特許第6391540号(P6391540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391540
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】エレベーター点検支援システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20180910BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 R
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-165754(P2015-165754)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-43436(P2017-43436A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北原 博道
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−257207(JP,A)
【文献】 特開平09−330489(JP,A)
【文献】 特開2014−229020(JP,A)
【文献】 特開2010−006574(JP,A)
【文献】 特開2012−137529(JP,A)
【文献】 特開2005−122378(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046726(WO,A1)
【文献】 特開2007−305147(JP,A)
【文献】 特開2008−003781(JP,A)
【文献】 特開2005−351681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 3/00 − 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの点検作業を支援するエレベーター点検支援システムにおいて、
作業者の位置及び方向を検出する位置検出部と、
エレベーターの状態を確認する制御信号部と、
点検対象機器を撮影するために作業者が備えるカメラと、
前記カメラで撮影した点検画像を記録する点検記録部と、
作業者を誘導する音声を出力する音声発生部と、
前記音声発生部により作業者を所定の点検対象機器に誘導する前記音声の出力を指示し、前記カメラと所定の点検対象機器が対向したことを検出すると、前記カメラにより所定の点検対象機器を撮影する作業管理部と、
を備え
前記作業管理部は、前記作業者が位置又は方向を明確に把握できる動作を実行した場合、前記制御信号部に指示を出し、前記エレベーターのかご位置を取得して現在位置及び方向を補正する
ことを特徴とするエレベーター点検支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記点検対象機器の発する音を収集するマイクを備え、
前記作業管理部は、前記マイクで収集した音を前記点検記録部に記録することを特徴とするエレベーター点検支援システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記カメラにより前記点検対象機器の状態を撮影した複数の状態画像を記録する状態記録部と、
前記複数の状態画像のうち、所定の作業前後の画像同士を比較し、当該画像同士の類似度に基づいて、前記点検対象機器の復旧状態を判定する状態判定部と、を有することを特徴とするエレベーター点検支援システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記作業管理部は、前記作業者が前記点検対象機器の点検の作業開始、及び作業終了する際に、前記カメラにより前記状態画像の撮影を指示し、
前記状態判定部で前記点検対象機器の復旧が完了していないと判定した場合に、前記音声発生部から注意喚起を行うための音声の出力を指示することを特徴とするエレベーター点検支援システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記エレベーターの点検作業を行う現場ごとの点検対象機器の各々の位置関係及び向きの情報を記録した位置データベースを備え、
前記位置検出部は、前記位置データベースの情報と作業者の位置及び方向とに基づいて、前記カメラと所定の点検対象機器が対向したことを検出することを特徴とするエレベーター点検支援システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御信号部を介して取得するエレベーター信号、または前記作業者と前記所定の点検対象機器との距離及び方向に基づいて撮影される状態画像であって、前記所定の点検対象機器の点検作業の前後の状態を撮影した前記状態画像を記録する状態記録部と、
前記状態記録部に記録される複数の画像の色情報又は局所特徴量を抽出し、当該色情報又は局所特徴量同士を比較することで、前記複数の画像の類似度を判定する状態判定部を有し、当該類似度に基づいて、前記作業者への指示内容を前記音声発生部へ出力することを特徴とするエレベーター点検支援システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
ネットワークを介して前記点検記録部から伝送される点検画像を記録する点検画像受信判定記録部と、
前記点検画像受信判定記録部に記録された点検画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とするエレベーター点検支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター点検支援システムに係わり、特に点検に要する時間を削減し、点検時に発生する作業不良を削減する機能を有するエレベーター点検支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−216137号公報(特許文献1)には、現場機器の保全・点検作業において、作業者の負担を軽減すると共に、保全・点検作業の省力化を図る為に、保守・点検作業に関する情報を保持した複数のデータベースを備えたサーバを設けると共に、作業者が携行する携帯端末には作業者が被るヘルメットに取り付けられたカメラを備えた保守支援システムが記載されている。この保守支援システムでは、保守作業の所定の工程ごとにその進捗状況をカメラで撮影し、サーバに伝送する。サーバはカメラによって撮影された進捗状況に応じてデータベースから作業に必要なデータを抽出して、作業者が被るヘルメットに取り付けられたディスプレイから作業に必要な情報を作業者に提供する(要約参照)。またこの保守支援システムでは、冶具、工具、部品及び資材等にバーコードを貼り付け、携帯したカメラで作業者が撮影する事により、サーバが冶具、工具、部品及び資材等の過不足を判定し、作業者に対して注意喚起を行っている(段落0038−0040参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−216137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、作業者が、ヘルメットに取り付けられたカメラによって保守対象機器(点検対象機器)を撮影することにより、保守作業手順をサーバから受け取り、ディスプレイを介してその作業手順を確認することができる。しかしながら、保守対象機器を特定して撮影する作業は作業者の意志で行う必要があり、作業者が保守対象機器を特定する必要がある。このため、作業者は作業手順をある程度理解している必要がある。
【0005】
本発明の目的は、作業者を点検対象機器まで誘導して、必要な点検作業を実施することができるエレベーター点検支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のエレベーター点検支援システムは、エレベーターの点検作業を支援するエレベーター点検支援システムにおいて、作業者の位置及び方向を検出する位置検出部と、エレベーターの状態を確認する制御信号部と、点検対象機器を撮影するために作業者が備えるカメラと、カメラで撮影した点検画像を記録する点検記録部と、作業者を誘導する音声を出力する音声発生部と、音声発生部により作業者を所定の点検対象機器に誘導する音声の出力を指示し、カメラと所定の点検対象機器が対向したことを検出すると、カメラにより所定の点検対象機器を撮影する作業管理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者を点検対象機器まで誘導して、必要な点検作業を実施することができるエレベーター点検支援システムを提供することができる。
【0008】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るエレベーター点検支援システムの第1実施例を示す図である。
図2】本発明に係るエレベーター点検支援システムを携行した視認者の状態を示す図である。
図3】本発明に係るエレベーター点検支援システムの動作フローチャートである。
図4】本発明に係るエレベーター点検支援システムの点検記録シートの例である。
図5】本発明に係るエレベーター点検支援システムの状態記録シートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
エレベーターの点検においては、点検資格を有する有資格者が現場に赴き、点検対象機器まで移動し、点検対象機器を視認した後に、記憶している判定基準に従い良否判定を行っている。
【0011】
しかし資格を取得するには長期にわたる教育と経験を積む事が必要であり、有資格者の人数は限られているにも拘らず、点検に要する時間の内で良否判定に要する時間は僅かであり、有資格者は現場への移動と各点検対象機器間の移動とに大部分の時間を費やしている。
【0012】
そこで、各点検対象機器を視認するために移動する作業と、良否判定の作業とを分離する事が可能なシステムを構築する。視認するための移動作業と点検対象機器画像の記録は資格を有しない作業者(視認者)が行い、良否判定の作業は有資格者が記録画像を用いて一括して行う。これにより、有資格者は点検機器への移動時間が不要となるので、短時間で多数のエレベーターの良否判定が可能となる。
【0013】
視認者による点検対象機器画像の記録は、視認者が機器に対する良否判定能力を有しない事が前提となるので、視認者の記録位置までの誘導と、点検対象機器の視認をエレベーターの点検支援システムが指示し、視認者が点検対象機器に接近した時点で点検支援システムが画像の記録を行う。或いは、視認者が点検対象機器に接近した時点で、点検支援システムが視認者に指示して画像の記録を行う。
【0014】
以下、本発明に係るエレベーター点検支援システムに関する一実施例を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るエレベーター点検支援システムの第1実施例を示す図である。本実施例ではエレベーターを想定しているが、エスカレーターやその他の機器の点検にも適用可能である。
【0016】
各エレベーターはエレベーター制御盤31を備えており、エレベーター制御盤31はエレベーター信号30を処理している。エレベーター信号30には、かご位置30a、押釦信号30b、ドアスイッチ信号30c、点検中表示指示30d及びドア開閉指示30e等が含まれる。また、エレベーター制御盤31はエレベーター無線装置32を通じて視認者が携行するコントローラー2と通信を行う。
【0017】
本実施例に係るエレベーター点検支援システムは、システム全体を制御するコントローラー2と、視認者の位置情報を検出する位置センサー(位置検出部)3と、視認者に音声による指示を出すスピーカー6と、画像を撮影するカメラ7と、エレベーターの動作音(稼働音)を取り込むマイク8とを備える。コントローラー2、位置センサー3、スピーカー6、カメラ7及びマイク8は、視認者が携行する装置である。視認者に指示を出す装置としては、スピーカー6に替えて、ディスプレイを使用することができる。或いは、ディスプレイとスピーカー6とを併用してもよい。また、スピーカー6は、イヤホンやヘッドホンなどでもよく、音声を出力する音声出力装置で構成することができる。視認者に指示が出ていることを確実に認識させるため、ディスプレイよりも音声出力装置であることが望ましく、本実施例では音声出力装置の一つであるスピーカー6を用いている。
【0018】
位置センサー3は加速度を検出する加速度センサー4と角速度を検出する角速度センサー5とを備える。位置センサー3は、前述のものに限らず、最終的に視認者の位置情報と向きに関する情報とを検出できるセンサーであればよい。
【0019】
コントローラー2は、作業管理部10と、積分器(積分手段)11と、位置計算部12と、制御信号部13と、端末無線装置14と、音声出力部15と、作業データベース(作業DB)16と、点検記録部17と、状態記録部18と、画像入力部19と、開始釦20と、音声入力部21と、端末伝送処理部22と、状態判定部23とを備える。
【0020】
作業管理部10は、点検作業の管理を行う処理部である。点検作業の管理を行うために、作業管理部10は位置計算部12、制御信号部13、作業DB16、点検記録部17、状態記録部18及び開始釦20と接続され、各種の情報や信号が入力される。また、作業管理部10は音声出力部15に接続され、音声出力部15に対して音声の出力を指示する。
【0021】
積分器11は、加速度センサー4の加速度情報を2回積分して位置情報を出力すると共に、角速度センサー5の角速度情報を積分して角度情報を出力する。積分器11は電子部品を用いてハード的に構成してもよいし、演算処理を実行するソフト的手段で構成してもよい。
【0022】
位置計算部12は、積分器11から出力される位置情報及び角度情報に基づいて、視認者の現在位置及び方向(向き)を現在位置・方向記録部12aに記録する。記録された現在位置及び方向は作業管理部10から参照される。位置計算部12は視認者の現在位置及び方向(向き)を検出する位置検出部を構成する。
【0023】
制御信号部13は、作業管理部10からの指示に基づいてエレベーター制御盤31に対して運転や動作に関する指示を出したり、エレベーター制御盤31のエレベーター信号30に基づいてエレベーターの状態を検出したりする。
【0024】
端末無線装置14は、制御信号部13から出力される指示を、エレベーター無線装置32を介してエレベーター制御盤31に送信する。また端末無線装置14は、エレベーター制御盤31のエレベーター信号30を、エレベーター無線装置32を介して受け取り、制御信号部13に入力される。
【0025】
音声出力部15は、複数の音声データを有する音声データベース(音声DB)15aを備える。音声出力部15は、作業管理部10によって選択された音声データ(指示音声)をスピーカー6に向けて出力する。音声出力部15及びスピーカー6は、視認者を点検対象機器に誘導し、また点検作業を指示し、また視認者に対して注意喚起を行う音声発生部を構成する。
【0026】
作業DB16は、点検記録シート17a(図4参照)の作業項目及び作業内容と、状態記録シート18a(図5参照)の実施内容とに関する情報(作業基準シート16a)を有する。作業管理部10は、エレベーターの点検開始時に、作業基準シート16aに基づいて点検記録シート17aと状態記録シート18aとを新規作成し、点検記録シート17aと状態記録シート18aとに基づいて、視認者に点検の指示を出す。
【0027】
点検記録シート17aは、作業項目及び作業内容と点検画像とを関連付けて整理するためのテーブルである。また状態記録シート18aは、作業の実施内容と点検部位の状態画像とを関連付けて整理するためのテーブルである。状態記録シート18aは、特に作業前における点検部位の状態画像と作業後における点検部位の状態画像を記録整理するために使用される。
【0028】
点検記録部17は、点検記録シート17a(図4参照)と画像記録部17bとを有する。点検記録部17では、作業管理部10が、作業状況を点検記録シート17aに記録すると共に、点検画像を画像記録部17bに登録する。点検画像の画像記録部17bへの登録が完了すると、点検記録シート17aの点検画像名の欄に点検画像名が登録される。
【0029】
状態記録部18は、状態記録シート18a(図5参照)と画像記録部18bとを有する。状態記録部18では、作業管理部10が、作業の実施内容を状態記録シート18aに登録し、実施内容に対応する状態画像を画像記録部18bに登録する。状態画像の画像記録部18bへの登録が完了すると、実施内容に対応する、状態記録シート18aの状態画像名の欄に状態画像名が登録される。
【0030】
画像入力部19は、カメラ7で撮影した画像をコントローラー2に入力する入力部である。
【0031】
開始釦20は、視認者が現場に到着した際に押下することにより、視認者の現場到着をコントローラー2に通知するために設けられている。開始釦20の押下により、エレベーター点検支援システムによる一連の点検フローチャートが開始される。
【0032】
音声入力部21は、マイク8で収集した音(稼働音)をコントローラー2に入力する入力部である。本実施例では、マイク8で収集した音は、カメラ7で撮影した画像と関連付けて、画像記録部17bに登録される。点検記録部17に画像記録部17bとは別に音記録部を設け、マイク8で集音した音を音記録部に登録するようにしてもよい。
【0033】
端末伝送処理部22は、点検記録シート17a及び画像記録部17bに登録された点検画像を、ネットワーク34を介して管理センタ39に伝送する。
【0034】
状態判定部23は、画像記録部18bに登録された状態画像の中から、作業開始前の点検部位の状態画像と作業終了後の点検部位の状態画像とを比較することにより、点検部位の復旧漏れの有無を判定する処理部である。状態判定部23は、画像認識技術を用いて、作業開始前後の画像の差異を抽出することにより、復旧漏れの有無を判定する。復旧漏れがある場合は、音声出力部15を介してスピーカー6から、復旧漏れがあることを視認者に通知する音声を流す。
【0035】
状態記録シート18aと画像記録部18bに登録された状態画像とは、点検内容とは直接関係しないため、コントローラー2内で処理される。しかし点検作業の参考資料として、状態記録シート18aと画像記録部18bに登録された状態画像とを、端末伝送処理部22及びネットワーク34を介して、管理センタ39に伝送するようにしてもよい。
【0036】
管理センタ39は、表示器36、受信判定記録部37及びセンタ伝送処理部38を備える。管理センタ39では、有資格者35が点検画像を参照しながら良否判定を行う。
【0037】
センタ伝送処理部38は、ネットワーク34を介してコントローラー2から伝送されてくる点検記録シート17a及び画像記録部17bに登録された点検画像を受け付け、受信判定記録部37に向けて出力する処理部である。
【0038】
受信判定記録部37は、センタ伝送処理部38から出力された点検記録シート17a及び画像記録部17bに登録された点検画像を格納する記録部である。。
【0039】
表示器36は、受信判定記録部37に格納された点検記録シート17a及び画像記録部17bに登録された点検画像を表示し、有資格者35が点検画像を確認しながら判定結果を点検記録シート17aに入力するため装置である。
【0040】
本実施例のエレベーター点検支援システムは、コントローラー2、位置センサー3、スピーカー6、カメラ7及びマイク8のほか、管理センタ39を含む構成であってもよい。
【0041】
図2は、本発明に係るエレベーター点検支援システムを携行した視認者の状態を示す図である。視認者が携行するエレベーター点検支援システムについて、図2を参照して説明する。
【0042】
視認者1は全体を制御するコントローラー2と、位置センサー3と、視認者1に音声指示を発行するスピーカー6と、画像を撮影するカメラ7と、エレベーターの動作音(稼働音)を入力するマイク8とを保持している。
【0043】
本発明では、視認者1は人間を想定して述べているが、指示の通りに動く事が可能であれば、自走機械(ロボット)であっても構わない。この場合、コントローラー2を自走機械(ロボット)のコントローラーに内蔵してもよい。また、本発明における視認者1は、有資格者であってもよく、作業を行う者・ロボットを含めて作業者と言う。
【0044】
図3は、本発明に係るエレベーター点検支援システムの動作フローチャートである。本実施形態に関わる点検管理システムの動作を図3のフローチャート10aに従って説明する。
【0045】
視認者1は、点検すべき現場に到着後にエレベーターホール40(図2参照)に立ち、ハッチドア41(図2参照)を視認した状態で、コントローラー2の開始釦20(図2参照)を押下する。これにより作業管理部10が内蔵するフローチャート10aに従い一連の動作を開始する。
【0046】
開始処理S1では次の処理を行う。
【0047】
フローS11では、位置計算部12が視認者1の現在の立ち位置を位置基準点とし、方向をハッチドア41に対面する方向として、現在位置・方向記録部12aに設定する。その後位置センサー3の出力が発生する毎に、積分器11で加速度センサー4の出力を二重積分して移動距離を計算し、位置計算部12により現在位置・方向記録部12aの現在位置の更新を行う。角速度センサー5の出力は積分器11で積分して回転角を求め、位置計算部12により現在位置・方向記録部12aの方向の更新を行う。
【0048】
積分する事により現在位置・方向記録部12aの現在位置及び方向には誤差が累積される。誤差の累積を防止する為に、ホール釦43を押す等の、視認者1の位置又は方向が明確に把握できる動作が実行された場合には、作業管理部10より制御信号部13に指示を出し、端末無線装置14、エレベーター無線装置32及びエレベーター制御盤31経由で、エレベーター信号30のかご位置30aを読み取り、現在位置・方向記録部12aに記録された現在位置及び方向の補正を行う。
【0049】
なお、作業現場ごとに、各機器・装置の位置関係を記録した二次元、または三次元の位置データベースを有することで、そのデータベースと現在位置との位置関係を比較し、現在の視認者1の立ち位置を把握できる。当該データベースは、作業DB16に備える構成としても良いし、現場ごとに記録手段を備えておき、視認者が現場に到着する際に当該現場の位置データベースを取り込む構成としても良い。位置データベースに、各機器・装置の向き情報を含め、点検対象機器とカメラ7が対向したかの判定に用いてもよいし、点検対象機器またはその近辺にマーカーを付け、カメラ7がそのマーカーを認識したことにより点検対象機器との対向を判定してもよい。例えば、丸印のマーカーであれば、丸印が楕円に認識される場合は、対向していないと判定してもよいし、丸印が所定の大きさ以下であれば、カメラ7の向き自体は合っているが、距離が離れすぎているため、対向していないと判定してもよい。なお、位置データベースには、壁や階数情報を含めることで、点検対象機器とカメラ7が接近していても、実際には壁や天井があって対向していないと判定してもよい。
【0050】
フローS12では、制御信号部13、端末無線装置14及びエレベーター無線装置32を経由してエレベーター制御盤31を制御する。エレベーター制御盤31はエレベーター信号30の点検中表示指示30dを操作し、ハッチドア41に点検中表示42に表示を行う。
【0051】
フローS13では、作業管理部10が、作業DB16の作業基準シート16aを参照して、点検記録シート17aと動作記録シート18aの新規作成を行う。
【0052】
図4は、本発明に係るエレベーター点検支援システムの点検記録シート17aの例である。点検記録シート17aでは、作業項目50と、作業項目50の点検階51と、各作業項目50及び各点検階51における点検位置52と、各点検位置52の作業内容58とがテーブル状に整理されており、作業状況53と、点検画像名54と、判定結果55とを入力できるようになっている。
【0053】
図5は、本発明に係るエレベーター点検支援システムの状態記録シート18aの例である。状態記録シート18aでは、作業の実施内容56と、各実施内容56に対応する状態画像名57を登録できるようになっている。状態記録シート18aには、実施内容56として、一つの作業に対して開始時(開始前)の欄(「開始」と表記)と終了時(終了後)の欄(「終了」と表記)とが設けられ、開始時の状態画像名57と終了時の状態画像名57とが登録される。
【0054】
作業管理部10は開始処理S1が完了したら、ハッチドア41の確認処理S2として次の処理を行う。
【0055】
フローS21では、作業管理部10は、音声出力部15の音声データ15aから指示音声を選択し、スピーカー6により視認者1に、エレベーターホール40側からハッチドア41の開閉を視認するように音声指示を発行する。このように、本実施例のエレベーター点検支援システムでは、点検を行う点検対象機器(点検位置)まで視認者1を誘導する。
【0056】
フローS22では、作業管理部10は、視認者1が指定位置及び指定方向に移動した事を現在位置・方向記録部12aで確認した後に、ハッチドア41の開閉指示を、制御信号部13を経由してエレベーター制御盤31に発行する。この指示を受けてエレベーター制御盤31は、エレベーター信号30のドア開閉指示30eにより、ハッチドア41を開閉動作させる。
【0057】
フローS23では、作業管理部10は制御信号部13によりハッチドア41の開閉動作を監視しており、ドアスイッチ信号30cの動作を検出すると、画像入力部19に接続したカメラ7で撮影した点検画像と音声入力部21に接続したマイク8で集音した動作音とを、点検記録部17内の画像記録部17bに格納する。この場合、視認者1が音声指示により指示された位置に移動しカメラ7が点検対象機器に対向したことを、位置センサー3により検出した状態で、作業管理部10の指示に基づいてカメラ7により点検対象機器の点検画像を撮影する。
【0058】
なお、撮影環境によっては、撮影された点検画像にブレや白飛びが生じたり、画像が暗すぎたりして、有資格者35による点検が困難になる場合も想定される。よって、カメラ7または視認者1にライト(図示しない)を設け、撮影時の照度を一定に保つ構成としても良い。また、撮影時に、連射して複数の画像を格納する構成とすれば、後で撮り直す手間の発生抑止に効果的である。その他、撮影画像にブレ等が発生していると検出した場合には、マイク8から再度点検対象機器にカメラ7を向けるよう指示してもよい。このような撮影方法に関しては、点検画像の撮影だけでなく、状態画像の撮影についても適用することが望ましい。なお、ブレ等の発生の判定については、既存の画像処理技術を用いればよい。
【0059】
点検画像の格納が完了すると、点検記録シート17aに、作業状況53の欄に「済」を登録し、点検画像名54の欄に画像記録部17bに格納した点検画像名を登録する。
【0060】
フローS24では、作業管理部10は視認者1にホール釦43(図2参照)を押すようにスピーカー6から音声指示を発行する。視認者1は、この音声指示に従い、ホール釦43を視認しながらホール釦43を押す。
【0061】
フローS25では、作業管理部10は制御信号部13により押釦信号30bを監視し、ホール釦43が押された時点における押し釦信号30bが動作中の画像を、画像入力19に接続したカメラ7により撮影する。撮影した画像は、点検画像として、点検記録部17内の画像記録部17bに格納される。点検画像の格納が完了すると、点検記録シート17aに、作業状況53の欄に「済」を登録し、点検画像名54の欄に画像記録部17bに格納した点検画像名を登録する。
【0062】
フローS26では、作業管理部10は点検記録シート17aを確認し、作業状況53が記載されていない点検未実施階の有無を判定する。すなわち、作業状況53の欄に「済」が登録されていない階の有無を判定する。
【0063】
点検未実施階が有れば、フローS27で点検未実施階への移動を音声で指示し、現在位置・方向記録部12aの現在位置及び方向が指定の位置及び方向になるのを待ち、指定の位置及び方向になった場合はフローS21より点検作業を繰り返す。
【0064】
作業状況53の全ての欄に「済」が記載された場合は、次の作業項目である塔内確認処理S3を開始する。塔内確認処理S3では次の処理を行う。
【0065】
フローS31では、視認者1にかご上へ乗車指示を行う。視認者1はエレベーターのかご(図示せず)を搭乗に適切な位置に移動させ停止させた後、搭乗可能な位置に移動する。このときのかごの移動や視認者1の移動はコントローラー2により音声指示される。
【0066】
次にハッチドア41を手動で開扉してかご上に乗り込む。
【0067】
フローS32では、作業管理部10は、視認者1がかご上を俯瞰する位置と方向である事を現在位置・方向記録部12aの現在位置及び方向で把握する。次に作業管理部10は、ドアスイッチ信号30cの動作によりハッチドア41が開いた事を確認すると、その時のかご上の画像(状態画像)をカメラ7で撮影する。作業管理部10は、撮影した状態画像を状態記録部18内の画像記録部18bに格納すると共に、状態記録シート18aの実施内容56の欄に実施内容と状態画像名57の欄に状態画像名を登録する。なお、本実施例では、ハッチドア41が存在する場所の作業について説明しているが、エレベーター信号30に依存しない場所で作業を行う場合は、視認者1により手動で作業前後の画像を撮影する構成としても良い。或いは、カメラ7と点検対象機器が対向しており、かつ視認者1と点検対象機器との距離が所定以下・以上になったことを検知して、自動的に状態画像を撮影してもよいし、マイク8で状態画像を撮影するようアナウンスしても良い。
【0068】
フローS33では、作業管理部10は、視認者1にハッチドア41を手動で僅かに開閉するようにスピーカー6から音声指示を出す。視認者1は、この音声指示を受けて、ハッチドア41の開閉を行う。
【0069】
フローS34では、作業管理部10は、制御信号部13によりドアスイッチ信号30cを監視し、ドアスイッチが動作した時の画像(点検画像)をカメラ7で撮影し、この点検画像を点検記録部17内の画像記録部17bに格納する。点検画像の格納が完了すると、作業管理部10は、点検記録シート17aに、作業状況53の欄に「済」を登録し、格納した点検画像の点検画像名を点検画像名54の欄に登録する。
【0070】
フローS35では、作業管理部10は、点検記録シート17aを確認し、作業状況53が記載されていない点検未実施階の有無を判定する。すなわち、作業状況53の欄に「済」が登録されていない階の有無を判定する。
【0071】
点検未実施階が有れば、フローS36で点検未実施階への移動を音声指示し、現在位置・方向記録部12aの現在位置及び方向が指定の位置及び方向になるのを待ち、指定の位置及び方向になった場合はフローS33より点検作業を繰り返す。
【0072】
作業状況53の全ての欄に「済」が記載された場合は、フロー37により、作業管理部10は視認者1にかご上からの降車を音声指示する。
【0073】
フロー38では、作業管理部10は、視認者1がかご上を俯瞰する位置と方向である事を現在位置・方向記録部12aの現在位置及び方向で把握する。作業管理部10は、ドアスイッチ信号30cの動作によりハッチドア41が閉じた事を制御信号部13で確認すると、カメラ7で撮影した、ハッチドア41が閉じる直前の画像(状態画像)を状態記録部18内の画像記録部18bに格納すると共に、状態記録シート18aの実施内容56の欄に実施内容と状態画像名57の欄に状態画像名を登録する。
【0074】
塔内確認処理S3が完了したら、復旧確認処理S4を行う。
【0075】
フローS41では、作業管理部10は、状態記録シート18aの記録を確認し、かご上乗車降車が複数ある場合は、かご上乗車(「かご上乗降開始」)の最古の記録に対応する状態画像の状態画像名と、かご上降車の最新の記録に対応する状態画像の状態画像名とを状態画像名57の欄から抽出する。作業管理部10は、抽出した最古の状態画像名と最新の状態画像名とに基づいて、画像記録部18bから最古の状態画像と最新の状態画像とを取り出し、両画像の比較を状態判定部23で行う。両画像に差異が有る場合は、かご上に設置されている機器が正しく復旧されていない可能性があるので、状態判定部23は音声出力15に対してスピーカー6から注意喚起を行う音声を流すように指示する。この指示を受けて、視認者1はかご上の状態を再確認し、かご上の機器を正しく復旧することができる。
【0076】
かご上の機器の具体例として、例えば安全柵を挙げることができる。かご上乗降開始時のかご上の状態画像には安全柵は写ってはいない。かご上乗降開始時の画像が撮影された後に、視認者1は作業の安全性を確保するため、かご上に安全柵を設置する。作業終了後には、かご上に安全柵を収納してかご上を復旧する。かご上を復旧した後、かご上乗降終了時にかご上の状態画像を撮影する。かご上乗降終了時に安全柵を収納していない場合には、かご上乗降開始時のかご上の状態画像とかご上乗降終了時のかご上の状態画像とが一致せず、差異が生じる。この場合、状態判定部23は音声出力15に対してスピーカー6から注意喚起を行う音声を流すように指示する。
【0077】
画像を比較する際には、例えば作業前後の2つの画像の色情報、SIFT特徴量(Scale−Invariant Feature Transform)などの局所特徴量を抽出し、当該色情報や局所特徴量同士を比較し、所定の閾値と比較することで類似度を判定すればよい。また、作業前後の2つの画像を比較ではなく、予め作業後の現場で、写っているべきもの、或いは写ってはいけないものが撮影された複数の画像のデータベースを保持しておき、作業後の画像と、当該データベース内の画像との類似を判定し、注意喚起を行うか否かの判定を行ってもよい。例えば、上述のかご上の状態画像においては、かご上乗降終了時には安全柵を収納していなければならないため、予め安全柵が写っている画像を複数枚、データベースとして保持し、当該データベース内の各画像と作業終了後の状態画像との比較を行い、安全柵が写っている画像と類似していると判断されれば、注意喚起を行う構成としてもよい。或いは、予め安全柵が写っていない画像をデータベースに保持し、それらの画像との比較を行い、類似していると判断されれば、注意喚起不要と判定してもよい。更に、作業前後の2つの画像の類似度の判定と、予め保持する画像データベースとの類似度の判定の2つを行えば、復旧確認の精度をさらに上昇させることができる。
【0078】
フローS42では、フローS41での画像の比較結果に基づいて、作業前後の画像に違いがあるか否かを判定する。その際、類似度を判定する為の閾値を複数設けておき、類似の度合に基づいて、次フローS43で指示する内容を変更してもよい。
【0079】
なお、画像による作業前後の比較はかご上乗降だけでなく、ピット入退出時、エレベーター制御盤31の開閉時等について、フローチャート10aに追加記載する事により、点検後に元に戻す必要のある機器や部位の復旧状態の確認が自動的に行われる。
【0080】
例えば、制御盤31では、点検作業の開始前に制御盤31の状態画像が撮影され、点検作業の終了後に制御盤31の状態画像が撮影される。点検作業開始前の制御盤31の状態画像と点検作業終了後の制御盤31の状態画像では、どちらも蓋が閉じられた状態で一致していなければならない。点検作業終了後の制御盤31の状態画像において蓋が開いた状態である場合には、点検作業開始前の状態画像と一致せず、差異が生じる。この場合、状態判定部23は音声出力15に対してスピーカー6から注意喚起を行う音声を流すように指示する。
【0081】
点検記録部17の画像記録部17bに登録された点検画像は、点検記録シート17aと一緒に、端末伝送処理部22により、ネットワーク34及びセンタ伝送装置38経由で、受信判定記録部37に格納される。受信判定記録部37に格納された点検画像は有資格者35が表示器36に順次表示させ、録画した点検画像により良否を判断し、点検記録シート17aの判定欄55に良否を記載する。
【0082】
なお点検画像及び状態画像は静止画像であってもよいし、動画であってもよい。
【0083】
以上のように、本発明に係る実施例は、エレベーター点検支援装置のコントローラー2が、視認者1の動作により点検画像を自動的に作成し、有資格者が機器の良否判定を、記録した点検画像を参照して纏めて行う事により、有資格者の移動作業が無くなり点検に要する時間を大幅に短縮することが可能である。
【0084】
また、各機器の点検作業の開始時と終了時の画像を比較する事により、点検時の復旧漏れにより発生する新たなトラブル及び故障を未然に防止する事が可能となる。
【0085】
特開2005−216137号公報の保守支援システムでは、冶具、工具、部品及び資材等を認識するために、冶具、工具、部品及び資材等にバーコードを貼り付ける必要が有った。バーコードの貼り付けには多大な事前作業が必要である。本実施例によれば、点検対象機器や作業ツール等にバーコードを貼り付ける作業は行わずに、点検対象機器を特定して、点検作業を実施することが出来る。
【0086】
本実施例のコントローラー2内に設けた各処理部や各記録部等は、図1の構成に限らず、種々の構成をとり得る。従って、各処理部や各記録部が有する機能は、コントローラー2が有する機能と考えればよい。
【0087】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…視認者、2…コントローラー、3…位置センサー、4…加速度センサー、5…角速度センサー、6…スピーカー、7…カメラ、8…マイク、10…作業管理部、10a…フローチャート、11…積分器、12…位置計算部、12a…現在位置・方向記録部、13…制御信号部、14…端末無線装置、15…音声出力部、15a…音声データ、16…作業DB、16a…作業基準シート、17…点検記録部、17a…点検記録シート、17b…画像記録部、18…状態記録部、18a…状態記録シート、18b…画像記録部、19…画像入力部、20…開始釦、21…音声入力部、22…端末伝送処理部、23…状態判定部、30…エレベーター信号、30a…かご信号、30b…押釦信号、30c…ドアスイッチ信号、30d…点検中表示指示、30e…ドア開閉指示、31…エレベーター制御盤、32…エレベーター無線装置、34…ネットワーク、35…有資格者、36…表示器、37…受信判定記録部、38…センタ伝送装置、40…エレベーターホール、41…ハッチドア、42…点検中表示、43…ホール釦、50…作業項目、51…点検階、52…点検位置、53…作業状況、54…点検画像名、55…判定欄、56…実施内容、57…状態画像名、58…作業内容、S1…開始処理、S2…ハッチ確認処理、S3…塔内確認処理、S4…復旧確認処理。
図1
図2
図3
図4
図5