(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂肪酸(A)が、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸からなる群から選ばれる2種以上の飽和脂肪酸並びにオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸からなる群から選ばれる2種以上の不飽和脂肪酸を含有する混合物であって、前記混合物の飽和脂肪酸含量が前記混合物の重量に基づいて1.0〜8.0重量%である請求項1又は2記載の燃料油用潤滑性向上剤。
共重合体(B)が、更に炭素数8〜20の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b3)を構成単量体とする共重合体である請求項1〜3のいずれか記載の燃料油用潤滑性向上剤。
共重合体(B)が、(B)の構成単量体として(B)の重量に基づいて、(b1)を10〜90重量%、(b2)を5〜50重量%及び(b3)を5〜85重量%含有する請求項4記載の燃料油用潤滑性向上剤。
(b2)が2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びアリルアルコールからなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれか記載の燃料油用潤滑性向上剤。
脂肪酸(A)と共重合体(B)との重量に対する脂肪酸(A)の重量の割合は60〜99重量%であり、共重合体(B)の重量の割合は1〜40重量%である請求項1〜6のいずれか記載の燃料油用潤滑性向上剤。
更に、曇点降下剤(C)、酸化防止剤(D)及び炭化水素系溶剤(E)からなる群から選ばれる1種以上を含有させてなる請求項1〜7のいずれか記載の燃料油用潤滑性向上剤。
示差走査熱量計による脂肪酸(A)の結晶化開始温度(ta)及び示差走査熱量計による曇点降下剤(C)の結晶化開始温度(tc)が下記(1)〜(3)を満たす請求項8記載の燃料油用潤滑性向上剤。
10℃ ≧ ta ≧ −20℃ (1)
20℃ ≧ tc ≧ −10℃ (2)
20℃ ≧ tc−ta ≧ −10℃ (3)
曇点降下剤(C)が、ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)であって、(C1)が、共重合体(B)を除く、炭素数1〜15のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(c)を構成単量体としてなる共重合体である請求項8又は9記載の燃料油用潤滑性向上剤。
請求項1〜12のいずれかに記載の燃料油用潤滑性向上剤と、硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油とを含む低硫黄燃料油組成物であって、燃料油用潤滑性向上剤を10〜1000ppm含有してなる低硫黄燃料油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における脂肪酸(A)としては、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸及び炭素数8〜22の飽和脂肪酸が挙げられる。
炭素数8〜22の不飽和脂肪酸としては、モノ不飽和モノカルボン酸(2−オクテン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸等)、ジ不飽和モノカルボン酸(ソルビン酸、リノール酸、トランス−2、シス−4−デカジエン酸、トランス−10、トランス−12−オクタデカジエン酸等)、トリ不飽和モノカルボン酸(ヒラゴ酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、ドコサトリエン酸、エイコサトリエン酸、等)、テトラ不飽和モノカルボン酸(モノクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、等)、及びペンタ不飽和モノカルボン酸(エイコサペンタエン酸、イワシ酸等)等が挙げられる。
これら不飽和脂肪酸のうち、潤滑性向上剤の曇点の観点から好ましくは、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸である。
炭素数8〜22の飽和脂肪酸としては、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸等が挙げられる。
これらの脂肪酸は単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0009】
脂肪酸(A)の溶解度パラメーター(以下、SP値と略記する)は、燃料に対する溶解性の観点から、好ましくは8.0〜9.6(cal/cm
3)
1/2であり、更に好ましくは8.5〜9.2(cal/cm
3)
1/2である。
なお、(A)のSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147〜154)に記載の方法で算出される値である。
脂肪酸(A)の分子量は、燃料油への溶解性の観点から好ましくは200〜350であり、更に好ましくは250〜300である。
なお、(A)の分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定する。
<分子量の測定条件>
装置 :「Alliance」[日本ウオーターズ(株)製]
カラム :「TSK gel Super H4000」1本
「TSK gel Super H3000」1本
「TSK gel Super H2000」1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
標準 :ポリスチレン
脂肪酸(A)の酸価(AV)は、好ましくは150〜250であり、更に好ましくは175〜225、特に好ましくは185〜215である。
脂肪酸(A)の酸価は日本基準油脂試験方法3.3.1で測定した値である。
脂肪酸(A)のヨウ素価は好ましくは60〜188であり、更に好ましくは100〜170である。
脂肪酸(A)のヨウ素価は日本基準油脂試験方法3.3.3で測定した値である。
脂肪酸(A)のSP値、分子量、酸価及びヨウ素価の範囲の値のすべてを満足する場合は、燃料に対する溶解性、金属表面への吸着力、抗乳化性、水の抱きこみ性、又は防錆性等において、更に優れた効果を発揮できるという観点で好ましい。
【0010】
SP値、分子量、AV及びヨウ素価の好ましい範囲を満たし、脂肪酸原料の入手性及び脂肪酸組成物の曇点が低くなるという観点から、脂肪酸(A)は、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群から選ばれる2種以上の飽和脂肪酸と、オレイン酸、リノール酸並びにリノレン酸からなる群から選ばれる2種以上の不飽和脂肪酸とを含有する混合物であり、脂肪酸(A)の飽和脂肪酸含量が脂肪酸混合物の重量に基づいて、好ましくは1.0〜8.0重量%、更に好ましくは、1.2〜5.0重量%であることが好ましい。
【0011】
本発明における共重合体(B)は下記一般式(1)で示される単量体(b1)及び水酸基含有ビニル単量体(b2)を必須構成単量体とする共重合体である。
【化1】
【0012】
単量体(b1)において、R
1は水素原子又はメチル基である。
R
2は炭素数16〜36の分岐アルキル基である。具体的には、炭素数16;2−メチルペンタデシル基、2−ヘキシルデシル基。炭素数17;2−メチルヘキサデシル基、炭素数18;2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−メチルへプタデシル基、炭素数19;2−メチルオクタデシル基、炭素数20;2−オクチルデシル基、炭素数24;2−デシルテトラデシル基、炭素数28;2−ドデシルヘキサデシル基、炭素数32;2−テトラデシルオクタデシル基、炭素数34;2−ヘキサデシルオクタデシル基、2−テトラデシルエイコシル基、炭素数36;2−ヘキサデシルエイコシル基などが挙げられる。
燃料油への溶解性と結晶性の関係から、これらのうち好ましくは、炭素数が18〜32の分岐アルキル基、特に好ましくは炭素数が20〜28の分岐アルキル基、最も好ましくは炭素数が20〜26分岐アルキル基である。
【0013】
Xは炭素数2〜4のアルキレン基であり、具体的にはエチレン基、1,2−及び1,3プロピレン基、1,2−、1,3−及び1,4−ブチレン基があげられる。
これらのうち好ましいものは、エチレン基及び1,2−プロピレン基である。
nが2以上の場合のXは同一でも異なっていてもよく、(XO)n部分はランダム付加でもブロック付加でもよい。
【0014】
nは平均が0〜10となる0又は1〜20の整数であり、好ましくは平均が0〜5となる0又は1〜10の整数、更に好ましくは平均が0〜2となる0又は1〜5の整数である。
【0015】
(b1)の具体例としては、2−ヘキシルデシルメタクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、モノエチレングリコールモノ−2−オクチルデシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−デシルテトラデシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ−2−デシルヘキサデシルエーテル(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールモノ−2−ドデシルヘキサデシルエーテル(メタ)アクリレート及び2−ヘキシルデシルアルコールエチレンオキサイド(EO)付加物(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0016】
(b1)としては、共重合体(B)の結晶化開始温度が−15℃以下、好ましくは、−18℃以下、更に好ましくは−20℃以下となるような(b1)が好ましい。
具体的には、メタクリル酸2−オクチルドデシル、メタクリル酸2−デシルテトラデシルなどが挙げられる。結晶化開始温度が−15℃以下であると、潤滑性向上剤の貯蔵安定性が良好である。なお、(B)の結晶化開始温度は(b1)のアルキル基のメチレン連鎖の長さで調整することができる。
【0017】
本発明における水酸基含有ビニル単量体(b2)としては、例えば、水酸基含有芳香族ビニル単量体[p−ヒドロキシスチレンなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2又は3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、など]、ポリアルキレングリコール(炭素数2〜4)モノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(ランダム又はブロック共重合体)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコール(ランダム又はブロック共重合体)モノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール−テトラメチレングリコール(ランダム又はブロック共重合体)モノ(メタ)アクリレート、など]、モノ−又はジ−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、など]、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど]、炭素数4〜12のアルケンジオール[1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオールなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルなど]、多価(3〜8価)アルコール(アルカンポリオール、その分子内もしくは、分子間脱水物、糖類、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジグリセリン、蔗糖)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテルもしくは(メタ)アクリレート[グリセリンモノ(メタ)アクリレート、蔗糖(メタ)アリルエーテルなど]などが挙げられる。
【0018】
これらの(b2)のうち、燃料油への溶解性と潤滑性の観点から好ましいものは、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(炭素数2〜4)モノ(メタ)アクリレート、炭素数3〜12のアルケノールであり、特に好ましいものは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びアリルアルコールである。
【0019】
(B1)は構成単量体として、更に(b1)と(b2)以外の炭素数8〜20の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b3)を使用することができる。
炭素数8〜20の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b3)としては、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ペンタデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート及びn−イコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(b3)のうち好ましいのは、好ましいのは炭素数10〜18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、更に好ましいのは炭素数12〜18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートである。
【0020】
潤滑性向上剤の潤滑性能及び共重合体(B)の結晶化温度の調整しやすさの観点から、共重合体(B)が、(B)の構成単位として(B)の重量に基づいて、好ましくは(b1)を10〜90重量%、(b2)を5〜50重量%及び(b3)を5〜85重量%含有し、更に好ましくは(b1)を15〜80重量%、(b2)を6〜40重量%及び(b3)を10〜80重量%含有し、最も好ましくは、(b1)を20〜60重量%、(b2)を7〜30重量%及び(b3)を20〜60重量%含有する。
【0021】
(B)は必要により、構成単位として、他のラジカル重合性単量体(b4)〜(b15)を含有することができる。
【0022】
アミド基含有単量体(b4):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、N−(N’−モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−(N’−メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’−エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’−イソプロピルアミノ−n−ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN−(N’−n−又はイソブチルアミノ−n−ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N−(N’,N’−ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN−(N’,N’−ジ−n−ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N−ビニルカルボン酸アミド[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−又はイソプロピオン酸アミド及びN−ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0023】
ニトロ基含有単量体(b5):
4−ニトロスチレン等が挙げられる。
【0024】
1〜3級アミノ基含有単量体(b6):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3〜6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6〜12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N−(N’,N’−ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0025】
ニトリル基含有単量体(b7):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0026】
(b4)〜(b7)のうち好ましくは、(b4)及び(b6)であり、更に好ましくは、N−(N’,N’−ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンである。
【0027】
リン原子含有単量体(b8)としては、以下の単量体(b81)〜(b82)が挙げられる。
【0028】
リン酸エステル基含有単量体(b81):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2〜4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0029】
ホスホノ基含有単量体(b82):
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2〜4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2〜12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0030】
(b8)のうち好ましいのは(b81)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2〜4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0031】
脂肪族炭化水素系単量体(b9):
炭素数2〜20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)及び炭素数4〜12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン及び1,7−オクタジエン等)等が挙げられる。
【0032】
脂環式炭化水素系単量体(b10):
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0033】
芳香族炭化水素系単量体(b11):
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン、インデン及び2−ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0034】
ビニルエステル、ビニルケトン類(b12):
炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)及び炭素数1〜8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0035】
エポキシ基含有単量体(b13):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン元素含有単量体(b14):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0037】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(b15):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等)の炭素数1〜8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0038】
(B)を構成する(b4)〜(b15)の割合は、潤滑油の流動点の観点から、(B)の重量の基づき、それぞれ独立に好ましくは0〜10重量%であり、更に好ましくは1〜8重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0039】
(B)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する)は、5,000〜300,000であり、潤滑性向上剤の潤滑性能の点から、好ましくは10,000〜100,000である。
【0040】
なお、(B)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定する。
<Mwの測定条件>
装置 :「HLC−802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
標準 :ポリスチレン
【0041】
(B)のSP値は、燃料油への溶解性及び潤滑性向上剤の潤滑性の観点から、8.8〜11.0であり、好ましくは8.9〜10.5である。
なお、(B)のSP値は、(B)を構成する単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体のSP値を、構成単量体単位のモル分率に基づいて平均した値である。(B)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより8.8〜11.0(cal/cm
3)
1/2にすることができる
【0042】
(B)は、示差走査熱量計により測定した結晶化開始温度(tb)が上限温度について−15℃以下であり、好ましくは−18℃以下、更に好ましくは−20℃以下であり、下限温度について好ましくは−30℃以上、更に好ましくは−40℃以上、特に好ましくは−50℃以上、最も好ましくは−80℃以上である。
結晶化開始温度が−15℃以下であると、潤滑性向上剤の貯蔵安定性が良好である。
本発明の発明において、(B)の結晶化開始温度(tb)、脂肪酸(A)の結晶化開始温度(ta)及び曇点降下剤(C)の結晶化開始温度(tc)は、示差走査熱量計「UNIX(登録商標)DSC7」(PERKIN−ELMER社製)を使用し、試料5mgを10℃/分の等温速度で50℃から−80℃まで冷却したときに観測される結晶化開始温度である。
【0043】
本発明における潤滑性向上剤は、更に曇点降下剤(C)、酸化防止剤(D)及び炭化水素系溶剤(E)からなる群から選ばれる1種以上を含有してもよい。
【0044】
本発明における曇点降下剤(C)は、潤滑性向上剤の曇点を降下させる点で配合されていることが好ましく、下記(1)〜(3)を満たすさらに好ましい。
10℃ ≧ ta ≧ −20℃ (1)
20℃ ≧ tc ≧ −10℃ (2)
20℃ ≧ tc−ta ≧ −10℃ (3)
taが10℃より高くなると、潤滑性向上剤の曇り点が高くなり、−20℃より
低くなると、潤滑性向上剤の曇り点は低くなるが、酸化安定性が悪化する。
taを調整するためには、(A)の中の不飽和脂肪酸含量(特に、ジ又はトリ不飽和脂肪酸の含量)を少なくする、又は、ヨウ素価を低くすれば、taが上がり、不飽和脂肪酸含量(特に、ジ又はトリ不飽和脂肪酸の含量)を多くする、又は、ヨウ素価を低くすれば、taが低くなる。
tcが(1)の範囲から外れると、潤滑性向上剤の曇点が高くなる。
tcは(C)が重合体である場合には、構成単量体のアルキル基又はアルキレン基の炭素数によって調整できる。
また、ta及びtcが(3)を満たさないと、潤滑性向上剤の曇点が高くなる。
【0045】
ta及びtcは、曇点を更に低くできるという観点から、下記(4)を満たすことが好ましく、下記(5)を満たすことが更に好ましい。
20℃ ≧ tc−ta ≧ 0℃ (4)
15℃ ≧ tc−ta ≧ 5℃ (5)
【0046】
式(3)を満たす曇点降下剤(C)としては、ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系流動点降下剤(C2)、及びASA(アルケニルコハク酸)系流動点降下剤(C3)等が挙げられる。
【0047】
ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(c)を構成単量体として含有する共重合体であって、共重合体(B)を除くものである。
(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート及びイソペンタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、重合体の結晶化温度の調整しやすさという観点から、好ましくは炭素数8〜15、更に好ましくは10〜15のアルキル(メタ)アクリレートである。
(C1)は構成単量体として更に(c)以外の単量体、前述の(b4)〜(b15)を使用することができる。
【0048】
(C1)の重量に基づく(c)の含量は、潤滑性向上剤中の結晶性物質との共結晶を生成し易いという観点から、好ましくは20〜100重量%であり、更に好ましくは30〜100重量%である。
【0049】
EVA系流動点降下剤(C2)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−2−エチルヘキサン酸ビニル3元共重合体、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル3元共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜5)−カルボン酸(炭素数1〜10)ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル共重合体のマレイン酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−2−エチルヘキサン酸ビニル3元共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−2−エチルヘキサン酸ビニル3元共重合体のマレイン酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル3元共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル3元共重合体のマレイン酸エステルグラフト物、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜5)−カルボン酸(炭素数1〜10)ビニル共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜5)−カルボン酸(炭素数1〜10)ビニル共重合体のマレイン酸エステルグラフト物等が挙げられる。
【0050】
ASA系流動点降下剤(C3)としてはアルケニル基の炭素数が8〜50のアルケニルコハク酸アミド等が挙げられる。
【0051】
(C)のSP値は、結晶性物質の結晶形状の制御の点から、好ましくは8.5〜10.5であり、更に好ましくは8.9〜10.0である。
なお、(C)のSP値は、(C)を構成する単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体のSP値を、構成単量体単位のモル分率に基づいて平均した値である。(C)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより8.5〜10.5(cal/cm
3)
1/2にすることができる。
【0052】
(C)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する)は、結晶性物質の結晶形状の制御の点から、好ましくは3,000〜600,000であり、更に好ましくは5,000〜300,000である。
【0053】
なお、(C)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定する。
<Mwの測定条件>
装置 :「HLC−802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
標準 :ポリスチレン
【0054】
(C)のうち、好ましいのは、任意の結晶化開始温度に調整し易いという観点から、ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)である。
【0055】
本発明における酸化防止剤(D)としては、フェノール系化合物(D1)[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−フェノール(DTBP)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)等のモノフェノール系;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等の高分子型フェノール系等];硫黄系化合物(D2)[ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、ジラウリスサルファイド等];リン系化合物(D3)[トリフェニルホスファイト(TPP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)、ジフェニルイソデシルホスファイト(DPDP)、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(TNP)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト];アミン系化合物(D4)[p−(p−トルエン・スルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’−(α、α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4−モノオクチルジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応物、ジフェニルアミンとアセトンの低温反応物、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンの低温反応物、ジフェニルアミンとジイソブチレンの反応生成物及びオクチル化ジフェニルアミンの混合物、オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフリルアミン、フェノチアジン等]等が挙げられる。
(A)及び(B)に対する溶解性の観点と酸化安定性の観点から、(D)のうち好ましいのは、フェノール系化合物(D1)であり、特に好ましいのは、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−フェノール(DTBP)である。
【0056】
本発明における炭化水素系溶剤(E)としては、芳香族炭化水素系溶剤(E1);トルエン、キシレン、エチルベンゼン、C9を主成分とする芳香族炭化水素(トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、出光興産株式会社製「イプゾール100」、丸善石油化学株式会社製「スワゾール1000」等)、C10を主成分とする芳香族炭化水素(ジエチルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、出光興産株式会社製「イプゾール150」、丸善石油化学株式会社製「スワゾール1500」等)、テトラリン等、脂肪族炭化水素系溶剤(E2):n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等、又は脂環式炭化水素系溶剤(E3);シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が挙げられる。
(A)及び(B)の溶解性及び潤滑性向上剤の引火点の観点から、好ましいのは芳香族炭化水素系溶剤(E1)であり、特に好ましいのは、C9を主成分とする芳香族炭化水素及びC10を主成分とする芳香族炭化水素である。
【0057】
(A)と(B)との重量に対する(A)の重量百分率は、低硫黄軽油への潤滑性向上剤の添加効率の観点から好ましくは60〜99重量%であり、より好ましくは70〜98.5重量%、更に好ましくは75〜98重量%である。
(A)と(B)との重量に対する(B)の重量百分率は、潤滑性能と常温での通油性の観点から好ましくは1〜40重量%であり、より好ましくは1.5〜30重量%、更に好ましくは2〜25重量%である。
【0058】
潤滑性向上剤の重量に対する(C)の重量百分率は、潤滑性向上剤の曇点の観点から好ましくは0.01〜4重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%、最も好ましくは0.2〜2重量%である。
【0059】
潤滑性向上剤の重量に対する(D)の重量百分率は、潤滑性向上剤に対する溶解性の観点から好ましくは0.01〜10重量%であり、さらに好ましくは0.05〜8重量%、最も好ましくは0.1〜5重量%である。
【0060】
潤滑性向上剤の重量に対する(E)の重量百分率は、潤滑性向上剤の曇点の観点から、好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは10〜25重量%である。
【0061】
本発明の潤滑性向上剤は、更に他の添加剤を潤滑性向上剤の重量に基づいてそれぞれ5%重量以下の割合で添加してもよい。他の添加剤としては、腐食防止剤(例えばアルケニルコハク酸系防錆剤、アルケニルコハク酸のエステル系防錆剤等)、清浄剤(例えば、ジブチルアミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物、ブタノールの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物、モノエタノールアミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物等)、防錆剤(例えば、炭素数1〜30の脂肪族アミン、炭素数1〜30の脂肪族アミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物等)等が挙げられる。
【0062】
本発明の燃料油用組成物は上記の潤滑性向上剤と燃料油からなる。
対象となる燃料油は、特に限定されないが、本発明の潤滑性向上剤の潤滑性向上効果が有利に発揮しやすいという観点から、好ましくは低硫黄燃料油であり、更に好ましくは硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油である。
硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油としては、低硫黄原油(たとえば、ミナス原油等南方系の原油)の蒸留で得られる、沸点範囲が160℃から380℃までのJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油;原油から水素化脱硫処理工程を経て製造される脱硫軽油;この脱硫軽油と直留軽油(水素化脱硫工程前の軽油)をブレンドして得られる軽油留分から製造されるJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油;動植物油(廃食用油を含む)を脱炭酸した後に水素化処理されて得られる炭化水素油が挙げられる。
これらのうち特に好ましいのは、水素化脱硫処理工程を経て製造される脱硫軽油を50重量%以上使用して製造されるJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油である。
【0063】
本発明の低硫黄燃料油組成物は、硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油と上記の潤滑性向上剤とを含有する低硫黄燃料油組成物である。
低硫黄燃料油組成物は、低硫黄燃料油組成物の重量に基づき、該燃料油用潤滑性向上剤の含有量は好ましくは10〜1000ppm、更に好ましくは20〜800ppm、特に好ましくは50〜500ppmである。
10ppm以上であれば潤滑性が発揮し易く、1000ppm以下であれば添加効率がよいので経済性が優れる。
【0064】
本発明の低硫黄燃料油組成物は、ディーゼルエンジンやボイラー等に使用される硫黄含量が0.001重量%以下の燃料油(軽油)や、航空機等のジェットエンジン用の燃料油等に好適である。
特に、本発明の燃料油用潤滑性向上剤は曇点が低いので、冬期のような低温期であっても固化したり、結晶の析出が生じたりすることが少なく、製油所等で軽油等に潤滑性向上剤を添加する際に不具合が生じることが少ない。
更に、本発明の燃料油用潤滑性向上剤は、燃料油への溶解性に優れており、本発明の潤滑性向上剤を含有する低硫黄燃料油組成物はフィルター通油性に優れる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
<製造例1〜9、比較製造例1>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器にイソプロピルアルコールを25重量部仕込み、系内を窒素雰囲気として83℃まで昇温した。反応器中のイソプロピルアルコールを撹拌しながら、別のガラス製ビーカーに、表1記載の単量体配合物100重量部と、イソプロピルアルコール18重量部に2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.4重量部及び表1記載の量(部)のドデシルメルカプタンを溶解した溶液を、それぞれ別の滴下ロートから反応器に2時間かけて等速度で全量を仕込み、仕込み終了から83℃で3時間重合反応を行なった。反応終了後、83℃から120℃に昇温しながらイソプロピルアルコールを除去し、共重合体(B1)〜(B9)及び比較の共重合体(HB1)を得た。
【0067】
<比較製造例2及び3>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、トルエン25重量部、表1に記載の単量体配合物100重量部、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部及び2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.25重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度:100ppm以下)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。反応終了後、76℃から130℃に昇温しながらトルエンを除去し、比較の共重合体(HB2)〜(HB3)を得た。
【0068】
上記で得られた共重合体(B1)〜(B9)及び比較の共重合体(HB1)〜(HB3)の分析値等を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に記載の単量体(b1−1)〜(b1−3)、(b2−1)、(b2−2)及び(b3−1)〜(b3−5)の組成は、以下に記載した通りである。
(b1−1):2−ヘキシルデシルメタクリレート
(b1−2):2−ヘキシルデシルアルコールエチレンオキサイド(EO)2モル付加物メタアクリレート
(b1−3):2−デシルテトラデシルメタアクリレート
(b2−1):2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
(b2−2):2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート
(b3−1):n−デシルメタアクリレート
(b3−2):n−ドデシルメタアクリレート
(b3−3):n−テトラデシルメタアクリレート
(b3−4):n−ヘキサデシルメタアクリレート
(b3−5):n−オクタデシルメタアクリレート
【0071】
<製造例10〜13>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器にイソプロピルアルコールを25重量部仕込み、系内を窒素雰囲気として83℃まで昇温した。反応器中のイソプロピルアルコールを撹拌しながら、別のガラス製ビーカーに、表2記載の単量体配合物100重量部と、イソプロピルアルコール18重量部に2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.4重量部及び表2記載の量(部)のドデシルメルカプタンを溶解した溶液を、それぞれ別の滴下ロートから反応器に2時間かけて等速度で全量を仕込み、仕込み終了から83℃で3時間重合反応を行なった。反応終了後、83℃から120℃に昇温しながらイソプロピルアルコールを除去し、曇点降下剤(C1−1)〜(C1−4)を得た。
【0072】
上記で得られた曇点降下剤(C1−1)〜(C1−4)の分析値等を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に記載の(c1)〜(c2)の組成は、以下に記載した通りである。
(c1):ドデシルメタアクリレート/メタクリル酸トリデシルメタアクリレート=60/40(wt%)(直鎖率=74%)
(c2):テトラデシルメタアクリレート/ペンタデシルメタアクリレート=50/50(wt%)(直鎖率=80%)
【0075】
<潤滑性向上剤の調製>
実施例1〜11及び比較例1〜6
表1の共重合体(B1)〜(B9)及び比較の共重合体(HB1)〜(HB3)、表2に示した曇点降下剤(C1−1)〜(C1−4)、表3に示した脂肪酸(A−1)〜(A−9)、酸化防止剤(D)としてBHT並びに炭化水素系溶剤(E)としてイプゾール100(出光興産株式会社製、C9主成分の芳香族溶剤)を、表4に示した配合組成で配合し、潤滑性向上剤(R1)〜(R11)及び比較の潤滑性向上剤(S1)〜(S6)を調製した。
それぞれの潤滑性向上剤の曇点をJISK−2269に準じて測定し、結果を表4に示した。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
<実施例12〜22、比較例7〜12(燃料油組成物の評価)>
潤滑性向上剤(R1)〜(R11)及び比較の潤滑性向上剤(S1)〜(S6)を、硫黄含量0.001重量%のJIS2号軽油相当のディーゼル燃料油に、潤滑性向上剤を250ppmになるように添加し、燃料油組成物(V1)〜(V11)及び比較の燃料油組成物(W1)〜(W6)を得た。
燃料油組成物(V1)〜(V11)及び比較の燃料油組成物(W1)〜(W6)の潤滑性、フィルター通油性を以下の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
<燃料油組成物の潤滑性の測定方法>
HFRR(High−Frequency Reciprocating Rig)(英国PCSインスツルメンツ社製)を使用し、JPI−5S−50−98に準じて、試験鋼球に生じた摩耗痕径を測定した。
なお、潤滑性向上剤未添加の該ディーゼル燃料油の摩耗痕径は580μmである。
【0081】
<燃料油組成物のフィルター通油性の測定方法>
IP387法に準拠し、20℃に温調した燃料油組成物300mLを流速20mL/分でフィルター(直径13mm、ポアサイズ=1.6μm)に通油し、通油時間とフィルター前の最大圧力を測定した。圧力が105kPaを越えた場合は試験を停止し、その時点での通油時間を測定した。
【0082】
表4の結果から明らかなように、本発明の潤滑性向上剤は(実施例1〜11)は、比較例1〜6の潤滑性向上剤と比較して、曇点が十分低い。また、表5の結果から明らかなように、本発明の潤滑性向上剤を含有してなる燃料油組成物(実施例12〜22)は、比較例7〜12の燃料油組成物と比較して、潤滑性に優れ、フィルター通油性が良好であることがわかる。