特許第6391512号(P6391512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391512
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】圧力緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/50 20060101AFI20180910BHJP
   F16F 9/348 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   F16F9/50
   F16F9/348
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-63408(P2015-63408)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-183702(P2016-183702A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】塚原 貴
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 知広
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−067880(JP,A)
【文献】 特開2014−101964(JP,A)
【文献】 特開平02−278026(JP,A)
【文献】 特開2009−068626(JP,A)
【文献】 特開2004−116550(JP,A)
【文献】 実公昭38−001408(JP,Y1)
【文献】 特開平10−196797(JP,A)
【文献】 特開平03−113139(JP,A)
【文献】 特開2011−158019(JP,A)
【文献】 特開2011−043220(JP,A)
【文献】 特開2014−084906(JP,A)
【文献】 特開2011−202786(JP,A)
【文献】 特開2011−202789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/50
F16F 9/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するシリンダと、
前記シリンダ内において前記シリンダの軸方向に移動可能に設けられ、前記シリンダ内の空間を第1液室と第2液室とに区画する区画部と、
前記区画部の移動に伴って前記液体が流れる第1流路を形成する第1流路形成部と、
前記第1流路形成部の前記第1流路を開閉する第1バルブと、
前記区画部の移動に伴って、前記第1バルブが前記第1流路を開く前記液体の流れとは別に前記液体が流れる第2流路を形成する第2流路形成部と、
前記第2流路形成部の前記第2流路を開閉する第2バルブと、
前記第2バルブに接触しながら移動可能に設けられ、前記第2流路に向けて前記第2バルブを押し付ける押付部と、
前記押付部を保持する保持部と、
前記押付部と前記保持部との間に前記第2流路に連絡して前記液体を収容する収容室を形成するとともに、前記軸方向において前記押付部および前記保持部に対し移動可能に設けられる移動部と、
を備えることを特徴とする圧力緩衝装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記軸方向と交差する方向において前記押付部と並んで配置される請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項3】
前記第1バルブは、前記液体が流れる開口部を有し、
前記第2流路は、前記開口部を介して前記第1流路に連絡する請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項4】
前記押付部は、円筒形状に形成され、
前記移動部は、円環形状に形成され、前記保持部の外側と前記押付部の内側との間に配置される請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項5】
前記保持部は、円筒形状または円柱形状に形成されるとともに、外周部に周方向に形成される溝部を有し、
前記移動部は、前記溝部にて前記軸方向に移動可能に設けられるとともに、前記保持部と前記押付部との間を封止する環形状の封止部材である請求項1に記載の圧力緩衝装置。
【請求項6】
前記溝部は、前記保持部の外側から内側にかけて軸方向における幅が変化する請求項5に記載の圧力緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を用いて緩衝する圧力緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の懸架装置は、乗心地や操縦安定性を向上させるために、走行中に路面から車体へ伝達される振動を適切に緩和する圧力緩衝装置を備えている。この種の圧力緩衝装置において、例えば、発生させる減衰力を条件に応じて変更可能なものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−43220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、発生させる減衰力を変更可能な圧力緩衝装置を、簡易な構成により実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、液体を収容するシリンダと、前記シリンダ内において前記シリンダの軸方向に移動可能に設けられ、前記シリンダ内の空間を第1液室と第2液室とに区画する区画部と、前記区画部の移動に伴って前記液体が流れる第1流路を形成する第1流路形成部と、前記第1流路形成部の前記第1流路を開閉する第1バルブと、前記区画部の移動に伴って、前記第1バルブが前記第1流路を開く前記液体の流れとは別に前記液体が流れる第2流路を形成する第2流路形成部と、前記第2流路形成部の前記第2流路を開閉する第2バルブと、前記第2バルブに接触しながら移動可能に設けられ、前記第2流路に向けて前記第2バルブを押し付ける押付部と、前記押付部を保持する保持部と、前記押付部と前記保持部との間に前記第2流路に連絡して前記液体を収容する収容室を形成するとともに、前記軸方向において前記押付部および前記保持部に対し移動可能に設けられる移動部と、を備えることを特徴とする圧力緩衝装置である。
そして、移動部が押付部および前記保持部と共に収容室を形成し、かつ移動部自体が移動可能に設けられることによって、簡易な構成により発生させる減衰力を変更することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発生させる減衰力を変更可能な圧力緩衝装置を、簡易な構成により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の油圧緩衝装置の全体構成図である。
図2】実施形態1のピストン部の断面図である。
図3】(A)〜(C)は、実施形態1の油圧緩衝装置の動作を説明するための図である。
図4】変形例1のピストン部の断面図である。
図5】実施形態2のピストン部の断面図である。
図6】(A)〜(C)は、変形例2のピストン部の断面図である。
図7】実施形態3の油圧緩衝装置の全体構成図である。
図8】変形例3のピストン部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
−実施形態1−
図1は、実施形態1の油圧緩衝装置1の全体構成図である。
図2は、実施形態1のピストン部30の断面図である。
なお、以下の説明においては、図1に示す油圧緩衝装置1の軸方向における図中下側を「一方側」と称し、図中上側を「他方側」と称する。また、油圧緩衝装置1の半径方向の中心軸側を「半径方向内側」、油圧緩衝装置1の半径方向の外側を「半径方向外側」と称する。
【0009】
<油圧緩衝装置1の構成・機能>
図1に示すように、油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置)は、シリンダ部10と、他方側がシリンダ部10の外部に突出して設けられるとともに一方側がシリンダ部10の内部にスライド可能に挿入されるロッド部20と、ロッド部20の一方側の端部に設けられるピストン部30と、シリンダ部10の一方側の端部に配置されるボトムバルブ部70とを備えている。
そして、油圧緩衝装置1は、例えば四輪自動車や二輪自動車等において車体と車軸との間に設けられて、シリンダ部10に対するロッド部20の振幅運動の減衰を行う。
【0010】
シリンダ部10は、シリンダ11と、シリンダ11の外側に設けられる外筒体12と、外筒体12の一方側の端部に設けられる底部13とを備えている。そして、本実施形態では、シリンダ11と外筒体12との間にオイルが溜まるリザーバ室Rが形成される。
また、シリンダ部10は、シリンダ11の他方側の端部に設けられるロッドガイド14と、外筒体12の他方側の端部を閉じるシール部材15とを有している。
【0011】
ロッド部20は、本実施形態では、軸方向に延びて形成されるロッド部材21と、ロッド部材21の一方側の端部に設けられる一方側取付部21aと、ロッド部材21の他方側の端部に設けられる他方側取付部21bとを有する。
一方側取付部21aは、ピストン部30を保持する。また、他方側取付部21bには、油圧緩衝装置1を自動車などの車体などに連結するための連結部材(不図示)が取り付けられる。
【0012】
ピストン部30は、他方側に設けられる第1ピストン部40と、第1ピストン部40の一方側であって内側に設けられる第2ピストン部50と、第2ピストン部50の一方側に設けられる減衰力調整部60とを備える。
そして、本実施形態において、第1ピストン部40のピストンリング44(図2参照)は、シリンダ11内の空間のオイルを収容する第1油室Y1と第2油室Y2とに区画する。また、ピストンリング44の一方側に第1油室Y1が形成され、ピストンリング44の他方側に第2油室Y2が形成される。
なお、第1ピストン部40、第2ピストン部50および減衰力調整部60の各構成については後に詳しく説明する。
【0013】
ボトムバルブ部70は、軸方向に貫通する複数のボトム圧側油路711およびボトム圧側油路711よりも半径方向外側にて軸方向に貫通する複数のボトム伸側油路712を有するバルブボディ71と、バルブボディ71の一方側に設けられる圧側バルブ721と、バルブボディ71の他方側に設けられる伸側バルブ722とを備える。また、伸側バルブ722は、半径方向においてボトム圧側油路711に対応する位置に油孔722Rを有する。
そして、ボトムバルブ部70は、油圧緩衝装置1の一方側の端部に設けられて、第1油室Y1とリザーバ室Rとを区分する。
【0014】
そして、本実施形態に係る油圧緩衝装置1の概略構成を説明する。
図2に示すように、実施形態1の油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置)は、オイル(液体)を収容するシリンダ11(シリンダ)と、シリンダ11内においてシリンダ11の軸方向に移動可能に設けられ、シリンダ11内の空間を第1油室Y1(第1液室)と第2油室Y2(第2液室)とに区画するピストンリング44(区画部)と、ピストンリング44の移動に伴ってオイルが流れる伸側油路411(第1流路)を形成する第1バルブシート41(第1流路形成部)と、第1バルブシート41の伸側油路411を開閉する伸側減衰バルブ42(第1バルブ)と、伸側減衰バルブ42が伸側油路411を開くオイルの流れとは別に、オイルが流れる内側流路511(第2流路)を形成する第2バルブシート51(第2流路形成部)と、第2バルブシート51の内側流路511を開閉する第2バルブ52(第2バルブ)と、第2バルブ52に接触しながら移動可能に設けられ、内側流路511に向けて第2バルブ52を押し付けるスプール62(押付部)と、スプール62を保持するベース部材61(保持部)と、スプール62とベース部材61との間に内側流路511に連絡してオイルを収容する背圧室60C(収容室)を形成するとともに、軸方向においてスプール62およびベース部材61に対し移動可能に設けられるフリーピストン64(移動部)とを備える。
以下、これらの構成について詳述する。
【0015】
〔ピストン部30の構成・機能〕
[第1ピストン部40]
図2に示すように、第1ピストン部40は、第1バルブシート41と、第1バルブシート41の一方側に設けられる伸側減衰バルブ42と、第1バルブシート41の他方側に設けられる圧側減衰バルブ43と、第1バルブシート41の半径方向外側に設けられるピストンリング44とを有する。
【0016】
(第1バルブシート41)
第1バルブシート41は、有底円筒形状に形成された部材である。そして、第1バルブシート41は、他方側に形成される流路形成部41aと、流路形成部41aの一方側に形成される開口部41bとを有する。
【0017】
流路形成部41aは、複数の伸側油路411と、複数の圧側油路412と、一方側に形成される第1環状凹部413とを有する。
伸側油路411は、貫通孔41Hよりも半径方向の外側にて、斜めに貫通して形成される。圧側油路412は、貫通孔41Hよりも半径方向の外側にて、軸方向に貫通して形成される。第1環状凹部413は、環状に形成されるとともに、他方側に向けて窪んで形成される。
また、開口部41bは、本実施形態では、内側に、伸側減衰バルブ42および減衰力調整部60を収容する。
【0018】
(伸側減衰バルブ42)
伸側減衰バルブ42は、ロッド部材21の一方側取付部21aを通す開口42Hを有する円盤状の金属材である。伸側減衰バルブ42は、第1バルブシート41の一方側の端部に向けて押さえつけられる。そして、伸側減衰バルブ42は、第1バルブシート41の伸側油路411の一方側を開閉可能にするとともに、圧側油路412の一方側を常に開放する。
また、伸側減衰バルブ42は、開口42Hの周方向における一部に、第1内側オリフィス421を有している。第1内側オリフィス421は、本実施形態では、半径方向に延びる切り欠き状に形成される。そして、第1内側オリフィス421は、一方側にて後述する軸方向流路511Sに対向し、他方側にて第1環状凹部413に対向する。
【0019】
(圧側減衰バルブ43)
圧側減衰バルブ43は、ロッド部材21の一方側取付部21aを通す開口43Hを有する円盤状の金属材である。圧側減衰バルブ43は、第1バルブシート41の他方側の端部に向けて押さえつけられる。そして、圧側減衰バルブ43は、第1バルブシート41の伸側油路411の他方側を常に開放するとともに、圧側油路412の他方側を開閉可能にする。
【0020】
(ピストンリング44)
ピストンリング44は、シリンダ11の内周面に摺動可能に接触して設けられる。そして、ピストンリング44は、第1バルブシート41とシリンダ11との間の摩擦抵抗を低減する。
【0021】
[第2ピストン部50]
図2に示すように、第2ピストン部50は、第2バルブシート51と、第2バルブシート51の一方側に設けられる第2バルブ52とを有する。
【0022】
(第2バルブシート51)
第2バルブシート51は、ロッド部材21の一方側取付部21aを通す貫通孔51Hを有する。また、第2バルブシート51は、半径方向内側に形成される内側流路511と、一方側の端部に形成される第2環状凹部512と、他方側に形成されるテーパ部513とを有している。
【0023】
内側流路511は、軸方向に形成される軸方向流路511Sと、半径方向に形成される径方向流路511Rとを有する。そして、軸方向流路511Sは、一方側にて径方向流路511Rに連絡し、他方側にて伸側減衰バルブ42の第1内側オリフィス421に連絡する。また、径方向流路511Rは、半径方向内側にて軸方向流路511Sに連絡し、半径方向外側にて第2環状凹部512に連絡する。つまり、本実施形態では、内側流路511(第2流路)は、第1内側オリフィス421(開口部)を介して第1バルブシート41の伸側油路411(第1流路)に連絡している。
第2環状凹部512は、環状に形成されるとともに、他方側に向けて窪んで形成される。
テーパ部513は、半径方向内側から外側に向かうに従って、一方側に向けて傾斜する。そして、テーパ部513は、伸側減衰バルブ42が伸側油路411を開放する際、伸側減衰バルブ42が一方側に向けて変形する空間を確保する。
【0024】
(第2バルブ52)
第2バルブ52は、ロッド部材21の一方側取付部21aを通す開口52Hを有する円盤状の金属材である。
第2バルブ52は、第2バルブシート51の一方側の端部に押さえつけられる。そして、第2バルブ52は、第2バルブシート51の第2環状凹部512を開閉可能にする。つまり、第2バルブ52は、内側流路511および第2環状凹部512を流れるオイルの流れを開閉する。
また、第2バルブ52は、開口52Hの周方向における一部に、第2内側オリフィス521を有している。第2内側オリフィス521は、半径方向に延びる切り欠き状に形成される。そして、第2内側オリフィス521は、一方側にて後述するベース部材流路611に連絡し、他方側にて内側流路511に連絡する。
【0025】
[減衰力調整部60]
図2に示すように、減衰力調整部60は、ベース部材61と、ベース部材61の半径方向外側に設けられるスプール62と、ベース部材61に設けられるストッパ63と、スプール62とベース部材61との間に設けられるフリーピストン64と、フリーピストン64の一方側に設けられるウェーブワッシャ65と、ベース部材61およびスプール62の間であって他方側に設けられるプリロードスプリング66とを有する。
【0026】
(ベース部材61)
ベース部材61は、ロッド部材21の一方側取付部21aを通す貫通孔61Hを有する。また、貫通孔61Hは、内側に雌ねじが形成され、一方側取付部21aに形成される雄ねじに接続する。そして、本実施形態では、ベース部材61が、第1ピストン部40および第2ピストン部50をロッド部材21に保持させる。
また、ベース部材61は、他方側の端部に、半径方向に延びるベース部材流路611を有している。ベース部材流路611は、半径方向内側にて第2内側オリフィス521に連絡し、半径方向外側にてスプール62の後述する開口部622に連絡する。
【0027】
(スプール62)
スプール62は、略円筒状に形成される部材である。そして、スプール62は、ベース部材61やフリーピストン64に対して相対的に移動可能に設けられる。なお、本実施形態では、スプール62は、シリンダ11の軸方向に移動する。
また、スプール62は、他方側に設けられる接触部621と、半径方向内側に形成される開口部622とを有している。接触部621は、他方側において第2バルブ52に接触し、第2バルブ52を押し付ける箇所を形成する。開口部622は、ベース部材61との間に、オイルが流通可能な隙間を形成する。そして、開口部622は、後述する背圧室60Cにおけるオイルの入り口として機能する。
【0028】
(ストッパ63)
ストッパ63は、環状に形成された部材である。ストッパ63は、本実施形態では、ベース部材61に固定される。そして、ストッパ63は、フリーピストン64に接触し、フリーピストン64の他方側における移動位置を規制する。
【0029】
(フリーピストン64)
フリーピストン64は、円環形状に形成された部材である。そして、フリーピストン64は、ベース部材61の外側であって、スプール62の内側に設けられる。すなわち、フリーピストン64は、ベース部材61とスプール62との間に取り付けられる。また、シリンダ11の軸方向と交差する方向(直交方向)においてベース部材61およびスプール62と並んで配置される。そして、フリーピストン64は、ベース部材61およびスプール62に対して相対的に移動可能に設けられる。なお、フリーピストン64は、本実施形態では、シリンダ11の軸方向に移動する。
【0030】
また、本実施形態では、フリーピストン64の内周および外周には、内側シール部材641と外側シール部材642とがそれぞれ取り付けられる。内側シール部材641は、フリーピストン64とベース部材61との間を封止する。そして、外側シール部材642は、フリーピストン64とスプール62との間を封止する。
なお、フリーピストン64自体は、後述するようにフリーピストン64が移動した際に、変形しないように構成されている。フリーピストン64の材料には、金属等を用いることができる。
【0031】
そして、本実施形態では、ベース部材61、スプール62およびフリーピストン64は、ベース部材61の外側、スプール62の内側およびフリーピストン64の他方側により、オイルを収容する背圧室60Cを形成する。なお、背圧室60Cには、開口部622、ベース部材流路611、第2内側オリフィス521、軸方向流路511S、第1内側オリフィス421、第1環状凹部413および伸側油路411を流路として、第2油室Y2のオイルが流入する。
また、背圧室60Cのオイルの容量は、上述したように移動可能に構成されるスプール62やフリーピストン64のベース部材61に対する相対位置に応じて変化する。
【0032】
(ウェーブワッシャ65)
ウェーブワッシャ65は、弾性変形する部材である。ウェーブワッシャ65は、一方側がベース部材61に掛かり、他方側がフリーピストン64に接触する。そして、ウェーブワッシャ65は、所定のバネ力によってフリーピストン64を他方側に向けて押し付ける。
なお、フリーピストン64を他方側に向けて押すことができれば、本実施形態のウェーブワッシャ65に限定されず、他の弾性部材を用いても構わない。
【0033】
(プリロードスプリング66)
プリロードスプリング66は、環形状の外径を有し、周方向において離散的に、半径方向外側に突出する突出部を有する。そして、プリロードスプリング66は、他方側の面がスプール62に接触し、一方側の面がベース部材61に接触している。そして、プリロードスプリング66は、スプール62を他方側に押し付けるようにしている。なお、プリロードスプリング66は、プリロードスプリング66の一方側と他方側との間におけるオイルの流れを可能にする。
【0034】
<油圧緩衝装置1の動作>
図3(A)〜図3(C)は、実施形態1の油圧緩衝装置1の動作を説明するための図である。
まず、油圧緩衝装置1の伸張行程時のオイルの流れを説明する。
また、以下では、シリンダ11に対するピストン部30(ロッド部20)の移動に関して、ピストン部30が低周波数で移動する場合と、ピストン部30が高周波数で移動する場合とについてそれぞれ説明する。
【0035】
(低周波数)
まず、ピストン部30が低周波数で移動する場合について説明する。図3(A)に示すように、白抜き矢印のようにシリンダ11に対して軸方向の他方側へ移動する。そうすると、ピストン部30の移動により第2油室Y2内のオイルが押され、第2油室Y2内の圧力が上昇する。
そして、第2油室Y2のオイルは、伸側油路411から第1環状凹部413に流れ込む。さらに、第1環状凹部413のオイルは、第1内側オリフィス421および内側流路511を流れて、第2環状凹部512に流れ込む。そして、オイルは、第2バルブ52を開きながら、第1油室Y1に流れ込む。
なお、第2バルブ52にはスプール62が接触している。ただし、スプール62は、移動可能に設けられており、この状態においては、第2バルブ52が接触することで、一方側に移動する。
【0036】
また、図3(A)に示すように、内側流路511を流れるオイルの一部は、第2内側オリフィス521を流れ、背圧室60Cにも流れ込む。そして、背圧室60Cに流れ込むオイルによって、フリーピストン64がウェーブワッシャ65を縮めながら一方側に向けて移動する。そして、低周波数の場合には、フリーピストン64が一方側に向けて移動する状態が維持される。このように背圧室60Cのオイルの容量が大きくなる状態が維持される限り、背圧室60C内の圧力は、第2バルブ52の他方側におけるオイルの圧力よりも低くなる。そのため、スプール62は、一方側に移動した状態になっている。
【0037】
そして、低周波数の場合、本実施形態の油圧緩衝装置1では、伸側減衰バルブ42は、伸側油路411を塞いだままである。すなわち、低周波数の場合、伸側減衰バルブ42を開きながら伸側油路411を流れるというオイルの流れを迂回するようなオイルの流れが生じる。
【0038】
なお、上述した第2バルブ52を開くオイルの流れが止まると、プリロードスプリング66によって、スプール62が他方側に向けて元に位置に移動する。
【0039】
(高周波数)
続いて、ピストン部30が高周波数で移動する場合について説明する。
高周波数の場合においても、基本的なオイルの流れは、上述した低周波数の場合と同じである。ただし、高周波数の場合には、内側流路511から背圧室60Cに流れ込むオイルの状態に応じて、フリーピストン64、スプール62および第2バルブ52の動作が低周波数の場合とは異なる。
【0040】
図3(B)に示すように、背圧室60Cに流れ込むオイルによって、フリーピストン64が一方側に向けて一気に移動する。そして、フリーピストン64は、ウェーブワッシャ65を最も圧縮させる。そうすると、図3(C)に示すように、背圧室60Cの容積が固定され、背圧室60Cの圧力が上昇する。そして、スプール62が他方側に向けて移動し、第2バルブ52を他方側に押し付ける。その結果、第2バルブ52を開くオイルの流れが遮断される。
【0041】
そうすると、図3(C)に示すように、第2油室Y2のオイルは、伸側油路411を流れるようになる。そして、伸側油路411のオイルは、伸側減衰バルブ42を開きながら、第1油室Y1に流れ出る。本実施形態では、伸側減衰バルブ42を開きながらオイルが流れる場合は、上述した、第2バルブ52を開きながらオイルが流れる場合と比較して、発生する減衰力が大きくなるように設定されている。従って、本実施形態の油圧緩衝装置1では、高周波数の場合には、低周波数の場合と比較して大きな減衰力が発生する。
【0042】
なお、図1に示すように、ボトムバルブ部70においては、ピストン部30の軸方向の他方側への移動によって高まった第2油室Y2のオイルの圧力は、リザーバ室Rと比較して相対的に低くなる。その結果、リザーバ室Rのオイルは、ボトム伸側油路712に流れ込む。そして、ボトム伸側油路712に流れたオイルは、伸側バルブ722を押し開きながら、第1油室Y1に流れ出る。
【0043】
次に、油圧緩衝装置1の圧縮行程時のオイルの流れを説明する。
圧縮行程時においては、ピストン部30がシリンダ11に対して軸方向の一方側へ移動する。そうすると、第1油室Y1内の圧力が上昇する。そして、図3(A)に破線の矢印で示すように、第1油室Y1のオイルは、圧側油路412に流れ込む。そして、圧側油路412に流れたオイルは、圧側減衰バルブ43を開きながら、第2油室Y2に流れ出る。この圧側油路412および圧側減衰バルブ43をオイルが流れる際に生じる抵抗によって、圧縮行程時における減衰力が発生する。
【0044】
なお、図1に示すように、ボトムバルブ部70において、ピストン部30の軸方向の一方側への移動によって高まった第1油室Y1のオイルは、伸側バルブ722の油孔722Rを通って、ボトム圧側油路711にオイルが流れ込む。そして、ボトム圧側油路711に流れたオイルは、圧側バルブ721を押し開きながら、リザーバ室Rに流れ出る。
【0045】
以上のようにして、本実施形態の油圧緩衝装置1では、ピストン部30の移動の周波数に応じて、発生させる減衰力を変更することができる。また、本実施形態では、フリーピストン64が、スプール62およびベース部材61と共に背圧室60Cを形成し、かつフリーピストン64自体が移動可能に設けられて背圧室60Cの容量を変化させている。このように構成することにより、本実施形態の油圧緩衝装置1では、発生させる減衰力の変更を簡易な構成により実現している。
【0046】
また、フリーピストン64が、軸方向に交差する方向においてスプール62と並ぶように並列配置されることによって、軸方向における小型化が図られている。従って、油圧緩衝装置1の軸方向における小型化が実現される。
【0047】
−変形例1−
次に、変形例1の油圧緩衝装置1について説明する。
図4は、変形例1のピストン部30の断面図である。
変形例1のピストン部30は、減衰力調整部60のストッパ163の構成が、実施形態1のストッパ63(図2参照)とは異なるものである。なお、変形例1のピストン部30は、プリロードスプリング66を備えていない。
図4に示すように、変形例1のピストン部30において、ストッパ163は、スプール62に固定されている。そして、ストッパ163は、他方側に向けて移動してきたフリーピストン64に接触するように構成されている。
変形例1のピストン部30において、第2バルブ52を開くオイルの流れが止まった際、ウェーブワッシャ65がフリーピストン64を他方側に向けて移動させる。さらに、フリーピストン64は、ストッパ163に接触する。その結果、スプール62が他方側に向けて移動し、スプール62と第2バルブ52との接触状態が維持される。
このように、変形例1のピストン部30では、ウェーブワッシャ65が、プリロードスプリング66の機能を兼ねることができる。つまり、変形例1のピストン部30では、プリロードスプリング66を必ずしも設ける必要がなくなる。
【0048】
−実施形態2−
次に、実施形態2の油圧緩衝装置1について説明する。
図5は、実施形態2のピストン部230の断面図である。
なお、実施形態2において、上述した実施形態1と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
まず、実施形態2に係る油圧緩衝装置1の概略構成を説明する。
図5に示すように、実施形態2の油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置)は、オイル(液体)を収容するシリンダ11(シリンダ)と、シリンダ11内においてシリンダ11の軸方向に移動可能に設けられ、シリンダ11内の空間を第1油室Y1(第1液室)と第2油室Y2(第2液室)とに区画するピストンリング44(区画部)と、ピストンリング44の移動に伴ってオイルが流れる伸側油路411(第1流路)を形成する第1バルブシート41(第1流路形成部)と、第1バルブシート41の伸側油路411を開閉する伸側減衰バルブ42(第1バルブ)と、伸側減衰バルブ42が伸側油路411を開くオイルの流れとは別に、オイルが流れる内側流路511(第2流路)を形成する第2バルブシート51(第2流路形成部)と、第2バルブシート51の内側流路511を開閉する第2バルブ52(第2バルブ)と、第2バルブ52に接触しながら移動可能に設けられ、内側流路511に向けて第2バルブ52を押し付けるスプール62(押付部)と、スプール62を保持するベース部材61(保持部)と、スプール62とベース部材61との間に内側流路511に連絡してオイルを収容する背圧室60C(収容室)を形成するとともに、軸方向においてスプール62およびベース部材61に対し移動可能に設けられるOリング67(移動部)とを備える。
以下、これらの構成について詳述する。
【0049】
図5に示すように、実施形態2のピストン部230は、減衰力調整部260の構成が、実施形態1の減衰力調整部60の構成と異なるものである。
減衰力調整部260は、ベース部材61と、スプール62と、ベース部材61とスプール62との間に設けられるOリング67とを有する。
【0050】
実施形態2において、ベース部材61の側部において、最も径が大きくなる部分の外径は、スプール62の内径よりも小さく形成されている。
また、ベース部材61には、溝部612が形成される。溝部612は、ベース部材61の外周部において周方向に形成される。そして、溝部612の軸方向の長さLは、溝部612に設けられるOリング67の断面の直径Dよりも大きく形成される。つまり、溝部612は、Oリング67をシリンダ11の軸方向において移動可能に保持する。
なお、本実施形態において、ベース部材61は、例えば溝部612を形成できれば良く、中空の円筒形状や中実の円柱形状に形成することができる。
【0051】
Oリング67には、環形状に形成されたゴム材料を用いることができる。そして、Oリング67は、ベース部材61の溝部612に取り付けられる。そして、Oリング67(移動部)は、溝部612にて軸方向に移動可能に設けられるとともに、ベース部材61(保持部)とスプール62(押付部)との間を封止する。
【0052】
次に、実施形態2のピストン部230の作用を説明する。
なお、実施形態2のピストン部230において、第1ピストン部40および第2ピストン部50のオイルの流れは、実施形態1と同様である。また、以下では、伸張行程時を例に説明する。
【0053】
(低周波数)
ピストン部230が低周波数で移動する場合、実施形態1と同様に、第2バルブ52を開くオイルの流れが形成される。
なお、低周波数の場合において、背圧室60C内にオイルが流入すると、Oリング67は、一方側に向けて移動する。また、本実施形態において、Oリング67は、圧縮変形する。その結果、溝部612(Oリング67の他方側)において収容可能なオイルの容量が大きくなる。つまり、背圧室60Cが収容可能なオイルの量が大きくなる。そして、このように背圧室60Cのオイルの容量が大きくなる状態が維持される限り、背圧室60C内の圧力は、第2バルブ52の他方側におけるオイルの圧力よりも低くなる。そのため、スプール62は、第2バルブ52によって一方側に移動した状態になる。
【0054】
そして、低周波数の場合、本実施形態の油圧緩衝装置1では、伸側減衰バルブ42は、伸側油路411を塞いだままである。すなわち、低周波数の場合、伸側減衰バルブ42を開きながら伸側油路411を流れるというオイルの流れを迂回するようなオイルの流れが生じる。
【0055】
(高周波数)
ピストン部230が高周波数で動作する場合、背圧室60Cにオイルが一気に流入する。その結果、背圧室60Cが収容するオイルの圧力が高まる。そして、スプール62は、他方側に向けて移動する。さらに、スプール62は、第2バルブ52を第2バルブシート51の一方側の端部に押し付ける。これによって、第2バルブ52を開くオイルの流れが停止する。そして、本実施形態では、伸側減衰バルブ42を開くオイルの流れが発生する。
【0056】
実施形態2では、伸側減衰バルブ42を開きながらオイルが流れる場合は、第2バルブ52を開きながらオイルが流れる場合と比較して、発生する減衰力が大きくなるように設定している。従って、実施形態2の油圧緩衝装置1において、高周波数の場合には、低周波数と比較して大きな減衰力が発生する。
【0057】
−変形例2−
図6(A)〜図6(C)は、変形例2のピストン部230の説明図である。
変形例2のピストン部230は、減衰力調整部60の溝部612の形状が、上述した実施形態2とは異なるものである。
図6(A)に示すように、溝部612Aは、断面の形状において、軸方向における幅が、半径方向外側から半径方向内側に向けて次第に小さくなる。つまり、溝部612Aの断面の形状は、溝の手前側が大きくなる台形状に形成される。
図6(B)に示すように、溝部612Bは、断面の形状において、軸方向における幅が、半径方向外側から半径方向内側に向けて次第に大きくなる。つまり、溝部612Bの断面の形状は、溝の奥側が大きくなる台形状に形成される。
以上のように、ベース部材61に形成する溝は、上述した溝部612Aや溝部612Bのように、断面の形状が、ベース部材61の半径方向外側から半径方向内側にかけて軸方向における幅が変化するように構成して構わない。
【0058】
図6(C)に示すように、ベース部材61には、第1溝部612C1と、第1溝部612C1の軸方向の一方側に離れて設けられる第2溝部612C2との複数の溝部を設けても良い。
【0059】
以上のように構成される変形例2のピストン部230では、溝部(溝部612A,溝部612B,溝部612C1および溝部612C2)の構造によって、Oリング67の変位特性が制御される。これによって、変形例のピストン部230では、スプール62の挙動が例えば実施形態2と比較して変わる。このように、ピストン部230では、溝の形状を変えるだけで減衰力特性が変更される。つまり、ピストン部230では、減衰力特性の設定が容易になる。
【0060】
また、Oリング67については、本実施形態では、断面の形状が円形状のものを用いているが、他の形状であっても構わない。また、Oリング67の断面の直径、硬度、締め代、表面処理(摩擦係数)などのOリング67の特性を変更することによっても、ピストン部230における減衰力特性の設定を容易に行える。
【0061】
−実施形態3−
次に、実施形態3が適用される油圧緩衝装置1について説明する。
図7は、実施形態3の油圧緩衝装置1の全体構成図である。
なお、実施形態3において、上述した他の実施形態と同様な構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
まず、実施形態3の油圧緩衝装置1の概略を説明する。
図7に示すように、実施形態3の油圧緩衝装置1(圧力緩衝装置)は、オイル(液体)を収容するシリンダ11(シリンダ)と、シリンダ11内においてシリンダ11の軸方向に移動可能に設けられ、シリンダ11内の空間を第1油室Y1(第1液室)と第2油室Y2(第2液室)とに区画するピストン部80(区画部)と、ピストン部80の移動に伴ってオイルが流れる圧側油路412(第1流路)を形成する第1バルブシート41(第1流路形成部)と、第1バルブシート41の圧側油路412を開閉する圧側減衰バルブ43(第1バルブ)と、圧側減衰バルブ43が圧側油路412を開くオイルの流れとは別に、オイルが流れるボルト流路331H(第2流路)を形成するボルト331(第2流路形成部)と、ボルト流路331Hを開閉する第2バルブ52(第2バルブ)と、第2バルブ52に接触しながら移動可能に設けられ、内側流路511に向けて第2バルブ52を押し付けるスプール62(押付部)と、スプール62を保持するベース部材61(保持部)と、スプール62とベース部材61との間にボルト流路331Hに連絡してオイルを収容する背圧室60C(収容室)を形成するとともに、軸方向においてスプール62およびベース部材61に対し移動可能に設けられるフリーピストン64(移動部)とを備える。
【0063】
図7に示すように、実施形態3の油圧緩衝装置1は、実施形態1のピストン部30に代えてピストン部80を有し、実施形態1のボトムバルブ部70に代えてボトムバルブ部330を有している。
ピストン部80は、ロッド部材21の一方側の端部に取り付けられる。そして、ピストン部80は、ロッド部材21の一方側および他方側の移動に伴って、第1油室Y1と第2油室Y2との間、第1油室Y1とリザーバ室Rとの間におけるオイルの流れを生じさせる。
【0064】
ボトムバルブ部330は、実施形態1のピストン部30と基本構成が同じである。そして、ボトムバルブ部330は、シリンダ11の一方側に端部に固定される。
ボトムバルブ部330において、減衰力調整部60、第1ピストン部40および第2ピストン部50は、ボルト331およびナット332によって保持される。また、実施形態3のボルト331は、ボルト流路331Hを有している。ボルト流路331Hは、一方側にて第2環状凹部512に連絡し、他方側にて第1油室Y1に連絡する。
【0065】
以上のように構成される実施形態3の油圧緩衝装置1においても、ピストン部80の移動に伴って第1油室Y1とリザーバ室Rとの間で生じるオイルの流れに対し、ボトムバルブ部330が減衰力を生じさせる。さらには、簡易な構成であるボトムバルブ部330によって、発生させる減衰力を変更することができる。
【0066】
なお、実施形態3では、ボルト331のボルト流路331Hによって、圧側減衰バルブ43が圧側油路412を開くオイルの流れとは別の流路を形成しているが、この態様に限定するものではない。例えば、実施形態1と同様に、例えば圧側油路412を利用して、圧側減衰バルブ43が圧側油路412を開くオイルの流れとは別の流路を形成するように構成しても良い。
【0067】
−変形例3−
図8は、変形例のピストン部30の断面図である。
変形例3のピストン部30の基本構成は、実施形態1と同様である。ただし、変形例3のピストン部30は、ロッド部材21に対するピストン部30の締結構造が実施形態1とは異なる。
変形例3のピストン部30は、ベース部材61の一方側に、ナット90を有する。ナット90は、ロッド部材21の一方側取付部21aに形成される雄ねじに接続する。また、変形例3のベース部材61は、貫通孔61Hの内側に雌ねじが設けられず、ストレートに形成される。
以上のように構成される変形例3のピストン部30において、ナット90は、減衰力調整部60、第1ピストン部40および第2ピストン部50をロッド部材21に保持させる。そして、例えば、ベース部材61に例えば雌ねじを形成することが必須とはならないため、ベース部材61を焼結によって形成したり、雌ねじ等を形成するための加工を省略できたりするなど、製造コストが低減される。
【0068】
なお、実施形態1〜3では、シリンダ11内にピストン部30(ピストン部230)やボトムバルブ部330を設ける構成について説明しているが、単一のシリンダ11内に設けることに限定される訳ではない。すなわち、シリンダ11とは別にオイルを収容する収容部を設ける。そして、その収容部の内部に上述したピストン部30(ピストン部230)を設ける。そして、ロッド部材21の軸方向の移動に伴って第1油室Y1と第2油室Y2との間でオイルの流れが生じた際に、収容部において減衰力を発生させるとともに、その減衰力を変更するようにしても構わない。
【0069】
また、実施形態1〜3の油圧緩衝装置1では、伸側減衰バルブ42に対し減衰力調整部60を用いて発生させる減衰力の調整を行うようにしているが、この態様に限定する訳ではない。例えば、圧側減衰バルブ43に対して減衰力調整部60を同様に設け、発生させる減衰力を変更するようにしても構わない。さらには、伸側減衰バルブ42および圧側減衰バルブ43の両方に対してそれぞれ減衰力調整部60を設けても良い。この場合においても、油圧緩衝装置1の構成が簡易になり、また、油圧緩衝装置1の軸方向における小型化が図られる。
【0070】
なお、実施形態1〜3の油圧緩衝装置1は、所謂二重管構造であるが、これに限定するものではない。例えば実施形態1〜3の油圧緩衝装置1を三重管構造としても良い。さらに、実施形態1〜実施形態3は、いわゆる単筒式構造である単一管構造に適用しても良い。
さらに、実施形態1および実施形態2のボトムバルブ部70や実施形態3のピストン部80についても、上記の実施形態で示した構造に限らず、減衰機構としての機能を満たすのであれば、他の形状・構成でも良い。
【符号の説明】
【0071】
1…油圧緩衝装置(圧力緩衝装置の一例)、11…シリンダ(シリンダの一例)、41…第1バルブシート(第1流路形成部の一例)、42…伸側減衰バルブ(第1バルブの一例)、44…ピストンリング(区画部の一例)、51…第2バルブシート(第2流路形成部の一例)、52…第2バルブ(第2バルブの一例)、60C…背圧室(収容室の一例)、61…ベース部材(保持部の一例)、62…スプール(押付部の一例)、64…フリーピストン(移動部の一例)、411…第1油路(第1流路の一例)、421…第1内側オリフィス(開口部の一例)、511…内側流路(第2流路の一例)、612…溝部(溝部の一例)、Y1…第1油室(第1液室の一例)、Y2…第2油室(第2液室の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8