、目標減圧波形Rよりも減圧速度が遅い開度を選択すれば、チャンバ20内の圧力が目標減圧波形Rよりも低下することを防止できる。したがって、基板G上に塗布された処理液の突沸がさらに抑制される。このとき、制御部60は、第2期間T2を、開度10%の減圧曲線データDに基づいて、12[sec]に延長してもよい。
【0056】
なお、制御部60は、当該期間において目標減圧波形Rに近似する2つの開度から、目標減圧波形Rに合致する開度を計算により算出してもよい。その場合、第2期間T2におけるバルブ45の開度を、計算により算出した開度に設定する。
【0057】
続いて、第3期間T3における目標圧力値400[Pa]は、第2期間T2における目標圧力値400[Pa]と同一の圧力値である。すなわち、第3期間T3では、10[sec]の間、チャンバ20内の圧力を400[Pa]に維持する必要がある。制御部60は、減圧曲線データDの圧力安定部D2を参照し、開度が7%の場合、約400[Pa]で圧力が維持されることに基づいて、第3期間T3におけるバルブ45の開度を7%に設定する。
【0058】
そして、第4期間T4では、5[sec]の間に第3期間T3における目標圧力値400[Pa]から20[Pa]へ減圧する必要がある。制御部60は、減圧曲線データDの圧力下降部D1を参照し、開度50%の場合、400[Pa]から20[Pa]へ減圧される期間が約5[sec]であることに基づいて、第4期間T4におけるバルブ45の開度を50%に設定する。
【0059】
第4期間T4の終了後、制御部60はバルブ45を閉鎖し、チャンバ20内からの排気を停止する。そして、開閉弁53を開放し、不活性ガス供給源52からチャンバ20内への不活性ガスのパージを行う。これにより、チャンバ20内の気圧を大気圧まで上昇させる。チャンバ20内の圧力が大気圧となったら、開閉弁53が閉鎖される。これにより、減圧乾燥工程が終了する。
【0060】
その後、チャンバ20から基板Gが搬出される(ステップST105)。ステップST105では、ステップST103と同様、バルブ45および開閉弁53が閉鎖された状態で、チャンバ20の蓋部22をチャンバ開閉機構により上昇させる。これにより、チャンバ20が開放される。そして、減圧乾燥処理が施された基板Gがチャンバ20外へと搬出される。
【0061】
減圧乾燥装置1の設置環境が異なると、バルブ45の開度が同一であっても、チャンバ20内の減圧速度がそれぞれ異なる。そのため、減圧乾燥装置1の設置環境により、所望の減圧速度と現実の減圧速度との間に乖離が生じる虞がある。
【0062】
本実施形態では、ステップST102〜ステップ105で行われる基板Gの減圧乾燥処理の前にステップST101の学習工程が行われる。これにより、減圧乾燥装置1が基板Gの減圧乾燥処理を行う際と同じ設置環境の下で、減圧曲線データDが取得される。当該減圧曲線データDに基づいて減圧乾燥処理を行うことにより、所望の減圧速度と現実の減圧速度との間に乖離が生じるのが抑制できる。すなわち、より所望の減圧速度に近い減圧速度で減圧処理を行うことができる。
【0063】
なお、ステップST101の学習工程は、ステップST102〜ステップ105で行われる基板Gの減圧乾燥処理毎に行われなくてもよい。当該学習工程は、減圧乾燥装置1の設置や移設の際に行われたり、定期的なメンテナンス時に行われるものであってもよい。
【0064】
また、同一設計により製造される複数の減圧乾燥装置1であっても、製造誤差等により、同じバルブ45の開度で減圧乾燥処理を行っても、各減圧乾燥装置1におけるチャンバ20内の減圧速度にはばらつきが存在する。本実施形態のように、各減圧乾燥装置1において減圧乾燥処理前に減圧曲線データDを取得することにより、減圧乾燥装置1の個体差に起因して所望の減圧速度と現実の減圧速度との間に乖離が生じるのが抑制できる。すなわち、より所望の減圧速度に近い減圧速度で減圧処理を行うことができる。
【0065】
このように、本実施形態の減圧乾燥装置1によれば、装置の個体差や設置環境に拘わらず、目標減圧波形Rの各期間において所望の減圧速度に近い減圧速度で減圧処理を行うことができる。これにより、レジスト液の突沸が抑制され、平滑なレジスト膜を得ることができる。
【0066】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形実施されてもよい。
【0067】
上記の実施形態の減圧乾燥装置では、目標減圧波形Rの期間ごとに、各減圧曲線データにおける元の圧力値から目標圧力値までの減圧にかかる時間と、目標到達時間とを比較することにより、バルブの開度を設定していたが、本発明はこれに限られない。本発明の減圧乾燥装置は、各減圧曲線データから減圧速度や減圧加速度等のパラメータを算出し、当該パラメータに基づいてバルブの開度を設定してもよい。また、本発明の減圧乾燥装置は、その他のアルゴリズムを用いて、減圧曲線データに基づいてバルブの開度を設定してもよい。
【0068】
また、上記の実施形態では、減圧乾燥装置が1つのチャンバのみを有していたが、本発明はこれに限られない。減圧乾燥装置は、複数のチャンバと、チャンバのそれぞれに接続する複数の配管部を有していてもよい。その場合、制御部は、複数のチャンバのそれぞれに対して、固有の減圧曲線データを取得することが好ましい。これにより、チャンバごとの固有の圧力変化特性に対応して、目標減圧波形により近い減圧波形を実現できる。
【0069】
また、上記の実施形態では、配管部がバルブを2つ有していたが、配管部に備えられるバルブは1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0070】
また、上記の実施形態では、2つのバルブを同じ開度で動作させていたが、それぞれ異なる開度で動作させてもよい。この場合、それぞれのバルブの開度を組み合わせたテーブルデータを作成すればよい。
【0071】
また、上記の実施形態の減圧乾燥装置は、基板処理装置の一部であったが、本発明の減圧乾燥装置は、他の処理部とともに設置されない独立した装置であってもよい。また、上記の実施形態の減圧乾燥装置は、レジスト液が付着した基板を乾燥させるものであったが、本発明の減圧乾燥装置は、その他の処理液が付着した基板を乾燥させるものであってもよい。
【0072】
また、上記の実施形態の減圧乾燥装置は、液晶表示装置用ガラス基板を処理対象としていたが、本発明の減圧乾燥装置は、PDP用ガラス基板、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルタ用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板などの他の精密電子装置用基板を処理対象とするものであってもよい。
【0073】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。