(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持凹部の前記係合部と係合する面は、前記スライド係合部の前記係合部と係合する面に段差なく繋がっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のラッチ装置。
前記ラッチ側係合部は、前記牽引部材を通すためのスリットが形成される板状部と、当該板状部から立設されるリブ部とを有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のラッチ装置。
前記ラッチは、前記第1姿勢から前記第3姿勢になるまでの間に前記棒状部から外れるように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のラッチ装置。
前記スライド係合部の前記保持凹部とは反対側には、前記係合部が前記保持凹部から離れる方向に移動するのを規制する第2係止部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のラッチ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、ラッチとワイヤの間に多くの部品を設けているので、ラッチ装置が複雑化してしまうといった問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でラッチ装置に大きな負荷がかかるのを抑制することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ラッチ装置の小型化を図ることや、ラッチを良好に動作させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決する本発明は、棒状部に係合または離脱するラッチ装置であって、ベース部材と、前記ベース部材に回動可能に支持され、前記棒状部に係合可能なラッチと、前記ラッチを引っ張ることで、当該ラッチを回動させるための牽引部材と、前記ラッチに設けられ、前記牽引部材の先端に設けられる係合部と係合するラッチ側係合部と、を備える。
前記ラッチは、前記棒状部に係合した第1姿勢と、前記棒状部から外れ、かつ、前記牽引部材を最大に引いたときの第2姿勢との間で回動可能となっている。
前記ラッチ側係合部は、前記ラッチが前記第1姿勢と前記第2姿勢の間の第3姿勢に回動するまでの間、前記係合部を保持する保持凹部と、前記保持凹部に隣接して設けられ、前記ラッチの回動軸から離れる方向に延びるスライド係合部と、を有する。
前記係合部は、前記ラッチが前記第1姿勢から前記第3姿勢に回動するまでの間、前記保持凹部に係合しながら前記回動軸を中心に回動し、前記ラッチが前記第3姿勢から前記第2姿勢に回動するまでの間、前記スライド係合部に係合しながら当該スライド係合部に沿って前記回動軸から離れる方向に移動するように構成されていることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、ラッチが第1姿勢から第3姿勢に回動するまでの間は、牽引部材の係合部が保持凹部に係合しながら回動軸を中心に回動することで、牽引部材からの力がラッチに良好に伝わるので、ラッチを良好に回動させることができる。また、ラッチが第3姿勢から第2姿勢に回動するまでの間は、牽引部材の係合部がスライド係合部に係合しながら当該スライド係合部に沿って回動軸から離れる方向に移動することで、牽引部材からラッチに伝わる力を逃がすことができるので、ラッチ装置に大きな負荷がかかるのを抑えることができる。さらに、このような保持凹部およびスライド係合部を有するラッチ側係合部をラッチに設けているので、ラッチとワイヤとの間の部品を少なくすることができ、ラッチ装置の簡易化を図ることができる。
【0011】
また、前記した構成において、前記ラッチ側係合部は、前記ラッチとは別部材であってもよい。
【0012】
この場合であっても、従来のようなラッチ装置に比べ、部品点数を削減して、ラッチ装置の簡易化を図ることができる。また、ラッチ装置を取り付ける対象物の種類に応じて、異なる形状のラッチ側係合部をラッチに取り付けるだけで、様々な種類の対象物において、ラッチ装置のラッチ側係合部以外の構造を変更することなく、牽引部材の係合部の移動量を自由に調節して、牽引部材の引ききりによるラッチ装置への負荷を抑えることができる。
【0013】
また、前記した構成において、前記係合部は、前記回動軸に直交した平面に沿って移動可能に構成されていてもよい。
【0014】
これによれば、例えば係合部が回動軸方向に移動してしまうような構造に比べ、ラッチ装置を回動軸方向に小型化することができる。
【0015】
また、前記した構成において、前記保持凹部の前記スライド係合部とは反対側には、前記係合部の前記回動軸側への移動を規制する第1係止部が設けられていてもよい。
【0016】
これによれば、第1姿勢となるラッチを牽引部材で引っ張る際において、係合部が誤って回動軸側へ移動しようとしても、その移動を第1係止部によって抑えることができるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【0017】
また、前記した構成において、前記保持凹部から前記第1係止部側に延びる延設壁を備え、前記延設壁は、前記ラッチが前記第1姿勢であるときに、前記第1係止部から前記保持凹部に向かうにつれて前記引張方向の下流側に向けて傾斜していてもよい。
【0018】
これによれば、第1姿勢において係合部が保持凹部からずれて延設壁と係合した状態となっている場合であっても、牽引部材を引っ張ったときに係合部を傾斜した延設壁に沿って保持凹部に移動させることができるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【0019】
また、前記した構成において、前記保持凹部の前記係合部と係合する面は、前記スライド係合部の前記係合部と係合する面に段差なく繋がっていてもよい。
【0020】
これによれば、係合部が保持凹部からスライド係合部へスムーズに移動するので、ラッチの回動をスムーズに行うことができる。
【0021】
また、前記した構成において、前記ラッチ側係合部は、前記牽引部材を通すためのスリットが形成される板状部と、当該板状部から立設されるリブ部とを有していてもよい。
【0022】
これによれば、スリットが形成された板状部の剛性を、リブ部によって高くすることができるので、板状部の変形を抑えて、ラッチを良好に動作させることができる。
【0023】
また、前記した構成において、前記リブ部は、前記係合部とは反対側に向けて立設されていてもよい。
【0024】
これによれば、リブ部によって係合部の移動が邪魔されないので、係合部をスムーズに移動させることができ、ラッチを良好に動作させることができる。
【0025】
また、前記した構成において、前記ラッチは、前記第1姿勢から前記第3姿勢になるまでの間に前記棒状部から外れるように構成されていてもよい。
【0026】
これによれば、ラッチが第1姿勢から第3姿勢になるまでの間、つまり牽引部材からの力がラッチに良好に伝わってラッチが大きく回動する間に、ラッチが棒状部から外れるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【0027】
また、前記した構成において、前記スライド係合部の前記保持凹部とは反対側には、前記係合部が前記保持凹部から離れる方向に移動するのを規制する第2係止部が設けられていてもよい。
【0028】
これによれば、牽引部材を引ききったときに、係合部がスライド係合部から外れるのを第2係止部によって抑えることができるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡易な構成でラッチ装置に大きな負荷がかかるのを抑制することができる。
【0030】
本発明によれば、ラッチ装置を取り付ける対象物の種類に応じて、ラッチ装置のラッチ側係合部以外の構造を変更することなく、牽引部材の係合部の移動量を自由に調節して、牽引部材の引ききりによるラッチ装置への負荷を抑えることができる。
【0031】
本発明によれば、ラッチ装置を回動軸方向に小型化することができる。
【0032】
本発明によれば、第1姿勢となるラッチを牽引部材で引っ張る際において、係合部の回動軸側への移動を第1係止部によって抑えることができるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【0033】
本発明によれば、牽引部材を引っ張ったときに係合部を傾斜した延設壁に沿って保持凹部に移動させることができるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【0034】
本発明によれば、係合部が保持凹部の面と当該面に段差なく繋がるスライド係合部の面へスムーズに移動するので、ラッチの回動をスムーズに行うことができる。
【0035】
本発明によれば、スリットが形成された板状部の剛性をリブ部によって高くすることができるので、板状部の変形を抑えて、ラッチを良好に動作させることができる。
【0036】
本発明によれば、リブ部が係合部とは反対側に向けて立設されるので、係合部をスムーズに移動させることができ、ラッチを良好に動作させることができる。
【0037】
本発明によれば、牽引部材からの力がラッチに良好に伝わってラッチが大きく回動する間に、ラッチが棒状部から外れるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【0038】
本発明によれば、牽引部材を引ききったときに係合部がスライド係合部から外れるのを第2係止部によって抑えることができるので、ラッチを良好に動作させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係るラッチ装置の一実施形態について説明する。一実施形態のラッチ装置は、例えば
図1に示すように、自動車などの乗物用シートSの脚S1などに設けられる。ラッチ装置1は、乗物のフロアFに固定されたストライカ90に係合することで乗物用シートSをフロアFに固定し、ストライカ90から離脱することで乗物用シートSをフロアFから解放するようになっている。なお、本実施形態において、前後、左右、上下は、乗物用シートSに座る乗員を基準とする。
【0041】
図2に示すように、ラッチ装置1は、ベース部材の一例としてのベースプレート10と、ストライカ90の棒状部91に係合可能なラッチ20と、ラッチ側係合部の一例としてのラッチ側係合部材30と、牽引部材の一例としてのワイヤ40とを備えている。
【0042】
図3(a)に示すように、ベースプレート10は、板金をプレス成形して形成された長尺の板状の部材であり、左右方向に直交した底壁部11と、底壁部11の前端から右側に延びる前壁部12と、底壁部11の上端から右側に延びる上壁部13と、底壁部11の後端の下部から右側に延びる後壁部14と、前壁部12の右端から前側に延びる第1フランジ部15と、後壁部14の右端から後側に延びる第2フランジ部16とを備えている。
【0043】
底壁部11の下端には、下方に開口する溝11aが形成されている。この溝11aは、ストライカ90の棒状部91(
図2参照)を底壁部11の内側(
図2に示すラッチ20の回動軸20A付近)まで入り込ませるための溝であり、前壁部12に隣接するように配置されている。
【0044】
底壁部11のうち溝11aの上側には、底壁部11から右側に膨出する有底円筒状の膨出部11bが形成されている。膨出部11bの中心には、ラッチ20を回動可能に支持する支持軸51および固定ピン52を取り付けるための取付孔11cが形成されている。つまり、ベースプレート10は、支持軸51を介してラッチ20を回動可能に支持している。
【0045】
図2に示すように、底壁部11の前端は、下端から上方に延びた後前斜め上方に延び、その後上方に延びるような形状に形成されている。そして、
図3(a)に示すように、前壁部12は、底壁部11の前端に倣った形状に形成され、その上部には、左側に向けて凹む切欠部12aが形成されている。
【0046】
前壁部12と、前壁部12と底壁部11とを連結する屈曲部12bと、前壁部12と第1フランジ部15とを連結する屈曲部12cとを含む部位は、乗物の衝突時に応力が集中して他の部位よりも優先的に変形する応力集中部SCとなっている。ここで、乗物の衝突により乗物用シートSが前側に倒れそうになった場合には、
図6に示すように、ラッチ20のストライカ90との係合部分に下方に向かう大きな力が加わる。この力はラッチ20を支持する支持軸51および固定ピン52を介してベースプレート10に伝わる。このような方向に作用する力によって、応力集中部SCが他の部位よりも優先的に変形するように、実験やシミュレーション等によって、応力集中部SCの形状や位置が設定されている。
【0047】
図5(a)に示すように、第1フランジ部15は、底壁部11よりも脚S1に近い位置に配置されており、その適所には、第1ボルトB1を挿通させる円孔15aが形成されている。ここで、第1ボルトB1は、第1フランジ部15を脚S1に締結するためのボルトであり、当該第1ボルトB1が応力集中部SCの近傍に配置されるように、円孔15aの位置が設定されている。なお、応力集中部SCの近傍とは、乗物の衝突時において第1ボルトB1によって応力集中部SCの変形を規制できる程度に近い位置をいい、この位置は、実験やシミュレーション等で設定される。
【0048】
このように応力集中部SCの近傍に第1ボルトB1を設けることで、
図5(a),(b)に示すように、乗物の衝突時に応力集中部SCが第1ボルトB1に向けて変形しても、その変形が第1ボルトB1で規制されるので、ベースプレート10の変形によりラッチ20の向きが変わって、ラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのを抑えることが可能となっている。また、第1ボルトB1が円孔15aに通されていることにより、例えば第1ボルトを長孔に通すような構造に比べ、応力集中部SCが変形したときに円孔15aの縁が第1ボルトB1に即座に当接するので、応力集中部SCの変形をより抑えることができる。
【0049】
また、第1ボルトB1の第1フランジ部15からの高さは、応力集中部SCの第1フランジ部15からの高さ以上になっている。これにより、第1ボルトB1によって、応力集中部SCの変形をより抑えることができるので、ラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのをより抑えることが可能となっている。
【0050】
図3(a)に戻って、第2フランジ部16には、第2ボルトB2(
図2参照)を挿通させる長孔16aが形成されている。ここで、第2ボルトB2は、第2フランジ部16を脚S1に締結するためのボルトである。長孔16aは、前後方向に長くなるように形成されている。このように複数のボルトB1,B2を挿通させるための複数の孔のうち1つの孔を長孔16aとすることで、製造誤差を吸収することが可能となっている。
【0051】
図2に示すように、ラッチ20の回動軸20Aから第1ボルトB1までの距離は、ラッチ20の回動軸20Aから第2ボルトB2までの距離よりも小さくなるように構成されている。これにより、乗物の衝突時においてラッチ20からベースプレート10を介して第1ボルトB1付近に加わる力が、第2ボルトB2付近に加わる力よりも大きくなるので、大きな力により応力集中部SCを他の部位よりも優先的に変形させることが可能となっている。その結果、応力集中部SCの変形を第1ボルトB1で規制する効果をより確実に発揮させることができ、ラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのをより確実に抑えることが可能となっている。
【0052】
図2および
図3(a)に示すように、ラッチ20は、棒状部91に係合または離脱する係合溝20Bを有する鉤状の部材であり、ベースプレート10の膨出部11bに固定ピン52によって固定される支持軸51に回動可能に支持されている。ラッチ20は、棒状部91に係合した第1姿勢(
図2の姿勢、以下、ロック姿勢ともいう。)と、棒状部91から外れ、かつ、ワイヤ40を最大に引いたときの第2姿勢(
図4(c)の姿勢、以下、最大引張姿勢ともいう。)との間で回動可能となっている。
【0053】
ラッチ20と支持軸51のフランジ51aとの間には、ラッチ20を常時ロック姿勢に向けて付勢するためのトーションバネ61が設けられている。トーションバネ61の一端61aは、ベースプレート10の切欠部12aに係合し、他端61bはラッチ20またはラッチ側係合部材30に係合している。
【0054】
ラッチ20は、金属製のラッチ本体21と、当該ラッチ本体21の一部を覆う樹脂製のカバー22とを備えている。カバー22は、主にラッチ本体21の係合溝20Bに相当する溝を覆うように形成されている。
【0055】
ラッチ20の係合溝20Bは、ロック姿勢において、前側(第1ボルトB1側)に向けて開口している。これにより、乗物の衝突時に応力集中部SCが変形して、ラッチ20が前斜め下方に移動した場合には、棒状部91が係合溝20Bに深く入り込むので、ラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのをより抑えることが可能となっている。
【0056】
ラッチ20の回動軸20Aは、応力集中部SCを挟んで第1ボルトB1とは反対側に配置されている。これにより、衝突時に応力集中部SCが変形することにより、ラッチ20の回動軸20Aが第1ボルトB1に向けて移動しようとしても、応力集中部SCの変形が第1ボルトB1で規制されたときに、ラッチ20の回動軸20Aの移動も規制されるので、ラッチ20の回動軸20Aが移動しすぎてラッチ20の向きが変わることによってラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのを抑えることが可能となっている。
【0057】
ラッチ20、詳しくは金属製のラッチ本体21は、応力集中部SCの近傍に設けられ、衝突時に応力集中部SCに当接して移動が規制されるように構成されている。ここで、応力集中部SCの近傍とは、衝突時にラッチ本体21が応力集中部SCに当接できる程度に近いことを意味する。
【0058】
これによれば、乗物の衝突時におけるラッチ20の移動が、ラッチ本体21と応力集中部SCとの当接により規制されるので、ラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのをより抑えることが可能となっている。特に、本実施形態では、衝突時に応力集中部SCに当接するラッチ本体21が金属製であるので、ラッチ本体21が変形しにくい。そのため、例えば樹脂製のカバーが応力集中部に当接する構造に比べ、ラッチ20の移動をより抑えることができるので、ラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのをより抑えることが可能となっている。
【0059】
また、
図5(a)に示すように、ラッチ20の一部は、当該ラッチ20の回動軸方向において第1フランジ部15よりも底壁部11側に配置されている。これにより、例えばラッチの回動軸方向においてラッチを第1フランジ部よりも底壁部とは反対側に配置する構造に比べ、ラッチ装置1を回動軸方向に小型化することが可能となっている。
【0060】
また、第1フランジ部15の第1ボルトB1とラッチ20の間の部位は、第1ボルトB1の径方向に延びるように形成され、径方向から見て第1ボルトB1とラッチ20とに重なっている。これにより、乗物の衝突時において第1ボルトB1側に向けて移動してくる応力集中部SCに対して第1フランジ部15の一部(特に、第1ボルトB1と脚S1で挟持されている部位)が突っ張るように作用するので、第1フランジ部15の一部でも応力集中部SCの変形を規制することができる。
【0061】
図2および
図3(a)に示すように、ラッチ側係合部材30は、ワイヤ40の先端に設けられる係合部の一例としての係止ボール41が係合する部材であり、ラッチ20とは別部材に構成され、第1係止部の一例としてのリベットRVによってラッチ20に固定されている。詳しくは、ラッチ側係合部材30は、左右方向に直交した板状の第1板状部31と、第1板状部31の後端から右側に突出する第2板状部32と、第2板状部32の右端から後側に突出するリブ部33とを有している。
【0062】
第1板状部31は、上下方向に長い略矩形に形成されており、その上部には、第1板状部31をラッチ本体21に固定するためのリベットRVが嵌合される孔31aが形成されている。第1板状部31の孔31aの前上側には、前斜め上方に向けて延びる係合片31bが形成されている。
【0063】
係合片31bは、リベットRVを中心とした円周方向においてラッチ本体21の側面21aに係合している。これにより、ラッチ側係合部材30をワイヤ40で後方に引っ張った場合には、係合片31bがラッチ20の側面21aに引っ掛かることで、ラッチ側係合部材30とラッチ20とが一体に回動するようになっている。
【0064】
第2板状部32は、係止ボール41が係合する部位であり、ロック姿勢において、略後方に向けて凹む保持凹部32aと、保持凹部32aから下斜め前側に延びるスライド係合部32bと、スライド係合部32bの下端から前側に延びる第2係止部の一例としての係止壁32cと、保持凹部32aからリベットRV側に延びる延設壁32dとを備えている。
【0065】
保持凹部32aは、ラッチ20がロック姿勢から当該ロック姿勢と最大引張姿勢の間の第3姿勢(
図4(b)の姿勢、以下、途中姿勢ともいう。)に回動するまでの間、係止ボール41を保持するように構成されている。ここで、保持凹部32aは、ロック姿勢において、係止ボール41と接している部分をいう。
【0066】
これにより、ラッチ20がロック姿勢から途中姿勢になるまでの間は、係止ボール41がラッチ20の回動軸20Aを中心に回動するので、ワイヤ40からの力がラッチ20に良好に伝達され、ラッチ20を大きく回動させることが可能となっている。
【0067】
特に、本実施形態では、ラッチ20がロック姿勢から途中姿勢になるまでの間、つまり係止ボール41が保持凹部32aに保持されている間に、ラッチ20が棒状部91から外れるように構成されている。より詳しくは、ラッチ20がロック姿勢から途中姿勢になるまでの間にラッチ20が棒状部91から外れるように、保持凹部32aの形状や配置、または、後述するワイヤ40を支持するシース42の端部の固定位置などが適宜設定されている。このように係止ボール41が保持凹部32aに保持されている間、つまりワイヤ40からの力がラッチ20に良好に伝わってラッチ20が大きく回動する間に、ラッチ20が棒状部91から外れるように構成することで、ラッチ20を良好に動作させることが可能となっている。
【0068】
保持凹部32aの係止ボール41と係合する面は、スライド係合部32bの係止ボール41と係合する面に段差なく繋がっている。これにより、係止ボール41が保持凹部32aからスライド係合部32bへスムーズに移動するので、ラッチ20の回動をスムーズに行うことが可能となっている。
【0069】
スライド係合部32bは、保持凹部32aに隣接して設けられ、ラッチ20の回動軸20Aから離れる方向に向けて延びるように形成されている。詳しくは、スライド係合部32bは、ラッチ20が途中姿勢から最大引張姿勢に回動するまでの間、係止ボール41に係合し、当該係止ボール41をスライド係合部32bに沿って回動軸20Aから離れる方向に移動させるように構成されている。これにより、ワイヤ40からラッチ20に伝わる力を逃がすことができるので、ラッチ装置1に大きな負荷がかかるのを抑えることが可能となっている。
【0070】
係止壁32cは、係止ボール41がスライド係合部32bから下側(保持凹部32aから離れる方向)に移動するのを規制する機能を有している。なお、本実施形態では、ラッチ20が最大引張姿勢であるときに、係止ボール41が係止壁32cに届かないように設定されているが、ワイヤ40の伸びなどの外乱により係止ボール41がスライド係合部32bよりも下側に移動しそうになった場合には、係止壁32cにより係止ボール41がスライド係合部32bから外れるのを抑えることが可能となっている。
【0071】
リベットRVは、保持凹部32aのスライド係合部32bとは反対側、詳しくはラッチ20がロック姿勢であるときに延設壁32dの上斜め前側に隣接して設けられ、係止ボール41の回動軸20A側への移動を規制している。これにより、ロック姿勢となるラッチ20をワイヤ40で引っ張る際において、係止ボール41が誤って回動軸20A側へ移動しようとしても、その移動をリベットRVによって抑えることができるので、ラッチ20を良好に動作させることが可能となっている。
【0072】
延設壁32dは、ラッチ20がロック姿勢であるときに、リベットRVから保持凹部32aに向かうにつれてワイヤ40の引張方向下流側に向けて傾斜している。これにより、ロック姿勢において係止ボール41が保持凹部32aからずれて延設壁32dと係合した状態となっている場合であっても、ワイヤ40を引っ張ったときに係止ボール41を傾斜した延設壁32dに沿って保持凹部32aに移動させることができるので、ラッチ20を良好に動作させることが可能となっている。
【0073】
また、延設壁32dの係止ボール41と係合する面は、保持凹部32aの係止ボール41と係合する面と段差なく繋がっている。これにより、係止ボール41が延設壁32dから保持凹部32aへスムーズに移動するので、ワイヤ40をスムーズに引っ張ることが可能となっている。
【0074】
図3(a),(b)に示すように、第2板状部32には、ワイヤ40を通すためのスリット32eが形成されている。詳しくは、スリット32eは、前述した延設壁32d、保持凹部32a、スライド係合部32bおよび係止壁32cを通るように形成され、係止壁32cの途中から右側に屈曲して、右側に開口しており、当該開口からワイヤ40が挿入されるようになっている。
【0075】
リブ部33は、スリット32eの開口端から第2板状部32の右端に沿って立設されている。これにより、スリット32eが形成された第2板状部32の剛性を、リブ部33によって高くすることができるので、第2板状部32の変形を抑えて、ラッチ20を良好に動作させることが可能となっている。
【0076】
また、リブ部33は、第2板状部32から後側、すなわち第2板状部32の係止ボール41が配置される側とは反対側に向けて立設されている。これにより、リブ部33によって係止ボール41の移動が邪魔されないので、係止ボール41をスムーズに移動させることができ、ラッチ20を良好に動作させることが可能となっている。
【0077】
ワイヤ40は、ラッチ側係合部材30を介してラッチ20を引っ張ることで、当該ラッチ20を回動させるための部材であり、その一端に係止ボール41が設けられ、その他端が図示せぬ操作レバーに連結されている。ワイヤ40は、円筒状のシース42に摺動可能に支持されており、シース42の係止ボール41側の端部は、乗物用シートSに設けられる図示せぬブラケット等に支持されている。
【0078】
係止ボール41は、ワイヤ40がスリット32eによって移動可能に支持されていることで、ラッチ20の回動軸20Aに直交した平面に沿って移動可能に構成されている。これにより、例えば係止ボールが回動軸方向に移動してしまうような構造に比べ、ラッチ装置1を回動軸方向に小型化することが可能となっている。
【0079】
次に、各部材の動作について説明する。
図4(a),(b)に示すように、ラッチ20がロック姿勢から途中姿勢まで回動する場合には、係止ボール41が保持凹部32aに保持されたまま、ラッチ20の回動軸20Aを中心に回動することで、ラッチ20が大きく回動して棒状部91から外れる。
【0080】
図4(b),(c)に示すように、ラッチ20が途中姿勢から最大引張姿勢まで回動する場合には、係止ボール41がスライド係合部32b上を滑って回動軸20Aから離れる方向に逃げていくことで、ラッチ20の回動量を小さく抑えつつ、ワイヤ40の引張量を稼ぐことができる。そのため、ラッチ20がベースプレート10に干渉するのを抑えつつ、ワイヤ40の引ききりによってワイヤ40やラッチ装置1に大きな負荷がかかるのを抑えることができる。
【0081】
最後に、乗物の衝突時における第1ボルトB1の作用効果について説明する。
図5(a),(b)および
図6に示すように、乗物の衝突時には、応力集中部SCが他の部位よりも優先的に変形し、その変形は、第1ボルトB1によって規制される。また、応力集中部SCの変形に伴って移動するラッチ20は、応力集中部SCに当接することで、その移動が止められる。
【0082】
そのため、乗物の衝突時におけるベースプレート10の変形により、ラッチ20と棒状部91の係合状態が変化するのを抑えることができる。
【0083】
以上、本実施形態によれば、前述した効果に加え、次の各効果を奏することができる。
ラッチ20とワイヤ40との間に設ける部品がラッチ側係合部材30の1つで済むので、ラッチ装置1の簡易化を図ることができる。
【0084】
ラッチ側係合部材30がラッチ20とは別部材であるので、乗物の種類に応じて、異なる形状のラッチ側係合部材30をラッチ20に取り付けるだけで、様々な種類の乗物において、ラッチ装置1のラッチ側係合部材30以外の構造を変更することなく、ワイヤ40の係止ボール41の移動量を自由に調節して、ワイヤ40の引ききりによるラッチ装置1への負荷を抑えることができる。
【0085】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。
【0086】
前記実施形態では、第2板状部32を凹ませることで保持凹部32aを形成したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図7に示すように、第2板状部132にリベットRVを隣接させることで、第2板状部132とリベットRVの間(隅)を保持凹部132aとしてもよい。
【0087】
前記実施形態では、牽引部材の一例としてワイヤ40を例示したが、牽引部材は、例えば複数のロッドをそれぞれ回動可能に連結したものであってもよい。
【0088】
前記実施形態では、ラッチ装置1を、車両などの乗物用シートSの脚S1に適用したが、ラッチ装置は、乗物用シートSの着座部や背もたれに設けられていてもよく、車両のトランクなどの開閉部分をロックする装置として使用することもできる。乗物用シートSも、車両以外の船舶や飛行機のシートであってもよい。さらに、ラッチ装置1は、乗物以外のもの、例えば戸棚の戸をロックするための装置としても使用することができる。
【0089】
前記実施形態では、ベース部材の一例としてベースプレート10を例示したが、ベース部材は、肉厚の部材であってもよい。また、前記実施形態では、係合部の一例として係止ボール41を例示したが、係合部は、例えば円柱状に形成されていてもよい。
【0090】
前記実施形態では、ラッチ側係合部の一例としてラッチ20とは別部材のラッチ側係合部材30を例示したが、ラッチ側係合部は、ラッチに一体に形成されていてもよい。
【0091】
前記実施形態では、第1係止部の一例としてリベットRVを例示したが、第1係止部は、例えば延設壁に一体に形成される壁であってもよい。
【0092】
前記実施形態では、保持凹部の係合部と係合する面と、スライド係合部および延設壁の係合部と係合する面とを段差なく繋げたが、保持凹部の係合部と係合する面は、スライド係合部等の係合部と係合する面に対して交差していてもよい。
【0093】
前記実施形態では、ラッチ20がロック姿勢から途中姿勢になるまでの間に棒状部91から外れるように構成したが、ラッチを途中姿勢から最大引張姿勢になるまでの間に棒状部から外れるように構成してもよい。