(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動体は、患者または要介護者、生徒または園児、若しくは、家畜または家禽であり、前記監視対象エリアは、病院または介護施設、学校または幼稚園または保育園、若しくは、飼育場であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の情報収集システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の情報収集システムでは、ICタグとして受電型の発信機(パッシブタグ)を用いることが想定されており、自立電源型の発信機(アクティブタグ)を用いる際のシステム設計(複雑な調停処理を要することなくコリジョンを未然に回避することのできる発信機の設計など)については、何ら検討されていなかった。
【0005】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者によって見出された上記の課題に鑑み、自立電源型の発信機を用いた情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示された情報収集システムは、移動体に伴って移動可能であり、前記移動体の移動量に応じたタイミングで発信機IDを自発的に間欠発信する自立電源型の発信機と;前記移動体が自由に移動することのできる監視対象エリア内に設けられており、その近傍に存在する発信機から発信された発信機IDを受信する複数の受信機と;前記発信機IDと、前記発信機IDを受信した受信機の位置情報と、前記発信機IDの受信時刻とを関連付けて管理するサーバと;を有する構成(第1の構成)である。
【0007】
なお、上記第1の構成から成る情報収集システムにおいて、前記発信機は、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電部と、前記発電部で生成された電気エネルギーを蓄える蓄電部と、前記蓄電部に所定量の電気エネルギーが蓄えられる毎にその供給を受けて前記発信機IDを発信する発信部と、を含む構成(第2の構成)にするとよい。
【0008】
また、上記第1の構成から成る情報収集システムにおいて、前記発信機は、キャスター回転数を計測する回転計測部と、前記キャスター回転数が所定値に達する毎に前記発信機IDを発信する発信部と、を含む構成(第3の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第1の構成から成る情報収集システムにおいて、前記発信機は、歩数を計測する歩数計測部と、前記歩数が所定値に達する毎に前記発信機IDを発信する発信部と、を含む構成(第4の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成る情報収集システムにおいて、前記発信機は、前記発信機IDを発信する毎にインクリメントされるシリアルナンバーを前記発信機IDと共に発信する構成(第5の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る情報収集システムにおいて、前記サーバは、前記発信機IDと共に前記受信機での受信強度も関連付けて管理する構成(第6の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成る情報収集システムにおいて、前記移動体は購買者であり、前記監視対象エリアは店舗または市場である構成(第7の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第7の構成から成る情報収集システムにおいて、前記発信機は、前記購買者が携行するショッピングカート、買い物かご、ないしは、入店許可証に搭載されている構成(第8の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第7または第8の構成から成る情報収集システムは、前記購買者の購入情報と前記発信機IDを関連付けて前記サーバに送出するレジスターをさらに有する構成(第9の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成る情報収集システムにおいて、前記移動体は、患者または要介護者、生徒または園児、若しくは、家畜または家禽であり、前記監視対象エリアは、病院または介護施設、学校または幼稚園または保育園、若しくは、飼育場である構成(第10の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0016】
本明細書中に開示されている発明によれば、自立電源型の発信機を用いた情報収集システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<情報収集システム>
図1は、情報収集システムの一構成例を示す概念図である。本構成例の情報収集システム1は、少なくとも一つ(通常は複数)の発信機10と、複数の受信機20と、サーバ30と、を有する。
【0019】
発信機10は、購買者A1(移動体の一例)によって操作されるショッピングカートB1(店舗備品の一例)に搭載されており、購買者A1の歩行に伴って店舗X1(監視対象エリアの一例)内を移動する。発信機10は、外部から電力供給を受けずに動作することが可能な自立電源型(いわゆるアクティブタグ)である。発信機10は、その特徴的な動作として、購買者A1の移動量に応じたタイミングで、各々に固有の発信機IDを自発的に間欠発信する。このような発信動作の技術的意義については、後ほど詳細に説明する。
【0020】
受信機20は、購買者A1が自由に移動することのできる店舗X1内に分散して設けられており、その近傍に存在する発信機A1から非同期で発信された発信機IDを受信するための受信アンテナである。受信機20は、サーバ30に有線または無線で接続されており、受信した発信機IDをサーバ30に伝達する。受信機20には、それぞれ固有の受信機IDが付されており、サーバ30によって一元的にID管理されている。
【0021】
サーバ30は、発信機10から発信された発信機IDと、その発信機IDを受信した受信機20の位置情報(受信機IDと関連付けられた店舗X1内での座標データ)と、発信機IDの受信時刻(RTC[real time clock]データ)とを関連付けて管理する。サーバ30は、店舗X1に設けてもよいし、複数の店舗X1を統括的に管理する中央管理施設に設けてもよい。サーバ30で管理されるデータベースの内容については、後ほど具体例を挙げて説明する。
【0022】
<発信機>
図2は、発信機10の一構成例を示すブロック図である。本構成例の発信機10は、発電部11と、蓄電部12と、記憶部13と、制御部14と、発信部15と、アンテナ部16と、を含む。
【0023】
発電部11は、購買者A1の歩行に伴う運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電部11としては、例えば、ショッピングカートB1に設けられたキャスターの回転運動によって発電する整流子発電機や、発信機10に加わる振動によって発電するMEMS[micro electro-mechanical systems]振動発電機を用いることができる。このような発電部11を備える構成であれば、電池の交換作業や充電作業が一切不要となる。従って、発信機10を外部電源型(いわゆるパッシブタグ)とした場合と同等のメンテナンスフリーを実現することが可能となる。
【0024】
蓄電部12は、発電部11で生成された電気エネルギーを蓄えて充電電圧Vcを発信機10の各部に出力する。蓄電部12としては、キャパシタやリチウムイオン二次電池などを用いることができる。
【0025】
記憶部13は、発信機10に固有の発信機IDを不揮発的に記憶する。記憶部13としては、EEPROM[electrically erasable programmable read-only memory]、OTPROM[one time programmable ROM]、或いは、フラッシュメモリなどを用いることができる。
【0026】
制御部14は、充電電圧Vcが所定の動作可能電圧Vdrvに達する毎にその供給を受けて動作し、記憶部13のアクセス制御(発信機IDの読み出し制御)や発信部15の駆動制御(発信機IDに応じたアンテナ駆動信号の変調制御)などを行う。
【0027】
発信部15は、充電電圧Vcが所定の動作可能電圧Vdrvに達する毎にその供給を受けて動作し、制御部14から入力されるアンテナ駆動信号に基づいてアンテナ部16を駆動することにより、発信機IDの発信処理を行う。
【0028】
アンテナ部16は、発信機IDに応じた変調処理が施されている電気信号を電波に変換して発信機1の外部に出力する。
【0029】
<発信タイミング>
図3は、購買者の移動量(延いては発電部11の発電量)と発信タイミングとの関係を示すタイミングチャートであり、(a)欄及び(b)欄には、それぞれ、異なる購買者A1a及びA1bに各々携行されている発信機10の充電電圧Vcが時間的に変化する様子が描写されている。
【0030】
購買者A1a及びA1bは、所望の商品を購入するために店舗X1内を各々自由に移動する。ただし、各人の歩行速度や足を止めるタイミングは、当然のことながら不規則的に変化する。すなわち、購買者A1の歩行に伴う充電電圧Vcの充電速度は、店舗X1内における購買者A1a及びA1bの移動の仕方に応じて逐次的に変化する。
【0031】
その結果、充電電圧Vcが動作可能電圧Vdrvに達するまでの所要時間が千差万別となるので、発信機IDの発信タイミングも自ずとランダムなものとなる。例えば、(a)欄の例では、時刻t11、時刻t12、及び、時刻t13において、それぞれ発信IDの発信タイミングが到来しているが、(b)欄の例では、時刻t21、時刻t22、及び、時刻t23において、それぞれ発信IDの発信タイミングが到来している。
【0032】
このように、購買者A1の移動量に応じたタイミングで、各々に固有の発信機IDを自発的に間欠発信することにより、複雑な調停処理を要することなくコリジョンを未然に回避することが可能となる。
【0033】
また、上記の構成によれば、充電電圧Vcが動作可能電圧Vdrvに達しない限り、制御部14や発信部15は動作することができない。従って、別途のイネーブル制御などを要することなく、発信機IDの発信タイミングを決定することができるので、発信機10を極めてシンプルに構成することが可能となる。また、購買者A1が足を止めている間は発信動作が行われないので、不必要な通信混雑も避けることができる。
【0034】
ただし、購買者A1の移動量に応じた発信タイミングの制御手法については、これに限定されるものではなく、例えば、ショッピングカートB1のキャスター回転数を計測する回転計測部を別途設けた上で、キャスター回転数が所定値に達する毎に発信機IDを発信するように発信部15を制御してもよい。また、発信機10をショッピングカートB1ではなく買い物かごB1’(
図7(b)を参照)に搭載する場合には、購買者A1の歩数を計測する歩数計測部を別途設けた上で、歩数が所定値に達する毎に発信機IDを発信するように発信部15を制御してもよい。
【0035】
これらの構成を採用した場合には、回転計測部や歩数計測部が別途必要になるものの、購買者A1の移動と発電動作とを切り離すことができる。従って、発電部11として光電変換素子(光電池)を用いたり、或いは、発電部11に代えて乾電池や充電池などを用いたりすることが可能となり、システム設計の幅が広がる。
【0036】
なお、本図の例では、発信機IDの発信動作毎に充電電圧Vcが完全に消費されているが、制御部14を継続的に動作させておく必要がある場合には、発信機IDの発信動作を行った後も制御部14が動作し得るだけの充電電圧Vcが残るように、動作可能電圧Vdrvを引き上げておけばよい。
【0037】
<購買行動分析>
図4は、店舗X1のフロアマップを示す模式平面図である。店舗X1の商品売り場(例えば食料品売り場)には、複数の商品陳列棚40が設置されている。購買者A1は、商品陳列棚40の間に設けられた通路を自由に移動することができる。本図では、購買者A1がショッピングカートB1を押しながら動線Yを辿り、最終的にPOS[point of sale system]レジスター50で購入商品の決済を行った様子が模式的に描写されている。
【0038】
なお、ショッピングカートB1には、購買者A1の移動量に応じたタイミングで各々に固有の発信機IDを自発的に間欠発信する発信器10が搭載されている。また、店舗X1には、近傍に存在する発信機A1から発信された発信機IDを受信してサーバ30(本図では不図示)に送出する受信機20が複数設けられている。本図では、図示の便宜上、商品陳列棚40に受信機20が配置されているが、受信機20の配置箇所はこれに限らず、通路の床下や天井に受信機20を配置しても構わない。
【0039】
動線Y上の丸マークは、それぞれ、発信機10が発信機IDを発信したID発信位置を示している。先に述べたように、発信機10は、充電電圧Vcが動作可能電圧Vdrvに達する毎に(すなわち購買者A1が一定距離を移動する毎に)発信機IDを発信する。従って、動線Y上のID発信位置はほぼ等間隔となる。
【0040】
以下では、購買者A1が商品売り場に入場した直後のID発信位置Y1〜Y8に着目しながら、サーバ30で管理されるデータベースの内容について具体的に説明する。
【0041】
図5は、サーバ30で管理されるデータベースの一例を示すデータテーブルである。データベースでは、発信機ID(TXID)と、シリアルナンバーSNと、受信機ID(RXID)と、受信時刻(RTC)と、が相互に関連付けられている。なお、欄外に記載された<Y2>〜<Y8>は、購買者A1(発信機10)が
図4のID発信位置Y2〜Y8に存在することを示している。
【0042】
発信機ID(TXID)は、発信機10から間欠的に発信される端末識別データ(本図では「001」)である。
【0043】
シリアルナンバーSNは、発信機IDの発信毎に1つずつインクリメントされていく発信回数カウントであり、発信機ID(TXID)と共に発信機10から発信される。シリアルナンバーSNは、発信機10の制御部14でインクリメントすればよい。シリアルナンバーSNは、購買者A1による購買動作の開始時点や終了時点で初期値にリセットされるものではない。すなわち、購買者A1がPOSレジスター50を通過してショッピングカートB1の使用を終了しても、シリアルナンバーSNはそれまでのカウント値に保持される。このような構成とすることにより、情報収集システムをより簡易に構築することが可能となる。シリアルナンバーSNを付加することの技術的意義については、後ほど具体例を挙げて説明する。
【0044】
受信機ID(RXID)は、複数の受信機20に各々固有の端末識別データであり、サーバ30によって統括的に管理されている。なお、サーバ30は、受信機IDと受信機20の位置情報(店舗X1内での座標データ)とを関連付けた位置データベースを別ファイルとして保持している。従って、購買者A1の動線をサーバ30で分析する際には、
図5のデータベースだけでなく、受信機IDを基にして上記の位置データベースが参照して使用される。
【0045】
受信時刻(RTC)は、発信機10から発信された発信ID(TXID)を受信機20が受信したときの時刻データである。
【0046】
以下では、
図4左端の商品陳列棚40に並べられた受信機20−1〜20−6の受信機ID(RXID)が各々「01」〜「06」であるものとし、動線Yで示した購買者A1の移動例に即して、サーバ30で管理されるデータベースの内容やその分析手法を具体的に説明する。
【0047】
ID発信位置Y1において、発信機10が発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(例えば0122)を発信したとき、その近傍にはこれを受信できる受信機20が1つも存在しない。従って、サーバ30のデータベースには、何ら情報が格納されない。
【0048】
ID発信位置Y2において、発信機10から発信された発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(0123)は、その近傍に存在する受信機20−1により受信される。従って、サーバ30のデータベースでは、TXID(001)、SN(0123)、RXID(01)、及び、受信時刻(10:00:15)が相互に関連付けて管理される。
【0049】
ID発信位置Y3において、発信機10から発信された発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(0124)は、その近傍に存在する受信機20−2により受信される。従って、サーバ30のデータベースでは、TXID(001)、SN(0124)、RXID(02)、及び、受信時刻(10:00:30)が相互に関連付けて管理される。
【0050】
ID発信位置Y4において、発信機10から発信された発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(0125)は、その近傍に存在する受信機20−3により受信される。従って、サーバ30のデータベースでは、TXID(001)、SN(0125)、RXID(03)、及び、受信時刻(10:01:50)が相互に関連付けて管理される。
【0051】
ID発信位置Y5において、発信機10から発信された発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(0126)は、何らかの通信障害(コリジョンなど)によって、いずれの受信機20でも受信されていない。従って、サーバ30のデータベースには、何ら情報が格納されない。
【0052】
ID発信位置Y6において、発信機10から発信された発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(0127)は、その近傍に存在する受信機20−4により受信される。従って、サーバ30のデータベースでは、TXID(001)、SN(0127)、RXID(04)、及び、受信時刻(10:02:30)が相互に関連付けて管理される。
【0053】
ID発信位置Y7において、発信機10から発信された発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(0128)は、その近傍に存在する受信機20−5により受信される。従って、サーバ30のデータベースでは、TXID(001)、SN(0128)、RXID(05)、及び、受信時刻(10:02:45)が相互に関連付けて管理される。
【0054】
ID発信位置Y8において、発信機10から発信された発信機ID(001)とシリアルナンバーSN(0129)は、その近傍に存在する受信機20−6により受信される。従って、サーバ30のデータベースでは、TXID(001)、SN(0129)、RXID(06)、及び、受信時刻(10:04:05)が相互に関連付けて管理される。
【0055】
ここまでのデータベース内容から分析される購買者A1の購買行動について説明する。まず、上記一連の受信機ID(より詳細には受信機IDに紐付けられている各受信機の位置情報)を時系列的に繋げていくことにより、購買者A1の動線Y(例えば、店舗X1の商品売り場に入場してから、
図4左端の商品陳列棚40に沿って商品売り場の奥へと通路を進んでいったこと)が分かる。
【0056】
また、上記一連の受信時刻を差分することにより、購買者A1の移動速度を把握することができる。例えば、ID発信位置Y2〜Y4での各受信時刻から、購買者A1は、受信機20−1近傍から受信機20−2近傍まで15秒で移動したのに対して、受信機20−2近傍から受信機20−3近傍まで移動するには1分20秒を要したことが分かる。このことから、購買者A1は、受信機20−1と受信機20−2との間に陳列された商品にはさほど関心を示さずに通過したが、受信機20−2と受信機20−3との間に陳列された商品には興味を持って足を止めた可能性があることが分かる。
【0057】
また、ID発信位置Y4〜Y6に着目すると、シリアルナンバーSNが1つ抜けていることを把握することができる。このように、発信機ID(TXID)にシリアルナンバーSNを付しておけば、何らかの要因で通信が不成立となった場合であっても、データベースの内容(本図の例では、通信不成立となったID発信位置Y5の座標や、発信機IDを正しく受信できていたと仮定した場合の受信時刻)を補完することが可能となる。また、ID発信位置Y5を推定することができれば、その通信が不成立となった要因(受信機20の故障や配置ミスなど)を速やかに調査ないし改善することも可能となる。
【0058】
また、購買者A1が最終的に購入商品の決済を行う際、POSレジスター50は、購買者A1の購入情報(購入品目、性別、年齢層などのセグメント情報)と、ショッピングカートB1に搭載された発信機10の発信機IDとを関連付けてサーバ30に送出する。
【0059】
このような情報収集システム1を構築することにより、サーバ30では、購買者A1の動線Yに関する先述のデータベースと購買者A1の購入情報とを互いにリンクさせて管理することができる。従って、例えば、店舗X1内において、購買者A1がどこの通路を通り、どの場所にどれだけ滞在し、結果として何を購入したかという一連の購買行動を人手を要さずに調査することができる。その調査結果は、商品の仕入れ数や商品構成の決定、陳列方法の変更、通路レイアウトや通路幅の最適化など、様々な店舗改善業務に活用することが可能である。
【0060】
<詳細位置検出>
図6は、受信強度に基づく位置検出手法の一例を示す概念図である。本図の例では、発信機10の周囲に4つの受信機21〜24が存在し、受信機21〜24では、互いに異なる受信強度で発信機IDが受信されているものとする。
【0061】
なお、本図では、受信強度の差違を視覚的に理解できるように、発信機10の電波到達範囲Z10と受信機21〜24の受信可能範囲Z21〜Z24が破線円で示されており、互いの重複面積(ハッチング部分)が受信強度であるように描写されている。本図の例では、受信機21での受信強度が最も大きく、受信機22及び23での受信強度がそれに続いており、受信機24での受信強度が最も小さいことが分かる。
【0062】
このように、発信機10から発信された発信機IDを複数の受信機21〜24で受信した場合、その組み合わせと受信強度の相対比から、発信機10と受信機21〜24との相対距離を推定することができる。従って、サーバ30により、発信機IDと共に受信機21〜24での受信強度も関連付けて管理することにより、さらに詳細な購買者A1(発信機10)の位置情報を得ることが可能となる。
【0063】
店舗X1に情報収集システムを導入する場合には、受信強度に基づく位置検出手法の適用が主になると考えられる。当該手法を適用する場合には、発信機10から発信された発信機IDが複数の受信機20まで届く。従って、発信機10による一度の発信動作に対して、複数台(例えば3台)の受信機20で受信動作に成功する。その結果、同一の発信機ID及びシリアルナンバーSNに対して、複数台分(例えば3台分)の異なる受信機ID及び受信強度データが同時(またはほぼ同時)にそれぞれ関連付けられて記録される。
【0064】
この場合、サーバ30に格納される記録データは、可変長のレコードとする方がよい。すなわち、タイムスタンプ、発信機ID、シリアルナンバーSN、第1の受信機ID、第1の受信強度、第2の受信機ID、第2の受信強度、…、第nの受信機ID、第nの受信強度、<レコードend>の形である。
【0065】
このような記録データに対してサーバ30などによる分析を行うときには、別途のデータベースに格納されている各受信機の位置情報と、各々の受信強度を用いることにより、三点法のような方法で各受信機から送信機に対する相対的な距離を考えて、送信機の位置(座標)を求めることができる。
【0066】
ただし、店舗などでは、頻繁に棚の商品が入れ替えられるなどして、各受信機において送信機に対する相対距離と受信強度との関係がその時々で一定でない場合がある。このような問題を解消するためには、キャリブレーションを行うことが望ましい。例えば、予め座標の分かっている固定ポイント(通路など)から強制的に信号を発信して各受信機での受信強度を記録する、という動作を複数の固定ポイントで順次実施する。そして、その結果をサーバ30で補正値として使用すればよい。
【0067】
<変形例>
図7は、発信機10の搭載先となる店舗備品のバリエーションを示す図である。(a)欄〜(c)欄では、購買者A1が店舗X1で携行する必然性の高いショッピングカートB1、買い物かごB1’、及び、入店許可証B1”に発信機10が搭載されている。このような店舗備品に発信機10を搭載しておけば、購買者A1に対して、「常に監視下に置かれている」という不快感を与えることなく、その購買行動を分析することが可能となる。
【0068】
なお、これまでの説明では、購買者A1の購買行動を監視する監視対象エリアとして、店舗X1の屋内フロアを想定しているが、監視対象エリアはこれに限定されるものではなく、屋内及び屋外を問わず、商品の売買が行われる市場全般(フリーマーケット会場や商店街など)を監視対象エリアに設定することが可能である。
【0069】
また、情報収集システム1は、必ずしもマーケティングツールとしてのみ用いられるものではなく、監視対象エリア内を自由に移動する移動体の位置情報を収集するための手段として、広範な用途に適用することが可能である。以下では、そのバリエーションについて簡単に説明する。
【0070】
図8は、移動体及び監視対象エリアのバリエーションを示す図である。(a)欄では、移動体を患者A2とし、監視対象エリアを病院X2とした患者位置把握システムが示されている。このようなシステムを構築する場合、患者A2が常に身に着けている患者ラベルB2などに発信機10を搭載することが望ましい。また、患者A2を要介護者に読み替えて病院X2を介護施設に読み替えてもよい。なお、患者や要介護者は、医師や看護師、或いは、介護スタッフの目が届かないところで不慮に転倒している場合なども想定される。そのため、発信機10の自立電源に余力がある場合には、発信機10に姿勢センサなどを設け、発信機IDと共に発信されるセンシング結果(転倒の有無など)をサーバ30側で常に監視するようにしてもよい。
【0071】
(b)欄では、移動体を生徒A3とし、監視対象エリアを学校X3とした生徒位置把握システムが示されている。このようなシステムを構築する場合、生徒A3が常に身に着けている名札B3などに発信機10を搭載することが望ましい。また、生徒A3を園児に読み替えて学校X3を幼稚園や保育園と読み替えてもよい。
【0072】
(c)欄では、移動体を家畜A4とし、監視対象エリアを飼育場X4とした家畜位置把握システムが示されている。このようなシステムを構築する場合、家畜A4が常に身に着けている耳標B4などに発信機10を搭載することが望ましい。もしくは、家畜A4の体内に発信機10を埋め込んでも構わない。また、家畜A4を家禽に読み替えてもよい。
【0073】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。