(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る油圧緩衝装置1の全体構成図である。
図2は、本実施の形態のソレノイドバルブ周辺を詳細に説明するための図である。
【0010】
〔油圧緩衝装置1の構成・機能〕
油圧緩衝装置1は、
図1に示すように、軸方向の一方から他方に向けて延びて液体の一例としてのオイルを収容する第1シリンダ11と、第1シリンダ11の半径方向外側に位置して第1シリンダ11との間に他方側に液面が形成されるように液体が溜まる液溜部の一例としてのリザーバ室Rを形成する第2シリンダ12と、第1シリンダ11内において軸方向に移動可能に設けられ、第1シリンダ11内の空間を、液体を収容する第1液室Y1と第2液室Y2とに区画する区画部材の一例としてのピストン30と、を備える。
【0011】
また、油圧緩衝装置1は、第2シリンダ12の側部に設けられるとともに、液体の流路を絞る絞り部を有して、ピストン30の移動に伴い移動する液体を絞り部を通過させながらリザーバ室R(液溜部)に向けて吐出する絞り機構の一例としてのソレノイドバルブ50と、リザーバ室R(液溜部)内のソレノイドバルブ50からリザーバ室R(液溜部)への液体の吐出箇所よりも他方側の部位において、第1シリンダ11の周方向又は径方向への液体の流れを制限する制限機構の一例としてのセパレータ80と、を備える。
【0012】
また、油圧緩衝装置1は、第1シリンダ11と第2シリンダ12との間に設けられた円筒状の外筒体13を有している。これら、第1シリンダ11、第2シリンダ12及び外筒体13は同心(同軸)に配置されている。なお、第1シリンダ11の円筒の中心軸方向を、単に「軸方向」と称する場合もある。また、第1シリンダ11の軸方向における方向を示す場合には、
図1中下方を「一方」と称し、図中上方を「他方」と称する場合もある。また、「円筒状」など物の形状を示す用語は、正確に「円筒」などその形状である場合に限らず、「略円筒」などおおよそその形状である場合も含む意味である。
【0013】
また、油圧緩衝装置1は、第2シリンダ12の軸方向の一方の端部を塞ぐ底蓋14と、後述するピストンロッド20をガイドするロッドガイド15と、第2シリンダ12内のオイルの漏れや第2シリンダ12内への異物の混入を防ぐオイルシール16とを有している。
【0014】
また、油圧緩衝装置1は、ピストンロッド20の移動範囲を制限するリバウンドストッパ17と、第2シリンダ12における軸方向の他方の端部に装着されたバンプストッパキャップ18とを備えている。
【0015】
また、油圧緩衝装置1は、ピストン30を支持するピストンロッド20と、第1シリンダ11における軸方向の一方側端部に設けられたボトムバルブ40と、
図2に示すように、絞り機構の一例としてのソレノイドバルブ50と、を備えている。
【0016】
この油圧緩衝装置1においては、円筒状の第1シリンダ11の外周面と外筒体13の内周面との間に、第1シリンダ11内とリザーバ室Rとの間におけるオイルの経路(流路)となる連絡路Lを形成する。
【0017】
第1シリンダ11における他方の端部側であってロッドガイド15よりも一方側に、内外を連通するように形成された第1シリンダ貫通孔11hが形成されており、この第1シリンダ貫通孔11hを介して第1シリンダ11内と連絡路Lとの間にオイルが流通する。
【0018】
外筒体13におけるソレノイドバルブ50との対向位置に、
図2に示すように、内外を連通するように形成された外筒体貫通孔13hが形成されており、この外筒体貫通孔13hを介して連絡路L内からソレノイドバルブ50へオイルが流通する。そして、外筒体13は、外筒体貫通孔13hの周囲に、ソレノイドバルブ50側に向けて突出するフランジ付き円筒状のジョイント部材13Gを有している。ジョイント部材13Gの内側には、後述する吸込ポート52が挿入される。
【0019】
第2シリンダ12には、
図2に示すように、ソレノイドバルブ50が取り付けられる位置に、内外を連通するように形成された第2シリンダ貫通孔12hが形成されている。第2シリンダ12の外周であって第2シリンダ貫通孔12hの外側には、後述するソレノイドシリンダ50Sが取り付けられる。
【0020】
底蓋14は、
図1に示すように、第2シリンダ12の一方の端部に取り付けられ、第2シリンダ12の一方の端部を塞ぐ。
【0021】
ロッドガイド15は、概形が円筒状の部材であって、第2シリンダ12の内周にて第2シリンダ12に保持される。そして、ロッドガイド15は、例えば内側の孔に嵌め込まれたブッシュなどを介してピストンロッド20を移動可能に支持する。また、ロッドガイド15は、第1シリンダ11及び外筒体13の軸方向の他方の端部を塞ぐ。
【0022】
ピストンロッド20は、
図1に示すように、軸方向に延びるとともに軸方向の一方の端部でピストン30を保持する。
【0023】
ピストン30は、
図1に示すように、ピストンボディ31と、ピストンボディ31の軸方向の他方の端部側に設けられたバルブ32と、スプリング33と、を備えている。
【0024】
そして、ピストン30は、第1シリンダ11内において軸方向に移動可能に設けられるとともに、第1シリンダ11内の空間を、ピストンロッド20のロッド部21が配置されない空間である第1液室Y1とロッド部21が配置される第2液室Y2とに区画する。
【0025】
ボトムバルブ40は、
図1に示すように、軸方向に形成された複数の油路を有するバルブボディ41と、バルブボディ41に形成された複数の油路の内の一部の油路における軸方向の一方の端部を塞ぐバルブ42と、これらの部材を固定するボルト40Bとを備えている。
【0026】
(ソレノイドバルブ50)
ソレノイドバルブ50は、
図2に示すように、ソレノイドシリンダ50Sと、ソレノイド機構部51と、吸込ポート52と、バルブストッパ53と、弁体54と、スプリング55と、吐出リング56と、を備える。
【0027】
ソレノイドシリンダ50Sは、円筒形状の部材であって、その円筒の中心線方向の第2シリンダ12側の開口が第2シリンダ12の第2シリンダ貫通孔12hに対向するように設けられる。本実施形態では、ソレノイドシリンダ50Sは、第2シリンダ12の側方にて、第1シリンダ11の軸方向と交差する方向を向いて設けられる。なお、以下の説明においては、ソレノイドシリンダ50Sの円筒の中心線方向を、単に「交差方向」と称す。また、交差方向において
図2左側の第2シリンダ12側を「基端側」と称し、右側のソレノイド機構部51側を「先端側」と称する。
【0028】
ソレノイド機構部51は、コイル511と、ハウジング511Hと、プランジャ512と、磁性体513と、固定コア514と、を有している。
【0029】
吸込ポート52は、概形が円筒形状をした部材である。そして、本実施形態では、吸込ポート52は、基端側開口部521と、基端側開口部521と比較して径が大きくなる先端側開口部522とを有している。そして、基端側開口部521が外筒体13のジョイント部材13Gの内側にシール部材を介して嵌め込まれる。また、先端側開口部522において吐出リング56を間に挟んでソレノイド機構部51に対向する。
【0030】
バルブストッパ53は、内側にオイルの環状流路53rが形成された、厚肉円筒状の部材である。そして、吸込ポート52の先端側開口部522の内側に取り付けられる。
【0031】
弁体54は、径が異なる2つの円柱が交差方向に並ぶように構成された部材であって、基端側の円柱である基端側円柱部54pと、先端側の円柱である先端側円柱部54qとを有している。そして、弁体54は、基端側円柱部54pがバルブストッパ53の環状流路53rに嵌り込むように配置される。また、弁体54は、先端側円柱部54qにおける先端側の端部がプランジャ512から力を受けて交差方向に移動する。
【0032】
スプリング55は、コイルばねであり、バルブストッパ53と弁体54の先端側円柱部54qとの間に設けられている。そして、スプリング55は、交差方向のバルブストッパ53と弁体54との間隔が広がる方向(
図2に示した矢印F方向)に弁体54を付勢する。
【0033】
吐出リング56は、円筒状の部材であって、外周面において周方向に円形の開口を複数備えている。吐出リング56は、バルブストッパ53、弁体54及びスプリング55の周囲に位置して、後述の絞り部Vを通過したオイルをシリンダ内室50Rに吐き出す。
【0034】
そして、本実施形態では、バルブストッパ53の環状流路53rと弁体54の基端側円柱部54pとによって、ソレノイドバルブ50におけるオイルの絞り部Vを形成する。すなわち、本実施形態のソレノイドバルブ50では、ソレノイド機構部51のプランジャ512によって、バルブストッパ53に対する弁体54の距離を変化させることによって、オイルの流路を変化させて減衰力を調整する。
【0035】
(第1の実施形態に係るセパレータ80)
図3は、第1の実施形態に係るセパレータ80の斜視図である。
セパレータ80は、略円筒状の部材であり、内径が外筒体13の外径よりも大きく外径が第2シリンダ12の内径よりも小さく、外筒体13と第2シリンダ12との間に配置される。つまり、セパレータ80は、リザーバ室R内に配置される。
【0036】
セパレータ80には、一方側の端部から他方側の方へU字状に切り欠かれた切欠部81が(本実施の形態においては4つ)周方向に形成されている。また、セパレータ80には、切欠部81よりも軸方向の他方側の部位に、内外を連通する連通路82が周方向に(本実施の形態においては12つ)形成されている。連通路82は、
図2に示した例では、中心線方向が軸方向に直交する円柱状の貫通孔である。
なお、連通路82は、中心線方向が軸方向に対して傾斜した貫通孔であってもよいし、(半径方向)外側から(半径方向)内側へ行くに従って孔の径が徐々に小さくなる貫通孔であってもよい。
【0037】
以上のように構成されるセパレータ80は、ソレノイドバルブ50からリザーバ室Rへのオイルの吐出箇所よりも軸方向の他方側において第1シリンダ11と第2シリンダ12との間で軸方向に延びる円筒状の隔壁80aを有する。また、セパレータ80の円筒状の隔壁80aには、当該隔壁80aにより区分けされた空間を連通する連通路82が形成されている。
セパレータ80は、
図2に示すように、切欠部81の底部(切欠部81の軸方向の他方の端部)がジョイント部材13Gに引っ掛かるように保持される。
なお、セパレータ80の半径方向の位置については、特に固定しても、固定しなくても良い。説明の便宜上、セパレータ80を固定する場合については敢えて言及しないが、種々の固定方法を用いることができる。例えば、セパレータ80のジョイント部材13Gの一部にセパレータを嵌め込む溝を形成しても良いし、ジョイント部材13Gの半径方向外側から別の固定部材を配置し、セパレータを挟み位置を固定してもよい。
【0038】
(セパレータ80の変形例)
図4は、セパレータ80の変形例を示す図である。
セパレータ80は、内周面80bから半径方向内側に突出すると共に軸方向に沿って延びる突条部83を、周方向に等間隔に複数(少なくとも3本)有していてもよい。そして、セパレータ80を、内周部に設けられた複数の突条部83が外筒体13の外周面に接触するように取り付けるとよい。これにより、外筒体13や第2シリンダ12に対するセパレータ80の径方向の位置が規定される。
【0039】
〔油圧緩衝装置1の動作〕
以上のように構成される油圧緩衝装置1の動作を説明する。
まず、油圧緩衝装置1の圧縮行程時における動作を説明する。
圧縮行程時においては、ピストン30が、軸方向の一方の端部側(
図1においては下方)へ移動すると、ピストン30の移動で第1液室Y1内のオイルは押され、第1液室Y1内の圧力が上昇する。
【0040】
ボトムバルブ40においては、バルブ42は油路46を閉塞したままとなり、ピストン30においては、油路31Hを閉塞するバルブ32が開く。そして、第1液室Y1から第2液室Y2へとオイルが流れる。
さらに、ピストンロッド20の体積に相当するオイルが第1シリンダ貫通孔11hから流出し、連絡路Lを流れてソレノイドバルブ50に供給される。
【0041】
図5は、ソレノイドバルブ50におけるオイルの流れを説明するための図である。
図5に示すように、ソレノイドバルブ50においては、連絡路Lに接続する吸込ポート52からオイルが進入する。そして、吸込ポート52を流れるオイルは、弁体54とバルブストッパ53との間に形成される絞り部Vにて流れを絞られる。このとき、ソレノイドバルブ50における圧縮行程時の減衰力を得る。そして、絞り部Vを経たオイルは吐出リング56からシリンダ内室50Rへと吐出され、リザーバ室Rへと流出する。
【0042】
次に、油圧緩衝装置1の伸張行程時における動作を説明する。
ピストン30が、軸方向の他方の端部側(
図1においては上方)へ移動すると、第1液室Y1が負圧となる。これによって、リザーバ室Rのオイルが油路46を閉塞するバルブ42を開いて第1液室Y1に流入する。このリザーバ室Rから第1液室Y1へのオイルの流れは、ボトムバルブ40のバルブ42及び油路46で絞られ、油圧緩衝装置1の伸張行程時における減衰力を得る。
【0043】
そして、ピストン30の軸方向の他方の端部側への移動により高まった第2液室Y2の圧力は、第1シリンダ貫通孔11hから流出し、連絡路Lを流れてソレノイドバルブ50に供給される。その後のソレノイドバルブ50におけるオイルの流れは、
図5を参照しながら上述したとおりであり、ソレノイドバルブ50における伸張行程時の減衰力を得る。
【0044】
また、上述のとおり、本実施形態では、セパレータ80が、ソレノイドシリンダ50Sのオイルの吐出箇所に近接して設けられているので、上述した油圧緩衝装置1の圧縮行程時及び伸張行程時において、ソレノイドバルブ50から出たオイルが、セパレータ80の切欠部81によって滞留し易い。
【0045】
さらに、ソレノイドバルブ50から出たオイルは、セパレータ80の切欠部81によって案内されることで、軸方向の一方側に移動し、さらに、セパレータ80によって制限を受けながらリザーバ室R内を流れる。すなわち、セパレータ80の切欠部81によりオイルが軸方向の他方側(
図5においては上方)へ向かうのが抑制される。また、セパレータ80によりリザーバ室Rが径方向に区分けされているので、セパレータ80よりも半径方向外側から半径方向内側へ、あるいは半径方向内側から半径方向外側へオイルが向かうのは、セパレータ80に形成された連通路82を通ることが必要となる。このように、ソレノイドバルブ50により吐出されたオイルの流路が制限されるので、オイルが軸方向の他方側(
図1では上側)へ向かう力自体が抑制される。
【0046】
また、リザーバ室R内の空間がセパレータ80により区分けされているので、オイルの吐出や振動により油面が波打ったとしてもその波自体の大きさが小さくなる。これらの結果、ソレノイドバルブ50から吐出されたオイルによる液面の波立ちが抑制され、オイル内の気泡の発生が抑制される。また、ソレノイドバルブ50により吐出されたオイルに気泡が含まれていたとしても、オイルが油面等に到達するのに一定の時間が必要となるので気泡が消える。従って、本実施形態に係る油圧緩衝装置1によれば、減衰力発生の遅れが抑制され、所望の減衰力を発生させることができる。
【0047】
また、セパレータ80の内周部に上述した突条部83(
図4参照)が設けられている場合には、外筒体13に対してセパレータ80自体が所定の位置に保持されると共に、突条部83により周方向にオイルが移動することが制限される。
【0048】
なお、本実施形態では、セパレータ80をジョイント部材13Gに保持させる際には、軸方向にセパレータ80を挿入し、軸方向の一方側が開口した形状の切欠部81をジョイント部材13Gの周囲に嵌め込むようにして組み付ける。この際に、例えば、油圧緩衝装置1では、外筒体13や第2シリンダ12にソレノイドバルブ50等(
図2参照)を全て組み付けた後に、セパレータ80を設置することが可能になる。このように、本実施形態では、部品の組付性を向上させることができる。
【0049】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態に係るセパレータ820の斜視図である。
第2の実施形態に係るセパレータ820は、セパレータ80をジョイント部材13Gに固定する点が異なる。以下では、異なる点を中心に説明する。
【0050】
第2の実施形態に係るセパレータ820には、内外を貫通する貫通孔821が形成されている。貫通孔821の径は、ジョイント部材13Gのフランジ部の外径よりも小さい。セパレータ820における貫通孔821よりも軸方向の他方側の部位に、内側と外側とを連通する連通路822が周方向に複数(本実施の形態においては12つ)形成されているのは、セパレータ80の連通路82と同じである。
そして、第2の実施形態に係るセパレータ820は、貫通孔821にジョイント部材13Gが、例えば、圧入されることで、ジョイント部材13Gに保持される。
【0051】
<第3の実施形態>
図7(a)は、第3の実施形態に係るセパレータ830の斜視図である。
図7(b)は、ソレノイドバルブ50周辺を詳細に説明するための断面図である。
第3の実施形態に係るセパレータ830は、肉厚が異なる部位が設けられている点が第1の実施形態に係るセパレータ80と異なる。以下では、異なる点を中心に説明する。
【0052】
第3の実施形態に係るセパレータ830は、第1シリンダ11の径方向に突出する突出部832を有し、突出部832は、ソレノイドバルブ50付近に設けられている。つまり、セパレータ830は、切欠部81よりも軸方向の他方側の部位に、肉厚(径方向の厚み)が薄い薄肉部831を有している。そして、セパレータ830には、薄肉部831と、薄肉部831よりも肉厚の部位である隔壁80aとの境に設けられた段差にて突出部832が形成されている。
【0053】
以上のように構成された第3の実施形態に係るセパレータ830を有する油圧緩衝装置1においては、突出部832により、ソレノイドバルブ50から出たオイルが軸方向の他方側(
図7においては上方)へ移動するのが抑制されて突出部832にオイルが滞留する。それゆえ、第3の実施形態に係るセパレータ830を設けることによって、気泡を含むオイルが液面等に通過するのに一定の時間を要するため、ソレノイドバルブ50から吐出されたオイルに気泡が含まれていたとしても気泡が消える。
【0054】
また、オイルが軸方向の他方側(上側)へ向かう力自体が抑制されるので、液面の波立ちが抑制され、オイル内の気泡の発生が抑制される。そして、油圧緩衝装置1における減衰力発生の遅れが抑制され、油圧緩衝装置1は所定の減衰力を発生することができる。
【0055】
なお、
図7(a)及び
図7(b)を用いて示した薄肉部831及び突出部832を、第2の実施形態に係るセパレータ820に適用してもよい。
図8は、第2の実施形態に係るセパレータ820の変形例を示す図である。
第2の実施形態に係るセパレータ820は、貫通孔821の周囲に、肉厚が薄い薄肉部823を有し、薄肉部823と薄肉部823よりも肉厚の部位である隔壁80aとの境に突出部824を形成するとよい。
【0056】
以上のように構成されたセパレータ820を有する油圧緩衝装置1においても、突出部824により、ソレノイドバルブ50から出たオイルが軸方向の他方側(
図8においては上方)へ移動するのが抑制されて突出部824にオイルが滞留する。これにより、気泡を含むオイルが液面等に通過するのに一定の時間を要するため、ソレノイドバルブ50から吐出されたオイルに気泡が含まれていたとしても気泡が消える。
【0057】
また、オイルが軸方向の他方側(上側)へ向かう力自体が抑制されるので、液面の波立ちが抑制され、オイル内の気泡の発生が抑制される。そして、油圧緩衝装置1における減衰力発生の遅れが抑制され、油圧緩衝装置1は所定の減衰力を発生することができる。
【0058】
図7(a)及び
図7(b)を用いて示した第3の実施形態に係るセパレータ830、
図8を用いて示した第2の実施形態に係るセパレータ820の変形例においては、主にセパレータ830,820の『外周部』におけるオイルの流れに対して、突出部832,824などを作用させてオイルの気泡を減少させるように構成しているが、この態様に限定されるものではない。すなわち、外筒体13の外周とセパレータ830,820の『内周』との間において、オイルの流れに対して突出部832,824を作用させて、オイル内の気泡の発生を防止するようにしても良い。
【0059】
<セパレータの連通路の変形例>
図9(a)〜
図9(c)は、上述した第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830の連通路82の変形例を示す図である。
円筒状のセパレータ80の内外を連通する流路としては、
図9(a)に示すように、軸方向に略直線状に延びる貫通孔からなる連通路82aでもよい。また、軸方向に延びるだけではなく、軸方向に延びる部位と周方向に延びる部位とが交互となるよう形状でもよい。
【0060】
また、セパレータ80の内外を連通する流路としては、
図9(b)に示すように、軸方向に対して傾斜方向(
図9(b)の矢印Sの方向)に直線状に延びる貫通孔からなる連通路82bでもよい。なお、傾斜方向に延びる連通路82bとしては、
図9(b)に示した直線状ではなく、波形状であってもよい。
また、セパレータ80の内外を連通する流路としては、
図9(c)に示すように、軸方向の一方の端部から他方の端部に至るまで軸方向に直線状に延びるように形成された隙間にて形成される連通路82cでもよい。
【0061】
なお、
図9(a)〜
図9(c)には、連通路82a〜82cのいずれか一つを、第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830に形成した例を示している。しかしながら、敢えて図示しないが、連通路82a〜82cのいずれか二つ以上を組み合わせて第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830に形成してもよい。
【0062】
<突出部>
上述した第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830は、外周面から第1シリンダ11の径方向に第2シリンダ12の方へ突出する突出部(841〜843)を外周面の全周に渡って備えていてもよい。突出部は、第1シリンダ11の径方向には第2シリンダ12の内周面に至らない大きさであるとよい。また、突出部は、軸方向には、液面付近、好ましくは液面よりもやや上に設けられているとよい。
【0063】
図10(a)〜
図10(c)は、突出部を例示する図である。
図10(a)に例示した突出部841は、中心線方向に交差する方向(側方)から見た場合の形状が波形となるように形成されている。つまり、突出部841は、中心線方向の一方の端部側から他方の端部側に中心線方向に行くに従って、一方の端部側を向いて開口している開口幅が徐々に小さくなるように形成された凸部841aが円周方向に等間隔に複数形成されている。そして、凸部841aの頂点841bと隣り合う凸部841aにて形成される底部841cは、円弧状に形成されている。
【0064】
以上のように構成された突出部841が設けられたセパレータ80を備える油圧緩衝装置1においては、ソレノイドバルブ50から出たオイルが、突出部841の凸部841a内の限られた空間を上昇していくので、液面の波立ちが抑制され、気泡の発生が抑制される。
【0065】
また、突出部841はセパレータ80の外周面の全周に渡って形成され、凸部841aは等間隔に形成されているので、オイルの液面の波立ちが特定の箇所に偏ることが抑制される。ゆえに、液面の波立ちがより小さくなり、気泡の発生が抑制される。その結果、油圧緩衝装置1は安定した減衰力を得ることができる。
【0066】
なお、セパレータ80における突出部841の軸方向の位置は、以下のように設定されている。すなわち、この油圧緩衝装置1を、例えば自動車や自動二輪車の懸架装置(サスペンション)に設置した場合、予想される標準的な重さが懸架装置に加わったときのピストン30の位置に対応して定まるリザーバ室Rのオイルの液面の位置が、凸部841aの頂点841bよりもやや下方となるように設定するとよい。
【0067】
図10(b)に例示した突出部842は、円筒状に突出した円筒状部842aを軸方向に複数有している。各円筒状部842aは、外周面から凹んだ凹部842bを、周方向に等間隔に複数(
図10(b)の例では2つ)有している。
図10(b)の例では、凹部842bは、矩形状に形成された平坦な面である。互いに隣り合う円筒状部842aに形成された凹部842bは、周方向にずれた位置となるように形成されている。
図10(b)の例では、互いに90°ずれている。
【0068】
以上のように構成された突出部842が設けられたセパレータ80を備える油圧緩衝装置1においては、オイルが軸方向の他方側へ移動する(上昇する)のが円筒状部842aにより抑制される。一方で、円筒状部842aには凹部842bが形成されていることから、一部のオイルは、凹部842bを通過することで上昇する。この凹部842bを通過したオイルは、上方に位置する円筒状部842aによって上昇する流れが抑制されながら周方向に沿って移動する。オイルが周方向に沿って移動することにより、オイルの流路が長くなり、結果としてオイル内に発生した気泡が消え得る。
【0069】
ここで、例えば円筒状部842aの凹部842bを通過したオイルは、隣接する円筒状部842aにより上昇することが制限された際に、凹部842bから周方向に沿ったそれぞれ反対の向きに移動する(
図10(b)矢印参照)。この周方向に沿って互いに反対方向に移動したオイルはぶつかり合い、流れが打ち消される。その結果、液面の波立ちが抑制され、気泡の発生が抑制される。
【0070】
図10(c)に例示した突出部843は、周方向に延びる周方向部843aと、周方向部843aの周方向端部から軸方向に他方側(上側)に延びる軸方向部843bと、を交互に連続して複数有している。その結果、突出部843は、
図10(c)に示すように、軸方向に複数の周方向部843aを有すると共に軸方向に複数の軸方向部843bを有する。そして、
図10(c)に示すように、軸方向に互いに隣り合う周方向部843aの間には、周方向にオイルが流れる周方向流路が形成され、隣り合う軸方向部843bの間には、軸方向にオイルが流れる軸方向流路が形成される(
図10(c)矢印参照)。つまり、周方向部843a及び軸方向部843bにより、階段状の流路が形成される。
【0071】
以上のように構成された突出部843が設けられたセパレータ80を備える油圧緩衝装置1においては、オイルが軸方向の他方側へ移動する(上昇する)のが周方向部843aにより抑制される。オイルが周方向部843aに沿って移動することにより、オイルの流路が長くなり、結果としてオイル内に発生した気泡が消え得る。周方向部843aに沿って移動したオイルは、軸方向部843bにぶつかることにより流れが制限される。そして、軸方向部843bにぶつかったオイルは、軸方向部843bに沿って上昇し、隣り合う周方向部843aに沿って周方向に移動する。このように、オイルが、周方向部843a及び軸方向部843bに沿って階段状に移動することにより、オイルの流路が長くなり、液面の波立ちが抑制され、気泡の発生が抑制される。
【0072】
なお、上述した突出部841〜843は、第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830の外周面から第2シリンダ12の方へ突出する態様であるが、特にかかる態様に限定されない。これらの構成に加えて、第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830の内周面から外筒体13の方へも突出させてもよい。かかる構成により、オイルの液面の波立ちがさらに抑制され、気泡の発生がさらに抑制される。
【0073】
なお、
図10(a)〜
図10(c)には、上述した突出部841〜843のいずれか一つを、第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830に設けた例を示している。しかしながら、敢えて図示しないが、突出部841〜843のいずれか二つ以上を組み合わせて第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830に設けてもよい。
【0074】
また、敢えて図示しないが、
図10(a)〜
図10(c)に示した突出部841〜843の少なくとも一つと、
図9(a)〜
図9(c)に示した連通路82a〜82cの少なくとも一つを組み合わせて第1の実施形態に係るセパレータ80〜第3の実施形態に係るセパレータ830に設けてもよい。
【0075】
なお、上述したソレノイドバルブ50は、リザーバ室Rへ吐き出すオイルの方向を制限する流路制限部60を備えるとよい。
図11は、流路制限部60を備えたソレノイドバルブ50周辺を詳細に説明するための図である。
図12は、流路制限部60を説明するための図である。
【0076】
流路制限部60は、
図12に示すように、整流部材611と、スカート部材612とを有している。
【0077】
整流部材611は、
図12に示すように、開口611Rと油路611Hとを有する円盤状の部材である。
【0078】
開口611Rは、内径が、基端側開口部521の外径よりも大きく形成される。また、整流部材611は、外径がソレノイドシリンダ50Sの内径よりも小さく設定される。そして、整流部材611は、開口611Rに吸込ポート52の基端側開口部521が通され、基端側開口部521の径方向の外側に位置するとともに、ソレノイドシリンダ50Sの内側に設けられる。そして、整流部材611は、スカート部材612と先端側開口部522とに挟み込まれることで、ソレノイドシリンダ50S内に保持される。
【0079】
スカート部材612は、
図12に示すように、円筒部612Sと、交差方向の先端側に設けられるフランジ部612Fと、を有している。
【0080】
円筒部612Sは、外径が第2シリンダ貫通孔12hの内径と略等しく形成される。また、円筒部612Sは、内径がジョイント部材13Gの外径よりも大きく形成される。さらに、円筒部612Sの基端側の端部は、外筒体13の外周面に沿った形状をしている。
【0081】
さらに、円筒部612Sは、端部からフランジ部612F側に向けてU字状に切り欠かれた切欠部612Uを備えている。そして、本実施形態では、スカート部材612は、円筒部612Sの基端側の端部が外筒体13の外周面に沿って取り付けられた状態にて、切欠部612Uがボトムバルブ40の位置する一方側の端部を向くように配置される。
【0082】
そして、スカート部材612は、フランジ部612Fがソレノイドシリンダ50Sの内周に接触するように取り付けられる。また、スカート部材612は、整流部材611に対峙して設定される。さらに、スカート部材612は、円筒部612Sが外筒体13の外周面に向けて延びて外筒体13の外周面に対向する。そして、スカート部材612は、ジョイント部材13G及び吸込ポート52の基端側開口部521を囲う。
【0083】
そして、ソレノイドバルブ50が流路制限部60を備える場合、上述したセパレータ80,820,830を、ジョイント部材13Gにて支持する代わりに流路制限部60のスカート部材612にて支持してもよい。
【0084】
なお、上述した実施形態では、第1シリンダ11、第2シリンダ12及び外筒体13のそれぞれ筒形状にて構成された所謂三重管構造によって、油室(第1液室Y1,第2液室Y2)、リザーバ室Rおよび連絡路Lを形成している。ただし、必ずしも三重管構造により各構成部を形成することに限定されない。例えば、第1シリンダ11と第2シリンダ12とによる所謂二重管構造において、本実施形態の連絡路Lに対応するオイルの経路を別途設けても構わない。この場合、オイルが流れる管状のパイプを第1シリンダ11に別途設け、このパイプによって第1シリンダ11内の液室とソレノイドバルブ50の吸込ポート52とを連絡する。この場合においても、セパレータ80を、リザーバ室Rにおいてソレノイドバルブ50からリザーバ室Rへのオイルの吐出箇所の周囲を囲うように支持された状態で、第1シリンダ11の周囲を囲うように取り付けることで、オイル内の気泡を減少させることができる。