特許第6391590号(P6391590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391590
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】軸チャネルを持つ共鳴トラップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180910BHJP
   H01P 7/04 20060101ALI20180910BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61B5/055 355
   H01P7/04
   G01N24/00 580Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-548820(P2015-548820)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2016-504107(P2016-504107A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】IB2013060929
(87)【国際公開番号】WO2014097095
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/739,901
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/774,218
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン レーウウェン ロレンス コルネリス
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−503223(JP,A)
【文献】 実開平04−121101(JP,U)
【文献】 特開平05−029818(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/025608(WO,A2)
【文献】 特開平08−167806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 −24/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒形ボディであって、その内部が軸チャネルを形成し、内部導体が前記中空円筒形ボディの内壁に設けられ、外部導体が前記中空円筒形ボディの外壁に設けられる、当該中空円筒形ボディと、
前記軸チャネルの内壁に付着されるキャリアと、
前記キャリアに取り付けられる同調キャパシタと、
を有する、共鳴トラップ。
【請求項2】
前記キャリアが、前記軸チャネルの開いた端部において前記軸チャネル内でクランプされる弾性リングである、請求項1に記載の共鳴トラップ。
【請求項3】
半径方向のアクセスが、前記軸チャネルの外部導体、前記共鳴トラップの壁及び前記内部導体を通って設けられ、前記キャリアが、前記半径方向のアクセスの近くに付着された軸板である、請求項1に記載の共鳴トラップ。
【請求項4】
前記同調キャパシタが、導電性ストリップにより前記外部導体に電気的に接続され、前記導電性ストリップの長さが、前記外部導体に対する前記導電性ストリップの所定の接着に対して要求される最小のものである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の共鳴トラップ。
【請求項5】
前記中空円筒形ボディは、前記内部導体及び前記外部導体が電気的に分離される電気的に開いた端部と、前記内部導体及び前記外部導体が接続される電気的に閉じた端部とを持ち、接線方向に延在する絶縁スリットが、前記電気的に開いた端部の近くの領域において前記外部導体に設けられる、請求項1に記載の共鳴トラップ。
【請求項6】
前記内部導体及び前記外部導体が、前記中空円筒形ボディの短絡された端部にわたり延在し、前記短絡された端部とそれぞれ前記内部導体及び前記外部導体との間に形成された前記中空円筒形ボディの丸められたエッジをたどる連続的な導電層により形成される、請求項1に記載の共鳴トラップ。
【請求項7】
電気絶縁ゾーンが、前記中空円筒形ボディの外壁に設けられ、前記外部導体と前記電気的に開いた端部との間に延在する、請求項5に記載の共鳴トラップ。
【請求項8】
前記弾性リングが、1以上の軸方向に延在する突起部を設けられ、前記同調キャパシタは、前記突起部の1つに取り付けられる、請求項2に記載の共鳴トラップ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の共鳴トラップの軸チャネルを通して送り込まれたケーブル又は電気リード線を有する磁気共鳴検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に磁気共鳴検査システムにおいて使用する、共鳴トラップ(resonant trap)に関する。前記共鳴トラップは、電気リード線又はケーブルが送り込まれる軸チャネル(axial channel)を持つ。前記共鳴トラップは、例えば前記磁気共鳴検査システムにより発生されるRF磁場により、前記電気リード線又はケーブルに沿った電磁的結合により誘起される前記電気リード線又はケーブル内の不所望なコモンモード電流を抑制する。
【背景技術】
【0002】
このような共鳴トラップは、国際出願WO03/025608から既知である。既知の共鳴トラップは、内部導体及び外部導体を持つ円筒形構成を持つ。両方とも、前記共鳴トラップの短絡端部において互いに接続される。前記内部導体は、前記電気リード線の一部を覆い、前記外部導体は、前記内部導体を覆う。前記既知の共鳴トラップは、チャネルを持ち、ケーブル又は電気リード線が、単純に前記チャネルを通してスライドすることにより、前記チャネルを通して送り込まれることができる。特に、ガルバニック接続は、前記共鳴トラップと前記ケーブル又は電気リード線との間で必要とされない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製造するのが容易である共鳴トラップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明による共鳴トラップにより達成され、前記共鳴トラップは、
‐内側が軸チャネルを形成する中空円筒形ボディであって、内部導体が、前記中空円筒形ボディの内壁に設けられ、外部導体が、前記中空円筒形ボディの外壁に設けられる、当該中空円筒形ボディと、
‐前記軸チャネルの内壁に取り付けられたキャリア(carrier)と、
‐前記キャリアに取り付けられた同調キャパシタと、
を有する。
【0005】
電気的に導通する前記内部及び外部導体の電気インダクタンス及びキャパシタンスと一緒に、前記同調キャパシタは、前記共鳴トラップが、磁気共鳴検査システムの主磁場に関連付けられたラーモア周波数における又は近い共鳴周波数を持つことを達成する。前記磁気共鳴検査システムは、検査されるべき患者から磁気共鳴画像データ又は磁気共鳴分光データを取得する磁気共鳴診断撮像又は分光システムであることができる。前記同調キャパシタは、前記内部及び外部導体の電磁構成と組み合わせて、前記ラーモア周波数の周辺の共鳴帯域幅を持つ共鳴構造を形成する。前記同調キャパシタは、前記共鳴トラップの有効電気的長さ(effective electrical length)を増大する。したがって、比較的短い物理的長さが、前記ラーモア周波数における約4分の1波長の有効電気的長さを達成するのに必要とされる。したがって、前記共鳴トラップは、小さな空間のみを必要とする。前記キャリアは、前記内壁に容易に機械的に接続される。前記同調キャパシタは、前記キャリアに容易に接続される。特に、独立した機械的及び/又は電気的接続が、前記内壁と前記キャリアとの間、及び前記キャリアと前記同調キャパシタとの間で採用される。したがって、前記同調キャパシタは、前記キャリアが前記内壁から解放されるリスクなしで前記キャリアに接続されることができる。これは、前記同調キャパシタと前記外壁との間の電気接続を達成することを容易にし、前記同調キャパシタは、前記内壁に機械的に接続された前記キャリア上の位置に保持される。特に、前記同調キャパシタを前記電気接続にはんだ付けすることは、前記外壁に対する前記電気接続の既にはんだ付けされた接続に対する損傷のリスクなしで行われることができる。特に前記共鳴トラップが温度変化による損傷を受けにくいので、本発明の前記共鳴トラップが、動作寿命を改善し、信頼性を改善したように見える。
【0006】
前記共鳴トラップは、前記共鳴トラップの前記軸チャネルを通して送り込まれた前記電気リード線又は前記ケーブルのジャケットを通る前記コモンモード電流を減少するように作用する。
【0007】
本発明のこれら及び他の態様は、従属請求項に規定される実施例を参照して更に説明される。
【0008】
本発明の一態様によると、前記キャリアは、開いた端部(の1つ)において前記軸チャネル内でクランプされる弾性リングにより形成される。前記クランプされたリングは、前記同調キャパシタが容易に取り付けられることができる安定したサポートを提供する。更に、前記リングは、前記軸チャネル内に単純にクランプされ、これは、複雑な製造工程を伴わない。本発明の関連した態様において、1以上の軸方向に延在する突起部が、前記弾性リングに設けられる。前記同調キャパシタは、これらの突起部の1つに取り付けられる。複数の同調キャパシタが、設けられることができ、これらの各々は、前記突起部の1つに取り付けられる。
【0009】
前記キャリアを形成する前記弾性リングは、前記同調キャパシタが前記弾性リングから延在する前記突起部にはんだ付けされる場合に、固定的に適切な位置に留まる。また、前記弾性リングが、前記内壁上の前記導体にはんだ付けされる場合、前記弾性リングは、適切な位置にクランプされたままである。更に、前記同調キャパシタと前記外部導体との間の電気接続が作成される。この電気接続は、前記同調キャパシタ及び前記外部導体(の接点の1つ)にはんだ付けされた導電性ストリップにより形成される。前記弾性リングの形の前記キャリアは、これらのはんだ付けの間に固定的に適切な位置に留まる。これは、更に、既にはんだ付けされた接続が分離されるかもしれないリスクなしで、それぞれのはんだの融点を選択する、より多くの自由度を提供する。前記弾性リングは、正しい位置にクランプされるので、全てのコンポーネントは、正しい位置で安定したままである。
【0010】
本発明の他の態様によると、前記キャリアは、軸板により形成される。本発明のこの実施例において、半径方向のアクセス又は開口は、前記軸チャネルの内壁を通って提供される。前記半径方向のアクセスは、前記外部導体、前記中空円筒形ボディの壁及び前記内部導体を通って延在する。前記軸板は、前記半径方向のアクセスの近くで前記軸チャネルにおいて前記中空円筒形ボディに付着される。特に、前記軸板は、前記半径方向のアクセスが前記軸チャネルと接触する場合に、前記軸板が前記半径方向のアクセスにわたり延在するように、前記軸チャネルの内壁に取り付けられる。例えば、前記軸板は、前記円筒形ボディの前記内部導体に付着される。前記同調キャパシタは、この場合、前記軸板上に取り付けられ、前記半径方向のアクセスの内側に収容される(lodged)。前記軸板を前記半径方向のアクセスの近くで前記軸チャネルの内側に付着することは、単純である。更に、前記同調キャパシタが前記半径方向のアクセスに収容されるように前記同調キャパシタを前記軸板上に取り付けることは、単純である。
【0011】
本発明の他の態様によると、前記同調キャパシタは、前記中空円筒形ボディの前記外壁に電気的に接続される。この電気接続は、前記同調キャパシタと前記外壁との間に延在する導電性(金属)ストリップにより達成される。より具体的には、前記金属ストリップは、前記同調キャパシタの1つの電気端子に、及び前記中空円筒形ボディの前記外壁上の前記外部導体に接触している。例えば表面実装技術(SMT)キャパシタが使用される場合、前記電気端子は、前記SMTキャパシタの末端により形成される。本発明のこの態様によると、前記金属ストリップの長さ、特に前記外部導体と接触している前記金属ストリップの長さは、前記外部導体に対する前記導電性ストリップの所定の接着に要求される最小の長さである。この最小の長さは、気候室において実行されるいわゆる高加速寿命(HALT)試験を手段として実験的に決定されることができる。したがって、前記導電性ストリップの固定は、良好な機械的取り付けを達成するのに十分に大きく、厳しい熱サイクルに耐えるのに十分に短い長さに対して最適化される。この最小の長さは、前記導電性ストリップと前記外部導体との間の十分な機械的接着を保証する。本発明のこの態様の洞察は、前記導電性ストリップが十分な接着に対するこの最小の長さより長い場合に、前記導電性ストリップと前記外部導体との間の接続が、前記導電性ストリップの熱膨張による損傷を受けやすくなることである。複数の前記キャパシタの導電性ストリップの熱膨張は、同じ方向に及び同時に膨張し、熱膨張は、はんだ接合における可能な限り低い機械的ストレスを作成する。このような導電性ストリップを用いる同様の様式において、前記同調キャパシタは、前記内部導体に接続されることができる。
【0012】
前記キャリアは、前記中空円筒形ボディの前記内壁に配置される前記内部導体にはんだ付けされることができる。次に、特に電気端子の1つを持つ、前記同調キャパシタは、前記キャリアにはんだ付けされる。
【0013】
前記キャリアを形成する前記軸板は、高い融点を持つはんだを使用して前記内壁上の前記内部導体にはんだ付けされる。適切なはんだは、例えば、Sn62Pb36Ag2又はSn10Pb88Ag2である。前記中空円筒形ボディから離れて、前記導電性ストリップは、高い融点を持つはんだを使用して前記同調キャパシタの1つの電気端子にはんだ付けされる。この後に、前記導電性ストリップを持つ前記同調キャパシタは、前記軸板上に取り付けられる。したがって、前記キャパシタは、前記軸板にはんだ付けされた半径方向の凹所に収容される。前記導電性ストリップは、この場合、前記半径方向の凹所から前記外部導体に延在し、前記外部導体に単純にはんだ付けされることができる。特に、低い融点を持つはんだが、前記軸板上に前記キャパシタをはんだ付けするのに、及び前記外部導体に前記導電性ストリップをはんだ付けするのに採用される。このようにして、以前にはんだ付けされた接点は、後にはんだ付けされる接点より高い融点を持つので、後のはんだ付けは、以前にはんだ付けされた接点を分離することができない。前記軸板及び前記導電性ストリップの、温度変化の結果としての、軸膨張は、同じ方向であり、前記はんだ接合における機械的ストレスを引き起こさない。したがって、前記内部導体上の1つのはんだ接合のみ、及び前記外部導体上の1つのはんだ接合のみが使用される。前記はんだ接合の配置は、前記キャパシタが温度変化の結果として自由に移動することを可能にする。
【0014】
本発明の他の態様によると、接線方向に延在する絶縁スリットが、前記外部導体に設けられる。これらのスリットは、前記共鳴トラップの電気インダクタンス及び共鳴周波数に影響を与える。これらのスリットを設けることは、前記外部導体を通して前記スリットをつけることにより単純に行われることができる。例えば、前記スリットは、前記共鳴トラップの電気インダクタンス又は共鳴周波数を測定しながら設けられることができる。この測定は、前記共鳴トラップの製造中に実行される。これは、複雑な製造工程に対する必要性なしに前記共鳴トラップの共鳴に対する正確な同調及び高度に信頼できる構成を達成する。このようにして、良好な品質の共鳴トラップの製造量が増大される。特に、前記中空円筒形ボディの電気的に閉じた端部において、前記内部導体及び前記外部導体は、短絡により電気的に接続される。すなわち、導電性接続が、前記中空円筒形ボディの電気的に閉じた、すなわち電気的に短絡された端部において前記内部導体と前記外部導体との間に配置される。
【0015】
前記内部導体及び前記外部導体は、前記中空円筒形ボディの開いた端部において電気的に分離される。本発明のこの態様の洞察は、前記共鳴トラップの電気インダクタンス及び共鳴周波数が、前記開いた端部の近くで前記絶縁スリットの長さにわずかにのみ影響を受けることである。前記共鳴トラップの電気インダクタンスは、前記絶縁スリットが前記電気的に閉じた端部の近くに配置されるので、前記絶縁スリットの長さにはるかに影響を受ける。結果として、前記開いた端部の近くに前記絶縁スリットを適用することは、製造中に前記共鳴トラップの共鳴周波数を正確に調整するように前記絶縁スリットの長さを達成する容易な方法を可能にする。前記開いた端部の近くの前記絶縁スリットは、前記電気インダクタンス及び共鳴周波数に対する比較的弱い影響のため、前記共鳴トラップの動作寿命の間に前記外部導体に対する損傷に対する感度を減少させるように見える。
【0016】
本発明の他の態様によると、前記内部及び外部導体は、連続的な導電層、すなわち、前記中空円筒形ボディの電気的に短絡された、すなわち、電気的に閉じた端部上に延在するめっきにより形成される。前記連続的な導電層は、前記短絡と前記内部及び外部導体との間で、誘電材料で作られる、前記トラップの前記中空円筒形ボディの丸められたエッジの周りに成形される。例えば、前記連続的な導電層の前記丸められたエッジは、前記中空円筒形ボディの丸められたエッジ上に前記導電層を配置することにより形成される。これらの丸められたエッジは、前記中空円筒形ボディ上への前記導電層の良好な接着を達成する。例えば、前記中空円筒形ボディは、誘電材料、例えばセラミック材料で作られ、前記導電層は、例えば銀、銅又はアルミニウム層である。更に、前記中空円筒形ボディに対する前記導電層(めっき)の接着は、前記エッジが丸められている場合に機械的により強く、非常に良好な結果は、前記エッジが少なくとも約1mmの曲率半径を持つ場合に達成される。最大の曲率半径は、前記中空円筒形ボディの壁の厚さにより決定され、実際には、最大の半径は、前記壁の厚さの約半分である。実際的な例において、前記壁の厚さは約6mmであり、前記丸められたエッジの曲率半径は、1mm乃至3mmである。
【0017】
前記同調キャパシタが前記軸板上で前記半径方向のアクセスにおいて取り付けられる本発明の他の態様によると、電気絶縁ゾーンが、前記中空円筒形ボディの電気的に開いた端部において前記外部導体と前記内部導体との間に設けられる。これは、前記電気的に開いた端部において、前記内部導体が前記外部導体より長いことにより達成される。この電気絶縁ゾーンは、前記外壁上の前記外部導体が前記電気的に開いた端部まで延在しないことにより形成される。この電気絶縁ゾーンは、前記中空円筒形ボディの外壁上で接線方向に、及び前記外部導体と前記電気的端部との間で長手方向に延在する。好ましくは、前記内部導体は、内側の物理的端部まで完全に延在する。この電気絶縁ゾーンは、前記軸チャネルを通って送り込まれる前記ケーブル又は電気リード線の負荷に対する前記共鳴トラップの共鳴周波数の影響の受けやすさを低減させる。
【0018】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して及び添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の共鳴トラップの一実施例の分解図を示す。
図2】同調キャパシタを適所に取り付けられた図1の共鳴トラップの実施例を示す。
図3】半径方向のアクセスを持つ本発明の共鳴トラップの他の実施例を示す。
図4】半径方向のアクセスに取り付けられた同調キャパシタを示す図3の共鳴トラップのクローズアップを示す。
図5図1及び2の本発明の共鳴トラップの概略的な断面を示す。
図6図3の本発明の共鳴トラップの概略的な断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の共鳴トラップの一実施例の分解図を示す。共鳴トラップ1は、中空円筒形ボディ13を有する。前記中空円筒形ボディの内部は、軸チャネル11を形成する。前記軸チャネルを通って、トラップされるべきケーブル(図示されない)は、スライドされることができる。前記中空円筒形ボディの外壁上に、外部導体12が配置され、内壁(すなわち軸チャネル11の壁)上に、内部導体が配置される。同調キャパシタが取り付けられるキャリア14は、チャネル入口において前記軸チャネル内でクランプされる弾性リングの形をとる。弾性リング14は、前記同調キャパシタが取り付けられることができる突起部21を持つ。前記同調キャパシタの各々は、その電気端子の1つにおいて、導電ストリップ33を用いて前記外部導体に電気的に接続される。前記共鳴トラップの電気的に閉じた端部17において、前記内部導体及び前記外部導体は、電気的に接続される(図面では見えない)。前記共鳴トラップの電気的に開いた端部において、前記内部導体は、前記外部導体から離れている、すなわち電気的に絶縁される。
【0021】
図1に見られるように、C字型を持つばねの形の前記弾性リング、及び前記突起部を形成する2、3又は4以上のスタブは、前記キャパシタの取り付けに使用される。このC字型ばねの利点は、これがセラミック管の中に押し込まれる場合にこれ自体が配置された状態を保つことである。これは、はんだ付けプロセスに対して重要である。第一に、前記リングは、内側において銀めっきに対してはんだ付けされなくてはならず、次に、キャパシタが、前記スタブにはんだ付けされなければならない。この最後のはんだ付け動作に対して、前記スタブは、はんだの融点の上まで加熱されなくてはならず、同時に、前記C字型リングは、局所的に前記内側におけるはんだ接合が融解されることができる間、前記内側においてその場所に固定されたままでなくてはならない。したがって、前記C字型リングのばね機能は、はんだ付け動作中に前記リングをその位置に保つ。通常、これは、2つの異なるはんだにより、したがって2つの異なる融点で、行われる、導電性ストリップ33を前記キャパシタに接続する第3のはんだ接合は、高融点はんだを使用する。最後のはんだ接合は、前記管の外側のめっきに対する導電性ストリップ33の接続である。これは、再び、低融点はんだである。異なる融解温度を持つはんだを使用することは、実現するのが難しくない。前記はんだ接合は、これらのトラップの寿命及び信頼性を強力に決定する。前記はんだ接合における亀裂は、前記トラップの故障を直ちに引き起こす。前記キャリア、例えば前記C字型リングがその位置に保たれるので、前記はんだにおける亀裂が避けられる。
【0022】
図2は、同調キャパシタを適所に取り付けられた図1の共鳴トラップの実施例を示す。ここで、4つの同調キャパシタを持つ実施例が、示される。図2において、前記電気的に開いた端部の近くに設けられた前記共鳴トラップの電気インダクタンスに影響を与える複数のスリットも、示される。再び、前記スリットは、前記共鳴トラップの電気的に開いた端部18の近くに設けられる。この領域において、前記共鳴トラップの共鳴周波数を正確に調整するために前記スリットのサイズ、特に長さを正確に調整することが容易である。
【0023】
前記スリットは、前記開いた端部の近くの領域に配置される。その利点は、この領域が、前記共鳴トラップの前記電気的に短絡された端部の近くの領域よりスリット化に対する影響を受けにくいことであり、これは、前記スリットのエッジにおける損傷に対する影響の受けにくさを生じる。他の利点は、通常動作中に、前記開いた端部の近くで、前記電気的に短絡された端部の近くより少ない電流が流れ、これが、H磁場による不所望な電磁結合を減少させることである。前記開いた端部の近くに領域は、影響を受けにくいが、スリット化パターンは、十分に大きい同調範囲を持つ。これは、スリット化なしと最大許容スリット化(外周全体の70%及び最大の2つの層)との間の差が、全ての周波数シフト生成誤差を保証するのに十分な周波数差を生じることを意味する。
【0024】
図3は、半径方向のアクセス31を持つ本発明の共鳴トラップの他の実施例を示す。この実施例において、同調キャパシタ15は、半径方向のアクセス31に収容される。同調キャパシタ15は、導電性ストリップ33で前記外部導体に電気的に接続される。銀、はんだ及びセラミックの熱膨張係数は異なる。図2及び3からのはんだ付け距離SDが長いほど、膨張差が大きくなる。集中HALT試験(高加速寿命試験)から、約5mmが良好な接着(600grf/mm2)に対して十分に長く、熱膨張差の結果として前記はんだ接合に対する破壊力を作成しないように十分に短いと思われる。より長いストリップは、前記寿命試験中に、銀めっきからの亀裂及び分離を示した。
【0025】
図4は、半径方向のアクセス内に取り付けられた同調キャパシタを示す図3の共鳴トラップのクローズアップを示す。図4の前記クローズアップにおいて、半径方向のアクセス31において同調キャパシタ15が取り付けられる軸板32も示される。図3及び4において、外部導体13と前記共鳴トラップの前記開いた端部との間の絶縁ゾーン41が示される。前記絶縁ゾーンは、外部導体13が、誘電材料で作られる前記中空円筒形ボディの端部まで延在しないことで形成される。非磁性めっきは、ディッピングプロセスにより実行される。完全なトラップは、一方の端部を短い距離にわたりディッピングせずに残して銀溶液槽にディッピングされる。このようにして、一方の端部、前記電気的に短絡された端部は、前記めっきにより覆われ、液体槽に完全には押し下げられない他方の端部は、電気的に開いたままである。この種の銀めっき管を作成することは、しばしば、鋭いエッジを生じる。銀めっきは、鋭いエッジに付着することができない。特に、前記電気的に短絡された端部は、影響を受けやすい。前記めっきが、前記電気的に短絡された端部において分離される場合に、許容不可能な周波数変化が、その結果である。各々45度の2つのエッジが、しばしば、提案されるが、これは、問題を倍にする。45度のエッジは、依然として鋭い。前記短絡された端部は、この端部が丸められたエッジを持つ場合にのみめっきされることができ、約1mmの曲率半径が、良好な結果を提供する。
【0026】
前記開いた端部におけるエッジは、他の理由でも丸められなければならない。鋭いエッジは弱い。セラミックはもろい。セラミック材料の小さなチップが、前記開いた端部から押しのけられる場合、前記開いた端部が、この共鳴システムの一部であるキャパシタとして機能し、このキャパシタのキャパシタンスが、誘電材料を除去することにより変化されるので、周波数変化も生じる。
【0027】
図4に見られるように、内側における銀めっきは、外側における銀めっきより前記開いた端部に近い。このようにして、前記トラップの共鳴周波数は、前記ケーブルの厚さに対する影響を受けにくい。セラミックトラップは、MRIシステムにおける応用に対して常にケーブルの周りに取り付けられる。セラミックトラップのタイプ数減少の観点から、ケーブルの異なる厚さが、1つの共鳴トラップタイプにおいて使用されることを可能にされるべきである。内側及び外側におけるめっき長さが、両方とも等しかった場合、前記トラップの共鳴周波数は、前記ケーブル厚さにより影響を受け、これは、本発明の共鳴トラップにおいて避けられる。
【0028】
図5は、図1及び2の本発明の共鳴トラップの概略的な断面を示す。前記断面は、長手軸18に平行な面に沿っている。前記共鳴トラップのボディは、長手軸18について円筒状に対象であり、その内部は、軸チャネル11を形成する。ボディ13は、セラミック誘電材料で作られる。外部導体12は、金属めっきとして円筒形ボディ13上に配置される。内部導体22は、前記ボディの内壁に、すなわち前記軸チャネルの壁に配置される。トラップ1の電気的に閉じた端部17において、内部導体22及び外部導体12は、電気的に接触している。実際に、前記閉じた端部における前記外部及び内部導体は、前記円筒形ボディの壁の端面上に連続的な導体を形成し、電気的短絡23を形成する。前記内部及び外部導体は、前記電気的端部にわたり延在し、前記内部及び外部導体自体が前記共鳴トラップの前記電気的に閉じた端部において丸められたエッジを形成するように前記中空円筒形ボディの前記形成する丸められたエッジをたどる。これらの丸められたエッジが、前記円筒形ボディに対する前記内部及び外部導体の接着を強化すると思われる。これは、前記共鳴トラップを、前記外部及び内部導体に対する損傷の影響を受けにくくする。前記トラップの反対側の端部において、弾性リング14は、軸チャネル11の前記開いた端部においてクランプされる。1又は複数の突起部(又はスタブ)21は、弾性リング14から延在し、同調キャパシタ15を支える。各突起部に対して、前記同調キャパシタの1つが、はんだ付けされる。各同調キャパシタ15は、同調キャパシタ15から外部導体12まで延在し、前記外部導体の表面にはんだ付けされる導電性ストリップ33を用いて外部導体12に電気的に接触している。前記導電性ストリップは、はんだ付け長さsdにわたり前記外部導体にはんだ付けされる。長さsdは、前記導電性ストリップの十分な接着を達成するのに十分に長いようなものである。前記導電性ストリップと前記外部導体との間の熱ストレスを回避するために、はんだ付け長さsdは、十分な接着に必要とされるよりは長くない。
【0029】
接線方向に延在する絶縁スリット16は、前記共鳴トラップの前記電気的に開いた端部の近くの領域において前記外部導体に設けられる。これらのスリット16は、前記円筒形ボディにわたり延在し、前記外部導体を局所的に中断する。前記共鳴トラップの共鳴周波数は、前記共鳴トラップの製造中に前記円筒形ボディ上の前記スリットの長さによって正確に同調される。
【0030】
図5の共鳴トラップの製造において、第一に、突起部21を持つ弾性リング14が、前記軸チャネルの前記開いた端部内にクランプされる。次いで、同調キャパシタ15は、突起部21にはんだ付けされる。最後に、外部導体12に対する同調キャパシタ15の電気的接触が、前記同調キャパシタ及び前記外部導体に前記導電性ストリップをはんだ付けすることにより作成される。これらのはんだ付けプロセスの間に、前記弾性リングは、はんだ付け中に様々なコンポーネントが前記弾性リングにより固く支持されて同じ位置に留まるように前記軸チャネルの前記開いた端部においてクランプされる。
【0031】
図6は、図3の本発明の共鳴トラップの概略的な断面を示す。前記断面は、長手軸18に平行な面に沿っている。前記共鳴トラップのボディは、長手軸18について円筒状に対象であり、その内部は、軸チャネル11を形成する。ボディ13は、セラミック誘電材料で作られる。外部導体12は、金属めっきとしてボディ13上に配置される。内部導体22は、前記ボディの内壁に、すなわち前記軸チャネルの壁に配置される。トラップ1の電気的に閉じた端部17において、内部導体22及び外部導体12は、電気的に接触している。同調キャパシタ15は、円筒形ボディ13の壁並びに内部導体22及び外部導体12を通って半径方向の凹所33内に収容される。同調キャパシタ15は、軸板32上に取り付けられる。前記軸板は、内部導体22にはんだ付けされ、前記同調キャパシタに対する固い支持を提供する。同調キャパシタ15と外部導体12との間の電気的接触は、同調キャパシタ15に及び外部導体12にはんだ付けされる導電性ストリップ33により確立される。前記導電性ストリップは、はんだ付け長さsdにわたり前記外部導体にはんだ付けされる。長さsdは、前記導電性ストリップの十分な接着を達成するのに十分に長いものである。前記導電性ストリップと前記外部導体との間の熱ストレスを避けるために、はんだ付け長さsdは、十分な接着に必要とされるより長くはない。
【0032】
接線方向の絶縁スリット16は、図5を参照して論じられるように設けられる。
【0033】
更に、前記電気絶縁ゾーンは、前記共鳴トラップの電気的に開いた端部18に設けられる。前記絶縁ゾーンは、円筒形ボディ13の端面までは外部導体12を配置しないが、前記絶縁ゾーン上の前記円筒形ボディのセラミック誘電材料の外面を前記外部導体により覆われないように残すことにより形成される。前記絶縁ゾーンは、円筒形ボディ13の方位角的に全体に延在する。長手方向に、前記絶縁ゾーンは、長さl=htanαにわたり延在し、ここでhは前記円筒形ボディの壁及び前記外部導体の厚さの和であり、αは前記円筒形ボディの半径方向に内側の端部と前記外部導体の半径方向に外側の端部との間に延在する線により形成される角度である。良好な結果は、α=45°又はそれよりわずかに大きい場合に達成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6