特許第6391369号(P6391369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391369
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】床土
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/00 20170101AFI20180910BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A01K63/00 B
   A01K63/04 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-175554(P2014-175554)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49043(P2016-49043A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 昌平
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信彦
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 潤二
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−084486(JP,A)
【文献】 特開平07−275867(JP,A)
【文献】 特開2000−117020(JP,A)
【文献】 特開2013−000104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00−63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
淡水の水生生物用の水槽の底に敷き詰めるための床土であって、ケイ酸質鉱物を含むケイ酸成分含有物または該ケイ酸成分含有物の焼成物からなり、
上記ケイ酸質鉱物は、ケイ酸(SiO)の含有率が60質量%以上であり、かつ、アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率が10質量%以下のものであり、
上記ケイ酸成分含有物が、腐植質を含む粘土を含むものであり、
上記ケイ酸成分含有物中、上記ケイ酸質鉱物の含有率が5〜60質量%でかつ上記粘土の含有率が40〜95質量%であることを特徴とする床土。
【請求項2】
上記粘土中、腐植質を構成する、フミン酸及びフルボ酸の含有率の合計が、乾土換算で、3〜40質量%である請求項1に記載の床土。
【請求項3】
上記ケイ酸質鉱物が、珪質岩、珪藻土、オパール、及びチャートからなる群より選ばれる一種以上からなる請求項1又は2に記載の床土。
【請求項4】
上記粘土が、黒ボク土、水田土、森林土、黒泥土、泥炭、及びポドゾルからなる群より選ばれる一種以上からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の床土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡水の水生生物(例えば、観賞用の魚や水草等)用の水槽の底に敷き詰めるための床土に関する。
【背景技術】
【0002】
淡水の水生生物(例えば、観賞用の魚や水草等)用の水槽において、観賞用の魚等及びこれらと共存する水草等を良好に飼育または生育させるには、水槽内の水が適切なpHの範囲内にあることが求められている。
例えば、特許文献1には、燒結によって粒状とした火山灰土と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩とを重量比200〜300:1の割合にて混合した混合物による観賞魚の水槽用底床土が記載されている。該水槽用底床土によれば、観賞魚用の水槽のpH値を長期間にわたってほぼ一定に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−256636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の水生生物用の水槽において用いられる床土(ソイル、底砂等)には、視覚的な効果(藻類等が生じにくく、観賞用の魚や水草等が見易いこと)のみならず、水質管理の効果(例えば、濁りがないことやpHが特定の範囲内にあること)や、観賞用の魚の飼育効果(良好に飼育できること)や、水草の生育効果(良好に生育すること)が求められている。
市販されている床土としては、例えば、火山灰質粘性土の焼成物からなる床土、高有機質土の焼成物からなる床土、及び高有機質土の焼成物とゼオライト等の吸着材を混合した床土等が挙げられる。
上記火山灰質粘性土の焼成物からなる床土は、吸着性に優れているが、栄養分が乏しいため、水草の生育のために、別途、栄養分を投入する必要があるという問題があった。また、上記高有機質土の焼成物からなる床土は、吸着性及び水草への栄養供給力に優れているが、水中に有機質成分(フミン酸、フルボ酸等)が過度に放出されることで、水槽内の水が黄色く濁るという問題があった。このような濁りを抑制するためには、活性炭やゼオライト等を用いた外部式のフィルターを用いればよいが、該フィルターによって除去された有機質成分は、水草の生育に利用されないという問題があった。さらに、上記高有機質土の焼成物とゼオライト等の吸着材を混合した床土は、吸着性及び水草への栄養供給力に優れ、かつ有機質成分が過度に放出されることによる水の濁りを抑制することができるが、ゼオライトによって水槽内の水のpHが高くなるため、淡水の水生生物(例えば、弱酸性を好む観賞用の魚や水草)の飼育または生育に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
本発明は、淡水の水生生物用の水槽内の水のpHが長期間に亘って弱酸性(例えば、pH4.0以上、7.0未満)の領域を示し、水の濁りや藻類等を生じさせにくいため観賞用の魚等の観察に好適であり、かつ、観賞用の魚等の飼育を良好に行うことができ、水草を良好に生育させることができる床土を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、淡水の水生生物用の水槽の底に敷き詰めるための床土であって、ケイ酸質鉱物を含むケイ酸成分含有物または該ケイ酸成分含有物の焼成物からなる床土によれば、前記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] 淡水の水生生物用の水槽の底に敷き詰めるための床土であって、ケイ酸質鉱物を含むケイ酸成分含有物または該ケイ酸成分含有物の焼成物からなることを特徴とする床土。
[2] 上記ケイ酸質鉱物は、ケイ酸(SiO)の含有率が60質量%以上であり、かつ、アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率が10質量%以下のものである前記[1]に記載の床土。
[3] 上記ケイ酸質鉱物が、珪質岩、珪藻土、オパール、及びチャートからなる群より選ばれる一種以上からなる前記[1]又は[2]に記載の床土。
[4] 上記ケイ酸成分含有物が、粘土を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の床土。
[5] 上記粘土が、腐植質を含む粘土である前記[4]に記載の床土。
[6] 上記粘土が、黒ボク土、水田土、森林土、黒泥土、泥炭、及びポドゾルからなる群より選ばれる一種以上からなる前記[4]又は[5]に記載の床土。
【発明の効果】
【0007】
本発明の床土によれば、淡水の水生生物用の水槽内の水のpHが長期間に亘って弱酸性(例えば、pH4.0以上、7.0未満)の領域を示し、水の濁りや藻類等を生じさせにくいため観賞用の魚等の観察に好適であり、かつ、観賞用の魚等の飼育を良好に行うことができ、水草を良好に生育させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の床土は、淡水の水生生物用の水槽の底に敷き詰めるための床土であって、ケイ酸質鉱物を含むケイ酸成分含有物または該ケイ酸成分含有物の焼成物からなる。
上記ケイ酸質鉱物は、ケイ酸(SiO)の含有率が、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、かつ、アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、特に好ましくは4質量%以下である。
上記ケイ酸(SiO)の含有率、及び、上記アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率が、各々、上記数値範囲内であれば、床土の吸着性およびpH緩衝性が向上する。
また、アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率が10質量%以下であれば、水槽内の水のpHが高くなりすぎる(アルカリ性となる)ことを防ぐことができる。
なお、上記アルカリ金属の酸化物としては、例えば、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)等が挙げられる。また、上記アルカリ土類金属の酸化物としては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)等が挙げられる。
【0009】
ここで、本明細書中、「床土の吸着性」とは、床土が水槽内の水の中の窒素(亜硝酸、硝酸、及びアンモニア等)及びリン(リン酸イオン等)等を吸着する性能をいう。水槽内の水の中の窒素及びリンの濃度が大きくなると、水槽中に藻類が発生したり、水槽のガラス面にコケ類が発生したりするため、水槽の外観上好ましくない。しかし、吸着性に優れた床土を用いることで、藻類等の発生を抑制することができる。
また、観賞用の魚の排せつ物や残餌から発生するアンモニアは、水槽中のpHを上昇させるとともに、水生生物(例えば、弱酸性を好む観賞用の魚や水草)にとって有害である。この点、本発明では、吸着性に優れた床土を用いることで、水中のアンモニアの濃度を低減することができる。
なお、水の中の窒素及びリンの濃度は、床土に含まれる粘土の腐植質(フミン酸及びフルボ酸)の溶出の程度および水生生物の排せつ物や残餌の量に応じて増加する。
【0010】
上記ケイ酸質鉱物としては、珪質岩、珪藻土、チャート、及びオパール等からなる群より選ばれる一種以上を用いることが好ましい。
中でも、床土の吸着性およびpH緩衝性の観点から、珪質岩及び珪藻土のいずれか一方または両方を用いることが好ましい。
また、上記ケイ酸質鉱物に含まれるケイ酸(SiO)は、床土の吸着性およびpH緩衝性の観点から、珪石や石英等に含まれる結晶性のケイ酸(SiO)よりも、オパールCTやオパールA等に含まれる非結晶性又は結晶性の低いケイ酸(SiO)が好ましい。上記ケイ酸質鉱物として、オパールCTまたはオパールAを多く含むものを用いれば、上記ケイ酸質鉱物に含まれるケイ酸(SiO)中の、非結晶性又は結晶性の低いケイ酸(SiO)の割合を大きくすることができる。
また、上記珪藻土は、粒子が細かく、後述の粘土に混合して使用することができる。変成により石化した珪藻土(例えば、稚内産の珪質頁岩など)は、その粒度を調整したうえで、焼成した粘土と混合して使用することができる。
【0011】
ケイ酸成分含有物中のケイ酸質鉱物の含有率は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。該含有率が1質量%以上であれば、床土の吸着性およびpH緩衝性が向上する。上記含有率の上限は特に限定されないが、ケイ酸質鉱物の含有率が大きくなるほど、水槽中の水のpHが小さくなる傾向にある。水槽中の水のpHが5.0以上であることを望む場合、上記含有率は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0012】
上記ケイ酸質鉱物の平均粒径(50%重量累積粒径)は、好ましくは0.1〜4mm、より好ましくは0.2〜2mmである。
上記粒径が、上記数値範囲内であれば、床土の吸着性およびpH緩衝性が向上する。
なお、「50%重量累積粒径」とは、重量累積粒度分布において、粒径が小さな側から累積で50重量%に対応する粒径をいう。
【0013】
上記ケイ酸成分含有物は、粘土を含んでいてもよい。上記ケイ酸成分含有物が粘土を含むことで、水草等の根張りが強くなって抜けにくくなり、生育性が向上する。また、粘土の持つ吸着能により、床土の吸着性が向上する。
上記粘土としては、腐植質(フミン質)を含む粘土が好ましい。腐植質を含む粘土には、水草の生育に必要な栄養分(窒素、リン、カリウム)が含まれており、それらが効率的に水草に供給されることで水草の生育性を向上させることができる。
ここで、「腐植質」とは、土壌中の動植物等の遺体が、微生物による分解を経て形成された最終生成物をいい、様々な有機化合物を含むものである。
腐植質を構成する成分としては、ヒューミン、フミン酸及びフルボ酸が挙げられる。中でも、水草の生育性の観点から、フミン酸及びフルボ酸が好ましく、フミン酸がより好ましい。
なお、ヒューミンとは、腐植質を構成する成分の中でも、アルカリ及び酸に溶けない成分をいう。フミン酸とは、腐植質を構成する成分の中でも、アルカリに溶け、酸に溶けない成分をいう。フルボ酸とは、腐植質を構成する成分の中でも、アルカリ及び酸に溶ける成分をいう。
【0014】
上記粘土中の、フミン酸とフルボ酸の合計の含有率は、乾土換算で、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4〜40質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。該含有率が3質量%以上であれば、水草への栄養供給力が十分となる。該含有率が40質量%以下であれば、腐植質(フミン酸及びフルボ酸)が水中に過剰に放出されることによる水の濁りが起こりにくくなるとともに、水槽内の水のpHが低くなりすぎる(pHが4.0未満になる)ことを防ぐことができる。
上記粘土中の、フミン酸とフルボ酸の合計の含有率が小さい場合、適宜、腐植質(好ましくはフミン酸)を添加して、該含有率を調整してもよい。例えば、火山灰質粘性土(関東ローム)は、フミン酸の含有率が0.1質量%以下、フルボ酸の含有率が0.2質量%以下のものであるが、フミン酸試薬や腐植質を多く含む粘土などを添加して混合することで、フミン酸とフルボ酸の合計の含有率を調整すれば、本発明において好適な粘土として使用することができる。
なお、本発明の床土は、吸着性に優れることから、水中に腐植質が過度に放出されて、水槽内の水が黄色く濁ることを抑制することができる。
【0015】
上記粘土としては、黒ボク土、水田土、森林土、黒泥土、泥炭、及びポドゾルからなる群より選ばれる一種以上が挙げられる。中でも、入手が容易であり、腐植質の含有率が大きく、pHが弱酸性(pH4.0以上)より小さくなりにくい観点から、黒ボク土及び水田土のいずれか一方または両方を用いることが好ましい。
【0016】
ケイ酸成分含有物中の粘土の含有率は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。該含有率が99質量%以下であれば、床土の吸着性およびpH緩衝性が向上する。
【0017】
本発明の床土は、上記ケイ酸質鉱物を含むケイ酸成分含有物または該ケイ酸成分含有物の焼成物からなる。
本発明の床土が、ケイ酸成分含有物を焼成してなる焼成物である場合、水中において、床土が崩壊しにくくなる。
なお、本明細書中、「焼成」とは、水分を除去することができかつ腐植質が分解しない温度で、熱処理を行うことをいう。焼成温度は、好ましくは70〜110℃、より好ましくは80〜95℃である。焼成手段としては、特に限定されるものではなく、恒温乾燥機、乾燥炉、ロータリーキルン等が挙げられる。
【0018】
また、上記ケイ酸成分含有物が粘土を含む場合、粘土を造粒して焼成した後、得られた粘土の焼成物とケイ酸質鉱物(未焼成のケイ酸質鉱物または予め焼成したケイ酸質鉱物)を混合してもよいし、あるいは、粘土とケイ酸質鉱物を混合した後、得られた混合物を造粒して、焼成を行ってもよい。
上記粘土の平均粒径(50%重量累積粒径)は、好ましくは0.5〜4mm、より好ましくは1〜2mmである。該平均粒径が、上記数値範囲内であれば、床土の吸着性およびpH緩衝性が向上する。
【0019】
水槽内の水の好ましいpHは、水槽内の水生生物の種類によって異なるものである。
本発明の床土によれば、水槽内の水のpHを長期間に亘って弱酸性の領域(例えば、pH4.0以上、7.0未満)にすることができ、水のpHが弱酸性の領域であることを好む水生生物に好適である。
本発明の床土は、「地盤工学会基準 JGS0211−2009(土懸濁液のpH試験方法)」に準拠して測定した、調製から28日後の時点における土懸濁液(床土と水の混合物)のpHが、好ましくは4.0〜6.3、より好ましくは4.3〜6.2、特に好ましくは4.5〜6.1であるものである。該pHが上記数値範囲内であれば、水槽内において水生生物を飼育または生育させる際に、水槽内の水のpHを長期間に亘って弱酸性の領域(例えば、pH4.0以上、7.0未満)に保つことができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)珪質岩
北海道産を使用;SiO2の含有率:75.2質量%;アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率:3.3質量%;平均粒径:1.0mm
(2)珪藻土
秋田県産を使用;SiO2の含有率:76.6質量%;アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率:2.5質量%;平均粒径:0.2mm
(3)軽量気泡コンクリート
SiO2の含有率:39.6質量%;アルカリ金属の酸化物とアルカリ土類金属の酸化物の合計の含有率:22.8質量%;平均粒径:1.5mm
(4)腐植質
フミン酸ナトリウム(テルナイト社製、試薬);フミン酸の含有率:63.2質量%;フルボ酸の含有率:27.9質量%
【0021】
(5)焼成黒色土
新潟県産の黒ボク土を、パンペレタイザー(AS ONE製、「PZ−02R」)を用いて、平均粒径が1.5mmとなるように造粒した後、乾燥機を用いて、90℃で30分間焼成を行ったもの;フミン酸の含有率:4.1質量%;フルボ酸の含有率:2.0質量%
(6)未焼成黒色土
新潟県産の黒ボク土を、パンペレタイザー(AS ONE製、「PZ−02R」)を用いて、平均粒径が1.5mmとなるように造粒したもの;フミン酸の含有率:4.1質量%;フルボ酸の含有率:2.0質量%
(7)焼成茶色土
千葉県産の火山灰質粘性土(関東ローム)を、パンペレタイザー(AS ONE製、「PZ−02R」)を用いて、平均粒径が1.5mmとなるように造粒した後、乾燥機を用いて、90℃で30分間焼成を行ったもの;フミン酸の含有率:0.1質量%未満;フルボ酸の含有率:0.2質量%未満
なお、上記使用材料(5)〜(7)における、フミン酸及びフルボ酸の含有率は、各々、乾土換算である。
【0022】
[実施例1〜10、比較例1〜5]
上記各材料を、表1に示す配合で混合して、床土A〜Oを得た。「地盤工学会基準 JGS0211−2009(土懸濁液のpH試験方法)」に準拠して、各床土を20.0gと水100gを混合した後、得られた混合物を静置して、30分間後、1日後、28日後の各時点における混合物のpHを測定した。結果を表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表1〜2から、本発明の床土(床土A〜F、H〜K)を用いた実施例1〜10における混合物の28日後のpHは、4.7〜6.1であり、比較例1〜5のpH(6.4〜7.2)と比較して小さいものであった。
【0026】
[実施例11]
300×300×300mmの水槽の底面に、底面フィルター(NISSO社製、商品名「バイオフィルター30」)を配置し、底面フィルターの上面及び水槽の底面を覆うように、上記「床土C」2000gを敷設した。床土の厚みは、水槽の底面から、おおよそ5cmであった。水槽内に蒸留水を16リットル入れて、エアーポンプを用いて水を循環させた。なお、水は、底面フィルターの上面に敷設された床土を通過した後、底面フィルターに吸い込まれ、その後、パイプを通って、水面の上方に配設されたパイプの排出口から排出され、水面へ散布されることで循環する。
水草としてパンタナルレッドピンネイト5本を、水槽内の床土に水草同士の間隔が10mm程度となるように植えた。
植えた時から、1日及び28日経過後の水草の質量を測定し、得られた質量から、水草の質量の増加率を算出した。
なお、質量の増加率は、以下の式によって算出した。
質量の増加率(%)={(28日経過後の水草の質量−1日経過後の水草の質量)/1日経過後の水草の質量}×100
【0027】
また、水のpH及び水の中のPO4−Pの濃度(リン酸イオン濃度)の測定、並びに、水の中の亜硝酸イオンと硝酸イオンの合計(以下、「NOx」とする。)の濃度の算出を行った。
水の中のPO4−Pの濃度(mg/L(リットル))は、「JIS K 0102:2013 46.1(リン酸イオン)」に準拠して、紫外可視分光光度計(日本分光製、商品名「V650DS」)を用いて測定した。
また、水の中のNOxの濃度(mg/L)は、亜硝酸イオンの濃度については、水質測定器(共立理化学研究所製、商品名「パックテスト」;型式「WAK−NO2」)を用いて、硝酸イオンの濃度については、水質測定器(共立理化学研究所製、商品名「パックテスト」;型式「WAK−NO3」)を用いて、各々発色処理を行い、次いで、水質計(共立理化学研究所製、商品名「デジタルパックテスト・マルチ」;型式「DPM−MT」)を用いて、亜硝酸イオン及び硝酸イオンの濃度を測定し、得られた各数値を合計することで算出した。
【0028】
[実施例12、比較例6〜7]
床土Cの代わりに、表3に示す床土を用いる以外は、実施例11と同様にして、水草の質量、水のpH、及びPO4−Pの濃度を測定し、また、NOxの濃度、及び水草の質量の増加率を算出した。
それぞれの結果を表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
表3中、実施例11〜12及び比較例6〜7から、本発明の床土(実施例11〜12)によれば、水槽中の水草の生育性が向上していることがわかる。また、本発明の床土(実施例11〜12)によれば、28日後の水槽内の水が弱酸性(pHが7.0未満)であることがわかる。さらに、本発明の床土(実施例11〜12)によれば、比較例と比べて、28日後の水槽中の水のNOx及びPO4−Pの濃度が小さいことから、藻類の発生が起こりにくいことがわかる。