特許第6391391号(P6391391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391391
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】外装部材の取付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   B60R13/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-196461(P2014-196461)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-68585(P2016-68585A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】冨田 春樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一夫
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−132432(JP,A)
【文献】 特開2003−063321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装本体に一体に形成された取付け部を有し、該取付け部に装着されたクリップ部材を介して前記外装本体を固定部材に取り付けるようにした外装部材の取付け構造において、
前記取付け部は、前記外装本体に続いて前記固定部材側に突出する一対の突出壁部と、該両突出壁部の突出端同士を一体に連結すると共に前記クリップ部材が装着される装着凹部が形成された連結壁部と、前記装着凹部の反対側に位置し、前記両突出壁部及び連結壁部と前記外装本体とで囲まれた開口部を閉塞するように形成された接続壁部とを有し、
該接続壁部の外装本体側端部の、中央部は前記外装本体に一体的に接続された接続部となっており、該接続部と前記一対の突出壁部との間の部分には前記外装本体との間に所定の隙間を有する非接続部が形成されており、
前記接続部の幅寸法は、前記開口部の開口幅の1/3〜1/2に設定されている
ことを特徴とする外装部材の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の意匠部品として使用される外装部材の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等においては、意匠面を有する樹脂製ガーニッシュ(外装部材)に取付け部を一体形成し、該取付け部にクリップ部材を装着してガーニッシュをピラー等の車体部材(固定部材)に取り付ける場合がある。
【0003】
ところで、前記取付け部を有するガーニッシュを樹脂成形する場合、該ガーニッシュの意匠面にひけが発生し易く、見栄えが悪化するという問題がある。このようなひけの発生を防止するために、例えば、特許文献1には、左,右の縦壁部5,5とクリップ着座部7とで形成された開口部11aに中間支持部17を設けることで、取付け部に樹脂原料がスムーズに流れるようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−21824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の特許文献1の構造では、ひけの発生は抑制できるものの、クリップ着座部7に対する中間支持部17の接続面積が小さいことから、例えばクリップ部材を引き抜く方向に対する強度が低く、樹脂成形時における樹脂材料の合流点に生じるいわゆるウェルドラインを起点とした割れが発生するという懸念がある。即ち、前記従来構造では、中間支持部17を開口部11aから外方に延長した場合にはピラートリム1との接続面積は増やせるものの、内方への延長にはクリップ19に干渉することから限界があり、結局、着座部7との接続面積を大きくできない。その結果、中間支持部17からクリップ着座部7に流れる樹脂原料量も制約され、ウェルドラインが中間支持部17の近傍に形成され易く、強度低下による割れが生じ易くなっている。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、ひけの発生による見栄えの悪化防止と、外力に対する強度低下による割れ防止との両立を図ることができる外装部材の取付け構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外装本体に一体に形成された取付け部を有し、該取付け部に装着されたクリップ部材を介して前記外装本体を固定部材に取り付けるようにした外装部材の取付け構造において、
前記取付け部は、前記外装本体に続いて前記固定部材側に突出する一対の突出壁部と、該両突出壁部の突出端同士を一体に連結すると共に前記クリップ部材が装着される装着凹部が形成された連結壁部と、前記装着凹部の反対側に位置し、前記両突出壁部及び連結壁部と前記外装本体とで囲まれた開口部を閉塞するように形成された接続壁部とを有し、該接続壁部の外装本体側端部の、中央部は前記外装本体に一体的に接続された接続部となっており、該接続部と前記一対の突出壁部との間の部分には前記外装本体との間に所定の隙間を有する非接続部が形成されており、前記接続部の幅寸法は、前記開口部の開口幅の1/3〜1/2に設定されている
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る取付け構造によれば、 外装本体にやぐら形状をなすよう一体に形成された一対の突出壁部及び連結壁部と外装本体とで囲まれた開口部を接続壁部で閉塞し、該接続壁部の外装本体への接続部と一対の突出壁部との間に、外装本体との間に所定隙間を有する非接続部を形成したので、以下の作用効果が得られる。
【0009】
前記接続壁部の、外装本体に接続される接続部と両突出壁部との間に所定隙間を設けたので、コーナー部でのひけの発生を防止でき、意匠面における見栄えの悪化を回避できる。
【0010】
また前記取付け部を一対の突出壁部及び連結壁部を接続壁部により接続部を介して外装本体に接続したので、該外装本体を取り付けたり,取り外したりする際の外力に対する強度を高めることができる。これにより前記ひけによる見栄えの悪化と、外力に対する強度低下との両方を改善することができる。即ち、外装本体から各突出壁部を介して連結壁部に流れる樹脂原料と、前記接続部を通って接続壁部から連結壁部に流れる樹脂原料との合流点をコントロールすることが可能となり、ひいてはウェルドラインを連結壁部の中心部からずらすことが可能となり、割れの発生をより確実に防止することができる。
【0011】
そして本発明では、前記接続壁部の外装本体側端部の中央部に接続部を形成したので、従来の開口部に中間支持部を設ける場合に比べて、接続壁部と突出壁部,連結壁部及び外装本体との接続面積を大きくすることができ、ひけ防止と強度低下の防止との両立をより確実に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1による自動車のフロントピラー部の斜視図である。
図2】前記フロントピラー部に配設されたピラーガーニッシュの車外側から見た側面図である。
図3】前記ピラーガーニッシュの断面図(図2のIII-III線断面図)である。
図4】前記ピラーガーニッシュの取付け部の断面図(図2のIV-IV線断面図)である。
図5】前記取付け部の斜視図である。
図6】前記取付け部の図(図5の矢印a視,図5のb-b線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による外装部材の取付け構造を説明するための図である。本実施例において、前,後,左,右とは、車両の前進方向に見た状態での前,後,左,右を意味する。
【0015】
図において、1は自動車のフロントピラー部を示している。このフロントピラー部1は、ドア開口前縁部を形成する左,右のフロントピラー2,2と、該左,右のフロントピラー2に開閉可能に支持されたフロントドア3,3と、前記左,右のフロントピラー2の間に配設されたフロントガラス4とを有する。なお、8はルーフを示しており、9はフードを示している(図1参照)。
【0016】
前記フロントピラー2は、ピラーアウタ2aとピラーインナ2bとの前フランジ部2c同士及び後フランジ部2d同士をスポット溶接により結合することにより角筒状の閉断面を形成した構造を有する。
【0017】
前記フロントピラー2の前フランジ部2cには、前記フロントガラス4の左,右側縁部4aがシール部材5を介して取り付けられており、前記後フランジ部2dには固定窓ガラス6の前縁部6aがシール部材7を介して取り付けられている。
【0018】
前記フロントピラー2(固定部材)のピラーアウタ2aの車外側には樹脂製のピラーガーニッシュ(外装部材)10が配設されている。また前記ピラーインナ2bの車内側には樹脂製のガーニッシュ11が配設されている(図3図4参照)。
【0019】
前記ピラーガーニッシュ10は、前記フロントガラス4の側縁部4aに沿う上下長さを有し、かつ該側縁部4a及び固定窓ガラス6の前縁部6aを覆う前後長さを有する帯状をなしている。
【0020】
前記ピラーガーニッシュ10は、意匠面Aを有するガーニッシュ本体(外装本体)14と、該ガーニッシュ本体14の内表面Bに長手方向に所定間隔をあけて一体に接続形成された4つの取付け部15とを有する。
【0021】
前記ピラーガーニッシュ10は、前記各取付け部15に装着されたクリップ部材16を介して前記ピラーアウタ2aに着脱可能に固定されている。この各取付け部15は、クリップ部材16の挿入方向cがそれぞれ異なった方向に向くよう配置されている(図2参照)。具体的には、上2つが車両下方に設定され、3つ目が後方に、4つ目は上方に設定されている。また前記各取付け部15は何れも略同様の構造であるので、上から2つ目の取付け部について以下、詳細に説明する。
【0022】
前記クリップ部材16は、前記取付け部15に装着されるクリップ本体17と、該クリップ本体17が固定される固定筒部18とを有する。この固定筒部18は、前記ピラーアウタ2aに形成された取付け孔2eの周縁を挟持することにより固定されている。
【0023】
前記クリップ本体17は、前記取付け部15の後述する装着凹部15cに装着される円盤状の装着部17aと、該装着部17aに一体に形成されたピン部17bとを有する。
【0024】
前記クリップ本体17の装着部17aを取付け部15に装着した状態で、ピン部17bを固定筒部18内に押し込むことにより、該ピン部17bの切欠き部17cに固定筒部18の下端18aが弾性変形して係合する。このようにしてピラーガーニッシュ10をピラーアウタ2aに取り付ける。
【0025】
前記取付け部15は、主として図5図6に示すように、前記ガーニッシュ本体14の内表面Bに、これに続いて前記ピラーアウタ2a側に突出する一対の前,後の突出壁部15a,15aと、該前,後の突出壁部15aの突出端同士を一体に連結する連結壁部15bと、該連結壁部15bに切欠き形成され、前記クリップ本体17が装着される装着凹部15cと、該装着凹部17cの開口反対側の前記前,後の両突出壁部15a,15a及び連結壁部15bと前記ガーニッシュ本体14とで囲まれた上開口部15dを閉塞するように形成された接続壁部15eとを有する。
【0026】
前記前,後の突出壁部15aのガーニッシュ本体14との接続部分は、他の部分より薄肉に形成されており、これにより意匠面Aに樹脂成形時に生じる収縮凹部、つまりひけが生じるのを防止している。
【0027】
前記装着凹部15cは、前記クリップ本体17の装着部17aが挿入固定される挿入固定孔15fと、該挿入固定孔15fに続いて前記上開口部15dの反対側にV字状をなすよう拡開し、前記装着部17aを挿入固定孔15fに案内するガイド溝15gとを有する。
【0028】
そして前記接続壁部15eのガーニッシュ本体14側端部の、一対の突出壁部15a,15a間中央部は、前記ガーニッシュ本体14に接続される接続部15hとなっており、また該接続部15hと前記突出部15a,15a間部分には、前記ガーニッシュ本体14との間に隙間sを有する非接続部15h′,15h′が形成されている。前記接続部15hは、薄肉部15iを介して前記ガーニッシュ本体14に接続されており、これによりひけの発生を防止している。
【0029】
前記接続部15hは、これの幅寸法w1が前記開口部15dの開口幅wの1/3〜1/2程度となるよう設定されている(図6(a)参照)。具体的には、開口幅wが20mmに対して幅寸法w1は6〜10mmに設定されている。
【0030】
本実施例によれば、ガーニッシュ本体14に一体に形成された取付け部15を、やぐら形状をなすよう形成された一対の突出壁部15a,15a及び連結壁部15bとガーニッシュ本体14とで囲まれた開口部15dを閉塞するように接続壁部15eを形成し、さらに該接続壁部15eをガーニッシュ本体14に接続される接続部15hと、該ガーニッシュ本体14との間に所定隙間sを設けて形成された非接続部15h′,15h′とで構成したので、以下の作用効果が得られる。
【0031】
前記接続壁部15eにガーニッシュ本体14に接続される接続部15hと、ガーニッシュ本体14との間に隙間sを有する非接続部15h′,15h′を設けたので、ひけが生じ易いコーナー部でのひけの発生を防止することができ、意匠面Aの見栄えの悪化を回避できる。
【0032】
また前記取付け部15を前,後の突出壁部15a,15a及び連結壁部15bを接続壁部15eでガーニッシュ本体14に接続したので、該ガーニッシュ本体14をフロントピラー2に取り付けたり,取り外したりする際の外力に対する強度を高めることができ、ひいてはひけによる見栄え悪化の防止と、外力に対する強度低下の防止との両立を図ることができる。特に本実施例のピラーガーニッシュ10は、車外側に配置されていることから、目立ち易く、かつ手押しによる外力を受け易いことから、前記構成とすることの効果は大きい。
【0033】
詳細には、例えば、前,後の突出壁部15a,15aのみガーニッシュ本体14に接続されている構造とした場合は、樹脂成形時に、突出壁部15a,15aを介して連結壁部15bに流れる樹脂原料f1,f2が連結壁部15bの中心部pで合流し、該中心部pに前記両樹脂原料f1,f2が合流結合することで生じるいわゆるウェルドラインが形成され易く、該中心部pは装着凹部15cの存在により最も幅狭となっていることから強度低下を招くといった問題が生じる。
【0034】
これに対して本実施例では、図5に示すように、ガーニッシュ本体14から前,後の突出壁部15aを介して連結壁部15bに流れる樹脂原料f1,f2に対して、前記接続部15hを通って接続壁部15eから連結壁部15bに流れる樹脂原料f3が合流することから、両者の合流点が前記中心部pからずれることとなり、従って前記合流によるウェルドライLが連結壁部15bの前記中心部pからずれた部位に形成されることとなり、強度が向上し、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0035】
さらに本実施例では、前記接続壁部15eに、一対の突出壁部15a,15a間方向に延びる接続部15hを形成したので、従来の開口部を内外に股がるように中間支持部を設ける場合に比べて、接続部15hから接続壁部15eを介して連結壁部15bに連なる接続面積をコントロールすることができる。即ち、接続部15hの幅寸法w1を適宜設定することにより、樹脂原料の合流点であるウェルド形成位置をコントロールすることが可能となり、ひいては割れが発生し難い位置にウェルドを設定することができる。
【0036】
なお、前記実施例では、フロントピラー2の車外側にピラーガーニッシュ10を配設した場合を説明したが、本発明は、車内側に配設されたガーニッシュ11にも適用できる。また本発明の外装部材は、ピラーに限られることなく、例えばルーフガーニッシュ,ドアトリム等にも勿論適用できる。
【符号の説明】
【0037】
2 フロントピラー(固定部材)
10 ピラーガーニッシュ(外装部材)
14 ガーニッシュ本体(外装本体)
15 取付け部
15a 突出壁部
15b 連結壁部
15c 装着凹部
15d 開口部
15e 接続壁部
15h 接続部
15h′ 非接続部
16 クリップ部材
s 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6