特許第6391709号(P6391709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391709
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ナノ構造を型押しする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20180910BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20180910BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   H01L21/68 N
   B29C59/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-563848(P2016-563848)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2017-516302(P2017-516302A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2014058141
(87)【国際公開番号】WO2015161868
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト クラインドル
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−211157(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133840(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/023708(WO,A1)
【文献】 特開2012−099790(JP,A)
【文献】 特開2014−027075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(7)上に施与された硬化可能材料(8)のスタンプ面(14)に、スタンプ受容装置(1)によって支承されたナノ構造スタンプ(5)によってナノ構造(13)を型押しする方法であって
・前記スタンプ面(14)に対してナノ構造(13)を配向するステップと、
・A)前記ナノ構造スタンプ(5)の変形によって前記ナノ構造スタンプ(5)に応力を印加し、
B)前記スタンプ面(14)の部分面(15)を前記ナノ構造スタンプ(5)に接触させ、
C)前記スタンプ受容装置(1)から前記ナノ構造スタンプ(5)解放、及び、これにより、前記ナノ構造スタンプ(5)印加されている応力によって、少なくとも部分的に、残余面(16)を自動的に接触させる
ことにより、前記スタンプ面(14)の型押しを行うステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ナノ構造スタンプ(5)の少なくとも大部分を
・石英、及び/又は、
・二酸化ケイ素、及び/又は、
・ポリマー
のうち少なくとも1つから形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ構造スタンプ(5)の透光率は、0%より大きい
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ構造スタンプ(5)を前記スタンプ受容装置(1)によって運動させ、変形させる、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板(7)を基板受容装置(2)によって支承して運動させ、変形させる、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記スタンプ受容装置(1)は、前記ナノ構造スタンプ(5)を変形させるためのアクチュエータ(3)を含む、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化可能材料(8)を、完全な接触後に、硬化させる、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基板(7)上に施与された硬化可能材料(8)のスタンプ面(14)に、スタンプ受容装置(1)によって支承されたナノ構造スタンプ(5)によってナノ構造(13)を型押しする装置であって、
・前記スタンプ面(14)に対してナノ構造(13)を配向する配向手段と、
・A)前記ナノ構造スタンプ(5)の変形によって前記ナノ構造スタンプ(5)に応力を印加する第1の応力印加手段(3,4)、
B)前記スタンプ面(14)の部分面(15)を前記ナノ構造スタンプ(5)に接触させる接触手段、及び、
C)前記スタンプ受容装置(1)から前記ナノ構造スタンプ(5)解放、及び、前記ナノ構造スタンプ(5)印加されている応力によって、少なくとも部分的に、残余面(16)を自動的に接触させる手段
により、前記スタンプ面(14)の型押しを行う型押し装置(17)と、
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の方法並びに対応する請求項8に記載の装置に関する。
【0002】
ナノインプリントリソグラフィNILは、ナノ構造をスタンプによって硬化可能材料、例えばレジストに成形するモールディングプロセスである。この場合、多数のナノ構造系のモールディングが可能となるだけでなく、ステップアンドリピート又はロールプロセスによって大面積での高精度なナノ構造の製造も可能となる。このため、高解像能の表面パターニングを行うことができる。基本的には、熱間NILプロセス(ホットエンボシングNILプロセス)とUVベースのNILプロセスとが区別される。
【0003】
フォトレジスト層の粘性に基づいて、細管作用により、スタンプの中間空間が完全に充填される。UV‐NILプロセスでは、スタンプが室温のもとで流動可能なレジストへプレスされるが、熱間NILプロセスでは、熱可塑性レジストをより高い温度(ガラス転移温度を上回る温度)のもとでレジストにプレスしなければならない。スタンプは、冷却後にようやく再び除去できるようになる。UV‐NILプロセスでは低いプレス圧での動作が可能であり、当該プロセスは室温で実行可能である。UVレジストは、UV放射での露光時に架橋されて安定なポリマーとなる(硬化)。したがって、パターニングは、「軟性」のポリマースタンプによっても硬性のスタンプによっても実行可能である。スタンプ材料としてポリマーを用いる軟性のUV‐NILプロセス(ソフトUV‐NILプロセス)は、適用形態に応じてではあるが、硬性のスタンプを用いたパターニングに対し、低コストであることが多い代替手段となる。また、ソフトUV‐NILプロセス(つまりポリマースタンプを用いたプロセス)は、硬性のポリマースタンプによっても実行される。石英の弾性係数は約100GPaである。これと比較して、ポリマー(硬性及び軟性のポリマー)の弾性係数は1オーダーから数オーダーぶん小さいので、石英に比べて「軟性」であると称される(ソフトリソグラフィ)。
【0004】
NILプロセスでの最も重要なパラメータは、温度(特にホットエンボシングNILプロセスにおいて)、プレス圧、及び、レジストとスタンプとの間の粘着力である。レジストとスタンプとの間の高い粘着力を低減するには、スタンプの表面が(レジストもしくはラッカー層との相互作用における)できるだけ低い表面エネルギを有するようにしなければならない。
【0005】
適用形態に応じて、3Dパターニングされるレジスト自体を、機能ユニットとして、又は、後続のエッチングステップ用のマスクとして、使用することができる。
【0006】
大面積の場合はまさに、圧力を接触面全体にわたって均等に分散させて不均一性を補償することが困難である。このため、不均一なパターニングが生じる。大面積のパターニングを実行するために、ローラによる型押しが行われるか、又はこれに代えて、小さなスタンプを用い、このスタンプを徐々に移動させることで、表面全体がパターニングされる(「ステップアンドリピート」プロセス)。
【0007】
ナノインプリントは、多層構造体及び(低コストの)ナノ構造体(例えばシリコン技術における集積回路)を、光の屈折限界を下回る解像能で製造するために用いられる。費用、手間及び時間の各コストを低く抑えたまま、ウェハ全面での大面積のナノ型押しプロセスを実行できる。
【0008】
NILプロセスで発生しうる型押し欠陥には、例えば、亀裂、不均等に充填された型押し構造(つまり例えば空気混入)及び不均等な層厚さなどがありうる。レジストとスタンプとの間の粘着力は重要である。これがないと歪み又は亀裂が生じる。軟性及び硬性のスタンプの双方とも、NILプロセス中、印加される圧力によって変形しうる。また、(汚れの)粒子もきわめて重要である。この場合に、粒子が例えばレジストとスタンプとの間に存在すると、この粒子の周囲全体に欠陥が生じる。
【0009】
ナノメートル領域を下回る(50nm以下の)高解像能のパターニングは、NILプロセスの最も重要な利点の1つである。ただし、20nmを下回る領域の構造の複製はいまだに課題となっている。
【0010】
特に大きなウェハでは、所望の寸法精度を達成するために、複数の型押しステップを順次に実行しなければならないことがしばしばである。ただし、このような実施形態の問題として、スタンプを用いた多数の型押しステップ相互間の正確な配向を保証することが挙げられる。多くの場合に、基板上及び/又はスタンプ上に配置された配向マークもしくはパスマークが用いられる。しかし、種々のレイヤでの高精度にアライメントされた型押しは、不可能であるか又は大きなコストをかけなければ可能とならない。
【0011】
ここで、本発明の課題は、ナノ構造を型押しする方法及び装置を提供し、大面積の基板に対し、できるだけプロセスステップの反復なく、最小の構造を型押しできるようにすることである。
【0012】
この課題は、請求項1,8に記載された特徴によって解決される。本発明の有利な実施形態は各従属請求項に示されている。明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に示されている複数の特徴の少なくとも2つの組み合わせの全ても本発明の範囲に該当する。また、値領域が示される場合、提示される限界内にある値も限界値として開示されており、任意の組み合わせで適用できるものとする。なお、装置について開示された特徴が方法の特徴としても考察しうる場合、それらは方法の発明に該当する。逆も然りである。
【0013】
本発明の基本的着想は、ナノ構造スタンプ及び/又は基板への応力印加によって、最初はスタンプ面の部分面のみをナノ構造スタンプに接触させ、続いて特にナノ構造スタンプの解放により接触面の自動的な接触を生じさせることである。この場合、好ましくは、スタンプ面全体を上述した各ステップの反復なしで型押しできる。
【0014】
本発明は特に、硬性のナノ構造スタンプを用いて大面積のUV‐NILナノ型押しプロセスを実行する装置及び方法に関する。
【0015】
本発明は特に、大面積のナノ型押しプロセスを実行する装置及び方法に関する。大面積のナノインプリントプロセス(18インチ以上の基板まで)は、UV透過性を有する硬性のナノ構造スタンプによって(典型的にはウェハフォーマットで)行われる。この場合、パターニングされたナノ構造スタンプは、全面にわたって予めレジストコーティングされた基板に接触される。レジストコーティングは、型押しプロセスとは別個に固有のモジュールで実行可能である。インプリントは特に、真空下で、又は、不活性ガス雰囲気を下回る周囲圧のもとで、行われる。型押しフロントは、アクチュエータにより、選択的に中央部又は基板縁部から開始できる。型押しフロントの展開によって、パターニングされたスタンプ表面が、基板上の硬化可能な材料、特にレジスト層においてプレスされ、ナノ構造スタンプの構造が複製される。当該プロセスは、好ましくは第1の層又は第2の層の型押しのために、正確な位置合わせ(SmartViewアライメント)と組み合わせて使用可能である。
【0016】
本発明は、確立されている産業上のレジストコーティングプロセス、例えばスピンコーティングプロセスと組み合わせて適用可能である。レジストコーティングは型押しプロセスとは別個に固有のモジュールで実行可能である。したがって、基板のレジストコーティングは、迅速に欠陥なく、全面にわたって、粒子なく、標準化された状態で行うことができ、型押しステップにおけるスループットの利点も得られる。真空中での型押し又は周囲圧のもとでの型押しを、型押し欠陥(例えば空気混入など)の低減、及び、ナノ構造スタンプと基板との分離の簡単化のために可能である。こうした新規の技術の重要な利点は、全面にわたってレジストコーティングされる基板も周囲圧のもとで欠陥なく接触させることができるということである。
【0017】
さらなる利点は、
・歪みが生じず、
・10nmを下回る領域の構造を複製でき、
・例えばSVA(SmartView(登録商標)アライメント)プロセスを利用して、種々のレイヤを相互に高精度に位置合わせして型押しするための、アライメントと組み合わせることができ、
・より高い解像能が得られる、
ということである。
【0018】
本発明は特に、パターン、特にマイクロ構造もしくは好ましくはナノ構造を、UV透過性のナノ構造スタンプによって、面状に(全面で)レジストコーティングされた基板の平坦面へ転写する方法及び装置に関する。この方法及び装置では、基板を基板受容面に受容する基板ホルダと、基板受容面に対して平行に配向可能でありかつこの基板受容面に向かい合うように配置可能なナノ構造スタンプの構造面と、基板受容面及びナノ構造スタンプの構造面に対して直交に作用可能なアクチュエータとを用いている。
【0019】
本発明は、UV透過性を有する硬性のスタンプを用いた大面積のナノインプリントプロセスを基礎としている。ナノ構造スタンプは、電磁放射の他の領域に対しても透過性を有していてよい。ウェハとは、基板又は製品基板、例えば半導体ウェハをいうものとする。HDDなどの有孔基板もこれに含まれる。製品基板は、両面が構造化又は処理された製品基板であってもよい。基板は、あらゆる形状を有することができ、好ましくは円形もしくは長方形もしくは正方形、特に好ましくはウェハフォーマットで形成されていてよい。基板の直径は2インチ超、好ましくは4インチ超、より好ましくは6インチ超、なお好ましくは8インチ超、さらに好ましくは12インチ超、特に好ましくは18インチ超の値である。正方形のガラス基板は5mm×5mmから20mm×20mm以上の寸法を有する。長方形のガラス基板は5mm×7mmから25mm×75mm以上の寸法を有する。ナノ構造スタンプは、あらゆる形状を有することができ、好ましくは円形もしくは長方形もしくは正方形、特に好ましくはウェハフォーマットで形成されていてよい。ナノ構造スタンプの直径は、好ましくは一貫して基板の直径に一致する。
【0020】
ナノ構造スタンプは、好ましくはUV透過性を有する硬性の材料、例えば石英/二酸化ケイ素から形成され、より好ましくはUV透過性のポリマースタンプ、例えばポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、過フッ素化ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロリド、エチレンテトラフルオロエチレンから形成され、特に好ましくはUV透過性の硬性ポリマーから形成される。本発明のスタンプ材料は、型押し材料を基板でUV硬化する際に、当該型押し材料を架橋する電磁放射の波長領域に対して好ましくは少なくとも部分的に透過性を有する。この場合、透光率は、特には0%超、好ましくは20%超、より好ましくは50%超、さらに好ましくは80%超、特に好ましくは95%超である。当該透光率に対する波長領域は、特に100nmから1000nm、好ましくは150nmから500nm、より好ましくは200nmから450nm、さらに好ましくは250nmから450nmである。
【0021】
UV透過性及び/又はIR透過性を有するナノ構造スタンプは、あらゆる形状を有することができ、好ましくは円形もしくは長方形もしくは正方形、特に好ましくはウェハフォーマットで形成されていてよい。ナノ構造スタンプの直径は、好ましくは基板の直径にほぼ一致する。ナノ構造スタンプは、処理すべき基板表面に向かう側にポジ及び/又はネガのプロフィルを有することができる。
【0022】
特に重要なのは、基板及びナノ構造スタンプの/接触過程である。なぜなら、このときにエラーが生じることがあり、しかもこのエラーは累積しやすく、再現性のあるアライメント精度を保持できなくなってしまうからである。これにより重大な欠陥が生じる。基板の接触面とナノ構造スタンプの接触面とを配向して接触させる重要なステップでは、100μm未満のつねにより正確なアライメント精度又はオフセット量が所望される。このアライメント精度又はオフセット量は、特には10μm未満、好ましくは1μm未満、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは10nm未満である。このような配向精度を得るには多くの影響因子を考慮しなければならない。
【0023】
本発明の装置は、さしあたりは、特許文献であるオーストリア国特許発明第405775号明細書に言及された装置の発展形態と見なすことができる。当該オーストリア国特許発明第405775号明細書には、複数のディスク状の半導体基板を相互に配向してガイドする方法及び装置が記載されている。本発明の新たな装置では、基板とナノ構造スタンプとが相互に配向されてともにガイドされることにより、硬性のスタンプを用いたナノインプリント型押しプロセスのための接近及びアライメントが制御された状態で実行される。こうした設備には、好ましくは、平行に配向されたスタンプと基板との間で無接触の楔誤差補償を行うための装置が設けられる(国際公開第2012/028166号を参照)。
【0024】
本発明は特に、基板とナノ構造スタンプとをできるかぎり協調させ、同時に半自動的に接触させるという着想を基礎としている。これは、接触の前に、2つのうち少なくとも一方、好ましくはナノ構造スタンプに対し、その接触面の中心Mに対して特に共心的に径方向外側へ向かって延在する応力を印加し、ついで接触の開始のみ制御し、所定の部分、特にスタンプの中心Mの接触後にナノ構造スタンプを解放し、応力に基づく自律制御の状態で向かい合う基板を型押しすることにより行われる。応力は、変形手段を用いたナノ構造スタンプの変形により得られ、ここで、変形手段は特に形状に基づいて型押し側とは反対側の面へ作用し、相応に、交換可能な種々の変形手段を使用することで変形を制御できる。このことは国際公開第2013/023708号に記載されている。制御は、変形手段がナノ構造スタンプに加える圧力又は力によって行われる。
【0025】
装置は、有利には、真空中でも又は不活性ガスの周囲圧のもとでも駆動可能であり、これにより、好ましくは空気混入などの型押し欠陥が回避される。装置が真空中で駆動される場合、圧力は500mbar未満、好ましくは100mbar未満であり、さらに好ましくは10mbar未満であり、特に好ましくは1mbar未満である。
【0026】
好ましくは、存在しているガス雰囲気が接触過程の衝撃を緩和し、これにより、接触面が早期に又は複数の箇所で同時に接触して歪みが生じることが防止される。そうでないとガス混入が生じかねない。したがって、プロセスを最適化し、特に接触中の周囲圧を基板及びナノ構造スタンプの条件に適合させることが必要かつ有意である。
【0027】
基板及びナノ構造スタンプをそのつどのサンプルホルダに固定する際にきわめて頻繁に用いられる形式は、真空又は負圧を利用した固定である。基板及びナノ構造スタンプは、真空路がフライス加工された平坦な硬化面に、負圧又は真空によって固定される。基板用のサンプルホルダ(基板受容装置)は、面全体又は面の外側領域に真空路を有する。有利には、負圧路が、受容装置の中心Zに対して共心的に、特には円形に、特には全周にわたって延在する。さらに、必要に応じて、受容面の輪郭はその受容平面に対して後退させることができるので、載置面積を縮小又は変更する凹部を形成することもできる。よって、両面でパターニング又は処理された基板(製品基板)も使用できる。
【0028】
ナノ構造スタンプ用のサンプルホルダは、特にアクチュエータの孔と複数の真空路とを縁領域に有する。ここでは、少なくとも1つの受容面を中断する負圧路が、受容輪郭の外側の環状部分に設けられる。必要に応じて、受容装置の受容面積を低減できるので、基板とサンプルホルダとの間の接触面積を小さくできる。
【0029】
基板及びナノ構造スタンプをそのつどサンプルホルダに固定する別の手段として、クランプを用いた機械的固定又は静電式固定が挙げられる。ピン(英語:ピンチャック)を備えたサンプルホルダも使用される。専用接着剤も使用可能である。
【0030】
基板受容装置の本発明の一実施形態ではさらに、基板上、特にウェハ上を流体層で処理することができる。流体層とは、特に、接触過程中に界面に存在する、流体状の型押しレジストである。
【0031】
レジストコーティングは、特に、型押しプロセスとは別個に、固有のモジュール内で実行可能である。したがって、標準化されたレジストコーティングを制御された条件のもとで使用でき、このため続くプロセスステップでのスループットの利点が得られる。基板は、コーティングチャンバ内で、全面にわたってナノインプリントレジストによって予め覆われる。各層は、特にスピンコーティング、スプレーコーティングもしくはインクジェットコーティング及び浸漬コーティングプロセス又はローラコーティングプロセスなどによって施与される。続いて、選択的に溶剤が気化され、ウェハが型押しチャンバ内へ搬送される。
【0032】
型押しすべき基板表面又は基板コーティングに対する材料は、特に、ポリマー又はエナメルなどのUV硬化可能な物質又は熱硬化可能な物質であってよい。UVナノインプリントリソグラフィではナノ構造スタンプが室温で流動可能なレジストへプレスされるのに対し、熱プロセスでは熱可塑性レジストが高温のもとでレジストへプレスされる。硬化はレジスト材料に応じて好ましくはUV光によって行われるが、IR光によって行ってもよい。一般に、硬化は、電磁放射、熱、電流、磁界又はその他の手法によって行うことができる。硬化は、本発明によれば、基本材料の重合を基礎としている。この場合、重合はいわゆる開始剤によって開始される。
【0033】
ナノ構造スタンプでの付加的な付着防止層のコーティング又は接着媒介剤の塗布又は分離剤の塗布は、有利な実施形態にしたがって行われる。ナノ構造スタンプには、付加的に本発明のナノ構造スタンプと基板コーティング(型押し物質)との間の付着性の低減を達成するために、付着防止層がコーティングされる。好ましくは、付着防止層は、基板コーティングに対する低い付着特性を有する有機分子である。コーティングの層厚さは、特には1mm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは10μm未満、なお好ましくは1μm未満、さらに好ましくは100nm未満、特に好ましくは10nm未満である。小さな層厚さは、例えばUV硬化に使用される電磁放射の透過性に対して正の効果を有する。分離剤としては、例えば自己組織化単独層(SAM)又は多層構造体が使用される。さらなる前処理ステップとして、プラズマを利用した表面活性化も可能である。
【0034】
本発明の装置の実施形態にはランプケーシングが組み込まれているので、UV光により、特にナノ構造スタンプを通して、型押しレジストのUV光硬化を可能にするための露光を行うことができる。ナノ構造スタンプ及び場合によりこれに接する他のスタンプホルダの要素は、UV透過性材料及び/又はIR透過性材料から製造される。
【0035】
基板及びナノ構造スタンプは、排気過程中及び/又は不活性ガス噴霧過程中、分離状態で維持され、透明なナノ構造スタンプが上方に(構造化面が下向きとなるように)保持され、基板が下方に保持される。ナノ構造スタンプの変形の制御は、変形手段がナノ構造スタンプに作用させる圧力又は力によって行われる。ここで有利には、ナノ構造スタンプによる受容装置の有効な載置面を低減することができるので、ナノ構造スタンプは受容装置によって部分的にのみ、好ましくは縁部でのみ支持される。このようにして、縁部の接触面積を小さくすることにより、ナノ構造スタンプとスタンプホルダもしくはスタンプ受容装置との間の付着性の低減が達成される。これにより、ナノ構造スタンプを最小限の解離力でソフトかつ確実に解離できる。したがって、ナノ構造スタンプの解離を特に受容面の負圧の低減によって制御できるようになる。
【0036】
ナノインプリントプロセスは、好ましくは、アクチュエータ(ピン)により、選択的に基板中心M又は基板縁Rにおいて開始される。この場合、UV透過性のナノ構造スタンプは、基板上の流体状の型押しレジストとの第1の接触点(スタンプ面の部分面)を定めるために、アクチュエータによって局所的に湾曲(変形)される。第1の接触点が得られた後、スタンプ受容装置の真空路の圧力が遮断されるか、又は、特に各真空路に対して別々に圧力が低減され、これにより、スタンプが解離されて、型押しフロントがスタンプ全面にわたって自動的に延在できるようになる。上方のサンプルホルダの真空路は好ましくは縁部領域に配置されており、これにより、特に受容面の負圧の低減を行うことでナノ構造スタンプからの解離が制御される。負圧の低減を制御することによってはじめて、スタンプ受容装置の特に縁領域からのナノ構造スタンプの解放が行われる。
【0037】
まず、透明なナノ構造スタンプが特にトップサイドのサンプルホルダ(スタンプ受容装置)にロードされ、アライメント装置で把持される。その後、レジストで覆われた基板がロードされ、2つのウェハがアライメント装置によって正確な配向のために高精密に位置合わせされる。特許文献である独国特許発明第102004007060号明細書には、2つのウェハ又は位置合わせすべきあらゆる面状要素を対応する各表面に沿って接合する装置及び方法が記載されている。この場合、各ウェハは正確に配向される。ナノインプリント型押し装置も類似の特徴を有しており、ここでは、各基板及び各ナノ構造スタンプが正確に配向される。すなわち、a)ナノ構造スタンプ(スタンプ受容装置)の受容及び配向を行う第1の装置、b)ナノ構造スタンプ(スタンプ受容装置)に対して基板を受容及び配向する第2の装置が設けられている。
【0038】
各装置による接触面の接触及び対応する表面の型押しは、型押し開始位置で行われる。ナノ構造スタンプによる基板のナノインプリント型押しは、スタンプ載置面からナノ構造スタンプを解放することで型押し開始位置からナノ構造スタンプの側縁まで波及していく型押しフロントに沿って、行われる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、(図示されていない)検出装置によって、基板及びナノ構造スタンプの正確な配向が制御される。これは、検出装置が相対位置を検出してこれを制御ユニットへ伝送し、制御ユニットが基板とナノ構造スタンプとを相互に配向させることによって行われる。配向は手動又は(好ましくは)自動で行われ、不正確性(英語:ミスアライメント)は100μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは1μm未満、さらに好ましくは100nm未満、特に好ましくは10nm未満である。
【0040】
その場合、ナノインプリントプロセスが開始されるまでに、基板からナノ構造スタンプまでの距離が正確に定義された距離まで低減される。本発明の型押しプロセスでは、基板とスタンプとが平行状態で向かい合わされるのでなく、ナノ構造スタンプが変形手段によって基板に軽く押しつけられ、その際に変形されることにより、最初は所定の点、例えば基板の中心Mにおいて相互に接触する。変形すなわち湾曲したナノ構造スタンプが(反対側の基板の方向へ)解放された後、型押し波面の進行により、型押しフロントに沿って連続的かつ均等な型押しが行われる。
【0041】
変形手段として、受容部の輪郭を貫通する少なくとも1つのプレス要素(アクチュエータ)が設けられる場合、圧力を特に中心Zから均等にかけることができる。好ましくは、機械的手段、特にピン又はアクチュエータが設けられる。本発明によれば、液体もしくはガスの印加部などのさらなる変形手段も可能である。
【0042】
本発明の第1の実施形態では、ナノインプリントプロセスがアクチュエータによって基板中心(中心M)で開始され、型押しフロントがこの内側の中心から外側のウェハ縁部へ向かって伝搬する。この場合、アクチュエータ(ピン)もしくはアクチュエータ装置の駆動によって生じた力Fを、ナノ構造スタンプの面重心、ひいては基板とナノ構造スタンプとの間の接触面の面重心に作用させると有利である。ここで、力Fは100kN未満、好ましくは10kN未満、より好ましくは1kN未満、なお好ましくは500N未満、さらに好ましくは100N未満、特に好ましくは10N未満である。
【0043】
本発明の第2の実施形態では、ナノインプリントプロセスはアクチュエータによって基板縁部で開始され、型押しフロントは縁部接触点Rから広がっていく。この実施形態では、アクチュエータもしくはアクチュエータ装置の駆動によって生じた力Fがナノ構造スタンプの面縁部領域に作用する。また、ナノ構造スタンプを受容面の縁部(ナノ構造スタンプの後面)に適用することにより、特にソフトな解離が可能となる。
【0044】
2つの実施形態とも、型押しフロントは少なくともほぼ自動的に、スタンプ面の全体にわたって、特にナノ構造スタンプの重力のみによって、進行する。
【0045】
続いて、好ましい実施形態では、ウェハスタックがアンロードステーションへ搬送され、レジストが透明なスタンプを通してUV光により架橋される。型押しレジスト(硬化可能材料)はUV架橋により硬化される。使用されるUV光は、選択的に、広帯域の光であるか又は型押しレジストに使用されている光開始剤に対して専用に調整された光である。硬化可能材料の波長領域は、特には50nmから1000nm、好ましくは150nmから500nm、特に好ましくは200nmから450nmである。
【0046】
プロセスの終了時には、ナノ構造スタンプが型押しチャンバにおいて特に基板から引き離され、基板がアンロードされる。
【0047】
本発明のシステムでは、特に、基板のコーティング、アライメント、型押し(ナノインプリントリソグラフィ)、スタンプ及び基板の離型、及び、選択的に検査(メトロロジ)などの各プロセスステップが組み込まれる。例えばオーストリア国特許発明第405775号明細書に記載されているようなウェハボンディングシステムとは異なり、離型を直接にインプリントステージで行い、スタンプをシステム内に留めることもできる。当該システムには、好ましくは離型ステップを監視するための力監視センサが設けられる。また特には、静電充電を回避するための措置も講じられる。つまり、硬性のポリマースタンプによって基板にナノインプリント型押しを行う本発明の方法では、一般的な実施形態として、特に、
a)基板コーティング又はレジストコーティング、すなわち、基板への構造化材料(レジスト)の塗布をスピンコーティング装置などの塗布装置によって行うステップ、
b)基板(受容装置)とナノ構造スタンプ(型押し装置)とをアライメント装置によって位置合わせするステップ、
c)アクチュエータを備えた型押し装置により基板を型押しするステップ、及び、
d)硬化可能材料をUV露光し、ナノ構造スタンプ及び基板を離型させるステップ
が行われる。
【0048】
システムには、特に、必要に応じて周囲雰囲気に対して閉鎖可能な共通の作業空間を含むモジュール群が設けられている。この場合、複数のモジュール、例えば、レジストコーティングモジュール(例えばスピンコーティング用)、インプリントモジュール及びアンロードモジュールを、運動装置(ロボット装置)を備えた中央モジュールの周囲にクラスタ状又はスター状に配置可能である。離型はインプリントステージで直接に行うこともできる。同様に、レジストコーティングは、型押しプロセスとは別に固有のモジュールにおいて行うこともでき、このようにすれば大きなスループットの利点が得られる。型押し欠陥を低減し、スタンプと基板との分離を容易にするために、型押しは、インプリントモジュール内のインプリントステージ上で真空及び/又は不活性ガスのもとに実行できる。不活性ガス雰囲気のもとでの型押しは、良好な化学的耐性、良好な付着性及び迅速なUV硬化などの利点を提供できる。これに代えて、作業空間全体に不活性ガスを適用したり、及び/又は、真空装置によって、定義された雰囲気として真空を印加したりすることもできる。塗布過程(基板のコーティング)も上述した定義された雰囲気において実行可能である。こうして、生じうるガス混入を大幅に低減又は排除することができる。
【0049】
このような新技術の重要な利点は、周囲圧及び不活性ガス雰囲気のもとで全面にわたってレジストコーティングされる基板を欠陥なく接触させることができるという点である。
【0050】
システムの本発明の実施形態によれば、特に2つの要素(すなわち基板及びナノ構造スタンプ)を配向するためのアライメント方法を用いて、高解像能の構造を、200nmを下回るアライメント精度で位置合わせしつつウェハ平面に型押しすることができる。
【0051】
本発明の実施形態によれば、特に、高解像能の構造を特に歪みなく大面積で型押しすることができる。本発明の方法の利点は、周囲圧の不活性ガスのもとで全面にわたってレジストコーティングされる基板を欠陥なく接触させることができる。さらに、技術の自動化も可能であるので、レジストコーティング及び型押しを、迅速かつ均等に、欠陥なく、外部粒子を混入させずに実行できる。
【0052】
当該プロセスによって製造可能な製品は、特に、次世代のハードディスクドライブ(HDD)、例えばビットパターンドメディア(BPM)、ポラライザ、量子ドット、フォトニック構造、オプティック構造、シーケンス化構造(ナノホール、ナノドットなど)であってよい。有孔基板(ハードディスク)のための上述した方法の構成に特に即して説明する。
【0053】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、以下に説明する好ましい実施形態及び図から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】aは本発明の装置の好ましい一実施形態によるスタンプ受容装置の平面図(A−A線を有する)であり、bはaをA−A線で切断した断面図であり、cは本発明の第2の実施形態の断面図である。
図2】aは本発明の装置の好ましい一実施形態によるスタンプ受容装置の平面図(B−B線を有する)であり、bはaをB−B線で切断した断面図であり、cは特に両面がパターニングされた製品基板用の本発明の第2の実施形態の断面図である。
図3】aは本発明の装置の第2の実施形態による基板受容装置の平面図(C−C線を有する)であり、bはaをC−C線で切断した断面図であり、cは特にハードディスク製造用のホールを有する基板の平面図である。
図4】aは本発明の装置の第3の実施形態による基板受容装置の平面図(D−D線を有する)であり、bはaをD−D線で切断した断面図である。
図5】aは本発明の方法の第1のステップにおける本発明の装置の断面図であり、bは本発明の方法の第2のステップにおける本発明の装置の断面図であり、cは本発明の方法の第3のステップにおける本発明の装置の断面図である。
図6】aは本発明の方法の第4のステップにおける本発明の装置の断面図であり、bは本発明の方法の第5のステップにおける本発明の装置の断面図であって、スタンプホルダ及び基板ホルダの接近後を示す図であり、cは本発明の方法の第6のステップにおける本発明の装置の断面図であって、特にナノ構造スタンプがアクチュエータを用いた弾性撓み及び接触によって基板に接触される期間を示す図であり、dは本発明の方法の第7のステップにおける本発明の装置の断面図であって、スタンプと基板との間の型押しフロントに沿って型押し波面が連続する期間において、ナノ構造スタンプが真空路の真空の中断によってスタンプ受容装置から解離されることを示す図であり、eは本発明の方法の第8のステップにおける本発明の装置の断面図であって、終了した型押しフロントを示す図である。
図7】aは本発明の方法の第2の実施形態における本発明の装置の断面図であって、スタンプの中央に位置決めされたアクチュエータを有する装置を示す図であり、bは本発明の方法の第2の実施形態における本発明の装置の断面図であって、スタンプホルダ及び基板ホルダの接近後を示す図であり、cは本発明の方法の第2の実施形態における本発明の装置の断面図であって、特にナノ構造スタンプがアクチュエータを用いた弾性撓みによって有孔基板に接触される期間を示す図であり、dは本発明の方法の第2の実施形態における本発明の装置の断面図であって、型押し波面がナノ構造スタンプと有孔基板との間を前進する期間において、ナノ構造スタンプが真空路の真空の中断によってスタンプ受容装置から解離されることを示す図であり、eは本発明の方法の第2の実施形態における本発明の装置の断面図であって、終了した型押しフロントを示す図である。
図8】型押し後の基板受容装置の断面図であって、ウェハスタンプ(ナノ構造スタンプが載置された基板)が特にアンロードステーションへ輸送され、硬化可能材料が特に透明なナノ構造スタンプを通してUV光によって架橋/硬化されることを示す図である。
図9】aは本発明の方法の一実施形態の断面図であって、基板及びナノ構造スタンプに対してその中央に作用するアクチュエータから力が印加されることを示す図であり、bは本発明の方法の一実施形態を示す図であり、基板及びナノ構造スタンプに基板縁部でナノ構造スタンプに作用するアクチュエータから力が印加されることを示す図である。
【0055】
図中、同じ要素及び同様の機能を有する要素には同じ参照番号を付してある。
【0056】
図1のaには、本発明にしたがってナノ構造13を型押しするために設けられたナノ構造スタンプ5を受容体1kに受容する装置であるスタンプ受容装置1が示されている。受容体1kは、受容平面Eに受容面1uを有する構造を有しており、このことは図1のbの断面図で良好に見て取れる。ナノ構造スタンプ5がスタンプ受容装置1に受容されると、受容面1uのみがナノ構造スタンプ5の受容側面5aに接触する。受容側面5aの反対側には、ナノ構造スタンプ5の型押し側面6が設けられている。
【0057】
受容装置1の受容面1uは、特に、ナノ構造スタンプ5の寸法及び周囲輪郭に適合化されている。特にUV透過性を有するナノ構造スタンプ5はあらゆる形状を有してよく、特には円形もしくは長方形もしくは正方形の形状、好ましくは標準ウェハフォーマットを有する。
【0058】
ナノ構造スタンプ5の直径は、好ましくは一貫して型押しすべき基板7の直径に一致するか又はこの基板の直径よりも大きくなるように選定される。好ましくは、ナノ構造スタンプ5の直径は少なくとも基板7の直径と等しく、好ましくはナノ構造スタンプ5の直径は基板7の直径に比べて5mm超だけ大きく、さらに好ましくはナノ構造スタンプ5の直径は基板7の直径に比べて10mm超だけ大きい。また、本発明によれば、基板7での均等な型押しを達成するために、好ましくは、スタンプ受容装置1(ナノ構造スタンプ支承部)において型押し側面6の活性の型押し領域の外側に真空路4が設けられる。好ましくは、ナノ構造スタンプ5は基板7から最大で50mm突出する。
【0059】
受容面1uは、図1のa,bの実施形態では円形であり、その半径Rは、型押しすべき基板7の半径にほぼ対応する。ナノ構造スタンプ5に対する受容面1uの大きさと、基板7に対する受容面2uの大きさとは、好ましくは、基板7及び/又はナノ構造スタンプ5の直径にほぼ等しいか又はこれにより僅かに大きくなるように選定されている。基板7の直径は、好ましくは、半導体技術での通常の直径2インチ,4インチ,6インチ,8インチ,12インチもしくは18インチに対応する。
【0060】
受容体1kの半径Rは、図1のbの実施形態に示されているように、特に受容面1uに対して後退されたリング状の肩部が設けられていることによって、受容面1uの半径Rより大きくなっていてもよい。
【0061】
好ましくは、受容面1uの外側のリング部分9のみが真空路4を用いたナノ構造スタンプ5の固定のために設けられる。本発明の方法は、ナノ構造スタンプ5の固定が受容面1uの側縁領域のみで行われることにより改善される。受容面1uの負圧を低減することにより、制御された状態で、ナノ構造スタンプ5の解離を特にリング部分9から行うことができる。受容面1uのリング部分9は、受容面1uの外輪郭から受容面1uの中央へ、特に0.1mmから50mmまでの幅で、好ましくは0.1mmから25mmまでの幅で、延在する。リング部分9は特に、スタンプ直径の1/100から1/5までの幅で、好ましくはスタンプ直径の1/50から1/10までの幅で延在する。図1のaの実施形態では、(図示されていない)真空装置によって、特には相互に共心に延在する2つの負圧路もしくは真空路4に負圧が印加される。
【0062】
図1のbでは、スタンプ受容装置1の第1の実施形態の受容面1uが、全面にわたって又は(真空路4を除いて)平面状に、形成されている。
【0063】
別の実施形態によれば(図1のc)、スタンプ受容装置1’の第2の実施形態の受容体1k’は、特に受容面1u’内部で受容平面Eに対して後退され、これにより少なくとも1つの凹部18が形成される。このため、ナノ構造スタンプ5の載置面すなわち受容面1u’は、図1のaの実施形態に比べて縮小される。代替的な実施形態では、中心に対して共心に形成されたハニカム状又は円形の複数の凹部によって載置面を縮小することもできる。1つもしくは複数の凹部18の深さは、有利な実施形態では、真空路4の深さに対応する。
【0064】
ナノ構造スタンプ5及び場合によりこれに接するスタンプホルダの要素は、好ましくはUV透過性材料から形成される。
【0065】
図2のaには、基板7を受容体2kに受容する装置である基板受容装置2が示されている。受容体2kは、本発明の有利な実施形態によれば、コーティング可能である。受容体2kは、受容平面Eに対して平行に配向可能な受容面2uを有する(図2のb)。
【0066】
受容装置2の受容面2uは、好ましくは基板寸法に少なくとも大部分が適合化されている。受容装置2の受容面2uは、図2のa,bの実施形態では円形であり、受容面2uの半径Rは少なくともほぼ基板7の半径に相当する。基板7の直径は、好ましくは、半導体産業での通常の直径2インチ,4インチ,6インチ,8インチ,12インチもしくは18インチ、好ましくは18インチ以上に相当する。
【0067】
受容体2kの半径Rは、図2のbでは、受容面2uの半径Rよりも大きい。図2のbの実施形態では、真空路4によって基板7を固定する全受容面2uが設けられている。図2のaの実施形態では、基板7を固定するための負圧が、(図示されていない)真空装置によって、受容面2uをカバーしかつ相互に共心に延在する複数の負圧路もしくは真空路4に印加される。
【0068】
図2のcでは、受容体2k’の第2の実施形態の受容面2u’が全面では形成されておらず、受容面2u’に対して後退され、特には受容面2u’によって取り囲まれる凹部19、好ましくは受容面2u’によって包囲される凹部19が形成されている。当該凹部19は、基板7の載置面を変化させ、特に両面がパターニングされる基板7又は両面が処理される基板7を使用できるようにする。当該載置面は、代替的な実施形態によれば、ハニカム形又は円形の1つもしくは複数の凹部19によって縮小することができる。1つもしくは複数の凹部19の深さは、有利な実施形態によれば、真空路4’の深さに相当する。
【0069】
図3のaには、第3の実施形態による、リング状の基板7’(図3のcを参照)すなわち中央に孔20を有する基板7’を受容体2k’’に受容する装置である基板受容装置2’’が示されている。孔20を有する基板7’として例えばハードディスクが挙げられる。受容装置2’’の受容面2u’’は基板7’の寸法に適合化されている。受容装置2’’の受容面2u’’は、図3のa,bの実施形態では円形であり、その半径Rは基板7’の半径にほぼ相当する。
【0070】
図3のbによれば、基板7’を固定する受容面2u’’のうち、半径Rの約1/2をカバーする外側のリング部分のみに、真空路4’が設けられている。したがって、基板7’は、(図示されていない)真空装置の負圧によって、全体としてリング状の基板面に対応して相互に共心に延在するように設けられた複数の負圧路もしくは真空路4’に固定される。
【0071】
図4のaには、第4の実施形態により、孔20を有する基板7’(図3のcを参照)を受容体2k’’’に受容する装置である別の基板受容装置2’’’が示されている。
【0072】
基板7’を固定する受容面2u’’’は、特に孔20に対応するように受容面2u’’’から突出するコア2hを含む。基板7’に対する基板受容装置2’’’のコア2hは、種々の形状、例えば円形、十字形、星形、楕円形もしくは角形を有することができる。コア2hの高さは特に基板7’の厚さに対応する。基板7’の平均厚さは特に、20μmから10000μm、好ましくは100μmから2000μm、さらに好ましくは250μmから1000μmの範囲である。受容面2u’’’及びコア2hは異なる寸法を有することができるので、他の媒体も固定可能である。
【0073】
受容装置2’’’の受容面2u’’’は、図4のa,bの実施形態によれば円形であり、その半径Rは基板7’の半径にほぼ相当する。図4のbの実施形態では、受容面2u’’’のうち外側のリング部分のみが真空路4’による基板7’の固定のために設けられている。したがって、孔20を有する基板7’は、図4のbの実施形態では、(図示されていない)真空装置を用いて、受容面2uの、外側のリング部分をカバーしかつ相互に共心に延在する2つの負圧路もしくは真空路4の負圧によって固定される。
【0074】
図5のaには、ナノ構造スタンプ5及び基板7を受容する装置である受容装置1(図1のaの実施形態)及び受容装置2(図2のaの実施形態;半導体産業ではチャックとも称される)が示されている。受容装置1は、アクチュエータ3(図1のaを参照)又はアクチュエータ装置(図示されていない)を通過させるための中心開口10を有する。
【0075】
本発明の第1の実施形態では、型押しプロセス(ナノインプリントプロセス)はアクチュエータ3によって基板の中心で開始される。アクチュエータ3は、本発明によれば種々の形状又は構成を有することができる。アクチュエータ3としてのアクチュエータピンに代えて、代替的には、液体もしくはガスを用いた圧力印加も可能である。図1のaのアクチュエータ3のための開口10も種々の大きさ及び形状を有することができる。
【0076】
図5のbには、スタンプ受容装置1にローディングされた、特にはUV透過性のナノ構造スタンプ5が示されている。ナノ構造スタンプ5の固定は、真空又は負圧によってスタンプ受容装置1の外側のリング部分の真空路4の上方で行われる。
【0077】
図5のcの次のプロセスステップでは、基板7は基板受容装置2にローディングされ、真空又は負圧によって真空路4’の上方で固定され、基板7上に施与された硬化可能材料8がスタンプ面14によって上側すなわちナノ構造スタンプ5の方向へ配向される。基板7及びナノ構造スタンプ5は、排気過程及び/又は不活性ガス散布過程中、分離状態で(つまり非接触状態で)保持され、ナノ構造スタンプ5の上側の型押し側面6が下方へ、基板7の下方の硬化可能材料8が上方へ、配置及び配向される。
【0078】
図6のaからeには、硬性かつUV透過性のナノ構造スタンプ5を用いた大面積のナノインプリント過程のための方法及び装置の第1の実施形態の各プロセスステップが示されている。基板7及びナノ構造スタンプ5は、最初、正確な配向のために高精度に位置合わせされ、排気過程及び/又は不活性ガス散布過程中、分離状態で保持される(図6のa)。
【0079】
図6のbに示されているように、ナノインプリントプロセスが開始されるまでに、基板7からナノ構造スタンプ5までの距離hは、正確に定義された距離h’へ低減される。ここで特に、距離h’は500μmより小さく、好ましくは250μmより小さく、より好ましくは100μmより小さく、さらに好ましくは50μmより小さい。
【0080】
アクチュエータ3により、ナノ構造スタンプ5及び基板7は、できるだけ点状に部分面15に接触する。図6のcに示されている接触は、アクチュエータ3が作用させた圧力に基づくナノ構造スタンプ5の共心的な変形によって、特にナノ構造スタンプ5の中心で行われる。ここで有利には、アクチュエータ3又は(図示されていない)アクチュエータ装置の駆動によって生じた力Fは、ナノ構造スタンプ5の面重心、ひいては、基板7とナノ構造スタンプ5との接触面の面重心にかかる。
【0081】
第1の接触点が得られた後、制御された状態で負圧を低減することにより、ナノ構造スタンプ5をスタンプ受容装置1から解放することができ、これによって型押しフロント12が、基板7又はスタンプ面14の中心から特には共心的に縁部へ向かって伝播する。ナノ構造スタンプ5の変形によって生じる応力により、ナノ構造スタンプ5はその中心から半径方向外側の周へ向かって基板7に接触する(図9のaも参照)。したがって、当該解放によりスタンプ面14の残余面16も接触する。
【0082】
図6のeには、型押しフロント12が基板7の縁部に達した際に型押しが終了することが示されている。基板7とナノ構造スタンプ5とはほぼ全面にわたって接触する。続いて図8の硬化が行われる(下記を参照)。
【0083】
図7のaからeには、硬性かつUV透過性のナノ構造スタンプ5を用いて大面積のナノインプリントを行うための装置及び方法の第2の実施形態の各プロセスステップが示されている。基板7は、この実施形態では、図3のcの基板7’である。
【0084】
基板7’は、好ましくは2.5インチもしくは3.5インチの直径を有する。スタンプ5’は直径4インチ以上であり、よって基板7’より大きい。受容面1uは、ナノ構造スタンプ5を真空路4によって固定するための受容体1kの外側リング部分に構成されている(図1のbを参照)。したがって、受容面1uの真空路4は、ナノ構造スタンプ5の活性のスタンプ面14の外側に存在する。孔20を有する基板7’はナノ構造スタンプ5よりも小さい直径を有するので、ナノ構造スタンプ5を保持する真空路4は型押しを行うべきスタンプ面14の外側に存在する。当該寸法差を利用して、真空路4によりナノ構造スタンプ5が固定される。
【0085】
図7のbに示されているように、基板7からナノ構造スタンプ5までの距離hは、ナノインプリントプロセスが開始されるまでに、正確に定義された距離h’へ低減される。この場合、距離h’は、特には500μm未満、好ましくは250μm未満、より好ましくは100μm未満、さらに好ましくは50μm未満である。
【0086】
図7のcに示されている接触は、アクチュエータ3が作用させた圧力に基づくナノ構造スタンプ5の共心状の変形によって、ナノ構造スタンプ5の中心で生じている。この場合、アクチュエータ3又は(図示されていない)アクチュエータ装置の駆動によって生じた力Fが、ナノ構造スタンプ5の面重心、ひいては基板7’とナノ構造スタンプ5との接触面の面重心にかかると有利である。
【0087】
当該接触面は、基板7’の中央に孔20があるため、スタンプ面14のリング状の部分面15’となり、型押しフロント12は孔20の縁で開始される。
【0088】
リング状の接触が行われた後、真空路4の負圧が制御された状態で低減され、ナノ構造スタンプ5がスタンプ受容装置1から解放される。ナノ構造スタンプ5の変形によって生じた応力により、ナノ構造スタンプ5は、その中心から半径方向外側の基板7’の周に向かって、基板7’に接触する(図9のaも参照)。したがって、解放により、スタンプ面14の残余面16’が接触する。
【0089】
ナノ構造スタンプ5が孔20の縁に接触するとただちに、型押しフロント12が基板の外縁に対して共心状に伝播する。図7のeには閉じた型押しフロント12が示されている。基板7’とナノ構造スタンプ5とは、孔20以外の箇所で、つまりスタンプ面14の全面にわたって、接触する。
【0090】
図8には、アンロードステーションでのウェハ積層体もしくは基板‐スタンプ積層体と、UV光11による、硬化可能材料8、特にフォトレジストもしくはラッカー層の直接の架橋が示されている。一般に、硬化は、電磁放射、熱、電流、磁界又はその他の手法によって実行可能である。好ましくは、透明なナノ構造スタンプ5を通した硬化が行われる。別の実施形態では、硬化をさらにインプリントステージで行うこともできる。この場合、硬化は透明なスタンプ受容装置1,1’により、透明なナノ構造スタンプ5を通して行われる。
【0091】
基板7,7’からのナノ構造スタンプ5の硬化及び離型は、直接にインプリントステージにおいても行うことができる。好ましくは、本発明の装置を備えたシステムに、必要に応じて周囲雰囲気に接続可能な共通の作業空間を有するモジュール群が設けられる。この場合、例えばコーティングモジュール、インプリントモジュール及びアンロードモジュールは、運動装置(ロボットシステム)を備えた中央モジュールの周囲にクラスタ状もしくはスター状に配置可能である。
【0092】
本発明の方法は、マイクロメートルを下回る領域、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、特に好ましくは10nm未満の高解像のパターニングを可能にする。
【0093】
代替的な実施形態が図9bに示されている。この場合、ナノインプリントプロセスはアクチュエータ3によって、中心を外れた箇所、特に基板の縁部から開始され、型押しフロント12は接触点から円形に伝播する。
【0094】
第1の実施形態及び第2の実施形態による型押しフロント12の1つもしくは複数の伝播方向が、図9のa,bに並べられて概略的に示されている。アクチュエータ3の位置の例も図9のa,bに示されている。
【符号の説明】
【0095】
1,1’ スタンプ受容装置、 1k,1k’ 受容体、 1u,1u’ 受容面、 2,2’,2’’,2’’’ 基板受容装置、 2u,2u’,2u’’,2u’’’ 受容面、 2k,2k’,2k’’,2k’’’ 受容体、 2h コア、 3 アクチュエータ(ピン)、 4,4’ 真空路、 5 ナノ構造スタンプ、 5a 受容側面、 6 型押し側面、 7,7’ 基板、 8 硬化可能材料、 9 リング部分、 10 開口、 11 UV光、 12 型押しフロントの方向、 13 ナノ構造、 14,14’ スタンプ面、 15,15’ 部分面、 16,16’ 残余面、 17 型押し機(特にスタンプ受容装置及びナノ構造スタンプとから成る)、 18,19 凹部、 20 孔、 A−A,B−B,C−C,D−D 切断線、 E 受容平面、 R リング径、 R 受容体径、 F
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図8
図9a
図9b