(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つの閉位置が、前記アーチワイヤスロット内への前記アーチワイヤの能動結紮を実現し、別の閉位置が、前記アーチワイヤスロット内への前記アーチワイヤの受動結紮を実現する、請求項2に記載の歯科矯正ブラケット。
前記クロージャ部材は、前記開位置から第1の閉位置に前記クロージャ部材を移動するように第1の方向に回転し、前記第1の閉位置から第2の閉位置に前記クロージャ部材を移動するように前記第1の方向にさらに回転される、請求項2に記載の歯科矯正ブラケット。
前記クロージャ部材は、前記開位置から第1の閉位置に前記クロージャ部材を移動するように第1の方向に回転し、前記開位置から第2の閉位置に前記クロージャ部材を移動するように第2の方向に回転される、請求項2に記載の歯科矯正ブラケット。
前記アーチワイヤスロットは、ベース表面から延在する対向するスロット表面を含み、前記クロージャ部材は、前記アーチワイヤスロット内に前記アーチワイヤを保持するために、少なくとも1つの閉位置において前記アーチワイヤスロットの前記ベース表面に対向する少なくとも2つの保持アームを備える、請求項1に記載の歯科矯正ブラケット。
前記保持機構の前記第1の要素および前記第2の要素は、協働して前記クロージャ部材の回転に複数のポジティブストップを与える、請求項1に記載の歯科矯正ブラケット。
前記ブラケット本体は、近心側部、遠心側部、咬合側側部、歯肉側側部の少なくとも1つを含み、前記チャネルは、前記近心側部、前記遠心側部、前記咬合側側部、前記歯肉側側部の少なくとも1つに対して開口している、請求項10に記載の歯科矯正ブラケット。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に図面を、特に
図1〜
図4を参照すると、歯科矯正ブラケット10が、ブラケット本体12と、ブラケット本体12に結合された可動クロージャ部材とを備える。好ましい一実施形態では、可動クロージャ部材は、ブラケット本体12と可動的に結合される回転クリップ14を備え得る。ブラケット本体12には、歯に矯正力を印加するためにアーチワイヤ18(仮想線で図示される)を受けるようになされたアーチワイヤスロット16が形成される。回転クリップ14は、アーチワイヤ18がクリップ14に妨害されることなくアーチワイヤスロット16に挿入可能となる開位置(
図1および
図2)と、アーチワイヤ18がアーチワイヤスロット16内に保持される少なくとも1つの(例えば好ましくは少なくとも2つの)閉位置との間で可動である。例えば、および以下でさらに詳細に説明されるように、第1の閉位置では(
図3)、回転クリップ14は、アーチワイヤスロット16内にアーチワイヤ18を能動的に結紮するように構成され、第2の閉位置では(
図4)、回転クリップ14は、アーチワイヤスロット16内にアーチワイヤ18を受動的に結紮するように構成され得る。当然ながら、代替的な一実施形態では、クリップ14には1つのみの閉位置がまたは追加の閉位置が存在してもよい。いずれの場合でも、ブラケット本体12および回転クリップ14は、矯正歯科治療で使用するための自動結紮型歯科矯正ブラケット10を共に形成する。
【0019】
本明細書では、歯科矯正ブラケット10は、別段示されない限り、下顎の歯の唇側表面に装着された基準フレームを使用して説明される。したがって、本明細書において、ブラケット10を説明するために使用される唇側、舌側、近心、遠心、咬合側、歯肉側のなどの用語は、選択された基準フレームに対するものである。しかし、本発明の実施形態は、選択された基準フレームおよび記述用語に限定されない。なぜならば、歯科矯正ブラケット10は、他の歯にもおよび口腔内での他の配向でも使用され得るからである。例えば、ブラケット10は、歯の舌側表面に結合されてもよく、本発明の範囲内に含まれ得る。本明細書で使用される記述用語は、基準フレームに変更点がある場合にはそのままは当てはまらない場合がある点が当業者には理解されよう。しかし、本発明の実施形態は、口腔内での位置および配向とは無関係なものとして意図され、歯科矯正ブラケットの実施形態を説明するために使用される関連用語は、図面中の実施形態の説明を専ら明確にするためのものである。そのため、唇側、舌側、近心、遠心、咬合側、および歯肉側のなどの関連用語は、いかなる意味においても本発明をある位置または配向に限定するものではない。
【0020】
例えば患者の下顎に担持される歯の唇側表面に取り付けられた場合に、ブラケット本体12は、舌側側部20、咬合側側部22、歯肉側側部24、近心側部26、遠心側部28、および唇側側部30を有する。ブラケット本体12の舌側側部20は、例えば適切な歯科矯正セメントもしくは歯科矯正接着剤によって、または隣接する歯の周囲のバンドによってなど、任意の従来の様式で歯に固定されるように構成される。舌側側部20は、歯の表面に固定される結合ベースを画定するパッド33をさらに備えてもよい。パッド33は、別個の片または要素としてブラケット本体12に結合されてもよく、または代替的にはパッド33は、ブラケット本体12と共に一体的に形成されてもよい。ブラケット本体12の咬合側側部22は、近心−遠心方向に離間され、ほぼ咬合側方向へとブラケット本体12から離れるように突出する一対の結合ウィング38、40を備える。同様に、ブラケット本体12の歯肉側側部24は、近心−遠心方向に離間され、ほぼ歯肉側方向にブラケット本体12から離れるように突出する一対の結合ウィング42、44を備える。
【0021】
ブラケット本体12は、ベース表面32と、ベース表面32から唇側方向に突出する一対の対向し合うスロット表面34、36とを備え、これらの表面は、近心側部26から遠心側部28まで近心−遠心方向に延在するアーチワイヤスロット16を共に画定する。スロット表面34、36およびベース表面32は、ブラケット本体12の材料内に実質的に密封され、または埋め込まれる。ブラケット本体12のアーチワイヤスロット16は、任意の適切な様式で歯科矯正アーチワイヤ18を受けるように設計され得る。
図1〜
図5に示すように、ブラケット本体12は、スロット表面34からほぼ歯肉側−咬合側方向に延在するほぼ平坦な支持表面46と、スロット表面36からほぼ歯肉側−咬合側方向に延在するほぼ平坦な支持表面48とをさらに備える。以下でさらに詳細に論じるように、支持表面46、48は、ブラケット本体12上に回転クリップ14を支持するように構成され、クリップ14の開位置と1つまたは複数の閉位置との間で回転クリップを移動させ得るようにサイズ設定される。
【0022】
平坦状支持表面46、48は、結合ウィング38〜44の唇側表面よりも下方に凹んでおり、それにより結合ウィング38、40上に歯肉側に向いた境界壁部50、52と、結合ウィング42、44上に咬合側に向いた境界壁部54、56とがそれぞれ画定される。さらに、境界壁部50〜56間の領域は、クリップ14の唇側表面が結合ウィング38〜44の唇側表面を越えて延在しないように回転クリップ14を受けるように構成された凹状スペースを画定する。より具体的には、一実施形態では、回転クリップ14の唇側表面は、例えば患者の快適性を助長するように結合ウィング38〜44の唇側表面とほぼ同一平面状で(ほぼ同一平面内に)あってもよい。しかし、代替的な一実施形態では、回転クリップ14の唇側表面は、結合ウィング38〜44の唇側表面の下方に位置してもよい。
【0023】
図5に示すように、回転クリップ14を受けるために、ブラケット本体12は、ほぼ舌側方向にブラケット本体12中に延在するブラケット本体の唇側側部30に開いたほぼ円筒状のボアまたは凹部58を備える。円筒状ボア58は、唇側−舌側方向に延在しほぼ幾何学中心にてアーチワイヤスロット16と交差するする中心軸60を画定するようにブラケット本体12に対して位置決めされる。そのため、円筒状ボア58は、実質的に垂直にアーチワイヤスロット16と交差する。円筒状ボア58の断面寸法は、アーチワイヤスロット16の歯肉側−咬合側高さよりもほぼ大きく、そのためボア58は、アーチワイヤスロット16の上方側または咬合側に、スロット表面34により画定される深さを有するほぼ弧状の第1のボア部分62と、アーチワイヤスロット16の下方側または歯肉側に、スロット表面36により画定される深さを有するほぼ弧状の第2のボア部分64とを形成する。当然ながら、第1のボア部分62および第2のボア部分64は、アーチワイヤスロット16により相互から分離される。円筒状ボア58は、アーチワイヤスロット16の深さよりも深い深さにわたってブラケット本体12内に貫入して、ほぼ周方向に連続する第3のボア部分66を画定する。例示の一実施形態では、円筒状ボア58は、ベースまたは底部表面68により閉鎖されている止まり穴である。第3のボア部分66の深さは、底部表面68とアーチワイヤスロット16のベース表面32との間の距離により決定され得る。円筒状ボア58は、ここでは止まり穴として説明されたが、代替的な実施形態では、ボア58は、ブラケット本体12を貫通しパッド33により最終的に閉鎖される貫通ボアであってもよい点を理解されたい。
【0024】
図1〜
図5にさらに示すように、ブラケット本体12は、ブラケット本体12に回転クリップ14を固定するための、以下でさらに説明するような一態様の保持機構を受けるように構成されたチャネルまたは通路70を備える。例示の一実施形態では、チャネル70は、近心側部26および遠心側部28の少なくとも一方へと開口し、アーチワイヤスロット16に対して実質的に平行に延在する(例えば近心−遠心方向に)。例えば一実施形態では、チャネル70は、ブラケット本体12の近心側部26または遠心側部28の一方のみへと開口し、開口側の反対側では閉鎖されてもよい。代替的には、チャネル70は、貫通チャネルを呈するように、ブラケット本体12の近心側部26および遠心側部28の両方へと開口してもよい。例示の一実施形態では、チャネル70は、チャネル70がアーチワイヤスロット16と交差しないように、アーチワイヤスロット16の下方に(例えば舌側に)ほぼ位置決めされるようにブラケット本体12を貫通する。より具体的には、および図面に示すように、チャネル70は、アーチワイヤスロット16の歯肉側にほぼ位置決めされてもよい。しかし、代替的な一実施形態では、チャネル70は、アーチワイヤスロット16の咬合側に位置決めされてもよい。
【0025】
本発明の一態様によれば、チャネル70は、チャネル70およびボア58が開口71などにおいて相互に開口するように、円筒状ボア58と交差するように構成される。より具体的には、例示の一実施形態では、チャネル70が、アーチワイヤスロット16の下方にほぼ位置決めされることにより、チャネル70は、円筒状ボア58の第3のボア部分66と交差する。ブラケット本体12に対して回転クリップ14を保持することに関する場合のチャネル70の目的を以下でより詳細に説明する。
【0026】
図6A〜
図6Cに示すように、回転クリップ14は、ブラケット本体12の円筒状ボア58に受けられるように構成されたほぼ円筒状の保持部分72と、クリップ14が閉位置にある場合に(
図3および
図4)アーチワイヤ18を結紮する(例えば能動的におよび/または受動的に)ように構成された結紮部分74とを備える。一実施形態では、円筒状保持部分72は、ほぼ円筒状のベース76と、一対の離間されたコラムまたはスタッド78、80とを備える。円筒状ベース76は、ほぼディスク形状であり、下方表面82と、上方表面84と、それらの間に延在する側壁部86とを備える。円筒状ベース76は、ボア58の第3の部分66内に受けられるように構成される。一実施形態では、上方表面84は、ほぼ平坦状であり、クリップ14がボア58内に位置決めされた場合にアーチワイヤスロット16のベース表面32と実質的に同一平面内に位置してもよい。しかし、下方表面82は、ほぼ非平坦状であり(例えば有角構成)、例えば歯科矯正ブラケット10のある処方に対処するように形状設定されてもよい(
図6B)。円筒状ベース76の形状は、回転クリップ14が円筒状ベース76とボア58の一部分(第3のボア部分66など)との間の干渉を伴わずに開位置と閉位置との間において円筒状ボア58内で回転し得るようなものである。さらに、円筒状ベース76は、円筒状ボア58のサイズをごくわずかに下回るようにサイズ設定されてもよい(例えば断面積、直径)。
【0027】
スタッド78、80は、ほぼ垂直に円筒状ベース76の上方表面84から上方へと(例えば唇側に)ほぼ延在し、2つのスタッド78、80間に開口または間隙88が存在するように配置される。間隙88のサイズは、多様であってもよいが、回転クリップ14が開位置にある場合に(
図1および
図2)、アーチワイヤ18がアーチワイヤスロット16に挿入されるように妨害されない経路が存在するような(
図1)ものである。各スタッド78、80は、外方表面90が平滑であり、円筒状ベース76の側壁部86(
図6B)と連続する(例えばベース76の円筒状構成の延長部である)ように、ほぼ弧状の構成を有する外方表面90を備える。スタッド78、80の弧状外方表面90は、第1のボア部分62および第2のボア部分64とほぼ対面するように構成される。
【0028】
各スタッド78、80は、歯科矯正ブラケット10が組み立てられる場合にアーチワイヤ18に対面するように構成された内方表面92をさらに備える。例示の一実施形態では、内方表面92は、アーチワイヤ18が阻止されることによる著しい干渉を伴うことなく2つのスタッド78、80間を通過し得るようにするために、ブラケット本体12(およびより具体的にはアーチワイヤスロット16)に対してクリップ14に複数の回転位置を与えるように特に設計または輪郭設定される。これに関連して、一実施形態では、各スタッド78、80の内方表面92は、第1の表面部分94、中間の第2の表面部分96、および第3の表面部分98を備えてもよい(
図1、
図5、および
図6B)。スタッド78上の表面部分94、96、98は、スタッド78の表面部分94、96、98が他方のスタッド80の表面部分98、96、94にほぼ対面するように、他のスタッド80の表面部分94、96、98のほぼ対向側に配置される。
【0029】
内方表面92の第1の表面部分94は、回転クリップ14の開位置にて、スタッド78、80上のこの表面がアーチワイヤスロット16内のアーチワイヤ18にほぼ対面するように構成される。例としては、表面部分94は、ほぼ平坦であり、開位置にある場合にアーチワイヤスロット16のスロット部分34、36とほぼ同一平面状となるようにさらに構成されてもよい。内方表面92の第2の表面部分96は、閉位置の中の1つ(例えば能動結紮位置)において、第2の表面部分96がアーチワイヤスロット16内のアーチワイヤ18にほぼ対面するように構成され得る。一実施形態では、第2の表面部分96は、ほぼ弧状であってもよい。最後に、内方表面92の第3の表面部分98は、閉位置の中の1つ(例えば受動結紮位置)において、内方表面92の第3の表面部分98がアーチワイヤ18にほぼ対面し得るように構成されてもよい。一例として、表面部分98は、ほぼ平坦状であり、閉位置にある場合にアーチワイヤスロット16のスロット部分34、36とほぼ同一平面となるようにさらに構成されてもよい。
【0030】
クリップ14の結紮部分74は、円筒状ベース76の上方表面84とほぼ平行になるように横方向に各スタッド78、80から延在するカンチレバー保持アーム100、102を備える(
図6B)。保持アーム100、102は、逆方向に向けられるように、および自由端部104にて終端するように、各スタッド78、80上に構成される。例としては、ならびに
図1および
図2に示すように、回転クリップ14が開位置にある場合に、保持アーム100は、近心方向にほぼ延在しており、保持アーム102は、遠心方向にほぼ延在している。各保持アーム100、102は、下方表面106と、上方表面108と、それらの間に延在する側壁部110とを備える。各表面106〜110は、ほぼ平坦であってもよく(ほぼ弧状であり得る自由端部104を除く)、これらの表面間のエッジは、患者の快適性の助長を目的としてクリップ14に平滑または輪郭設定されたエッジを与えるように丸みを有してもよい。
【0031】
一実施形態では、各保持アーム100、102の内方表面が、ノッチまたは切欠部114を備えてもよく、各保持アーム100、102の上方表面108が、その自由端部104に隣接するくぼみまたは凹部116を備えてもよい。ノッチ114および凹部116は、比較的単純な様式でクリップ14の回転を助長するように構成された適切な工具(図示せず)と整合する工具レセプタクルとして機能し得る。例えば、ノッチは、工具を中心に位置決めし、使用時に工具の望ましくない移動を防止するために、工具の一部分を受けるように構成され得る。さらに、一実施形態では、各保持アーム100、102の下方表面106は、クリップ14が能動結紮位置にある場合に、アーチワイヤ18に係合するように構成された係合要素118(
図6A)を備えてもよい。例示の一実施形態では、係合要素118は、保持アーム100、102の下方表面106上にディスク形状パッドまたはボタンを備えてもよい。このボタンは、アーチワイヤ18に係合するためにNiTiまたは他の適切な材料から形成され得る。
【0032】
本発明の一態様によれば、歯科矯正ブラケット10は、回転クリップ14に関して多機能性を有する130で全体的に示される保持機構を備える。より具体的には、多機能性保持機構130は、相互に分離し得ないようにブラケット本体12にクリップ14を可動的に固定するだけでなく、ブラケット本体12に対するクリップ14の回転位置の示唆を与えるようにも構成される。前者の点に関して、保持機構130は、例えばクリップ14が頬側方向または唇側方向にブラケット本体12から離れるようには引っ張られ得ないように、ブラケット本体12にクリップ14を固定するように構成される。しかし、ブラケット本体12にクリップ14を固定する一方で、保持機構130は、開位置と閉位置の中の1つまたは複数との間でブラケット本体12に対するクリップ14の回転移動を可能にするようにさらに構成される。後者の点に関して、保持機構130は、ブラケット本体12に対するクリップ14の回転に1つまたは複数のポジティブストップを与えるように構成される。本明細書において、ポジティブストップは、クリップ14とブラケット本体12との間の相互作用が生じる位置であり、これにより、クリップが少なくとも1つの方向(例えば時計回り方向または反時計回り方向)にブラケット本体12に対して回転するためには、しきい値レベルの力またはトルクがクリップ14に印加されなくてはならなくなる。当然ながら、クリップ14が、ブラケット本体12の円筒状ボア58内に位置決めされる場合には、ポジティブストップ機構が存在しない場合でもクリップの回転により一定量の力またはトルクが必要となるように、これらの2つの部材間に一定量の摩擦が存在してもよい。ポジティブストップを画定するための力またはトルクのしきい値レベルは、クリップ14とブラケット本体12との間のこのタイプの摩擦を克服するのに必要とされるレベルを上回るように意図される。
【0033】
上述のものによれば、本発明の一実施形態では、ブラケット本体12は、第1の態様または要素を備え、回転クリップ14は、第2の態様または要素を備え、第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体12にクリップ14を可動的に(すなわち回転可能に)固定し、ブラケット本体12に対するクリップ14の回転に対して少なくとも1つのポジティブストップを与えるように相互作用するように構成される。例示の一実施形態では、第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体12に対するクリップ14の回転に対して複数のポジティブストップを与えるように構成される。クリップ14が、ポジティブストップ位置の中の1つにある場合には、しきい値力またはしきい値モーメントが、少なくとも1つの方向にポジティブストップ位置から離れるようにクリップ14を回転させるようにクリップ14に印加されなければならない。このしきい値力またはしきい値モーメントは、第1の要素と第2の要素との間の相互作用により少なくとも部分的に規定される。しきい値力またはしきい値トルクが克服されると、クリップ14は、印加された力またはトルクの方向に回転する。
【0034】
例示の一実施形態では、および
図7A〜
図7Cに示すように、保持機構130は、ブラケット本体12に結合された細長部材を備える。図面に示すように、細長部材は、細長部材の少なくとも一部分が貫通開口71などの円筒状ボア58と交差するように、ブラケット本体12のチャネル70内に位置決めされるように構成されてもよい。一実施形態では、細長部材は、細長部材にばね状付勢特徴を与えるために可撓性または変形可能に構成された細長チューブ132として構成されてもよい。例えば、一実施形態では、細長チューブ132は、NiTi、他の超弾性材料、または幾分かの可撓性特性もしくは変形可能特性を有する他の材料から形成された中空チューブであってもよい。中実チューブ、部分チューブ、中空ワイヤ、または中実ワイヤなどの細長部材の他の構成もまた可能であってもよい(それらの中の複数を以下で説明する)。細長チューブ132の断面形状は多様であってもよい。例としては、細長チューブ132の断面形状は、円形、正方形、矩形、または他の適切な形状であり得る。さらに、細長チューブ132およびチャネル70の断面形状は、細長チューブ132がチャネル70内に効果的に受けられブラケット本体12に固定され得るように、相互にほぼ一致してもよい。上記のように、細長チューブ132は、回転クリップ14と相互作用するように構成される。この点に関して、全体的に上述した保持機構130の第1の態様は、細長チューブ132を備える。
【0035】
さらに、保持機構130は、回転クリップ14に形成されたまたは他の方法で回転クリップ14に結合されたカム機構134を備える。さらに詳細に説明するように、カム機構134は、上述の機能を実現するように細長チューブ132と相互作用するように構成され、したがって全体的に上述した保持機構130の第2の態様は、カム機構134を備える。例示の一実施形態では、カム機構134は、回転クリップ14の一部として形成され得る。さらに具体的には、カム機構134は、クリップ14の円筒状ベース76に形成され得る。これに関して、および例示の一実施形態では、カム機構134は、円筒状ベース76の側壁部86に形成されたノッチまたは溝136を備えてもよい。溝136は、床部またはベース壁部138と、ベース壁部138の両側でベース壁部138の上方に延在する一対の離間された境界側壁部140、142とを備える。ベース壁部138は、全長にわたり平坦状でなくてもよいが、端部間が接続された構成の複数の平坦部を備え、各平坦部はほぼ平坦状である。例として、および図示するように、例示の一実施形態では、ベース壁部138は、隣接し合う平坦部間の角度関係により形成された突出部または先端148を画定する境界部で合流する2つの平坦部144、146を備え得る(
図6A)。代替的な実施形態では、クリップ14の回転に望ましい個数のポジティブストップに応じて、追加の平坦部が備えられてもよい点を理解されたい。
【0036】
回転クリップ14が、ブラケット本体12の円筒状ボア58内に位置決めされ、歯科矯正ブラケット10が、組み立てられると、細長チューブ132の一部分が、クリップ14のベース76の溝136内に位置決めされる(
図6)。このように位置決めされると、クリップ14は、ブラケット本体12から分離されるのを防止される。これに関して、クリップ14が、唇側方向になどブラケット本体12から離れるように引っ張られると、溝136の下方境界壁部142は、細長チューブ132に接触し、ブラケット本体12から離れるクリップ14の移動を防止する。したがって、細長チューブ132と溝136およびさらに具体的には境界壁部140、142との相互作用により、クリップ14はブラケット本体12に固定される。しかし、細長チューブ132と溝136の境界壁部140、142との間の相互作用は、ブラケット本体12に対するクリップ14の回転を制限しないまたは他の方法で防止しない点に留意されたい。
【0037】
上記に加えて、細長チューブ132は、溝136と、およびより具体的にはそのベース壁部138と相互作用して、ブラケット本体12に対するクリップ14の回転に対して少なくとも1つのおよび好ましくは複数のポジティブストップを与えるように構成される。これに関して、ブラケット本体12に対するクリップ14のある位置で、平坦部144、146の一方は、平坦部と細長チューブ132との間に整合関係が存在するように細長チューブ132に対面し得る。例えば、平坦部および細長チューブ132の表面は、相互に当接関係またはほぼ当接関係にある平行平面を全体的に呈してもよい。溝136のベース壁部138のジオメトリにより、クリップ14が回転されると、平坦部144、146間の先端148は細長チューブ132と接触状態になり、したがってクリップ14のさらなる回転に抵抗する。しかし、十分に高い力またはトルクがクリップ14に印加された状態では、先端148は、クリップ14が回転する際に先端148が細長チューブ132を通り越すことが可能となるように細長チューブ132を撓曲または変形させる。先端148が細長チューブ132を通り越すと、次いで他方の平坦部が、平坦部と細長チューブ132との間に整合関係が存在するように、細長チューブと対面関係におかれる。例えば、平坦部および細長チューブ132の表面は、相互に当接関係にあるまたはほぼ当接関係にある平行平面を全体的に呈してもよい。したがって、カム機構134の平坦部144、146の一方が、細長チューブ132にほぼ対面する場合に、ポジティブストップが、クリップ14の回転に与えられる。当然ながら、保持機構130は、ポジティブストップが以下で説明するように開位置および/または閉位置の中の1つに対応し得るように設計されてもよい。
【0038】
次に、歯科矯正ブラケット10の動作について説明する。論じるにあたって、開始点は、
図1、
図2、および
図7Aに示すようなクリップ14の開位置となる。開位置では、保持アーム100、102は、ブラケット本体の支持表面46、48のそれぞれに沿って重畳および延在するように位置決めされ、したがってアーチワイヤスロット16への開口を覆っては延在しない。さらに、クリップ14のスタッド78、80間の開口または間隙88は、アーチワイヤスロット16にほぼ整列される。そのため、
図1に示すように、アーチワイヤ18が挿入され得るように、ブラケット10の外部とアーチワイヤスロット16との間に妨げられていない経路が存在する。さらに、開位置にある場合に、平坦部144の一方は、開位置がポジティブストップの一方に対応するように、細長チューブ132と対面関係におかれ、クリップ14は、しきい値力/トルクがクリップ14に印加されるまでは、開位置から離れるようには回転され得ない(
図7A)。
【0039】
アーチワイヤ18がアーチワイヤスロット16内に着座すると、回転クリップ14は、閉位置に移動され得る。一実施形態では、歯科矯正ブラケット10は、2つの閉位置、すなわちアーチワイヤ18の能動結紮をもたらす一方の閉位置と、アーチワイヤ18の受動結紮をもたらす他方の閉位置とを有するように構成され得る。これに関して、および
図7Aおよび
図7Bに示すように、しきい値力/トルクが、クリップ14の保持アーム100、102上の工具レセプタクル116に係合するのに適した工具を介してなど回転クリップ14に印加されると、クリップ14は、保持アーム100、102がアーチワイヤスロット16上を移動するように反時計回り方向に回転して、アーチワイヤ18を中に保持し得る。
図3および
図7Bに示すように、保持アーム100、102がアーチワイヤスロット16上の移動することにより、アーム100、102の下方表面106上の係合要素118は、アーチワイヤ18に係合して、アーチワイヤスロット16のベース表面32の方向へとアーチワイヤ18に力を印加する。これは、歯科矯正治療の能動結紮構成に対応する。一実施形態では、クリップ14の能動結紮位置は、クリップ14のポジティブストップ位置に対応しなくてもよい。これに関して、一実施形態では、クリップ14が能動結紮位置にある場合に、溝136のベース壁部138の先端148は、細長チューブ132に係合され得る(例えば先端148が細長チューブ132を越える過程のほぼ中間においてなど、
図7Bを参照)。この場合に、能動結紮位置から離れるようなクリップ14の意図しないまたは偶発的な回転に対する抵抗が、クリップ14とアーチワイヤ18との間の追加的な摩擦力によってもたらされる。
【0040】
例示の一実施形態によれば、
図7Bおよび
図7Cに示すように、反時計回り方向へのブラケット本体12に対するクリップ14のさらなる回転により、保持アーム100、102は、アーチワイヤスロット16をさらに越えて移動する。この回転は、保持アーム100、102の自由端部104を対向側の支持表面46、48に係合させるのに十分なものである。より具体的には、保持アーム100、102の自由端部104は、アーム100、102の下方表面106上の係合要素118がアーチワイヤ18にもはや係合しないが、アーチワイヤスロット16の対向側で支持表面46、48に係合するように、上方に撓曲される。次いで、この構成が、受動結紮構成をもたらす。一実施形態では、クリップ14が、第2の閉位置すなわち受動結紮位置にある場合に、他方の平坦部146は、この閉位置がポジティブストップの中の1つに対応するように細長チューブ132と対面関係にあり、クリップ14は、しきい値力/トルクがクリップ14に印加されるまでは、閉位置から離れるように(例えば時計回り方向に戻るように)は回転され得ない(
図7C)。
【0041】
上述のように、歯科矯正ブラケット10は、多機能性を有する保持機構130を備える。より具体的には、保持機構130は、使用時にクリップ14がブラケット本体12から分離可能とはならないように、ブラケット本体12に回転クリップ14を固定する。さらに、保持機構130は、開位置と閉位置との間でのクリップの回転を可能にするように、ブラケット本体12にクリップ14を固定する。さらに、保持機構130は、ブラケット本体12に対するクリップ14の回転に対して少なくとも1つのおよび好ましくは複数のポジティブストップを与える。これらのポジティブストップを与えることにより、歯科矯正医は、クリップが開位置および/または閉位置にあるという触覚的示唆または聴覚的示唆を得ることができる。また、ポジティブストップは、クリップの偶発的または意図しない移動を防止または軽減するのを補助する。特別な利点は、同一の保持機構がこれらの機能の両方を実現する点である。
【0042】
上述の本発明の範囲および趣旨内に留まる複数の代替的な実施形態が存在する。例として、上記に示す歯科矯正ブラケット10は、開位置から第1の閉位置におよび次いで第2の閉位置へとクリップを移動させるために、反時計回り方向にクリップ14を回転させるように説明された。代替的な一実施形態では、保持アーム100、102は、開位置から第1の閉位置におよび次いで第2の閉位置へとクリップ14を移動させるために、クリップが時計回り方向に回転されるような、
図1〜
図4に示すものとは逆にされたものであってもよい。さらなる代替的な実施形態では、特許文献1に説明されるものと同様に、クリップに対応する4つの保持アームが存在し得る。かかる一実施形態では、歯科矯正ブラケットは、第1の方向に(時計回り方向または反時計回り方向に)クリップを回転させることにより閉じられ能動結紮構成におかれ得るか、または第2の反対方向にクリップを回転させることにより閉じられ受動結紮構成におかれ得る。
【0043】
図1〜
図7Cの特徴と同様の特徴が同一の参照数字を有するが「a」の添え字を伴っている、
図8〜
図9Cに示すようなさらなる代替的な一実施形態では、歯科矯正ブラケット10aおよびより具体的には保持機構130aは、アーチワイヤスロット16の反対側に位置決めされた第2のチャネル160と、第2のチャネル160内に位置決めされた第2の細長チューブ162とを備え得る。第2のチャネル160および細長チューブ162は、チャネル70および細長チューブ132に関して上述したものと同様であってもよい。上記と同様に、第2の細長チューブ162は、上述の機能の中の少なくとも1つを実施するためにクリップ14aと相互作用するように構成される。これに関して、および一実施形態では、上述の溝136aに加えて、クリップの円筒状ベース76a上のカム機構134aは、先端172、174により分離される複数の平坦部166、168、170を有するカム表面164を備えてもよい。平坦部166、168、170は、上述のものと同様のクリップ14aの回転にポジティブストップ位置を画定するために第2の細長チューブ162と相互作用するように構成され得る。例として、平坦部166、170は、平坦部144a、146aがそれぞれ細長チューブ162と対面関係にある場合に、細長チューブ162と対面関係になるように構成され得る。これは、例えばクリップ14aが開位置および第2の閉位置にある場合に対応し得る。さらに、平坦部168は、回転クリップ14aが第1の閉位置にある場合に、細長チューブ162と対面関係になるように構成され得る。これに関して、カム表面164と細長チューブ162との間の相互関係により、第1の閉位置にある場合に回転クリップにポジティブストップが与えられ得る。
【0044】
図1〜
図9Cに説明する実施形態では、カム機構の平坦部は、ポジティブストップ位置にある場合に細長チューブと当接関係にあり、平坦部間の先端は、回転に対する抵抗をもたらしたが、代替的な一実施形態では、先端が細長チューブに係合する場合に、ポジティブストップ位置が与えられ得る。これに関して、および同様の参照数字が
図8〜
図9Cで同様の特徴を指す
図9Dに示すように、細長チューブ132bは、カム機構134aに対面する細長チューブ132bの部分に切欠部178を備えてもよい。クリップ14aが回転されることにより、先端148aは、細長チューブ132bに始め係合し、チューブを撓曲させ始め得る。上記と同様に、この係合により、回転に対する幾分かの抵抗が与えられる。しかし、クリップ14aが回転し続けることにより、先端148aは、細長チューブ132bの切欠部178に直面し、ポジティブストップ位置へとスナップ係合する。このスナップ係合により、クリップ14aがポジティブストップ位置(例えば能動結紮位置)にあるという聴覚的示唆が与えられ得る。カム機構134aの平坦部144a、146aは、切欠部178のエッジに係合し、したがってこのポジティブストップ位置から離れるようなクリップ14aの回転に対して抵抗を与え得る。しかし、しきい値レベルの力またはモーメントにより、クリップ14aは、先端148aが切欠部178を通過して出て、平坦部が再び細長チューブ132bと当接関係になるように、回転され得る。代替的な一実施形態では、切欠部の代わりに、細長チューブ132bが、上述と同様にカム機構134aの先端148aを受けるように構成された部分にくぼみ(例えばv字形状くぼみ)を備えてもよい点を理解されたい。
【0045】
代替的な一実施形態では、および同様の参照数字が図面全体にわたって同様の要素を指す
図10〜
図12Bを参照すると、歯科矯正ブラケット300が、上述のブラケット本体12と同様のブラケット本体302と、回転クリップ14と同様の回転クリップ304とを備えるが、306で全体的に示される保持機構が、上述のおよび
図1〜
図9Cに示す保持機構130の代替的な構造的構成を有する点では異なる。保持機構130とは構造的構成が異なる一方で、保持機構306は、同一の機能を有する。例えば、それは、分離され得ないようにブラケット本体302にクリップ304を可動的に固定するだけではなく、ブラケット本体302に対するクリップ304の回転位置の示唆をさらに与えるということである。
【0046】
前者の点に関して、保持機構306は、例えばクリップ304が頬側方向または唇側方向にブラケット本体302から離れるようには引っ張られ得ないように、ブラケット本体302にクリップ304を固定するように構成される。ブラケット本体302にクリップ304を固定する一方で、保持機構306は、開位置と閉位置の中の1つまたは複数との間でブラケット本体302に対するクリップ304の回転移動を可能にするようにさらに構成される。後者の点に関して、保持機構306は、ブラケット本体302に対するクリップ304の回転に1つまたは複数のポジティブストップを与えるように構成される。
【0047】
上述の実施形態によれば、本発明の一実施形態では、および
図1〜
図9Cを参照とする上述の実施形態と同様に、ブラケット本体302は、第1の態様または要素を備え、回転クリップ304は、第2の態様または要素を備え、第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体302にクリップ304を可動的に(すなわち回転可能に)固定し、ブラケット本体302に対するクリップ304の回転に少なくとも1つのポジティブストップを与えるように、相互作用するように構成される。第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体302に対するクリップ304の回転に複数のポジティブストップを与えるように構成される。クリップ304が、ポジティブストップ位置の中の1つにある場合に、しきい値力またはしきい値モーメントは、少なくとも1つの方向にポジティブストップ位置から離れるようにクリップ304を回転させるようにクリップ304に印加されなければならない。しきい値力またはしきい値モーメントは、第1の要素と第2の要素との間の相互作用により少なくとも部分的に規定される。
【0048】
一実施形態では、保持機構306は、チャネル70内でブラケット本体302に結合された細長チューブ308を備える。細長チューブ308の少なくとも一部分が、円筒状ボア58に交差する。これは、
図12Aに最も良く示される。一実施形態では、細長チューブ308は、可撓性であるかまたは弾性的に変形可能である。例えば、一実施形態では、細長チューブ308は、NiTi、他の超弾性材料、または幾分かの可撓性特性もしくは弾性特性を有する他の材料から形成された中空チューブであってもよい。細長チューブ308の形状は、チューブ308の軸から離れるようにほぼ延在するバンプまたはウェッジ310を備え、チャネル70に挿入された場合には、円筒状ボア58内に突出する。このようにすることで、細長チューブ308は、ウェッジ310を介して回転クリップ304と相互作用する。ウェッジ310は、対称的な突出部として示されるが必ずしも対照的である必要はない点を理解されたい。以下で説明するように、ウェッジ310の形状は、ポジティブストップから回転クリップ304を回転させるために必要とされるしきい値力を決定し得る。これに関して、保持機構306の第1の態様は、細長チューブ308を備える。さらに、細長チューブ308は、中空管状構成を有するように示されるが、本発明の実施形態は、中空チューブに限定されず、保持機構が、1つまたは複数の事前形成された屈曲部を有するワイヤ(
図13Cおよび
図13Dに示す)などの他の構成を備えてもよい。
【0049】
さらに、および
図11を参照すると、保持機構306は、回転クリップ304に形成されたまたは他の方法で回転クリップ304に結合されたラチェット機構312を備える。さらに詳細に説明するように、ラチェット機構312は、上述の機能を実現するために細長チューブ308と相互作用し、したがって保持機構306の第2の態様は、ラチェット機構312を備える。一実施形態では、ラチェット機構312は、回転クリップ304の一部として形成され得る。より具体的には、ラチェット機構312は、クリップ304の円筒状ベース76に形成され得る。
【0050】
これに関して、一実施形態では、ラチェット機構312は、ノッチまたはトラフ316により分離された1つまたは複数の歯314を備える。ラチェット機構312は、ノッチ316の両側の一対の離間された境界側壁部320、322により画定された溝318内で円筒状ベース76の側壁部86内へと引っ込んで位置する。歯314の稜またはランドが、図示するように円筒状ベース76の表面と同一平面となり得る。代替的には、歯314は、歯314のランドが回転クリップ304の側壁部86の外周部内へと周方向に引っ込んで位置するように、円筒状ベース76の表面からわずかに下方に奥まっていてもよい。例としては、および図示するように、一実施形態では、溝318は、2つのノッチ316により分離された3つの歯314を備えてもよい。クリップ304の回転に望ましい個数のポジティブストップに応じて、追加の歯およびノッチが備えられてもよい点を理解されたい。さらに、歯314は、ほぼ弧状の構成を有するように図示されるが、本発明の実施形態は、それに限定されない。なぜならば、任意の2つの位置間で回転クリップ304を移動させるために必要とされるしきい値力を変更するのに望ましい他の構成が使用され得るからである。さらにこれらにしたがって、歯314は、相互に対して対称である必要はない。なぜならば、種々のしきい値力が各ポジティブストップに対して望ましい場合があり、各歯314の形状およびサイズがあるポジティブストップについてあるしきい値力を達成するために変更される場合があることが理解されるからである。
【0051】
次に
図12Aおよび
図12Bを参照すると、回転クリップ304が、ブラケット本体302の円筒状ボア58内に位置決めされると、ウェッジ310は、1つのトラフ316内に突出する。そのように位置決めされた場合に、クリップ304は、ブラケット本体302から分離されるのを防止される。これに関して、クリップ304が、唇側方向になどブラケット本体302から離れるように引っ張られると、溝318の下方境界壁部322は、細長チューブ308に接触し、特にウェッジ310に接触し、ブラケット本体302から離れるようなクリップ304の移動を防止する。したがって、細長チューブ308および溝318の相互作用により、クリップ304はブラケット本体302に固定される。しかし、細長チューブ308と溝318の境界壁部320、322との間の相互作用は、ブラケット本体302に対するクリップ304の回転を制限しないまたは他の方法で防止しない点に留意されたい。
【0052】
上記に加えて、細長チューブ308は、ラチェット機構312と、およびより具体的には歯314と相互作用して、ブラケット本体302に対するクリップ304の回転に複数のポジティブストップを与えるように構成される。これに関して、ブラケット本体302に対するクリップ304の特定の位置において、歯314の中の1つは、ウェッジ308が隣接し合う歯314の間で1つのトラフ316と噛合するように、細長チューブ308に、具体的にはウェッジ310に対面し得る。
図12Aに示すように、この位置で、保持アーム100、102は開位置にある。
【0053】
また、この位置で、ウェッジ310は、いずれの方向への回転クリップ304の回転も直接的に妨げるように位置決めされる。より具体的には、歯314の弧状表面およびウェッジ310の噛合表面により、クリップ304が矢印326により示されるように回転すると、対応する歯314は、ウェッジ308に載り、したがってクリップ304の回転に抵抗する。
【0054】
しかし、十分に高い力またはトルクがクリップ304に対して印加された状態では、ウェッジ308は、細長チューブ308を撓曲させるかまたは弾性的に変形させるように撓む。ウェッジ310は、回転クリップ304から径方向に離れるように付勢されるまたは押され、それによりウェッジ310は、歯314の表面に載る。これに関して、チャネル70は、ウェッジ310のほぼ反対側に逃げ凹部328を備えることにより、ウェッジ310の最大撓み時に細長チューブ308が逃げ凹部328内へと撓むことを可能にしてもよい。歯314がウェッジ310を越えると、ウェッジ310は、細長チューブ308の弾性付勢力により隣接するトラフ316内に延在される。この位置でも、ウェッジ310は、いずれの方向への回転クリップ304の移動にもやはり抵抗する。
【0055】
図12Bを参照すると、ウェッジ310は、トラフ316内の隣接し合う歯314間に位置決めされる。しかし、保持アーム100、102は、アーチワイヤスロット内にアーチワイヤを保持するように閉位置にある。図示しないが、歯科矯正ブラケット300は、回転クリップ304が能動閉位置にある位置を含んでもよく、この能動閉位置は、係合要素(
図12Aおよび
図12Bには図示せず)が、保持アーム100、102からアーチワイヤスロット内に延在し、アーチワイヤスロット内のアーチワイヤに強制的に接触する位置である。この閉位置は、
図12Aに示す位置と、
図12Bに示す閉位置との間であってもよい。
【0056】
したがって、ウェッジ310が隣接し合う歯間のトラフ内に位置する場合に、ポジティブストップがクリップ304の回転に設けられる。保持機構306は、ポジティブストップが図示するように開位置および/または閉位置の中の1つに対応し得るように、設計され得る。ウェッジ310が最大撓みにある場合の細長チューブ308に対する付勢は、クリップ304が歯314に対するウェッジ310の最大撓み点を若干越えて移動されることにより、クリップ304の同時移動を引き起こすのに十分なものとなり得ることを理解されたい。そのように位置決めされると、歯314に対するウェッジ310の噛合表面の配向は、最近位置へと回転クリップを同時に移動させるのに十分なトルクを回転クリップ304に対して生じさせ得る。さらに、これらのポジティブストップを設けることにより、ウェッジ310が、内方に跳ねることにより細長チューブ308の弾性エネルギーを解放するため、歯科矯正医は、触覚クリックおよび/または聴覚クリックを得ることができる。特別な利点は、同一の保持機構がこれらの機能の両方を実現する点である。
【0057】
代替的な一実施形態では、ならびに同様の参照数字が図面全体にわたり同様の要素を指す
図13Aおよび
図13Bを参照すると、歯科矯正ブラケット400が、上述のブラケット本体12およびブラケット本体302と同様のブラケット本体402と、回転クリップ14および回転クリップ304と同様の回転クリップ404とを備えるが、406で全体的に示される保持機構が、上述のおよび
図1〜
図12Bに示す保持機構306の代替的な構造的構成を有する点では異なる。保持機構130とは構造的構成が異なり、保持機構306と同様の構造的特徴を有する一方で、保持機構406は、同一の機能を有する。例えば、それは、分離され得ないようにブラケット本体402にクリップ404を可動的に固定するだけではなく、ブラケット本体402に対するクリップ404の回転位置の示唆をさらに与えるということである。
【0058】
前者の点に関して、保持機構406は、例えばクリップ404が頬側方向または唇側方向にブラケット本体402から離れるようには引っ張られ得ないように、ブラケット本体402にクリップ404を固定するように構成される。ブラケット本体402にクリップ404を固定する一方で、保持機構406は、開位置と閉位置の中の1つまたは複数との間でブラケット本体402に対するクリップ404の回転移動を可能にするようにさらに構成される。後者の点に関して、保持機構406は、ブラケット本体402に対するクリップ404の回転に1つまたは複数のポジティブストップを与えるように構成される。
【0059】
上述の実施形態によれば、本発明の一実施形態では、および
図10〜
図12Bを参照とする上述の実施形態と同様に、ブラケット本体402は、第1の態様または要素を備え、回転クリップ404は、第2の態様または要素を備え、第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体402にクリップ404を可動的に(すなわち回転可能に)固定し、ブラケット本体402に対するクリップ404の回転に少なくとも1つのポジティブストップを与えるように、相互作用するように構成される。一実施形態では、第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体402に対するクリップ404の回転に複数のポジティブストップを与えるように構成される。
【0060】
これに関して、一実施形態では、ブラケット本体402は、歯肉側部または咬合側部から咬合側−歯肉側方向にほぼ延在するスロット(図示せず)を備える。このスロットは、チャネル70の場合と同様に、単一箇所ではなく2つの箇所で円筒状ボア58に交差する。保持機構406は、ほぼU字形構成を有し、例えばブラケット本体402にチューブ408をレーザ溶接することによってなど、咬合側−歯肉側スロット内でブラケット本体402に結合された細長チューブ408を備える。ブラケット本体402に挿入されると、チューブ408は、例えばボア58の近心エッジおよび遠心エッジでなど、対向し合う位置にて円筒状ボア58と交差する。
【0061】
一実施形態では、細長チューブ408は、可撓性であるか、または弾性的に変形可能である。例えば、一実施形態では、細長チューブ408は、NiTi、他の超弾性材料、または幾分かの可撓性特性もしくは弾性特性を有する他の材料から形成された中空チューブであってもよい。細長チューブ408の形状は、チューブ408の軸から離れるようにほぼ延在する一対のバンプまたはウェッジ410、412を備え、咬合側−歯肉側スロットに挿入された場合には、円筒状ボア58内に突出する。図示する管状構成の代替構成としては、保持機構406は、ウェッジ410、412の構成に屈曲部分を有する中実ワイヤ構成を備えてもよい。例えば、保持機構406は、断面が中実であるが、長手方向軸に沿って屈曲部を有する、くぼみ付きアーチワイヤの構成と同様の構成を有してもよい(
図13Cおよび
図13Dに全体的に示されるような)。細長チューブ408に関して、ウェッジ410、412は、回転クリップ404と相互作用する。これに関して、保持機構406の第1の態様は、細長チューブ408を備える。
【0062】
さらに、ならびに
図13Aおよび
図13Bを参照すると、保持機構406は、回転クリップ404に形成されるかまたは他の方法で回転クリップ404に結合されたラチェット機構414を備える。ラチェット機構414は、
図12Aおよび
図12Bに関連して上述したラチェット機構312と同様であってもよい。さらに詳細に説明するように、ラチェット機構414は、細長チューブ408と相互作用して上述の機能を実現し、したがって保持機構406の第2の態様は、ラチェット機構414を備える。一実施形態では、ラチェット機構414は、回転クリップ404の一部として形成され得る。さらに具体的には、ラチェット機構414は、クリップ404の円筒状ベース76に形成され得る。
【0063】
これに関して、一実施形態では、ラチェット機構414は、ノッチまたはトラフ418により分離された1つまたは複数の歯416を備える。ラチェット機構414は、図示するように回転クリップ404の外周部に沿って第1のセット424および第2のセット426へと歯416および対応するトラフ418を分割するように、溝420、422内で円筒状ベース76の側壁部86内へと引っ込んで位置し得る。溝420、422は、一対の離間された境界側壁部428により画定され得る。歯416の稜またはランドが、図示するように円筒状ベース76の表面と同一平面となり得る。代替的には、歯416は、円筒状ベース76の表面からわずかに下方に奥まっていてもよい。例としては、および図示するように、一実施形態では、各セット424、426は、3つの歯416および3つのトラフ418を備えてもよい。クリップ404の回転に望ましい個数のポジティブストップに応じて、追加の歯およびノッチが備えられてもよい点を理解されたい。さらに、歯は、ほぼ弧状の構成を有するように図示されるが、本発明の実施形態は、それに限定されない。なぜならば、
図12Aおよび
図12Bを参照として上述したように、任意の2つの位置間で回転クリップ304を移動させるために必要とされるしきい値力を変更するのに望ましい他の構成が使用され得るからである。
【0064】
回転クリップ404が、ブラケット本体402の円筒状ボア58内に位置決めされると、ウェッジ410、412は、歯416およびトラフ418の対応するセット424、426内に突出する。そのように位置決めされると、クリップ404は、ブラケット本体402から分離されることが防止される。これに関して、クリップ404が、唇側方向になどブラケット本体402から離れるように引っ張られると、溝420、422の一方または両方の下方境界壁部428は、細長チューブ408に、および特に対応するウェッジ410、412に接触し、ブラケット本体402から離れるようなクリップ404の移動を防止する。したがって、細長チューブ408と、歯416およびトラフ418のセット424、426との相互作用により、クリップ404はブラケット本体402に固定される。しかし、細長チューブ408と溝420、422の境界壁部428との間の相互作用は、ブラケット本体402に対するクリップ404の回転を制限または他の方法で防止しない点に留意されたい。
【0065】
上記に加えて、細長チューブ408は、ラチェット機構414およびより具体的には歯416と相互作用して、ブラケット本体402に対するクリップ404の回転に複数のポジティブストップを与えるように構成される。これに関して、ブラケット本体402に対するクリップ404のある位置で、各セット424、426の歯416の中の1つは、各ウェッジ410、412が対応するセット424、426の1つのトラフ418に噛合するように、細長チューブ408に、具体的には対応するウェッジ410、412に対面し得る。例としては、
図13Aに示すように、ある位置において、保持アーム100、102は開位置にある。
【0066】
また、この位置にある場合に、各ウェッジ410、412は、いずれの方向への回転クリップ404の回転も直接的に妨げるように位置決めされる。より具体的には、歯416の弧状表面および各対応するウェッジ410、412の噛合表面により、クリップ404が回転されると、対応する歯416は、ウェッジ410、412に載り、したがってクリップ404の回転に抵抗する。しかし、十分に高い力またはトルクがクリップ404に対して印加された状態では、細長チューブ408は撓曲させるかまたは弾性的に変形させるように撓む。各ウェッジ410、412は、回転クリップ304から径方向に離れるように付勢されるまたは押され、それによりウェッジ310が歯314の表面に載る。これに関して、細長チューブ408が、その断面に沿って押し潰され得るまたは変形し得る一方で、チューブ408のU字形形状構成は、トルクが回転クリップ404に印加されることにより、
図13Bで矢印430、432により大まかに示されるように近心および/または遠心にも撓み得る。各歯416が、対応するウェッジ410、412を越えると、ウェッジ410、412は、細長チューブ408に保存される弾性付勢力によりトラフ418内に同時に延在する。トラフ418内に延在すると、ウェッジ410、412は、いずれの方向への回転クリップ404の移動にも抵抗する。
図13Bを参照すると、ウェッジ410、412は、各溝420、422内でトラフ418内の歯416間に位置決めされる。保持アーム100、102は、アーチワイヤスロット内にアーチワイヤを保持するように閉位置にある。
【0067】
したがって、ポジティブストップは、ウェッジ410、412が対応するトラフ418に係合する場合に、クリップ404の回転に与えられる。保持機構406は、ポジティブストップが図示するように開位置および/または閉位置の中の1つに対応し得るように設計され得る。ウェッジ410、412が最大撓みにある場合の細長チューブ408に対する付勢は、クリップ404が各ウェッジ410、412の最大撓み点を若干越えて移動されることにより、クリップ404の同時移動を引き起こすのに十分なものとなり得ることを理解されたい。そのように位置決めされると、対応する歯416に対する各ウェッジ410、412の噛合表面の配向は、次の位置へと回転クリップを同時に移動させるのに十分なトルクを回転クリップ404に対して生じさせ得る。さらに、これらのポジティブストップを設けることにより、クリップ404が開位置および/または閉位置に移動する際に、ウェッジ410、412が内方に跳ねることにより細長チューブ408の弾性エネルギーを解放するため、歯科矯正医は、触覚クリックおよび/または聴覚クリックを得ることができる。特別な利点は、同一の保持機構がこれらの機能の両方を実現する点である。
【0068】
代替的な一実施形態では、ならびに同様の参照数字が図面全体にわたり同様の要素を指す
図14Aおよび
図14Bを参照すると、歯科矯正ブラケット500が、上述のブラケット本体12、302、および402と同様のブラケット本体502と、回転クリップ14、304、および404と同様の回転クリップ504とを備えるが、506で全体的に示される保持機構が、上述のおよび
図1〜
図13Bに示す保持機構130、306、および406の代替的な構造的構成を有する点では異なる。上述の保持機構とは構造的構成が異なる一方で、保持機構506は、同一の機能を有する。それは、例えば、分離され得ないようにブラケット本体502にクリップ504を可動的に固定するだけではなく、ブラケット本体502に対するクリップ504の回転位置の示唆をさらに与えるということである。
【0069】
前者の点に関して、保持機構506は、例えばクリップ504が頬側方向または唇側方向にブラケット本体502から離れるようには引っ張られ得ないように、ブラケット本体502にクリップ504を固定するように構成される。ブラケット本体502にクリップ504を固定する一方で、保持機構506は、開位置と閉位置の中の1つまたは複数との間でブラケット本体502に対するクリップ504の回転移動を可能にするようにさらに構成される。後者の点に関して、保持機構506は、ブラケット本体502に対するクリップ504の回転に1つまたは複数のポジティブストップを与えるように構成される。
【0070】
上述の実施形態によれば、本発明の一実施形態では、ブラケット本体502は、第1の態様または要素を備え、回転クリップ504は、第2の態様または要素を備え、第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体502にクリップ504を可動的に(すなわち回転可能に)固定し、ブラケット本体502に対するクリップ504の回転に少なくとも1つのポジティブストップを与えるように、相互作用するように構成される。一実施形態では、第1の要素および第2の要素は、ブラケット本体502に対するクリップ504の回転に複数のポジティブストップを与えるように構成される。
【0071】
これに関して、一実施形態では、ブラケット本体502は、
図1〜
図9Cに関連して上述したように、近心側部または遠心側部の一方または両方から近心−遠心方向にほぼ延在するチャネル70を備える。保持機構506は、スプリットチューブ508を備え、そのためこの点で上述の細長チューブとは異なる。スプリットチューブ508は、矩形C字形構成を有し得る。一般的には、
図15Dおよび
図15Cに示すように、スプリットチューブ508は、円形C字形状構成508aおよびウェッジ形状構成508bなどの他の断面構成を有してもよい点を理解されたい。別段示されない限り、
図15Bおよび
図15Cの各要素は、
図14A、
図14Bおよび
図16A〜
図16Cの同様に数字をつけられた要素に対応するが、「a」および「b」を伴って記される点を理解されたい。しかし、本発明の実施形態は、
図15A〜
図15Cに示す構成に限定されない。なぜならば、本明細書で説明される機能を有する他の構成が、本発明の範囲内に含まれるからである。ブラケット本体502に挿入されると、チューブ508は、円筒状ボア58と交差する。
【0072】
本発明の実施形態では、および
図14A、
図14B、および
図16Aを参照すると、スプリットチューブ508は、可撓性であるかまたは弾性的に変形可能である。例えば、一実施形態では、スプリットチューブ508は、NiTi、他の超弾性材料、または幾分かの可撓性特性もしくは弾性特性を有する他の材料から形成された中空チューブであってもよい。チャネル70に挿入されると、対応するチューブ508の中心部分510が、円筒状ボア58内へと延在する。チューブ508の中心部分510は、以下に説明するように回転クリップ504と相互作用する。特に、対向し合う側壁部512、514は、スプリットチューブ508のスロット516によって分離される。側壁部512、514は、スロット516の幅を広げることを可能にするように相互から離れる方向へと撓曲可能である。保持機構506の第1の態様は、細長チューブ508を備える。
【0073】
図14Aおよび
図14Bを参照すると、保持機構506は、回転クリップ504に形成されるかまたは他の方法で回転クリップ504に結合されたキャリッジ機構520を備える。キャリッジ機構520は、上述の機能を実現するようにスプリットチューブ508と相互作用し、したがって保持機構506の第2の態様は、キャリッジ機構520を備える。一実施形態では、キャリッジ機構520は、回転クリップ504の一部として形成され得る。より具体的には、キャリッジ機構520は、クリップ504の円筒状ベース76に形成され得る。
【0074】
これに関して、一実施形態では、キャリッジ機構520は、ボール状部材524などの突出部が沿うように存在するリップまたはランナ522を備える。ボール状部材524は、少なくとも唇側−舌側方向にランナ522から延在する大型突出部であってもよく、またランナ522の外周表面を径方向に越えて延在してもよい。ボール状部材524が、ほぼ球状の形状を有するように図示されるが、本発明の実施形態は、この構成を有することには限定されない。なぜならば、他の形状の突出部が、本発明の範囲内に含まれるからである。キャリッジ機構520は、図示するように外周部全体にわたって円筒状ベース76の側壁部86内へと引っ込んで位置してもよく、そのためランナ522およびボール状部材524は、ハブ526から突出し、それによりチューブ508の部分510と相互作用するように位置決めされる。キャリッジ機構520は、回転クリップ504の外周部全体にわたり延在する必要はなく、そのため機構520は、円筒状ベース76内の凹部内に形成され得る点を理解されたい。ボール状部材524は、ランナ522から延在するほぼ球状の構成を有するように図示されるが、本発明の実施形態は、それに限定されない。なぜならば、以下で説明するように任意の2つの位置の間で回転クリップ504を移動させるために必要とされるしきい値力を変更することが望ましい他の構成が使用され得るからである。
【0075】
回転クリップ504が、ブラケット本体502の円筒状ボア58内に位置決めされると、チューブ508の部分510は、キャリッジ機構520に交差する。特に、チューブ508は、クリップ504が回転されることにより、少なくともランナ522と交差する。
図14A、
図14B、および
図15A〜
図15Cに示すように、ランナ522は、クリップ504の各回転位置でチューブ508のスロット516を通り延在し、それによりクリップ504がブラケット本体502から分離されるのを防止する。これに関して、クリップ504が、唇側方向になどブラケット本体502から離れるように引っ張られると、ランナ522は、側壁部512に接触し、ブラケット本体502から離れるようなクリップ504の移動を防止する。したがって、スプリットチューブ508およびキャリッジ機構520の相互作用により、クリップ504は、ブラケット本体502に固定される。しかし、チューブ508およびランナ522の相互作用は、ブラケット本体502に対するクリップ504の回転を制限または他の方法で防止しない点に留意されたい。
【0076】
上記に加えて、ならびに
図14A、
図14B、および
図16A〜
図16Cを参照すると、スプリットチューブ508は、キャリッジ機構520およびより具体的にはボール状部材524と相互作用して、ブラケット本体502に対するクリップ504の回転に少なくとも1つのポジティブストップを与えるように構成される。これに関して、ブラケット本体502に対するクリップ504の少なくとも1つの位置で、ボール状部材524は、回転クリップ504が少なくとも1つの方向への意図しない回転を防止されるように、スプリットチューブ508に対面し得る。例としては、
図14Aおよび
図16Aに示すように、ボール状部材524は、ランナ522が側壁部512、514間に延在する状態で、スプリットチューブ508の内部に載置される。専ら例としては、ボール状機構がそのように配置されると、保持アーム100、102は、開位置となり得る(
図16Aにおいて仮想線で示されるように)。いずれか方向へのこの位置からの回転クリップ504の回転によって、ボール状部材524は、少なくとも側壁部512、514に接触し、クリップ504の意図しない回転を防止する。
【0077】
図16Aおよび
図16Bにいて矢印530により大まかに示されるように、十分に高い力またはトルクがクリップ504に印加される状態では、スプリットチューブ508は、撓曲するかまたは弾性的に変形する。これに関して、ボール状部材524は、スロット516よりも唇側−舌側間寸法が大きいため、チューブ508の中心部分510を弾性的に変形させ、具体的にはスロット516を拡張させるように、側壁部512、514の間にそれらを相互から離すように割り込む。次いで、ボール状部材524は、クリップ504を継続的に回転させることにより、拡張されたスロット516に押し通され得る。図示しないが、側壁部512は、ボール状部材524がスロット516に押し進むことによって、スロット516を拡張させるように側壁部514が下側方向に撓み得る一方、唇側方向に撓み得る。このようにすることで、スプリットチューブ508の少なくとも中心部分510は、トルクが回転クリップ504に印加されることにより、弾性的に変形する。
【0078】
一実施形態では、アーチワイヤは、
図16Bに示すようにボール状部材524が側壁部512、514間に挟まれた場合に、能動的に結紮され得る。すなわち、クリップ504に対するトルクが、スロット516内にボール状部材524を割り込ませるのに十分なものである場合に、保持部材100、102、係合要素118がスロット16内のアーチワイヤ18に接触する(
図14Aで仮想線により図示される)ように閉位置となり得る。この配向では、ボール状部材524に対するチューブ508の中心部分510の挟み動作が、単独で、またはクリップ504に対するアーチワイヤ18からの能動結紮力との組合せで、いずれの方向への回転クリップ504の意図しない移動にも抵抗し得る。
【0079】
次に
図14Bおよび
図16Cを参照すると、矢印532により大まかに示されるような反時計回り方向へのクリップ504のさらなる回転により、ボール状部材524は、側壁部512、514間から回転される。これは、ボール状部材524により側壁部512、514を撓ませるために必要とされるトルクよりも著しく低いトルクで達成され得る。このようにすることで、回転クリップ504は、
図14Bに示すように保持アーム100、102がアーチワイヤスロット16内でアーチワイヤ18を受動的に結紮する別の閉位置へと回転され得る。側壁部510、512が最大撓みにある場合のボール状部材524に対する挟み力は、クリップ504が各側壁部512、514の最大撓み点を若干越えて移動されることにより、クリップ504の同時移動を引き起こすのに十分なものとなり得る点を理解されたい。側壁部512、514の最大撓み点を若干越えると、ボール状部材524の表面に対する各側壁部510、512の噛合表面の配向は、次に最も近い位置へと同時に移動させるのに十分なトルクを回転クリップ504に対して生じさせ得る。さらに、ボール状部材524およびスプリットチューブ508の構成は、クリップ504が開位置および/または閉位置へと回転する際に、側壁部510、512が内方に跳ねることによりスプリットチューブ508の弾性エネルギーを解放させるため、歯科矯正医に触覚クリックおよび/または聴覚クリックを与え得る。
【0080】
図14Bおよび
図16Cに示す位置にくると、ボール状部材524は、中心部分510の近傍に位置するが、チューブ508の外部に位置し、しかしランナ522は、スロット516内に延在する。
図16Cの矢印532の反対方向へのクリップ504の回転により、ボール状部材524は、側壁部512、514に当接する。したがって、この配向では、ボール状部材524がチューブ508の外部に係合すると、ポジティブストップがクリップ504の回転に与えられる。保持機構506は、図示するようにポジティブストップが開位置および/または閉位置の中の1つに対応し得るように設計され得る。代替的な一実施形態では(図示せず)、ボール状部材524は、開位置および2つの閉位置のそれぞれに対してポジティブストップを与え得る点を理解されたい。換言すれば、
図14A〜
図16Cに示す実施形態とは異なり、ボール状部材524は、開位置ではチューブ508に当接し、能動結紮位置ではチューブ508に当接し(これは
図16Bに示される位置とは異なる)、受動結紮位置ではチューブ508に当接し得る。特別な利点は、同一の保持機構がこれらの機能の両方を実現する点である。
【0081】
上述のように、本発明の実施形態は、この結紮部材の回転方向に限定されない点を理解されたい。これに関して、結紮部材は、連続的な時計回り方向移動または連続的な反時計回り方向移動により開位置から各閉位置へと回転され得る。より具体的には、結紮部材は、第1の時計回り方向(または反時計回り方向)回転により開位置から第1の閉位置に回転され得る。第2の時計回り方向(または反時計回り方向)回転は、結紮部材を第2の閉位置に位置決めし得る。
【0082】
代替的な一実施形態では、結紮部材は、第1の方向(時計回り方向)への回転により開位置から第1の閉位置に回転され得る。結紮部材は、第1の方向の回転とは逆の第2の方向(例えば反時計回り方向)への回転により、開位置から第2の閉位置へと回転され得る。例えば、第1の閉位置から第2の閉位置に結紮部材を移動させるためには、結紮部材は、開位置へと反時計回り方向に回転され、第2の閉位置へと再び反時計回り方向に回転され得る。記載しないが、本発明の実施形態は、上述のものとは逆方向への回転を含み得る。
【0083】
図17A〜
図17Cおよび
図18A〜
図18Cを参照すると、本発明の実施形態は、ブラケット本体602および回転クリップ604を有する歯科矯正ブラケット600を含み得る。上述の歯科矯正ブラケットと同様である一方で、回転クリップ604は、4つの保持アーム606、608、610、および612を備え得る。ブラケット600は、分離され得ないようにブラケット本体602にクリップ604を可動的に固定するだけでなく、ブラケット本体602に対するクリップ604の回転位置の示唆をさらに与えるために、上述の保持機構506と同様の保持機構614をさらに備える。
【0084】
これに関して、一実施形態では、ブラケット本体602は、
図1〜
図9Cを参照として上述するように、近心側部または遠心側部の一方または両方から近心−遠心方向にほぼ延在するチャネル(図示せず)を備える。保持機構614は、スプリットチューブ508同様の一対のスプリットチューブ616、618(
図18A〜
図18Cに示す)を備える。
【0085】
図18A〜
図18Cを参照すると、保持機構614は、回転クリップ604に形成されるかまたは他の方法で回転クリップ604に結合されたキャリッジ機構620を備える。キャリッジ機構620は、ブラケット本体602内にクリップ604を保持するようにスプリットチューブ616、618と相互作用し、ランナ622と、上述のものと同様に一対のボール状部材624、626などの一対の突出部とを備える。
【0086】
図17Aおよび
図18Aに示す開位置にくると、ボール状部材624、626は、対応するスプリットチューブ616、618の内部に位置し、そのため回転クリップ604は、開位置に保持される。
図17Bおよび
図18Bに示すような一方向(時計回り方向)へのクリップ604の回転により、ボール状部材624、626は、スプリットチューブ616、618の側壁部に当接する。したがって、この配向では、ボール状部材624、626が対応するチューブ616、618の内部に係合すると、ポジティブストップがクリップ604の回転に与えられる。保持機構614は、図示するようにポジティブストップが開位置に対応し得るように設計され得る。
【0087】
十分なトルクによる時計回り方向または反時計回り方向のいずれかへのクリップ604の回転により、一対の保持アーム606、608、610、および612は、アーチワイヤスロット16を越えて回転する。例えば、時計回り方向へのクリップ604の回転は、図示するようにボール状部材624、626をスプリットチューブ616、618内から付勢し、アーチワイヤ18を越えるように保持アーム606、608を回転させる。この配向では、保持アーム606および608は、アーチワイヤ18をアーチワイヤスロット16内に保持し、アーチワイヤ18を能動的に結紮し得るまたは受動的に結紮し得る。例えば
図17Cに示すように、
図17Aに示す位置からの反時計回り方向への回転部材604の回転により、他方の保持アーム610および612はアーチワイヤスロット16を越えて回転して、スロット16内にアーチワイヤ18を保持し得る。やはり、保持アーム610および612は、スロット16内にアーチワイヤ18を能動的または受動的に結紮し得る。
【0088】
具体的には、一実施形態では、保持アーム610および612は、アーチワイヤ18を能動的に結紮し、保持アーム606および608は、アーチワイヤ18を受動的に結紮する。したがって、1つの回転方向に回転クリップ604を移動させることにより、受動結紮が達成され、反対方向にクリップ604を回転させることにより、保持アーム610および612によって能動結紮が達成され得る。閉位置のいずれかまたは両方で、能動または受動に関わらず、ボール状部材624、626は、対応するスプリットチューブ616、618に当接して(
図18Bおよび
図18Cに示すように)ポジティブストップを形成することにより、先行段落で説明されたものと同様に開位置へのクリップ604の意図しない回転に抵抗し得る(
図17Aおよび
図18Aに示すように)。
【0089】
本発明を様々な好ましい実施形態の説明により示し、これらの実施形態を幾分か詳細に記載したが、かかる詳細に添付の特許請求の範囲を束縛するまたはいかなる意味においても限定することは、本発明者らの意図するところではない。さらなる利点および変更が、当業者には容易に明らかになろう。本発明の様々な特徴は、ユーザの必要および好みに応じて、単独でまたは任意の組合せで使用され得る。