特許第6391679号(P6391679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6391679車両の複数のホイールの位置特定方法及び装置並びにタイヤ空気圧監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391679
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】車両の複数のホイールの位置特定方法及び装置並びにタイヤ空気圧監視システム
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20180910BHJP
   G01L 17/00 20060101ALI20180910BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20180910BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B60C23/04 N
   G01L17/00 301P
   G08C19/00 S
   G08C17/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-518474(P2016-518474)
(86)(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公表番号】特表2016-526500(P2016-526500A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014062151
(87)【国際公開番号】WO2014198785
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】102013211152.5
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ベテッケン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シュポトカ
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/157308(WO,A1)
【文献】 特開2012−236556(JP,A)
【文献】 特開2005−069693(JP,A)
【文献】 特開2014−141247(JP,A)
【文献】 特開2012−240615(JP,A)
【文献】 特開2011−070400(JP,A)
【文献】 特開2014−019214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
G01L 17/00
G08C 17/00
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのホイールが1つのホイール側電子機器(3a〜3d)を備えている、車両(1)の複数のホイール(2a〜2d)を位置特定する方法であって、
車両側で、
前記ホイール側電子機器から、ホイールが第1の回転角度位置(α)に位置した時点(t0)の推定が可能である信号(7)を受信するステップ(S3)と、
前記信号に基づき、第1の回転角度情報(t0)を生成するステップ(S4)と、
前記車両のそれぞれ所定の位置に対応付けられている複数のセンサ(4a〜4d)によって、前記複数のホイールの第2の回転角度位置(β1〜β4)を検出するステップ(S5)と、
前記第2の回転角度位置(β1〜β4)に基づいて、第2の回転角度情報(ta〜td)を供給するステップ(S6)と、
前記第1の回転角度情報(t0)と前記第2の回転角度情報(ta〜td)とを比較するステップ(S7)と、
前記比較に依存して、前記ホイール側電子機器に対応付けられているホイールを位置特定するステップ(S8)とが実施され、但し、
前記信号(7)は、時間をずらして受信される複数のパケット(7a〜7c)からなり、
前記第1の回転角度情報(t0)を生成するステップ(S4)は、前記複数のパケット(7a〜7c)の1つに基づいて、前記ホイールが第1の回転角度位置(α)に位置した時点(t0)を求めるステップを含んでおり、
さらに車両側で、
複数のパケット間で少なくとも1つの時間間隔(dt1,dt2)を求めるステップ(S9,S11)と、
前記求められた少なくとも1つの時間間隔(dt1,dt2)に基づいて、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値を供給するステップ(S10,S12)とが実施され、
前記各パケット(7a〜7c)は、複数のパケットの1つのシーケンスの中での当該パケットのランクを示す番号を有しており、さらに、受信した信号が、第1のパケット(7a)を含んでいない場合に、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値と、1つのパケットの前記番号とに基づいて、前記ホイールが第1の回転角度位置(α)に位置した時点(t0)を求めるステップが実施され、
前記少なくとも1つの推定値を供給するステップ(S12)は、
現下の周期中に求められた少なくとも1つの時間間隔と、0から1の間にある所定値との乗算による第1の積を算出するステップと、
先行周期の推定値と、1から前記所定値を減じた値との乗算により、第2の積を算出するステップであって、前記先行周期は、時間的に見て特に現下の周期の直前に存在した周期であるステップと、
前記第1及び第2の積の加算により、現下の周期の推定値を算出するステップと
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ホイール側電子機器側で、
前記ホイール側電子機器が対応付けされているホイールの第1の回転角度位置を検出するステップ(S1)と、
ホイールが第1の回転角度位置(α)に位置した時点(t0)の推定が可能な信号(7)を送信するステップ(S2)とが実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔を求めるステップは、多重に実施され、複数の求められた時間間隔が記憶される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、順次連続する複数の周期において実施され、最も新しいn周期の時間間隔だけが記憶される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの推定値を供給するステップは、記憶されている複数の時間間隔から少なくとも1つの平均値を形成するステップを含んでいる、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔を求めるステップは、受信した信号が、全ての予期されるパケットを含んでいる場合にのみ実施される、請求項1からいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのホイールが1つのホイール側電子機器(3a〜3d)を備えている、車両(1)の複数のホイール(2a〜2d)を位置特定する装置(5,8)であって、
前記ホイール側電子機器から、ホイールが第1の回転角度位置(α)に位置した時点(t0)の推定が可能である信号を受信する第1の受信ユニット(9)と、
前記信号に基づき、第1の回転角度情報(t0)を生成する第1の処理ユニット(10)と、
前記車両のそれぞれ所定の位置に対応付けられている複数のセンサ(4a〜4d)によって測定された前記複数のホイールの第2の回転角度位置(β1〜β4)を受信する第2の受信ユニット(13)と、
前記第2の回転角度位置(β1〜β4)に基づいて、第2の回転角度情報(ta〜td)を供給する第2の処理ユニット(14)と、
前記第1の回転角度情報(t0)と複数の第2の回転角度情報(ta〜td)とを比較する比較ユニット(15)と、
前記比較ユニットの結果に依存して、前記ホイール側電子機器に対応付けられているホイールを位置特定する位置特定ユニット(16)とを備え、
前記第1の受信ユニット(9)は、時間をずらして受信される複数のパケット(7a〜7c)からなる信号を受信するように構成されており、
前記第1の処理ユニット(10)は、前記ホイールが第1の回転角度位置(α)に位置した時点(t0)を、前記複数のパケットの1つに基づいて求めるように構成されており、
さらに前記装置は、
複数のパケット間で少なくとも1つの時間間隔(dt1,dt2)を求める間隔算出装置(11)と、
前記求められた少なくとも1つの時間間隔(dt1,dt2)に基づいて、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値を供給する推定装置(12)とを備えており、
前記各パケット(7a〜7c)は、複数のパケットの1つのシーケンスの中での当該パケットのランクを示す番号を有しており、さらに、受信した信号が、第1のパケット(7a)を含んでいない場合に、前記第1の処理ユニット(10)は、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値と、1つのパケットの前記番号とに基づいて、前記ホイールが第1の回転角度位置(α)に位置した時点(t0)を求めるように構成されており、
前記推定装置(12)は、
現下の周期中に求められた少なくとも1つの時間間隔と、0から1の間にある所定値との乗算による第1の積を算出し、
先行周期の推定値と、1から前記所定値を減じた値との乗算により、第2の積を算出し、ここで、前記先行周期は、時間的に見て特に現下の周期の直前に存在した周期であり、
前記第1及び第2の積の加算により、現下の周期の推定値を算出する、
ように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項記載の装置を備えていることを特徴とするタイヤ空気圧監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのホイールがホイール側電子機器を備えている、車両の複数のホイールを位置特定する方法および装置に関する。さらに本発明は、そのような装置を備えたタイヤ空気圧監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直接測定方式のタイヤ空気圧監視システムは従来技術からも公知であり、このシステムは、少なくとも1つのホイールが直接測定式の電子機器を備える特徴を有する。全てのホイールが、対応するデータを車両側受信器に送信するホイール側電子機器を備えているのならば、どのホイールから、詳細にはどのホイール位置からデータが送信されたかを運転者に指示できることが望まれる。そうすることで、空気圧の損失が検出された場合に、車両に備わるホイールのうちのどれが空気圧を失ったかを、運転者に直接伝えることが可能になる。
【0003】
従来技術、例えば国際公開第2010/034703号パンフレット、国際公開第2011/085877号パンフレット、及び米国特許第8332104号明細書からは、ABSシステムやESPシステムによる測定が可能となるように、ホイール側電子機器の角度位置を、ホイール角度位置との比較において、比べることにより、ホイール側電子機器の位置特定を達成する方法が公知である。ホイール側電子機器から送信される個々のパケットは、例えば、車両ボディによるシールドによって車両側の受信器まで到達しない場合があるので、例えば米国特許第8332104号明細書からは、複数のパケットを時間的にずらして送信することが公知である。例えば、最初のパケットの受信に失敗した場合でも、第2のパケットと既知の遅延時間とを用いることで最初のパケットの送信時点を逆算することが可能である。ここでは同一の複数のパケットの送信が行われ、それによって得られる冗長性により、個々のパケットの補填が可能となる。
【0004】
そのような従来技術から出発して本発明の課題は、より改善された精度ないしはより迅速な収束を有する、車両の複数のホイールの位置付のための手段を提供することにある。
【0005】
この課題は、独立請求項の特徴部分に記載された本発明によって達成される。従属請求項には、本発明の有利な実施形態が記載される。
【0006】
これにより本発明は、少なくとも1つのホイールがホイール側電子機器を備えている車両の複数のホイールを位置特定する方法を含む。この場合車両側では、以下のステップが実施される。まず、ホイール側電子機器からの信号が受信され、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点が推定される。この信号に基づき、第1の回転角度情報が生成される。前記複数のホイールの第2の回転角度位置は、車両のそれぞれの所定位置に対応付けられているセンサによって検出される。第2の回転角度情報は、第2の回転角度位置に基づいて供給される。この第2の回転角度情報は前記第1の回転角度情報と比較される。この比較に依存して、ホイール側電子機器が対応付けられているホイールが位置特定される。この方法における信号は、時間をずらして受信された複数のパケットから形成される。その際第1の回転角度情報を生成するステップには、複数のパケットの1つに基づいてホイールが第1の回転角度位置に位置した時点を検出するステップが含まれる。さらに車両側では、複数のパケット間で少なくとも1つの時間間隔が求められ、この求められた少なくとも1つの時間間隔に基づいて、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値が供給される。
【0007】
複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔の算出と、この算出された少なくとも1つの時間間隔に基づく、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値の供給とによって、ホイール側電子機器のクロックの不精度を補償することができる。その結果として、車両の複数のホイールをより正確に位置特定する方法が得られ、この方法はより迅速に収束する。それによりこれらのホイールは、より迅速に位置特定可能となる。
【0008】
ホイール側電子機器では、前記方法は次のステップを実施する。すなわち、ホイール側電子機器に対応付けられたホイールの第1の回転角度位置を検出するステップであって、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点の推論を可能にする信号を送信するステップが実施される。
【0009】
この方法の一実施形態によれば、各パケットは、複数のパケットの1つのシーケンスの中で当該パケットがどのランクをとっているかを示す番号を有している。受信した信号が、第1のパケットを含んでいない場合には、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値と、パケットの前記番号とに基づいて、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点を求めるステップが実施される。
【0010】
このようにして、少なくとも1つの推定値と、選択されたパケットの番号とを用いることで、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点が逆算可能になる。
【0011】
複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔を求めるステップは、多重に実施することが可能であり、求められた時間間隔を相応に記憶することも可能である。
【0012】
一実施形態によれば、前記方法は、複数の順次連続する周期で実施され、最も新しいn周期の時間間隔だけが記憶される。但し前記nは特に自然数であり得る。この記憶は、例えば環状バッファを用いて実現されてもよい。これにより所要メモリスペースが低減される。
【0013】
少なくとも1つの推定値を供給するステップは、格納されている複数の時間間隔からの少なくとも1つの平均値を形成するステップを含んでいてもよい。格納されているこれらの時間間隔は、このケースでも平均化され、そのようにして堅固な推定値が生成される。
【0014】
一実施形態によれば、少なくとも1つの推定値を供給するステップは、次のステップを含む。すなわち、現下の周期で求められた少なくとも1つの時間間隔と、0〜1の間にある所定値との乗算により第1の積が計算される。それと前後して、又は、それと同時に、第2の積は、先行周期の推定値×(1−前記所定値)の計算(乗算)により算出することが可能である。この先行周期とは、特に時間的に見て、現在の周期の直前に存在した先行期間を指す。したがって、現在の周期の推定値は、前記第1の積と第2の積の加算によって算出することが可能である。本実施形態によれば、記憶スペースの最小化が図られる。なぜなら少なくとも1つの推定値は、1つの周期の間しか記憶されないからである。
【0015】
複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔を求めるステップは、一実施形態によれば、受信信号が、期待される全てのパケットを含んでいる場合にのみ実施される。このようにして、いくつかのパケットの欠落に起因する誤った時間間隔の計算は回避されるべきである。
【0016】
さらに本発明は、少なくとも1つのホイールがホイール側電子機器を備えている車両の複数のホイールを位置特定する装置に関している。この本発明による装置は、ホイール側電子機器からの信号を受信する第1の受信ユニットを有しており、前記信号は、ホイールが第1の回転角度位置に位置した時点の推定を可能にする。第1の処理ユニットは、前記信号に基づいて第1の回転角度情報を生成するのに用いられる。本発明による装置の第2の受信ユニットは、車両におけるそれぞれの所定の位置に対応付けられたセンサによって測定されるホイールの第2の回転角度位置受信のために使用される。さらに本発明による装置は、第2の回転角度位置に基づいて第2の回転角度情報を供給する第2の処理ユニットを含む。比較ユニットは、前記第1の回転角度情報と前記第2の回転角度情報を比較するように構成されている。位置特定ユニットは、前記比較ユニットの結果に依存して、ホイール側電子機器に対応付けられたホイールを位置特定するために使用される。前記第1の受信ユニットは、時間的にずれて受信される、複数のパケットからなる信号を受信するように構成されている。前記第1の処理ユニットは、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点を、複数のパケットの1つに基づいて求めるように構成されている。さらに本発明による装置は、複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔求めるための時間間隔算出装置を含む。さらに本発明による装置は、求められた少なくとも1つの時間間隔に基づいて、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値を供給する推定装置を含む。
【0017】
さらに本発明は、本発明による装置を備えたタイヤ空気圧監視システムを含む。
【0018】
本発明は、方法並びに装置に関連して説明されている。特に断りがない限り、本発明による方法の特徴は、本発明による装置にも同様に適用可能である。このことは、特に装置が、説明された方法ステップの実施に対応する手段を有していることを意味する。明細書を不要に長くしないようにするために、これらの手段の説明の繰り返しは省くが、それにも係わらずそれらの手段の開示は有効である。
【0019】
以下では本発明の実施形態のさらなる利点及び詳細を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a】車両の側面図
図1b】タイヤ空気圧監視システムの主要な構成要素を概略的に示した車両底面図、
図2】ホイール側電子機器を備えたホイールを示した図
図3】複数のパケットからなる信号を示した図
図4a】本発明による装置の一実施形態を示した図
図4b】本発明による比較と位置特定を説明するための概略図
図5】本発明による方法の実施形態の各ステップを示したフローチャート
図6】本発明による方法のさらなる実施形態のさらなるステップを示したフローチャート
図7】本発明による方法のさらなる実施形態のさらなるステップを示したフローチャート
【0021】
以下の明細書では、特に他の指定がない限り、同一の要素並びに機能的に同一の要素には、同じ符号が付される。
【0022】
図1aには、車両1が側面図で示されている。ここでは2つのホイール2b,2dが認められる。同じ車両は、図1bにおいて底部から見た図が示されており、ここではタイヤ空気圧監視システムの主要な構成要素が示されている。4つのホイール2a乃至2dはそれぞれホイール側電子機器3a乃至3dを有している。前記ホイール2a乃至2dには、それぞれ車載センサ4a乃至4dが対応付けられている。これらのセンサは、例えば、ABSセンサまたはESPセンサであってもよい。これらのセンサ4a乃至4dは、本発明による装置5の一実施形態に接続されている。この装置は、とりわけ、ホイール側電子機器3a乃至3dから信号を受信するように構成されている。
【0023】
図2は、再びホイール2aの側面図を示しており、ここではホイール2aが地面6上を転がったときに、ホイール側電子機器3aが当該ホイールと共に回転することが見て取れる。
【0024】
ホイール側電子機器3aは、信号7を送信する。この信号7は、図3に示されているように、複数のパケット7a,7b及び7cを含む。ホイール側電子機器3aは、複数のパケットを送信する。なぜなら車両側に配設されている受信ユニットは、たとえばボディパネルによる遮蔽が原因で1つ若しくは複数のパケットを受信できなくなる可能性があるからである。下方のスケールには時間tがプロットされている。時点t0では、ホイールは第1の回転角度位置を通過する。この場合例えば、この第1の回転角度位置は、ホイール上の最高位置(0°)であり、又は、タイヤ接地面の中心(180°)であり、又は、タイヤ接地面への進入点若しくはタイヤ接地面からの脱出点である。遅延時間dt0の後で、第1のパケット7aが送信される。この遅延時間dt0は予め若しくは動作中にホイール側電子機器によって定められる。第1のパケット7aは、時点t1において車両側で完全に受信される。第1のパケット7aと第2のパケット7bとの間の間隔はdt1である。第2のパケット7bと第3のパケット7cとの間の間隔はdt2である。第2のパケット7bは、時点t2において完全に受信される。第3のパケット7cは、時点t3において完全に受信される。前記パケット間の間隔dt1及びdt2は連続的に測定され、それらをベースにしてこれらの間隔に対する推定値が供給される。遅延時間dt0は、ホイール側電子機器クロックを基準として既知である。この遅延時間dt0は、ホイール側電子機器クロックを基準としたホイール側電子機器により既知の第1及び第2のパケット間の間隔と比較した、車両側で推定された間隔dt1の関係性から、何らかのクロックずれに対する適応化が可能である。遅延時間dt0と、間隔dt1,dt2、並びにパケット7a,7b,7cに対する送信持続時間がわかっていれば、例えば、第3のパケットの受信時点t3から、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点t0を逆算することが可能になる。時点t2から時点t0を推定するためには、間隔dt0と、dt1、並びにパケット7a,7bに対する送信持続時間だけがわかっていればよい。本発明は、3つのパケットを有する信号に限定されるものではない。それどころか、その数が少なくとも2である限り、任意の数のパケットが利用可能である。
【0025】
ホイール側電子機器クロックの不精度の問題は、間隔dt1に基づいて明らかにされる。市販のクロックは、大体において2%から5%の不精度を有している。以下の例では、5%の不精度を想定して説明する。ここでは間隔dt1を200msと想定し、車両は毎時150kmの速度で移動しているものとするならば、5%のクロック不精度は、75°の角度不精度αに相当する。これは、以下の関係式、
角度不精度α=(クロック不精度%×dt1×速度×360°)/タイヤ周長
から得られる。但し前記タイヤ周長は2mとする。75°の角度不精度は、位置特定が通常よりも長くかかることになり、状況によっては全く収束しない結果にもつながる。例えば、米国特許第8,332,104号明細書においては、間隔dt1とdt2が車両側の制御ユニット内に恒久的にプログラミングされている。つまりそれらは、時間間隔に対する現下の推定値を供給するために、定期的に求められるものではない。したがって、米国特許第8,332,104号明細書に記載のやり方では、当該方法が緩慢にしか収束しないことにつながる上記のような角度不精度が発生する。
【0026】
図4aは、少なくとも1つのホイールがホイール側電子機器を備えている、車両の複数のホイールを位置付けする装置の一実施形態が示されている。図示の装置8は、ホイール側電子機器からの信号を受信する第1の受信ユニット9を含み、この信号は、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点t0を推定することが可能である。前記第1の受信ユニット9は、複数のパケットからなる、時間的にずらされて受信される、信号を受信するように構成されている。その上さらに前記装置8は、この信号に基づいて第1の回転角度情報を生成する第1の処理ユニット10を含んでいる。この第1の処理ユニット10は、複数のパケットの1つに基づいて、ホイールが第1の回転角度位置に位置した時点t0を求めるように構成されている。この目的のために、第1の処理ユニット10は、複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔を求めるための間隔算出装置11と、算出された少なくとも1つの時間間隔に基づいて、少なくとも1つの時間間隔の少なくとも1つの推定値を供給するための推定装置12とに接続されている。
【0027】
さらに前記装置8は、車両の各所定の位置に対応付けられているセンサによって測定されたホイールの回転角度位置を受信する第2の受信ユニット13を含んでいる。前記センサは、例えばABSセンサやESPセンサであってよい。第2の処理ユニット14は、第2の回転角度位置に基づいて、第2の回転角度情報を供給する。この時点は、センサから見て対応付けられたホイールが第2の角度位置をとる時点、好ましくは、第1の回転角度位置に対応する時点であり得る。
【0028】
比較ユニット15は、第1の処理ユニット10の第1の回転角度情報と、第2の処理ユニット14の第2の回転角度情報とを使用してこれらの情報を相互に比較する。比較ユニット15の結果に依存して、位置特定ユニット16は、ホイール側電子機器に対応付けられたホイールを位置特定する。
【0029】
以下ではこの比較と位置特定の一実施形態を、図4bに基づいて詳細に説明する。この図4bの上方には、ちょうど第1の回転角度位置αにあるホイール側電子機器3cを備えたホイール2cが示されている。第1の回転角度情報は、ホイール側電子機器3cが第1の回転角度位置αに存在したときを示す。すなわち図示の例では、この第1の回転角度情報は、t0に相当する。図4bの中央には、4つのホイール2a乃至2dのそれぞれに対するタイムバーがプロットされている。バーB1は、ホイール2aが時点taにて第2の回転角度位置にあったことを示している。相応にバーB2は、ホイール2bが時点tbにて第2の回転角度位置にあったことを示す。バーB3及びバーB4は、ホイール2c及びホイール2dに対応している。ホイール2cは、時点tcにて第2の回転角度位置をとっており、それに対してホイール2dは、時点tdにて第2の回転角度位置をとっている。
【0030】
図4bの下方には、時点t0でのホイール2a〜2dが、それらのホイール側電子機器3a〜3dと共に示されている。ホイール側電子機器3aは、時点t0ではまだ第2の回転角度位置β1の前に存在している。したがって、ホイール側電子機器3aは、バーB1に示されているように、時点t0の後に当該回転角度位置を通過する。ホイール側電子機器3bは、第2の回転角度位置β2を既に通過している。ホイール側電子機器3cは、車両の対応する位置に固定的に対応付けられているセンサの観点から見て、時点t0では、ほぼ正確に第2の回転角度位置β3に存在している。ホイール側電子機器3dは、時点t0で既に第2の回転角度位置β4を最も長く通過している。
【0031】
図4bから見て取れるように、時点tcは、時間t0に最も近いので、相応の比較によって、受信した信号を送信したホイール側電子機器は、ホイール2cに対応付けられたホイール側電子機器3cであることが推論できる。t0とtcの間のずれは、この場合特に測定不精度から生じ得る。したがって、第1の回転角度情報t0と第2の回転角度情報ta〜tdとを用いた比較によってホイールを相応に位置特定することが可能になる。
【0032】
図5は、本発明による方法の実施形態のステップを示している。ステップS1では、まずホイール側電子機器が対応付けられているホイールの第1の回転角度位置が検出される。ステップS2では、ホイール側電子機器から信号が車両側の受信器に送信される。この信号はホイールが第1の回転角度位置をとった時点を推定可能にさせる。この信号は、ステップS3で受信される。
【0033】
ステップS4では、前記信号に基づいて、第1の回転角度情報が生成される。このステップには、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点を求めることも含まれる。この目的のために、複数のパケットの1つから始められる。ステップS5では、車両の各所定の位置に対応付けられたセンサによって複数のホイールの第2の回転角度位置が検出される。これらの第2の回転角度位置に基づいて、第2の回転角度情報が供給される(ステップS6)。それに続いてステップS7では、第1の回転角度情報と複数の第2の回転角度情報とを用いた比較が行われ、ステップS8では、この比較に依存して、ホイール側電子機器に対応付けられているホイールが位置特定される。
【0034】
図6には、本発明による方法に対して1つの推定値を供給するルーチンの一実施形態が示されている。まず、ステップS9において、受信した複数のパケット間の時間間隔が求められる。ステップS10では、求められた少なくとも1つの時間間隔に基づいて、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値が供給される。
【0035】
この推定値を用いることで、前述の時点が、第1の回転角度情報の生成ステップS4において、少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値と、パケットの番号とに基づいて起こり得る。
【0036】
図7には、本発明による方法に対して推定値を供給するルーチンのさらなる実施形態が示されている。まずステップS11において現下の周期tにおける現下の時間間隔Atが求められる。ステップS12では、この現下の時間間隔Atに基づいて、以下の関係式に基づき、
t=At×γ+St-1×(1−γ)
現下の周期の推定値Stが求められる。但し前記Atは、既に上述したように、現下の周期における現下の時間間隔を表し、前記St-1は、先行する周期の推定値を表す。前記γは、0と1の間の値を表している。現下の周期における現下の時間間隔Atは、現下の周期の推定値Stにおいて、先行周期の推定値St-1に対する補正係数として重み付けされて関連付けられる。このようにして、各周期においてそれぞれ相応に更新される1つの推定値だけを記憶するだけでよい。
【0037】
本発明の方法によれば、パケットの各々を、ホイールが第1の回転角度位置をとった時点を推定するために使用することができる。その際時間間隔は繰り返し求められてもよく、それによりホイールユニットのクロック間の偏差とそれらの不精度とが補償される。このようにして、車両の複数のホイールの迅速な位置特定を達成することができる。
【0038】
図面に基づいて行ってきた前記説明は単なる例示であり、限定を意味するものではない。前述してきた実施形態においては、添付の特許請求の範囲において特定される権利範囲を逸脱することなく、多くの変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2a〜2d ホイール
3a〜3d ホイール側電子機器
4a〜4d 車両の所定の位置に対応付けられているセンサ
5 車両の複数のホイールを位置特定する装置
6 地面
7 信号
7a〜7c パケット
0 ホイールが第1の回転角度位置をとった時点
1 第1のパケットの受信時点
2 第2のパケットの受信時点
3 第3のパケットの受信時点
dt00と第1のパケットの送信開始時点との間の間隔
dt1 第1のパケットと第2のパケットの間の間隔
dt2 第2のパケットと第3のパケットの間の間隔
8 本発明による装置の実施形態
9 第1の受信ユニット
10 第1の処理ユニット
11 間隔算出装置
12 推定装置
13 第2の受信ユニット
14 第2の処理ユニット
15 比較ユニット
16 位置特定ユニット
α 第1の回転角度位置
β1〜β4 第2の回転角度位置
B1〜B4 対応するホイールが第2の回転角度位置をとった時点を表したバー
a〜td 第2の回転角度情報
S1 第1の回転角度位置を検出するステップ
S2 信号を送信するステップ
S3 信号を受信するステップ
S4 第1の回転角度情報を生成するステップ
S5 第2の回転角度位置を検出するステップ
S6 第2の回転角度情報を供給するステップ
S7 第1の回転角度情報と第2の回転角度情報を比較するステップ
S8 位置特定するステップ
S9 複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔を求めるステップ
S10 少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値を供給するステップ
S11 複数のパケット間の少なくとも1つの時間間隔を求めるステップ
S12 少なくとも1つの時間間隔に対する少なくとも1つの推定値を供給するステップ
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7