(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391444
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】画像転写シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B44C 1/175 20060101AFI20180910BHJP
G09F 3/02 20060101ALN20180910BHJP
G09F 3/00 20060101ALN20180910BHJP
【FI】
B44C1/175 F
!G09F3/02 T
!G09F3/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-241207(P2014-241207)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101704(P2016-101704A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243607
【氏名又は名称】末松 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(72)【発明者】
【氏名】末松 一郎
【審査官】
野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−039822(JP,A)
【文献】
特開2013−250543(JP,A)
【文献】
特開2012−101526(JP,A)
【文献】
特開2001−150885(JP,A)
【文献】
特開昭63−028699(JP,A)
【文献】
特開平06−262839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/165 − 1/175
G03G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の紙基材(1)の表面に水溶性糊料(2)を積層してなる転写用紙(A)を有し、該転写用紙(A)には、該水溶性糊料(2)の表面に非水溶性樹脂による画像(3)を形成した後、該非水溶性樹脂による画像(3)面の表面に接着剤(4)を塗布して乾燥した後、該転写用紙(A)の接着剤面を、水分(6)を含浸した塗布具(5)によって払拭し、該非水溶性樹脂による画像(3)以外の部分の水溶性糊料(2)を溶融除去して、画像部分のみに接着剤を残置することを特徴とする画像転写シートの製造方法。
【請求項2】
該非水溶性樹脂による画像は、レーザープリンターのトナーによって形成されたことを特徴とする請求項1の画像転写シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電式乾式レーザープリンター、あるいはUVインク型インクジェットプリンターを用いて、簡単容易に高精度なカラー画像を転写プリントできる画像転写シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像を転写プリントできる画像転写シートが知られている(例えば、特許文献1)。従来、この種の画像転写シートを作るには、転写用紙に画像を形成し、その画像と同一パターンのシルエット版を作り、スクリーン印刷機を用いて画像上に接着剤を塗布積層する方法がとられている。しかしながら、接着剤を画像の上部にぴったりと合わせて印刷することが非常に困難なため、画像から接着剤がはみ出して印刷されることが多く、その結果、転写した際に、はみ出した接着剤がベタついたり、画像の対向部分には接着剤が乗らないため、部分的に転写ができないといった不具合が生じていた。その不具合を解決するために、画像よりも若干大きなシルエットの版を作り、画像にフチのついた形で透明インクを積層して、接着剤が画像部分からはみ出しても良いようにしたり、接着剤の版を画像よりも若干小さくして作り、はみだしを防ぐという方法が一般的に採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−128061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法においては、何種類もの版を必要として工程が長くなり、資材の費用も高額になる欠点を有していた。また、熟練した作業者と、高精度で高額な印刷機材を必要としていた。
【0005】
上記で述べた従来の欠点を解決する方法は、スクリーン印刷という専門的な手段を用いることなく、通常のオフィスで使われるレーザープリンターと、安価な材料を用いて、型抜きされた画像が転写できる転写シートを得られるようにすることである。また、専門家でもなく、一般人が取り扱うためには、作業の容易性、使用する材料の安全性も高いものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の画像転写シートの製造方法において、シート状の紙基材の表面に水溶性糊料を積層してなる転写用紙を用意し、該転写用紙における該水溶性糊料の表面にレーザープリンターのトナー等によって非水溶性樹脂の画像を形成した後、該画像面の表面に接着剤を塗布して乾燥した後、該転写用紙の接着剤面を水分を含浸したティッシュペーパー等の塗布具によって払拭することで、該接着剤層を通過した水分により、該画像以外の部分の接着剤が積層された下層部分の水溶性糊料を溶融除去することにより、その上層の接着剤が除去され、画像部分のみに接着剤を残置した画像転写シートを製造する方法をとる。
【0007】
本発明において使用する転写用紙は、吸水性の高い紙基材に、水溶性糊料としてデキストリンまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)またはポリビニルアルコール(PVA)等を塗布したものを用いる。
【0008】
非水溶性樹脂画像を形成する手段としては、静電式乾式トナーを使用したレーザープリンターやカラーコピー機の他、UV硬化型インクを用いたインクジェットプリンターを使用することができる。また、スクリーン印刷の油性インク等を用いて印刷して形成することも可能である。すなわち、水によって溶融しないインクであれば、印刷手段は特に固定されるものではなく、水で払拭する際のマスキング効果のあるインクであれば良いわけである。
【0009】
接着剤に求められる要件としては、水に溶融せずに、かつ水を通過させる機能を有する必要がある。この例としては、水性エマルジョンタイプの接着剤または粘着剤が挙げられる。これらの接着剤は乾くと耐水性を有し、水に不溶になるが、その親水性によって水分を通過させて下層の水溶性糊料に水分が到達する。いったん溶融を始めた水溶性糊料によって、加速度的に上層の接着剤層が崩れて、水溶性糊料とともに接着剤が転写用紙上から除去される。画像部分は非水溶性であるため画像上に塗布された接着剤は残置する。
【0010】
なお、水を通過させない性質の接着剤を用いる場合は、メラミンスポンジあるいは微細なサンドペーパー等を用いて接着剤表面を擦過することで、接着剤層に微細な孔が開き、水を通過させることが可能である。なお、この擦過による表面の変化は、最終的な画像の転写性能には全く影響しない。
【0011】
できあがった画像転写シートの使用方法は、被転写対象物に転写シートの画像面を重ねて接着し、転写シートの裏面に水を塗ることで水溶性糊料を溶融し、画像が剥離して転写が完了する。用いる接着剤の種類によって接着の態様が異なるが、感熱接着剤を用いた場合は、アイロンや熱ローラー等で加熱押圧することで画像を接着させることができる。粘着剤を用いた場合は、指やヘラを使って加圧するだけで画像を接着させることができる。
【0012】
なお、接着剤に添加剤を混入することで、機能を付与することが可能である。白色の顔料を添加すれば、下地の透けない白打ちのされたカラー画像を転写することができる。また、シリカ微粉などを添加すれば、水の浸透が容易になり、より素早く水溶性糊料を溶融することができ、作業の迅速化が図れる。また、カラーレーザープリンターで形成したトナー画像に白色の転写箔を重ねて加熱圧着すると、トナーの上部に白箔が積層され、その上に接着剤を塗布した後、水で払拭して転写シートを作成すれば、白色度の高い白打ちのされたカラー画像を製造することができる。また、この方法を用いれば、トナー濃度の薄い画像にも白箔でマスキング効果を補強することができ、淡色の画像の転写シートも製作することが可能になる。また、白箔の代わりに銀箔を用いれば、転写される画像はメタリックの効果が付与されたものとなる。たとえば黄色の文字に銀箔を重ねて転写すると、その文字は金文字となってプリントされ、箔押しの効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像転写シートの製造方法によれば、専門的な設備や技術がなくとも、型抜きされた状態の画像を転写する転写シートを簡易に製造することができる効果がある。昨今カラーレーザープリンターの実売価格は1万円を切るほどになっており、使用する材料も数百円程度であることから、個人や家庭レベルでも経済的に十分使用可能な効果がある。また、使用する材料は水溶性の用紙と水性接着剤と水のみであり、健康上や消防法上の安全性はきわめて高い効果がある。また、作業内容としては接着剤を塗布して水で拭くだけの単純なものであり、子供でも製作が可能なほど簡便である効果がある。接着剤として粘着剤を使用した場合は、できあがった画像転写シートは被転写対象物に重ねて押圧し、裏から水を塗れば転写が完成するという簡便さであり、立体製品などに簡単にカラープリントができる効果がある。また、白箔を使って製作をすれば、濃色の素材や透明素材に対して、裏透けの無い鮮やかな色彩でプリントできる効果がある。また、銀箔を使って製作を
すれば、高価な金型や機械を使わずに金文字等の箔押し印刷ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像転写シートの製造方法を示した縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態に係る画像転写シートの製造方法につき、詳細に説明する。
【0016】
図1(イ)の転写用紙(A)は、シート状の紙基材(1)の表面に水溶性糊料(2)が塗布積層して形成されている。該転写用紙(A)には、該水溶性糊料(2)の表面に非水溶性樹脂による画像(3)が形成されている。
【0017】
該水溶性樹脂による画像(3)と該転写用紙(A)との表面には、
図1(ロ)に示す如く、接着剤(4)を塗布して乾燥させる。その後、
図1(ハ)に示す如く、接着剤(4)を塗布した画像面に対して、水分(6)を含浸した各種の塗布具(5)をもって表面を払拭する。その後
図1(ニ)に示す如く、該非水溶性樹脂によって形成された画像(3)以外の接着剤の積層された部分の水溶性糊料(2)を溶融除去して、画像部分のみに接着剤が積層された非水溶性樹脂による画像を残置する。
【0018】
転写用紙は、吸水性を有する紙の表面に水溶性糊料のデキストリンを塗布した窯業用水転写紙を用い、この用紙の表面にNEC社製レーザープリンター(MultiWriter5100)を用いて、カラー文字やイラスト等の画像をプリントして形成した後、ピクア社製水性エマルジョンタイプの粘着剤(タックバインダー)をスポンジに含ませて塗布して乾燥させた。その後、塗布具であるティッシュペーパーに水を含ませて画像面全体を払拭すると、画像以外の部分の粘着剤が除去され、粘着剤が積層された画像が用紙上に残置した。
【0019】
また、ピクア社製水性エマルジョンタイプの感熱接着剤(パワーバインダー)を用いて、同様の方法で作業を行ったところ、画像部分のみに感熱接着剤が積層されたものが残置して転写シートが出来上がった。
【0020】
この転写シートを用いて、被転写素材として画用紙を用い、転写作業を行った。粘着剤を用いたものは、画像面を画用紙に圧着した後、転写シートの裏面より水を塗り、20秒ほどしてシートを剥離すると、画像は画用紙上に転写した。
【0021】
感熱接着剤を用いたものは、画像面を画用紙に重ね、シートの上からアイロンを中温に設定して熱圧着した後、転写シートの裏面より水を塗り、20秒ほどしてシートを剥離すると、画像は画用紙上に転写した。
【0022】
また、接着剤のエマルジョンにシリカ(帝国インキ製腰切り剤)(重量比1%)を混入して塗布乾燥した後、ティッシュペーパーに水を含ませて画像面全体を払拭すると、混入しない場合に比べて倍以上の早さで接着剤の塗膜が除去できた。
【0023】
また、メラミンスポンジを用いて乾燥した接着剤の塗膜面を擦過した後、ティッシュペーパーに水を含ませて画像面全体を払拭すると、擦過しない場合に比べて倍以上の早さで接着剤の塗膜が除去できた。
【0024】
また、カラーレーザープリンターの代わりに、UVインクを用いたインクジェットプリンター(ミマキエンジニアリング社製UJF3042)を用いて同様の作業を行った結果、カラ
ーレーザープリンターと同じ結果が得られた。
【0025】
また、転写用紙にカラーレーザープリンターを用いてカラー文字をプリントした後、ピクア社製転写箔<白>を画像面に重ねてラミネーターに通過させると、トナー部分が熱によって接着性を発現し、文字部分だけに白箔が接着する。このようにして作成した転写用紙に、同様にして接着剤を塗布乾燥し、ティッシュペーパーに水を含ませて画像面全体を払拭すると、文字部分だけに白い裏打ちのされた転写シートが出来上がった。この文字を濃色の被転写素材面に転写すると、素材の色が透けて見えない鮮やかな発色の文字が転写された。また、白箔の代わりに、ピクア社製転写箔<銀>を画像面に重ねて白箔と同様の作業を行った結果、転写された画像はメタリック調の光沢のあるものが得られた。
【符号の説明】
【0026】
1 紙基材
2 水溶性糊料
3 画像
4 接着剤
5 塗布具
6 水分
A 転写用紙