(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体部材と、融点が所望の温度となる様に調整されたインキを染み込ませたインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体内に吸蔵されたインキを毛管現象によってインキ吸蔵体外に導出可能なインキ導出部材とを有し、インキ吸蔵体とインキ導出部材は本体部材を介して一体化されており、インキ吸蔵体とインキ導出部材は相対移動が可能であり、未使用時にはインキ導出部材とインキ吸蔵体は非接触状態であり、インキ吸蔵体とインキ導出部材を相対移動させ、インキ導出部材又はインキ吸蔵体の一方を他方に差し込んでインキ吸蔵体とインキ導出部材を接触させることが可能であることを特徴とする感熱インジケータ。
インキ吸蔵体は、インキを透過しない吸蔵体ケース内に配されており、吸蔵体ケースの一部には強度が低い破壊予定部があり、インキ導出部材を移動してインキ吸蔵体ケースに接触し、さらにインキ導出部材を移動してインキ導出部材で破壊予定部を突き破り、インキ導出部材の一部をインキ吸蔵体ケース内に差し込んでインキ吸蔵体とインキ導出部材を接触させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の感熱インジケータ。
本体部材は内部に収容空間があり、インキ吸蔵体とインキ導出部材は前記収容空間内に収容されており、インキ導出部材は収容空間内で移動可能であり、本体部材はプッシュ部材を有し、当該プッシュ部材は一部が外部に露出しており、収容空間内においてはインキ導出部材と係合可能であり、プッシュ部材を操作することによってインキ導出部材が移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱インジケータ。
本体部材には内部が透けて見える窓部と、内部が透けて見えない隠蔽部があり、前記窓部はインキ導出部材の一部が見えてインキ吸蔵体が見えない位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱インジケータ。
【背景技術】
【0002】
輸送時や保管時に、常に一定の温度環境下におかれていなければならないものがある。例えば、タンパク質は凍結乾燥状態では安定に保存できるが、溶解後のタンパク質溶液では分解や活性低下が生じることがある。そのためにタンパク質は一般に以下のように保存することが推奨されている。
【0003】
【表1】
しかしながら、何らかの事情で輸送中、もしくは保管中に環境温度をコントロールできない事態となる場合もある。
この様に一時的に環境温度をコントロールできない事態に遭遇したとしても、その後に正常な冷凍環境に戻されると、外観上もとの状態に復帰する。即ち凍結融解による活性低下が起こっていたとしても、外観上、その変化を認めることができない。そのため、正常なタンパク質だと判断して実験を行ったとしても、正しい実験結果が得られなくなる懸念がある。
【0004】
また冷凍食品についても同様のことが言える。例えば冷凍肉塊であるならば、凍結状態を維持したままで輸送されることが必須であるが、途中で冷凍庫が故障したり、冷凍庫の外に放置された状態になると、冷凍が溶け、肉汁が流れ出して品質が著しく低下する。
しかしながら溶けてしまった状態においても、再度冷凍庫に戻して冷却すると、外観上、元の冷凍肉に戻る。
【0005】
そこでこの様な事態が発生したことを視覚で確認する器具として、感熱インジケータがある。
特許文献1に開示された感熱インジケータは、指で押すことによって陥没するフィルムで作られた突起があり、フィルムで囲まれた凹部空間に着色熱溶融性物質が収容されている。また凹部の下には着色熱溶融性物質を浸透可能な吸収体がある。
特許文献1には具体的な実施形態が2例開示されている。
第一実施形態は、着色熱溶融性物質が担体に保持されており、当該担体がフィルムで囲まれた凹部空間に配されている。
特許文献1の第一実施形態では、感熱インジケータを冷凍して担体に保持された着色熱溶融性物質を固化する。そして使用時には、前記した突起を上から押して、フィルムの底を破り、着色熱溶融性物質が保持された担体を吸収体の上に落下させる。
感熱インジケータが置かれた環境の温度が高い場合は、着色熱溶融性物質が溶融して吸収体に浸透してゆく。吸収体を浸透した着色熱溶融性物質の距離を測定することにより、物品の温度が一定の範囲に維持されていたか否かを判定することができる。
【0006】
また特許文献1に開示された第二実施形態では、フィルムで囲まれた凹部に着色熱溶融性物質のみが内蔵されている。そして担体は、凹部空間の下に配置されている。また担体の下に吸収体が設けられている。
特許文献1の第二実施形態では、感熱インジケータを冷凍して着色熱溶融性物質のみを固化する。そして使用時には、前記した突起を上から押して、フィルムの底を破り、固化した熱溶融性物質を担体の上に落下させる。
感熱インジケータが置かれた環境の温度が高い場合は、着色熱溶融性物質が溶融して担体に吸収される。そして着色熱溶融性物質は担体から吸収体に浸透してゆく。吸収体を浸透した着色熱溶融性物質の距離を測定することにより、物品の温度が一定の範囲に維持されていたか否かを判定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された感熱インジケータは、判定の正確性に欠けるという問題がある。即ち特許文献1に開示された感熱インジケータは、信頼性が低い。
【0009】
即ち感熱インジケータは、低温に維持しておくべき物品と同包されて使用されるが、感熱インジケータの姿勢によって、着色熱溶融性物質と吸収体との接触状態が変わる。
例えば、ドライアイスを入れた断熱箱の中に、低温に維持しておくべき物品と特許文献1に開示された感熱インジケータを入れ、その状態で輸送される場合、輸送の途中で、振動等によって感熱インジケータの姿勢が変わる。
ここで特許文献1に開示された感熱インジケータは、水平且つフィルムで作られた突起を上にした状態で使用されることが前提であるが、輸送の際に、天地が逆になってしまうこともある。
即ち凹部空間が下になり、吸収体が上となってしまう場合がある。この様な場合、断熱箱内の温度が上昇して、着色熱溶融性物質が溶融しても、着色熱溶融性物質は下の凹部空間に止まり、吸収体とは接しない可能性がある。そのため着色熱溶融性物質が溶融しているにも係わらず着色熱溶融性物質は吸収体に浸透しない。
【0010】
また例えば真空パックの冷凍肉塊の保冷状態を確認する場合、冷凍肉塊のパックに直接、感熱インジケータを貼り付けることが想定されるが、冷凍肉塊がバラ積みされた場合、感熱インジケータの姿勢を、水平姿勢に保つことができない。
この様な事情から、従来技術の感熱インジケータは、信頼性が低い。
【0011】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、信頼性の高い感熱インジケータを開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、本体部材と、融点が所望の温度となる様に調整されたインキを染み込ませたインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体内に吸蔵されたインキを毛管現象によってインキ吸蔵体外に導出可能なインキ導出部材とを有し、インキ吸蔵体とインキ導出部材は本体部材を介して一体化されており、インキ吸蔵体とインキ導出部材は相対移動が可能であり、未使用時にはインキ導出部材とインキ吸蔵体は非接触状態であり、インキ吸蔵体とインキ導出部材を相対移動させ、インキ導出部材又はインキ吸蔵体の一方を他方に差し込んでインキ吸蔵体とインキ導出部材を接触させることが可能であることを特徴とする感熱インジケータである。
【0013】
本発明の感熱インジケータは、インキ導出部材又はインキ吸蔵体の一方を他方に差し込んでインキ吸蔵体とインキ導出部材を接触させるので、感熱インジケータの姿勢に係わらずインキ導出部材にインキを導出させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、インキ吸蔵体は、インキを透過しない吸蔵体ケース内に配されており、吸蔵体ケースの一部には強度が低い破壊予定部があり、インキ導出部材を移動してインキ吸蔵体ケースに接触し、さらにインキ導出部材を移動してインキ導出部材で破壊予定部を突き破り、インキ導出部材の一部をインキ吸蔵体ケース内に差し込んでインキ吸蔵体とインキ導出部材を接触させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の感熱インジケータである。
【0015】
本発明の感熱インジケータでは、インキ吸蔵体がインキを透過しない吸蔵体ケース内に配されているから、インキが漏れない。
【0016】
請求項3に記載の発明は、本体部材は内部に収容空間があり、インキ吸蔵体とインキ導出部材は前記収容空間内に収容されており、インキ導出部材は収容空間内で移動可能であり、本体部材はプッシュ部材を有し、当該プッシュ部材は一部が外部に露出しており、収容空間内においてはインキ導出部材と係合可能であり、プッシュ部材を操作することによってインキ導出部材が移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱インジケータである。
【0017】
本発明の感熱インジケータでは、プッシュ部材の一部が外部に露出しており、プッシュ部材を操作することによってインキ導出部材を移動させることが可能である。そのため使用者はインキ導出部材に触れることなく、インキ導出部材をインキ吸蔵体に差し込むことができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、本体部材には内部が透けて見える窓部と、内部が透けて見えない隠蔽部があり、前記窓部はインキ導出部材の一部が見えてインキ吸蔵体が見えない位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱インジケータである。
【0019】
感熱インジケータの使用方法は限定されるものではないが、インキ導出部材又はインキ吸蔵体の一方を他方に差し込んだ後に感熱インジケータを冷凍することが望ましい。
この様な使用法を採用する場合、インキ導出部材又はインキ吸蔵体の一方を他方に差し込む際には、インキ吸蔵体内のインキは液状である。そのためインキはインキ導出部材に導出され始める。ただし、その後に感熱インジケータが冷凍されるので、インキ導出部材へのインキの導出は停止する。
本発明の感熱インジケータで採用する本体部材は内部が透けて見える窓部と、内部が透けて見えない隠蔽部があり、窓部はインキ導出部材の一部が見えてインキ吸蔵体が見えない位置に設けられている。そのためインキ導出部材又はインキ吸蔵体の一方を他方に差し込んだ直後にインキが僅かな量だけインキ導出部材に導出されるが、その部分は本体部材の隠蔽部に隠されて見えない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の感熱インジケータは、従来に比べて信頼性の高いという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の感熱インジケータ1は、本体ケース(本体部材)2を有し、当該本体ケース2内にインキ収容部3及びインキ導出部材5の全部と、プッシュ部材22の一部が収容され、プッシュ部材22の残る一部が本体ケース2の一端から突出するものである。
【0023】
以下、順次説明する。
本体ケース2は、中空の筒状であり、内部に収容空間6がある。
本体ケース2は、
図1、
図6の様に、二つの部材が組み合わされて構成されている。即ち本体ケース2は、吸収体収容部7と、プッシュ部材収容部8によって構成されている。
【0024】
吸収体収容部7は、長細い円筒であり、有底である。即ち吸収体収容部7は細長く、一端側が開放され、他端側は閉塞されている。
吸収体収容部7は、大半の部分が不透明であるが、一部に窓部11があり、窓部11だけは透明であって外から本体ケース2内を見ることができる。
プッシュ部材収容部8は長細い円筒である。プッシュ部材収容部8は両端が開放されている。ただしプッシュ部材収容部8の一端側には内フランジ17が設けられている。
プッシュ部材収容部8の他端側には切り欠き部18が設けられている。切り欠き部18の位置は、プッシュ部材収容部8が吸収体収容部7に装着された状態の際に窓部11の位置に相当する位置である。
【0025】
インキ収容部3は、
図7の様に細長い円柱形である。インキ収容部3の外径は、前記した吸収体収容部7の内径よりも小さい。
インキ収容部3は、吸蔵体ケース13と、インキ吸蔵体15及び封止部材16によって構成されている。
吸蔵体ケース13は、液状態のインキを透過させず、さらにインキが気化したガスも透過させない樹脂シートで作られた筒である。吸蔵体ケース13は一方の端部が閉塞されており、他端側は開放されている。吸蔵体ケース13が作られた樹脂シートは、薄いものではあるが、相当の強度と弾性を有し、容易には破壊されない。
【0026】
インキ吸蔵体15は、綿状やマット状、フェルト或いは繊維シートを丸めたものである。インキ吸蔵体15は、繊維を主原料とするものであり、繊維の塊であると言える。
インキ吸蔵体15には後記するインキがしみ込んでいる。
【0027】
インキ吸蔵体15は、吸蔵体ケース13内に挿入されており、吸蔵体ケース13の開口が封止部材16で封止されている。
封止部材16は、液状態のインキを透過させたり、インキが気化したガスを透過させない素材で作られている。また封止部材16は容易に破壊可能であったり、針状や棒状のものを押し込むことによって容易に貫通する素材によって作られている。
本実施形態では、封止部材16は、アルミ箔で作られている。封止部材16は他の部位よりも弱い部位であり、破壊予定部である。
【0028】
本実施形態では、インキ導出部材5は繊維束である。インキ導出部材5は細長い棒状であり、先端が尖っている。インキ導出部材5の外径は、インキ収容部3よりも小さい。即ちインキ導出部材5の外径は、インキ収容部3の外径の3分の1以下である。
インキ導出部材5は、多数の細い繊維が一体的に束ねられたものである。本実施形態で採用するインキ導出部材5は、ある程度の圧縮力に耐えるだけの剛性を持ち、両端を保持してある程度の圧縮力を加えても圧縮破壊や座屈を起こさない。
インキ導出部材5を構成する繊維は、インキ吸蔵体15よりも糸密度が高い。そのためインキ導出部材5はインキ吸蔵体15よりも強い毛細管力を発揮し得る。またインキ導出部材5吸収されたインキが外から見えるものである。
【0029】
本実施形態では、インキ導出部材5として繊維束を利用しているが、インキ導出部材5は繊維束に限定されるものではない。例えば筆記具やマーカのペン先チップとして利用される素材をそのままインキ導出部材5の素材に転用することができる。具体的には多孔質の焼結体(例えばマーカの焼結体チップ)や、細孔が形成された樹脂、紙、フェルト等を使用してインキ導出部材5を作ることができる。
いずれにしても、インキ導出部材5はインキ吸蔵体15よりも強い毛細管力を発揮し得るものであることが望ましい。
【0030】
プッシュ部材22は、細長い円柱形の部材である。プッシュ部材22の外径は、プッシュ部材収容部8の内径よりも小さい。プッシュ部材22は大半の部分が中実であるが、一端側に凹部20が設けられている。
【0031】
次にインキ吸蔵体15にしみ込ませたインキについて説明する。
インキは、溶剤に染料または顔料を混合したものであり、有色である。インキは、目的に応じて融点が所望の温度となる様に調整されている。
即ちインキの溶剤として、目的に応じた温度で融解する物が選択されている。
インキの溶剤は、限定されるものではなく、水を主体としたものやアルコールを主体としたもの、有機溶剤等が使用可能である。またこれらを適宜ブレンドしたり、塩化ナトリウム等の添加物を加え、モル凝固点降下を利用して融点を調整してもよい。
主な溶剤と、融点をまとめると
図15、
図16の表の通りである。
【0032】
次に本実施形態の感熱インジケータ1の組み立て構造について説明する。
本実施形態では、吸収体収容部7とプッシュ部材収容部8とが組み合わされて本体ケース2が形成され、当該本体ケース2内に収容空間6が形成されている。
そして収納空間6の一端側にインキ収容部3が内蔵されている。より具体的には本体ケース2の吸収体収容部7側にインキ収容部3が内蔵されている。
インキ収容部3の収容方向は、
図4の通りであり、封止部材(破壊予定部)16側がプッシュ部材収容部8側に向く姿勢に配置されている。
【0033】
そして本体ケース2の収容空間6内であって、インキ収容部3に対して直線的に隣接する位置にインキ導出部材5が配置されている。
さらにインキ導出部材5に対して直線的に隣接する位置にプッシュ部材22が配されている。プッシュ部材22は、凹部20が設けられている側が、本体ケース2の収容空間6内にあり、他端側は収容空間6の外に突出している。
即ちプッシュ部材収容部8は、両端が開放された筒体であり、開放端からプッシュ部材22が外に向かって突出している。
プッシュ部材22には図示しない突起があり、プッシュ部材22の突起がプッシュ部材収容部8の内フランジ17と係合するためプッシュ部材22が本体ケース2から抜けることはない。またプッシュ部材22の凹部20にインキ導出部材5の端部が係合している。
吸収体収容部7に設けられた窓部11は、インキ収容部3とインキ導出部材5の境界部分よりもプッシュ部材22側にあり、窓部11からインキ収容部3は見えない。
【0034】
本実施形態では、前記した様に、本体ケース2の収容空間6内にインキ収容部3と位置にインキ導出部材5がある。また本体ケース2の収容空間6内にプッシュ部材22の一部がある。
インキ収容部3、インキ導出部材5及びプッシュ部材22は、本体ケース2を介して一個の部材として纏まっている。即ちインキ収容部3、インキ導出部材5及びプッシュ部材22は、収容空間6内にあり、分解しない限り、これらを取り出すことはできない状態となっている。
インキ導出部材5及びプッシュ部材22は、本体ケース2内で軸方向に移動可能である。
【0035】
次に本実施形態の感熱インジケータ1の使用方法について説明する。
感熱インジケータ1は、
図4の様に、インキ収容部3に対して直線的に隣接する位置にインキ導出部材5が配置され、インキ導出部材5がインキ収容部3に突き刺さっていない状態で保管される。
【0036】
そして本実施形態の感熱インジケータ1は、使用直前にプッシュ部材22を押す。その結果、プッシュ部材22に押されてインキ導出部材5がインキ収容部3側に直線移動し、その先端がインキ収容部3の封止部材(破壊予定部)16と接触する。そしてさらにプッシュ部材22を押すと、インキ導出部材5がさらに前進し、
図5の様に先端が封止部材(破壊予定部)16を突き破ってインキ収容部3の中に入る。
ここでインキ収容部3の中にはインキ吸蔵体15が内蔵されているので、インキ導出部材5の先端がインキ吸蔵体15に差し込まれる。
そのためインキ導出部材5は、確実にインキ吸蔵体15内のインキと接する。
【0037】
そしてこの状態で、感熱インジケータ1を冷凍し、インキ吸蔵体15に吸収されたインキを凍結させる。
インキが凍結したら、感熱インジケータ1を温度履歴を知りたい物品(以下 被検知物品)に近くに置く。例えば、凍結状態の人工多能性幹細胞と共に断熱箱に入れる。あるいは冷凍肉塊のパックにテープ等で感熱インジケータ1を固定する。
【0038】
そして被検知物品を保管あるいは輸送する。
保管中や輸送中、被検知物品が所望の低温に保たれている場合は、感熱インジケータ1のインキ吸蔵体15に吸収されたインキも凍結状態を維持している。そのためインキはインキ導出部材5に導出されない。そのため感熱インジケータ1を取り出して、窓部11を見ても、インキによる着色は認められない。
なおプッシュ部材22を押してインキ収容部3の封止部材(破壊予定部)16を突き破り、インキ導出部材5をインキ吸蔵体15に差し込んだ直後から、インキが凍結するまで間は、いくぶんのインキがインキ導出部材5に導出される。しかしながら、本実施形態では、窓部11は、インキ導出部材5が差し込まれた基端部から離れた位置にあるから、インキが凍結するまでにインキ導出部材5に移って変色した部分は、外から見えない。そのため使用者がとまどうことはない。
【0039】
また保管中や輸送中に、周囲の温度が上昇し、被検知物品が所望の低温に保たれていなかった場合は、感熱インジケータ1のインキ吸蔵体15に吸収されたインキが溶融する。そしてインキ導出部材5の先端がインキ吸蔵体15に差し込まれており、インキ導出部材5は、溶融したインキ吸蔵体15と確実に接するから、インキ導出部材5がインキを導出する。その結果インキ導出部材5の窓部11から見える部分がインキによって変色する。そのため使用者は、被検知物品が所望の低温に保たれていなかったという事実を知る。
【0040】
また本実施形態の感熱インジケータ1では、インキがインキ吸蔵体15に吸収された状態である。そのため感熱インジケータ1の姿勢に係わらず、インキはインキ吸蔵体15内に略一様に分布している。
即ち感熱インジケータ1の姿勢がどの様に変わろうとも、インキはインキ吸蔵体15内に略一様に分布している。そしてインキ導出部材5は、インキ吸蔵体15に突き刺さっている。そのためインキ吸蔵体15内のインキが溶融して液化した際、そのときの感熱インジケータ1の姿勢に係わらず、インキがインキ導出部材5と接触し、インキ導出部材5に導出される。
そのため本実施形態の感熱インジケータ1は姿勢に係わらず正確に被検知物品の温度履歴を知ることができる。
【0041】
また
図8の様に、窓部11を複数個設けたり、
図9の様に窓部11の長さを長くすることによって、インキの導出量を知ることができる。そのため被検知物品が低温状態に維持されなかった時間や、その時の温度を大まかに知ることができる。
【0042】
また前記した実施形態では、窓部11は、本体ケース2の長手方向及び周方向の一部に形成されているが、本体ケース2の全周に渡る窓部11であってもよい。
図10乃至
図12に示す感熱インジケータ50では、本体ケース51の全周に渡る窓部52を有している。
図10乃至
図12に示す感熱インジケータ50では、本体ケース51は、
図11の様に吸収体収容部57とプッシュ部材収容部58と窓形成部60によって構成されている。窓形成部60は、吸収体収容部57とプッシュ部材収容部58との間に挟まれた位置にある。
吸収体収容部57とプッシュ部材収容部58は、不透明であるが、窓形成部60は透明な樹脂で作られている。
そのため窓形成部60から中のインキ導出部材5が透けて見える。
【0043】
感熱インジケータ50で採用するプッシュ部材61は、指当て部62と、軸部63によって構成されている。軸部63の一端65は外径が他の部位よりも大きく、プッシュ部材収容部58の内壁を摺動する。
感熱インジケータ50で採用するプッシュ部材61は、前記した実施形態と形状が異なるものの、機能は同一であり、本体ケース51内で軸方向に移動可能である。
本実施形態においても、使用直前にプッシュ部材61を押すことによってインキ導出部材5がインキ収容部3側に直線移動し、その先端がインキ収容部3の封止部材(破壊予定部)16と接触する。そしてさらにプッシュ部材61を押すと、インキ導出部材5がさらに前進し、
図12の様に先端が封止部材(破壊予定部)16を突き破ってインキ収容部3の中に入る。
【0044】
前記した実施形態の感熱インジケータ1は、棒状であって、ペンシル型とも言える形態であるが、本発明は、この形状に限定されるものではない。
例えば、シート状やカード状としてもよい。
図13、
図14に示す感熱インジケータ30は、カード状である。
感熱インジケータ30は、2枚の樹脂シート31a,31bによって本体部材32が形成されている。
一方の樹脂シート31aには、スライド用スリット35と、窓部36が形成されてい。る。
【0045】
2枚の樹脂シート31a,31bは、周囲の辺だけが接合されており、中央部分は接着されていない。そのため樹脂シート31の間に収納空間40があり、その中にインキ吸蔵体33と、インキ導出部材37及びプッシュ部材38が内蔵されている。
プッシュ部材38は、一端がインキ導出部材37と係合している。またプッシュ部材38の一部がスライド用スリット35と係合し、直線方向にのみ移動する様にガイドされている。プッシュ部材38の一部は、スライド用スリット35から露出している。
【0046】
本実施形態の感熱インジケータ30についても使用直前にプッシュ部材38を押し、インキ導出部材37を前進させてインキ導出部材37の一部をインキ吸蔵体33の中に差し込む。
【0047】
以上説明した実施形態は、いずれもプッシュ部材22,38を有しているがプッシュ部材22,38は、必須ではない。即ち使用者が手で直接インキ導出部材5,37を移動させてインキ吸蔵体15,33の中に差し込んでもよい。
【0048】
また以上説明した実施形態は、インキ導出部材5,37を移動させてインキ吸蔵体15,33の中に差し込む例を示したが、インキ吸蔵体15,33を移動させてインキ導出部材5,37をインキ吸蔵体15,33の中に差し込んでもよい。
すなわちインキ導出部材5,37にインキ吸蔵体15,33を差し込む構成も可能である。