【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、今回、DMR1が、ホモセリンキナーゼ(HSK)をコードする遺伝子であることが見出された。シロイヌナズナ属について、5つの異なる変異型のdmr1対立遺伝子が配列決定されており、それぞれがHSKタンパク質における異なるアミノ酸変化をもたらしている。HSKは、アミノ酸のメチオニン、トレオニンおよびイソロイシンの生合成における重要な酵素であり、従って、必須であると考えられる。これらの様々なdmr1変異体は、植物にホモセリンを蓄積させるHSKにおける異常を示す。これら5つの異なる対立遺伝子は、変異体におけるホモセリン蓄積の異なるレベルに相関する異なるレベルの抵抗性を示す。
【0012】
従って、本発明は、ウイルス起源、細菌起源、真菌起源または卵菌起源の病原体に対して抵抗性である植物であって、上記病原体に対して抵抗性でない植物と比較した場合、変化したホモセリンレベルを有することを特徴とする植物を提供する。
【0013】
この形態の抵抗性は、具体的には、卵菌門の病原体に対して、例えば、シロサビキン属、アファノミセス属、バシジオホラ属、ブレミア属、ヒアロペロノスポラ属、パキメトラ属、パラペロノスポラ属、ペロファシア属、ペロノフィトラ属、ツユカビ属、ペロノスクレロスポラ属、フィチウム属、フィトフトラ属、タンジクツユカビ属、プロトブレミア属、ニセツユカビ属、ササラビョウキン属、ビエンノチア属の種に対して効果的である。
【0014】
この抵抗性は、植物におけるホモセリンの変化したレベルに基づく。より具体的には、この抵抗性は、植物におけるホモセリンのレベルの増大に基づく。そのようなレベルの増大は様々な方法で達成することができる。
【0015】
第1に、ホモセリンを外部からの供給源によって与えることができる。第2に、内因性ホモセリンのレベルを増大させることができる。これはホモセリンキナーゼ遺伝子の酵素活性を低下させることによって達成することができ、このことはホモセリンのより低い転換をもたらし、従って、その蓄積をもたらする。あるいは、ホモセリンキナーゼ酵素の発現を低下させることができる。これもまた、ホモセリンのより低い転換をもたらし、従っ
て、その蓄積をもたらす。内因性ホモセリンのレベルを増大させるための別の方法は、アスパラギン酸経路を介するその生合成を増大させることによるものである。ホモセリンキナーゼ遺伝子の発現を低下させることは基本的には、例えば、遺伝子サイレンシングなどにより直接的であるか、または、その調節配列を改変することにより、もしくは、遺伝子の抑制を刺激することにより間接的であるかのいずれかであっても、様々な方法で達成することができる。
【0016】
HSK遺伝子を、その活性または発現を低下させるために調節することを、様々なレベルで達成することができる。第1に、内因性遺伝子を直接的に変異させることができる。これは変異誘発処理によって達成することができる。あるいは、改変されたHSK遺伝子を、遺伝子組換え技術の手段によって、もしくは、遺伝子移入によって植物に持ち込むことができ、または、HSKの発現を、例えば、調節配列を改変することによって、もしくは、遺伝子サイレンシングによって調節レベルで低下させることができる。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、植物におけるホモセリンレベルでの増大(蓄積)が、ホモセリンを植物に投与することによって達成される。これは、植物をL−ホモセリンにより処理することによって、例えば、ホモセリン溶液を用いた噴霧または浸透によって好適に行われる。
【0018】
外因性ホモセリンによる植物の処理が国際特許出願公開WO00/70016から知られている。この公開公報は、ホモセリンがどのように植物に適用され、それにより、植物でのフェノール濃度の増大を生じさせるかを開示する。この公開公報は、そのように処理された植物が様々な病原体に対して抵抗性であることを示していない。実際、国際特許出願公開WO00/70016には、内因性ホモセリンの増大が病原体抵抗性をもたらすことは開示も、示唆もされていない。
【0019】
あるいは、内因性ホモセリンは、植物のアミノ酸生合成経路またはアミノ酸代謝経路を調節することによって増大させられる。
【0020】
1つの実施形態において、内因性の産生の増大は、内因性HSK遺伝子発現の低下の結果であり、従って、これにより、ホスホ−ホモセリンへのホモセリンのあまり効率的でない変換、そして、メチオニンおよびトレオニンのその後の生合成がもたらされる。このHSKの発現の低下は、例えば、mRNA安定性またはタンパク質安定性の低下をもたらす、HSK遺伝子における変異の結果である。
【0021】
別の実施形態において、発現の低下を、例えば、遺伝子サイレンシングによって、または、HSK遺伝子の発現に影響を及ぼす調節配列における変異によって、転写レベルまたは翻訳レベルのいずれかでHSK遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることによって達成することができる。遺伝子サイレンシングを達成する方法の1例が、RNAiによるものである。
【0022】
さらなる実施形態において、内因性ホモセリンのレベルの増大を、変化をホモセリンの生合成または代謝において誘導することによって得ることができる。具体的な実施形態において、これは、酵素活性を低下させ、従って、これによりホスホ−ホモセリンへのホモセリンのより低い変換を生じさせるHSKタンパク質をもたらすHSKコード配列における変異によって達成される。別の実施形態が、植物におけるL−ホモセリンのより大きい産生、従って、植物におけるL−ホモセリンの蓄積を引き起こす、アスパラギン酸経路における遺伝子のアップレギュレーションである。
【0023】
本発明は、シロイヌナズナ属におけるアブラナべと病菌に対する抵抗性について行われ
た研究に基づいているが、より一般には、様々な植物において、具体的には、様々な病原体(例えば、卵菌門など)による感染に対して感受性である作物植物において適用することができる一般的な概念である。
【0024】
本発明は、卵菌によって引き起こされる非常に多数の植物の病気について好適であり、そのような卵菌は、例えば、レタスにおけるレタスべと病菌、ホウレンソウにおけるホウレンソウべと病菌、ウリ科のメンバー(例えば、キュウリ)におけるキュウリべと病菌、タマネギにおけるタマネギべと病菌、アブラナ科のメンバー(例えば、キャベツ)におけるアブラナべと病菌、ブドウにおけるブドウべと病菌、トマトおよびジャガイモにおける疫病菌)、ならびに、ダイズにおけるダイズ茎疫病菌であるが、これらに限定されない。
【0025】
これらの他の植物におけるホモセリンのレベルは、上記で記載されたすべての技術により増大させることができる。しかしながら、植物におけるHSK遺伝子発現の改変が、HSK遺伝子の遺伝子改変を介して、または、HSK遺伝子における変異の特定を介して達成されることになり、遺伝子が未だ知られていないときには、遺伝子を最初に特定しなければならない。病原体抵抗性の植物(具体的には、作物植物)を、HSK遺伝子の遺伝子改変を介して、または、HSK遺伝子における変異の特定を介して作製するためには、オルソログHSK遺伝子をこれらの植物種から単離しなければならない。オルソログは、同じ機能を有する、他の生物に由来する遺伝子またはタンパク質として定義される。
【0026】
様々な方法を他の植物におけるオルソログ配列の特定のために利用することができる。
HSKオルソログ配列を植物種において特定するための方法では、例えば、植物種のホモセリンキナーゼESTをデータベースにおいて特定すること;完全なホモセリンキナーゼの転写物またはcDNAを増幅するためのプライマーを設計すること;対応する完全な転写物またはcDNAを得るために、そのようなプライマーによる増幅実験を行うこと;および、転写物またはcDNAのヌクレオチド配列を決定することを含むことができる。
【0027】
完全な転写物またはcDNAを、コード配列の1部分のみが知られている状況で増幅するための好適な方法は、改良型PCR技術の5’RACE、3’RACE、TAIL−PCR、RLM−RACEおよびベクトレット(vectorette)PCRである。
【0028】
あるいは、ヌクレオチド配列が、目的とする植物について何ら得られないならば、プライマーが、多重ヌクレオチド配列アラインメントによって明らかにされるような保存されたドメインに基づいて、目的とする植物に対して近縁である植物種のHSK遺伝子に対して設計され、オルソログ配列をPCR増幅するために使用される。そのようなプライマーは好適には縮重プライマーである。
【0029】
与えられた配列を、HSKオルソログであるとして評価するための別の確実な方法が、レシプロカルベストヒットを特定することによるものである。与えられた植物種の候補オルソログHSK配列が、シロイヌナズナHSKタンパク質配列もしくはDNA配列または別の植物種のHSKタンパク質配列もしくはDNA配列を用いて、Blastプログラムを使用して検索したとき、DNAベータベースからの最も良く合致するものとして特定される。与えられた植物種の得られた候補オルソログヌクレオチド配列が、BlastX検索法を使用して(例えば、NCBIまたはTAIRにおける)DNAデータベースに存在するすべてのシロイヌナズナタンパク質に対する相同性について検索するために使用される。最も良く合致するものおよびスコアが、シロイヌナズナHSKタンパク質に対するものであるならば、その与えられたDNA配列は、オルソログまたはオルソログ配列であるとして記述することができる。
【0030】
HSKは、これらの植物種について公開されている完全なゲノム配列から推定されるよ
うに、シロイヌナズナ属およびイネでは1個だけの遺伝子によってコードされる。これまでに調べられたほとんどの他の植物種では、2つのHSKホモログが特定されているジャガイモ、タバコおよびポプラを除いて、HSKは、公開されているDNAデータベースからのmRNA配列およびESTデータの分析によって明らかにされるように、1個だけの遺伝子によってコードされるようである。オルソログの遺伝子およびタンパク質が、公開されているデータベースに存在する情報とのヌクレオチド比較およびアミノ酸比較によってこれらの植物において特定される。
【0031】
あるいは、DNA配列が、所望される植物種について何ら得られないならば、オルソログ配列が、シロイヌナズナ属もしくは他の植物のHSK遺伝子のDNAプローブを使用する異種ハイブリダイゼーションによって、または、プライマーを定義するためにHSKコード配列における保存されたドメインを使用するPCR法によって単離される。多くの作物種については、プライマーを設計して、その後で、DNA配列分析のための完全なmRNA配列またはゲノム配列を後でPCR増幅するために使用することができる部分的なHSK mRNA配列を得ることができる。
【0032】
具体的な実施形態において、オルソログは、そのコードされたタンパク質がシロイヌナズナHSK遺伝子との少なくとも50%の同一性を示す遺伝子、または、他の植物HSKタンパク質の遺伝子である。より具体的な実施形態において、相同性は少なくとも55%であり、より具体的には少なくとも60%であり、一層より具体的には少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%である。
【0033】
図1は、公開されているデータベースにおいて特定されているオルソログHSK配列、ならびに、cDNAに対するPCR増幅およびその後の配列決定によって得られているオルソログHSK配列を示す。
【0034】
オルソログHSK配列が特定された後、遺伝子の調節配列およびコード配列の完全なヌクレオチド配列が標準的な分子生物学的技術によって特定される。このために、植物種のゲノムライブラリーが、HSK遺伝子を含有するゲノムクローンを特定するために、知られているホモセリンキナーゼ遺伝子に由来するプローブもしくはプライマー(例えば、上記で記載されるプローブおよびプライマーなど)によるDNAハイブリダイゼーションまたはPCRによってスクリーニングされる。あるいは、改良されたPCR方法(例えば、RNAリガーゼ媒介RACE(RLM−RACE)など)を、遺伝子配列およびcDNA配列をゲノムDNAまたは逆転写されたmRNAから直接に増幅するために使用することができる。続いて、DNA配列決定により、完全な遺伝子配列またはコード配列の特徴づけがもたらされる。
【0035】
遺伝子のDNA配列が知られると、この情報は、ホモセリンキナーゼ遺伝子の発現を上記で記載された方法のいずれかで調節するための手段を調製するために使用される。
【0036】
より具体的には、低下したHSK活性を達成するために、HSK遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができ、または、HSKタンパク質の酵素活性を、HSKコード配列におけるヌクレオチド変化から生じるアミノ酸置換によって低下させることができる。
【0037】
本発明の具体的な実施形態において、HSK遺伝子発現のダウンレギュレーションが、RNAiを使用する遺伝子サイレンシングによって達成される。このために、HSKアンチセンス構築物、最適化されたミクロRNA構築物、逆向き反復構築物、または、組み合わされたセンス−アンチセンス構築物を発現し、その結果、遺伝子サイレンシングをもた
らす、HSKに対応するdsRNAを生じさせる遺伝子組換え植物が作製される。
【0038】
代わりの実施形態において、HSK遺伝子の1つまたは複数の調節因子がRNAiによって(転写活性化因子の場合には)ダウンレギュレーションされる。
【0039】
別の実施形態において、調節因子が、遺伝子組換えによる過剰発現によって(リプレッサータンパク質の場合には)アップレギュレーションされる。過剰発現が、HSK遺伝子のリプレッサータンパク質を強いプロモーター(例えば、植物バイオテクノロジーにおいて一般に使用される35Sプロモーター)から発現させることによって特定の実施形態において達成される。
【0040】
HSK遺伝子のダウンレギュレーションはまた、プロモーター領域、ターミネーター領域または可能性のあるイントロンにおける調節エレメントの変異誘発によって達成することができる。HSKコード配列における変異は多くの場合、コードされたHSK酵素の発現または活性に負の影響を及ぼすアミノ酸置換または早すぎる停止コドンをもたらす。
【0041】
HSKの発現に影響を及ぼすこれらの変異および他の変異が、変異誘発性の化学試薬(例えば、エチルメタンスルホナート(EMS)など)を使用することによって、植物材料をガンマ線もしくは高速中性子により照射することによって、または、他の手段によって植物において誘導される。生じたヌクレオチド変化はランダムであるが、変異誘発された植物の大規模集団では、HSK遺伝子における変異を、TILLING(ゲノムにおける誘導された局所的損傷を標的化する)方法を使用することによって容易に特定することができる(McCallum他(2001)、誘導された変異についての標的化されたスクリーニング、Nat.Biotechnol.、18、455〜457;および、Henikoff他(2004)、TILLING.従来の変異誘発は機能的ゲノミクスを満たす、Plant Physiol.、135、630〜636)。この方法の原理は、目的とする遺伝子をM2世代における変異誘発された植物の大規模な集団のゲノムDNAからPCR増幅することに基づく。DNA配列決定によって、または、1本鎖特異的ヌクレアーゼ(例えば、CEL−Iヌクレアーゼなど)を使用して点変異を探すことによって(Till他(2004)、1本鎖特異的ヌクレアーゼによるミスマッチ切断、Nucleic Acids Res.、32、2632〜2641)、目的とする遺伝子において変異を有する個々の植物が特定される。
【0042】
多くの植物をスクリーニングすることによって、それぞれが遺伝子発現または酵素活性に対する異なる影響を与える変異型対立遺伝子の大規模な集団が得られる。遺伝子発現または酵素活性を、HSK転写物レベルの(例えば、RT−PCRによる)分析、抗体を用いたHSKタンパク質レベルの定量化、または、HSK活性の低下の結果としてのホモセリンの蓄積を測定するアミノ酸分析によって調べることができる。これらの方法は当業者には知られている。
【0043】
当業者は、ホモセリンの蓄積が、病原体抵抗性を誘導するために十分であるかを調べるために、通常の病原体試験を使用することができる。
【0044】
所望されるHSK活性またはHSK発現の低下を有する植物が、その後、所望される新しい対立遺伝子のみを、欲しい作物のバックグラウンドに移すために、戻し交配されるか、または、他の育種用系統に対して交配される。
【0045】
本発明はさらに、酵素活性の低下を有するHSKタンパク質をコードする変異HSK遺伝子に関連する。具体的な実施形態において、本発明は、dmr1対立遺伝子のdmr1−1、dmr1−2、dmr1−3、dmr1−4およびdmr1−5に関連する。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、
図10〜
図14に示されるような、レタス、ブドウ、キュウリ、ホウレンソウおよびトマトのHSK遺伝子の変異した形態に関連する。
【0047】
本発明では、ホモセリンのレベルが増大を有する植物が、病原体(具体的には、卵菌起源の病原体)に対する抵抗性を示すことが明らかにされる。この知識により、当業者は、HSK遺伝子を変異誘発または遺伝子組換え法によって積極的に改変することができ、しかし、同様に、これまでに知られていない天然の変異体を、ホモセリンを蓄積する特定の植物種、または、ホモセリンにおける増大をもたらすHSK遺伝子の変異体を有する特定の植物種において特定して、これらの天然の変異体を本発明に従って使用することができる。
【0048】
本出願明細書において、用語「ホモセリンキナーゼ」および用語「HSK」は交換可能に使用される。
【0049】
本発明は、本発明を限定することがいかなる点でも意図されない下記の実施例において例示される。実施例では、下記の図面が参照される。
【0050】
図1は、CLUSTAL W(1.82)多重配列アラインメントプログラム(EBI)を使用する、シロイヌナズナのHSKタンパク質、ならびに、オレンジ(Citrus
sinensis)、ポプラ(Populus trichocarpa)(1)、ポプラ(2)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)(2)、ブドウ、レタス、ジャガイモ(1)、トマト、タバコ(Nicotiana benthamiana)、アサガオ(Impoea nil)、ダイズ、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、キュウリ、ホウレンソウ、テーダマツ(Pinus taeda)、トウモロコシ(Zea mays)およびイネ(Oryza sativa)に由来するオルソログのアミノ酸配列のアラインメントを示す。配列の下には、保存されたアミノ酸配列が点によって示され、同一のアミノ酸が星印によって示される。中塗り三角および対応するテキストは、5つのシロイヌナズナdmr変異体において置換されるアミノ酸を示す。
【0051】
表2は、シロイヌナズナHSK mRNA、および、他の植物種に由来するオルソログ配列のGenbankアクセション番号およびGenInfo識別子を示す。
【0052】
図2は、接種後7日での変異体(dmr1−1、dmr1−2、dmr1−3およびdmr1−4)および親系統(Ler eds1−2)に対する2つのアブラナべと病菌単離体(Cala2およびWaco9)による分生子柄形成の割合を示す。親系統において形成された分生子柄を100%に設定した。
【0053】
図3は、DMR1のクローニングにおける3つの主要な工程のグラフィック概略図である。a)dmr1の最初のマッピングにより、遺伝子座の位置が、第2染色体の下側アームにおいて、7.42Mbの位置と、7.56Mbの位置との間に決定された。3つの挿入/欠失(INDEL)マーカーを設計した(F6P23、T23A1およびF5J6のマーカーの位置が黒線によって示される)。これらのマーカーを使用して、組換え体を数百個の分離したF2植物およびF3植物から特定した。集められた組換え体において中断点を特定するためのこれらのINDELマーカーおよびさらなるマーカーのプライマー配列が表3に示される。b)1つのマーカー(At2g17270)(灰色の線によって示される)が抵抗性との最も強い連鎖を示した。dmr1遺伝子座はさらに、8個の遺伝子(at2g17250〜at2g17290)を含有する領域に範囲を定めることができた。これら8個の遺伝子を、表4に記載されるプライマーを使用して、コード配列におけ
る変異を探すために増幅および配列決定した。8個すべての候補遺伝子のDNA配列分析により、5個すべてのdmr1変異体において、At2g17265における点変異の発見がもたらされた。c)それぞれのdmr1変異体は、ホモセリンキナーゼをコードするAt2g17265遺伝子において異なる場所に点変異を有する。
【0054】
図4は、HSKコード配列、ならびに、HSKコード配列における5つの異なるdmr1変異の位置およびヌクレオチド置換の概略図である(中塗り三角によって示されるヌクレオチド位置は、1位で開始するATG開始コドンに対してである)。5’UTRおよび3’UTRが明るい灰色の四角によって示される。ヌクレオチド配列の下には、タンパク質配列が示される。HSKタンパク質は葉緑体標的化のための推定される輸送配列(暗い灰色部分)を含有する。5つのdmr1変異から生じるアミノ酸変化がHSKタンパク質におけるそのアミノ酸(aa)位置番号(中塗り三角)で示される。
【0055】
図5は、トレオニン、メチオニンおよびイソロイシンのアミノ酸の生合成のためのアスパラギン酸経路におけるホモセリンキナーゼ酵素の位置を示す。
【0056】
図6は、アブラナべと病菌の2つの異なる単離体(Waco9およびCala2)を接種した5日後のLer eds1−2の実生あたりの分生子柄の数を示す。接種された実生に、dH2O、D−ホモセリン(5mM)またはL−ホモセリン(5mM)を病原体接種後3日で浸透させた。L−ホモセリンにより処理された実生は分生子柄形成の完全な非存在を示し、従って、抵抗性である。
【0057】
図7は、トリパンブルー染色された実生の顕微鏡観察によって分析されたときの、水、D−ホモセリン(5mM)またはL−ホモセリン(5mM)により処理された実生におけるアブラナべと病菌の成長および発達を示す。a:Ler eds1−2の実生におけるHS処理の後での分生子柄形成(10倍の倍率)。分生子柄形成がL−ホモセリン浸透の後では何ら検出されなかった。これに対して、コントロールの植物はたくさんの胞子形成を示す。b:吸根の発達がL−ホモセリン(5mM)の浸透によって影響を受け(40倍の倍率)、しかし、水またはD−ホモセリンにより処理された植物では影響を受けない。
【0058】
図8は、シロイヌナズナのホモセリンキナーゼ遺伝子のヌクレオチド配列(At2g17265、NM_127281、GI:18398362)を示す。
【0059】
図9は、シロイヌナズナのホモセリンキナーゼタンパク質のアミノ酸配列(At2g17265、NM_179318、GI:15227800)を示す。
【0060】
図10は、レタスのホモセリンキナーゼのコード配列(CDS)およびタンパク質のヌクレオチド配列および予想アミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0061】
図11は、ブドウのホモセリンキナーゼのコード配列(CDS)およびタンパク質のヌクレオチド配列および予想アミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0062】
図12は、キュウリのホモセリンキナーゼのコード配列(CDS)およびタンパク質のヌクレオチド配列および予想アミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0063】
図13は、ホウレンソウのホモセリンキナーゼのコード配列(CDS)およびタンパク質のヌクレオチド配列および予想アミノ酸配列をそれぞれ示す。
【0064】
図14は、トマトのホモセリンキナーゼのコード配列(CDS)およびタンパク質のヌクレオチド配列および予想アミノ酸配列をそれぞれ示す。