(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。
図1は、実施形態の説明図である。
【0011】
図1のように、測定装置1は、トルクセンサ3、駆動部5、制御部7、ギアヘッド9、第1カップリング11a、第2カップリング11b、第3カップリング11c、接続軸13、アンプ15、液晶モニタ17を有している。
また、測定装置1は、測定対象の複数のブレーキ測定対象モータ101を順次取り付けて、それぞれのブレーキ測定対象モータ101の保持回転トルクを測定する。
なお、
図1に置いては、ブレーキ測定対象モータ101が取り付けられている図を記載しているが、測定装置1が販売等される際には、このブレーキ測定対象モータ101は接続されていない。
【0012】
ブレーキ測定対象モータ101は、モータ部103、ブレーキ部105、モータ出力軸107を有している。
モータ出力軸107はモータ部103のロータと機械的に接続されており、ロータの回転と一緒に回転する。
また、ブレーキ部105は、モータ出力軸107の回転を停止させる制動機構である。
このブレーキ部105は、ブレーキ電源87からの電力によって、制動状態と制動の解除状態(以下、「非制動状態」)との切り替えが可能である。
【0013】
測定装置1は、このブレーキ部105が、制動状態において、所定の保持回転トルクでも制動状態を維持できるかの測定(以下、この測定を「保持回転トルク測定」という)を行う。なお、制動状態を維持できるかとは、より具体的には、モータ出力軸107が回転しない状態を維持できるかということである。
また、ブレーキ部105は、ブレーキ電源87からの電圧が低い場合には非制動状態であり、ブレーキ電源87からの電圧が高い場合には制動状態となる。その為、ブレーキ電源87からの電圧が低い状態から徐々に上昇する場合には、最初の非制動状態から、一定の電圧以上となると制動状態に移行することになる。この非制動状態から制動状態に移行する際の電圧を吸引電圧という。
また逆に、ブレーキ電源87からの電圧が高い状態から徐々に下降する場合には、最初の制動状態から、一定の電圧以下になると非制動状態に移行することになる。この制動状態から非制動状態に移行する際の電圧を釈放電圧という。
測定装置1は、吸引電圧の測定(以下、この測定を「吸引電圧測定」という)及び釈放電圧の測定(以下、この測定を「釈放電圧測定」という)をする。
【0014】
また、測定装置1は、ブレーキ電源87の電圧を徐々にではなく、瞬時に上昇させた際に、非制動状態から制動状態に移行する際にかかる時間も測定する(以下、この測定を「吸引時間測定」という)。
逆に、測定装置1は、ブレーキ電源87の電圧を徐々にではなく、瞬時に下降させた際に、制動状態から非制動状態に移行する際にかかる時間も測定する(以下、この測定を「釈放時間測定」という)。
【0015】
保持回転トルク測定は、モータ出力軸107が正回転(CW)と逆回転(CCW)した場合のそれぞれについて行われる。
ここで、保持回転トルクについて測定の必要が生ずるのは、モータ出力軸107が一定の角度である場合だけではない。可能であれば、モータ出力軸107が回転可能なすべての角度(=360度)で測定する必要が生ずる。なぜなら、ブレーキ部105を動作させて制動状態とする可能性があるのは、モータ出力軸107の全ての角度であるからである。
しかし、すべての角度について保持回転トルクを測定することは、コストの面で適切では無い。そして、ある程度のモータ出力軸107の角度毎に測定して問題なければ、その間のモータ出力軸107の角度についても問題が無いと高い確率で推定できる。
その為、測定装置1は、ある一定角度毎に、ブレーキ測定対象モータ101の正回転(CW)と逆回転(CCW)について保持回転トルクを測定する。なお、ここでいうある一定角度毎とは、例えば、45度毎、30度毎、22.5度毎、15度毎をいう。本実施形態では、22.5度毎、つまり16地点において、ブレーキ測定対象モータ101の正回転(CW)と逆回転(CCW)について保持回転トルクを測定している。
【0016】
駆動部5は、サーボアンプ83からの電力によって駆動される。より具体的には、駆動部5は、制御ボックス81によって制御された電力供給に従ってサーボアンプ83を駆動される。
つまり、駆動部5は、制御ボックス81によって、回転角度が制御されている。
【0017】
駆動部5は、ギアヘッド9を介して、ギア軸9aに接続されている。
そして、ギアヘッド9は、駆動部の回転を数分の1〜数十分の1に減速して出力している。
このギアヘッド9が介在することによって、駆動部5の回転をより滑らかにトルクセンサ3側に提供する事が可能となる。
また、このギアヘッド9は、アブソリュートセンサを備えている。
このアブソリュートセンサは、ギア軸9aの回転角度を絶対位置として検出できる。
このアブソリュートセンサによって、22.5度毎を正確に検出して、それぞれの位置におけるブレーキ測定対象モータ101の正回転(CW)と逆回転(CCW)について保持回転トルクを測定することが可能となっている。
【0018】
トルクセンサ3は、一端3bと他端3aとを有している。一端3b及び他端3aは軸形状を有して、同じ軸線上に形成されている。この一端3b及び他端3aとの間に回転トルクが生じると、トルクセンサ3が歪む。
この歪みの量に応じたトルクセンサ値が、アンプ15に出力される。
一端3bとギア軸9aは、第1カップリング11aによって、接続される。
ここで、第1カップリング11aは、ねじりによる歪みが少ないものが使用される。歪みが多いと、正確な測定が困難であるからである。
【0019】
他端3aは、第2カップリング11b、接続軸13、第3カップリング11cを介してモータ出力軸107に接続される。
第2カップリング11b、第3カップリング11cは、ねじりによる歪みが少ないものが使用される。歪みが多いと、正確な測定が困難であるからである。
なお、他端3aが1つのカップリングではなく、2つのカップリングを介して接続されているのは、測定対象のブレーキ測定対象モータ101の大きさが異なっても対応を可能とするためである。
つまり、ブレーキ測定対象モータ101の長さが長い場合には、短い接続軸13を使用する又はそもそも接続軸13使用しないという事が可能である。他方、ブレーキ測定対象モータ101の長さが短い場合には、長い接続軸13を使用する。これによって、大きさの異なるブレーキ測定対象モータ101を測定することが可能となる。
【0020】
以上の様に、トルクセンサ3の一端3bがねじり歪みが生じないようにギアヘッド9を介して駆動部5の軸に接続されている。
他方、トルクセンサ3の他端3aがねじり歪みが生じないように、第2カップリング11b、接続軸13、第3カップリング11cを介してモータ出力軸107に接続される。
そして、モータ出力軸107の回転を止めるように、ブレーキ部105を制動状態とする。その上で、駆動部5を駆動させる。
そうすると、トルクセンサ3に加わっている回転トルク=ブレーキ部105に加わっている回転トルクとなる。
その為、トルクセンサ3に加わっている回転トルクを検出すれば、保持回転トルクを検出することが可能となる。
より具体的には、トルクセンサ3が出力する値が徐々に大きくなるように、駆動部5を回転させる。
そして、トルクセンサ3が出力した値が所定の保持回転トルクの値となるまで、駆動部の回転を継続する。
そして、保持回転トルクまでトルクセンサ3の値が上昇可能であった場合、測定対象のブレーキ測定対象モータ101はその保持回転トルクまで確かに回転せずに制動状態を維持できるということになる。
これによって、実測によって、保持回転トルクまでブレーキ部105が制動状態を維持できることを測定することが可能となる。
なお、逆に、トルクセンサ3の値を上昇させても、保持回転トルクまでトルクセンサ3が上昇しない場合には、測定対象のブレーキ測定対象モータ101はその保持回転トルクまでの保持力がないことになる。そのようなブレーキ測定対象モータ101は、破棄、又は、再度調整・製造等されることになる。
【0021】
トルクセンサ3から出力される回転トルクセンサ値は微小であるためにこれを増幅するために、アンプ15が用いられる。
アンプ15は、入力された回転トルクセンサ値を増幅して、検出部71の直流電圧計71a及びアナログ・デジタル変換部73に対して出力する。
【0022】
制御部7は、検出部71、パソコン72、制御ボックス81、サーボアンプ83、電源制御部85、ブレーキ電源87を有している。
検出部71は、直流電圧計71a及びI/O操作回路71bを有している。
また、パソコン72は、パソコン本体75、PIOボード77、アナログ・デジタル変換部73、通信部79を有している。
【0023】
検出部71の直流電圧計71aはアンプ15からの出力値を検出し、I/O操作回路71bに出力する。
I/O操作回路71bは、直流電圧計71aからの出力値が、予め定められた所定値以下の場合は出力値がゼロであるが、所定値以上となった場合にPIOボード77に対して出力を行う。
【0024】
パソコン72のパソコン本体75と、PIOボード77、アナログ・デジタル変換部73及び通信部79とは電気的に接続されている。
パソコン本体75は、この測定装置1の制御を統括的に行っている。
具体的には、パソコン本体75は、PIOボード77からの入力を受ける。
パソコン本体75は、アナログ・デジタル変換部73からの入力を受ける。
パソコン本体75は、通信部79に対して所定の制御信号を送信する旨の命令信号を発信する。
また、パソコン本体75は、液晶モニタ17に対して、ユーザが測定結果を確認するための画像情報信号を発信する。
液晶モニタ17は、その画像情報信号に基づいて、ユーザが測定結果を確認するための画像を表示している。
【0025】
PIOボード77は、入力が有った場合その旨を知らせる信号をパソコン本体75に対して出力する。
アナログ・デジタル変換部73は、アンプ15が出力したアナログ値をデジタル値に変換して、パソコン本体75に出力する。
パソコン本体75は、このアナログ・デジタル変換部73が出力したデジタル値を実際の回転トルク値に換算して、この値に基づき制御を行う。
通信部79は、パソコン本体75からの各指令をアンプ15及び制御ボックス81に対して出力する。
【0026】
ところで、アナログ・デジタル変換部73は、アナログ値の正確な値を計測するものであるため、直流電圧計71a及びI/O操作回路71bを介してPIOボード77が所定値以上を出力するよりもかなり時間的な遅れが生ずる。
例えば、トルクセンサ3が、緊急停止しなければならない様な極めて大きな値を出力してきたとしても、そのような大きな値となっていることを、検出するには、アナログ・デジタル変換部73は、I/O操作回路71bと比べると極めて長時間を必要とする。
ここで、測定装置1が緊急停止しなければならない様な場合を説明する。
前述のように、測定装置は、ブレーキ測定対象モータ101の一定角度毎に、正回転(CW)と逆回転(CCW)について保持回転トルクを測定する。
そのためには、ブレーキ部105を非制動状態として、駆動部5を回転させることによって、モータ出力軸107をその所定の角度回転させる必要が生ずる。
その際に、ブレーキ部105が何らかの異常によって非制動状態とならない場合がありうる。
他方、駆動部5はギアヘッド9を介しているため、駆動部5はトルクセンサ3側に極めて大きな回転トルクを加えることができる。
その為、ブレーキ部105が非制動状態で駆動部5が回転すると、トルクセンサ3に極めて大きな回転トルクが加わってしまうことになる。
その場合には、緊急に駆動部5の回転を停止させなければ、トルクセンサ3を破損してしまうおそれが高い。
しかし、前述のように、アナログ・デジタル変換部73はトルクセンサ3の出力が上昇してもその事実を検出するのに多くの時間を必要とする。その為、本実施形態の測定装置1は、アナログ・デジタル変換部73に加えて検出部71を有して、そのような事態に対応している。
つまり、本実施形態の測定装置1は、検出部71を有することから、より測定装置1の安全性を高めることが可能となっている。
【0027】
また、測定装置1は、従来は、人が行っていた正回転・逆回転における保持回転トルク測定、吸引電圧測定、釈放電圧測定、吸引時間測定及び釈放時間測定を自動で行えるようにした。それによって、測定装置1は、従来に比して、低コスト、短時間、かつ、正確な測定が可能となった。