特許第6391664号(P6391664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6391664リバスチグミンを含む、経皮薬物送達システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391664
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】リバスチグミンを含む、経皮薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/27 20060101AFI20180910BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20180910BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61K31/27
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61K9/70 401
   A61K47/32
   A61K47/10
   A61K47/14
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-502413(P2016-502413)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-522792(P2016-522792A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】US2014027357
(87)【国際公開番号】WO2014152454
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/799,015
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516143640
【氏名又は名称】エヌエーエル ファーマスーティカル グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リョー,ゼ フィル
(72)【発明者】
【氏名】モー,ワイ ジョーゼフ
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0066120(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/002640(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010026903(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0068515(US,A1)
【文献】 特開2012−236773(JP,A)
【文献】 特表2009−517468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩およびii)吸収強化剤からなり、それぞれがアクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー接着体中に分散された単一層の薬物含有マトリクス層;前記薬物含有マトリクス層に支持を提供する背面層;および該接着体と接触するライナーからなり、前記吸収強化剤は、ポリエチレングリコールパーム核グリセリド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリグリセリル−3−オレエート、ラウリルアルコールおよびオレイルアルコールからなる群から選択される、経皮薬物送達システム。
【請求項2】
前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーが、−30℃以下のガラス転移温度を有する炭化水素マクロマー内でグラフトされた、C4〜18アルキルアクリレートモノマーを含む、アクリルポリマーである、請求項1に記載の経皮薬物送達システム。
【請求項3】
リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩が、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、5重量%〜40重量%、7重量%〜30重量%、または10重量%〜20重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の経皮薬物送達システム。
【請求項4】
前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーが、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、60重量%〜95重量%、70重量%〜90重量%、または75重量%〜85重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の経皮薬物送達システム。
【請求項5】
前記吸収強化剤が、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、1重量%〜20重量%、または5重量%〜15重量%の範囲の量で存在する、請求項に記載の経皮薬物送達システム。
【請求項6】
パッチの形態で、前記パッチのサイズが、2.5cm〜20cm、3.5cm〜10.5cm、5cm〜15cm、5cm、10cm、または15cmの範囲である、請求項1に記載の経皮薬物送達システム。
【請求項7】
前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーが、87−502A、87−502B、87−503A、87−504A、87−504B、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の経皮薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩を含む、経皮薬物送達システムおよびそれを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
痴呆は、通常の加齢、機能の顕著な衰え、およびせん妄の欠如により説明することができない、認知の複数の領域における障害により特徴づけられる、臨床症候群である。アルツハイマー病およびパーキンソン病は、経時により徐々に悪化する痴呆の形態である。それは、記憶、思考および行動に影響を与える。
【0003】
脳では、神経が、シナプスで結合して伝達し、ここで、神経伝達物質と呼ばれる、小さなバースト(burst)の化学物質が、細胞から細胞へ情報を運ぶ。アルツハイマー病はこのプロセスを途絶させ、最終的には、シナプスを破壊し、脳の伝達ネットワークに損傷を与えてニューロンは死に至る。
【0004】
アルツハイマー病は、アセチルコリンを産生して使用する細胞に損傷を与えるか、または破壊して、それにより、メッセージを運べる量を減少させる。コリンステラーゼ阻害剤は、アセチルコリンステラーゼの活性をブロックすることにより、アセチルコリンの分解を遅くする。アセチルコリンのレベルを維持することにより、薬物は、機能する脳細胞の損失を補償するのを助け得る。
【0005】
現在の薬物は、アルツハイマー病またはパーキンソン病の症状をマスクするのを助け得るが、基礎疾患(underlying disease)を処置しない。FDAは、アルツハイマー病およびパーキンソン病の症状を処置するための、以下:ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(ニバリン、ラザダイン、ラザダイン ER、レミニル、リコレミン)、リバスチグミン(イクセロン)、のコリンステラーゼを承認し、これは、キーとなる神経伝達物質を分解する疾患活性を遅くすることにより作用する。ドネペジルは、アルツハイマー病の全てのステージを処置することが認められる一方で、リバスチグミンおよびガランタミンは、軽度から中度の(mild to moderate)アルツハイマー病を処置することが認められる。
【0006】
前記アセチルコリンステラーゼ阻害剤の中で、リバスチグミンが、1997年からカプセルおよび液体処方物で利用可能となっている。2006年に、パーキンソン病に関連する軽度から中度の痴呆の処置についての、最初の製品が世界的に承認され、2007年に、リバスチグミン経皮パッチが、痴呆のための最初のパッチ処置となった。いずれかのタイプの痴呆を有する患者(すなわち、アルツハイマー病およびパーキンソン病の患者)において、リバスチグミンは、より長く患者が独立的で「彼ら自身である」ことを維持することを可能にし得る、有意な対症効果(symptomatic effect)を提供することが知られてきた。リバスチグミンは、アセチルコリンの分解に関する、別の酵素の活性をブロックすることにより作用すると考えられている。
【0007】
リバスチグミン経皮パッチは、イクセロンの商品名で販売され、これは、2層組成であり、ここで、第1の層は、例えば、アルファ−トコフェロールなどの抗酸化剤を有する、ポリアクリレートおよびメタクリレートマトリクス中にリバスチグミンを含み、第2の層は、シリコン系接着体を含む。しかしながら、前記イクセロンパッチは、顕著な吐き気、嘔吐、食欲減退および体重減少を含む、胃腸の副作用を引き起こし得る。他の副作用には、皮膚の刺激が含まれる。
【0008】
例えば、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの、軽度から中度の痴呆の処置の間に送達される有効量の薬物による、経皮薬物送達システムを製造する、簡易で効率的な方法についての、なお大きな必要性がある。本発明は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の要約
本発明は、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩を含む、経皮薬物送達システムを提供する。本発明は、高い皮膚浸透のみならず、また少なくとも24hの間、治療的有効血中濃度の連続的維持を提供する。さらに、本発明は、長期の保管の間であっても、完全な皮膚浸透速度を維持する一方で、リバスチグミンの再結晶を阻害することができる、経皮薬物送達システムを提供する。さらに、本発明は、いかなる抗酸化剤および追加の接着層を必要とすることなく、安定性および接着強度を維持する。
【0010】
よって、本発明は、優れた安定性を有する、24時間まで、または24時間より長く、連続的に、高い皮膚浸透速度を有する、リバスチグミン含有経皮薬物送達システムを提供する。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、60℃でのおよび40℃での、表1に記載の処方物RN−3、RN−4、RN−5、RN−6、RN−7およびRN−8の安定性研究を示し;
図2図2は、前記イクセロンパッチと比較した、60℃でのおよび40℃での、表3に記載の処方物RN−11、RN−14およびRN−17の安定性を示し;
図3図3は、前記イクセロンパッチと比較した、60℃でのおよび40℃での、表4に記載の処方物RN−18、RN−19およびRN−20の安定性を示し;
図4図4は、表6に記載のRN−18および前記イクセロンパッチの、in vitroでの人の皮膚浸透比較結果を示し;
図5図5は、処方物RN−18および前記イクセロンパッチの比較データを示し;
図6図6は、RN−18および前記イクセロンパッチの比較処方および安定性研究を示す。
【0012】
本発明の詳細な説明
本発明の一側面において、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩およびアクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーを含む薬物含有マトリクス層接着体を含む、経皮薬物送達システムが提供される。
【0013】
本発明の実施形態において、前記経皮薬物送達システムは、背面層、薬物含有マトリクス層および放出層を含んでもよい。
本明細書において使用するとおり、用語「アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー」接着体は、炭化水素マクロマーを含むものでグラフトされたアクリルポリマー(an acrylic polymer grafted with a hydrocarbon macromer including)を指す。
【0014】
本発明の前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーは、−30℃以下のガラス転移温度を有する炭化水素マクロマーでグラフトされた、C4〜18アルキルアクリレートモノマーを含む、アクリルポリマーであってもよい。前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー接着体は、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、約60〜約95重量%の範囲の量で存在してもよく、代替的に、約70〜約90%、または約75〜約85%で存在してもよい。本発明の前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー接着体は、商業的に入手可能なアクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー、すなわち、Duro−Tak(登録商標)87−502B(National Starch)およびDuro−Tak(登録商標)87−504B(National Starch)、Duro−Tak(登録商標)87−502A(National Starch)、Duro−Tak(登録商標)87−503A(National Starch)およびDuro−Tak(登録商標)87−504A (National Starch)から選択される、1種または2種以上であってもよい。
【0015】
本発明の前記経皮薬物送達システムにおいて、前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーを接着体として使用し、前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー接着体は、前記薬物含有マトリクス層中でマトリクスを形成する。言い換えると、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩は、前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー接着体中に均一に分散され、それにより、前記薬物含有マトリクス層を形成する。
【0016】
使用される、前記アクリル−炭化水素ハイブリッド接着体のいくつかの例には、(以下の)表Aに提供するとおり、3種の異なるタイプが含まれ得、これを、架橋剤および粘着性付与剤の存在により、分類することができる。また、溶媒系の2つの群により区別することができる(表B)。2つの溶媒系[群A(502A、503Aおよび504B)および群B(502Bおよび504B)]の組成を、表Bに記載する。処方物の開発の間、接着体の固体部分を前記溶媒中で溶解し、これに、前記薬物物質および他の賦形剤を溶解させることができる。
【0017】
表A.ハイブリッド圧力感受性接着体(PSA)
【表1】
【0018】
表B.ハイブリッドPSAの溶媒系
【表2】
【0019】
したがって、接着体の化学構造が既知であり得たとしても、経皮パッチの開発のための処方物を、溶媒組成に従い、顕著に修正しなければならない。それらの物性および薬物物質に対する接着体の適合性が変更されたので、パッチのそれらの処方物の開発は、最終物のより良好な安定性を維持する、全く異なる方法によりアプローチされなければならない。
【0020】
驚くべきことに、本発明の低ガラス転移温度を有する、前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーから形成された前記マトリクスが、ポリマー鎖のフレキシビリティーを改善して、活性成分、すなわち、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩の拡散速度を増加させることができることが見出された。したがって、官能基を有しないアクリル接着体(例えば、Duro−Tak(登録商標)87−4098、Duro−Tak(登録商標)87−900A、Duro−Tak(登録商標)87−9301など)またはヒドロキシルもしくはカルボキシル官能基を有する、他のタイプのアクリル接着体(例えば、Duro−Tak(登録商標)87−2516、Duro−Tak(登録商標)87−2510、Duro−Tak(登録商標)87−2525、Duro−Tak(登録商標)87−2596、Duro−Tak(登録商標)87−2825、Duro−Tak(登録商標)87−2502、Duro−Tak(登録商標)87−2979、Duro−Tak(登録商標)87−2074、Duro−Tak(登録商標)87−2353など)をのみを使用する場合と比較して、前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーは、より高い皮膚浸透速度および優れた接着力を提供する。
【0021】
前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー接着体を、マトリクス層を形成するのに十分な量で、例えば、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、約60重量%〜約90重量%の範囲の量で使用してもよく、代替的に、約70〜約90%、または約75〜約85%で存在してもよい。
【0022】
本発明の前記経皮薬物送達システムにおいて、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩は、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、約5〜約40%の範囲の量で存在してもよい。実施形態において、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩は、約7〜約30%、または約10〜約20%の範囲の量で存在してもよい。
【0023】
リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩の量が、40重量%より多い場合には、薬物の結晶が前記経皮薬物送達システム中で形成され得、これにより、接着力の低下または前記薬物の吸収速度の低下がもたらされる。
【0024】
さらに、本発明の前記経皮薬物送達システムは、経皮薬物送達システムの分野において使用される吸収強化剤を含んでもよい。前記吸収強化剤は、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、約1重量%〜約20重量%、好ましくは、約5重量%〜約15重量%の範囲の量で存在してもよい。前記吸収強化剤の量が、20重量%より多い場合には、接着力が低下し得るか、または弱まった粘着力によりコールドフロー(cold flow)が生じ得る。
【0025】
本発明の前記経皮薬物送達システムは、テルペン、界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪族アルコール、糖エステル、グリセロール、アルキル2−エチルヘキサネートおよびジエトキシエチルスクシネートの中から選択される、1種または2種以上の吸収強化剤をさらに含んでもよい。前記吸収強化剤は、前記薬物含有マトリクス層の全重量に基づき、約1重量%〜約20重量%の範囲の量で存在してもよい。前記吸収強化剤は、ポリエチレングリコールパーム核グリセリド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリグリセリル−3−オレエート、ラウリルアルコールおよびオレイルアルコールの中から選択される、1種または2種以上であってもよい。
【0026】
テルペンの例には、シネロール、リモネンなどが含まれる。
界面活性剤の例には、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、オレイン酸オレイルエステル、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、オレオイルマクロゴールグリセリド、ジイソプロピルジレレート(dirrerate)、ジイソプロピルアジペート、ヘキシルラウレート、ポリソルベート、ソルビタンオレエートなどが含まれる。
【0027】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例には、ポリエチレングリコールパーム核グリセリド、2−エチルヘキシルヒドロキシステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどが含まれる。
【0028】
脂肪族アルコールの例には、ポリグリセリル−3オレエート、ポリエチレングリコールアーモンドグリセリド、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどが含まれる。
糖エステルの例には、スクロースステアレート、スクロースパルミテート、スクロースラウレート、スクロースベヘネート、スクロースオレエート、スクロースエルケートなどが含まれる。
【0029】
アルキル2−エチルヘキサネートの例には、2−エチルヘキサノネート、セチル2−エチルヘキサノネート、ステアリル2−エチルヘキサノネートなどが含まれる。
上記の吸収強化剤の中で、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび/または脂肪族アルコールが、好ましく使用され得る。より好ましくは、前記吸収強化剤は、ポリエチレングリコールパーム核グリセリド(例えば、Crovol(登録商標) A40など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば、Brij(登録商標) 30、Brij(登録商標) 52など)、ポリグリセリル−3−オレエート(例えば、Plurol oleique(登録商標) cc497など)、ラウリルアルコール、およびオレイルアルコールの中から選択される、1種または2種以上であってもよい。最も好ましくは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば、Brij(登録商標) 30など)を、吸収強化剤として使用してもよい。
【0030】
本発明により付与される利点のいくつかには、例えば、前記マトリクス層からのリバスチグミンの増加された拡散速度、高い皮膚浸透速度、少なくとも24hの間の、治療的有効血中濃度の連続的維持、リバスチグミンの再結晶の阻害、長期の保管の間であっても皮膚浸透速度を維持すること、患者の薬物コンプライアンスの改善などが含まれる。さらに、利点には、例えば、単一層であることによる容易な製造、高い浸透性によるより少ない必要投与量(例えば、イクセロンのパッチよりも30%少ないなどの、例えば、送達するのに必要な、より少ない薬物含有量など)などが含まれる。さらに、本発明の前記パッチのサイズは、適用される面積に応じて、約2.5cm〜約20cm、例えば、3.5、5、7、10 10.5、または15cmなどの範囲であり得る。
【0031】
イクセロンの商品名で販売されるリバスチグミンは、アルツハイマー病タイプの、またはパーキンソン病に関連する、軽度から中度の痴呆を処置する、可逆的アセチルコリンステラーゼ(ACE)阻害剤である。リバスチグミンは、皮膚のアセチルコリンを増加させ、それにより、脳の特定の領域にわたる電気的シグナルの伝達を改善した。しかしながら、それは、短い半減期、すなわち、約1.5時間である。
【0032】
本発明は、24時間の期間にわたって、前記薬物の持続時間を伸ばす1日用パッチを提供する。便利な1日1回の治療により、患者コンプライアンスを促進し、改善する。コンプライアンスについて前記患者にとって便利であるのみならず、モニタする管理者の負担をより少なくする。
【0033】
本発明は、約1.5時間の短い半減期を有する経口投与形態のものに対し、より一貫した(more consistent)薬物血漿中プロファイルを提供する。
さらに、本発明により、特に年長の患者に対する胃腸の刺激を避ける、局所的適用が可能となる。本発明により、局所的適用は、初回通過肝臓代謝副作用を回避する。
【0034】
本発明の前記経皮薬物送達システムを、放出層上に前記薬物含有マトリクス層を形成し、次いでその上に背面層を形成することにより調製し得る。前記放出層については、経皮薬物送達システムの分野において使用される、従来の放出ライナーまたはそれらの積層物を使用してもよい。例えば、シリコン樹脂またはフッ素樹脂でコーティングされた、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどで作製された、フィルム、紙、またはそれらの積層物である。
【0035】
さらに、経皮薬物送達システムの分野において従来使用される、薬物非吸収性のフレキシブルな材料を、前記背面層(「背面膜」とも称される)として使用してもよい。例えば、それらは、ポリオレフィン、ポリエーテル、多層エチレンビニルアセテートフィルム、ポリエステル、ポリウレタンなどであり得る。本発明の前記経皮薬物送達システムは、例えば、任意に適切な溶媒(例えば、酢酸エチルなど)中で吸収強化剤と共に、リバスチグミンまたはその薬学的に許容し得る塩およびアクリル−炭化水素ハイブリッドポリマー接着体を溶解し、シリコンでコーティングされた放出ライナー上で得られた溶液をキャストすることにより、その後前記混合物を乾燥して、次いで、背面層を積層することにより、調製してもよい。
【0036】
本発明のいくつかの調製例を、以下に提供する。これらの例は例示的なものであって、本発明の範囲を限定するものではない。合理的な変形が、本発明の範囲から逸脱せずに、本願においてなされることができる。
【0037】

経皮パッチの作製の一般的方法。
混合物A:酢酸エチル中のリバスチグミンベース(rivastigmine base)の溶液に強化剤を添加した。
混合物B:混合物Aに、ハイブリッド接着体(Henkel、米国)をさらに添加し、均一な混合物Cが得られるまでしっかりと撹拌した。
【0038】
薬物接着マトリクス層:混合物Cを、シリコーンでコーティングされた放出ライナー(3M Scotchpak 1022)上でキャストし、全ての溶媒を室温で20分間蒸発により除去し、続いて、80℃で15分間オーブン乾燥した。
トランスルーセントのフレキシブルポリエチレンフィルム(3M Cotran 9735)からなる背面フィルムをまた、前記薬物接着マトリクス層上で積層した。前記得られた、積層されたシートを、ダイ切断機(die−cutting machine)により、10cmのサイズに切断した。前記薬物負荷を、単位面積当たり18mg/cmに調節した。完成したパッチを、直ちにPET/AL/PAN包装材料でパウチした。
【0039】
【表3】
【0040】
一般的試験法
1)結晶化
予備安定性研究期間の間の前記パッチ中の結晶を、裸眼または顕微鏡により、異なる保管条件で観察した。
2)接着
前記パッチのピール(peel)接着値を、Instronまたはテクスチャ分析器を使用して測定し、次いで、十分、やや十分または不十分に分類した。
【0041】
3)にじみ(bleeding)
前記パッチからの薬物のにじみを、裸眼により観察した。にじみをまた、前記パッチの表面上で清潔なティッシュで拭き取ることにより(by wiping a clean tissue on the surface of the patch)チェックした。
【0042】
表1:リバスチグミンを含む、パッチ処方物RN−3〜RN−8の例
【表4】

図1は、異なる条件の上記処方物の薬物含有量の安定性を示す。
【0043】
表2:安定性研究
上記表1にリスト化された全てのパッチ処方物を、安定性について試験した。前記パッチを、異なる保管条件(60℃/75%RH、40℃/75%RH、25℃/60%RH)により、安定性チャンバ(stability chamber)中に保管されたアルミニウムパウチ中に包装した。指定された時間で、前記パッチ処方物を取り、いくつかの特性(結晶化、接着およびにじみ)について試験した。
【0044】
【表5】
【0045】
表3:リバスチグミンを含む、パッチ処方物RN−11、14および17の例
【表6】

図2は、異なる条件の上記処方物の薬物含有量の安定性を示す。
【0046】
表4:リバスチグミンを含む、パッチ処方物RN−18、RN−19およびRN−20の例
【表7】

図3は、異なる条件の上記処方物の薬物含有量の安定性を示す。
【0047】
表5:パッチ処方物RN−18、RN−19およびRN−20の安定性研究
【表8】
【0048】
見てわかるとおり、本発明の前記処方物の全ては、例えば、60℃および40℃などで1か月間、3つの特性、すなわち、結晶化、接着およびにじみの全てについての上記の良好な安定性データを提供した。前記パッチ中には、結晶は存在せず、にじみもなかった。さらに、上記処方物は、十分な接着を示し、少なくとも24時間の間、皮膚上に留まった。さらに、図1、2、3および5は、上記の処方物中の薬物含有量について、良好な安定性データを提供した。
【0049】
表6:In vitroのヒトの皮膚浸透
【表9】
【0050】
表6は、30%を使用することが知られている、イクセロンと比較して、RN−18が、わずか14%の薬物を使用することを示す。さらに、RN−18は、イクセロンのパッチのものと同等の皮膚浸透速度をなお示した。本発明の前記アクリル−炭化水素ハイブリッドポリマーは、例えば、イクセロンのアクリレートなどの他の接着体と比較して、顕著に高い皮膚浸透速度を提供した。図4は、表6の比較結果を実証する(フランツセル平均(Franz cell Mean)±SE(n=4)を使用した、In vitroのヒトの皮膚浸透)。
【0051】
本発明の範囲または趣旨から逸脱せずに、当業者には、種々の修正および変形が、本発明の構造物になされ得ることが明らかであろう。上記の観点から、本発明が、以下の特許請求の範囲の範囲内にあるという条件で、本発明の修正および変形をカバーすることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6