【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1に係る刈込鋏Sは、
図1に示すように、刈込鋏Sの保持及び操作を行うための操作部1と、該操作部1の前方に配置され、切断機能を発揮する刈込刃部2とを備えている。
【0024】
刈込刃部2は、複数の固定刃30を有する固定刃部3と、前記固定刃3との協働により被切断対象物を切断するための可動刃4と、該可動刃4を動作させるための第一連結杆5aを備えている。
【0025】
前記固定刃部3は、長手方向に連続する長尺の固定板31に一定の間隔で複数の固定刃30を列設した構成である。尚、本実施例における各固定刃30の間隔(ピッチP)は35mmとしている。
各固定刃30間には、可動刃4の枢軸20となるリベットを取付けるための軸穴34を設けてある。各固定刃30は、
図1において示すように、正面視V字状の刃部32を備えている。当該V字状の刃部32のうち、刈込刃部2の前方側の刃部32a、後方側の刃部32bのいずれにおいても直線刃、即ち直線輪郭を有する刃としている。
また、各固定刃30の基端側の一部には、当該刈込刃部2の強度を保持しつつ軽量化するための穴部33を備えている。
【0026】
可動刃4は、
図1において示すように、前方側の刃部41a及び後方側の刃部41bを有する刃部41を備えている。当該前方側の刃部41a及び後方側の刃部41bはいずれも凸状の曲線刃R、即ち両端に対して中央が凸となる曲線輪郭を有する刃である。本実施例1における当該各凸状の曲線刃Rの曲率半径は100mmとしている。
また、可動刃4の長手中央位置近傍には可動刃側軸穴42を備えている。一方、可動刃4の基端側には前記第一連結杆5aと連結するための連結部40を備えている。
当該連結部40には、第一連結杆5aとの相対的な可動状態を確保するための連結軸穴43を設けてある。
【0027】
第一連結杆5aは前記固定刃部3の固定板31と略平行に配置される。当該第一連結杆5aには、その先端50側から前記可動刃4の連結軸穴43に対応する取付穴52を列設してある。
また第一連結杆5aの後端51側には、二箇所に後端側取付穴を設けてある。
【0028】
操作部1は、本体部11と、該本体部11の前後に配置される把持部10(後方側を第一把持部10a、前方側を第二把持部10bとする。)を備えている。前記本体部11内には、図示されない電動機である駆動部110とこれに連動するカム機構と、該カム機構に連結される第二連結杆5bを備えている。
第二連結杆5bは、先端53側の二箇所に先端側取付穴を備え、図示されない後端側にはカム機構と連結するための取付用長穴を備えている。
【0029】
前記第二連結杆5bは、前記取付用長穴を用いて後端側を、カム機構と連結している。
また、本体部11の前方に設けたガイド筒12を通して前方へ前記先端53を突出させ、前記第一連結杆5aの後端側取付穴と第二連結杆5bの先端側取付穴を螺子及びナットで連結している。これによって、前記第一連結杆5aの前記後端51と第二連結杆5bの先端53を連結して、連結杆5を構成している。
【0030】
前記ガイド筒12の周囲には、前記第二把持部10bが取付けられる。
また当該ガイド筒12の先端側には、固定刃部3の後端部35を取付けるための固定刃取付部材6を設けている。固定刃固定部材6は、固定刃部3の後端部35に螺子及びナットを用いて固着される。
【0031】
上記構成において、固定刃30間の軸穴と可動刃4の可動刃側軸穴42とを一致させてリベットにより枢軸20を形成する。また、第一連結杆5aの取付穴と可動刃4の連結軸穴43とを一致させてリベットにより連結軸21を構成する。
【0032】
上記操作部1に設けたスイッチ100をONにすることによって、電力の供給を受けた駆動部110が動作し、前記図示されないカム機構によって第二連結杆5b及び第一連結杆5aが前後に往復動する。これに伴って、固定刃30間において可動刃4が前記枢軸20を中心として揺動し、固定刃30と可動刃4との間に差し込まれた草葉や枝等の被切断対象物を切断する。
【0033】
本実施例1に係る刈込鋏Sによれば、連結杆5の往復動のいずれのタイミングにおいても、直線刃Dを有する固定刃30と凸状の曲線刃Rとの組み合わせによって前記草葉や枝等の被切断対象物を切断する。
そして、凸状の曲線刃Rが特に太い枝や固い枝で切断に困難性が生じた場合には、当該切断困難な枝等が凸状の曲線刃Rに沿って外方へ逃げやすくなり、また固定刃30の直線刃も当該逃げを殆ど阻害することないから、結果として当該切断困難な枝が凸状の曲線刃Rに沿って外方へ逃がしてロックを防止する。
また、切断可能な太さや固さの枝であれば、直線刃Dで不必要に逃げを生じさせず、高い確実性をもって、当該被切断対象物を切断できる。
【0034】
尚、本実施例1では上記したように、凸状の曲線刃Rの曲率半径を100mmとしている(
図2中「R100」で指示。)。当該凸状の曲線刃Rの曲率半径は80mm程度であっても性能は発揮できるものの、曲率半径を小さくすると、草葉や細い枝の切断は良好に切断できる。一方で、太い枝等に対して切断が若干行い難くなる傾向を生じる。曲率半径が80mm未満となると、この傾向が大きくなり、実用性に欠ける傾向が大きくなる。また、凸状の曲線刃Rの曲率半径を150mmとすると、被切断対象物の外方への逃げは低減されるが、草葉や細い枝の切断を良好とする曲線刃Rの特性が低下する。凸状の曲線刃Rの曲率半径が150mmを超えると直線刃との微差となり、曲線刃Rの実用性に欠ける傾向が大きくなる。従って、凸状の曲線刃Rの曲率半径は、80mm〜150mmとすることが望ましい。
【実施例2】
【0035】
次に本発明の実施例2に係る刈込鋏Sは、基本構成は、上記実施例1に係る刈込鋏Sと共通するものである(
図3参照。)。このため同一の構成部分についての説明は省略し、上記実施例1に準ずるものとする。本実施例2に係る刈込鋏Sは、実施例1と比較し、凸状の曲線刃Rを有する可動刃4について、その前方側の刃部41aと後方側の刃部41bの曲率半径を異なるものとし、更に、前方側に面する刃部41bの曲率半径が、後方側に面する刃部41bの曲率半径よりも大きい構成としたものである。より具体的には、本実施例2における各可動刃4は、前方側に面する凸状の曲線刃R1の曲率半径は150mmとし、後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率半径は100mmとしている。固定刃30の刃部は、実施例1と同様に直線刃としており、各固定刃30の間隔(ピッチP)は35mmとしている。
【0036】
本実施例2に係る刈込鋏Sによれば、連結杆5を前方側へ押すことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における後方側の刃部41bと固定刃30における前方側の刃部32aによる切断を行う際には、可動刃4が切断時に受ける抗力によって前記連結杆5が撓み、可動刃4による切断力が逃され、太い枝等をロックし易いものであるところ、前記可動刃4の後方側の曲率半径を小さくした凸状の曲線刃R2によって、より太い枝等を逃しやすくして、連結杆5の撓みを抑制し、ロックを大幅に低減する。
【0037】
また、連結杆5を後方側へ引くことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における前方側の刃部41aと固定刃30における後方側の刃部32bによる切断を行う際には、連結杆5の撓みは生じないため、可動刃4におけるより大きな曲率半径の刃部を利用して太い枝等であっても切断をより良好とするものである。
刈込鋏Sの連結杆5は高速(例えば、数千往復/分)で往復動するから、上記各作用効果を厳密には交互で発揮するのであるが、事実上は上記の押方向、引方向の各作用効果を兼備するように被切断物を効率良く切断することができる。
【0038】
尚、本実施例2では上記したように、前方側に面する凸状の曲線刃R1の曲率半径は150mmとし、後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率半径は100mmとしているが、後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率は、これに限定されるものではなく、例えば、凸状の曲線刃R2の曲率半径は80mm程度であっても性能は発揮できる。一方で、太い枝等に対して切断が若干行い難くなる傾向を生じる。曲率半径が80mm未満となると、この傾向が大きくなり、実用性に欠ける傾向が大きくなる。このため後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率半径は前方側に面する凸状の曲率半径よりも小さいことを条件として、80mm以上150mm未満であることが望ましい。他方、同様の理由から、前方側に面する凸状の曲線刃R1の曲率半径は、後方側に面する凸状の曲線刃R2より大きい曲率半径であることを条件として、80mmを超えて150mm以下であることが望ましい。
【実施例3】
【0039】
次に本発明の実施例3に係る刈込鋏Sは、基本構成は、上記実施例1に係る刈込鋏Sと共通するものである(
図5参照。)。このため同一の構成部分についての説明は省略し、上記実施例1に準ずるものとする。本実施例3に係る刈込鋏Sは実施例1の可動刃4と比較して、可動刃4における前方側に面する刃部41aを直線刃Dとした構成である。
後方側に面する刃部は、実施例1と同様に曲線刃Rとし、当該曲線刃Rの曲率半径は100mmとしている。また、固定刃30の刃部は、実施例1、2と同様に直線刃としており、各固定刃30の間隔(ピッチP)は35mmとしている。
【0040】
上記実施例3に係る発明の構成によれば、連結杆5を前方側へ押すことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における後方側の刃部41b(曲線刃R)と固定刃30における前方側の刃部32a(曲線刃R)による切断を行う際には、可動刃4が切断時に受ける抗力によって前記連結杆5が撓み、可動刃4による切断力が逃され、太い枝等をロックし易いものであるところ、前記可動刃4の後方側の凸状の曲線刃Rによって、より太い枝等を逃しやすくして、連結杆5の撓みを抑制し、ロックを大幅に低減する。
【0041】
また、連結杆5を後方側へ引くことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における前方側の刃部と固定刃30における後方側の刃部による切断を行う際には、連結杆5の撓みは生じないため、直線刃を利用して太い枝等であっても切断をより良好とするものである。
【0042】
また、本実施例1、2及び3に係る刈込鋏のいずれにおいても、上記の通り第一連結杆5aと第二連結杆5bを接続した構成で、駆動部110とカム機構を介して連結した構成であるため、刈込鋏Sの重量バランスは後方側(把持部側)に重量が偏り、当該刈込鋏Sの前方側が軽量となるから、切断作業時において、刈込刃部2を軽く動かすことができる構成を確保できる。
【0043】
また、本実施例1、2及び3に係る刈込鋏Sのいずれにおいても、上記の通り固定刃30の基端側の一部に、当該刈込刃部2の強度を保持しつつ軽量化するための穴部を備えているため、上記の重量バランスにおいて、更に前方側が軽量化され、切断作業時における刈込刃部2の取り扱い性能を更に良好とすることができる。
【0044】
また、本実施例1、2及び3に係る刈込鋏Sはいずれも電動機を動力源としているが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば原動機等の他の動力源を用いるものとすることもできる。またいずれの実施例に係る刈込鋏Sにおいても、連結杆3は第一連結杆5a及び第二連結杆5bを連結したものとしているが、単独の連結杆3とするものであってもよいし、3本以上の連結杆を繋ぎ合わすものでもよい。
【0045】
また、本発明は上記実施例1、2、3に係る刈込鋏Sはいずれも各固定刃間の距離(ピッチP)を35mmとしているが、上記各実施例に準じて、変更することができる。また前記ピッチPの変更に対応して曲線刃R若しくは曲線刃R1、曲線刃R2の曲率半径も変更することができる。例えば、各固定刃間の距離を40mmに変更した場合には、曲線刃Rの曲率半径は80mmであっても刃元に枝が入りやすくなるため、より太い枝の切断を可能とすることができる。一方、連結杆のストロークを同一としたままで、各固定刃の間隔(ピッチP)を30mmから40mmに変更すると、枢軸20から連結軸21までの距離(軸間距離L)を短く設定する必要性が生じるため、これに伴って切断力が若干減少する。このため、対象となる太さの枝を設定した上で、上記各実施例等に準じて、刃元への枝の導入性能と切断力をバランスさせて、各部の寸法を設定することができる。
【0046】
また、本発明においては、刈込鋏の操作部の形状、構造、組み合わせについて、種々の公知技術やその応用技術を利用できる。例えば、把持部はモーターの前後に配置するものに限らず、いずれか一方であってもよい。