(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、固定焦点距離式レンズがそれぞれ使用された2台のカメラが内蔵されたステレオカメラでは、カメラ間隔に対応する基線長も不変であり、製造時にキャリブレーションをしておくだけでよかった。
【0003】
これに対して、汎用カメラ2台を配置して構成したステレオカメラでは、各カメラで撮影したステレオ画像を用いて被計測物の三次元写真計測を行うには、事前にキャリブレーションが必要である(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載のステレオカメラ2R、2Lを構成するカメラでは、ステレオバー2Bに1台又は2台のカメラを取付け、キャリブレーション用チャート1を5方向から撮影することでキャリブレーションを実行する。
【0004】
一方、撮影時に被計測物までの距離に応じてカメラ間隔・方向を変更することがあり、これに好適なカメラ間隔調節機構も提案されている(例えば、特許文献2の
図1を参照)。この特許文献2に記載された撮影装置10では、第1及び第2カメラ11,12は、間隔制御部17によって制御される間隔調節機構18に取り付けられている。間隔制御部17は、操作部15の操作に応じて、第1及び第2カメラ11,12の間隔を増減するように間隔調節機構18を駆動する。これにより、基線長が変更される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る三次元計測装置1の装置本体10の概略斜視図である。
【
図2】装置本体10のベース13に前カバー14および後カバー15のみを取り付けた状態の概略平面図である。
【
図3】装置本体10のベース13への取り付け用のブラケット12をカメラ11のカメラ本体11aの裏面にネジ止めした状態を説明する概略底面図である。
【
図4】
図2の状態からさらに2台のカメラ11をブラケット12を介してベース13に取り付けた状態の概略平面図である。
【
図5】
図5(a)〜
図5(c)は、ベース13上に固定するときのカメラ11の撮像方向を微調整するためのブラケット12A〜12Cの概略底面図である。
図5(d)〜
図5(f)は、
図5(a)〜
図5(c)のブラケット12A〜12Cをそれぞれカメラ11のカメラ本体11aの裏面にネジ止めした状態での撮像方向を説明する概略底面図である。
【
図6】
図6(a)〜(d)は、2台のカメラ11を装置本体10のベース13に固定する際に選択可能な間隔(基線長)として4通りの場合を例示する概略説明図である。
【
図7】
図7(a)〜(e)は、2台のカメラ11を装置本体10のベース13に固定する際に用いるブラケットの種類によって選択可能な撮像方向の角度差として5通りの場合を例示する概略説明図である。
【
図8】
図6(a)〜(d)に例示された各カメラ11の間隔と、
図7(a)〜(e)に例示された各カメラ11の撮像方向の角度差との組み合わせに応じたキャリブレーションデータを示す概略図である。
【
図9】三次元計測装置1の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
<実施形態の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元計測装置1の装置本体10の概略斜視図である。
図2は、装置本体10のベース13に前カバー14および後カバー15のみを取り付けた状態の概略平面図である。
図3は、装置本体10のベース13への取り付け用のブラケット12をカメラ11のカメラ本体11aの裏面にネジ止めした状態を説明する概略底面図である。
図4は、
図2の状態からさらに2台のカメラ11をブラケット12を介してベース13に取り付けた状態の概略平面図である。
【0019】
これらの図に示すように、三次元計測装置1の横長箱状の装置本体10は、横長矩形薄板状のベース13と、このベース13の前端に取り付けられる横長矩形状の前カバー14と、ベース13の後端に取り付けられる横長矩形状の後カバー15と、前カバー14および後カバー15の両方に被さってベース13を覆う上カバー16とを備えている。
【0020】
3つのカバー14〜16はそれぞれ独立しており、上カバー16は単体で取り外し可能な構造となっている。上カバー16のみを取り外すことで、装置本体10の上面側から内部へアクセスが可能で、ブラケットの交換やカメラ調整時の作業が容易な構造である。また、ベース13の厚みは、カメラの取付精度を確保するため、3〜20mm、好ましくは8mm程度あればよい。ベース13の厚みを利用して前カバー14および後カバー15をベース13端面に直接ネジ止めすることができ、簡易かつ安価な構造を実現している。なお装置本体10の寸法は、例えばW260×D143×H59mmとするが、このような寸法に限るわけではない。また、ベース13の素材はアルミ製が好適であるが、これに限らない。
【0021】
装置本体10のベース13には、
図2に示すように、その中央部に横幅ほぼ全体にわたって、ブラケット12を介してカメラ11を取り付け可能な5箇所の取付用部位13a〜13eが50mmピッチで設けられている。カメラ11を取り付けるための具体的な構成として、
図4に示すように、取付用部位13aとして左右に計2つのタップ穴13aL、13aRが形成されている。他の取付用部位13b〜13eについても同様に、左右に計2つのタップ穴がそれぞれ形成されている。ただし、カメラ11を取り付けるための構成はこれに限らず、ネジ、ダボなどを用いてもよいが、位置精度およびその再現性が極力高い機構が好ましい。
【0022】
カメラ11は、
図4に示すように、短い正四角柱状のカメラ本体11aと、このカメラ本体11a前面に連結された円柱状のレンズ11bと、カメラ本体11a後面に配置されている出力端子11cとを備えている。
図3に示すように、ほぼ正方形のブラケット12がカメラ本体11a底面に3本のネジで固定されるが、このブラケット12には左端および右端付近のやや前方寄りにボルト穴12R、12Lがそれぞれ形成されている。これらのボルト穴12R、12Lにそれぞれボルト17を通してベース13の取付用部位13a〜13eのいずれかの各タップ穴にねじ込むことで、
図4に示すように、カメラ11の撮像方向が真正面となるようにベース13上に固定される。
【0023】
装置本体10の前カバー14には、
図1に示すように、その周辺部に一定幅を残して形成された横長矩形状の開口に透明窓14aがはめ込まれている。装置本体10のベース13上に固定されたカメラ11は、この透明窓14aを通して装置本体10外部にある被計測物を撮像する。
【0024】
図5(a)〜
図5(c)は、ベース13上に固定するときのカメラ11の撮像方向を微調整するためのブラケット12A〜12Cの概略底面図である。
図5(d)〜
図5(f)は、
図5(a)〜
図5(c)のブラケット12A〜12Cをそれぞれカメラ11のカメラ本体11aの裏面にネジ止めした状態での撮像方向を説明する概略底面図である。なお、
図5(a)および
図5(d)と
図5(c)および
図5(f)とでは、説明をわかりやすくするため、実際の角度よりも誇張した図示を行っている。
【0025】
これらの図に示すブラケット12A〜12Cは、上述したブラケット12の変形例である。上述したブラケット12と同様にカメラ11の撮像方向が±0度(真正面)となるブラケット12Bでは、
図5(b)および
図5(e)に示すように、2つのボルト穴12L、12Rが左端および右端付近のほぼ中央にそれぞれ形成されている。
【0026】
一方、ブラケット12Aでは、
図5(a)および
図5(d)に示すように、カメラ11の撮像方向が−2度となるように、左端付近のボルト穴12Lをやや後方寄りに、右端付近のボルト穴12Rをやや前方寄りに設けている。逆に、ブラケット12Cでは、
図5(c)および
図5(f)に示すように、カメラ11の撮像方向が+2度となるように、左端付近のボルト穴12Lをやや前方寄りに、右端付近のボルト穴12Rをやや後方寄りに設けている。
【0027】
これらのブラケット12A〜12Cでは、カメラ11の撮像方向を−2度、±0度、+2度の3つから選択できるが、選択肢はこれらに限らない。さらに多くの撮像方向を選択・調整できるように予め準備するブラケットの種類を増やしてもよい。また、撮像方向をより細かく選択・調整できるように、ブラケットの種類毎の撮像方向の角度差を小さくしてもよい(例えば、0.5度刻み)。
【0028】
図6(a)〜(d)は、2台のカメラ11を装置本体10のベース13に固定する際に選択可能な間隔(基線長)として4通りの場合を例示する概略説明図である。なお、これらの図では、ベース13の図示を簡略化している。
【0029】
図6(a)に示すように、ベース13の取付用部位13dおよび取付用部位13eにそれぞれカメラ11を取り付けた場合は、2台のカメラ11の間隔はD1(50mm)となる。
【0030】
図6(b)に示すように、ベース13の取付用部位13cおよび取付用部位13eにそれぞれカメラ11を取り付けた場合は、2台のカメラ11の間隔はD2(100mm)となる。
【0031】
図6(c)に示すように、ベース13の取付用部位13bおよび取付用部位13eにそれぞれカメラ11を取り付けた場合は、2台のカメラ11の間隔はD3(150mm)となる。
【0032】
図6(d)に示すように、ベース13の取付用部位13aおよび取付用部位13eにそれぞれカメラ11を取り付けた場合は、2台のカメラ11の間隔はD4(200mm)となる。
【0033】
図7(a)〜(e)は、2台のカメラ11を装置本体10のベース13に固定する際に用いるブラケットの種類によって選択可能な撮像方向の角度差として5通りの場合を例示する概略説明図である。なお、これらの図に示すように、右側のカメラ11はその撮像方向が真正面となるブラケットを用いることとする。また、
図7(b)〜
図7(e)では、説明をわかりやすくするため、実際の角度よりも誇張した図示を行っている。
【0034】
図7(a)に示すように、左側のカメラ11にもその撮像方向が真正面となるブラケットを用いた場合は、2台のカメラ11の撮像方向の差はR1(0度)である。
【0035】
これに対して、
図7(b)に示すように、左側のカメラ11にその撮像方向が真正面より0.5度だけ右側へ向くブラケットを用いた場合には、2台のカメラ11の撮像方向の差はR2(0.5度)となる。
【0036】
図7(c)に示すように、左側のカメラ11にその撮像方向が真正面より1.0度だけ右側へ向くブラケットを用いた場合には、2台のカメラ11の撮像方向の差はR3(1.0度)となる。
【0037】
図7(d)に示すように、左側のカメラ11にその撮像方向が真正面より1.5度だけ右側へ向くブラケットを用いた場合には、2台のカメラ11の撮像方向の差はR4(1.5度)となる。
【0038】
図7(e)に示すように、左側のカメラ11にその撮像方向が真正面より2.0度だけ右側へ向くブラケットを用いた場合には、2台のカメラ11の撮像方向の差はR5(2.0度)となる。
【0039】
図8は、
図6(a)〜(d)に例示された各カメラ11の間隔と、
図7(a)〜(e)に例示された各カメラ11の撮像方向の角度差との組み合わせに応じたキャリブレーションデータを示す概略図である。
【0040】
この図に示すように、各カメラ11の間隔(距離)としてはD1〜D4の4通りが想定され、各カメラ11の撮像方向の角度差としてはR1〜R5の5通りが想定される。したがって、これらの組み合わせとして4×5=20通りが存在するので、被計測物の三次元写真計測を行うためには、各組み合わせに対応するキャリブレーションデータCAL1〜CAL20が必要である。
【0041】
図9は、三次元計測装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0042】
この図に示すように、三次元計測装置1は、装置本体10の内部に取り付けられる複数台(ここでは2台)のカメラ11と、入力装置21および表示装置22を備えるパソコン20とから構成されている。
【0043】
このパソコン20は、外部入出力接続用のインターフェイス23と、全体の制御や三次元写真計測処理を含む各種演算を行う制御演算部25と、各カメラ11によって撮像された画像データやキャリブレーションデータなどを記憶する記憶部26と、これらを相互接続するデータバス24とを備えている。
【0044】
インターフェイス23を介して、キーボードやマウスなどの入力装置21と、ディスプレイなどの表示装置22とがパソコン20に接続されている。また、各カメラ11の出力端子11cに一端が接続されたケーブルの他端がインターフェイス23に接続され、これにより各カメラ11によって撮像された画像データがパソコン20に取り込まれる。
【0045】
<三次元計測装置1による三次元写真計測の事前準備>
製造時の調整または使用開始前の準備作業として、装置本体10のベース13に取り付ける際のブラケットの種類の選択によって各カメラ11の間隔および撮像方向の角度差を順番に変更する。例えば、最初の各カメラ11の間隔はD1とし、撮像方向の角度差はR1とすればよい。
【0046】
そして、例えば特許文献1と同様に、キャリブレーション用チャートの撮像を行い、各カメラ11から取得された画像データに対する所定の画像処理などによって得られたキャリブレーションデータをその都度、各カメラ11の間隔および撮像方向の角度差の情報とともに記憶部26に記憶する。
【0047】
次に、各カメラ11の間隔および撮像方向の角度差を変更するため、ブラケットを異なる種類のもの(撮像方向の角度が異なるもの)に取り替える。または、一方のカメラ11の取付用部位を変更して、各カメラ11の間隔を変更する。
【0048】
このようにして、各カメラ11の間隔および撮像方向の角度差のすべての組み合わせに対するキャリブレーションが完了すると、
図8に示したような20通りのキャリブレーションデータが記憶部26に記憶されている。
【0049】
<三次元計測装置1による被計測物の三次元写真計測>
被計測物の三次元写真計測を実際に行うときには、まず、被計測物までの距離などに応じて最適な各カメラ11の間隔および撮像方向の角度差を決定する。そして、その角度差を実現するブラケットを選択するとともにその間隔となるように、各カメラ11を装置本体10のベース13にそれぞれ取り付ける。
【0050】
次に、各カメラ11によって被計測物を撮像し、各カメラ11から取得された画像データを記憶部26に記憶させる。
【0051】
このとき、各カメラ11の間隔と、取り付けに用いた各ブラケットに応じた撮像方向の角度差とを、入力装置21から直接入力するか、または表示装置22に表示させた複数の選択肢からいずれかを入力装置21によって選択する。
【0052】
こうして入力または選択された各カメラ11の間隔と撮像方向の角度差との組み合わせに対応する特定のキャリブレーションデータを記憶部26から読み出し、そのキャリブレーションデータと各カメラ11から取得された画像データに基づいて、例えば特許文献1と同様の演算を行い、被計測物の三次元データを算出する。
【0053】
以上で説明した実施形態の構成によれば、被計測物までの距離などに応じて最適な各カメラ11の間隔および撮像方向の角度差を決定し、適切なブラケットを選択して各カメラ11を装置本体10のベース13にそれぞれ取り付ければ、その取り付け状態に対応したキャリブレーションデータは既に記憶部26に記憶されているので、改めてキャリブレーションを行う必要がない。また、各カメラ11は装置本体10のベース13にブラケットを介してボルト17でしっかりと固定されるため、カメラの取り付け位置および撮像方向の精度および再現性が高く、高精度の三次元写真計測を行うことができる。
【0054】
<その他の実施形態>
各カメラ11の間隔と、取り付けに用いた各ブラケットに応じた撮像方向の角度差との入力については、例えば、取り付け位置にカメラ検出用スイッチやブラケット種類識別スイッチを設けたりするとともに、これらのスイッチからの信号をインターフェイス23を介して制御演算部25に入力して、自動的に検出・識別させるようにしてもよい。
【0055】
また、各カメラ11とパソコン20との接続は、ケーブルを用いた有線接続に限らず、無線接続を用いてもよい。
【0056】
なお、本発明は、その主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。