(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391711
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】基準搭載電源回路網を特に安全関連サブ回路網に接続する装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20180910BHJP
H02J 7/14 20060101ALI20180910BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20180910BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20180910BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
H02J1/00 306B
H02J7/14 H
B60W10/26 900
B60W20/13
B60R16/033 D
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-565477(P2016-565477)
(86)(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公表番号】特表2017-516442(P2017-516442A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2015056053
(87)【国際公開番号】WO2015165644
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】102014208192.0
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ボーネ
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−298864(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/008124(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0106180(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0264869(US,A1)
【文献】
特開2007−022196(JP,A)
【文献】
特開2005−145097(JP,A)
【文献】
特開2013−023103(JP,A)
【文献】
特開2008−072880(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/107774(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0368160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
B60R 16/033
B60W 10/26
B60W 20/13
H02J 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準搭載電源回路網(10)を、少なくとも一つのサブ回路網(20,20a,20b)に接続する装置であって、
少なくとも一つの第1のスイッチング手段(34)と、
少なくとも一つの第2のスイッチング手段(36)と、
少なくとも一つの第3のスイッチング手段(38)と、
少なくとも一つの第4のスイッチング手段(39)と、
第1の端子(33)及び第2の端子(35)を有する少なくとも一つの直流電圧コンバータ(32)と、
を備え、
前記第1のスイッチング手段(34)及び前記第2のスイッチング手段(36)を介して、前記基準搭載電源回路網(10)と前記サブ回路網(20a)とが直結可能であり、
前記第1の端子(33)は、前記第1のスイッチング手段(34)と前記第2のスイッチング手段(36)との間に電気的に接触接続され、
前記第3のスイッチング手段(38)を介して、前記直流電圧コンバータ(32)の前記第2の端子(35)は、前記基準搭載電源回路網(10)に接続可能であり、
前記第4のスイッチング手段(39)を介して、前記直流電圧コンバータ(32)の前記第2の端子(35)は、エネルギ蓄積器(40)に接続可能であり、
前記サブ回路網(20a)の支援のために、前記第1、第2、第3及び第4のスイッチング手段(34,36,38,39)が閉じられ、前記直流電圧コンバータ(32)は非活性化される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記サブ回路網(20a)の給電の際に、前記第2及び前記第4のスイッチング手段(36、39)が閉じられ、それによって前記エネルギ蓄積器(40)から前記直流電圧コンバータ(32)を介して前記サブ回路網(20a)内へのエネルギ流が発生させられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも前記サブ回路網(20a)の支援のために、少なくとも前記第2のスイッチング手段(36)と前記第4のスイッチング手段(39)とが閉じられ、前記エネルギ蓄積器(40)からも前記直流電圧コンバータ(32)を介して前記サブ回路網(20a)内へのエネルギ流(42)が発生させられる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記サブ回路網(20a)の切り離しが、前記第2のスイッチング手段(36)を開くことによって行われる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記エネルギ蓄積器(40)を介した前記基準搭載電源回路網(10)の支援が、前記第4のスイッチング手段(39)を閉じること、並びに、前記第1のスイッチング手段(34)及び/又は前記第3のスイッチング手段(38)を閉じることによって行われ、それによって直接及び/又は前記直流電圧コンバータ(32)を介して、前記基準搭載電源回路網(10)内へのエネルギ流(42)が発生させられる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記エネルギ蓄積器(40)は、電圧安定化のために前記直流電圧コンバータ(32)を介して、前記基準搭載電源回路網(10)及び/又は前記サブ回路網(20a)に結合される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記サブ回路網(20,20a,20b)は、安全関連サブ回路網(20,20a,20b)である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記基準搭載電源回路網(10)は、少なくとも一つのさらなるエネルギ蓄積器(16)を含み、前記サブ回路網(20,20a,20b)は、内部に少なくとも一つの第1の安全関連負荷(22a,24)が配置された少なくとも一つの第1の安全関連サブ回路網(20a)と、内部に少なくとも一つの第2の安全関連負荷(22b)が配置された少なくとも一つの第2の安全関連サブ回路網(20b)とを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも一つの第5のスイッチング手段(26)と少なくとも一つの第6のスイッチング手段(28)とが設けられ、前記第5のスイッチング手段(26)及び前記第6のスイッチング手段(28)を介して、前記第1の安全関連サブ回路網(20a)内に配置された前記少なくとも一つの第1の安全関連負荷(24)が、前記エネルギ蓄積器(40)及び/又は前記基準搭載電源回路網(10)と選択的に接続可能である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの第1の安全関連負荷(22a)及び前記少なくとも一つの第2の安全関連負荷(22b)は、冗長的に構成されており、前記冗長的に構成された前記第2の安全関連負荷(22b)は、前記基準搭載電源回路網(10)と接続されるのに対して、前記冗長的に構成された前記第1の安全関連負荷(22a)は、さらなるエネルギ蓄積器(40)と接続可能である、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記冗長的に構成された前記第2の安全関連負荷(22b)は、前記基準搭載電源回路網(10)と、間に配置されるスイッチング手段なしで接続される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
単に存在している安全関連負荷(24)を、前記エネルギ蓄積器(40)及び/又は前記基準搭載電源回路網(10)と分離又は接続するために、少なくとも一つの第5のスイッチング手段(26)と少なくとも一つの第6のスイッチング手段(28)とが設けられている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念による、基準搭載電源回路網を特に安全関連サブ回路網に接続する装置に関する。上位概念による装置は、既に国際公開第2002/080334号(WO2002/080334A1)から公知である。それによれば、統合化されたスタータジェネレータを備えた実施形態において、36Vバッテリ、12Vバッテリ及び二重層キャパシタが設けられている。この統合化されたスタータジェネレータは、接続路を介して42Vの搭載電源回路網に給電し、さらに42V/14Vコンバータを介して14Vの電源回路網に給電している。これらの電源回路網には、複数の負荷が接続されている。二重層キャパシタは、スイッチを介して、統合化されたスタータジェネレータと42Vの搭載電源回路網とに接続することが可能である。しかしながら、この二重層キャパシタは、僅かな電圧範囲に亘ってしか使用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】国際公開第2002/080334号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に安全関連サブ回路網に高い信頼性で電気エネルギを供給するための装置及び方法を提供することにある。この課題は、独立請求項の特徴部分によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の利点
そのために、独立請求項の特徴部分による本発明に係る装置及び本発明に係る方法は、特に安全関連サ
ブ回路網の信頼性の高い給電が行われるという利点を有している。本発明によれば、少なくとも一つの第1のスイッチング手段と少なくとも一つの第2のスイッチング手段とが設けられており、それらを介して基準搭載電源回路網とサブ回路網とが直結可能となり、また、直流電圧コンバータを設けることにより、それを介してエネルギ蓄積器が場合によってはその電圧レベルに関して適合化されることによって、高い信頼性で安全関連負荷が確実に給電され得るようになる。好ましくは、このために複数の負荷が、異なった安全関連性を有する負荷グループに分けられる。本発明は、自動車の電力供給のために使用することができる。さらに、電気的な負荷がより高い信頼性で給電されなければならない他の技術分野への使用も可能である。さらに本発明は、例えば二重層キャパシタのような異なる電圧レベルを有する電気的蓄積器が搭載電源回路網の内部で動作できるように考慮する。その他にも本発明に係る装置及び本発明に係る方法は、安全関連でかつ電圧に敏感な負荷が電圧低下によってその機能を損なうことを阻止する。本発明に係る装置及び本発明に係る方法はその上さらに、特にデュアルチャネル式の電力供給が、冗長的な安全関連負荷のために可能になることによって優れている。また、故障許容的な給電を、単に存在しているだけの安全関連負荷のために行うことも可能である。エラー発生時の電気的な負荷の構成可能性も可能である。
【0005】
この配置構成は、高い融通性によって優れており、あらゆる異なる動作状態が最適化できる。そのため負荷又は負荷グループは、エラー発生時には切り離し可能である。さらに、搭載電源回路網の異なる電気的エネルギ蓄積器を、電気的分離を介して動作させることも可能である。その他にも、電圧中断の補償を電圧に敏感な負荷において行うことが可能である。それ以外にも高い電流動特性を有する高圧負荷の動作時に、搭載電源回路網の支援が保証される。この装置の拡張性のあるモジュール構造は、コスト削減にも寄与している。さらに、この装置は、特に車両においてオプション装備として実現され得る。
【0006】
好ましい改善形態によれば、この装置の異なる動作モードが可能である。それにより、さらなる付加的機能が作成される。そのため、この装置は、例えば適切な駆動制御のもとで、エネルギ蓄積器、例えば二重層キャパシタの蓄積器管理を担うことが可能である。このエネルギ蓄積器は、この装置を用いることによって、ジェネレータ電圧、又は、基準搭載電源回路網のエネルギ蓄積器の電圧に依存することなく充放電可能である。
【0007】
好ましい改善形態によれば、相応の駆動制御によって、基準搭載電源回路網のみ若しくはサブ回路網のみが、又は、それにもかかわらず総ての車載電源回路網が、例えば始動過程中の電圧中断を阻止するために支援され得ることが保証される。
【0008】
好ましい改善形態によれば、基準搭載電源回路網からの安全関連サブ回路網の切り離しが行われ、エネルギ蓄積器からの給電が保証される。このことは、エラー発生時の安全性を高める。
【0009】
好ましい改善形態によれば、相応の駆動制御の際に、サブ回路網の切り離しと、エネルギ蓄積器からの基準搭載電源回路網の支援とが行われ得る。このことは特に、負荷において短絡が発生したときに必要になり得る。
【0010】
好ましい改善形態によれば、エネルギ蓄積器が、安全関連サブ回路網から切り離され、基準搭載電源回路網からの安全関連サブ回路網の給電が、直接の電気的結合を介して行われ得る。これにより、配置構成の安全性がさらに高まる。
【0011】
好ましい改善形態によれば、基準搭載電源回路網からの安全関連サブ回路網の給電が、電圧適合化のための直流電圧コンバータを介して行われ得る。それにより臨界電圧に係る負荷が特に適切な方法で考慮される。
【0012】
好ましい改善形態によれば、総ての搭載電源回路網が、直流電圧コンバータの利用なしでエネルギ蓄積器から支援される。このことも、搭載電源回路網全体の稼働率の向上に寄与する。
【0013】
さらなる好ましい改善形態は、さらなる従属請求項及び以下の説明から明らかとなる。
【0014】
基準搭載電源回路網を安全関連サブ回路網に接続する本発明に係る装置の実施形態は、図面に示され、以下の明細書で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】多機能モジュールにより、安全関連サブ回路網と対応する負荷の駆動制御部とに接続されている基準搭載電源回路網の例示的構成のブロック回路図。
【
図2】エネルギ蓄積器が充電され、サブ回路網が基準搭載電源回路網に直結されている状態の多機能モジュール。
【
図3】基準搭載電源回路網とサブ回路網とがエネルギ蓄積器から支援されている状態の多機能モジュール。
【
図4】サブ回路網の給電がエネルギ蓄積器からのみ保証されている状態の多機能モジュール。
【
図5】サブ回路網が切り離され、基準搭載電源回路網がエネルギ蓄積器によって支援されている状態の多機能モジュール。
【
図6】サブ回路網が切り離され、エネルギ蓄積器が基準搭載電源回路網から充電されている状態の多機能モジュール。
【
図7】サブ回路網が基準搭載電源回路網からのみ支援されている状態の多機能モジュール。
【
図8】基準搭載電源回路網がエネルギ蓄積器によって直接支援されている状態の多機能モジュール。
【
図9】基準搭載電源回路網とサブ回路網とがエネルギ蓄積器によって直接支援されている状態の多機能モジュール。
【
図10】サブ回路網が基準搭載電源回路網からのみ支援されている状態の多機能モジュール。
【
図11】基準搭載電源回路網が高圧搭載電源回路網に連結している
図1によるトポロジーの代替的構成のブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
基準搭載電源回路網10は、少なくとも一つのスタータ12、少なくとも一つのジェネレータ14、少なくとも一つのエネルギ蓄積器16、及び、例示的な意味での少なくとも一つの負荷18を含んでいる。この負荷18は、いわゆる快適性のための負荷として構成されている。スタータ12、ジェネレータ14、エネルギ蓄積器16及び負荷18は、それぞれ相互に並列な状態でアース接続されている。これらの構成要素は、例えば自動車において14Vのもとで動作する基準搭載電源回路網10の構成部材である。安全関連負荷22,24は、安全関連サブ回路網20において、以下で説明するような適切な方法で次のように接続される。即ち、エラー発生時においても高い信頼性でエネルギ供給が安全関連負荷22,24のために行われるように接続される。安全関連サブ回路網20は、第1の安全関連サブ回路網20aに分割可能である。この第1の安全関連サブ回路網20aは、多機能モジュール30から第2のパス23を介して給電され、スイッチング手段26を介して基準搭載電源回路網10から切り離し可能である。この
第1の安全関連サブ回路網
20aのさらなる構成部材としての第2の安全関連サブ回路網20bは、第1のパス21を介して基準搭載電源回路網10に直接接続されている。特に重要な負荷22は、冗長的に設計されている。これらの冗長的な負荷22a,22bは、それぞれアース接続されている。一方の冗長的な負荷22bは、第1のパス21を介して基準搭載電源回路網10から直接給電されており、第2の安全関連サブ回路網20bの構成部材である。安全関連サブ回路網20の構成部材としての他方の冗長的な負荷22aは、多機能モジュール30を介して給電される。多機能モジュール30は、接続パス11を介して基準搭載電源回路網10に接続されている。第1の安全関連サブ回路網20aは、第2のパス23を介して多機能モジュール30に接続されている。さらに故障許容的に給電すべき負荷24がサブ回路網20内に設けられているが、しかしながら、これは非冗長的に設計されている。スイッチング手段26,28の適切な配置構成は、次のことを保証している。即ち、故障許容的に給電すべき負荷24も、第1の冗長的な負荷22aも、基準搭載電源回路網10を介してでも、多機能モジュール30によってでも、給電され得ることを保証している。このために、スイッチング手段28は、故障許容的に給電すべき負荷24を、多機能モジュール30の出力側に接続させることが可能である。別のスイッチング手段26は、第1のパス21と、スイッチング手段28及び故障許容的に給電すべき負荷24の共通の電位との間に配置されている。多機能モジュール30の一つの端子は、接続パス11を介して基準搭載電源回路網10の電位に、即ち、例えば14Vの電位におかれている。多機能モジュール30内には、直流電圧コンバータ
32が配置されている。この直流電圧コンバータ32は、好ましくは3ウエイ直流電圧コンバータとして構成されている。第3の出力側は、さらなるエネルギ蓄積器40に接続されている。このエネルギ蓄積器40は、アース接続されている。エネルギ蓄積器40として、例えば二重層キャパシタ又は適切な電圧比を備えたバッテリが使用される。
【0017】
図2には、多機能モジュール30の構造が詳細に示されている。多機能モジュール30内には第1のスイッチング手段34と第2のスイッチング手段36とが設けられており、これらは直列に接続されている。第1のスイッチング手段34と第2のスイッチング手段36との間には直流電圧コンバータ32の一つの端子33が接触している。直流電圧コンバータ32のさらなる端子35は、第4のスイッチング手段39を介してエネルギ蓄積器40と接続可能である。第1のスイッチング手段34は、接続パス11を介して直流電圧コンバータ32と基準搭載電源回路網10との間の接続路を形成し得る。第2のスイッチング手段36は、第2のパス23を介して、直流電圧コンバータ32とサブ回路網20との間の接続路を形成し得る。さらに第3のスイッチング手段38が、多機能モジュール30の基準搭載電源回路網側の入力側、詳細には第1の接続パス11と、直流電圧コンバータ32のさらなる端子35との間に設けられている。
【0018】
図2による実施形態は、エネルギ蓄積器40が充電される状態を示している。この目的のために、第1のスイッチング手段34と第4のスイッチング手段39とが閉じられる。対応する矢印を介して示されているエネルギ流42は、基準搭載電源回路網10がエネルギを直流電圧コンバータ32を介してエネルギ蓄積器40内に供給することを象徴的に表すものである。直流電圧コンバータ32は、基準搭載電源回路網10若しくはエネルギ蓄積器40において求められた電流及び/又は電圧値に応じて選択された充電戦略に従って、エネルギ蓄積器40を所望の電圧レベルまで導くことができる状態にある。エネルギ蓄積器40は、多機能モジュール30を用いてジェネレータ電圧又は基準搭載電源回路網10のエネルギ蓄積器16における電圧に依存せずに充放電可能である。このことは、直流電圧コンバータ32の適切な利用によって保証される。というのもエネルギ蓄積器40における電圧は、充電に応じて基準搭載電源回路網10に対して大きく異なり得るからである。その他に、
図2に示されているスイッチング手段34,36,38,39の駆動制御において、安全関連負荷22a,24を含んだ第1のサブ回路網20aは、基準搭載電源回路網10と直結される。それにより、基準搭載電源回路網10から第1のスイッチング手段34、第2のスイッチング手段36を介して第1のサブ回路網20a内へのエネルギ流42も発生する。
【0019】
図3では、ここにおいて
図2とは逆の動作が見て取れる。そこでも総てのスイッチング手段34,36,39は、第3のスイッチング手段38を除いて閉じられる。しかしながら、ここでは、直流電圧コンバータ32は、エネルギ蓄積器40からのエネルギ流42を、接続パス11を介して基準搭載電源回路網10内へも、第2のパス23を介してサブ回路網20a内へも制御している。それにより、エネルギ蓄積器40は、二つの回路網10,20aを支援している。このことは、例えば次のような場合に起こり得る。即ち、内燃機関の始動過程によって、電圧が短期間だけ例えば9Vまで導かれ、しかしながら、安全関連負荷22,24は、この電圧低下によって例えば緊急のリセットによるような巻き添えになることが許されないような場合である。別のシナリオとしては、電動ステアリング、電子制御式姿勢安定化プログラム又は電子制御式ブレーキ倍力装置の同時的介入制御があり、これらも短期間だけ非常に高い電流動特性を引き起こす可能性がある。
【0020】
図4による駆動制御では、第1のスイッチング手段34と第3のスイッチング手段38とが、ここでは開かれている。第2のスイッチング手段36及び第4のスイッチング手段39は、閉じられている。この動作モードでは、第2のパス23を介して第1のサブ回路網20aは、エネルギ蓄積器40からのみ給電される。この目的のために直流電圧コンバータ32は、電圧比を次のように設定調整する。即ち、エネルギ蓄積器40からのエネルギ流42が、直流電圧コンバータ32と閉じられた第2のスイッチング手段36とを介してサブ回路網20内へのみ起こるように設定調整する。ここでのエネルギ蓄積器40の役割は、例えば基準搭載電源回路網10に故障又は誤機能が発生した場合に、安全関連負荷22a,24を備えた第1のサブ回路網20aを、直流電圧コンバータ32を介して給電することにある。
【0021】
図5による実施形態では、例えば第1のサブ回路網20a内の負荷22a,24において短絡が発生した場合における、第1のサブ回路網20aが切り離されなければならないケースが示されている。この目的のために、第2のスイッチング手段36と第3のスイッチング手段38とが開かれる。エネルギ蓄積器40は、直流電圧コンバータ32を介して基準搭載電源回路網10を支援し、あるいはこれは、例えばジェネレータ14及び/又はエネルギ蓄積器16の故障の際にも給電され得る。この目的のために、
図1のスイッチング手段26も閉じられ、さらにスイッチング手段28は、第1のサブ回路網20a又は第2のパス23の完全な切り離しを達成するために開かれる。
【0022】
図6による実施形態では、第1のスイッチング手段34と第4のスイッチング手段39とが閉じられている。第2のスイッチング手段36と第3のスイッチング手段38は開かれている。この状態において、第2のパス23は再び切り離される。エネルギ蓄積器40は、基準搭載電源回路網10から接続パス11、第1のスイッチング手段34、直流電圧コンバータ32及び第4のスイッチング手段39を介して充電される。
【0023】
図7による実施形態では、第1のスイッチング手段34と第4のスイッチング手段39とが開かれている。第2のスイッチング手段36と第3のスイッチング手段38とは閉じられている。多機能モジュール30の駆動制御において、第2のパス23は、基準搭載電源回路網10からのみ支援される。このことは特に次のようなケースに対して有利である。即ち、基準搭載電源回路網10において、低電圧が存在し、エネルギ蓄積器40は放電されているが、しかしながら、第2のパス23又は安全関連負荷22a,24を備えた第1のサブ回路網20aには、定格電圧が供給されなければならないようなケースである。それにより、対応するエネルギ流42が、基準搭載電源回路網10から第3のスイッチング手段38及び直流電圧コンバータ32並びに第2のスイッチング手段36を介して第2のパス23内へ流れる。
【0024】
図8による多機能モジュール30の駆動制御では、基準搭載電源回路網10は、接続パス11を介してエネルギ蓄積器40によって直接支援される。この目的のために、第3のスイッチング手段38と第4のスイッチング手段39とは閉じられている。第1のスイッチング手段34と第2のスイッチング手段36とは開かれている。第2のパス23は、多機能モジュール30から切り離されている。それにより、基準搭載電源回路網10は、直流電圧コンバータ32を介在的に切り換えることなしにエネルギ蓄積器40と直接接続される。この駆動制御は、エネルギ蓄積器40の電圧が基準搭載電源回路網10の範囲内にあり、かつ、上述したような電圧低下を阻止するために好ましくはエネルギ蓄積器40がバッファリング可能な短期間の電流ピークが推定される場合に考えられ得る。
【0025】
図9による多機能モジュール30の駆動制御の場合には、ここにおいて基準搭載電源回路網10もサブ回路網20も、エネルギ蓄積器40によって直接支援され得る。この目的のために、総てのスイッチング手段34,36,38,39は閉じられている。いずれにせよ直流電圧コンバータ32が受動的に切り替わると、それにより直流電圧コンバータ32を介してエネルギ流42は全く発生しない。このスイッチング位置も、エネルギ蓄積器40の電圧が基準搭載電源回路網10の範囲内にあり、かつ、電圧低下を阻止するためにエネルギ蓄積器40がバッファリング可能な短期間の電流ピークが推定される場合に考えられ得る。
【0026】
図10による多機能モジュール30の駆動制御の場合には、第1のサブ回路網20a又は第2のパス23が、基準搭載電源回路網10からのみ支援される。この目的のために、第1のスイッチング手段34と第2のスイッチング手段36とが閉じられている。第3のスイッチング手段38と第4のスイッチング手段39とは開かれている。それにより、基準搭載電源回路網10は、サブ回路網20の方向にエネルギ流42を供給する。即ち、サブ回路網20は、基準搭載電源回路網10と電気的に直結され、多機能モジュール30又は対応する直流電圧コンバータ32は切り離されている。この目的のために、直流電圧コンバータ32は非活性化状態に切り替わり、それによって直流電圧コンバータ32を介したエネルギ流42は全く発生しない。
【0027】
図11による実施形態では、基準搭載電源回路網10よりも高められた電圧レベル、例えば48Vの電圧レベルを有している高圧搭載電源回路網50によって
図1が補完されている。この高圧搭載電源回路網50は、高圧エネルギ蓄積器52と、例示的に示されている例えばヒータや空調装置等のような高圧負荷
54とを有している。その他にこの高圧搭載電源回路網50は、電気機械56(例えば、電気自動車・ハイブリッド車両用の、又は、いわゆるブースト回生システム(BRS)の一部としての回生支援及び駆動支援を行う電気モータ)を含んでいてもよい。この高圧搭載電源回路網50は、さらなる直流電圧コンバータ58を介して基準搭載電源回路網10と接続可能である。それにより、この高圧搭載電源回路網50も、接続パス11を介して多機能モジュール30又は第2のパス23に給電可能である。しかしながら、多機能モジュール30の動作モードにおいては、原則的に変更されない。
【0028】
一例として、例えば14Vの基準搭載電源回路網10の装置が開示されてきたが、代替的に、ジェネレータ14を、モータとしての動作も発電機としての動作も可能な電気機械によって置き換えることも可能である。その上さらに、基準搭載電源回路網10において、別の電圧レベルを有し、又は、別の構造も有しているその他の構成要素が設けられてもよい。サブ回路網20は、好ましくは、
基準搭載電源回路網10と同じ電圧レベルで動作する。この場合、重要なことは、上述してきた様々なエラー状況の下であっても、安全関連構成部品22,24の信頼性の高い給電が保証されることである。それについては、上記の多機能モジュール30の構造のもとで、搭載電源回路網の品質を向上させる一連の動作状態が可能であることが示されてきた。そして、いずれのケースにおいても、安全関連負荷22,24の信頼性の高い給電が保証可能である。
【0029】
前述の装置によれば、電気的な安全関連負荷22,24への給電のための拡張性のあるモジュール式の搭載電源回路網−位相幾何学を実現することが可能である。
【0030】
複数の負荷は、異なる安全関連性を有する負荷グループに分けられる(冗長的な負荷22a,22b;故障許容的に給電すべき負荷24を参照。但し、これらは冗長的に実施されていない)。安全関連サブ回路網20は、第1のサブ回路網20aからなっており、この第1のサブ回路網20aは、少なくともスイッチング手段26と多機能モジュール30とを介して基準搭載電源回路網10から切り離し可能である。さらに、安全関連サブ回路網20は、第2のサブ回路網20bからなり、この第2のサブ回路網20bは、第1のパス21を介して常時第1の基準搭載電源回路網10と結合されている。この第2のサブ回路網20bには、好ましくは冗長的に設計された安全関連負荷22bが含まれている。
【0031】
好ましくは、この装置は、自動車分野において使用することができる。さらに、電気的な負荷が高い信頼性で給電されなければならないその他の技術分野での使用も可能である。その他にこの装置は、異なる電圧レベルを有する電気的蓄積器16,40が、特に二重層キャパシタの場合に、搭載電源回路網の内部で動作できるように考慮する。その他にも、安全関連でかつ電圧に敏感な負荷が電圧低下によってその機能を損なうことが阻止される。その他に前述の位相幾何学は、冗長的な安全関連負荷22,24のデュアルチャネル式の電力供給を保証する。同様に、単に存在しているだけの安全関連負荷24のための故障許容的な給電も可能である。電力供給は、エラー発生時において柔軟に設定変更可能である。その他に負荷22,24又は負荷グループは、エラー発生時に切り離し可能である。搭載電源回路網内での様々な電気的エネルギ蓄積器16,40の動作は、直流電圧コンバータ32を用いた電気的分離を介して行うことが可能である。その他に電圧低下を、電圧に敏感な負荷のために柔軟に補償することが可能である。さらに搭載電源回路網の支援が、高い電流動特性を有している高圧負荷の動作の際に保証される。
【0032】
前述したスイッチング手段26,28,34,36,38,39は、例えば、半導体スイッチ又は従来のリレーであってもよい。特に好ましくは、既に直流電圧コンバータ32の構成部品である対応するスイッチング素子も、基準搭載電源回路網10及び/又はサブ回路網20及び/又はエネルギ蓄積器40の結合を行うために、対応する相互接続のもとで使用され得る。それにより、多機能モジュール30の電子部品の数を全体で低減させることが可能である。図示した
図2乃至
図10は、特に多機能モジュール30の異なる機能を説明するために用いられる。
【0033】
エネルギ蓄積器16は、例えば基準搭載電源回路網10の通常の構成部品であるような従来の鉛蓄電池である。それに対して、エネルギ蓄積器40の特徴は、電圧低下又は電圧ピークが補償できるように選択することが可能である。しかしながら、フォアグラウンドでのサ
ブ回路網20の信頼性の高い給電は、エネルギ蓄積器40によっても成立する。このエネルギ蓄積器40として、好ましくは、二重層キャパシタ(DLC)又はリチウムイオン電池の使用が可能であろう。
【0034】
前述した装置は、特に自動車の車載電源回路網への使用に適しているが、しかしながら、この装置は、この分野に限定されるものではない。