特許第6391409号(P6391409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6391409-刈込鋏 図000002
  • 6391409-刈込鋏 図000003
  • 6391409-刈込鋏 図000004
  • 6391409-刈込鋏 図000005
  • 6391409-刈込鋏 図000006
  • 6391409-刈込鋏 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391409
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】刈込鋏
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/04 20060101AFI20180910BHJP
   A01G 3/047 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A01G3/04 501B
   A01G3/047
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-209297(P2014-209297)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-77173(P2016-77173A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011578
【氏名又は名称】アルスコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘朗
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−153125(JP,A)
【文献】 実開平02−105329(JP,U)
【文献】 特開昭53−033846(JP,A)
【文献】 実開昭48−049121(JP,U)
【文献】 特開平10−248383(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0174414(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/00−3/08
B26B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に列設される固定刃と、該固定刃間に配置され前方側及び後方側の夫々に刃部を有する可動刃とを備え、各可動刃は、固定刃に対する動軸を備え、且つ当該可動刃の基端側には連結杆との連結軸を備え、連結杆の長手方向への往復動によって前記可動刃が前記動軸を中心として動する刈込鋏において、
固定刃は字を形成する直線刃とし、且つ、可動刃は少なくとも後方側に面する刃部が凸状の曲線刃としたことを特徴とする刈込鋏。
【請求項2】
可動刃の刃部は前方側及び後方側の双方が凸状の曲線刃であることを特徴とする請求項1記載の刈込鋏。
【請求項3】
前方側に面する刃部の曲率半径が、後方側に面する刃部の曲率半径よりも大きいものとしたことを特徴とする請求項2記載の刈込鋏。
【請求項4】
可動刃のうち前方側に面する刃部は直線刃であることを特徴とする請求項1記載の刈込刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力式の刈込鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の固定刃と可動刃を列設し、可動刃の基端側を前後動可能な連結杆に枢着し、各固定刃間で可動刃が往復動することによって、前記固定刃及び可動刃間に導入される多数の枝等を連続的に切断できる動力式の刈込鋏が一般に使用される。
【0003】
一般に複数の固定刃及び可動刃を列設した構成を有する刈込鋏は、特に種々の草や太さの異なる枝等が混在した状況下の切断に用いられる。このため多くの場合、刈込鋏には種々の被切断対象物を一度に切断できる性能が要求される。
【0004】
従来の刈込鋏における固定刃及び可動刃は、夫々V字形状の刃部を備えており、当該固定刃及び可動刃の間に導入した枝が逃げることがあった。このような事態を防止すべく、枝を逃さないようにするための構成を備えた刈込刃として、揺動刃の横巾より広い切り込み部を連続形成した形の固定刃と、円弧状の凸部が両外側に位置し先端側に向けて先細り状となり、かつ、表側から片刃状の刃付け部を形成した揺動刃からなり、固定刃における切り込み部の中程位置に、揺動刃を揺動自在の状態として取り付け、固定刃の基部を動力機に取り付けるとともに、動力機からの前後移動出力を各揺動刃に連伝させた刈込鋏が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、固定枠体に一定間隔をおいて平行に固定した各受刃体の側縁に鋸歯状刻みを形成し、各受刃体に対し横方向に往復動する取付杆に一定間隔をおいて固定した動刃体を前記受刃体の下面に近接して往復動するように設け、各動刃体の先端を前記受刃体の先端より前方に突出するように形成するとともに、動刃体が稼働して受刃体に近接する際に動刃体の基部側が先行するように動刃体の基部側から先端側にかけてその側部刃縁を湾曲状に形成したことを特徴とするレシプロ式刈取装置が公知である(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−248383号
【特許文献2】実開昭48−49121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1は固定刃が揺動刃の横巾より広い切り込み部を連続形成した形としてあるため、導入した枝が逃げることを防止する効果が得られるものであった。
しかしながら、特に太い枝や固い枝等を導入した場合には、切断動作が停止して切断不能となるロックの頻度の増加を生じやすいものとなる。当該ロックが発生するとその際に発生する刈込鋏本体への衝撃によって軸ピン(リベット等)の折損や、可動刃を動作させるための連結杆の変形等を招来する。
またこのような不具合が生じない場合であってもロックが発生すると、その都度噛みこんだ枝等を外さなければならず、作業の手間は非常に大きく、快適に作業を行い難いものであった。
【0008】
また上記特許文献2に係るレシプロ式刈取措置においても、受刃体に鋸歯が形成されていることによって、枝に対して当該鋸歯が食い込むことで上記特許文献1と同様に、導入した枝が逃げることを防止する効果が得られるものであった。しかしながら、特許文献1と同様に、特に太い枝や固い枝等を導入した場合には、当該鋸歯が食い込んで切断ができない状態でロックするため、当該レシプロ式刈取装置の電源をOFFにして、同様の作業を行う必要が生じる物であった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、枝等の噛み込んだ状態でのロックを低減でき、且つ、十分な切断機能を発揮できる刈込鋏の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【0010】
また、動力式の刈込鋏は、連結杆が前方側へ押す方向に動作する際、即ち、可動刃における後方側に面した刃部とこれに協働する固定刃によって枝等を切断する際には、前記連結杆の前方側へ押す方向の動作によって当該連結杆が撓みやすく、後方側へ引く方向の動作と比較してよりロックを生じやすくなるところ、当該状況を改善できれば、更にロックの低減をできると考えられる。このため、本発明は、上記した枝等の噛み込んだ状態でのロックを低減でき、且つ、十分な切断機能を発揮できることに加えて、更に連結杆の動作に応じてロックを低減できる、より動作の安定性の高い刈込鋏の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本請求項1に係る発明は、長手方向に列設される固定刃と、該固定刃間に配置され前方側及び後方側の夫々に刃部を有する可動刃とを備え、各可動刃は、固定刃に対する動軸を備え、且つ当該可動刃の基端側には連結杆との連結軸を備え、連結杆の長手方向への往復動によって前記可動刃が前記動軸を中心として動する刈込鋏において、固定刃は字を形成する直線刃とし、且つ、可動刃は少なくとも後方側に面する刃部が凸状の曲線刃としたことを特徴とする刈込鋏を、課題を解決するための手段とする。
【0012】
本請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明の構成を前提として、可動刃の刃部は、前方側の刃部及び後方側の刃部の双方が凸状の曲線刃であることを特徴とする刈込鋏を、課題を解決するための手段とする。
【0013】
本請求項3に係る発明は、上記請求項2に係る発明の構成を前提として、前方側に面する刃部の曲率半径が、後方側に面する刃部の曲率半径よりも大きいものとしたことを特徴とする刈込鋏を、課題を解決するための手段とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、上記請求項1に係る発明の構成を前提として、可動刃のうち前方側に面する刃部は直線刃であることを特徴とする刈込鋏を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る刈込鋏によれば、長手方向に列設される固定刃と、該固定刃間に配置され前方側及び後方側の夫々に刃部を有する可動刃とを備え、各可動刃は、固定刃に対する動軸を備え、且つ当該可動刃の基端側には連結杆との連結軸を備え、連結杆の長手方向への往復動によって前記可動刃が前記動軸を中心として動する刈込鋏において、固定刃は字を形成する直線刃とし、且つ、可動刃は少なくとも後方側に面する刃部が凸状の曲線刃としたことから、連結杆が前方側へ押す方向に動作する際、即ち、可動刃における後方側に面した刃部とこれに協働する固定刃によって枝等を切断する際に、前記連結杆の前方側へ押す方向えの動作によって当該連結杆が撓みやすい状態にあるところ、枝等が逃れやすい凸状の曲線刃を用いることで、通常の枝等の切断を可能とすることに加えて、切断し難い太い枝等を容易に逃すことができ、これによってロックの発生を大幅に低減することができる。
【0016】
請求項2に係る刈込鋏によれば、上記請求項1に係る発明の構成を前提として、可動刃の刃部は、前方側の刃部及び後方側の刃部の双方が凸状の曲線刃であるものとしたことから、通常の切断機能を備える直線刃と、当該直線刃よりも太い枝等をより逃しやすい凸状の曲線刃とを組み合わせた切断によって、特に太い枝等が噛み込んだ場合には、凸状の曲線刃が切断を行いながら当該太い枝等を逃すように作用する。このため、ロックの発生を抑制する効果が得られ、切断作業を続行できる。
【0017】
請求項3に係る刈込鋏によれば、上記請求項2に係る発明の構成を前提として、可動刃の刃部うち前方側に面する刃部の曲率半径が、後方側に面する刃部の曲率半径よりも大きいものとした刈込鋏としたことから、連結杆が前方側へ押す方向に動作する際、即ち、可動刃における後方側に面した刃部とこれに協働する固定刃によって枝等を切断する際には、前記連結杆の前方側へ押す方向えの動作によって当該連結杆が撓みやすい状態にあるところ、より曲率半径が小さく枝等が逃れやすい凸状の曲線刃を用いることで、通常の枝等の切断を可能とすることに加えて、切断し難い太い枝等を容易に逃すことができ、これによってロックの発生を大幅に低減することができる。
【0018】
そして、連結杆の後方側へ引く方向に動作する際、即ち、可動刃における前方側に面した刃部とこれに協働する固定刃によって枝等の被切断物を切断する際には、前記連結杆の後方側へ引く方向への動作によって当該連結杆に撓みを生じ難い状態にあるところ、より曲率半径が大きく枝等が逃げにくい凸状の曲線刃を用いることで当該枝等を良好に切断できる。
【0019】
請求項4に係る刈込鋏によれば、上記請求項1に係る発明の構成を前提として、可動刃のうち前方側に面する刃部は直線刃である刈込鋏としたことから、連結杆が前方側へ押す方向に動作する際、即ち、可動刃における後方側に面した刃部とこれに協働する固定刃によって枝等を切断する際には、前記連結杆の前方側へ押す方向えの動作によって当該連結杆が撓みやすい状態にあるところ、枝等が逃れやすい凸状の曲線刃を用いることで、通常の枝等の切断を可能とすることに加えて、切断し難い太い枝等を容易に逃すことができ、これによってロックの発生を大幅に低減することができる。
【0020】
そして、連結杆の後方側へ引く方向に動作する際、即ち、可動刃における前方側に面した刃部とこれに協働する固定刃によって枝等の被切断物を切断する際には、前記連結杆の後方側へ引く方向への動作によって当該連結杆に撓みを生じ難い状態にあるところ、凸状の曲線刃よりも枝等が逃げにくい直線刃を用いることで、当該枝等を良好に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の実施例1に係る刈込鋏の全体図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る刈込鋏の刃部の一部拡大図である。
図3図3は本発明の実施例2に係る刈込鋏の全体図である。
図4図4は本発明の実施例2に係る刈込鋏の刃部の一部拡大図である。
図5図5は本発明の実施例3に係る刈込鋏の全体図である。
図6図6は本発明の実施例3に係る刈込鋏の刃部の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の各実施例に係る刈込鋏Sを説明する。以下説明において、図1における左側(刃側)を前方、右側(把持部側)を後方として説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1に係る刈込鋏Sは、図1に示すように、刈込鋏Sの保持及び操作を行うための操作部1と、該操作部1の前方に配置され、切断機能を発揮する刈込刃部2とを備えている。
【0024】
刈込刃部2は、複数の固定刃30を有する固定刃部3と、前記固定刃3との協働により被切断対象物を切断するための可動刃4と、該可動刃4を動作させるための第一連結杆5aを備えている。
【0025】
前記固定刃部3は、長手方向に連続する長尺の固定板31に一定の間隔で複数の固定刃30を列設した構成である。尚、本実施例における各固定刃30の間隔(ピッチP)は35mmとしている。
各固定刃30間には、可動刃4の枢軸20となるリベットを取付けるための軸穴34を設けてある。各固定刃30は、図1において示すように、正面視V字状の刃部32を備えている。当該V字状の刃部32のうち、刈込刃部2の前方側の刃部32a、後方側の刃部32bのいずれにおいても直線刃、即ち直線輪郭を有する刃としている。
また、各固定刃30の基端側の一部には、当該刈込刃部2の強度を保持しつつ軽量化するための穴部33を備えている。
【0026】
可動刃4は、図1において示すように、前方側の刃部41a及び後方側の刃部41bを有する刃部41を備えている。当該前方側の刃部41a及び後方側の刃部41bはいずれも凸状の曲線刃R、即ち両端に対して中央が凸となる曲線輪郭を有する刃である。本実施例1における当該各凸状の曲線刃Rの曲率半径は100mmとしている。
また、可動刃4の長手中央位置近傍には可動刃側軸穴42を備えている。一方、可動刃4の基端側には前記第一連結杆5aと連結するための連結部40を備えている。
当該連結部40には、第一連結杆5aとの相対的な可動状態を確保するための連結軸穴43を設けてある。
【0027】
第一連結杆5aは前記固定刃部3の固定板31と略平行に配置される。当該第一連結杆5aには、その先端50側から前記可動刃4の連結軸穴43に対応する取付穴52を列設してある。
また第一連結杆5aの後端51側には、二箇所に後端側取付穴を設けてある。
【0028】
操作部1は、本体部11と、該本体部11の前後に配置される把持部10(後方側を第一把持部10a、前方側を第二把持部10bとする。)を備えている。前記本体部11内には、図示されない電動機である駆動部110とこれに連動するカム機構と、該カム機構に連結される第二連結杆5bを備えている。
第二連結杆5bは、先端53側の二箇所に先端側取付穴を備え、図示されない後端側にはカム機構と連結するための取付用長穴を備えている。
【0029】
前記第二連結杆5bは、前記取付用長穴を用いて後端側を、カム機構と連結している。
また、本体部11の前方に設けたガイド筒12を通して前方へ前記先端53を突出させ、前記第一連結杆5aの後端側取付穴と第二連結杆5bの先端側取付穴を螺子及びナットで連結している。これによって、前記第一連結杆5aの前記後端51と第二連結杆5bの先端53を連結して、連結杆5を構成している。
【0030】
前記ガイド筒12の周囲には、前記第二把持部10bが取付けられる。
また当該ガイド筒12の先端側には、固定刃部3の後端部35を取付けるための固定刃取付部材6を設けている。固定刃固定部材6は、固定刃部3の後端部35に螺子及びナットを用いて固着される。
【0031】
上記構成において、固定刃30間の軸穴と可動刃4の可動刃側軸穴42とを一致させてリベットにより枢軸20を形成する。また、第一連結杆5aの取付穴と可動刃4の連結軸穴43とを一致させてリベットにより連結軸21を構成する。
【0032】
上記操作部1に設けたスイッチ100をONにすることによって、電力の供給を受けた駆動部110が動作し、前記図示されないカム機構によって第二連結杆5b及び第一連結杆5aが前後に往復動する。これに伴って、固定刃30間において可動刃4が前記枢軸20を中心として揺動し、固定刃30と可動刃4との間に差し込まれた草葉や枝等の被切断対象物を切断する。
【0033】
本実施例1に係る刈込鋏Sによれば、連結杆5の往復動のいずれのタイミングにおいても、直線刃Dを有する固定刃30と凸状の曲線刃Rとの組み合わせによって前記草葉や枝等の被切断対象物を切断する。
そして、凸状の曲線刃Rが特に太い枝や固い枝で切断に困難性が生じた場合には、当該切断困難な枝等が凸状の曲線刃Rに沿って外方へ逃げやすくなり、また固定刃30の直線刃も当該逃げを殆ど阻害することないから、結果として当該切断困難な枝が凸状の曲線刃Rに沿って外方へ逃がしてロックを防止する。
また、切断可能な太さや固さの枝であれば、直線刃Dで不必要に逃げを生じさせず、高い確実性をもって、当該被切断対象物を切断できる。
【0034】
尚、本実施例1では上記したように、凸状の曲線刃Rの曲率半径を100mmとしている(図2中「R100」で指示。)。当該凸状の曲線刃Rの曲率半径は80mm程度であっても性能は発揮できるものの、曲率半径を小さくすると、草葉や細い枝の切断は良好に切断できる。一方で、太い枝等に対して切断が若干行い難くなる傾向を生じる。曲率半径が80mm未満となると、この傾向が大きくなり、実用性に欠ける傾向が大きくなる。また、凸状の曲線刃Rの曲率半径を150mmとすると、被切断対象物の外方への逃げは低減されるが、草葉や細い枝の切断を良好とする曲線刃Rの特性が低下する。凸状の曲線刃Rの曲率半径が150mmを超えると直線刃との微差となり、曲線刃Rの実用性に欠ける傾向が大きくなる。従って、凸状の曲線刃Rの曲率半径は、80mm〜150mmとすることが望ましい。
【実施例2】
【0035】
次に本発明の実施例2に係る刈込鋏Sは、基本構成は、上記実施例1に係る刈込鋏Sと共通するものである(図3参照。)。このため同一の構成部分についての説明は省略し、上記実施例1に準ずるものとする。本実施例2に係る刈込鋏Sは、実施例1と比較し、凸状の曲線刃Rを有する可動刃4について、その前方側の刃部41aと後方側の刃部41bの曲率半径を異なるものとし、更に、前方側に面する刃部41bの曲率半径が、後方側に面する刃部41bの曲率半径よりも大きい構成としたものである。より具体的には、本実施例2における各可動刃4は、前方側に面する凸状の曲線刃R1の曲率半径は150mmとし、後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率半径は100mmとしている。固定刃30の刃部は、実施例1と同様に直線刃としており、各固定刃30の間隔(ピッチP)は35mmとしている。
【0036】
本実施例2に係る刈込鋏Sによれば、連結杆5を前方側へ押すことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における後方側の刃部41bと固定刃30における前方側の刃部32aによる切断を行う際には、可動刃4が切断時に受ける抗力によって前記連結杆5が撓み、可動刃4による切断力が逃され、太い枝等をロックし易いものであるところ、前記可動刃4の後方側の曲率半径を小さくした凸状の曲線刃R2によって、より太い枝等を逃しやすくして、連結杆5の撓みを抑制し、ロックを大幅に低減する。
【0037】
また、連結杆5を後方側へ引くことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における前方側の刃部41aと固定刃30における後方側の刃部32bによる切断を行う際には、連結杆5の撓みは生じないため、可動刃4におけるより大きな曲率半径の刃部を利用して太い枝等であっても切断をより良好とするものである。
刈込鋏Sの連結杆5は高速(例えば、数千往復/分)で往復動するから、上記各作用効果を厳密には交互で発揮するのであるが、事実上は上記の押方向、引方向の各作用効果を兼備するように被切断物を効率良く切断することができる。
【0038】
尚、本実施例2では上記したように、前方側に面する凸状の曲線刃R1の曲率半径は150mmとし、後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率半径は100mmとしているが、後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率は、これに限定されるものではなく、例えば、凸状の曲線刃R2の曲率半径は80mm程度であっても性能は発揮できる。一方で、太い枝等に対して切断が若干行い難くなる傾向を生じる。曲率半径が80mm未満となると、この傾向が大きくなり、実用性に欠ける傾向が大きくなる。このため後方側に面する凸状の曲線刃R2の曲率半径は前方側に面する凸状の曲率半径よりも小さいことを条件として、80mm以上150mm未満であることが望ましい。他方、同様の理由から、前方側に面する凸状の曲線刃R1の曲率半径は、後方側に面する凸状の曲線刃R2より大きい曲率半径であることを条件として、80mmを超えて150mm以下であることが望ましい。
【実施例3】
【0039】
次に本発明の実施例3に係る刈込鋏Sは、基本構成は、上記実施例1に係る刈込鋏Sと共通するものである(図5参照。)。このため同一の構成部分についての説明は省略し、上記実施例1に準ずるものとする。本実施例3に係る刈込鋏Sは実施例1の可動刃4と比較して、可動刃4における前方側に面する刃部41aを直線刃Dとした構成である。
後方側に面する刃部は、実施例1と同様に曲線刃Rとし、当該曲線刃Rの曲率半径は100mmとしている。また、固定刃30の刃部は、実施例1、2と同様に直線刃としており、各固定刃30の間隔(ピッチP)は35mmとしている。
【0040】
上記実施例3に係る発明の構成によれば、連結杆5を前方側へ押すことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における後方側の刃部41b(曲線刃R)と固定刃30における前方側の刃部32a(曲線刃R)による切断を行う際には、可動刃4が切断時に受ける抗力によって前記連結杆5が撓み、可動刃4による切断力が逃され、太い枝等をロックし易いものであるところ、前記可動刃4の後方側の凸状の曲線刃Rによって、より太い枝等を逃しやすくして、連結杆5の撓みを抑制し、ロックを大幅に低減する。
【0041】
また、連結杆5を後方側へ引くことによって切断動作を行う際、即ち可動刃4における前方側の刃部と固定刃30における後方側の刃部による切断を行う際には、連結杆5の撓みは生じないため、直線刃を利用して太い枝等であっても切断をより良好とするものである。
【0042】
また、本実施例1、2及び3に係る刈込鋏のいずれにおいても、上記の通り第一連結杆5aと第二連結杆5bを接続した構成で、駆動部110とカム機構を介して連結した構成であるため、刈込鋏Sの重量バランスは後方側(把持部側)に重量が偏り、当該刈込鋏Sの前方側が軽量となるから、切断作業時において、刈込刃部2を軽く動かすことができる構成を確保できる。
【0043】
また、本実施例1、2及び3に係る刈込鋏Sのいずれにおいても、上記の通り固定刃30の基端側の一部に、当該刈込刃部2の強度を保持しつつ軽量化するための穴部を備えているため、上記の重量バランスにおいて、更に前方側が軽量化され、切断作業時における刈込刃部2の取り扱い性能を更に良好とすることができる。
【0044】
また、本実施例1、2及び3に係る刈込鋏Sはいずれも電動機を動力源としているが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば原動機等の他の動力源を用いるものとすることもできる。またいずれの実施例に係る刈込鋏Sにおいても、連結杆3は第一連結杆5a及び第二連結杆5bを連結したものとしているが、単独の連結杆3とするものであってもよいし、3本以上の連結杆を繋ぎ合わすものでもよい。
【0045】
また、本発明は上記実施例1、2、3に係る刈込鋏Sはいずれも各固定刃間の距離(ピッチP)を35mmとしているが、上記各実施例に準じて、変更することができる。また前記ピッチPの変更に対応して曲線刃R若しくは曲線刃R1、曲線刃R2の曲率半径も変更することができる。例えば、各固定刃間の距離を40mmに変更した場合には、曲線刃Rの曲率半径は80mmであっても刃元に枝が入りやすくなるため、より太い枝の切断を可能とすることができる。一方、連結杆のストロークを同一としたままで、各固定刃の間隔(ピッチP)を30mmから40mmに変更すると、枢軸20から連結軸21までの距離(軸間距離L)を短く設定する必要性が生じるため、これに伴って切断力が若干減少する。このため、対象となる太さの枝を設定した上で、上記各実施例等に準じて、刃元への枝の導入性能と切断力をバランスさせて、各部の寸法を設定することができる。
【0046】
また、本発明においては、刈込鋏の操作部の形状、構造、組み合わせについて、種々の公知技術やその応用技術を利用できる。例えば、把持部はモーターの前後に配置するものに限らず、いずれか一方であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
D 直線刃
L 軸間距離
P ピッチ
S 刈込鋏
R 曲線刃
R1 曲線刃
R2 曲線刃
1 操作部
10 把持部
10a 第一把持部
10b 第二把持部
100 スイッチ
11 本体部
110 駆動部
12 ガイド筒
2 刈込刃部
20 枢軸
21 連結軸
3 固定刃部
30 固定刃
31 固定板
32 刃部
32a 刃部(前方側)
32b 刃部(後方側)
33 穴部
34 軸穴
35 後端部
4 可動刃
40 連結部
41 刃部
41a 刃部(前方側)
41b 刃部(後方側)
42 可動刃側軸穴
43 連結軸穴
5 連結杆
5a 第一連結杆
5b 第二連結杆
50 先端
51 後端
52 取付穴
53 先端
6 固定刃取付部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6