(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明において赤色発光とは、可視領域の最大発光波長が580〜700nmの範囲内にある発光をいい、赤色発光材料とは赤色に発光する材料をいう。さらに、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて
1Hであってもよいし、一部または全部が
2H(デューテリウムD)であってもよい。
【0014】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の赤色発光材料は、下記一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする。
【化8】
【0015】
一般式(1)において、R
1〜R
8は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R
1〜R
8の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2)で表される基である。下記一般式(2)で表される基は、R
1〜R
8のうちの1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。
下記一般式(2)で表される基がR
1〜R
8のうちの1つのみであるときは、R
2またはR
3が下記一般式(2)で表される基であることが好ましい。
一方、R
1〜R
8のうちの2つ以上が下記一般式(2)で表される基であるときは、下記一般式(2)で表される基は、R
1〜R
4の少なくとも1つと、R
5〜R
8の少なくとも1つであることが好ましい。このとき、下記一般式(2)で表される基は、R
1〜R
4のうちの1〜3つ、R
5〜R
8のうちの1〜3つであることが好ましく、R
1〜R
4のうちの1または2つ、R
5〜R
8のうちの1または2つであることがより好ましく、R
1〜R
4のうちの1つ、R
5〜R
8のうちの1つであることがさらに好ましい。R
1〜R
4のうち一般式(2)で表される基の数と、R
5〜R
8のうち一般式(2)で表される基の数は同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。R
1〜R
4のうちでは、R
2およびR
3の少なくとも1つが一般式(2)で表される基であることが好ましく、少なくともR
2が一般式(2)で表される基であることがより好ましい。また、R
5〜R
8のうちでは、R
6およびR
7の少なくとも1つが一般式(2)で表される基であることが好ましく、少なくともR
6が一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
好ましい化合物は、一般式(1)のR
2が一般式(2)で表される基である化合物、一般式(1)のR
2とR
6が一般式(2)で表される基である化合物、一般式(1)のR
2とR
7が一般式(2)で表される基である化合物であり、さらに好ましい化合物はR
2とR
6が一般式(2)で表される基である化合物である。一般式(1)中に存在する複数の一般式(2)で表される基は、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、一般式(1)で表される基は対称構造をとっていることも好ましい。すなわち、R
1とR
8、R
2とR
7、R
3とR
6、R
4とR
5がそれぞれ同一であるか、R
1とR
5、R
2とR
6、R
3とR
7、R
4とR
8がそれぞれ同一であることが好ましい。
【0017】
一般式(2)において、Ar
1は、置換もしくは無置換のフェニレン基、または置換もしくは無置換のナフチレン基を表す。Ar
1のフェニレン基は、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基のいずれであってもよいが、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がさらに好ましい。Ar
1のナフチレン基は、1,2−ナフチレン基、1,3−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,7−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基が好ましく、1,2−ナフチレン基、1,3−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基がより好ましく、1,3−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基がさらに好ましく、1,4−ナフチレン基が特に好ましい。Ar
1のフェニレン基およびナフチレン基は、置換されていてもよい。置換基の置換位置と置換基数は特に制限されない。
一般式(2)において、n1は0または1を表す。
一般式(2)において、R
11〜R
20は各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R
11〜R
20のすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよい。R
11〜R
20のうちの2つ以上が置換基である場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。R
11〜R
20の中に置換基が存在する場合は、少なくともR
11、R
13、R
14のいずれかが置換基であることが好ましく、少なくともR
13、R
14のいずれかが置換基であることが好ましい。
【0018】
R
11〜R
20がとりうる置換基と、R
1〜R
8がとりうる置換基と、Ar
1のフェニレン基およびナフチレン基がとりうる置換基して、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数1〜20のジアルキル置換アミノ基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0019】
R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
17、R
17とR
18、R
18とR
19、R
19とR
20は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。
【0020】
一般式(1)に2つ以上の一般式(2)で表される基が存在するとき、それらの基は同一であっても異なっていてもよい。同一であれば合成が容易であるという利点がある。
【0021】
一般式(2)で表される基は、下記一般式(3)〜(8)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化10-1】
【化10-2】
【0022】
一般式(3)〜(8)において、Ar
2〜Ar
7は、置換もしくは無置換のフェニレン基、または置換もしくは無置換のナフチレン基を表す。n2〜n8は0または1を表す。Ar
2〜Ar
7とn2〜n8の説明と好ましい範囲については、一般式(2)におけるAr
1とn1の説明と好ましい範囲を参照することができる。
一般式(3)〜(8)において、R
21〜R
24、R
27〜R
38、R
41〜R
48、R
51〜R
58、R
61〜R
65、R
71〜R
79、R
81〜R
90は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ここでいう置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR
1〜R
8がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。また、R
21〜R
24、R
27〜R
38、R
41〜R
48、R
51〜R
58、R
61〜R
65、R
71〜R
79、R
81〜R
90は、各々独立に上記一般式(3)〜(8)のいずれかで表される基であることも好ましい。また、R
89およびR
90は置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。一般式(3)〜(8)における置換基の数は特に制限されない。すべてが無置換(すなわち水素原子)である場合も好ましい。また、一般式(3)〜(8)のそれぞれにおいて置換基が2つ以上ある場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。一般式(3)〜(8)に置換基が存在している場合、その置換基は一般式(3)であればR
22〜R
24、R
27〜R
29のいずれかであることが好ましく、R
23およびR
28の少なくとも1つであることがより好ましく、一般式(4)であればR
32〜R
37のいずれかであることが好ましく、一般式(5)であればR
42〜R
47のいずれかであることが好ましく、一般式(6)であればR
52、R
53、R
56、R
57、R
62〜R
64のいずれかであることが好ましく、一般式(7)であればR
72〜R
74、R
77、R
78のいずれかであることが好ましく、一般式(8)であればR
82〜R
87、R
89、R
90のいずれかであることが好ましい。
【0023】
一般式(3)〜(8)において、R
21とR
22、R
22とR
23、R
23とR
24、R
27とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34、R
35とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
41とR
42、R
42とR
43、R
43とR
44、R
45とR
46、R
46とR
47、R
47とR
48、R
51とR
52、R
52とR
53、R
53とR
54、R
55とR
56、R
56とR
57、R
57とR
58、R
61とR
62、R
62とR
63、R
63とR
64、R
64とR
65、R
54とR
61、R
55とR
65、R
71とR
72、R
72とR
73、R
73とR
74、R
74とR
75、R
76とR
77、R
77とR
78、R
78とR
79、R
81とR
82、R
82とR
83、R
83とR
84、R
85とR
86、R
86とR
87、R
87とR
88、R
89とR
90は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造の説明と好ましい例については、上記の一般式(1)において、R
1とR
2等が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例を参照することができる。
【0024】
一般式(1)中に存在する一般式(2)で表される基は、一般式(2)のR
15およびR
16が水素原子である基と、一般式(3)〜(8)で表される基からなる群より選択されることが好ましい。また、一般式(1)中に存在する一般式(2)で表される基は、一般式(2)のR
15およびR
16が水素原子である基と、一般式(3)〜(5)で表される基からなる群より選択されることが好ましい。一般式(1)中に存在する一般式(2)で表される基は、すべてが同一であっても異なっていてもよいが、同一であれば合成が容易であるという利点がある。
【0025】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0037】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)がとりうる最低分子量の値である。
なお、一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
【0038】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR
1〜R
8のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしを反応させることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
【0039】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(9)または(10)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化22】
【0040】
一般式(9)または(10)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L
1およびL
2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X
11−L
11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X
11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L
11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(9)または(10)において、R
101、R
102、R
103およびR
104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
L
1およびL
2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR
1〜R
8のいずれか、一般式(2)のAr
1、R
11〜R
20のいずれか、一般式(3)の構造のAr
2、R
21〜R
24、R
27〜R
30のいずれか、一般式(4)の構造のAr
3、R
31〜R
38のいずれか、一般式(5)の構造のAr
4、R
41〜R
48のいずれか、一般式(6)の構造のAr
5、R
51〜R
58、R
61〜R
65のいずれか、一般式(7)の構造のAr
6、R
71〜R
78のいずれか、一般式(8)の構造のAr
7、R
81〜R
90のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0041】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(11)〜(14)で表される構造を挙げることができる。
【化23】
【0042】
これらの式(11)〜(14)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のR
1〜R
8のいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化24】
【0043】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0044】
[一般式(1’)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物のうち、下記一般式(1’)で表される化合物は新規化合物である。
【化25】
【0045】
一般式(1’)において、R
1’〜R
8’は各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、R
1’〜R
8’の少なくとも1つは、各々独立に下記一般式(2)で表される基である。R
1’とR
2’、R
2’とR
3’、R
3’とR
4’、R
5’とR
6’、R
6’とR
7’、R
7’とR
8’は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【化26】
【0046】
一般式(2’)において、Ar
1’は、置換もしくは無置換のフェニレン基、または置換もしくは無置換のナフチレン基を表す。n1’は0または1を表す。R
11’〜R
20 ’は各々独立に水素原子または置換基を表す。R
11’とR
12’、R
12’とR
13’、R
13’とR
14’、R
14’とR
15’、R
15’とR
16’、R
16’とR
17’、R
17’とR
18’、R
18’とR
19’、R
19’とR
20’は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ただし、一般式(1’)のR
2’とR
6’が一般式(2’)で表される基であるとき、一般式(2’)のR
15’とR
16’が一緒になって単結合を表すことはない。
一般式(1’)におけるR
1'〜R
8 ’とR
11’〜R
20 ’の説明と好ましい範囲については、一般式(1)で表される化合物の説明を参照することができる。
【0047】
[一般式(1’)で表される化合物の合成方法]
一般式(1’)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、一般式(2’)で表される基を導入したいアントラキノン環の位置にハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を結合させた化合物を用意しておき、下記の一般式(2’a)で表される化合物または一般式(2’b)で表される化合物と反応させることによって、所望の位置に一般式(2’)で表される基を導入した化合物を合成することができる。このとき、一般式(2’a)で表される化合物と一般式(2’b)で表される化合物を同時または逐次に反応させてもよい。
【化27】
【0048】
上記の反応式におけるAr
1’、R
11’〜R
20 ’の説明については、一般式(1’)における対応する記載を参照することができる。上記の反応は、公知の反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
【0049】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の赤色発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
【0050】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0051】
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。このとき、本発明の一般式(1)で表される化合物は、いわゆるアシストドーパントとして、発光層に含まれる他の発光材料の発光をアシストする機能を有するものであってもよい。すなわち、発光層に含まれる本発明の一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位の間の最低励起一重項エネルギー準位を有するものであってもよい。
有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図1に示す。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0052】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0053】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0054】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0055】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0056】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0057】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0058】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0059】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0060】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0061】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0062】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0063】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0064】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R
2〜R
7は、各々独立に水素原子または置換基を表す。nは3〜5の整数を表す。
【0065】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0071】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0073】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0080】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0082】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0084】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0088】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0090】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0092】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0093】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0094】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0095】
(ΔE
STの測定法)
実施例で採用した材料の一重項エネルギー(E
S1)と三重項エネルギー(E
T1)の差(ΔE
ST)は、一重項エネルギー(E
S1)と三重項エネルギーを以下の方法で算出し、ΔE
ST=E
S1−E
T1により求めた。
(1)一重項エネルギーE
S1
測定対象化合物とmCPとを、測定対象化合物が濃度6重量%となるように共蒸着することでSi基板上に厚さ100nmの試料を作製した。常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定した。励起光入射直後から入射後100ナノ秒までの発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の蛍光スペクトルを得た。蛍光スペクトルは、縦軸を発光、横軸を波長とした。この発光スペクトルの短波側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をE
S1とした。
換算式:E
S1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、励起光源に窒素レーザー(Lasertechnik Berlin社製、MNL200)を検出器には、ストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いた。
(2) 三重項エネルギーE
T1
一重項エネルギーE
S1と同じ試料を5[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定した。励起光入射後1ミリ秒から入射後10ミリ秒の発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の燐光スペクトルを得た。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をE
T1とした。
換算式:E
T1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引いた。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
【0096】
(蛍光放射の速度定数κ
F(S
1)の測定法)
発光量子収率Φ(N
2)は、絶対量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C11347)を用いて窒素フロー下で測定した。蛍光寿命τ
1(N
2)は、Quantauras−Tau(浜松ホトニクス社製、U11487−01)を用いて窒素フロー下で測定した。蛍光放射の速度定数κ
F(S
1)は、次に示す式より求めた。
式:κ
F(S
1)[×10
-7S
-1]=Φ(N
2)[prompt]/τ
1(N
2)
【0097】
(合成例1)
本合成例において、以下のスキームにしたがって合成した。
【化47】
【0098】
2,6−ジブロモアントラキノン(11.0g, 30mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと表記、100ml)に溶解し、PdCl
2(PPh
3)
2(1.05g,1.5mmol)を加え、ホウ酸誘導体(20.82g,72mmol)を加え、リン酸三カリウム(38.21g,0.18mol)を加えて、90℃で12時間撹拌した。水100mlを加えて、ろ別して、メタノール100mlと水100mlで洗浄して、目的物(18.76g,収率90%)を得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム:ヘキサン)で精製及び昇華精製(250〜320℃、1Pa以下)を行った。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,2H),8.1−7.9(m,4H)、7.6−7.3(m,4H)、7.3−7.1(m,8H)、6.9−6.5(m,16H);
MS(70eV,EI)m/z=694(M
+)
【0099】
(合成例2)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は85%であった。
【化48】
【0100】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.4(m,2H),8.1−7.8(m,4H)、7.6−7.3(m,4H)、7.2−6.9(m,8H)、6.9−6.4(m,12H)、2.3(s,12H);
MS(70eV,EI)m/z=750(M
+)
【0101】
(合成例3)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は80%であった。
【化49】
【0102】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,2H),8.1−7.9(m,4H)、7.2−6.9(m,8H)、6.8−6.4(m,12H)、1.0(s,36H);
MS(70eV,EI)m/z=918(M
+)
【0103】
(合成例4)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は95%であった。
【化50】
【0104】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,2H),7.6−7.3(m,32H)、7.1−6.9(m,12H);
MS(70eV,EI)m/z=998(M
+)
【0105】
(合成例5)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は80%であった。
【化51】
【0106】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,2H),8.1−7.9(m,4H)、7.6−7.3(m,4H)、7.0−6.5(m,20H);
MS(70eV,EI)m/z=722(M
+)
【0107】
(合成例6)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は88%であった。
【化52】
【0108】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,2H),8.1−7.9(m,4H)、7.6−7.3(m,4H)、7.3−7.1(m,12H)、7.0−6.8(m,4H)、6.8−6.6(m,4H);
MS(70eV,EI)m/z=754(M
+)
【0109】
(合成例7)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は90%であった。
【化53】
【0110】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,2H),8.1−7.9(m,4H)、7.6−7.3(m,4H)、7.1−6.9(m,8H)、6.8−6.5(m,12H)、1.8(m,12H);
MS(70eV,EI)m/z=774(M
+)
【0111】
(合成例8)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は80%であった。
【化54】
【0112】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,4H),8.2−7.9(m,6H)、7.8−7.4(m,14H)、7.3−7.1(m,6H);
MS(70eV,EI)m/z=690(M
+)
【0113】
(合成例9)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は82%であった。
【化55】
【0114】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ9.0−8.9(2H),8.4−8.3(2H)、8.0−7.9(m,14H)、7.6−7.5(m,4H)、7.2(2H)、1.3(36H);
MS(70eV,EI)m/z=914(M
+)
【0115】
(合成例10)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は92%であった。
【化56】
【0116】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(2H),8.4−7.9(m,18H)、7.8−7.5(m,14H)、7.5−7.3(m,12H);
MS(70eV,EI)m/z=994(M
+)
【0117】
(合成例11)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は91%であった。
【化57】
【0118】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,6H),8.2−7.9(m,20H)、7.6−7.3(m,6H)、7.3−7.1(m,12H);
MS(70eV,EI)m/z=1020(M
+)
【0119】
(合成例12)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は95%であった。
【化58】
【0120】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,8H),8.2−7.8(m,26H)、7.7−7.0(m,24H);
MS(70eV,EI)m/z=1350(M
+)
【0121】
(合成例13)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は78%であった。
【化59】
【0122】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,14H),7.5−7.0(m,30H);
MS(70eV,EI)m/z=1024(M
+)
【0123】
(合成例14)
合成例1と同様に合成および精製を行った。収率は98%であった。
【化60】
【0124】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,2H),8.1−7.9(m,16H)、7.7−7.0(m,26H)、6.5−6.3(m,2H);
MS(70eV,EI)m/z=1358(M
+)
【0125】
(合成例15)
合成例1と同様に2−ブロモアントラキノンと、ホウ酸誘導体から同様に合成および精製を行った。収率は75%であった。
【化61】
【0126】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.6−8.5(m,1H),8.2−7.9(m,6H)、7.6−7.3(m,2H)、7.3−7.1(m,12H);
MS(70eV,EI)m/z=451(M
+)
【0127】
(合成例16)
本合成例において、以下のスキームにしたがって合成した。
【化62】
【0128】
2,6−ジブロモアントラキノン(11.0g,30mmol)を脱水トルエン(100ml)に加え、アミン(13.0g,66mmol)とPd触媒(ALDRICH製、PEPSSI−IPr,0.82g,1.2mmol)を加え、NaOt−Bu(7.21g,75mmol)を加えて、100℃で終夜で撹拌した。反応終了後に水100mlとトルエン500ml加えて分液し、有機層を濃縮して、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム:ヘキサン)で精製し、目的物(12.9g,収率72%)を得た。昇華精製(250〜320℃、1Pa以下)を行った。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.9−8.8(2H),8.6−8.4(m,4H)、7.3−7.1(m,16H)、2.4(s,12H);
MS(70eV,EI)m/z=598(M
+)
【0129】
(合成例17)
本合成例において、以下のスキームにしたがって合成した。
【化63】
【0130】
合成例16と同様に合成および精製を行った。収率は78%であった。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ7.9(2H),7.2−6.9(m,16H)、1.3(36H);
MS(70eV,EI)m/z=766(M
+)
【0131】
(合成例18)
合成例16と同様に、2−ブロモアントラキノンとアミンから合成および精製を行った。収率は86%であった。
【化64】
【0132】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.5−8.3(4H),7.9−7.3(m,21H);
MS(70eV,EI)m/z=527(M
+)
【0133】
(合成例19)
合成例18と同様に合成および精製を行った。収率は69%であった。
【化65】
【0134】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.5−8.3(4H),7.8−7.4(m,3H)、7.0−6.8(m,8H);
MS(70eV,EI)m/z=389(M
+)
【0135】
(合成例20)
合成例18と同様に合成および精製を行った。収率は63%であった。
【化66】
【0136】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.4−8.3(m,4H),7.8−7.5(3H)、7.2−6.9(m,8H);
MS(70eV,EI)m/z=405(M
+)
【0137】
(合成例21)
本合成例において、以下のスキームにしたがって合成した。
【化67】
【0138】
2,6−ジブロモアントラキノン(3.66g,10mmol)、アミン(4.81g,23mmol)、ヨウ化銅(0.19g,1.0mmol)、18−クラウン−6−エーテル(0.22g,0.8mmol)をドデシルベンゼン(50ml)に加え、220℃で終夜撹拌した。反応液にメタノールを加えてろ別し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム:ヘキサン)で精製及し、目的物(4.04g,収率65%)を得た。昇華精製(250〜320℃、1Pa以下)を行った。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ7.9−7.6(m,6H),7.1−6.9(m,16H)、1.8(12H);
MS(70eV,EI)m/z=622(M
+)、607(M
+−Me)
【0139】
(合成例22)
合成例22と同様に合成および精製を行った。収率は88%であった。
【化68】
【0140】
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ8.9−8.8(2H),8.6−8.2(m,4H)、8.0−7.8(m,6H)、7.6−7.2(10H);
MS(70eV,EI)m/z=538(M
+)
【0141】
(合成例23)
合成例16と同様に合成および精製を行った。収率は92%であった。
【化69】
【0142】
1H NMR(CDCl
3,500MHz):δ[ppm]8.02(d,J=8.7Hz,2H),7.76(d,J=2.5Hz,2H),7.37−7.34(m,8H),7.20−7.17(m,14H).
【0143】
(合成例24)
合成例16と同様に合成および精製を行った。収率は81%であった。
【化70】
【0144】
1H NMR(CDCl
3,500MHz):δ[ppm]8.09(d,J=8.7Hz,2H),7.90(d,J=2.5Hz,2H),7.62−7.59(m,16H),7.47−7.44(m,8H),7.37−7.34(m,4H),7.33−7.28(m,10H).
【0145】
(合成例25)
合成例21と同様に合成および精製を行った。収率は59%であった。
【化71】
【0146】
1H NMR(CDCl
3,500MHz):δ[ppm]8.62(s,2H),8.57(d,J=8.3Hz,2H),8.16(s,4H),8.08(d,J=8.3Hz,2H),7.56−7.51(m,8H),1.48(s,36H).
【0147】
(実施例1) 化合物1を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
本実施例において、合成例1で合成した化合物1とホスト材料からなる発光層を有する有機フォトルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
シリコン基板上に真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paの条件にて化合物1とmCPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6.0重量%である薄膜を0.3nm/秒にて100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。浜松ホトニクス(株)製C9920−02型絶対量子収率測定装置を用いて、N
2レーザーにより337nmの光を照射した際の薄膜からの発光を300Kで特性評価したところ、
図2に示す発光スペクトルが得られ、発光量子収率は大気中で52.5%、窒素フロー下で58.7%であった。
次に、300Kで、この素子にN
2レーザーにより337nmの光を照射した際の過渡減衰曲線の評価を、浜松ホトニクス(株)製C4334型ストリークカメラを用いて行った(
図3)。この過渡減衰曲線は、化合物に励起光を当てて発光強度が失活してゆく過程を測定した発光寿命測定結果を示すものである。通常の一成分の発光(蛍光もしくはリン光)では発光強度は単一指数関数的に減衰する。これは、グラフの縦軸がセミlog である場合には、直線的に減衰することを意味している。
図3に示す化合物1の過渡減衰曲線では、観測初期にこのような直線的成分(蛍光)が観測されているが、数μ秒以降には直線性から外れる成分が現れている。これは遅延成分の発光であり、初期の成分と加算される信号は、長時間側に裾をひくゆるい曲線になる。このように発光寿命を測定することによって、化合物1は蛍光成分のほかに遅延成分を含む発光体であることが確認された(τ
1=1.67μs、τ
2=12.2μs)。また、この素子は十分な耐久性を有するものであった。
【0148】
(実施例2) 化合物2を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1の代わりに合成例22で合成した化合物2を用いて、実施例1と同じ手順にしたがって有機フォトルミネッセンス素子を作製して、特性を評価した。
その結果、
図4に示す発光スペクトルと
図5に示す過渡減衰曲線が得られた。実施例2の素子の発光量子収率は大気中で27.2%、窒素フロー下で33.7%であった。また、実施例2の素子からも遅延蛍光が放射していることが確認された(τ
1=1.92μs、τ
2=14.6μs)。また、この素子は十分な耐久性を有するものであった。
【0149】
(実施例3) 化合物1を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを40nmの厚さに形成した。次に、化合物1とCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、20nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は7.0重量%とした。次に、TPBiを60nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図6に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図7に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図8に示す。化合物1を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は5.64%の高い外部量子効率を達成した。
【0150】
(実施例4) 化合物1を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の最適条件の検討
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paで積層した。まず、ITO上にHAT−CNを10nmの厚さに形成し、その上に、Tris−PCzを30nmの厚さに形成した。次に、化合物1とCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は1.0重量%、3.0重量%または10.0重量%とした。次に、T2Tを10nmの厚さに形成し、その上に、Bpy−TP2を40nmの厚さに形成した。さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成した。以上の工程により、化合物1の濃度が異なる4種類の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造した。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の1000cd/m
2での発光スペクトルを
図9に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図10に示し、発光強度−外部量子効率特性を
図11に示す。また、この有機エレクトロルミネッセンス素子について測定された特性値を表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
図9から、発光層における化合物1の濃度を1.0重量%から25.0重量%に増加させることにより、発光スペクトルのピークが長波長側に50nm程度シフトすることがわかった。また、
図11から、最大外部量子効率は、化合物1の濃度が1.0重量%であるときに最も高く(16.0%)なり、100cd/m
2での外部量子効率は、化合物1の濃度が10.0重量%であるときに最も高くなることがわかった。
仮に発光量子効率が100%の蛍光材料を用いてバランスの取れた理想的な有機エレクトロルミネッセンス素子を試作したとすると、光取り出し効率が20〜30%であれば、蛍光発光の外部量子効率は5〜7.5%となる。この値が一般に、蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率の理論限界値とされている。化合物1を用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、理論限界値を超える高い外部量子効率を実現している点で極めて優れている。
【0153】
(実施例5〜9) 化合物1、3、4、6、7を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1、3、4、6、7のトルエン溶液(濃度1×10
-4mol/L)を調製した。
また、実施例1と同様の方法により、化合物3、4、6、7とCBPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物3、4、6、7の各濃度が1.0重量%である薄膜を100nmの厚さで形成し、有機フォトルミネッセンス素子とした。
各化合物のトルエン溶液について、300Kで450nmの光を照射したところ、
図12に示す発光スペクトルが得られた。また、これらトルエン溶液で測定された特性値を表2に示し、各化合物の有機フォトルミネッセンス素子で測定された特性値を表3に示す。表2、3のτ
1およびτ
2の値から、実施例5〜9の素子からも遅延蛍光が放射していることが確認された。また、これらの素子は十分な耐久性を有するものであった。
【0154】
(実施例10〜14) 化合物8〜12を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
化合物8〜12のトルエン溶液(濃度1×10
-4mol/L)を調製した。
また、化合物3、4、6、7の代わりに化合物8〜12を用いて、実施例5〜9と同じ手順にしたがって有機フォトルミネッセンス素子を作製した。
各化合物のトルエン溶液について、300Kで450nmの光を照射したところ、
図13に示す発光スペクトルが得られた。また、これらトルエン溶液で測定された特性値を表2に示し、各化合物の有機フォトルミネッセンス素子で測定された特性値を表3に示す。表2、3のτ
1およびτ
2の値から、実施例10〜14の素子からも遅延蛍光が放射していることが確認された。また、これらの素子は十分な耐久性を有するものであった。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
(実施例15) 化合物4を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1の代わりに化合物4を用いて、実施例4と同じ手順にしたがって有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。ただし、ここでは、化合物4の濃度を1.0重量%または10.0重量%とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の1000cd/m
2での発光スペクトルを
図14に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図15に示し、発光強度−外部量子効率特性を
図16に示す。また、測定された特性値を表4に示す。なお、
図5、表4には、化合物1を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、下記の化合物5を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子についての測定結果も併せて示す。
化合物4を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、化合物4の濃度が1.0重量%で15%、10.0重量%で9%の高い外部量子効率を達成した。
【0158】
(実施例16) 化合物5を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1の代わりに化合物5を用いて、実施例4と同じ手順にしたがって有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。ただし、ここでは、化合物5の濃度を1.0重量%とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図14に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図15に示し、発光強度−外部量子効率特性を
図16に示す。また、測定された特性値を表4に示す。化合物5を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、化合物5の濃度が1.0重量%で13%の高い外部量子効率を達成した。
【0159】
【表4】
【0160】
(実施例17) 化合物6を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1の代わりに化合物6を用いて、実施例4と同じ手順にしたがって有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。ただし、ここでは、化合物6の濃度を10.0重量%とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図17に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図18に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図19に示す。なお、
図17〜19には、下記の化合物7を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子についての測定結果も併せて示す。
化合物6を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、9.0%の高い外部量子効率を達成した。
【0161】
(実施例18) 化合物7を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
化合物1の代わりに化合物7を用いて、実施例4と同じ手順にしたがって有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。ただし、ここでは、化合物7の濃度を10.0重量%とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図17に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図18に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図19に示す。化合物7を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、高い外部量子効率を達成した。
【0162】
(比較例1)
比較化合物Aを用いて、特性を評価した。
比較化合物Aのトルエン溶液(濃度10
-5mol/L)を調製して、窒素をバブリングしながら77Kで280nmの光を照射したところ、
図20に示す発光スペクトルが得られた。発光量子収率は、窒素バブリング前が7.4%、窒素バブリング後が8.3%であった。実施例1と同じ装置を用いて得た過渡減衰曲線を
図21に示す。この素子からは遅延蛍光の放射が認められなかった(窒素バブリング無しのτ
1=0.0049μs、窒素バブリング有りのτ
1=0.0055μs)。
【0163】
【化72-1】
【化72-2】
【化72-3】
【化72-4】
【化72-5】